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特開2023-71522EUV光生成装置、電子デバイス製造方法、及び検査方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071522
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】EUV光生成装置、電子デバイス製造方法、及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230516BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20230516BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230516BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20230516BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
B41J2/01 451
G03F1/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184363
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 文男
(72)【発明者】
【氏名】白石 裕
【テーマコード(参考)】
2C056
2H195
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2C056EB08
2C056EB29
2C056FA04
2H195BD14
2H197CA10
2H197FA01
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA20
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB10
4C092AB12
4C092AC09
(57)【要約】      (修正有)
【解決手段】ターゲットにパルスレーザ光を照射することにより、ターゲットをプラズマ化してEUV光を生成するEUV光生成装置1であって、チャンバ2と、ターゲット27をチャンバ内のプラズマ生成領域25に供給するターゲット供給部26と、ターゲットに照射するパルスレーザ光を生成するパルスレーザ装置3と、ターゲットの大きさ又はターゲットの大きさに関連する関連情報に基づいて、ターゲット供給部によって生成されるターゲットの生成周波数を、パルスレーザ光の照射周波数の自然数倍に変更するプロセッサ5と、を備える。
【効果】デブリの発生量の増加を抑制する、及びEUV光の出力の低下を抑制する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットにパルスレーザ光を照射することにより、前記ターゲットをプラズマ化してEUV光を生成するEUV光生成装置であって、
チャンバと、
前記ターゲットを前記チャンバ内のプラズマ生成領域に供給するターゲット供給部と、
前記ターゲットに照射するパルスレーザ光を生成するパルスレーザ装置と、
前記ターゲットの大きさ又は前記ターゲットの大きさに関連する関連情報に基づいて、前記ターゲット供給部によって生成される前記ターゲットの生成周波数を、前記パルスレーザ光の照射周波数の自然数倍に変更するプロセッサと、
を備えるEUV光生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記ターゲットを撮像し、ターゲット画像を出力する画像計測部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記ターゲット画像から前記ターゲットの大きさを計測する、EUV光生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載のEUV光生成装置であって、
前記ターゲットの大きさの許容範囲が予め設定されており、
前記プロセッサは、前記ターゲットの大きさが前記許容範囲の上限値を超えた場合に、前記生成周波数を大きくし、かつ、前記ターゲットの大きさが前記許容範囲の下限値未満の場合に、前記生成周波数を小さくする、EUV光生成装置。
【請求項4】
請求項3に記載のEUV光生成装置であって、
前記プロセッサは、計測した複数の前記ターゲットの大きさの代表値を前記上限値又は前記下限値と比較する、EUV光生成装置。
【請求項5】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
予め設定された時点からの経過時間を計測する経過時間計測部をさらに備え、
前記関連情報は、前記経過時間であり、
前記プロセッサは、前記経過時間に基づいて、前記生成周波数を変更する、EUV光生成装置。
【請求項6】
請求項5に記載のEUV光生成装置であって、
前記経過時間は、前記ターゲット供給部の動作時間の累積値である、EUV光生成装置。
【請求項7】
請求項6に記載のEUV光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記経過時間が長くなるにつれて、前記生成周波数を大きくする、EUV光生成装置。
【請求項8】
請求項6に記載のEUV光生成装置であって、
前記経過時間と比較される複数の参照時間と、前記複数の参照時間のそれぞれに対応して設定される複数の生成周波数との対応関係を予め記憶した記憶装置を備えており、
前記プロセッサは、前記対応関係を参照して、前記経過時間に応じた前記生成周波数に変更する、EUV光生成装置。
【請求項9】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記ターゲット供給部に前記ターゲットの材料を補給するリフィル機構をさらに備え、
前記プロセッサは、前記リフィル機構の補給量又は補給間隔に基づいて、前記生成周波数を変更する、EUV光生成装置。
【請求項10】
請求項9に記載のEUV光生成装置であって、
前記補給量は、前記リフィル機構の単位時間当たりの補給量であり、
前記補給間隔は、前記リフィル機構の1回当りの補給量が固定されている場合の補給間隔であり、
前記プロセッサは、前記補給量又は前記補給間隔に基づいて、前記ターゲットの大きさを算出する、EUV光生成装置。
【請求項11】
請求項10に記載のEUV光生成装置であって、
前記ターゲットの大きさの許容範囲が予め設定されており、
前記プロセッサは、前記算出されたターゲットの大きさが前記許容範囲の上限値を超えた場合に、前記生成周波数を大きくし、かつ、前記ターゲットの大きさが前記許容範囲の下限値を下回った場合に前記生成周波数を小さくする、EUV光生成装置。
【請求項12】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記ターゲット供給部から前記プラズマ生成領域に向かう前記ターゲットを光学的に検出し、前記ターゲットの大きさに応じた信号強度を有する通過タイミング信号を出力するターゲット検出部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記信号強度に基づいて、前記生成周波数を変更する、EUV光生成装置。
【請求項13】
請求項12に記載のEUV光生成装置であって、
前記関連情報は前記信号強度であり、
ベースラインからの前記信号強度の変化量の許容範囲が予め設定されており、
前記プロセッサは、前記変化量が前記許容範囲の上限値を超えた場合に、前記生成周波数を大きくし、かつ、前記変化量が前記許容範囲の下限値未満の場合に前記生成周波数を小さくする、EUV光生成装置。
【請求項14】
請求項13に記載のEUV光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記変化量を複数回計測し、計測した複数の前記変化量の代表値を前記上限値又は前記下限値と比較する、EUV光生成装置。
【請求項15】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記ターゲットはドロップレット状であり、前記ターゲットの大きさは、前記ターゲット供給部によって生成されるドロップレット状のターゲットの大きさである、EUV光生成装置。
【請求項16】
請求項1に記載のEUV光生成装置であって、
前記パルスレーザ装置は、前記パルスレーザ光として、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光とを生成し、
前記ターゲット供給部によって生成されるドロップレット状の前記ターゲットに対して前記プリパルスレーザ光を照射した後、前記プリパルスレーザ光の照射により前記ターゲットが拡散状態となったミスト状ターゲットに対して前記メインパルスレーザ光を照射する、EUV光生成装置。
【請求項17】
請求項16に記載のEUV光生成装置であって、
記ミスト状ターゲットを撮像し、ターゲット画像を出力する画像計測部をさらに備え、
前記プロセッサは、前記ターゲット画像から前記ミスト状ターゲットの大きさを計測し、前記ミスト状ターゲットの大きさに基づいて、前記生成周波数を変更する、EUV光生成装置。
【請求項18】
請求項17に記載のEUV光生成装置であって、
前記ミスト状ターゲットの大きさの許容範囲が予め設定されており、
前記プロセッサは、前記ミスト状ターゲットの大きさが前記許容範囲の上限値を超えた場合に、前記生成周波数を大きくし、かつ、前記ミスト状ターゲットの大きさが前記許容範囲の下限値を下回った場合に前記生成周波数を小さくする、EUV光生成装置。
【請求項19】
電子デバイスの製造方法であって、
チャンバと、
ターゲットを前記チャンバ内のプラズマ生成領域に供給するターゲット供給部と、
前記ターゲットに照射するパルスレーザ光を生成するパルスレーザ装置と、
前記ターゲットの大きさに基づいて、前記ターゲットの生成周波数を、前記パルスレーザ光の照射周波数の自然数倍に変更するプロセッサと、
を備えるEUV光生成装置によって、
前記ターゲットにパルスレーザ光を照射することにより前記ターゲットをプラズマ化してEUV光を生成し、
前記EUV光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記EUV光を露光することを含む電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
検査方法であって、
チャンバと、
ターゲットを前記チャンバ内のプラズマ生成領域に供給するターゲット供給部と、
前記ターゲットに照射するパルスレーザ光を生成するパルスレーザ装置と、
前記ターゲットの大きさに基づいて、前記ターゲットの生成周波数を、前記パルスレーザ光の照射周波数の自然数倍に変更するプロセッサと、
を備えるEUV光生成装置によって、
前記ターゲットにパルスレーザ光を照射することにより前記ターゲットをプラズマ化してEUV光を生成し、
前記EUV光を検査用光源として検査装置に出力し、前記検査装置内で、マスクに前記EUV光を露光して前記マスクを検査することを含む検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、EUV光生成装置、電子デバイス製造方法、及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV:Extreme Ultraviolet)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた半導体露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLaser Produced Plasma(LPP)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-128157号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0294953号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0171955号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係るEUV光生成装置は、ターゲットにパルスレーザ光を照射することにより、ターゲットをプラズマ化してEUV光を生成するEUV光生成装置であって、チャンバと、ターゲットをチャンバ内のプラズマ生成領域に供給するターゲット供給部と、ターゲットに照射するパルスレーザ光を生成するパルスレーザ装置と、ターゲットの大きさ又はターゲットの大きさに関連する関連情報に基づいて、ターゲット供給部によって生成されるターゲットの生成周波数を、パルスレーザ光の照射周波数の自然数倍に変更するプロセッサと、を備えるEUV光生成装置。
【0006】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、チャンバと、ターゲットをチャンバ内のプラズマ生成領域に供給するターゲット供給部と、ターゲットに照射するパルスレーザ光を生成するパルスレーザ装置と、ターゲットの大きさに基づいて、ターゲットの生成周波数を、パルスレーザ光の照射周波数の自然数倍に変更するプロセッサと、を備えるEUV光生成装置によって、ターゲットにパルスレーザ光を照射することによりターゲットをプラズマ化してEUV光を生成し、EUV光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にEUV光を露光することを含む。
【0007】
本開示の1つの観点に係る検査方法は、チャンバと、ターゲットをチャンバ内のプラズマ生成領域に供給するターゲット供給部と、ターゲットに照射するパルスレーザ光を生成するパルスレーザ装置と、ターゲットの大きさに基づいて、ターゲットの生成周波数を、パルスレーザ光の照射周波数の自然数倍に変更するプロセッサと、を備えるEUV光生成装置によって、ターゲットにパルスレーザ光を照射することによりターゲットをプラズマ化してEUV光を生成し、EUV光を検査用光源として検査装置に出力し、検査装置内で、マスクにEUV光を露光してマスクを検査することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、LPP式のEUV光生成装置の構成を概略的に示す図である。
図2図2は、比較例に係るEUV光生成装置の構成を示す断面図である。
図3図3は、図2とは異なる視点から見た場合のEUV光生成装置の断面図である。
図4図4は、EUV光生成システムの動作を示すメインフローチャートである。
図5図5は、図4に示すターゲット生成の処理を示すフローチャートである。
図6図6は、ターゲット生成メカニズムを概念的に示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す断面図である。
図8図8は、ターゲットの大きさに基づいて、ターゲット生成プロセッサが実施するターゲット生成処理を示すフローチャートの一例である。
図9図9は、ノズル孔の径の大径化が原因でターゲットの径が大きくなった場合に、生成周波数を大きくする場合の模式図である。
図10図10は、ノズル孔の径の小径化が原因でターゲットの径が小さくなった場合に、生成周波数を小さくする場合の模式図である。
図11図11は、ターゲットの大きさの関連情報に基づいてターゲット生成処理を実施するターゲット生成プロセッサの一例の構成を示す図である。
図12図12は、ターゲット生成処理に用いる参照テーブルの一例である。
図13図13は、経過時間とノズル孔の径との関連性を示した図である。
図14図14は、経過時間に基づいて、ターゲット生成プロセッサが実施するターゲット生成処理を示すフローチャートである。
図15図15は、リフィル機構を備えるターゲット供給部の構成を示す図である。
図16図16は、リフィル機構がリザーバに補給する固体スズの総質量の時間変化の一例を示すグラフである。
図17図17は、ターゲット物質の補給量又は補給間隔に基づいて、ターゲット生成プロセッサが実施するターゲット生成処理を示すフローチャートである。
図18図18は、図15とは別のリフィル機構を備えるターゲット供給部の構成を示す図である。
図19図19は、ターゲット物質が液体スズである場合における供給質量と時間間隔を示すグラフである。
図20図20は、ターゲットがターゲット検出部を通過する様子を模式的に示した図である。
図21図21は、信号強度と時間との関係を示すグラフである。
図22図22は、通過タイミング信号の信号強度に基づいて、ターゲット生成プロセッサが実施するターゲット生成処理を示すフローチャートである。
図23図23は、第5の実施形態に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す図である。
図24図24は、画像計測部がミスト状ターゲットを検出する様子を模式的に示す図である。
図25図25は、EUV光生成装置に接続された露光装置の構成を概略的に示す図である。
図26図26は、EUV光生成装置に接続された検査装置の構成を概略的に示す図である。
【実施形態】
【0009】
<内容>
1.EUV光生成システムの全体説明
1.1 構成
1.2 動作
2.比較例に係るEUV光生成装置
2.1 構成
2.2 動作
2.3 課題
3.第1の実施形態のEUV光生成装置
3.1 構成
3.2 動作
3.3 作用・効果
4.第2の実施形態のEUV光生成装置
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
5.第3の実施形態のEUV光生成装置
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
6.第4の実施形態のEUV光生成装置
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用・効果
7.第5の実施形態のEUV光生成装置
7.1 構成
7.2 動作
7.3 作用・効果
8.その他
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.EUV光生成システムの全体説明
1.1 構成
図1に、LPP式のEUV光生成システム11の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、少なくとも1つのパルスレーザ装置(以下、単にレーザ装置という)3と共に用いられる。本願においては、EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。図1に示し、かつ、以下に詳細に説明するように、EUV光生成装置1は、チャンバ2及びターゲット供給部26を含む。チャンバ2は、密閉可能に構成されている。ターゲット供給部26は、例えば、チャンバ2の壁を貫通するように取り付けられている。ターゲット供給部26から出力されるターゲット27の材料は、スズを含む。ターゲット27の材料は、スズと、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、又はキセノンとの組合せを含むこともできる。ターゲット27は、ドロップレット状である。
【0012】
チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられている。その貫通孔には、ウインドウ21が設けられている。ウインドウ21をレーザ装置3から出力されるパルスレーザ光32が透過する。チャンバ2の内部には、例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されている。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を有する。EUV集光ミラー23の表面には、例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されている。EUV集光ミラー23は、例えば、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点(IF)292に位置するように配置されている。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が設けられている。貫通孔24をパルスレーザ光33が通過する。
【0013】
また、EUV光生成装置1は、EUV光生成プロセッサ5、及びターゲットセンサ4等を含む。ターゲットセンサ4は、ターゲット27を撮像し、ターゲット画像TPを出力する撮像機能を有し、ターゲット27の存在、軌跡、位置、速度等を検出するよう構成されている。
【0014】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部と外部装置6の内部とを連通させる接続部29を含む。接続部29内部には、アパーチャ293が形成された壁291が設けられている。壁291は、そのアパーチャ293がEUV集光ミラー23の第2の焦点位置に位置するように配置されている。
【0015】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光進行方向制御部34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含む。レーザ光進行方向制御部34は、レーザ光の進行方向を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備えている。
【0016】
1.2 動作
図1に示すように、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御部34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射する。パルスレーザ光32は、少なくとも1つの光路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33として少なくとも1つのターゲット27に照射される。
【0017】
ターゲット供給部26Aは、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力する。ターゲット27には、パルスレーザ光33に含まれる少なくとも1つのパルスが照射される。パルスレーザ光33が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射される。EUV集光ミラー23は、放射光251に含まれるEUV光252を、他の波長域の光に比べて高い反射率で反射する。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光252は、中間集光点292で集光され、外部装置6に出力される。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0018】
EUV光生成プロセッサ5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括する。EUV光生成プロセッサ5は、ターゲットセンサ4が出力するターゲット画像PT等を処理する。また、EUV光生成プロセッサ5は、例えば、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御する。さらに、EUV光生成プロセッサ5は、例えば、レーザ装置3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御する。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0019】
2.比較例に係るEUV光生成装置
2.1 構成
図2は、比較例に係るEUV光生成装置1Aの構成を示す断面図である。図3は、図2とは異なる視点から見た場合のEUV光生成装置1Aの断面図である。図2及び図3において、EUV光の出力方向をZ方向とし、ターゲット27の出力方向と反対の方向をY方向とする。Z方向とY方向との両方に垂直な方向をX方向とする。図2はX方向に見たEUV光生成装置1Aを示す。図3はZ方向に見たEUV光生成装置1Aを示し、ターゲット生成システム260、ターゲット検出部41、及び画像計測部43の配置を示す断面図である。
【0020】
EUV光生成装置1Aは、EUV光生成プロセッサ5Aと、遅延回路72と、チャンバ2Aと、ターゲット生成システム260と、レーザ光進行方向制御部34Aと、ターゲット検出部41と、画像計測部43と、を含む。ターゲット検出部41と画像計測部43とは、図1に示すターゲットセンサ4を構成する。
【0021】
チャンバ2Aの内部には、集光ユニット22Aと、EUV集光ミラー23と、ターゲット回収部28と、EUV集光ミラーホルダ81と、プレート82及び83と、ステージ84と、接続部29とが設けられている。
【0022】
プレート82は、チャンバ2Aに固定されている。プレート82には、プレート83が支持されている。集光ユニット22Aは、レーザ光集光ミラー221及びレーザ光集光ミラー222を含む。
【0023】
ステージ84は、プレート82に対するプレート83の位置を調整可能である。プレート83の位置が調整されることにより、レーザ光集光ミラー221及びレーザ光集光ミラー222の位置が調整される。レーザ光集光ミラー221及びレーザ光集光ミラー222の位置は、これらのミラーによって反射されたパルスレーザ光33がプラズマ生成領域25で集光するように調整される。
【0024】
EUV集光ミラー23は、EUV集光ミラーホルダ81を介してプレート82に固定されている。
【0025】
レーザ装置3Aは、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)システムであってもよい。レーザ装置3Aは、パルスレーザ光31を出力するように構成されている。レーザ装置3Aは、図示せぬマスターオシレータと、図示せぬ光アイソレータと、複数台の図示せぬCOレーザ増幅器とを含んだ構成であってもよい。マスターオシレータには固体レーザを採用することができる。マスターオシレータが出力するパルスレーザ光31の波長は、例えば10.59μmであり、パルス発振の繰り返し周波数は、例えば100kHzである。
【0026】
レーザ光進行方向制御部34Aは、高反射ミラー341及び342によって反射されたパルスレーザ光31をチャンバ2Aの内部に向けて反射するようにパルスレーザ光31の光路に配置されている。
【0027】
図2及び図3に示すように、ターゲット生成システム260は、ターゲット生成プロセッサ52Aと、ターゲット供給部26Aと、不活性ガス供給部290と、ヒータ電源53と、ピエゾ電源54と、を含む。
【0028】
ターゲット生成プロセッサ52Aは、ターゲット生成システム260を制御する。ターゲット生成プロセッサ52Aは、一例として、制御プログラムが記憶された記憶装置と、制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)とを、含む処理装置である。ターゲット生成プロセッサ52Aは、各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。
【0029】
ターゲット生成プロセッサ52Aは、記憶装置としてメモリ523を備えており、メモリ523には、初期設定情報が記憶されている。初期設定情報は、不活性ガス供給部290を制御するための圧力値、ヒータ電源53を制御するための温度情報、ピエゾ電源54を制御するための駆動周波数などの各種設定情報を含む。ターゲット生成プロセッサ52Aは、初期設定情報に基づいて、ターゲット生成システム260の各部を制御する。なお、初期設定情報は、メモリ523に予め記憶されていてもよいし、EUV光生成プロセッサ5Aから入力されるようにしてもよい。また、初期設定情報は、ターゲット生成プロセッサ52Aの外部の記憶装置に記憶されていてもよい。なお、EUV光生成プロセッサ5Aについても、記憶装置とCPUとを含む処理装置で構成される点はターゲット生成プロセッサ52Aと同様である。
【0030】
ターゲット供給部26Aは、リザーバ267と、ヒータ261と、温度センサ262と、圧力調節器263と、ピエゾ素子264と、ノズル265と、フィルタ266と、を含む。
【0031】
リザーバ267は、ターゲット27の材料を貯蔵する。リザーバ267には、ターゲット27の材料を溶解するために用いるヒータ261と、リザーバ267の温度を計測する温度センサ262とが固定されている。温度センサ262から出力される出力信号は、ターゲット生成プロセッサ52Aに入力される。ターゲット生成プロセッサ52Aは、温度センサ262からの出力信号に基づいて、ヒータ電源53に駆動信号を出力する。
【0032】
ノズル265は、リザーバ267内部の溶解したターゲット27の材料を吐出するノズル孔268を備えている。ターゲット供給部26Aは、ノズル265のノズル孔268がチャンバ2Aの内部に配置されるように、チャンバ2Aに取り付けられている。フィルタ266は、ノズル265の上流側に配置されており、ターゲット27の材料に含まれる不純物を除去する。以下、ターゲット27の材料をターゲット物質と称する場合がある。
【0033】
圧力調節器263は、不活性ガス供給部290からリザーバ267内に供給される不活性ガスの圧力を調節するように、不活性ガス供給部290とリザーバ267との間の配管上に設置されている。圧力調節器263は、ターゲット生成プロセッサ52Aと接続されている。リザーバ267に圧力が加わると、ノズル265からターゲット物質が吐出される。
【0034】
ノズル265には、ノズル孔268の付近に、ピエゾ素子264が配置されている。ピエゾ素子264には、ピエゾ素子264に対して駆動電力を供給するピエゾ電源54が接続されている。ターゲット生成プロセッサ52Aは、ピエゾ電源54を介して、ピエゾ素子264に設定された駆動周波数に対応する電気信号を入力する。ピエゾ素子264は、入力された電気信号により振動する。ピエゾ素子264の振動がノズル265に伝達されて、ノズル265が振動する。ノズル265の振動数と、ピエゾ素子264の駆動周波数とは正確には異なるが、これらは正の相関を有しており、ピエゾ素子264の駆動周波数が大きいほど、ノズル265の振動数も大きくなる。
【0035】
ノズル265の振動数は、ターゲット27の生成周波数fを規定する。複数のターゲット27は、間隔を空けてプラズマ生成領域25に周期的に供給される。ターゲット27の生成周波数fとは、ターゲット供給部26Aによって生成され、プラズマ生成領域25に供給されるターゲット27の単位時間当たりの数である。ノズル265の振動数と、生成周波数fも正確には異なるが、これらも正の相関を有しており、ノズル265の振動数が大きいほど、生成周波数fも大きくなる。
【0036】
ターゲット供給部26Aは、図示しないXZステージを備えている。EUV光生成プロセッサ5Aは、XZステージの制御により、ターゲット27がプラズマ生成領域25を通るようにターゲット27の軌道270(以下、ターゲット軌道270という)を調整する。
【0037】
ターゲット検出部41は、チャンバ2Aに取り付けられている。ターゲット検出部41は、ターゲット検出領域Rを通過するターゲット27を検出するセンサである。ターゲット検出領域Rは、チャンバ2A内の所定領域であって、ターゲット供給部26Aとプラズマ生成領域25との間にあるターゲット軌道270上の所定位置に位置する。
【0038】
図3に示すように、ターゲット検出部41は、受光部41Aと発光部41Bとを含む。受光部41Aは、容器411と、光センサ412と、受光光学系413とを含む。発光部41Bは、容器415と、光源416と、照明光学系417とを含む。発光部41Bは、ターゲット検出領域Rを通過するターゲット27を照明する。光源416は、パルスレーザと異なり、レーザの出力が時間で変化せずに一定の値のまま出力されるCW(Continuous Wave)レーザである。照明光学系417は、シリンドリカルレンズを含む。光源416が出力する照明光は、照明光学系417によって集光される。照明光学系417の集光位置はターゲット軌道270上であることが好ましい。より詳細には、図3で示すように、いったん絞られた照明光は、ターゲット27を照明したことで回折して広がっていく。照明光の光束で最も絞られたビームウエストの位置がターゲット検出領域Rと重なっていることが好ましい。
【0039】
受光部41Aと発光部41Bとは、ターゲット軌道270を挟んで互いに反対側に配置されるウインドウ21aとウインドウ21bとに取り付けられている。ウインドウ21aとウインドウ21bとは、チャンバ2Aに設けられている。
【0040】
受光部41Aは、発光部41Bからの照明光を受光光学系413で集光し、光センサ412で受光する。光センサ412は例えばフォトダイオードなどの光電変換素子で構成されており、受光量に応じた信号強度の受光信号を出力する。ターゲット27がターゲット検出領域Rを通過すると、光センサ412の出力は変動する。受光部41Aは、光センサ412の出力変動に基づいて、ターゲット27の通過を知らせる通過タイミング信号T1を出力する。
【0041】
画像計測部43は、ターゲット27の進行方向においてターゲット検出部41よりも下流側に配置されている。画像計測部43は、プラズマ生成領域25付近のチャンバ2Aの壁面部に取り付けられている。画像計測部43は、プラズマ生成領域25に供給されたターゲット27を撮像し、ターゲット画像TPを出力する。画像計測部43は、光源部436と、撮像部431とを含む。光源部436と撮像部431とは、ターゲット軌道270上のプラズマ生成領域25を挟んで互いに対向配置されている。光源部436と撮像部431との対向方向は、ターゲット軌道270と直交する。
【0042】
光源部436は、プラズマ生成領域25に到達したターゲット27を撮像するためのパルス光を出力する。光源部436は、ウインドウ437と、光源438と、照明光学系439と、を含む。光源438は、例えば、キセノンフラッシュランプやレーザ光源等のパルス点灯する光源であってもよい。光源438は、EUV光生成プロセッサ5Aと接続されている。光源438には、EUV光生成プロセッサ5Aから出力された点灯信号LUが入力される。光源438は、入力される点灯信号LUに基づいてパルス光を発光する。
【0043】
照明光学系439は、例えばコリメータレンズ等を含む光学系である。コリメータレンズは、光源438が発光するパルス光を平行光化する。照明光学系439は、光源438から発光されたパルス光を、ウインドウ437を介してターゲット軌道270上のプラズマ生成領域25に導く。プラズマ生成領域25に到達したターゲット27にパルス光が照射されると、パルス光の一部が遮られ、ターゲット27の投影像が撮像部431に投影される。
【0044】
撮像部431は、ターゲット27の投影像を撮像する。撮像部431は、ウインドウ433と、イメージセンサ434と、転写光学系435と、を含む。ターゲット27の投影像を含むパルス光は、ウインドウ433を介して撮像部431内の転写光学系435に入射する。転写光学系435は、例えば複数枚のレンズを含む。転写光学系435は、ターゲット27の投影像を、イメージセンサ434の受光面に結像させる。
【0045】
イメージセンサ434は、CCD等の2次元イメージセンサである。イメージセンサ434は、受光面に結像されたターゲット27の投影像に応じた画像信号を出力する。イメージセンサ434は、シャッタ432を備えている。シャッタ432は、電気的シャッタであっても機械的シャッタであってもよい。撮像部431には、遅延回路72を介して、EUV光生成プロセッサ5Aから出力された撮像タイミング信号TS2が入力される。シャッタ432は、撮像タイミング信号TS2によって開閉が制御される。イメージセンサ434は、シャッタ432が開いている間のみ撮像する。撮像部431と光源部436の動作は、撮像タイミング信号TS2と点灯信号LUによって同期する。
【0046】
EUV光生成プロセッサ5Aは、プラズマ生成領域25に到達したターゲット27にパルスレーザ光33が照射されるように、レーザ装置3の照射タイミングを制御する。EUV光生成プロセッサ5Aは、ターゲット検出部41からの通過タイミング信号TS1を受信すると、レーザ装置3に対して照射タイミングを規定する発光トリガ信号TRを出力する。遅延回路72は、ターゲット27がターゲット検出領域Rからプラズマ生成領域25に到達するまでの遅延時間分、EUV光生成プロセッサ5Aから入力された発光トリガ信号TRを遅延させて出力する。これにより、プラズマ生成領域25に到達したターゲット27にパルスレーザ光33が照射される。
【0047】
また、EUV光生成プロセッサ5Aは、ターゲット検出部41からの通過タイミング信号TS1を受信すると、撮像部431に対して撮像タイミング信号TS2を出力する。遅延回路72は、上記の遅延時間分、EUV光生成プロセッサ5Aから入力された撮像タイミング信号TS2を遅延させて出力する。これにより、撮像部431は、ターゲット27がプラズマ生成領域25に到達したタイミングでターゲット27の投影像を撮像することができる。
【0048】
EUV光生成プロセッサ5Aは、図2に示す外部装置6からバースト信号BTを受信する。バースト信号BTは、外部装置6がEUV光生成装置1に対してEUV光の生成及び停止を要求する信号である。EUV光生成プロセッサ5Aは、バースト信号BTがオンの間、EUV光を生成し、バースト信号BTがオフの間、EUV光の生成を停止する。
【0049】
2.2 動作
図4は、EUV光生成システム11Aの動作を示すメインフローチャートである。図5は、図4に示すターゲット生成の処理を示すフローチャートである。
【0050】
図4のステップS10において、EUV光生成プロセッサ5Aは、起動指示が入力されると、EUV光生成システム11Aを起動する。EUV光生成プロセッサ5Aは、起動後、ターゲット生成プロセッサ52Aに対してターゲット生成を開始させる開始信号を出力する。
【0051】
ステップS20において、ターゲット生成プロセッサ52Aは、EUV光生成プロセッサ5Aからの開始信号が入力されると、ターゲット生成を開始する。
【0052】
ステップS30において、ターゲット生成プロセッサ52Aは、EUV光生成を開始する。具体的には、ターゲット生成プロセッサ52Aは、レーザ装置3を作動させ、ターゲット27に対するパルスレーザ光33の照射を開始させる。ターゲット27にパルスレーザ光33が照射されると、ターゲット27がプラズマ化してEUV光252が生成される。EUV光252は、外部装置6に出力される。パルスレーザ光33は、例えば、ピコ秒オーダーのパルス時間幅を有する。ピコ秒オーダーとは、1ps以上、1ns未満を意味する。パルスレーザ光33は、1ns以上、1μs未満のパルス幅を有してもよい。
【0053】
ステップS20のターゲット生成は、図5に示すフローチャートに従って行われる。まず、ステップS210において、ターゲット生成プロセッサ52Aは、初期設定が終了しているか否かを判定する。初期設定が終了していない場合(ステップS210でNO)は、ステップS220の初期設定に移行する。
【0054】
ステップS220において、ターゲット生成プロセッサ52Aは、メモリ523に記憶された初期設定情報に基づいて初期設定を行う。初期設定には、ヒータ261の温度調整、リザーバ267の圧力調整、ピエゾ素子264の駆動周波数の調整等が含まれる。
【0055】
まず、ターゲット生成プロセッサ52Aは、リザーバ267内のターゲット物質が融点以上の所定温度になるように、温度センサ262の検出値に基づいてヒータ電源53を介してヒータ261を制御する。ターゲット物質としてスズ(Sn)が用いられる場合は、所定温度は232℃から300℃である。ヒータ261が駆動されると、リザーバ267に貯蔵されたターゲット物質は融解して液状になる。
【0056】
また、初期設定において、ターゲット生成プロセッサ52Aは、ノズル孔268からターゲット物質を吐出させるために、圧力調節器263を介して、リザーバ267内の圧力を目標圧力に設定する。圧力調節器263は、ターゲット生成プロセッサ52Aからの制御信号に基づいて、リザーバ267内のガスを給排気して、リザーバ267内の圧力を目標圧力に設定する。リザーバ267内の圧力は、ノズル孔268から吐出されるターゲット物質の吐出圧力を規定し、結果的にプラズマ生成領域25に向かうドロップレット状のターゲット27の速度を規定する。目標圧力は、例えば、数MPaから40MPaの範囲の圧力である。ターゲット27の目標速度は、例えば、60m/sから120m/sの範囲の速度である。
【0057】
さらに、初期設定において、ターゲット生成プロセッサ52Aは、ピエゾ素子264の駆動周波数を設定する。上述したとおり、ピエゾ素子264の駆動周波数は、生成周波数fを規定する。ピエゾ素子264の駆動周波数は、ターゲット27が目標の生成周波数fで生成されるように調整される。ピエゾ素子264の駆動周波数の初期設定は、ターゲット供給部26Aを動作させ、プラズマ生成領域25にターゲット27を供給しながら行われる。ターゲット物質を融解させた状態でリザーバ267内に圧力を加え、かつ、ピエゾ素子264を振動させると、ノズル265が振動し、複数のターゲット27が周期的にプラズマ生成領域25に供給される。
【0058】
EUV光生成プロセッサ5Aは、画像計測部43から入力されるターゲット画像TPを解析し、プラズマ生成領域25を順次通過する複数のターゲット27の間隔から、ターゲット27の生成周期の実測値を算出する。EUV光生成プロセッサ5Aは、算出した生成周期の実測値と、生成周期の目標値との差を算出し、目標値との差をターゲット生成プロセッサ52Aに出力する。ターゲット生成プロセッサ52Aは、ターゲット27の生成周期の実測値が目標値となるように、ピエゾ素子264の駆動周波数を調整する。これにより、ターゲット27の生成周波数fが目標値に設定される。
【0059】
初期設定が終了した場合は、EUV光生成プロセッサ5Aは、ステップS230の基本動作を実行する。
【0060】
ステップS230の基本動作は、初期設定で調整された温度、圧力、及び駆動周波数で、ヒータ261、圧力調節器263、及びピエゾ素子264を駆動する動作である。基本動作では、プラズマ生成領域25に対して、目標の生成周波数fでターゲット27が供給される。
【0061】
また、ステップS210において初期設定が終了している場合(ステップS210でYES)は、ステップS220の初期設定を行わずに、ステップS230に移行する。
【0062】
2.3 課題
このような比較例に係るEUV光生成装置1Aにおいては、長期間使用した場合、ターゲット27の体積が変化する場合があった。その理由としては、ターゲット供給部26Aのノズル孔268の径の変化とフィルタ266の目詰まり等が考えられる。ノズル孔268の径の変化は、1つは、ノズル孔268を通過するターゲット物質により内壁が少しずつ浸食された場合に生じる大径化である。もう1つは、ノズル孔268の内壁にターゲット物質と他の金属との化合物膜が堆積した場合に生じる小径化である。
【0063】
図6は、ターゲット27の生成メカニズムを概念的に示す。リザーバ267の圧力によって、融解したターゲット物質はノズル265から吐出する。ノズル265から吐出直後のターゲット物質の形態は、軸方向が吐出方向に延びる柱状体である。ピエゾ素子264から加わる振動によってノズル265が振動すると、柱状体のターゲット物質が、ターゲット27よりも体積が小さいドロップレット127に分断される。複数のドロップレット127のうち、隣接するいくつかのドロップレット127同士がターゲット軌道270を進行する過程で結合し、ドロップレット127よりも体積が大きなドロップレット状のターゲット27となる。
【0064】
図6において、ノズル孔268の径をd、ターゲット軌道270方向の速度をV、ターゲット27の生成周波数をfとすると、ターゲット27の径Dは、以下の式(1)及び式(2)で算出することができる。ここで、d及びDはそれぞれ直径である。
【数1】

【数2】
【0065】
ターゲット27の速度Vは吐出圧力で規定され、ターゲット27の生成周波数fはピエゾ素子264の駆動周波数で規定される。吐出圧力及び駆動周波数が一定、すなわち、V/fが一定の場合において、ノズル孔268の径dが大きくなると、単位時間当たりのターゲット物質の吐出量が多くなるため、ターゲット27の径Dは大きくなる。また、同様にV/fが一定の場合を考えると、ノズル孔268の径dが小さくなると、単位時間当たりのターゲット物質の吐出量が少なくなるため、ターゲット27の径Dは小さくなる。径Dが大きいほど、ターゲット27の体積は大きい。さらに、ノズル孔268の径dが変化しない場合でも、フィルタ266が目詰まりすると、ターゲット物質の吐出速度が低下し、ターゲット27の体積は小さくなる。
【0066】
ターゲット27の体積が大きすぎると、パルスレーザ光33を照射した際のデブリの発生量が増加する場合がある。また、ターゲット27の体積が小さすぎると、EUV光の出力が低下する場合があり、ターゲット27の体積変化はEUV光の出力を不安定にする場合があった。
【0067】
3.第1の実施形態のEUV光生成装置
図7に示す第1の実施形態のEUV光生成装置1Bについて説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0068】
3.1 構成
第1の実施形態のEUV光生成装置1Bと比較例に係るEUV光生成装置1Aとの構成上の相違点は、ターゲット生成プロセッサ52Bのみである。機能的には、ターゲット生成プロセッサ52Bは、ターゲット27の大きさに基づいて、ターゲット27の生成周波数fを変更する機能を有する点で、比較例のターゲット生成プロセッサ52Aと相違する。こうした機能を実現するために、ターゲット生成プロセッサ52Bは、制御プログラム及び初期設定情報に改良が加えられている。
【0069】
3.2 動作
第1の実施形態のEUV光生成装置1Bの動作について説明する。EUV光生成装置1Bにおいても、EUV光生成に係るメインフローチャートは、図4に示す比較例に係るEUV光生成装置1Aのメインフローチャートと同様である。相違点は、ステップS20のターゲット生成の内容が、図5に示すフローチャートから、一例として図8に示すフローチャートに変更されている。
【0070】
図8に示す第1の実施形態のフローチャートと図5に示す比較例のフローチャートの相違点は、以下の2点である。第1の相違点は、ステップS220の初期設定が、ステップS220Bの初期設定に変更されている点である。第2の相違点は、ステップS230の基本動作が開始された後に、ターゲット27の生成周波数fの変更制御のステップが追加されている点である。
【0071】
ステップS220Bにおいて、ターゲット生成プロセッサ52Bにおいても、ヒータ261の温度、リザーバ267の圧力、及びピエゾ素子264の駆動周波数を目標値に調整する初期設定は同様に行われる。相違点は、生成周波数fの変更制御に用いる情報として、ターゲット27の径Dの許容範囲が設定される点である。メモリ523には、径Dの許容範囲の情報として、許容範囲の上限値Dmaxと下限値Dminとが記憶されている。ステップS220Bの初期設定において、ターゲット生成プロセッサ52Bは、径Dの許容範囲を読み込む。また、ステップS220Bにおいて、ターゲット生成プロセッサ52Bは、照射周波数Fと、生成周波数fとの周波数比N(=f/F)を算出する。ターゲット生成プロセッサ52Bは、ステップS220Bの初期設定が終了すると、ステップS230に移行する。
【0072】
ステップS230における基本動作は、図5に示した比較例に係る基本動作と同様である。ピエゾ素子264の駆動周波数は、初期設定が終了した直後においては、ターゲット27の生成周波数fが初期の目標値となるように調整されている。ターゲット生成プロセッサ52Bは、ステップS230の基本動作を開始した後、ステップS240以降の生成周波数fの変更制御を開始する。
【0073】
ステップS240において、ターゲット生成プロセッサ52Bは、まず、画像計測部43が計測したターゲット画像TPをEUV光生成プロセッサ5Aから取得する。そして、ターゲット画像TPからターゲット27の径D(t)を計測する。径D(t)は、複数のターゲット27について計測される。
【0074】
ステップS250において、ターゲット生成プロセッサ52Bは、複数のターゲット27の径D(t)の平均値Du(t)を算出する。
【0075】
ステップS260及びステップS270において、ターゲット生成プロセッサ52Bは、ターゲット27の径Dが許容範囲に入っているか否かを判定する。
【0076】
まず、ステップS260において、ターゲット生成プロセッサ52Bは、平均値Du(t)と許容範囲の上限値Dmaxとを比較する。そして、平均値Du(t)が上限値Dmax以下の場合(ステップS260でYES)は、ステップS270に移行し、上限値Dmaxを超えた場合(ステップS260でNO)は、ステップS261に移行する。
【0077】
また、ステップS270において、ターゲット生成プロセッサ52Bは、平均値Du(t)と許容範囲の下限値Dminとを比較する。そして、平均値Du(t)が下限値Dmin以上の場合(ステップS270でYES)は、平均値Du(t)は許容範囲内であるため、ターゲット生成プロセッサ52Bは、生成周波数fの変更をせずに、図4に示すステップS30に復帰する。一方、平均値Du(t)が下限値Dmin未満の場合(ステップS270でNO)は、ステップS271に移行する。
【0078】
ステップS261では、平均値Du(t)が許容範囲の上限値Dmaxを超えているため、平均値Du(t)が許容範囲に収まるように、生成周波数fを大きくする。一方、ステップS271では、平均値Du(t)が許容範囲の下限値Dmin未満のため、ターゲット生成プロセッサ52Bは、平均値Du(t)が許容範囲に収まるように、生成周波数fを小さくする。
【0079】
ターゲット生成プロセッサ52Bは、ステップS261及びS271において、ピエゾ素子264の駆動周波数を調整することにより、生成周波数fを変更する。ステップS220Bの初期設定において、生成周波数fが目標値になるように、ピエゾ素子264の駆動周波数が初期の目標値に調整されている。ステップS261及びステップS271における生成周波数fの変更は、ピエゾ素子264の駆動周波数の目標値を変更することにより、生成周波数fの目標値を変更することを意味する。ターゲット生成においては、生成周波数fの目標値が変更された後も、基本動作は継続される。
【0080】
また、生成周波数fは、パルスレーザ光33の照射周波数Fの自然数倍に変更される。すなわち、ステップS261において、生成周波数fを大きくする場合は、変更前の周波数比Nに1を加算し、加算した値に照射周波数Fを掛けた値を変更後の生成周波数fとする。例えば、変更前の生成周波数fの目標値が120kHzで、照射周波数Fが20kHzの場合は、変更前の周波数比Nは6となる。生成周波数fを大きくする場合は、N+1=6+1=7、f=N×F=20kHz×7=140kHzとなり、生成周波数fが120kHzから140kHzに変更される。
【0081】
一方、ステップS271において、生成周波数fを小さくする場合は、初期の周波数比Nから1を減算し、減算した値に照射周波数Fを掛けた値を、変更後の生成周波数fとする。例えば、変更前の生成周波数fの目標値が120kHz、照射周波数Fが20kHz、変更前の周波数比Nが6とする。生成周波数fを小さくする場合は、N-1=6-1=5、f=N×F=20kHz×5=100kHzとなり、生成周波数fが120kHzから100kHzに変更される。ターゲット生成プロセッサ52Bは、こうした処理を、ターゲット27の径dが許容範囲内になるまで繰り返す。
【0082】
図8に示す生成周波数fの変更制御について、図9を用いて概念的に説明する。図9は、ノズル孔268の径dの大径化が原因でターゲット27の径Dが大きくなった場合に、生成周波数fを大きくする場合の模式図である。
【0083】
図9において、時刻t1を初期状態とし、初期状態のノズル孔268の径をd(t1)とし、ターゲット27の径をD(t1)とする。f1は、生成周波数fの初期の目標値である。そして、経時により時刻t1から時刻t2に変化したときに、ノズル孔268の径dがd(t1)よりも大径化し、d(t2)に変化したとする。この場合は、ターゲット27の径Dは、D(t1)よりも大きなD(t2)に変化する。時刻t2においても、f1は変化しないため、パルスレーザ光33の照射周波数Fと生成周波数fとは初期状態と同様に同期している。そのため、パルスレーザ光33はターゲット27に照射されるが、ターゲット27の体積が大きくなっているため、時刻t1よりもデブリの発生量が増加する。
【0084】
時刻t2におけるターゲット27の径D(t2)が上限値Dmaxを超えた場合、ターゲット生成プロセッサ52Bは、図8のステップS261に示したとおり、ピエゾ素子264の駆動周波数を大きくして、生成周波数fを大きくする。変更後の生成周波数fであるf2は、変更前のf1よりも大きく、かつ、照射周波数Fの自然数倍の値である。時刻t3は、生成周波数fをf2に変更後の時刻である。生成周波数fが大きくなると、ターゲット27の径D(t3)は小さくなる。f2は照射周波数Fの自然数倍であるため、生成周波数fが変更された後も、ターゲット27にパルスレーザ光33は照射される。時刻t3のターゲット27の径D(t3)は、時刻t2の径D(t2)よりも小さくなっているため、時刻t2と比較して、時刻t3のデブリの発生量が低下する。
【0085】
図9において、生成周波数fは、時刻t1及びt2における初期状態f1と変更後の時刻t3におけるf2とがともに、照射周波数Fの自然数倍である。f1とf2のそれぞれと照射周波数Fの関係は式(3)で示される。n及びnはともに自然数である。また、ターゲット27の径Dについて、時刻t3の径D(t3)は、時刻t2の径D2(t2)との関係は式(4)で示される。
【数3】

【数4】
【0086】
図9は、生成周波数fを大きくする例であるため、nはnよりも大きい。また、時刻t3においては、時刻t1及びt2よりも生成周波数fが大きくなる分、パルスレーザ光33が照射されないターゲット27の数は多くなる。図9において、パルスレーザ光33が照射されるターゲット27を符号27Aで示し、パルスレーザ光33が照射されないターゲット27を符号27Bで示す。図9では一例として、生成周波数fがf1の場合は、2個のターゲット27Aの間に存在するターゲット27Bの数が1個であるのに対して、f2に変更後は、ターゲット27Bの数が2個に増加している。このように、生成周波数fを大きくした場合は、パルスレーザ光33が照射されないターゲット27Bの数が増加する。
【0087】
図9の例は図8のステップS261に対応し、生成周波数fを大きくする例である。ステップS261と反対にステップS271に示したように、ノズル孔268の径dの小径化が原因でターゲット27が小さくなった場合には、ターゲット27を大きくするために生成周波数fを小さくする。この場合は、上記式(3)及び式(4)において、nはnよりも小さくなり、f2はf1よりも小さくなる。
【0088】
また、図10は、図9の例とは反対に、ターゲット27の径Dが小さくなった場合に生成周波数fを小さくする場合の模式図である。さらに、図10の例は、図9の例と異なり、ターゲット27の径Dが小さくなる原因が、ノズル孔268の径dの大径化ではなく、フィルタ266の目詰まりである場合の例である。
【0089】
図10において、初期状態の時刻t1から時間が経過した時刻t2では、不純物の堆積が進み、フィルタ266の一部が閉塞されている。ノズル孔268の径dは、時刻t1及びt2で変化はなく、d(t1)である。フィルタ266が一部閉塞されると、ノズル孔268から吐出されるターゲット物質の吐出速度が低下する。これにより、ターゲット物質の単位時間当たりの吐出量が低下するため、ターゲット27の径Dが小さくなり、ターゲット27が単位時間に進む距離であるV/fも小さくなる。図10の例では、ターゲット27の速度Vは、時刻t1のV(t)から時刻t2において速度V(t)に低下している。ただし、時刻t1及び時刻t2において、生成周波数fは、f1で変化しないため、パルスレーザ光33の照射周波数Fと生成周波数fとは同期している。しかし、ターゲット27の径Dの小径化により体積が小さくなると、EUV光の出力が低下する。
【0090】
時刻t2におけるターゲット27の径D(t2)が下限値Dmin未満になった場合、ターゲット生成プロセッサ52Bは、図8のステップS271に示したとおり、ピエゾ素子264の駆動周波数を小さくして、生成周波数fを小さくする。変更後の生成周波数fであるf2は、変更前のf1よりも小さく、かつ、照射周波数Fの自然数倍の値である。時刻t3は、生成周波数fをf2に変更後の時刻である。この場合、生成周波数fが小さくなると、ターゲット27の径D(t3)は大きくなる。f2は照射周波数Fの自然数倍であるため、生成周波数fが変更された後も、ターゲット27にパルスレーザ光33は照射される。図10の例において、時刻t3のターゲット27の径D(t3)は、時刻t2の径D(t2)よりも大きくなっているため、時刻t2と比較して、時刻t3におけるEUV光の出力は増加する。図9の例とは反対に、図10の例では、上記式(3)及び式(4)において、nはnより小さくなり、f2はf1よりも小さくなる。
【0091】
3.3 作用・効果
以上説明したように、本実施形態のEUV光生成装置1Bは、ターゲット27にパルスレーザ光33を照射することにより、ターゲット27をプラズマ化してEUV光を生成するEUV光生成装置であって、チャンバ2Aと、ターゲット27をチャンバ2A内のプラズマ生成領域25に供給するターゲット供給部26Aと、ターゲット27に照射するパルスレーザ光33を生成するレーザ装置3Aと、ターゲット27の大きさに基づいて、ターゲット供給部26Aによって生成されるターゲット27の生成周波数fを、パルスレーザ光33の照射周波数Fの自然数倍に変更するターゲット生成プロセッサ52Bと、を備える。ここで、ターゲット27の径Dは、本開示のターゲットの大きさの一例であり、ターゲット生成プロセッサ52Bは、本開示のプロセッサの一例である。
【0092】
このような本実施形態のEUV光生成装置1Bによれば、ノズル孔268の径dの変化又はフィルタ266の目詰まり等の原因でターゲット27の体積が変化した場合でも、生成周波数fを変更することにより、次の効果が得られる。すなわち、デブリの発生量の増加を抑制する効果、及びEUV光の出力の低下を抑制する効果である。
【0093】
また、第1の実施形態においては、ターゲット27を撮像し、ターゲット画像TPを出力する画像計測部43をさらに備え、ターゲット生成プロセッサ52Bは、ターゲット画像TPからターゲット27の大きさを計測する。ターゲット画像TPからターゲット27の大きさを直接的に計測するため、ターゲット画像TPを用いない場合と比較して、ターゲット27の大きさが許容範囲内か否かの判定精度を高くできる場合がある。
【0094】
また、第1の実施形態において、ターゲット27の大きさの許容範囲が予め設定されており、ターゲット生成プロセッサ52Bは、ターゲット27の大きさが許容範囲の上限値Dmaxを超えた場合に、生成周波数fを大きくし、かつ、ターゲット27の大きさが許容範囲の下限値Dmin未満の場合に、生成周波数fを小さくする。許容範囲を設定することで、許容範囲内については生成周波数fの変更をしないため、例えば許容範囲の代わりに1つの閾値に合わせる制御と比較して、制御の負荷を抑制することができる。
【0095】
また、第1の実施形態において、ターゲット生成プロセッサ52Bは、計測した複数のターゲット27の大きさの一例である径Dの平均値Duと上限値Dmax及び下限値Dminとを比較する。これにより、計測値に変動があっても、比較的安定した制御が可能になる。ここで、平均値Duは、本開示の代表値の一例である。代表値としては、平均値Duの他に、複数の計測値の中央値を使用してもよい。
【0096】
また、ターゲット27の大きさとして、ターゲット27の径Dを用いているが、ターゲット27の体積でもよい。この場合は、例えば、撮像方向が異なる複数の画像計測部43を設ける。そして、各画像計測部43が撮像したターゲット画像TPのそれぞれから径Dを計測し、計測した複数の径Dから計算によりターゲット27の体積を求める。また、ターゲット回収部28にターゲット27の衝突時の圧力を計測する圧力センサを設け、圧力センサが計測した圧力値からターゲット27の体積を計算により求めてもよい。圧力値から体積を計算する方法は、例えば、圧力値からターゲット27の質量を計算し、質量とターゲット物質の密度から体積を求める。
【0097】
4.第2の実施形態のEUV光生成装置
次に、第2の実施形態のEUV光生成装置について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0098】
4.1 構成
第2の実施形態に係るEUV光生成装置の基本的な構成は、第1の実施形態に係るEUV光生成装置1Bとほぼ同様であるため、全体構成の説明を省略する。第2の実施形態に係るEUV光生成装置と第1の実施形態に係るEUV光生成装置1Bとの構成上の相違点は、図11に示すターゲット生成プロセッサ52Cのみである。ターゲット生成プロセッサ52Cは、ターゲット27の大きさに基づいて、ターゲット27の生成周波数fを変更する機能を有する点で、第1の実施形態に係るEUV光生成装置1Bと共通するが、その実現方法が異なる。この実現方法の変更に応じて、ターゲット生成プロセッサ52Cは、制御プログラム及び初期設定情報に改良が加えられている。
【0099】
すなわち、第2の実施形態のターゲット生成プロセッサ52Cは、ターゲット27の大きさそのものではなく、ターゲット27の大きさに関連する関連情報に基づいて、ターゲット27の生成周波数fを変更する。より具体的には、第2の実施形態においては、関連情報は、予め設定された時点からの経過時間tであり、ターゲット生成プロセッサ52Cは、経過時間tに基づいて、生成周波数fを変更する。第1実施形態で示したように、ノズル孔268の径dは時の経過によって変化し、フィルタ266も時の経過によって目詰まりが進む。そのため、経過時間tは、ターゲット27の大きさに関連する関連情報と言える。
【0100】
図11に示すように、ターゲット生成プロセッサ52Cは、タイマ522を有している。タイマー522は、予め設定された時点からの経過時間tを計測する経過時間計測部の一例である。本例では、経過時間tとして、ターゲット供給部26Aの動作時間の累積値を用いる。ターゲット生成プロセッサ52Cは、ターゲット供給部26Aの動作時間をタイマー522に計測させ、計測値に基づいてメモリ523の経過時間tを更新する。
【0101】
また、メモリ523には、初期設定情報及び経過時間tに加えて、参照テーブル524が記憶されている。図12に示すように、参照テーブル524は、経過時間tと比較される複数の参照時間RXと、複数の参照時間RXのそれぞれに対応して設定される複数の生成周波数fとの対応関係を記録したものである。なお、本例では、ターゲット生成プロセッサ52Cの内部の記憶装置であるメモリ523が対応関係を記憶しているが、ターゲット生成プロセッサ52Cの外部の記憶装置が対応関係を記憶してもよい。
【0102】
例えば、参照テーブル524は、図13に示すように、経過時間tが大きくなるほど、ノズル孔268の径dが大きくなるという関係を前提として作成される。図13に示す関係を前提とする場合は、経過時間tが大きくなるほど、ターゲット27の径Dは大きくなるため、径Dを小さくするために、生成周波数fは大きくする必要がある。そのため、参照テーブル524において、参照時間RXが大きくなるほど、生成周波数fは大きくなる。参照時間RXと生成周波数fは1対1で対応している。参照番号RNは、参照時間RXと生成周波数fとの組み合わせ毎に割り当てられる番号である。
【0103】
参照テーブル524は、例えば、経過時間tに応じたターゲット27の大きさの変化を実測し、実測値に基づいて、経過時間tに応じて適切な生成周波数fを割り当てることにより作成される。
【0104】
4.2 動作
次に、図14に示すフローチャートを用いて、第2の実施形態のEUV光生成装置の動作について説明する。
【0105】
第2の実施形態に係るEUV光生成装置においても、EUV光生成に係るメインフローチャートは、図4に示す比較例に係るEUV光生成装置1Aのメインフローチャートと同様である。相違点は、ステップS20のターゲット生成の内容が、図5に示すフローチャートから、一例として図14に示すフローチャートに変更されている。
【0106】
図14に示す第2の実施形態のフローチャートと図8に示す第1の実施形態のフローチャートの相違点は、以下の2点である。第1の相違点は、ステップS220Bの初期設定が、ステップS220Cに変更されている点である。第2の相違点は、ステップS30以降のターゲット27の生成周波数fの変更制御が異なる点である。
【0107】
ステップS220Cの初期設定において、ターゲット生成プロセッサ52Cにおいても、ヒータ261の温度、リザーバ267の圧力、及びピエゾ素子264の駆動周波数を目標値に調整する初期設定は第1実施形態と同様に行われる。相違点は、ターゲット生成プロセッサ52Cは、許容範囲の代わりに、参照テーブル524を読み出す。ターゲット生成プロセッサ52Cは、ステップS220Cの初期設定が終了すると、ステップS230に移行する。
【0108】
ステップS230における基本動作は、第1実施形態と同様である。ターゲット生成プロセッサ52Cは、ステップS230の基本動作を開始した後、ステップS310に移行する。
【0109】
ステップS310において、ターゲット生成プロセッサ52Cは、参照テーブル524の参照番号RNkを選択する。経過時間tは動作時間の累積値である。そのため、ターゲット生成プロセッサ52Cは、EUV光生成装置が停止された場合には、停止時の参照番号RNkのkの値をメモリ523に記憶する。ターゲット生成プロセッサ52Cは、EUV光生成装置を再起動した場合は、ステップS210でNOに進み、ステップS220C及びステップS230を経て、ステップS310に移行する。ステップS310において、ターゲット生成プロセッサ52Cは、前回の停止時にメモリ523に記憶したkの値を読み出し、そのkの値に対応する参照番号RNkを選択する。そして、参照番号RNkに対応する参照時間RTkと生成周波数fkの組み合わせを読み出す。
【0110】
ステップS320において、ターゲット生成プロセッサ52Cは、タイマー522を作動させ、経過時間tの計測を開始する。ステップS320の後、ターゲット生成プロセッサ52Cは、ステップS330以降の生成周波数fの変更制御を開始する。
【0111】
ステップS330において、ターゲット生成プロセッサ52Cは、経過時間tと選択された参照番号RNkに対応する参照時間RXkとを比較する。経過時間tが参照時間RXkに達しない場合は、生成周波数fを変更せずに、図4に示すステップS30に復帰する。経過時間tが参照時間RXkに達した場合(S330でYES)は、ターゲット生成プロセッサ52Cは、ステップS340に移行する。
【0112】
ステップS340において、ターゲット生成プロセッサ52Cは、参照時間RXkに応じた生成周波数fkに生成周波数fを変更する。生成周波数fを変更した場合は、ステップS350に移行する。
【0113】
ステップS350において、ターゲット生成プロセッサ52Cは、kの値に1を加算することにより、参照番号RNkを更新する。ターゲット生成プロセッサ52Cは、ステップS350の後、ステップS210に復帰する。そして、ターゲット生成プロセッサ52Cは、ステップS210において、初期設定が終了している場合(ステップS210でYES)は、ステップS330に移行する。ターゲット生成プロセッサ52Cは、以上の処理をEUV光生成装置が停止するまで繰り返す。
【0114】
4.3 作用・効果
以上説明したように、第1の実施形態では、画像データに基づくターゲット27の大きさに基づいて生成周波数fを変更したが、第2の実施形態では、ターゲット27の大きさを計測せず、予め設定された時点からの経過時間tに基づいて、生成周波数fを変更する。第2の実施形態においても、デブリの発生量の増加を抑制する効果、及びEUV光の出力を安定化させる効果については、第1実施形態と同様である。
【0115】
また、第2の実施形態においては、経過時間tとして、ターゲット供給部26Aの動作時間の累積値を使用している。上述したとおり、ターゲット27の径Dが変化する原因は、ノズル孔268の径dの変化とフィルタ266の目詰まりとが考えられる。これらはいずれもターゲット供給部26Aの動作時間との相関が高いと考えられる。そのため、経過時間tとして、ターゲット供給部26Aの動作時間の累積値を使用することで、動作時間の累積値を使用しない場合に比べて、適切な生成周波数fの変更制御が可能になると考えられる。
【0116】
なお、経過時間tとしては、ターゲット供給部26Aが停止している停止期間を含めてもよい。ターゲット供給部26Aが停止していても、ノズル孔268の径dの変化又はフィルタ266の目詰まり等が進行する場合がある。経過時間tに停止期間を含めることは、こうした場合に有効である。
【0117】
また、第2の実施形態においては、ターゲット生成プロセッサ52Cは、経過時間tが長くなるにつれて、生成周波数fを大きくする。そのため、生成周波数fを増減させる場合と比べて、生成周波数fの変更制御を簡素化できる場合がある。もちろん、ターゲット27の大きさが変化する原因として、フィルタ266の目詰まりが支配的である場合は、経過時間tが長くなるにつれて、生成周波数fを小さくしてもよい。
【0118】
また、第2の実施形態においては、経過時間tと比較される複数の参照時間RXと、複数の参照時間RXのそれぞれに対応して設定される複数の生成周波数fとの対応関係を記録した参照テーブル524を用いる。そして、第2の実施形態においては、ターゲット生成プロセッサ52Cは、参照テーブル524を予め記憶したメモリ523を備えており、参照テーブル524を参照して、経過時間tに応じた生成周波数fに変更する。このように、参照テーブル524のような対応関係を用いることにより、経過時間tと生成周波数fの関係を数式で規定する場合と比べて、より柔軟な対応がしやすい場合がある。例えば、ノズル孔268の径dの経時変化とフィルタ266の目詰まりの経時変化等の複合的な要因によってターゲット27の径Dが変化する場合には、経過時間tと生成周波数fとの関係が複雑になる場合もあり得る。このような場合に対応関係を記録した参照テーブル524等を用いる方法は有効である。また、参照テーブル524の方が、数式と比較して、修正及び更新等のメインテナンスがしやすい場合もある。
【0119】
5.第3の実施形態のEUV光生成装置
次に、図15から図19を用いて、第3の実施形態のEUV光生成装置について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0120】
5.1 構成
第3の実施形態に係るEUV光生成装置の構成は、第1の実施形態に係るEUV光生成装置1Bと比較して、図15に示すようにリフィル機構91Aを備える点で異なる。また、第3の実施形態は、ターゲット27の径Dに基づいて、生成周波数fを変更する点では第1の実施形態と同様であるが、ターゲット27の径Dの計測方法が異なる。第1の実施形態ではターゲット画像TPからターゲット27の径Dを計測している。これに対して、第3の実施形態では、リフィル機構91Aの補給量から計算でターゲット27の径Dを算出している。いわば、第1実施形態が直接的にターゲット27を計測しているのに対して、第3の実施形態は、補給量に基づいて、ターゲット27の径Dを間接的に計測している。以下、相違点を中心説明する。
【0121】
図15に示すように、リフィル機構91Aは、ターゲット供給部26Dのリザーバ267にターゲット物質を補給する機構である。リフィル機構91Aは、タンク97Aと、計量部96Aと、配管98Aと、ロードロック室92Aと、液面センサ73Aとを備えている。タンク97Aは、ターゲット27の材料として、固体のターゲット物質である固体スズを収容する。固体スズは例えば球状である。計量部96Aは、タンク97Aから配管98Aに供給される固体スズの質量を計測する。計量部96Aは、例えば、補給される固体スズの個数をカウントする。1個当たりの固体スズの質量が分かっているため、質量と供給される個数とに基づいて供給される固体スズの質量を算出することができる。
【0122】
ロードロック室92Aは、固体スズの供給方向において計量部96Aの下流側に設けられる。ロードロック室92Aは、開閉可能な供給口を介してリザーバ267と接続されており、計量部96Aから移送される固体スズを一旦保留する。ロードロック室92Aは、室内とタンク97Aとを同一圧力にした状態で供給口を開き、固体スズをリザーバ267内に補給する。
【0123】
液面センサ73Aは、リザーバ267内において液状のターゲット物質の液面を検知する。本例の液面センサ73Aは、棒状をしており、長手方向の一か所に液面を検知する検知領域を有している。液面センサ73Aは、ターゲット物質の液面の位置が検知領域に達しているか、検知領域に達していないかを検知する。液面センサ73Aは、例えば、液面の位置が検知領域に達している場合にターゲット生成プロセッサ52Dに検知信号を出力し、検知領域に達していない場合は検知信号を出力しない。液面センサ73Aは、検知領域が、リザーバ267内においてターゲット物質が目標値まで充填されている状態の液面の高さに位置するように設けられている。そのため、リザーバ267内においてターゲット物質の液面位置が目標の液面の高さを超えている状態では、液面センサ73Aからターゲット生成プロセッサ52Dに対して検知信号が出力されるが、ターゲット物質が目標の液面の高さ未満になった場合は、液面センサ73Aからターゲット生成プロセッサ52Dに対して検知信号が出力されない。ターゲット生成プロセッサ52Dは検知信号を受信している状態では、ターゲット物質の充填は不要と判定し、検知信号を受信しない状態では、ターゲット物質の充填が必要と判定する。
【0124】
ノズル265からターゲット物質が吐出されると、リザーバ267内の液面は下降する。そして、ターゲット生成プロセッサ52Dは、液面センサ73Aからの検知信号を受信しない状態になると、リフィル機構91Aを作動させ、再び検知信号を受信するまで固体スズをリザーバ267に補給する。すなわち、ターゲット生成プロセッサ52Dは、リザーバ267内のターゲット物質の液面が目標の液面位置以上に保たれるように、リフィル機構91Aに固体スズを補給させる。
【0125】
リザーバ267からのターゲット物質の吐出量をQout、リフィル機構91Aからリザーバ267への補給量をQinとする。補給量Qinは、補給時にリザーバ267へ供給される固体スズの質量である。QinとQoutがほぼ等しいとすると、リフィル機構91Aの補給量Qinとターゲット27の径Dについて、下記の式(5)及び(6)で示される関係が成立する。そのため、Qinが分かれば、式(5)及び(6)に基づいて、ターゲット生成プロセッサ52Dは、ターゲット27の径Dを算出することができる。
【数5】

【数6】
【0126】
また、図16は、リフィル機構91Aがリザーバ267に補給する固体スズの総質量Mの時間変化の一例を示すグラフである。単位時間当たりの補給量Qinの質量をΔMとすると、図16において時の経過によってΔM1よりもΔM2が大きくなっている。図16においてΔt1及びΔt2は同じ時間である。図16は、ノズル孔268の径d又はターゲット物質の吐出速度が変化した場合に、吐出量Qoutが変化し、それに伴って補給量Qinが変化する例を示している。また、単位時間Δt当たりの補給量Qinの質量ΔM、リザーバ267のターゲット物質の材料である液体のスズの密度をρとすると、下記の式(7)によって、補給量Qinを算出することができる。
【数7】
【0127】
5.2 動作
次に、図17に示すフローチャートを参照しながら、第3の実施形態のEUV光生成装置の動作について説明する。図17に示すフローチャートと、図8に示す第1の実施形態のフローチャートとの相違点は、ステップS540とステップS550のみである。その他は同一であるため、相違点について説明する。
【0128】
ステップS540において、ターゲット生成プロセッサ52Dは、計量部96Aによって単位時間Δt当たりの質量ΔMを計測し、式(7)に基づいてΔMから補給量Qinを算出する。ステップS540の後、ステップS550に移行する。
【0129】
ステップS550において、ターゲット生成プロセッサ52Dは、式(6)に基づいて補給量Qinから、時刻tにおけるターゲット27の径D(t)を算出する。ステップS250以降は、第1の実施形態と同様であり、ターゲット生成プロセッサ52Dは、ターゲット27の径D(t)に基づいて、生成周波数fを変更する。
【0130】
(第3の実施形態の変形例)
図18及び図19は、第3の実施形態の変形例である。図15から図17に示す例では、補給量Qinからターゲット27の径Dを算出したが、図18及び図19に示す変形例では、補給間隔からターゲット27の径Dを算出する。
【0131】
図18に示すように、変形例のリフィル機構91Bは、タンク97Bと、ヒータ281と、配管98Bと、バルブ92Bと、液面センサ73Bとを備えている。タンク97Bはヒータ281によって加熱することが可能であり、タンク97B内にはターゲット物質が収容されている。ターゲット物質は例えば、液体スズである。タンク97Bは配管98Bを介してリザーバ267と接続されている。配管98Bの途中には補給の開始と停止をするためのバルブ92Bが設けられている。
【0132】
リザーバ267内のターゲット物質も液体スズであり、液面センサ73Bは、リザーバ267内の液体スズの液面を検知する。液面センサ73Bは、液面を検知する検知領域を一か所のみ有している点では図15で示した液面センサ73Aと同様である。しかし、図15で示した液面センサ73Aと異なり、液面センサ73Bは、検知領域が、予め設定された液体スズの液面の下限値の高さに位置するように配置されている。液面センサ73Bは、液体スズの液面が下限値以上の高さにある状態では検知信号を出力し、液体スズの液面が下限値未満の状態では検知信号を出力しない。リフィル機構91Bは、液面センサ73Bからの検知信号を受信しない状態になると、リザーバ267内の液体スズの液面が下限値未満になったと判定する。リフィル機構91Bは、液面が下限値未満になった場合は、予め設定された量のターゲット物質を補給する。リフィル機構91Bの1回の補給量Qinは一定である。
【0133】
図19に示すように、変形例においてはノズル孔268の径d等が変化しても、1回の補給量Qinに相当する液体スズの質量mは一定であるが、補給間隔tdが変化する。図19に示す例は、ノズル孔268の径dが大径化することにより、補給間隔tdがtd1からtd2に短くなった例を示す。
【0134】
変形例の場合は、1回の補給量Qinに相当する液体スズの体積は、質量mを密度ρで除算することで算出することができる。変形例の補給量Qinは、算出したm/ρの値をさらに補給間隔tdで除算することにより算出される。この補給量Qinを、上記式(6)のQinに適用すれば、ターゲット27の径Dを算出することができる。変形例は、他の点については図17のフローチャートと同様である。
【0135】
5.3 作用・効果
以上説明したように、第3の実施形態のEUV光生成装置は、ターゲット供給部26D又は26Eを一例として示すターゲット供給部にターゲット27の材料を補給するリフィル機構91A又は91Bをさらに備え、ターゲット生成プロセッサ52Dは、リフィル機構91Aの補給量Qin又はリフィル機構91Bの補給間隔tdに基づいて、生成周波数fを変更する。第3の実施形態は、例えば、第1の実施形態のようにターゲット画像TPを取得できない場合に有効である。
【0136】
また、補給量Qinは、リフィル機構91Aの単位時間当たりの補給量Qinであり、補給間隔tdは、リフィル機構91Bの1回当たりの補給量Qinが固定されている場合の補給間隔tdである。ターゲット生成プロセッサ52Dは、補給量Qin又は補給間隔tdに基づいて、ターゲット27の大きさを算出する。第3の実施形態は、補給量Qin又は補給間隔tdをターゲット27の大きさに換算することで、第1の実施形態の共通部分を流用することができる。
【0137】
また、第3の実施形態は、ターゲット27の大きさの許容範囲を用いているため、第1の実施形態において許容範囲を用いる例と同様の効果がある。
【0138】
また、第3の実施形態において、補給量Qin又は補給間隔tdからターゲット27の大きさを計測しているが、ターゲット27の大きさを計測しなくてもよい。例えば、第2の実施形態のように、補給量Qinと生成周波数fとの対応関係を記録した参照テーブルを用い、参照テーブルによって生成周波数fの変更制御を行ってもよい。補給量Qin又は補給間隔tdは、ターゲット27の大きさと相関関係を有する。そのため、補給量Qin又は補給間隔tdは、本開示の「ターゲットの大きさに関連する関連情報」の一例でもある。
【0139】
6.第4の実施形態のEUV光生成装置
次に、第4の実施形態のEUV光生成装置について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0140】
6.1 構成
第4の実施形態に係るEUV光生成装置の構成は、第1の実施形態に係るEUV光生成装置1Bと同様であるため、説明を省略する。第4の実施形態に係るEUV光生成装置は、ターゲット供給部26Aからプラズマ生成領域25に向かうターゲット27を光学的に検出し、通過するターゲット27の大きさに応じた信号強度を有する通過タイミング信号を出力するターゲット検出部41を備える。なお、第4の実施形態に係るEUV光生成装置は全体構成図を省略しているため、第4の実施形態のターゲット生成プロセッサについては、便宜上、第1の実施形態と同じ符号を付して、ターゲット生成プロセッサ52Bとして説明する。以下に示すように、第4の実施形態のターゲット生成プロセッサ52Bは、生成周波数fの変更制御の内容が第1の実施形態のターゲット生成プロセッサ52Bとは異なる。第4の実施形態のターゲット生成プロセッサ52Bは、信号強度に基づいて、生成周波数fを変更する。ターゲット検出部41が出力する通過タイミング信号の信号強度に基づいて、ターゲット27の生成周波数fを変更する点で、第1の実施形態に係るEUV光生成装置1Bと異なる。
【0141】
図20から図22を用いて第4の実施形態を説明する。図20は、ターゲット27がターゲット検出部41を通過する様子を模式的に示した図である。第1の実施形態で説明したとおり、ターゲット検出部41の光センサ412は、受光量に応じた信号強度の受光信号を出力する。ターゲット27がターゲット検出領域Rを通過すると、ターゲット27は、発光部41Bから受光部41Aに向かう照明光を遮るため、光センサ412の出力である受光信号の信号強度が変化する。ターゲット検出部41は、ターゲット27が通過する場合の信号強度の変化に基づいてターゲット27を検出する。
【0142】
図21は、ターゲット27がターゲット検出領域Rを通過する場合において、光センサ412が出力する受光信号の信号強度Iの経時的な変化を示すグラフである。図21において、信号強度Iは、ターゲット27が通過していない場合に光センサ412が出力する信号強度であり、信号強度Iがベースラインとなる。ターゲット27が通過していない場合はターゲット27によって照明光が遮られないため、ベースラインの信号強度Iは、信号強度Iの最大値を示す。ターゲット検出領域Rをターゲット27が通過すると、ターゲット27によって照明光の一部が遮られるため、信号強度Iが低下する。そして、ターゲット27の大きさが大きいほど、信号強度Iは低下し、ベースラインである信号強度Iからの変化量ΔIは大きくなる。一方、ターゲット27の大きさが小さいほど、信号強度Iの低下は小さく、ベースラインである信号強度Iからの変化量ΔIは小さい。
【0143】
このようにターゲット27の大きさと変化量ΔIの大きさには相関があるため、変化量ΔIは、本開示の「ターゲットの大きさと関連する関連情報」の一例である。第4の実施形態では、ターゲット生成プロセッサ52Bは、信号強度Iに基づいて、生成周波数fを変更する。具体的には、本例では、信号強度Iベースラインからの変化量ΔIを算出し、変化量ΔIに基づいて、生成周波数fを変更する。
【0144】
第4の実施形態では、変化量ΔIの許容範囲がターゲット生成プロセッサ52Bのメモリ523に設定されている。図21に示すように、変化量ΔIの許容範囲の下限値はΔIminであり、上限値はΔImaxである。
【0145】
6.2 動作
次に、第4の実施形態のEUV光生成装置の動作について説明する。具体的には、図22を用いて、第4の実施形態に係るターゲット生成プロセッサ52Bの動作について説明する。
【0146】
図22は、第4の実施形態のフローチャートである。ステップS210及びステップS230については、第1の実施形態と同様である。第4の実施形態では、ステップS220Eの初期設定において、変化量ΔIの許容範囲として、上限値ΔImax及び下限値ΔIminが読み出される。
【0147】
ステップS230が終了すると、ターゲット生成プロセッサ52Bは、ステップS650以降の生成周波数fの変更制御を実行する。ステップS650において、ターゲット生成プロセッサ52Bは、ターゲット27毎の通過タイミング信号を取得して、ベースラインからの信号強度Iの変化量ΔIを算出する。算出された変化量ΔIはメモリ523に記憶される。
【0148】
ステップS660において、ターゲット生成プロセッサ52Bは、複数のターゲット27についての複数の変化量ΔIの平均値ΔIμを算出する。
【0149】
ステップS670において、ターゲット生成プロセッサ52Bは、平均値ΔIμと上限値ΔImaxとを比較する。平均値ΔIμが上限値を超えた場合(ステップS670でNO)は、ターゲット27が大きすぎると考えられる。この場合は、ターゲット生成プロセッサ52Bは、生成周波数fを大きくする。これにより、ターゲット27の大きさを小さくすることができる。ステップS670において、平均値ΔIμが上限値以下の場合(ステップS670でYES)は、ステップS680に移行する。
【0150】
ステップS680において、ターゲット生成プロセッサ52Bは、平均値ΔIμと下限値ΔIminとを比較する。平均値ΔIμが下限値未満の場合(ステップS680でNO)は、ターゲット27が小さすぎると考えられる。この場合は、ターゲット生成プロセッサ52Bは、生成周波数fを小さくする。これにより、ターゲット27の大きさを大きくすることができる。ステップS680において、平均値ΔIμが下限値以上の場合(ステップS680でYES)は、生成周波数fを変更せずに、ステップS680に移行する。
【0151】
6.3 作用・効果
以上説明したように、第4の実施形態のEUV光生成装置は、通過タイミング信号を検出するターゲット検出部41を備えており、ターゲット27の通過タイミング信号の信号強度Iに基づいて、生成周波数fを変更するターゲット生成プロセッサ52B、を備える。このため、第4の実施形態は、ターゲット画像TPからターゲット27の大きさを計測できない場合に有効である。
【0152】
第4の実施形態は、図22に示すように許容範囲を用いている。そのため、第1の実施形態と同様に許容範囲を用いる効果が得られる。また、第4の実施形態は、複数の信号強度Iの変化量ΔIの代表値を許容範囲の上限値Imax又は下限値Iminと比較する。これについても第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0153】
なお、第4の実施形態では、関連情報として信号強度Iの変化量ΔIを用い、変化量ΔIに基づいて、生成周波数fを変更する例で説明したが、信号強度I又は変化量ΔIと生成周波数fとの対応関係を記録した参照テーブルを用いて生成周波数fを変更してもよい。
【0154】
7.第5の実施形態のEUV光生成装置
次に、第5の実施形態のEUV光生成装置1Fについて説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
7.1 構成
図23は、第5の実施形態に係るEUV光生成装置1Fの構成を概略的に示す図である。第5の実施形態に係るEUV光生成装置1Fは、第1の実施形態に係るEUV光生成装置1Bのレーザ装置3A及びレーザ光進行方向制御部34Aの代わりに、レーザ装置3F及びレーザ光進行方向制御部34Fを備える点で異なる。
【0155】
レーザ装置3Fは、プリパルスレーザ3Pと、メインパルスレーザ3Mとを含む。プリパルスレーザ3Pは、プリパルスレーザ光31Pを出力するように構成されている。メインパルスレーザ3Mは、メインパルスレーザ光31Mを出力するように構成されている。プリパルスレーザ3Pは、例えば、YAGレーザ装置、あるいは、Nd:YVO4を用いたレーザ装置で構成される。メインパルスレーザ3Mは、例えば、CO2レーザ装置で構成される。メインパルスレーザ3Mは、YAGレーザ装置、あるいは、Nd:YVO4を用いたレーザ装置で構成されてもよい。
【0156】
レーザ光進行方向制御部34Fは、高反射ミラー343、344、及び345と、コンバイナ346とを含む。高反射ミラー343及び344は、メインパルスレーザ光31Mの光路に配置されている。高反射ミラー345は、プリパルスレーザ光31Pの光路に配置されている。
【0157】
コンバイナ346は、高反射ミラー345によって反射されたプリパルスレーザ光31Pと、高反射ミラー344によって反射されたメインパルスレーザ光31Mと、の光路に配置されている。コンバイナ346は、プリパルスレーザ光31Pを高い反射率で反射し、メインパルスレーザ光31Mを高い透過率で透過させるように構成されている。高反射ミラー344とコンバイナ346とは、メインパルスレーザ光31M及びプリパルスレーザ光31Pをチャンバ2Aの内部に向けて反射するように構成されている。コンバイナ346は、プリパルスレーザ光31P及びメインパルスレーザ光31Mの光路軸をほぼ一致させるように構成されている。
【0158】
第5の実施形態は、第1の実施形態と同様の画像計測部43を備えている。図24は、画像計測部43がミスト状ターゲットを検出する様子を模式的に示す図である。画像計測部43は、第1の実施形態のドロップレット状のターゲット27の代わりに、ターゲットとしてプリパルスレーザ光31Pに照射されて拡散状態となったミスト状のターゲット27Aを撮像する。ターゲット生成プロセッサ52Bは、画像計測部43から出力されたターゲット画像TPを用い、ターゲット画像TPからミスト状のターゲット27Aの大きさを計測する。その他の点は第1の実施形態と同様である。
【0159】
7.2 動作
次に、第5の実施形態に係るEUV光生成装置1Fの動作は、第1の実施形態とほぼ同様である。相違点は、第1の実施形態がドロップレット状のターゲット27の径Dに基づいて、生成周波数fを変更するのに対して、第5の実施形態はミスト状のターゲット27Aの径Dに基づいて生成周波数fを変更する。
【0160】
7.3 作用・効果
第5の実施形態に係るEUV光生成装置1Fも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第5の実施形態と、第2の実施形態から第4の実施形態とを組み合わせてもよい。
【0161】
8.その他
図25は、EUV光生成装置1Bに接続された露光装置6Aの構成を概略的に示す。図24において、外部装置6としての露光装置6Aは、マスク照射部68とワークピース照射部69とを含む。マスク照射部68は、EUV光生成装置1Bから入射したEUV光によって、反射光学系を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部69は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光を、反射光学系を介してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置6Aは、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスを製造できる。
【0162】
図26は、EUV光生成装置1Bに接続された検査装置6Bの構成を概略的に示す。図26において、外部装置6としての検査装置6Bは、照明光学系63と検出光学系66とを含む。EUV光生成装置1BはEUV光を検査用光源として検査装置6Bに出力する。照明光学系63は、EUV光生成装置1Bから入射したEUV光を反射して、マスクステージ64に配置されたマスク65を照射する。ここでいうマスク65はパターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系66は、照明されたマスク65からのEUV光を反射して検出器67の受光面に結像させる。EUV光を受光した検出器67はマスク65の画像を取得する。検出器67は例えばTDI(time delay integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク65の画像により、マスク65の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置6Aを用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造できる。
【0163】
なお、検査装置6Bにおいて、上述のEUV集光ミラー23は、斜入射型であってもよい。また、図25及び図26において、EUV光生成装置1Bの代わりに、第2~5の実施形態のEUV光生成装置の何れかが用いられてもよい。
【0164】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の各実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0165】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきであり、さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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