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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007180
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 50/01 20230101AFI20230111BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20230111BHJP
   H01F 41/20 20060101ALI20230111BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01L43/12
H01L43/08 Z
H01F41/20
C23C14/08 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110267
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】北田 亨
(72)【発明者】
【氏名】五味 淳
(72)【発明者】
【氏名】中村 貫人
【テーマコード(参考)】
4K029
5E049
5F092
【Fターム(参考)】
4K029AA24
4K029BA43
4K029BA53
4K029BB02
4K029BC06
4K029GA01
4K029KA01
4K029KA09
5E049HC01
5F092AA11
5F092AB06
5F092AC12
5F092BB10
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB36
5F092BB43
5F092BB53
5F092BC04
5F092BC07
5F092BC12
5F092BC13
5F092BC19
5F092BC22
5F092BE01
5F092CA23
5F092CA26
5F092GA05
(57)【要約】
【課題】磁気トンネル接合素子の特性を向上する成膜装置及び成膜方法を提供することができる。
【解決手段】基板に積層構造を形成して磁気トンネル接合素子を形成する成膜装置であって、前記基板上に磁性層及び絶縁層を形成する複数の処理室と、前記基板に磁場を印加して加熱処理をする加熱処理室と、前記成膜処理室及び前記加熱処理室を接続する真空搬送室と、制御部と、を備える、成膜装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に積層構造を形成して磁気トンネル接合素子を形成する成膜装置であって、
前記基板に磁性層及び絶縁層を形成する複数の処理室と、
前記基板に磁場を印加して加熱処理をする加熱処理室と、
前記処理室及び前記加熱処理室を接続する真空搬送室と、
制御部と、を備える、
成膜装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記基板に第1の磁性層を形成し、前記第1の磁性層の上に絶縁層を形成する工程と、
前記第1の磁性層及び前記絶縁層が形成された前記基板に磁場を印加して加熱処理をする工程と、
前記絶縁層の上に第2の磁性層を形成する工程と、を実行する、
請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記基板に磁場を印加して加熱処理をする工程は、
前記第1の磁性層及び前記絶縁層を結晶化する、
請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記基板に磁場を印加して加熱処理をする工程は、
前記第1の磁性層の磁化方向を制御する、
請求項2または請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2の磁性層が形成された前記基板に磁場を印加して加熱処理をする工程を更に実行する、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
基板に積層構造を形成して磁気トンネル接合素子を形成する成膜方法であって、
前記基板に第1の磁性層を形成し、前記第1の磁性層の上に絶縁層を形成する工程と、
前記第1の磁性層及び前記絶縁層が形成された前記基板に磁場を印加して加熱処理をする工程と、
前記絶縁層の上に第2の磁性層を形成する工程と、を有する、
成膜方法。
【請求項7】
前記第2の磁性層が形成された前記基板に磁場を印加して加熱処理をする工程を更に有する、
請求項6に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)に用いられる磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)素子は、2つの磁性層と、これらの間に設けられた絶縁層からなるトンネルバリア層とを有する積層構造として構成されている。
【0003】
特許文献1には、成膜システムでウエハに積層膜を成膜した後、成膜システムから取り出したウエハに加熱処理を実施することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-47074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2つの磁性膜及び絶縁膜をアニール処理して結晶化する際、磁性膜中のボロンが拡散する。これにより、MTJ素子の性能が低下するおそれがある。
【0006】
上記課題に対して、一側面では、磁気トンネル接合素子の特性を向上する成膜装置及び成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、基板に積層構造を形成して磁気トンネル接合素子を形成する成膜装置であって、前記基板に磁性層及び絶縁層を形成する複数の処理室と、前記基板に磁場を印加して加熱処理をする加熱処理室と、前記成膜処理室及び前記加熱処理室を接続する真空搬送室と、制御部と、を備える、成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
一の側面によれば、磁気トンネル接合素子の特性を向上する成膜装置及び成膜方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】基板処理システムの一例の構成を示す平面図である。
図2】MTJ素子の形成処理を説明するフローチャートの一例である。
図3】形成される素子の断面図の一例である。
図4】磁場アニール処理装置の一例の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
<基板処理システム100>
基板処理システム(成膜装置)100の全体構成の一例について、図1を用いて説明する。図1は、基板処理システム100の一例の構成を示す平面図である。
【0012】
図1に示す基板処理システム100は、クラスタ構造(マルチチャンバタイプ)のシステムである。基板処理システム100は、複数の処理室111~115、真空搬送室120、ロードロック室131,132、大気搬送室140、ロードポート150及び制御部200を備えている。
【0013】
処理室(真空処理装置)111~115は、所定の真空雰囲気に減圧され、その内部にてウエハ(基板)Wに所望の処理(クリーニング処理、エッチング処理、成膜処理、磁場アニール処理等)を施す。処理室111~115は、真空搬送室120に隣接して配置される。処理室111~115と真空搬送室120とは、ゲートバルブの開閉により連通する。処理室111~115は、ウエハWを載置する載置部を有する。なお、処理室111~115における処理のための各部の動作は、制御部200によって制御される。
【0014】
真空搬送室120は、ゲートバルブを介して、複数の室(処理室111~115、ロードロック室131,132)と連結され、所定の真空雰囲気に減圧されている。また、真空搬送室120の内部には、ウエハWを搬送する真空搬送装置121が設けられている。真空搬送装置121は、処理室111~115のゲートバルブの開閉に応じて、処理室111~115と真空搬送室120との間でウエハWの搬入及び搬出を行う。また、真空搬送装置121は、ロードロック室131,132のゲートバルブの開閉に応じて、ロードロック室131,132と真空搬送室120との間でウエハWの搬入及び搬出を行う。なお、真空搬送装置121の動作、ゲートバルブの開閉は、制御部200によって制御される。
【0015】
ロードロック室131,132は、真空搬送室120と大気搬送室140との間に設けられている。ロードロック室131,132は、ウエハWを載置する載置部(図示せず)を有する。ロードロック室131,132は、大気雰囲気と真空雰囲気とを切り替えることができるようになっている。ロードロック室131,132と真空雰囲気の真空搬送室120とは、ゲートバルブの開閉により連通する。ロードロック室131,132と大気雰囲気の大気搬送室140とは、ドアバルブの開閉により連通する。なお、ロードロック室131,132内の真空雰囲気または大気雰囲気の切り替えは、制御部200によって制御される。
【0016】
大気搬送室140は、大気雰囲気となっており、例えば清浄空気のダウンフローが形成されている。また、大気搬送室140の内部には、ウエハWを搬送する大気搬送装置141が設けられている。また、大気搬送室140には、ウエハWの位置合わせを行うアライナ142が設けられている。
【0017】
また、大気搬送室140の壁面には、ロードポート150が設けられている。ロードポート150は、ウエハWが収容されたキャリアF又は空のキャリアFが取り付けられる。キャリアFとしては、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)等を用いることができる。
【0018】
大気搬送装置141は、ドアバルブの開閉に応じて、ロードロック室131,132と大気搬送室140との間でウエハWの搬入及び搬出を行う。また、大気搬送装置141は、アライナ142と大気搬送室140との間でウエハWの搬入及び搬出を行う。また、
大気搬送装置141は、ロードポート150に取り付けられたキャリアFと大気搬送室140との間でウエハWの搬入及び搬出を行う。なお、大気搬送装置141の動作、ドアバルブの開閉は、制御部200によって制御される。
【0019】
制御部200は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びHDD(Hard Disk Drive)を有する。制御部200は、HDDに限らずSSD(Solid State Drive)等の他の記憶領域を有してもよい。HDD、RAM等の記憶領域には、プロセスの手順、プロセスの条件、搬送条件が設定されたレシピが格納されている。
【0020】
CPUは、レシピに従って各処理室111~115におけるウエハWの処理を制御し、ウエハWの搬送を制御する。HDDやRAMには、各処理室111~115におけるウエハWの処理やウエハWの搬送を実行するためのプログラムが記憶されてもよい。プログラムは、記憶媒体に格納して提供されてもよいし、ネットワークを通じて外部装置から提供されてもよい。
【0021】
次に、ウエハWにMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)に用いられる磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)素子を形成する方法について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、MTJ素子の形成処理を説明するフローチャートの一例である。図3は、形成される素子の断面図の一例である。
【0022】
ステップS101において、ウエハWを基板処理システム100に搬入する。例えば、処理前のウエハWを収容したキャリアFがロードポート150に取り付けられる。
【0023】
ステップS102において、ウエハWに磁化膜208までを成膜する。例えば、制御部200は、大気搬送装置141及び真空搬送装置121を制御して、処理室111に処理前のウエハWを搬送する。処理室111は、例えばPVD(Physical Vapor Deposition)装置であって、ウエハWに成膜する。制御部200は、処理室111を制御して、ウエハWに所望の積層膜を形成する。
【0024】
ステップS103において、磁化膜208の上にトンネルバリア膜(絶縁膜)としてのMgO膜209を成膜する。例えば、制御部200は、真空搬送装置121を制御して、処理室111から処理室112にウエハWを搬送する。処理室112は、例えばPVD(Physical Vapor Deposition)装置であって、ウエハWに膜を成膜する。制御部200は、処理室112を制御して、ウエハWにMgO膜209を成膜する。
【0025】
図3(a)は、ステップS103の終了後のウエハWの積層膜を説明する模式図である。ウエハWには、電極201と、下地層(Ta層202及びRu層203)、第1磁性層204、スペーサー層205、第2磁性層(Co層206、Mo層207、CoFeB層208)、トンネルバリア層(MgO膜209)が成膜されている。
【0026】
電極201は、ウエハWの上に形成される。下地層は、電極201の上に形成される。下地層は、例えばTa層202及びRu層203を積層して形成される。
【0027】
下地層の上には、SAF(Synthetic Antiferromagnet:人工反強磁性体)構造の固定層(第1の磁性層)が形成される。固定層は、第1磁性層204と、スペーサー層205と、第2磁性層(Co層206、Mo層207、CoFeB層208)と、を有する。第1磁性層204は、下地層の上に形成される。第1磁性層204は、非磁性のスペーサー層205を介して、第2磁性層と反強磁性結合を形成し、第2磁性層の磁化方向を固定する。第1磁性層204は、例えばCo膜とPt膜を交互に積層した多層膜として形成される。非磁性のスペーサー層205は、第1磁性層204の上に形成される。スペーサー層205は、例えばRu等で形成される。第2磁性層は、スペーサー層205の上に形成される。第2磁性層は、例えばCo層206、Mo層207、CoFeB層208を積層して形成される。
【0028】
トンネルバリア層(絶縁層)としてのMgO膜209は、第2磁性層(CoFeB層208)の上に形成される。なお、ステップS103におけるMgO膜209の成膜温度は、例えば150℃で成膜される。
【0029】
ここで、PVD装置で成膜されたCoFeB層208及びMgO膜209は、アモルファス構造となっている。
【0030】
ステップS104において、In-situで磁場中アニール処理を行う。例えば、制御部200は、真空搬送装置121を制御して、処理室112から処理室113にウエハWを搬送する。処理室113は、磁場を印加した状態でウエハWをアニール処理(加熱処理)する磁場アニール処理装置である。制御部200は、処理室113を制御して、ウエハWに着磁処理及びアニール処理を施す。ここで、ウエハWを加熱するアニール温度は、MgO膜209の成膜温度(例えば150℃)よりも高温とする。例えば、ウエハWは370℃以上(好ましくは、400℃以上、500℃以下)に加熱され、アニール処理が施される。また、アニール処理装置は、例えば1T~2Tの磁場を印加した状態で、アニール処理することにより、第1磁性層204及び第2磁性層(Co層206、Mo層207、CoFeB層208)の磁化方向を制御して着磁する。
【0031】
図3(b)は、ステップS104の終了後のウエハWの積層膜を説明する模式図である。磁場中アニール処理によって、MgO膜209及びCoFeB層208が着磁するとともに結晶化する。なお、結晶化を格子のハッチで模式的に示す。この際、CoFeB層208中のボロン(B)がMo層207やTa層202に拡散する。拡散したボロン300を模式的に示す。
【0032】
ここで、処理室113である磁場アニール処理装置の一例について、図4を用いて説明する。図4は、磁場アニール処理装置400の一例の構成を示す断面図である。
【0033】
磁場アニール処理装置400は、MRAMの製造に用いられ、固定層(CoFeB層208)及びトンネルバリア層(MgO膜209)成膜後に着磁処理およびアニール処理を行う装置である。磁場アニール処理装置400は、図1示す基板処理システム100の1つの処理室113として設けられる。
【0034】
磁場アニール処理装置400は、処理容器401と、磁石部402と、素線部403a,403bと、ヨーク404と、支持部405と、ゲートバルブ406と、加熱部407と、冷却部(図示せず)と、を備える。
【0035】
処理容器401は、ウエハWを処理する処理空間410を画定する。処理容器401は、第1の壁部401aと、第2の壁部401bと、排気管401cと、を備える。第1の壁部401aは、第1の断熱層401a1を備える。第2の壁部401bは、第2の断熱層401b1を備える。排気管401cは、排気装置(図示せず)に接続され、処理容器401内のガスを排気する。
【0036】
磁石部402は、第1のコア部402aと、第2のコア部402bと、を備える。第1のコア部402aは、第1の端面402a1を備える。第2のコア部402bは、第2の端面402b1を備える。
【0037】
磁石部402は、電磁石であり、電源(図示せず)から素線部403aおよび素線部403bに電流が供給されることによって磁界を発生し得る。素線部403aは、第1のコア部402aの周りに巻き回され被覆された銅線等である。素線部403bは、第2のコア部402bの周りに巻き回され被覆された銅線等である。第1の端面402a1は、磁石部402の第1の磁極に対応し、第2の端面402b1は、磁石部402の第2の磁極に対応している。第1の磁極、第2の磁極のそれぞれは、例えば、N極、S極であり得る。第1の端面402a1と第2の端面402b1とは、互いに並行に延びており、離間して向かい合っている。
【0038】
第1のコア部402aの周囲には、素線部403aが設けられ、第2のコア部402bの周囲には素線部403bが設けられている。第1のコア部402aおよび第2のコア部402bは、例えば鉄等の金属からなり、素線部403a、素線部403bによって生じる磁力線を第1の端面402a1および第2の端面402b1に収束させる。また、磁石部402には、ヨーク404が設けられている。
【0039】
処理容器401は、磁石部402の第1の端面402a1と磁石部402の第2の端面402b1との間に配置される。磁石部402の第1のコア部402a(第1の端面402a1)は、処理容器401の外側において処理容器401の第1の壁部401a上に設けられ、磁石部402の第2のコア部402b(第2の端面402b1)は、処理容器401の外側において処理容器401の第2の壁部401b上に設けられる。第1の壁部401aは、第1の端面402a1に接していてもよい。第2の壁部401bは、第2の端面402b1に接していてもよい。
【0040】
第1の断熱層401a1は、第1の壁部401aの内部に設けられている。第1の断熱層401a1は、例えば第1の壁部401aの内部に設けられた水冷ジャケットである。第1の断熱層401a1は、第1の端面402a1に接していてもよい。第2の断熱層401b1は、第2の壁部401bの内部に設けられている。第2の断熱層401b1は、例えば第2の壁部401bの内部に設けられた水冷ジャケットである。第2の断熱層401b1は、第2の端面402b1に接していてもよい。第1の断熱層401a1の水冷ジャケットおよび第2の断熱層401b1の水冷ジャケットは、何れも、チラーユニット(図示せず)に接続された配管を有している。チラーユニットは、第1の断熱層401a1および第2の断熱層401b1に冷却液を循環させることによって、処理容器401と磁石部402との間の熱の移動を低減する(断熱する)。第1の断熱層401a1および第2の断熱層401b1は、例えば繊維系や発泡系の断熱材を有していてもよく、この場合、この断熱材は、第1の壁部401aと第1のコア部402aの第1の端面402a1との間、および、第2の壁部401bと第2のコア部402bの第2の端面402b1との間に設置され得る。
【0041】
支持部405は、処理容器401内に設けられる。ウエハWは、ゲートバルブ406を介して、真空搬送室120の真空搬送装置121によって処理空間410内に搬送され、支持部405に支持されるように載置される。
【0042】
磁石部2によって発生される磁力線は、処理空間410内において支持部405によって支持されている状態のウエハWに対し垂直となる。ウエハWには、磁石部402によって、0.1~2[T]程度の磁界が生じ得る。
【0043】
加熱部407は、支持部405によって支持されるウエハWを加熱する。加熱部407は、処理容器401内に配置され、例えば、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータまたはランプヒータ等であってよい。
【0044】
冷却部(図示せず)は、支持部405によって支持されるウエハWを冷却する。冷却部は、例えば、処理空間410内に冷却ガスを供給するガス供給装置であってよい。処理空間410内に供給された冷却ガスは、ウエハWと熱交換することにより、ウエハWを冷却する。その後、冷却ガスは、排気管401cから処理容器401外に排気される。冷却ガスは、例えば、Nガス、Heガス等の希ガスを用いることができる。
【0045】
これにより、磁場アニール処理装置400は、枚葉で着磁処理及びアニール処理を行うことができる。
【0046】
図2及び図3に戻り、ステップS105において、MgO膜上の磁性層等を成膜する。例えば、制御部200は、真空搬送装置121を制御して、処理室113から処理室114にウエハWを搬送する。処理室114は、例えばPVD(Physical Vapor Deposition)装置であって、ウエハWに成膜する。制御部200は、処理室114を制御して、ウエハWに処理室111を制御して、ウエハWに所望の積層膜を形成する。
【0047】
図3(c)は、ステップS105の終了後のウエハWの積層膜を説明する模式図である。ウエハWには、結晶化したMgO膜209の上に、自由層(第2の磁性層)及びキャップ層が形成される。
【0048】
自由層は、トンネルバリア層の上に形成される。自由層は、例えばCoFeB層210、Mo層211、CoFeB層212で形成される。キャップ層は、自由層の上に形成される。キャップ層は、MgO層213、Ta層214、Ru層215で形成される。
【0049】
ここで、PVD装置で成膜されたCoFeB層210,212は、アモルファス構造となっている。
【0050】
ステップS106において、ウエハWを基板処理システム100から搬出する。例えば、制御部200は、真空搬送装置121及び大気搬送装置141を制御して、キャリアFに処理済のウエハWを搬送する。そして、キャリアFは、ロードポート150から取り外される。
【0051】
ステップS107において、Ex-situで磁場中アニール処理を行う。処理済のウエハWは、バッチ方式の磁場アニール処理装置(図示せず)に搬送される。バッチ方式の磁場アニール処理装置は、複数のウエハWに対し、磁場を印加した状態でウエハWをアニール処理(加熱処理)する。
【0052】
図3(d)は、ステップS107の終了後のウエハWの積層膜を説明する模式図である。磁場アニール処理によって、CoFeB層210、Mo層211、CoFeB層212の磁化方向を制御して着磁する。また、CoFeB層210,212を結晶化する。なお、結晶化を格子のハッチで模式的に示す。この際、CoFeB層210,212中のボロン(B)がMo層211やTa層214に拡散する。拡散したボロン300を模式的に示す。
【0053】
ここで、MgO膜209が結晶化していることにより、CoFeB層210,212中のボロン(B)が、MgO膜209を通過してMo層207やTa層202へ拡散することを防止する。また、CoFeB層208中のボロン(B)が、MgO膜209を通過してMo層211やTa層214へ拡散することを防止する。
【0054】
ここで、参考例に係るMTJ素子の形成方法について説明する。参考例に係るMTJ素子の形成方法においては、固定層(CoFeB層208)、トンネルバリア層(MgO膜209)、自由層(CoFeB層210)を成膜後に、バッチ方式の磁場アニール処理装置を用いてEx-situで磁場中アニール処理を行う。
【0055】
この際、CoFeB層208中のボロン(B)が、MgO膜209を通過してMo層211やTa層214へ拡散する。また、CoFeB層210中のボロン(B)が、MgO膜209を通過してMo層207やTa層202へ拡散する。このように、ボロン(B)がMgO膜209を通過することによりピンホールの要因となり、また、MgO膜209とCoFeB層208(210)との界面の状態が劣化する。これにより、MTJ素子の特性が低下するおそれがある。例えば、MgO膜209の絶縁性能が低下するおそれがある。
【0056】
これに対し、本実施形態に係るMTJ素子の形成方法によれば、固定層(CoFeB層208)及びトンネルバリア層(MgO膜209)を成膜した後に、In-situで磁場中アニール処理を施すことにより、CoFeB層208中のボロン(B)はMo層207やTa層202へ拡散する。一方、ステップS104のアニール処理においては、MgO膜209の上にMo層211やTa層214が形成される前であり、CoFeB層208中のボロン(B)がMgO膜209を通過する拡散を抑えることができる。これにより、MgO膜209を通過するボロン(B)を抑制するとともに、MgO膜209とCoFeB層208との界面の状態が劣化することを抑制する。
【0057】
また、自由層(CoFeB層210)を成膜後に、バッチ方式の磁場アニール処理装置を用いてEx-situで磁場中アニール処理を行う。ここで、MgO膜209はステップS104のアニール処理によって結晶化している。これにより、MgO膜209を通過するボロン(B)を抑制するとともに、MgO膜209とCoFeB層208,210との界面の状態が劣化すること抑制する。
【0058】
なお、本実施形態に係るMTJ素子の形成方法では、自由層(CoFeB層210)及びキャップ層の成膜後に、バッチ方式の磁場アニール処理装置を用いてEx-situで磁場中アニール処理を行うものとして説明したが、これに限られるものではない。、自由層及びキャップ層の成膜後に、枚葉方式の磁場アニール処理装置を用いてIn-situで磁場中アニール処理を行う構成であってもよい。例えば、ステップS105で自由層及びキャップ層が成膜された後、制御部200は、真空搬送装置121を制御して、処理室114から処理室115にウエハWを搬送する。処理室115は、処理室113と同様に磁場を印加した状態でウエハWをアニール処理する磁場アニール処理装置である。制御部200は、処理室115を制御して、ウエハWに着磁処理及びアニール処理を施す構成であってもよい。
【0059】
また、ステップS104に示す固定層(CoFeB層208)及びトンネルバリア層(MgO膜209)成膜後のアニール処理は、ボロン(B)の通過を抑制するようにCoFeB層208及びMgO膜209をアニール処理して、ステップS107に示す自由層(CoFeB層210)及びキャップ層の成膜後のアニール処理で、CoFeB層208、MgO膜209、CoFeB層210を結晶化するようにアニール処理する構成であってもよい。
【0060】
また、ステップS104に示す固定層(CoFeB層208)及びトンネルバリア層(MgO膜209)成膜後のアニール処理は、磁場を印加せずアニール処理を行い、ステップS107に示す自由層(CoFeB層210)及びキャップ層の成膜後のアニール処理で、磁場を印加しつつアニール処理を行うようにしてもよい。これにより、ステップS104におけるアニール処理でボロン(B)の通過を抑制するようにCoFeB層208及びMgO膜209をアニール処理し、ステップS107におけるアニール処理でCoFeB層208,210に着磁処理を行うとともに、CoFeB層208,210及びMgO膜209を結晶化することができる。
【0061】
以上、基板処理システム及び真空処理装置を上記実施形態により説明したが、本発明に係る基板処理システム及び真空処理装置は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0062】
100 基板処理システム(成膜装置)
111,112,114 処理室
113,115 処理室(加熱処理室)
120 真空搬送室
200 制御部
208 CoFeB層(第1の磁性層、固定層)
209 MgO膜(絶縁層、トンネルバリア層)
210 CoFeB層(第1の磁性層、自由層)
図1
図2
図3
図4