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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072422
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】フィルム用ポリエチレン
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20230517BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C08F10/02
C08F2/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184970
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞見 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】なら木 健介
【テーマコード(参考)】
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J011AB02
4J011AB04
4J011DB16
4J011NA12
4J011NB06
4J011NC02
4J100AA02P
4J100CA01
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA11
4J100DA62
4J100DA66
4J100EA05
4J100FA03
4J100FA28
4J100FA29
4J100JA28
4J100JA43
4J100JA57
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】取扱い易さ等のバランスを改良したポリエチレン及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価されるポリエチレンの積分分布曲線において、ポリエチレンのMw(重量平均分子量)に対するMz(Z平均分子量)の比(Mz/Mw)が、3.4以上4.0以下であり、
下記(式1)で示される光散乱面積比(RLS)が2.5以上4.0以下である、ポリエチレン。
LS=LS/LS’(式1)
(式中、LSは、前記ポリエチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。
LS’は、数平均分子量1000の標準ポリスチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価されるポリエチレンの積分分布曲線において、ポリエチレンのMw(重量平均分子量)に対するMz(Z平均分子量)の比(Mz/Mw)が、3.4以上4.0以下であり、
下記(式1)で示される光散乱面積比(RLS)が2.5以上4.0以下である、ポリエチレン。
LS=LS/LS’(式1)
(式中、LSは、前記ポリエチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。
LS’は、数平均分子量1000の標準ポリスチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。)
【請求項2】
Mz/Mwが、3.5以上3.8以下であり、
光散乱面積比(RLS)が2.8以上3.8以下である、請求項1に記載のポリエチレン。
【請求項3】
前記ポリエチレンが高圧法低密度ポリエチレンである、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のポリエチレン。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリエチレンからなるフィルム。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリエチレンからなるドライフィルムレジスト用保護フィルム。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリエチレンの製造方法であって、下記工程を含む、高圧法ポリエチレン製造方法;
・連鎖移動剤(CTA)供給工程:0.01~0.1MPaの圧力及び10~60℃の温度に中が制御された連鎖移動剤(CTA)供給配管(17)から、0.01~0.1MPaの圧力で10~60℃の温度に中が制御された未反応低圧エチレン供給配管(16)へ、連鎖移動剤(CTA)として、エタン、プロパン及びプロピレンを供給し、全CTA濃度に対するプロパン濃度の比を0.70~0.95に調整して、連鎖移動剤(CTA)を供給する工程(ただし、濃度は体積基準の濃度であり、エチレン、エタン、プロパン及びプロピレンそれぞれの体積の合計を100体積%とする。)。
【請求項7】
下記工程を更に含む、請求項6に記載の製造方法;
・圧縮工程:エチレンを圧縮する工程;
・反応工程:圧縮されたエチレンと重合開始剤を反応器(4)に供給して、反応器圧力が170~220MPa、反応温度が220~270℃でエチレンを重合し、ポリエチレンを生成する工程;
・分離工程:反応器(4)で生成したポリエチレンと未反応エチレンを、高圧分離器(5)で分離し、高圧分離器(5)から生成ポリエチレンを抜出し、抜出し配管(7)を通して、低圧分離器(8)へ供給し、低圧分離器(8)でポリエチレンに含まれる未反応エチレンを分離し、ポリエチレンを抜出す工程;
・未反応低圧エチレンリサイクル工程:低圧分離器(8)で分離された0.01~0.1MPaの圧力で150~220℃の温度の未反応低圧エチレンを、未反応低圧エチレン供給配管(9)を通して、未反応エチレン保持ドラム(15)へ供給する工程;及び
・フレッシュエチレン供給工程:フレッシュエチレンを、フレッシュエチレン配管(14)からエチレン配管(13)に供給する工程。
【請求項8】
下記工程を更に含む、請求項6または請求項7のいずれか一項に記載の製造方法;
・未反応高圧エチレンリサイクル工程:高圧分離器(5)で分離された未反応エチレンを未反応高圧エチレン供給配管(6)を通して減圧し、減圧した未反応エチレンを二次圧縮機(3)に供給する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンは、加工されて、重袋、シュリンク、一般包装、薄物フィルム、プロテクトフィルム、押出ラミネートフィルム、押出成形フィルム、発泡成形フィルムなどの、多種多様なフィルムとして利用される。その中でも、特に高圧ラジカル重合法により製造される低密度ポリエチレン(LDPE)は、加工されて、押出ラミネートフィルムやプロテクトフィルム(保護フィルム)としての用途がある。プロテクトフィルムは、光学材料や金属板にラミネートされ(貼り付けられ)、光学材料や金属板を保護するものである。例えば、基板の回路形成に使用されるフィルム状のエッチングレジスト(ドライフィルムレジスト(Dry film resist:DFR))を保護するためのプロテクトフィルムとして利用される。このようなフィルムを製造する上で、ポリエチレンの取扱い易さ等の良好なバランスが求められる。
【0003】
特許文献1には、高圧ラジカル重合法により得られるポリエチレンからなるDFR用プロテクトフィルム、及び、フィルム中に存在するフィッシュアイの存在密度が特定範囲にあるポリエチレンフィルムからなるDFR用プロテクトフィルムが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-60426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況の下、本発明が解決しようとする課題は、フィルムの取扱い易さとフィルムの欠点(フィッシュアイ、エア噛みこみ)の検出の容易さのバランスを改良したポリエチレン及びその製造方法を提供する点に存するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、このような背景に鑑みて鋭意検討をしたところ、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記のものである。
[1]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価されるポリエチレンの積分分布曲線において、ポリエチレンのMw(重量平均分子量)に対するMz(Z平均分子量)の比(Mz/Mw)が、3.4以上4.0以下であり、
下記(式1)で示される光散乱面積比(RLS)が2.5以上4.0以下である、ポリエチレン。
LS=LS/LS’(式1)
(式中、LSは、前記ポリエチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。
LS’は、数平均分子量1000の標準ポリスチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。)
以下、[2]から[8]は、それぞれ本発明の好ましい態様又は実施形態である。
[2]
Mz/Mwが、3.5以上3.8以下であり、
光散乱面積比(RLS)が2.8以上3.8以下である、[1]に記載のポリエチレン。
[3]
前記ポリエチレンが高圧法低密度ポリエチレンである、[1]または[2]のいずれかに記載のポリエチレン。
[4]
[1]から[3]のいずれかに記載のポリエチレンからなるフィルム。
[5]
[1]から[3]のいずれかに記載のポリエチレンからなるドライフィルムレジスト用保護フィルム。
[6]
[1]から[3]のいずれかに記載のポリエチレンの製造方法であって、下記工程を含む、高圧法ポリエチレン製造方法;
・連鎖移動剤(CTA)供給工程:0.01~0.1MPaの圧力及び10~60℃の温度に中が制御された連鎖移動剤(CTA)供給配管(17)から、0.01~0.1MPaの圧力で10~60℃の温度に中が制御された未反応低圧エチレン供給配管(16)へ、連鎖移動剤(CTA)として、エタン、プロパン及びプロピレンを供給し、全CTA濃度に対するプロパン濃度の比を0.70~0.95に調整して、連鎖移動剤(CTA)を供給する工程(ただし、濃度は体積基準の濃度であり、エチレン、エタン、プロパン及びプロピレンそれぞれの体積の合計を100体積%とする。)。
[7]
下記工程を更に含む、[6]に記載の製造方法;
・圧縮工程:エチレンを圧縮する工程;
・反応工程:圧縮されたエチレンと重合開始剤を反応器(4)に供給して、反応器圧力が170~220MPa、反応温度が220~270℃でエチレンを重合し、ポリエチレンを生成する工程;
・分離工程:反応器(4)で生成したポリエチレンと未反応エチレンを、高圧分離器(5)で分離し、高圧分離器(5)から生成ポリエチレンを抜出し、抜出し配管(7)を通して、低圧分離器(8)へ供給し、低圧分離器(8)でポリエチレンに含まれる未反応エチレンを分離し、ポリエチレンを抜出す工程;
・未反応低圧エチレンリサイクル工程:低圧分離器(8)で分離された0.01~0.1MPaの圧力で150~220℃の温度の未反応低圧エチレンを、未反応低圧エチレン供給配管(9)を通して、未反応エチレン保持ドラム(15)へ供給する工程;及び
・フレッシュエチレン供給工程:フレッシュエチレンを、フレッシュエチレン配管(14)からエチレン配管(13)に供給する工程。
[8]
下記工程を更に含む、[6]または[7]のいずれかに記載の製造方法;
・未反応高圧エチレンリサイクル工程:高圧分離器(5)で分離された未反応エチレンを未反応高圧エチレン供給配管(6)を通して減圧し、減圧した未反応エチレンを二次圧縮機(3)に供給する工程。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高圧法ポリエチレン製造方法における連鎖移動剤(CTA)供給工程を、特定の圧力及び温度で、特定の連鎖移動剤(CTA)を特定の濃度で供給して実施することによって、フィルムの取扱い易さとフィルムの欠点(フィッシュアイ、エア噛みこみ)の検出の容易さのバランスを改良したポリエチレンを製造することができる。本発明の特徴は、ポリエチレンのMw(重量平均分子量)に対するMz(Z平均分子量)の比(Mz/Mw)及び光散乱面積比(RLS)が、ヘイズとクラリティ比のバランスに関係することを見出し、当該比(Mz/Mw)及び光散乱面積比(RLS)を特定範囲に設定することによって、ヘイズと低いクラリティ比のバランスを改良し、フィルムの取扱い易さとフィルムの欠点(フィッシュアイ、エア噛みこみ)の検出の容易さのバランスを改良したポリエチレンを製造することである。フィルムの取扱い易さは、フィルム表面の凹凸、例えば、フィルムのヘイズとして評価することができる。フィルムの欠点(フィッシュアイ、エア噛みこみ)の検出の容易さは、フィルムの低いクラリティ比として評価することができる。クラリティ比(直進透過光のMD/TD差(異方性))が低いフィルムが得られることにより、フィルムの欠点(フィッシュアイやエア噛みこみ)の検出が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の高圧法ポリエチレン製造方法及びその製造装置の一実施形態の概略プロセス図を示す。
図2図2は、実施例1及び比較例1で製造されたポリエチレンの光散乱面積を測定するためのLS(光散乱検出器)クロマトグラムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<ポリエチレン>
本発明のポリエチレンは、下記のものである:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価されるポリエチレンの積分分布曲線において、ポリエチレンのMw(重量平均分子量)に対するMz(Z平均分子量)の比(Mz/Mw)が、3.4以上4.0以下であり、
下記(式1)で示される光散乱面積比(RLS)が2.5以上4.0以下である、ポリエチレン。
LS=LS/LS’(式1)
(式中、LSは、前記ポリエチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。
LS’は、数平均分子量1000の標準ポリスチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。)
Mz/Mwは、フィルムの取扱い易さ、すなわち、適切なヘイズのフィルムを得るという観点から、3.5以上3.8以下であることが好ましい。
光散乱面積比(RLS)は、フィルムの取扱い易さ、すなわち、適切なヘイズのフィルムを得るという観点から、2.8以上3.8以下であることが好ましい。
前記ポリエチレンが高圧法低密度ポリエチレンであることが好ましい。
本発明の上記のポリエチレンからなるフィルムが好ましい。
本発明の上記のポリエチレンからなるドライフィルムレジスト用保護フィルムが好ましい。
ポリエチレンから当該フィルム及びドライフィルムレジスト用保護フィルムを製造する方法は特に限定されず、当業者に周知の方法で製造できる。
【0010】
MFRは、フィルム加工性の観点で1g/10分以上6g/10以下であることが好ましく、更には2.5g/10分以上4.5g/10以下であることがより好ましい。MFRが1g/10分未満になるとフィルムの薄肉成形が困難になり、また、6g/10分より高くなるとフィルム厚みの均一性が低下する。
【0011】
密度は、フィルムハンドリング性の観点で917kg/m以上930kg/m以下であることが好ましく、更には921kg/m以上926kg/m以下であることがより好ましい。密度が917kg/m未満になると巻き取ったフィルムの繰り出し性が低下し、また、930kg/mより高くなるとレジストへの貼合後にレジストから剥離しにくくなる。
【0012】
収縮因子g’は、フィルム加工性の観点で0.10以上0.40以下であることが好ましく、より好ましくは0.15以上0.35以下であり、更により好ましくは0.19以上0.24以下である。収縮因子g’が0.10未満になるとフィルムの薄肉成形が困難になり、また、0.40より高くなるとフィルム厚みの均一性が低下する。
【0013】
<製造方法及び製造装置の一実施形態>
本発明による製造方法及び当該製造方法において好ましく使用される製造装置の一実施形態を、図1を参照して下記に詳細に説明する。
一次圧縮機後段(2)から二次圧縮機(3)に高圧エチレン配管(18)を通して、エチレンガスを供給し、重合反応器(4)に供給し、重合開始剤を添加して、エチレンを重合させる。
重合反応器(4)から高圧分離器(5)に重合混合物を放出し、生成ポリマーと未反応エチレンガスに分離する。
高圧分離器(5)で分離した生成ポリマーを、ポリエチレン抜出し配管(7)を通して、低圧分離器(8)に抜出し、さらにエチレン重合体と未反応エチレンガスに分離する。エチレン重合体はポリエチレン抜出し配管(10)を通して抜出し、造粒機でペレットとする。
低圧分離器(8)で分離した未反応エチレンガスを、未反応低圧エチレン配管(9)を通して、未反応エチレン保持ドラム(15)に供給する。未反応エチレン保持ドラム(15)で保持した未反応エチレンガスをエチレン配管(16)を通して一次圧縮機前段1へ供給し、該エチレン配管(16)に連鎖移動剤(CTA)(17)を供給して一次圧縮機前段(1)に供給する。
一次圧縮機前段(1)で未反応エチレンガスと連鎖移動剤(CTA)を圧縮して、エチレン配管(13)を通して一次圧縮機後段(2)へ供給する。
高圧分離器(5)で分離した未反応エチレンガスを、未反応高圧エチレン配管(6)を通して、未反応エチレンガスの全量(100重量パーセント)を二次圧縮機(3)の入り口配管へ供給する。
フレッシュエチレンガスをフレッシュエチレン供給配管(14)からエチレン配管(13)を通して一次圧縮機後段(2)へ供給する。
一次圧縮機前段(1)から供給された未反応エチレンガスおよび連鎖移動剤(CTA)と、フレッシュエチレンガスの混合エチレンガスを、一次圧縮機後段(2)で圧縮し、二次圧縮機(3)へ供給する。
二次圧縮機(3)で圧縮されたエチレンガスと連鎖移動剤(CTA)を重合反応器(4)へ供給して、重合反応を連続して行う。
<製造装置>
本発明の製造方法において好ましく使用される製造装置は、
例えば、下記設備のいずれか1つ以上の設備を備える高圧法ポリエチレン製造装置である;
・一次圧縮機前段部(1):エチレンを圧縮する圧縮機;
・一次圧縮機後段部(2):一次圧縮機前段(1)から供給されたエチレンを更に圧縮する圧縮機;
・二次圧縮機(3):一次圧縮機後段(2)から供給されたエチレンを更に圧縮する圧縮機;
・反応器(4):二次圧縮機(3)から供給されたエチレンと反応器(4)に供給される重合開始剤とによって、エチレンを重合して、ポリエチレンを製造する反応器;
・高圧分離器(5):反応器(4)から反応器(4)で得られたポリエチレンと未反応エチレンが供給され、ポリエチレンと未反応高圧エチレンを分離する高圧分離器;
・未反応高圧エチレン供給配管(6):高圧分離器(5)で分離された未反応高圧エチレンを二次圧縮機(3)へ供給するための配管;
・ポリエチレン抜出し配管(7):高圧分離器(5)で分離されたポリエチレンを高圧分離器(5)から抜出し、低圧分離器(8)へ供給するための配管;
・低圧分離器(8):高圧分離器(5)で分離されポリエチレン抜出し配管(7)を通して供給されたポリエチレンに含まれる未反応低圧エチレンとポリエチレンを分離する分離器;
・未反応低圧エチレン供給配管(9):低圧分離器(8)で分離された未反応低圧エチレンを未反応エチレン保持ドラム(15)へ供給するための配管;
・ポリエチレン抜出し配管(10):低圧分離器(8)で分離されたポリエチレンを抜出すための配管;
・エチレン供給配管(13):一次圧縮機前段部(1)と一次圧縮機後段(2)を接続し、圧縮された未反応エチレンを、一次圧縮機前段部(1)から一次圧縮機後段(2)へ供給するための配管であり、フレッシュエチレン供給配管(14)と合流する配管;
・フレッシュエチレン供給配管(14):エチレン供給配管(13)に接続し、フレッシュエチレンを供給するための配管;
・未反応エチレン保持ドラム(15):未反応低圧エチレン供給配管(9)を通して供給された未反応低圧エチレンを、保持するドラム;
・未反応低圧エチレン供給配管(16):未反応エチレン保持ドラム(15)と一次圧縮機前段部(1)を接続し、未反応エチレン保持ドラム(15)から一次圧縮機前段部(1)へ未反応低圧エチレンを供給する配管;及び・連鎖移動剤(CTA)供給配管(17):未反応低圧エチレン供給配管(16)に接続し、連鎖移動剤(CTA)を供給する配管。
【0014】
一次圧縮機前段部(1)
一次圧縮機前段部(1)は、エチレンを例えば0.04MPa~3MPaの範囲で圧縮する圧縮機である。
【0015】
一次圧縮機後段部(2)
一次圧縮機後段部(2)は、一次圧縮機前段(1)から供給されたエチレンを例えば3MPa~20MPaの範囲で圧縮する圧縮機である。
【0016】
二次圧縮機(3)
二次圧縮機(3)は、一次圧縮機後段(2)から供給されたエチレンを例えば20MPa~200MPaの範囲で圧縮する圧縮機である。
【0017】
反応器(4)
反応器(4)は、二次圧縮機(3)から供給されたエチレンと反応器(4)に供給される重合開始剤とによって、エチレンを重合して、ポリエチレンを製造する反応器である。
反応器(4)は、管状反応器あるいは槽状反応器などの何れであってもよく、エチレン高圧重合は、例えば酸素または過酸化物のような重合開始剤を用いて、圧力を例えば20MPa以上、好ましくは100~500MPa、より好ましくは100~400MPa、温度を例えば100℃以上、好ましくは100~400℃、より好ましくは150~350℃、更により好ましくは150~300℃の条件で実施されることができる。
反応器(4)に入るエチレン流は重合開始剤の外に共単量体、連鎖移動剤を含むことができる。
【0018】
高圧分離器(5)
高圧分離器(5)は、反応器(4)から減圧して反応器(4)で得られたポリエチレンと未反応エチレンが供給され、ポリエチレンと未反応高圧エチレンを分離する高圧分離器である。
反応器(4)中で生成した重合体ポリマー、未反応エチレンガス、重合副生成物、溶剤および潤滑油等からなる反応生成混合物は、場合により圧力調整弁を経て、高圧分離器(5)入って減圧放出され、反応生成混合物中に含まれる重合体の一部が、例えば10~100MPa、好ましくは15~100MPa、より好ましくは70MPa以下の圧力下で、例えば200~260℃の温度で、分離される。
【0019】
分離された重合体は、重量平均分子量5000以下の低分子量物を殆んど含んでいない。
高圧分離器(5)において分離された重合体は、低圧分離器(8)に送られ、重合体中に残留する未反応エチレンガスを分離除去した後、ポリエチレン抜出し配管(10)から製品ポリエチレンとして取出される。
【0020】
未反応高圧エチレン供給配管(6)
未反応高圧エチレン供給配管(6)は、高圧分離器(5)で分離された未反応高圧エチレンを、二次圧縮機(3)へ供給するための配管である。
【0021】
ポリエチレン抜出し配管(7)
ポリエチレン抜出し配管(7)は、高圧分離器(5)で分離されたポリエチレンを高圧分離器(5)から抜出し、低圧分離器(8)へ供給するための配管である。
【0022】
低圧分離器(8)
低圧分離器(8)は、高圧分離器(5)で分離されポリエチレン抜出し配管(7)を通して供給されたポリエチレンに含まれる未反応低圧エチレンとポリエチレンを分離する分離器である。
低圧分離器(8)で頭部に分離された例えば約200~250℃の未反応ガスは、例えば冷却器で20~50℃に冷却された後、例えば分離器に送られ溶剤等の不純物を除去する。不純物を除去した未反応ガスエチレンは、未反応低圧エチレン供給配管(16)を通して、一次圧縮機前段(1)の入口にもどされる。
【0023】
未反応低圧エチレン供給配管(9)
未反応低圧エチレン供給配管(9)は、低圧分離器(8)で分離された未反応低圧エチレンを一次圧縮機前段へ供給するための配管である。未反応低圧エチレン供給配管(9)の中は、例えば0.01~0.1MPaの圧力で例えば150~220℃の温度に制御されることができる。
【0024】
ポリエチレン抜出し配管(10)
ポリエチレン抜出し配管(10)は、低圧分離器(8)で分離されたポリエチレンを抜出すための配管である。ポリエチレン抜出し配管(10)から抜出されたポリエチレンは、押出機、冷却器及び造粒機などを通って、ペレット製品に加工することができる。得られるポリエチレンは、低密度ポリエチレンであることができ、例えば、910~920kg/mの密度を有する。
【0025】
エチレン供給配管(13)
エチレン供給配管(13)は、一次圧縮機前段部(1)と一次圧縮機後段(2)を接続し、例えば0.04MPa~3MPaに圧縮された未反応エチレンを、一次圧縮機前段部(1)から一次圧縮機後段(2)へ供給するための配管であり、フレッシュエチレン供給配管(14)と合流する。
【0026】
フレッシュエチレン供給配管(14)
フレッシュエチレン供給配管(14)は、エチレン供給配管(13)に接続し、フレッシュエチレンを供給するための配管である。例えば0.8MPa~3MPaのフレッシュエチレンガスが供給される。
一実施形態として、原料エチレンガスは、フレッシュエチレン供給配管(14)から一次圧縮機後段部(2)に送られ、例えば3MPa~20MPaの範囲に圧縮された後、二次圧縮機(3)でさらに例えば20MPa~200MPaの範囲に圧縮される。重合圧力まで昇圧されたガスは反応器(4)に送られ、例えば150~300℃の所定温度で酸素あるいは過酸化物開始剤を用いて重合される。
【0027】
未反応エチレン保持ドラム(15)
未反応エチレン保持ドラム(15)は、未反応低圧エチレン供給配管(9)を通して供給された未反応低圧エチレンを、例えば0.01~0.1MPaの圧力で例えば10~60℃の温度に保持するドラムである。
【0028】
未反応低圧エチレン供給配管(16)
未反応低圧エチレン供給配管(16)は、未反応エチレン保持ドラム(15)と一次圧縮機前段部(1)を接続し、未反応エチレン保持ドラム(15)から一次圧縮機前段部(1)へ未反応低圧エチレンを供給する配管である。未反応低圧エチレン供給配管(16)の中は、例えば0.01~0.1MPaの圧力で例えば10~60℃の温度に制御されることができる。
【0029】
連鎖移動剤(CTA)供給配管(17)
連鎖移動剤(CTA)供給配管(17)は、未反応低圧エチレン供給配管(16)に接続し、連鎖移動剤(CTA)を供給する配管である。連鎖移動剤(CTA)供給配管(17)の中は、例えば0.01~0.1MPaの圧力及び例えば10~60℃の温度に制御されることができる。
【0030】
高圧エチレン配管(18)
高圧エチレン配管(18)は、一次圧縮機後段部(2)と二次圧縮機(3)を接続する配管であり、未反応高圧エチレン供給配管(6)から二次圧縮機(3)へ、高圧分離器(5)で分離された未反応高圧エチレンを供給するための、及び、一次圧縮機後段(2)から二次圧縮機(3)へエチレンを供給するための配管である。高圧エチレン配管(18)の中は、例えば10MPa~20MPaの圧力で例えば10~60℃の温度に制御されることができる。
【0031】
<製造方法>
本発明の製造方法は、
下記工程を含む、高圧法ポリエチレン製造方法である;
・連鎖移動剤(CTA)供給工程:0.01~0.1MPaの圧力及び10~60℃の温度に中が制御された連鎖移動剤(CTA)供給配管(17)から、0.01~0.1MPaの圧力で10~60℃の温度に中が制御された未反応低圧エチレン供給配管(16)へ、連鎖移動剤(CTA)として、エタン、プロパン及びプロピレンを供給し、全CTA濃度に対するプロパン濃度の比を0.70~0.95に調整して、連鎖移動剤(CTA)を供給する工程(ただし、濃度は体積基準の濃度であり、エチレン、エタン、プロパン及びプロピレンそれぞれの体積の合計を100体積%とする。)。
本発明の製造方法は、好ましくは、本発明の上記ポリエチレンの製造方法である。
本発明の製造方法は、好ましくは、下記工程を更に含む;
・圧縮工程:エチレンを圧縮する工程;
・反応工程:圧縮されたエチレンと重合開始剤を反応器(4)に供給して、反応器圧力が170~220MPa、反応温度が220~270℃でエチレンを重合し、ポリエチレンを生成する工程;
・分離工程:反応器(4)で生成したポリエチレンと未反応エチレンを、高圧分離器(5)で分離し、高圧分離器(5)から生成ポリエチレンを抜出し、抜出し配管(7)を通して、低圧分離器(8)へ供給し、低圧分離器(8)でポリエチレンに含まれる未反応エチレンを分離し、ポリエチレンを抜出す工程;
・未反応低圧エチレンリサイクル工程:低圧分離器(8)で分離された0.01~0.1MPaの圧力で150~220℃の温度の未反応低圧エチレンを、未反応低圧エチレン供給配管(9)を通して、未反応エチレン保持ドラム(15)へ供給する工程;及び
・フレッシュエチレン供給工程:フレッシュエチレンを、フレッシュエチレン配管(14)からエチレン配管(13)に供給する工程。
本発明の製造方法は、好ましくは、下記工程を更に含む;
・未反応高圧エチレンリサイクル工程:高圧分離器(5)で分離された未反応エチレンを未反応高圧エチレン供給配管(6)を通して減圧し、減圧した未反応エチレンを二次圧縮機(3)に供給する工程。
【0032】
圧縮工程
圧縮工程は、1段に限らず、2段以上の段階で圧縮する工程を含むことができる。
例えば、圧縮工程は、
一次圧縮機前段(1)によってエチレンを例えば0.04MPa~3MPaの範囲に圧縮し、
一次圧縮機前段(1)で圧縮されたエチレンを一次圧縮機後段(2)で例えば3MPa~20MPaの範囲に圧縮し、
一次圧縮機後段(2)で圧縮されたエチレンを二次圧縮機(3)で例えば20MPa~200MPaの範囲に圧縮する工程である。
【0033】
反応工程
反応工程は、
二次圧縮機(3)で圧縮されたエチレンと重合開始剤を反応器(4)に供給して、エチレンを重合し、ポリエチレンを生成する工程である。
反応工程の詳細な運転条件は、上記の反応器(4)の説明で記載した条件を適用することができる。
【0034】
分離工程
分離工程は、
反応器(4)で生成したポリエチレンと未反応エチレンを、高圧分離器(5)で分離し、
高圧分離器(5)から生成ポリエチレンを抜出し、抜出し配管(7)を通して、低圧分離器(8)へ供給し、
低圧分離器(8)でポリエチレンに含まれる未反応エチレンを分離し、ポリエチレンを抜出す工程である。
高圧分離器(5)及び低圧分離器(8)での分離工程の詳細な運転条件は、上記の高圧分離器(5)及び低圧分離器(8)の説明で記載した条件を適用することができる。
【0035】
未反応高圧エチレンリサイクル工程
未反応高圧エチレンリサイクル工程は、
高圧分離器(5)で分離された未反応エチレンを未反応高圧エチレン供給配管(6)を通して、未反応エチレンを二次圧縮機(3)に供給する工程である。
未反応高圧エチレンリサイクル工程の詳細な運転条件は、上記の未反応高圧エチレン供給配管(6)の説明で記載した条件を適用することができる。
【0036】
未反応低圧エチレンリサイクル工程
未反応低圧エチレンリサイクル工程は、
低圧分離器(8)で分離された未反応低圧エチレンを未反応低圧エチレン供給配管(9)を通して、未反応エチレン保持ドラム(15)へ供給する工程である。
未反応低圧エチレンリサイクル工程の詳細な運転条件は、上記の低圧分離器(8)及び未反応低圧エチレン供給配管(9)及び未反応エチレン保持ドラム(15)の説明で記載した条件を適用することができる。
【0037】
連鎖移動剤(CTA)供給工程
連鎖移動剤(CTA)供給工程は、連鎖移動剤(CTA)供給配管(17)から未反応低圧エチレン供給配管(16)へ、連鎖移動剤(CTA)を供給する工程である。
連鎖移動剤(CTA)供給工程の詳細な運転条件は、上記の連鎖移動剤(CTA)供給配管(17)及び未反応低圧エチレン供給配管(16)の説明で記載した条件を適用することができる。
【0038】
フレッシュエチレン供給工程
フレッシュエチレン供給工程は、
フレッシュエチレンを、フレッシュエチレン供給配管(14)からエチレン供給配管(13)に供給し、
エチレン供給配管(13)を通して一次圧縮機後段(2)へ供給する工程である。
フレッシュエチレン供給工程の詳細な運転条件は、上記のフレッシュエチレン供給配管(14)及びエチレン供給配管(13)の説明で記載した条件を適用することができる。
【0039】
本発明は高圧循環ガス系を備えた高圧エチレン重合装置を用いて実施することができる。
本発明においては、エチレンの重合又は共重合に用いることの知られているすべての重合開始剤及び連鎖移動剤を用いることができる。
【0040】
<重合開始剤>
本発明においては、エチレンの重合又は共重合に用いることの知られているすべての重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化ラウロイル、過酸化ジプロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ第三ブチル、第三ブチルヒドロパーオキシド、過酸化トリメチルヘキサノイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、第三ブチルパーアセテート、第三ブチルパーイソブチレートのような有機過酸化物、過酸化水素:分子状酸素;アゾビスイソブチロニトリル、アゾイソブチルバレロニトリルのようなアゾ化合物、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、酸素等を、好適な例としてあげることができる。
【0041】
<連鎖移動剤>
本発明においては、エチレンの重合又は共重合に用いることの知られているすべての連鎖移動剤を用いることができる。
連鎖移動剤としては、例えば、エタン、プロパン、ブタン、ヘフタン、ヘキサン、ペンタンのようなパラフィン炭化水素;プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、3-メチルブテン-1のようなα-オレフィン;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピレンアルデヒド、n-ブチルアルデヒドのようなアルデヒド;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソプロピルケトンのようなケトン;芳香族炭化水素;塩素化炭化水素等を好適な例としてあげることができる。好ましくは、連鎖移動剤(CTA)として、エタン、プロパン及びプロピレンを供給し、全CTA濃度に対するプロパン濃度の比を好ましくは0.75~0.93に調整して、連鎖移動剤(CTA)を供給する(ただし、濃度は体積基準の濃度であり、エチレン、エタン、プロパン及びプロピレンそれぞれの体積の合計を100体積%とする。)。
【0042】
<共単量体>
本発明の装置及び方法はエチレンと他のエチレンと共重合し得る共単量体との共重合にも適用できる。
本発明においては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのアルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ビニル、塩化ビニリチン、フッ化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルイミド化合物、ビニルアリール化合物、ビニルエーテル化合物及びビニルケトン化合物等を包含するエチレン性不飽和基を有する化合物のようなエチレンと共重合することの知られているすべての共単量体を用いることができる。
共単量体は、得られる共重合中に、0重量%を超え約50重量%以下、好ましくは約40重量%以下、より好ましくは約30重量%以下、更により好ましくは約20重量%以下の量で含まれるように、使用することができる。
共単量体は、いずれの設備及び工程に、添加することができる。共単量体は、例えば、圧縮機周辺から反応器周辺に至るまでの設備及び工程などに、添加することができる。
【実施例0043】
<ポリエチレンの物性の測定方法>
下記の実施例および比較例で製造されたポリエチレンの物性は、次の方法に従って測定した。
【0044】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210-1995に規定された方法において、荷重21.18N、温度190℃の条件で、A法によりメルトフローレートを測定した。
【0045】
(2)密度(単位:kg/m
JIS K6922-2に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112に規定された方法に従い、A法により測定した。
【0046】
(3)Mz/Mw(Mは、ポリエチレン換算分子量を示す)
ポリエチレンの分子量分布および各種ポリエチレン換算分子量(数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、z平均分子量Mz)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により求められる。Mz/Mwを求めるためのGPC測定は下記の条件で行う。ISO16014-1の記載に基づき、クロマトグラム上のベースラインを規定してピークを指定する。
(GPC装置およびソフトウェア)
装置:HLC-8321GPC/HT(東ソー株式会社製)
(測定条件)
GPCカラム:TSKgel GMHHR-H(S)HT 7.8mm I.D.×300mm(東ソー株式会社製) 3本
移動相:オルトジクロロベンゼン(和光純薬工業株式会社製、特級)にジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を0.1w/Vすなわち0.1g/100mLの濃度で添加して使用
流速:1mL/分
カラムオーブン温度:140℃
オートサンプラー温度:140℃
システムオーブン温度:40℃
検出:示差屈折率検出器(RID)
RIDセル温度:140℃
試料溶液注入量:300μL
GPCカラム較正用標準物質:東ソー株式会社製標準ポリスチレンをそれぞれ下表のような組み合わせで量り取り、5mLのオルトジクロロベンゼン(移動相と同じ組成)を加え、室温で120分間静置して溶解させて調製
【表0】

(試料溶液調製条件)
溶媒:オルトジクロロベンゼン(和光純薬工業株式会社製、特級)にBHTを0.1w/V(0.1g/100mL)の濃度で添加して使用した。
試料溶液濃度:1mg/mL
溶解用自動振とう器:DF-8020(東ソー株式会社製)
溶解条件:5mgの試料を1000meshのSUS製の金網袋に封入し、試料を封入した金網袋を試験管に入れ、試験管に5mLの溶媒を加え、試験管にアルミホイルで蓋をし、試験管を浸とう器にセットし、60往復/分の撹拌速度で140℃で120分間撹拌した。
【0047】
(4)光散乱面積比(RLS)の算出
光散乱面積比は、光散乱検出器を備えた液体クロマトグラフィー(LC)装置を用いて、各実施例及び各比較例のポリエチレンをオルトジクロロベンゼンに2mg/mLの濃度で溶解させた溶液の光散乱面積LSおよび東ソー株式会社製標準ポリスチレンF10(数平均分子量1000)をオルトジクロロベンゼンに2mg/mLの濃度で溶解させた溶液の光散乱面積LS’を測定し、以下式から算出した。
LS=LS/LS’(式1)
光散乱面積比(RLS)が大きいほど、すなわち、ポリエチレンをオルトジクロロベンゼンに溶解させた溶液の光散乱面積LSが大きいほど、ポリエチレン中の超高分子量成分量が多いことを示す。

測定の条件を以下に示す。
・LC装置:HLC-8121GPC/HT(東ソー株式会社製)
・光散乱検出器:PD2040(Precision Detectors社製)
・レーザー光源:波長685nm
・GPCカラム:なし
・試料溶液濃度:2mg/mL
・注入量:300μL
・測定温度:140℃
・溶解条件:145℃で2時間撹拌
・溶解用自動振とう器:DF-8020(東ソー株式会社製)
・溶媒および移動相:0.1w/VのBHTを含有するオルトジクロロベンゼン(和光純薬工業株式会社製、特級)
・移動相流速:1.0mL/分

具体的には、LC装置に、光散乱検出器(LS)を接続した。なお、光散乱検出に用いた散乱角度は90°であった。LSは、LC装置のカラムオーブン内に設置した。
試料の溶解は、詳しくは以下の手順により行った。まず、30mLのスクリューバイアルに40.0mgの試料および20.0mLの溶媒を入れて密栓し、スクリューバイアルをDF-8020(東ソー株式会社製)にセットし、140℃で2時間撹拌することにより試料を溶解させた。なお、前記方法で得られた試料溶液は、分析の前に、孔径10μmの円筒ろ紙(Whatman円筒ろ紙 直径18mm×長さ55mm、型番:2800-185)を用いてろ過を行った。ろ過は、試料の析出を避けるため140℃以上で行い、試料溶液に円筒ろ紙を浸し、浸した状態で5分間静置し平衡化させた後、円筒ろ紙内部に浸出した試料溶液を分析に供した。ろ過は溶媒の蒸発による試料溶液の濃度変化を避けるため20分間以内で行った。
なお、超高分子量成分がカラムに捕捉されるのを避けるため、GPCカラムおよびガードカラムは使用しなかった。また、クロマトグラムの取得のため、内径0.75mm、長さ5mのSUS配管1本を試料注入部とLS検出器の間に取り付けて、試料注入部および各検出器の温度を140℃とした。
得られたLSクロマトグラムに対しベースライン処理を行い、光散乱面積を算出した(図2を参照)。
光散乱面積を求めるにあたっては、Malvern社のデータ処理ソフトOmniSEC(version4.7)を利用した。
【0048】
(5)収縮因子g’の算出
試料の収縮因子g’は、示差屈折率検出器、粘度検出器及び光散乱検出器を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(3D-GPC)により測定した。
示差屈折率検出器(RI)を装備したGPCとして、東ソー社のHLC-8121GPC/HTを用いた。また、前記GPC装置に光散乱検出器(LS)として、Precision Detectors社のPD2040を接続した。光散乱検出に用いた散乱角度は90°であった。また、前記GPC装置に粘度検出器(VISC)として、Viscotek社のH502を接続した。LSおよびVISCはGPC装置のカラムオーブン内に設置し、LS、RI、VISCの順で接続した。LS、VISCの較正および検出器間の遅れ容量の補正には、Malvern社のポリスチレン標準物質であるPolycal TDS-PS-N(重量平均分子量Mw104,349、多分散度1.04)を1mg/mlの溶液濃度で用いた。移動相および溶媒には、安定剤としてジブチルヒドロキシトルエンを0.5mg/mLの濃度で添加したオルトジクロロベンゼンを用いた。試料の溶解条件は、145℃で2時間撹拌とした。流量は1ml/分とした。カラムは、東ソー社GMHHR-H(S) HTを3本連結して用いた。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃とした。試料溶液濃度は2mg/mLとした。試料溶液の注入量(サンプルループ容量)は0.3mlとした。NIST1475aおよびサンプルのオルトジクロロベンゼン中での屈折率増分(dn/dc)は、-0.078mL/gとした。ポリスチレン標準物質のdn/dcは0.079mL/gとした。各検出器のデータから絶対分子量および固有粘度([η])を求めるにあたっては、Malvern社のデータ処理ソフトOmniSEC(version4.7)を利用し、文献「Size Exclusion Chromatography,Springer(1999)」を参考にして計算を行った。なお、屈折率増分とは、濃度変化に対する屈折率の変化率である。

(収縮因子g’の算出)
収縮因子g’は、試料を上記した装置で測定して得られた固有粘度([η]sample)と、線形ポリエチレンの固有粘度([η]PE)の比([η]sample/[η]PE)から算出した。絶対分子量の常用対数logMが5.0から6.5の範囲における上記の固有粘度の比の重量平均値を、試料のg’とした。ここで、線形ポリプロピレンの[η]PEは、「Size Exclusion Chromatography,Springer(1999)」に記載のある下記の式から算出して用いた。

[η]PE = K × M^ α (dl/g) 式(I)
ここで、Mは絶対分子量である。

以下の方法により、式(I)のαとKを求めた。
αは、ポリエチレン標準物質1475aの絶対分子量の対数を横軸、ポリエチレン標準物質1475aの固有粘度の対数を縦軸として、測定したデータをプロットし、絶対分子量の対数と固有粘度の対数を、横軸が前記ポリエチレン標準物質1475aの重量平均分子量の対数以上z平均分子量の対数以下の範囲において式(I-I)で最小二乗法近似し、式(I-I)を表す直線の傾きの値をαとすることを含む方法により得られた値である。
log[η]=αlogM+logK (I-I)
(式(I-I)中、[η]はポリエチレン標準物質1475aの固有粘度(単位:dl/g)を表し、Mはポリエチレン標準物質1475aの絶対分子量を表し、Kは定数である。)

<測定条件>
GPC装置 : 東ソー HLC-8121GPC/HT
光散乱検出器 : Precision Detectors PD2040
差圧粘度計 : Viscotek H502
GPCカラム : 東ソー GMHHR-H(S)HT ×3本
試料溶液濃度 : 2mg/ml
注入量 : 0.3ml
測定温度 : 140℃
溶解条件 : 145℃で2時間撹拌
溶媒および移動相 : 0.05wt%のジブチルヒドロキシトルエンを含有するオルトジクロロベンゼン(和光特級)
移動相流速 : 1mL/分
測定時間 : 約1時間
【0049】
(6)ポリエチレンの製膜
以下の加工条件でインフレーションフィルムを製膜した。
加工機器:プラコー社製 L-40A
スクリュー径:40mmΦ
L/D:26
ダイス径:75mmφ
リップギャップ:1.0mm
設定温度:150℃
BUR:1.78
フィルム厚み:60μm
スクリュー回転数:60rpm
引取機:田島工業(株)社製 TW2B
【0050】
(7)ヘイズの測定
成形されたインフレーションフィルムについて、ASTM D 1003に準拠した積分球式光線透過率測定装置(株式会社東洋精機製作所 DIRECT READING HAZE METER) を用いて、ヘイズを求めた。この値が小さいほど高透明である。
【0051】
(8)クラリティ比の測定
成形されたインフレーションフィルムについて、ASTM D 1746に準拠した透明度測定器(株式会社村上色彩技術研究所製TM-1D型) を用いて、フィルム加工流れ方向(MD)のクラリティ(単位は%)と、フィルム加工直角方向(TD)のクラリティ(単位は%)を測定し下記式より、クラリティ比を求めた。この値が小さいほど光学的異方性が小さい。
クラリティ比=(MDのクラリティ-TDのクラリティ)/
[(MDのクラリティ+TDのクラリティ)/2]
【0052】
[実施例及び比較例]
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
【0053】
下記の実施例1~3及び比較例1~4でそれぞれ製造されたポリエチレンの物性値を表1に示す。
【表1】
【0054】
実施例1、2、3および比較例1、2、3、4
二次圧縮機3から反応器4に14.2~15.3ton/h(表2に記載)でエチレンガスを供給し、反応器4の圧力164~220MPa(表2に記載)、温度232~261℃(表2に記載)の条件で、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートもしくはt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(表2に記載)を添加して、エチレンを重合させた。生成ポリマー量は2.3~2.8ton/h(表2に記載)であった。
重合反応器4から18.9~20.1MPa(表2に記載)の高圧分離器5に重合混合物を放出し、248~260℃(表2に記載)で生成ポリマーと未反応エチレンガスに分離した。
高圧分離器5で分離した生成ポリマーを、ポリエチレン抜出し配管7を通して、0.044~0.045MPa(表2に記載)の低圧分離器8に抜出し、191~201℃(表2に記載)で、さらに生成ポリマーと未反応エチレンガスに分離した。生成ポリマーはポリエチレン抜出し配管10を通して抜出し、造粒機でペレットとした。
低圧分離器8で分離した未反応エチレンガスを、未反応低圧エチレン配管9を通して、0.040MPaで22~42℃(表2に記載)の温度の未反応エチレン保持ドラム15に供給した。未反応エチレン保持ドラム15で保持した0.040MPaの未反応エチレンガスをエチレン配管16を通して一次圧縮機前段1へ供給し、該エチレン配管16に連鎖移動剤(CTA)17としてエタン、プロパン、プロピレンを供給した。
一次圧縮機前段1で未反応エチレンガスとエタン、プロパン、プロピレンを2.9~3.1MPa(表2に記載)に圧縮して、エチレン配管13を通して一次圧縮機後段2へ供給した。
高圧分離器5で分離した未反応エチレンガスを、未反応高圧エチレン配管6を通して17.2~18.2MPa(表2に記載)まで減圧して、未反応エチレンガスの全量(100重量パーセント)を二次圧縮機3の入り口配管へ供給した。
3.0MPaのフレッシュエチレンガスをフレッシュエチレン供給配管14からエチレン配管13を通して一次圧縮機後段2へ供給した。
一次圧縮機前段1から供給された未反応エチレンガスおよびエタン、プロパン、プロピレンと、フレッシュエチレンガスの混合エチレンガスを、一次圧縮機後段2で18.3~19.5MPa(表2に記載)に圧縮し、二次圧縮機3へ供給した。
二次圧縮機3で166~220MPa(表2に記載)に圧縮されたエチレンガスとエタン、プロパン、プロピレンを重合反応器4へ供給して、重合反応を連続して行った。
高圧エチレン配管18に設置したガスクロマトグラフィーで、連鎖移動剤(CTA)のエタン、プロパン及びプロピレン濃度をそれぞれ測定して、ガス全量(エチレン、エタン、プロパン、プロピレン)中の、全CTA(エタン、プロパン、プロピレン)濃度を2.15~3.44vol.%(表2に記載)に調整し、かつ全CTA(エタン、プロパン、プロピレン)濃度に対するプロパン濃度の比を0.31~0.91(表2に記載)に調整した。
【0055】
【表2】
【0056】
表1及び表2の結果から、連鎖移動剤(CTA)供給工程において、全CTA濃度に対するプロパン濃度の比を特定の比率(0.70~0.95)に調整した実施例1~3は、当該特定の比率の範囲外の比較例1~4と比較すると、得られたフィルムのヘイズが低く、クラリティ比が低いことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、高圧法ポリエチレン製造方法における連鎖移動剤(CTA)供給工程を、特定の圧力及び温度で、特定の連鎖移動剤(CTA)を特定の濃度比率で供給して実施することによって、フィルムの取扱い易さとフィルムの欠点(フィッシュアイ、エア噛みこみ)の検出の容易さのバランスを改良したポリエチレンを製造することができる。
本発明のポリエチレンの用途は、重袋、シュリンク、一般包装、薄物フィルム、プロテクトフィルム(保護フィルム)、押出ラミネートフィルム、押出成形フィルム、発泡成形フィルムなどの、多種多様なフィルムであり、家電機器の各種部品、各種住宅設備機器部品、各種工業部品、各種建材部品、各種自動車内外装部品などの用途に好適に用いられ、電気電子産業、家庭用品、輸送機械産業、建築建設産業等の産業の各分野において高い利用可能性を有する。
図1
図2