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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072607
(43)【公開日】2023-05-24
(54)【発明の名称】使い捨てマスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230517BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
A41D13/11 B
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185300
(22)【出願日】2021-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】神之田 有紗
(72)【発明者】
【氏名】古屋 芳織
(72)【発明者】
【氏名】若杉 慶
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CA03
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】複数の襞部を有するマスクにおいて、マスク本体の横方向端部における中間領域と顔の表面との間に隙間が生じず、下側端部と顔の表面との間に隙間が生じないように調整することが可能な使い捨てマスクを提供する。
【解決手段】使い捨てマスク(1)は、シートで構成されたマスク本体(3)と、マスク本体の横方向の両側縁から延びる一対の耳掛け部(5)と、を具備する。マスク本体は、折り重なったシートの一部で形成され、横方向に沿って延び、上下方向に間隔を空けて並んだ複数の襞部(11)と、折り重なっていないシートの一部で形成され、複数の襞部のうちの上下方向に隣り合う襞部の間に位置する複数の連結部(12)と、を備える。複数の襞部の各々は、横方向の両端部の各々に、複数の襞部の各々におけるシート同士を互いに固定する接合部(20)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向、横方向及び厚さ方向を有し、シートで構成されたマスク本体と、前記マスク本体の前記横方向の両側縁から延びる一対の耳掛け部と、を具備する使い捨てマスクであって、
前記マスク本体は、
折り重なった前記シートの一部で形成され、前記横方向に沿って延び、前記上下方向に間隔を空けて並んだ複数の襞部と、
折り重なっていない前記シートの一部で形成され、前記複数の襞部のうちの前記上下方向に隣り合う襞部の間に位置する複数の連結部と、
を備え、
前記複数の襞部の各々は、前記横方向の両端部の各々に、前記複数の襞部の各々における前記シート同士を互いに固定する接合部を有する、
使い捨てマスク。
【請求項2】
前記接合部は、
前記横方向及び前記上下方向に対して傾斜した方向に沿って、連続的又は断続的に延設された傾斜方向接合部を含む、
請求項1に記載の使い捨てマスク。
【請求項3】
前記傾斜方向接合部は、前記横方向の外側に向かうに連れて前記襞部の頂部側から谷部側へ向かうように、前記横方向に対して傾斜した傾斜方向に沿って、連続的又は断続的に延設されている、
請求項2に記載の使い捨てマスク。
【請求項4】
前記接合部は、
前記傾斜方向接合部における前記襞部の谷部側の端部又はその近傍に配置され、前記横方向に沿って、連続的又は断続的に延設された第1横方向接合部を更に含む、
請求項3に記載の使い捨てマスク。
【請求項5】
前記接合部は、
前記傾斜方向接合部における前記襞部の頂部側の端部又はその近傍に配置され、前記横方向に沿って、連続的又は断続的に延設された第2横方向接合部を更に含む、
請求項3又は4に記載の使い捨てマスク。
【請求項6】
前記接合部の前記上下方向の長さは、前記複数の襞部の各々の前記上下方向の長さの70~90%である、
請求項2乃至5のいずれか一項に記載の使い捨てマスク。
【請求項7】
前記接合部の前記上下方向の端部は、平面視で、前記襞部の頂部及び前記襞部の谷部の少なくとも一方から離間している、
請求項2乃至6のいずれか一項に記載の使い捨てマスク。
【請求項8】
前記複数の連結部の各々は、前記上下方向の一番下側の連結部が他の連結部よりも、前記上下方向の幅が大きい、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の使い捨てマスク。
【請求項9】
前記複数の連結部の各々は、前記上下方向の上方から下方に向かうに連れて、前記上下方向の幅が大きくなる、
請求項8に記載の使い捨てマスク。
【請求項10】
前記接合部は、エンボスで形成されている、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の使い捨てマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
マスク本体と一対の耳掛け部とを備え、マスク本体が、横方向に沿って延び、上下方向に間隔を空けて並んだ複数の襞部(プリーツ)を有する、使い捨てマスクが知られている。その使い捨てマスクでは、着用時に、それら複数の襞部の横方向の中央部が上下方向に拡げられることにより、マスク本体に立体的な形状(カップ)が形成される。このようなマスクとしては、例えば、特許文献1に、上下方向及び幅方向を有し、前記上下方向の寸法を2等分する横断中心線と、マスク本体と、マスク本体の両側縁から環状に延びる一対の耳掛け部とを含む使い捨てマスクが開示されている。この使い捨てマスクでは、マスク本体は、不織布製のシートから形成されており、一対の耳掛け部の基端部が位置する上下端部と、上下端部間に位置する口覆い部と、両側縁に沿って上下方向へ断続的に延びる、複数の接合部が配置されたシール域とを有する。口覆い部は、シートが折り重ねられた重畳部分からなる襞部と、上下方向において襞部間に位置する非重畳部分とを有する。非重畳部分は、横断中心線よりも下方に位置する非シール域を有する。非重畳部分の下側に位置する襞部には、複数の接合部が幅方向へ並んでなる幅広接合部が位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-14673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなマスクでは、一対の耳掛け部の各々における一方及び他方の端部は、マスク本体の横方向の一方の端部における上下方向の上側及び下側の端部にそれぞれ接続されている。そして、マスクの着用時に、耳掛け部が耳に掛けられることで、マスク本体の横方向端部における上側端部及び下側端部が耳の方向に引き上げられて、マスク本体の横方向端部が顔の表面に押し付けられる。それにより、マスク本体の横方向端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制している。
【0005】
ところが、顔の形状が面長で、顔全体における耳の位置が相対的に低く(顎側に近く)、前方に寄っている(鼻側に近い)ような人の場合、マスク本体の横方向端部における下側端部を耳掛け部で耳の方向に引き上げることは困難になる。その結果、マスク本体の横方向端部における下側端部と顔の表面との間に隙間が生じるおそれがある。
【0006】
特許文献1では、マスクの着用時に、上下方向の略中央部に一箇所設けられた非重畳部分の一部が前後方向において折り重なるように屈曲することで、非重畳部分よりも下方に延びる下側部分が着用者の顔の表面に沿うように後方へ移動している。それにより、マスク本体の幅方向の両端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制している。しかし、着用者の顔が上記のような特徴を有する場合、特許文献1の手段だけでは、マスク本体の横方向端部における下側端部と顔の表面との間に隙間が生じる可能性は依然として存在している。
【0007】
そうかと言って、マスク本体の横方向端部における下側端部を耳掛け部の工夫だけで耳の方向引き上げようとすると、マスク本体と頬との間、すなわち、マスク本体の横方向端部における上側端部と下側端部との間の中間領域と、顔(頬)の表面と、の間に隙間が生じてしまうおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、複数の襞部を有するマスクにおいて、マスク本体の横方向端部における中間領域と顔の表面との間に隙間が生じないように維持しつつ、マスク本体の横方向端部における下側端部と顔の表面との間に隙間が生じないように調整することが可能な使い捨てマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の使い捨てマスクは、上下方向、横方向及び厚さ方向を有し、シートで構成されたマスク本体と、前記マスク本体の前記横方向の両側縁から延びる一対の耳掛け部と、を具備する使い捨てマスクであって、前記マスク本体は、折り重なった前記シートの一部で形成され、前記横方向に沿って延び、前記上下方向に間隔を空けて並んだ複数の襞部と、折り重なっていない前記シートの一部で形成され、前記複数の襞部のうちの前記上下方向に隣り合う襞部の間に位置する複数の連結部と、を備え、前記複数の襞部の各々は、前記横方向の両端部の各々に、前記複数の襞部の各々における前記シート同士を互いに固定する接合部を有する、使い捨てマスク、である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の襞部を有するマスクにおいて、マスク本体の横方向端部における中間領域と顔の表面との間に隙間が生じないように維持しつつ、マスク本体の横方向端部における下側端部と顔の表面との間に隙間が生じないように調整することが可能な使い捨てマスクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る使い捨てマスクの構成例を示す平面図である。
図2図1の使い捨てマスクにおける上下方向中心線に沿った断面図である。
図3図2の襞部及び連結部における部分拡大図(断面図)である。
図4】実施形態に係る使い捨てマスクの接合部の構成例を示す平面図である。
図5】実施形態に係る使い捨てマスクの構成例を示す部分平面図である。
図6】実施形態に係る使い捨てマスクの着用例を示す斜視図である。
図7図6の使い捨てマスクの横方向端部を示す部分拡大図(斜視図)である。
図8】別の実施形態に係る使い捨てマスクにおける上下方向中心線に沿った部分拡大図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]
上下方向、横方向及び厚さ方向を有し、シートで構成されたマスク本体と、前記マスク本体の前記横方向の両側縁から延びる一対の耳掛け部と、を具備する使い捨てマスクであって、前記マスク本体は、折り重なった前記シートの一部で形成され、前記横方向に沿って延び、前記上下方向に間隔を空けて並んだ複数の襞部と、折り重なっていない前記シートの一部で形成され、前記複数の襞部のうちの前記上下方向に隣り合う襞部の間に位置する複数の連結部と、を備え、前記複数の襞部の各々は、前記横方向の両端部の各々に、前記複数の襞部の各々における前記シート同士を互いに固定する接合部を有する、使い捨てマスク。
【0013】
複数の襞部(プリーツ)を有するマスクの着用時では、複数の襞部の横方向中央部を上下方向に拡げて、マスク本体に立体的な形状を形成するとき、複数の襞部の横方向端部は互いに接近するように移動する。そこで、本使い捨てマスクでは、上下方向に隣り合う襞部の間に連結部を設けている。連結部は、折り重なっていないシートの一部で形成されているので、襞部と比較して剛性が低く、屈曲し易くなっている。それゆえ、マスク本体に立体的な形状を形成するとき、それら剛性の低い複数の連結部を屈曲させて、隣り合う襞部に折り重ねることができる。それにより、複数の襞部の横方向端部を互いに接近させ、それらの一部を屈曲した連結部に重ね合わせることができ、マスク本体の横方向端部を全体として着用者の顔の表面に沿うように湾曲した形状に容易に変形することができる。したがって、マスク本体の横方向端部において、中間領域と顔の表面との間に隙間が生じないように維持しつつ、下側端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0014】
[態様2]
前記接合部は、前記横方向及び前記上下方向に対して傾斜した方向に沿って、連続的又は断続的に延設された傾斜方向接合部を含む、態様1に記載の使い捨てマスク。
本使い捨てマスクは、上記の構成を有している。そのため、マスク着用時に、複数の襞部の横方向中央部を上下方向に拡げ、横方向端部を互いに接近させつつ、複数の連結部を屈曲させて隣り合う襞部に折り重ねるとき、傾斜方向接合部により、複数の連結部の屈曲の方向や複数の襞部が拡がる方向を適切な方向にガイドすることができる。それにより、マスク本体の横方向端部が顔の表面に沿うように湾曲した形状を取ることができる。したがって、マスク本体の立体的な形状を容易に形成・維持できるため、マスク本体の横方向端部において、中間領域と顔の表面との間に隙間が生じないように維持しつつ、下側端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0015】
[態様3]
前記傾斜方向接合部は、前記横方向の外側に向かうに連れて前記襞部の頂部側から谷部側へ向かうように、前記横方向に対して傾斜した傾斜方向に沿って、連続的又は断続的に延設されている、態様2に記載の使い捨てマスク。
本使い捨てマスクは、上記の構成を有している。言い換えると、傾斜方向接合部は、横方向中央部に向かうに連れて襞部の谷部側から頂部側へ近づくような方向に、よって、襞部が拡がる方向に向かって傾斜した傾斜方向に沿って延設されている。そのため、マスク着用時に、複数の襞部の横方向中央部を上下方向に拡げ、横方向端部を互いに接近させつつ、複数の連結部を屈曲させて隣り合う襞部に折り重ねるとき、傾斜方向接合部により、複数の連結部の屈曲の方向を適切な方向にガイドすることができる。それにより、複数の襞部が拡がる方向を適切な方向にガイドすることができ、マスク本体の横方向中央部で形成した立体的な形状を維持しつつ、マスク本体の横方向端部が顔の表面に沿うように湾曲した形状を取ることができる。したがって、マスク本体の立体的な形状を容易に維持できるため、マスク本体の横方向端部において、中間領域と顔の表面との間に隙間が生じないように維持しつつ、下側端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0016】
[態様4]
前記接合部は、前記傾斜方向接合部における前記襞部の谷部側の端部又はその近傍に配置され、前記横方向に沿って、連続的又は断続的に延設された第1横方向接合部を更に含む、態様3に記載の使い捨てマスク。
本使い捨てマスクは、上記の構成を有している。それゆえ、複数の襞部の横方向端部での剛性や形状安定性を高めることができる。そのため、マスク着用時に、複数の襞部の横方向中央部を上下方向に拡げ、横方向端部を互いに接近させつつ、複数の連結部を屈曲させて隣り合う襞部に折り重ねるとき、第1横方向接合部により、複数の襞部の横方向端部における屈曲を抑制することができる。それにより、マスク本体の横方向端部が顔の表面に沿うように湾曲した形状を維持することができる。したがって、マスク本体の立体的な形状を容易に維持できるため、マスク本体の横方向端部において、中間領域と顔の表面との間に隙間が生じないように維持しつつ、下側端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0017】
[態様5]
前記接合部は、前記傾斜方向接合部における前記襞部の頂部側の端部又はその近傍に配置され、前記横方向に沿って、連続的又は断続的に延設された第2横方向接合部を更に含む、態様3又は4に記載の使い捨てマスク。
本使い捨てマスクは、上記の構成を有している。それゆえ、複数の襞部の横方向端部での剛性や形状安定性を高めることができる。そのため、マスク着用時に、複数の襞部の横方向中央部を上下方向に拡げ、横方向端部を互いに接近させつつ、複数の連結部を屈曲させて隣り合う襞部に折り重ねるとき、第2横方向接合部により、複数の襞部における横方向端部が厚さ方向に浮き上がることを抑制できる。それにより、マスク本体の横方向端部が顔の表面に沿うように湾曲した形状を維持することができる。したがって、マスク本体の立体的な形状を容易に維持できるため、マスク本体の横方向端部において、中間領域と顔の表面との間に隙間が生じないように維持しつつ、下側端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0018】
[態様6]
前記接合部の前記上下方向の長さは、前記複数の襞部の各々の前記上下方向の長さの70~90%である、態様2乃至5のいずれか一項に記載の使い捨てマスク。
本使い捨てマスクは、上記の構成を有している。そのため、マスク着用時に、接合部により、複数の連結部の屈曲の方向や複数の襞部が拡がる方向を適切な方向にガイドしつつ、隣接する連結部の変形の自由度を高めることができる。それにより、マスク本体の横方向端部が顔の表面に沿うように湾曲した形状を取り易くすることができる。したがって、マスク本体の横方向端部において、中間領域と顔の表面との間に隙間が生じないように維持しつつ、下側端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0019】
[態様7]
前記接合部の前記上下方向の端部は、平面視で、前記襞部の頂部及び前記襞部の谷部の少なくとも一方から離間している、態様2乃至6のいずれか一項に記載の使い捨てマスク。
本使い捨てマスクは、上記の構成を有している。そのため、マスク着用時に、連結部と共に屈曲する領域を襞部内にも広くとることができる。それにより、複数の連結部の屈曲の方向や複数の襞部が拡がる方向を適切な方向にガイドしつつ、隣接する連結部の変形の自由度をより高めることができる。それにより、マスク本体の横方向端部が顔の表面に沿うように湾曲した形状を取り易くすることができる。したがって、マスク本体の横方向端部において、中間領域と顔の表面との間に隙間が生じないように維持しつつ、下側端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0020】
[態様8]
前記複数の連結部の各々は、前記上下方向の一番下側の連結部が他の連結部よりも、前記上下方向の幅が大きい、態様1乃至7のいずれか一項に記載の使い捨てマスク。
本使い捨てマスクは、上記の構成を有している。そのため、複数の連結部を屈曲させて隣り合う襞部に折り重ねるとき、マスク本体の横方向端部における下側端部をより湾曲した形状にすることができる。それゆえ、マスク本体の横方向端部が全体として着用者の顔の表面に沿うように湾曲した形状を取ることができる。それにより、マスク本体の横方向端部において、中間領域と顔の表面との間に隙間が生じないように維持しつつ、下側端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0021】
[態様9]
前記複数の連結部の各々は、前記上下方向の上方から下方に向かうに連れて、前記上下方向の幅が大きくなる、態様8に記載の使い捨てマスク。
本使い捨てマスクは、上記の構成を有している。そのため、複数の連結部を屈曲させて隣り合う襞部に折り重ねるとき、マスク本体の横方向端部における中央の領域をより湾曲させることができ、かつ、下側端部を更により湾曲した形状にすることができる。それゆえ、マスク本体の横方向端部が全体として着用者の顔の表面に沿うように湾曲した形状を取ることができる。それにより、マスク本体の横方向端部において、中間領域と顔の表面との間に隙間が生じないように維持しつつ、下側端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0022】
[態様10]
前記接合部は、エンボスで形成されている、態様1乃至9のいずれか一項に記載の使い捨てマスク。
本使い捨てマスクは、上記の構成を有している。そのため、接合部が外れ難く、それゆえ、マスク本体の横方向端部が湾曲した形状を安定的に維持することができる。それにより、マスク本体の横方向端部において、中間領域と顔の表面との間に隙間が生じないように維持しつつ、下側端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0023】
以下、実施形態に係る使い捨てマスクについて図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1図2は実施形態に係る使い捨てマスク1(以下、単に「マスク1」ともいう。)の構成例を示す図である。ただし、図1はマスク1の構成例を示す平面図であり、図2図1における上下方向中心線CVに沿った断面図である。
【0025】
マスク1は、互いに直交する上下方向Vと横方向Hと厚さ方向Tとを有し、マスク本体3と、マスク本体3の横方向Hの両側縁から延びる一対の耳掛け部5とを備えている。また、マスク1は、マスク本体3の横方向Hの中心を通り、上下方向Vに延びる上下方向中心線CVと、マスク本体3の上下方向Vの中心を通り、横方向Hに延びる横方向中心線CHを有している。そして、上下方向中心線CVに向かう向き及び側をそれぞれ横方向Hの「内向き」及び「内側」ともいい、遠ざかる向き及び側をそれぞれ横方向Hの「外向き」及び「外側」ともいう。一方、横方向中心線CHに向かう向き及び側をそれぞれ上下方向Vの「内向き」及び「内側」ともいい、遠ざかる向き及び側をそれぞれ上下方向Vの「外向き」及び「外側」ともいう。マスク1の着用時にマスク1の厚さ方向Tにおいて相対的に着用者の肌面に近い側及び遠い側をそれぞれ「肌側」及び「非肌側」という。マスク1を厚さ方向Tの上方(非肌側)から見ることを「平面視」といい、平面視で把握される形状を「平面形状」といい、上下方向V及び横方向Hを含む平面内の任意方向を「面内方向」という。上下方向V又は横方向Hに「沿う」とは上下方向V又は横方向Hに対して±30°(好ましくは15°)の範囲の方向を含むものとする。ある部材等の、ある方向(例示:上下方向V、横方向H)の「端部」とは、その部材等の、その方向の端縁からその方向での全体の長さの1/8(好ましくは1/10)の寸法の範囲をいう。例えば、マスク本体3の横方向Hの端部(横方向端部)とは、マスク本体3の横方向Hの端縁から、マスク本体3の横方向Hの最大長さの1/8(好ましくは1/10)の幅の範囲をいう。マスク本体における相対的に上側(ノーズフィット側)/下側に位置することを、「上下方向Vの上側/下側に位置する」ともいう。
【0026】
マスク本体3は、シート30で形成されている。本実施形態では、平面視で、上下方向中心線CVに対して線対称であり、上下方向Vに短く、横方向Hに長い略矩形(角が丸められている)の形状を有している。ただし、マスク本体3の形状は、鼻や口を覆うことが可能ならばこの例に限定されず、例えば、短辺が半円弧状の略矩形、略楕円の形状、略逆三角の形状、略多角形の形状、それらの組み合わせなどが挙げられる。
【0027】
マスク本体3は、横方向Hに沿って延び、上下方向Vに間隔を空けて並んだ複数の襞部11を備えている。したがって、マスク本体3は複数の襞部11が並んだプリーツ型構造を有している。そして、本実施形態では、複数の襞部11は、上下方向Vの上側に位置し、上下方向Vの上側に向いた襞部11a、11bと、上下方向Vの下側に位置し、上下方向Vの下側に向いた襞部11c、11dと、を含んでいる。したがって、マスク本体3は、横方向Hから見て概ね「Ω」状の形状を示すΩ型構造を有している。それにより、マスク1の着用時に、上側に向いた襞部11a、11bと下側に向いた襞部11c、11dにおける横方向Hの中央部が、上下方向Vに拡げられ、蛇腹状に変形してマスク本体3と着用者との間に立体的な形状(カップ)を形成できる。ただし、複数の襞部11の各々は、シート30の一部が折り重なった状態で形成されている。
【0028】
マスク本体3は、複数の襞部11のうちの上下方向Vに隣り合う襞部11の間に位置する複数の連結部12を備えている。複数の連結部12は、横方向Hに沿って延び、上下方向Vに間隔を空けて並んでいる。そして、本実施形態では、複数の連結部12は、隣り合う襞部11aと襞部11bとの間に位置する連結部12aと、隣り合う襞部11bと襞部11cとの間に位置する連結部12bと、隣り合う襞部11cと襞部11dとの間に位置する連結部12cと、を含んでいる。ただし、複数の連結部12の各々は、シート30の一部が折り重なっていない状態で形成されている。したがって、シート30が折り重なった襞部11と比較して、シート30が折り重なっていない連結部12の方が、剛性が低く、屈曲のような変形が容易である。
【0029】
図3は、図2の襞部11及び連結部12における部分拡大図(断面図)である。本実施形態では、襞部11は、詳細には以下のような構成を有する。襞部11aは、厚さ方向Tの肌側の基材31aと、厚さ方向Tの非肌側の襞32aとを含んでいる。襞32aは、厚さ方向Tの肌側の第1部分33aと、厚さ方向Tの非肌側の第2部分34aと、を含んでいる。襞部11aでは、基材31aの上下方向Vの下側端部と、第1部分33aの上下方向Vの下側端部とが谷部Vaで連結され、第1部分33aの上下方向Vの上側端部と、第2部分34aの上下方向Vの上側端部とが頂部Taで連結されている。
【0030】
同様に、襞部11bは、厚さ方向Tの肌側の基材31bと、厚さ方向Tの非肌側の襞32bとを含んでいる。襞32bは、厚さ方向Tの肌側の第1部分33bと、厚さ方向Tの非肌側の第2部分34bと、を含んでいる。襞部11bでは、基材31bの上下方向Vの下側端部と、第1部分33bの上下方向Vの下側端部とが谷部Vbで連結され、第1部分33bの上下方向Vの上側端部と、第2部分34bの上下方向Vの上側端部とが頂部Tbで連結されている。
【0031】
同様に、襞部11cは、厚さ方向Tの肌側の基材31cと、厚さ方向Tの非肌側の襞32cとを含んでいる。襞32cは、厚さ方向Tの肌側の第1部分33cと、厚さ方向Tの非肌側の第2部分34cと、を含んでいる。襞部11cでは、基材31cの上下方向Vの上側端部と、第1部分33cの上下方向Vの上側端部とが谷部Vcで連結され、第1部分33cの上下方向Vの下側端部と、第2部分34cの上下方向Vの下側端部とが頂部Tcで連結されている。
【0032】
同様に、襞部11dは、厚さ方向Tの肌側の基材31dと、厚さ方向Tの非肌側の襞32dとを含んでいる。襞32dは、厚さ方向Tの肌側の第1部分33dと、厚さ方向Tの非肌側の第2部分34dと、を含んでいる。襞部11dでは、基材31dの上下方向Vの上側端部と、第1部分33dの上下方向Vの上側端部とが谷部Vdで連結され、第1部分33dの上下方向Vの下側端部と、第2部分34dの上下方向Vの下側端部とが頂部Tdで連結されている。
【0033】
本実施形態では、襞部11a、11b、襞部11c、11dにおける上下方向Vの幅D11a、D11b、D11c、D11dは、同じ長さである。ただし、それらの幅の関係は、特に限定されるものではなく、少なくとも一つが他と異なってもよい。
【0034】
一方、本実施形態では、連結部12は、詳細には以下のような構成を有する。連結部12aは、上下方向Vの上側端部を、襞部11aの第2部分34aの上下方向Vの下側端部と連結され、下側端部を、襞部11bの基材31bの上下方向Vの上側端部と連結されている。
【0035】
同様に、連結部12bは、上下方向Vの上側端部を、襞部11bの第2部分34bの上下方向Vの下側端部と連結され、下側端部を、襞部11cの第2部分34cの上下方向Vの上側端部と連結されている。
【0036】
同様に、連結部12cは、上下方向Vの上側端部を、襞部11cの基材31cの上下方向Vの下側端部と連結され、下側端部を、襞部11dの第2部分34dの上下方向Vの上側端部と連結されている。
【0037】
複数の連結部12の各々は、上下方向Vにおいて、相対的に下側の連結部12の幅が、相対的に上側の連結部12の幅と同じか大きいことが好ましい。すなわち、連結部12a、12b、12cにおける上下方向Vの幅d12a、d12b、d12cは、d12a≦d12b≦d12cである。より好ましい態様としては、少なくとも一番下側の連結部12の幅が、他の連結部12の幅よりも大きい。すなわち、d12a≦d12b<d12cである。本実施形態では、更に好ましい態様といて、上下方向Vの上方から下方に向かうに連れて、連結部12の幅が大きくなるようにしている。すなわち、d12a<d12b<d12cとしている。具体的には、例えば、d12a、d12b、d12c=2mm、3mm、4mmが挙げられる。ただし、少なくともd12cが2mm以上あればd12aとd12bは0mm以下であってもよい。それにより、後述されるように、マスク着用時に、マスク本体3を上下方向Vの下側へより拡げやすくなる。ただし、それらの幅の関係は、特に限定されるものではない。
【0038】
更に、図1に示すように、複数の襞部11の各々は、横方向Hの両端部の各々に、複数の襞部11の各々におけるシート30同士を互いに固定する接合部20を有している。接合部20は、例えば、エンボス加工や超音波などを用いた熱融着や接着剤を用いた接着などの方法で形成される。そして、本実施形態では、接合部20は、襞部11a、11b、襞部11c、11dにおける横方向Hの両端部にそれぞれ設けられた接合部20a、20b、20c、20dを含んでいる。接合部20aは、襞部11aの基材31aと第1部分33aと第2部分34aとを厚さ方向Tに互いに接合している。接合部20bは、襞部11bの基材31bと第1部分33bと第2部分34bとを厚さ方向Tに互いに接合している。接合部20cは、襞部11cの基材31cと第1部分33cと第2部分34cとを厚さ方向Tに互いに接合している。接合部20dは、襞部11dの基材31dと第1部分33dと第2部分34dとを厚さ方向Tに互いに接合している。本実施形態では、接合部20a、20b、20c、20dは、第2部分、第1部分及び基材を挟持して行うエンボス加工で形成される。
【0039】
一方、連結部12は、折り重なっていないシート30で形成されている(シート30で形成されているが、連結部12を形成するシート30は折り重なってはいない)。そのため、連結部12は、接合部20を有さない。したがって、マスク本体3の横方向Hの両端部では、シート30が折り重なり、かつ、接合部20が形成された襞部11の剛性が高く、シート30が折り重ならず、かつ、接合部20が形成されていない連結部12の剛性は低い。よって、連結部12の方が襞部11よりも屈曲のような変形を容易に生じ得る。
【0040】
図4及び図5は、実施形態に係るマスク1の接合部20の構成例を示す図である。ただし、図4は接合部20の構成例を示す平面図であり、接合部20a、20b、20c、20dのうちの接合部20cを参考に示している。ただし、その構成は、接合部20a、20b、20dであっても一部、向きが異なるほかは同様である。図5はマスク1の構成例を示す部分平面図である。
【0041】
本実施形態では、接合部20は、詳細には以下の構成を有する。接合部20は、横方向H及び上下方向Vに対して傾斜した方向に沿って、連続的又は断続的に延設された傾斜方向接合部22を含んでいる。ただし、「連続的に延設」とは、接合部20が線状や帯状に連なった状態で設けられていることを示し、「断続的に延設」とは、接合部20が複数の小さな接合部が飛び飛びに並んだ状態で設けられていることを示す。小さな接合部の形状は特に制限はなく、例えば、円形、楕円形、正方形、菱形、他の多角形状が挙げられる。
【0042】
接合部20は、好ましくは傾斜方向接合部22を備える。傾斜方向接合部22は、横方向Hの外側(マスク本体3の端縁3Eの方向)に向かうに連れて襞部11の頂部Tx(例示:Ta,Tb,Tc,Td)側から谷部Vx(例示:Va,Vb,Vc,Vd)側へ向かうように、横方向Hに対して(角度θだけ)傾斜した傾斜方向に沿って、連続的又は断続的に延設されている。言い換えると、傾斜方向接合部22は、横方向Hの中央部(上下方向中心線CV)に向かうに連れて襞部11の谷部Vx側から頂部Tx側へ近づくような方向に、よって、襞部11が拡がる方向Pに向かって傾斜した傾斜方向に沿って延設されている。したがって、複数の襞部11の横方向Hの端部が上下方向Vの中央部に集まるとき、剛性が弱い連結部12のシート30や、隣接する襞部11のシート30(例示:基材31a、31b、31c、31d)における接合されていない部分は、剛性が強い傾斜方向接合部22の傾斜方向に沿って、容易に屈曲することができる。
【0043】
接合部20は、好ましくは、傾斜方向接合部22における襞部11の谷部Vx側の端部又はその近傍に配置され、横方向Hに沿って、連続的又は断続的に延設された第1横方向接合部21を更に含んでいる。したがって、襞部11の横方向Hの端部の剛性や形状安定性を高めることができる。それにより、複数の襞部11の横方向Hの端部が上下方向Vの中央部に集まり、複数の連結部12が屈曲するとき、複数の襞部11の横方向Hの端部が屈曲することを抑制できる。
【0044】
接合部20は、好ましくは、傾斜方向接合部22における襞部11の頂部Tx側の端部又はその近傍に配置され、横方向Hに沿って、連続的又は断続的に延設された第2横方向接合部23を更に含んでいる。したがって、襞部11の横方向Hの端部の剛性や形状安定性を高めることができる。それにより、複数の襞部11の横方向Hの端部が上下方向Vの中央部に集まり、複数の連結部12が屈曲するとき、複数の襞部11の谷部Vxが基材(例示:31a、31b、31c、31d)から浮き上がることを抑制できる。
【0045】
なお、第1横方向接合部21及び第2横方向接合部23の横方向Hの位置は、同じであってもよいが、頂部Tx側の第2横方向接合部23の方が、横方向Hの内側(上下方向中心線CV側)に寄っている方が好ましい。それにより、第1横方向接合部21、傾斜方向接合部22及び第2横方向接合部23が、全体として傾斜方向に傾いた接合部20となり、傾斜方向接合部22の作用効果をより発揮することができる。
【0046】
本実施形態では、傾斜方向接合部22は、襞部11に、横方向Hに対して角度θだけ傾斜した傾斜方向に間隔を空けて並んだ円形状の融着部21a、22a、22b、23bである。第1横方向接合部21は、襞部11の谷部Vx側の端部に、横方向Hと略平行に間隔を空けて並んだ円形状の融着部21a、21bである。第2横方向接合部23は、襞部11の頂部Tx側の端部に、横方向Hと略平行に間隔を空けて並んだ円形状の融着部23a、23bである。なお、融着部21aは傾斜方向接合部22と第1横方向接合部21とで兼用され、融着部23bは傾斜方向接合部22と第2横方向接合部23とで兼用されている。ただし、融着部は兼用されなくてもよく、それぞれ別途、独立した融着部が設けられてもよい。
【0047】
そして、上下方向Vの上側を向いた襞部11a、11bでは、第1横方向接合部21、傾斜方向接合部22及び第2横方向接合部23が、上下方向Vの下側から上側へ順に、すなわち、谷部Va、Vbから頂部Ta、Tbへ向かって配置されている。その際、頂部Ta、Tb側の第2横方向接合部23の方が、横方向Hの内側(上下方向中心線CV側)に寄って配置されている。一方、上下方向Vの下側を向いた襞部11c、11dでは、第1横方向接合部21、傾斜方向接合部22及び第2横方向接合部23が、上下方向Vの上側から下側へ順に、すなわち、谷部Vc、Vdから頂部Tc、Tdへ向かって配置されている。その際、頂部Tc、Td側の第2横方向接合部23の方が、横方向Hの内側(上下方向中心線CV側)に寄って配置されている。
【0048】
接合部20の上下方向Vの長さは、複数の襞部11の各々の上下方向Vの長さの70~90%であることが好ましい。マスク着用時に、隣接する複数の連結部12の屈曲の方向や複数の襞部11が拡がる方向を適切な方向に導きつつ(70%以上)、隣接する連結部12の変形の自由度を高めることができる(90%以下)。また、接合部20の上下方向Vの端部は、平面視で、襞部11の頂部Tx及び襞部11の谷部Vxの少なくとも一方から離間していることが好ましい。そのため、マスク着用時に、連結部12と共に屈曲する領域を襞部11内にも広くとることができる。
【0049】
図6は実施形態に係るマスク1の着用例を示す斜視図であり、図7図6のマスク1の横方向端部を示す部分拡大図(斜視図)である。
【0050】
複数の襞部11(11a~11d)を有するマスク1の着用時では、複数の襞部11の横方向Hの中央部を上下方向Vに拡げて、マスク本体3に立体的な形状(カップ)を形成する。そのとき、複数の襞部11の横方向Hの端部は、中央部とは逆に、互いに接近するように移動する。言い換えると、接合部20を支点として、複数の襞部11の横方向Hの中央部が上下方向Vに拡げられ、複数の襞部11の横方向Hの端部は互いに接近する。ここで、マスク1では、上下方向Vに隣り合う襞部11の間に連結部12(12a~12c)を設けている。連結部12は、折り重なっていないシート30の一部で形成されているので、折り重なったシート30の一部で形成された襞部11と比較して剛性が低く、屈曲し易くなっている。それゆえ、マスク本体3に立体的な形状を形成するとき、それら剛性の低い複数の連結部12を、屈曲させ、屈曲部15(15a~15c)を形成することで、隣り合う襞部11に折り重ねることができる。それにより、複数の襞部11の横方向Hの端部は、互いに衝突したり変形したりすることなく、無理なく互いにより接近することができる。
【0051】
ただし、図7の例において、屈曲部15のうち、屈曲部15aは、連結部12a並びに襞部11a及び/又は襞部11bの一部(第2部分34aや基材31bの一部)が折り重なって形成されている。屈曲部15bは、連結部12b並びに襞部11b及び/又は襞部11cの一部(第2部分34bや第2部分34cの一部)が折り重なって形成されている。屈曲部15cは、連結部12c並びに襞部11c及び/又は襞部11dの一部(基材31cや第2部分34dの一部)が折り重なって形成されている。
【0052】
それにより、複数の襞部11の横方向Hの端部を互いに接近させ、それらの一部を屈曲部15にて重ね合わせることができ、マスク本体3の横方向Hの端部を全体として着用者の顔の表面に沿うように湾曲した形状に容易に変形することができる。したがって、マスク本体3の横方向Hの端部において、マスク本体3の上下方向Vの中間領域と顔の表面との間に隙間が生じないように維持しつつ、下側端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0053】
本実施形態の好ましい態様として、接合部20は、横方向H及び上下方向Vに対して傾斜した方向に沿って、連続的又は断続的に延設された傾斜方向接合部22を含んでいる。ここで、マスク1では、マスク着用時に、複数の襞部11の横方向Hの中央部を上下方向Vに拡げることで、横方向Hの端部を互いに接近させつつ、複数の連結部12を屈曲させて隣り合う襞部11に折り重ねる。そのとき、傾斜方向接合部22により、複数の連結部12の屈曲の方向や複数の襞部11が拡がる方向を適切な方向に導くことができる。それにより、マスク本体3の横方向Hの端部が顔の表面に沿うように湾曲した形状を取ることができる。
【0054】
本実施形態の好ましい態様として、傾斜方向接合部22は、横方向Hの外側に向かうに連れて襞部11の頂部Tx(Ta、Tb、Tc、Td)側から谷部Vx(Va、Vb、Vc、Vd)側へ向かうように、横方向Hに対して(角度θだけ)傾斜した傾斜方向に沿って、連続的又は断続的に延設されている。言い換えると、傾斜方向接合部22は、横方向Hの中央部に向かうに連れて襞部11の谷部Vx側から頂部Tx側へ近づくような方向に、よって、横方向Hに対して襞部11が拡がる方向に向かって(角度θだけ)傾斜した傾斜方向に沿って延設されている。そのため、マスク着用時に、複数の連結部12を屈曲させて隣り合う襞部11に折り重ねるとき、傾斜方向接合部22により、複数の連結部12の屈曲の方向を適切な方向に導くことができる。言い換えると、屈曲部15(15a~15c)におけるシート30の屈曲による折り線の方向を、概ね傾斜方向接合部22に沿った方向に導くことができる。例えば、図7に示すように、屈曲部15aは襞部11a及び襞部11bの傾斜方向接合部22の方向に沿って折り線が形成され、屈曲部15cは襞部11c及び襞部11dの傾斜方向接合部22の方向に沿って折り線が形成されている。それにより、複数の襞部11が拡がる方向を適切な方向に導くことができ、マスク本体3の横方向Hの向中央部で形成した立体的な形状を維持しつつ、マスク本体3の横方向Hの端部が顔の表面に沿うように湾曲した形状を取ることができる。
【0055】
本実施形態の好ましい態様として、接合部20は、傾斜方向接合部22における襞部11の谷部Vx側の端部又はその近傍に配置され、横方向Hに沿って、連続的又は断続的に延設された第1横方向接合部21を更に含んでいる。それゆえ、複数の襞部11の横方向Hの端部での剛性や形状安定性を高めることができる。そのため、マスク着用時に、複数の連結部12を屈曲させて隣り合う襞部11に折り重ねるとき、第1横方向接合部21により、複数の襞部11の横方向Hの端部において、屈曲を抑制することができる。それにより、マスク本体3の横方向Hの端部が顔の表面に沿うように湾曲した形状を維持することができる。
【0056】
本実施形態の好ましい態様として、接合部20は、傾斜方向接合部22における襞部11の頂部Tx側の端部又はその近傍に配置され、横方向Hに沿って、連続的又は断続的に延設された第2横方向接合部23を更に含んでいる。それゆえ、複数の襞部11の横方向Hの端部での剛性や形状安定性を高めることができる。そのため、マスク着用時に、複数の連結部12を屈曲させて隣り合う襞部11に折り重ねるとき、第2横方向接合部23により、複数の襞部11における横方向Hの端部が厚さ方向Tに浮き上がることを抑制できる。それにより、マスク本体3の横方向端部が顔の表面に沿うように湾曲した形状を維持することができる。
【0057】
本実施形態の好ましい態様として、接合部20の上下方向Vの長さは、複数の襞部11の各々の上下方向Vの長さの70~90%である。そのため、マスク着用時に、接合部20により、複数の連結部12の屈曲の方向や複数の襞部11が拡がる方向を適切な方向に導きつつ(70%以上)、隣接する連結部12の変形の自由度を高めることができる(90%以下)。それにより、マスク本体3の横方向Hの端部が顔の表面に沿うように湾曲した形状を取り易くすることができる。
【0058】
本実施形態の好ましい態様として、接合部20の上下方向Vの端部は、平面視で、襞部11の頂部Tx及び襞部11の谷部Vxの少なくとも一方から離間している。そのため、マスク着用時に、連結部12と共に屈曲する領域を襞部11内にも広くとることができる。それにより、複数の連結部12の屈曲の方向や複数の襞部11が拡がる方向を適切な方向に導きつつ、隣接する連結部12の変形の自由度をより高めることができる。それにより、マスク本体3の横方向Hの端部が顔の表面に沿うように湾曲した形状を取り易くすることができる。
【0059】
本実施形態の好ましい態様として、複数の連結部12の各々は、上下方向Vの一番下側の連結部12cが他の連結部12a、12bよりも、上下方向Vの幅が大きい(d12c>d12a、d12b)。そのため、マスク着用時に、マスク本体3の横方向Hの中央部における上下方向Vの下側の部分をより上下方向Vの下方へ拡げることができる。それに対応して、マスク本体3の横方向Hの端部において、複数の連結部12を屈曲させて隣り合う襞部11に折り重ねるとき、下側端部をより湾曲した形状にすることができる。それゆえ、マスク本体3の横方向Hの端部が全体として着用者の顔の表面に沿うように湾曲した形状を取ることができる。
【0060】
本実施形態の好ましい態様として、複数の連結部12の各々は、上下方向Vの上方から下方に向かうに連れて、上下方向Vの幅が大きくなる。そのため、マスク着用時に、マスク本体3の横方向Hの中央部をより上下方向Vの下方へ拡げることができる。それに対応して、マスク本体3の横方向Hの端部において、複数の連結部12を屈曲させて隣り合う襞部11に折り重ねるとき、下側端部を更により湾曲した形状にすることができる。それゆえ、マスク本体3の横方向Hの端部が全体として着用者の顔の表面に沿うように湾曲した形状を取ることができる。
【0061】
本実施形態の好ましい態様として、接合部20は、エンボスで形成されている。そのため、接合部20が外れ難く、それゆえ、マスク本体3の横方向Hの端部が湾曲した形状を安定的に維持することができる。それにより、マスク本体3の横方向Hの端部における下側端部と顔の表面との間に隙間が生じてしまうことを安定的に抑制できる。
【0062】
本実施形態では、図1に示すように、マスク本体3は、着用時に鼻に対応する部分にノーズフィット部材41を更に備えている。ノーズフィット部材41は、マスク本体3における上下方向Vの上側の端部において、折り重ねられた非肌側及び肌側のシート30に挟持され、周囲を接合部42で囲まれて保持されている。
【0063】
一対の耳掛け部5の各々は、本実施形態では、マスク本体3における横方向Hの両端部の各々、かつ、上下方向Vの両端部の外面に融着部43で融着されている。融着部43は、例えば、耳掛け部5とマスク本体3とを熱又は超音波で融着する方法などで形成されている。なお、別の実施形態では、一対の耳掛け部5の各々は、マスク本体3の横方向Hの両側部の各々、かつ、上下方向Vの両端部の内面に融着部43で融着されている。
【0064】
本実施形態では、マスク本体3は、シート30を折り畳んで形成されている。シート30は、図示されないが、着用時に内側、すなわち肌側に位置する内側シートと、着用時に外側、すなわち非肌側に位置する外側シートと、内側シートと外側シートとの間に位置するフィルタシートとを備えている。なお、別の実施形態では、マスク本体3は、2枚以上のフィルタシートを備えている。更に別の実施形態では、マスク本体3は、全体として1枚又は2枚のシートで形成されている。
【0065】
それら内側シートとフィルタシートと外側シートとは、マスク本体3の上下方向Vの両端部に位置し、横方向Hに沿って配置された複数の接合部42,44と、横方向Hの両端部に配置された複数の接合部20により、互いに融着されている。接合部42,44、20の形状は、小さい円状又は楕円状である。ただし、接合部42,44の形状は、特に限定されるものではなく、ドット状、多角形状、図柄状、それらの組み合わせなどが挙げられる。接合部42,44、20は、内側シートとフィルタシートと外側シートとを、熱又は超音波で融着することにより形成されている。
【0066】
本実施形態において、内側シート及び外側シートは、フィルタシートを厚さ方向の両側から保持し、マスク本体3の形状を維持する。内側シート及び外側シートは、その機能の観点から、フィルタシートと比較して、通気性能が高く、剛性が高いことが好ましい。内側シートについては更に肌触りが良いことが好ましい。内側シート及び外側シートの坪量としては、例えば10~100g/mが挙げられる。一方、フィルタシートは、フィルタシート内を空気のような気体が流通するとき、気体と共にフィルタシート内を通り抜けようとするウィルス、細菌、埃、花粉、又は微小粒子状物質(PM2.5)のような物質(以下、単に「微小物質」ともいう。)を捕獲し、収集する。フィルタシートの坪量としては、例えば、10~200g/mが挙げられる。
【0067】
内側シート、外側シート及びフィルタシートの材料としては、例えば、不織布が挙げられる。不織布としては、例えば、スパンレース不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、メルトブローン不織布、フラッシュ紡糸不織布、サーマルボンド不織布、カーディング不織布、又はこれらのいくつかを組み合わせた不織布が挙げられる。不織布を構成する繊維としては、熱や超音波で溶融しフィルム状になり得る繊維であれば特に制限はない。そのような繊維としては、例えば、合成樹脂繊維(例示:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタラート、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリ乳酸等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド等)などが挙げられる。なお、天然繊維(例示:羊毛、コットン)や再生繊維(例示:レーヨン、アセテート)が一部含まれてもよい。不織布を構成する繊維は、単一成分で構成されていてもよいし、芯・鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維で構成されていてもよい。単層の不織布でも良いし、単層の不織布が積層された積層体(例示:SMS不織布)でもよい。
【0068】
フィルタシートの材料としては、内側シート及び外側シートと比較して、微小物質の捕集性能が高いことが好ましい。本実施形態では、例えば、フィルタシートの材料として、エレクトレット化された不織布を用いることができる。エレクトレット化された不織布は気体中の微小物質を静電気の力で捕獲、収集することが可能である。そのような不織布は、エレクトレット処理を不織布に施すことで得られる。エレクトレット化される不織布の材料としては、無極性のポリマーが好ましく、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0069】
また、フィルタシートの繊維密度は、微小物質を捕獲する観点から、内側シート及び外側シートの繊維密度よりも高いことが好ましい。フィルタシートの繊維密度としては、例えば、0.03~0.20g/cmが挙げられ、好ましくは0.05~0.10g/cmである。フィルタシートの繊維密度が高過ぎると、エレクトレット処理によるフィルタシート内での電界の形成が繊維に妨げられるなどの理由により、フィルタシートの内部にエレクトレット処理が及ばなくなるおそれがある。また、フィルタシートの繊維密度が高過ぎると、気体の流通が妨げられて、フィルタシートを気体が通過し難くなり、その通気性能が低下するおそれがある。一方、繊維密度が低過ぎると、微小物質を捕獲する繊維が少な過ぎて捕集性能が低下するおそれがある。
【0070】
耳掛け部5の材料としては、着用者の耳にかけられれば特に制限はなく、例えば断面が円形の丸ゴムや矩形の平ゴムのような弾性部材が挙げられる。弾性部材としては、例えば、合成樹脂繊維(伸縮性を有する繊維でも可)を織って又は編んで形成した織ゴム又は編ゴムが挙げられる。本実施形態では織ゴムを用いている。織ゴムは伸ばしても幅が変わらない。耳掛け部5が耳に掛けられるときに細くならないため、織ゴムが着用者の耳に当接する部分の面積を十分に確保することができ、マスク1の着け心地を向上できる。したがって、マスク1が本来の機能を正しく発揮できると共に、長時間の着用が可能となる。
【0071】
なお、本実施形態では、複数の襞部11は、上側を向いた襞部11a、11bと、下側を向いた襞部11c、11dと、を含んでいる。しかし、本発明はこの例に限定されるものではなく、襞部11の向きや数は異なっていてもよい。例えば、上側を向いた襞部11と下側を向いた襞部11の数は異なっていてもよい。ただし、その場合、マスク本体3の横方向Hの端部において、下側端部と顔の表面との間に隙間が生じることを抑制し易くする観点から、下側を向いた襞部11が多い方が好ましい。
【0072】
図8は、別の実施形態に係る使い捨てマスクにおける上下方向中心線に沿った部分拡大図(断面)である。こ別の実施形態のマスク本体3の例では、複数の襞部11は、全て上側を向いた複数の襞部11a、11b、11c、11dと、隣り合う襞部11の間に位置する複数の連結部12a、12b、12cを含んでいる。これら及び他の構成については、上述の実施形態に記載のとおりである。また、更に別の実施形態では、複数の襞部11は、全て下側を向いた複数の襞部と、隣り合う襞部の間に位置する複数の連結部を含んでいてもよい。
【0073】
本発明の使い捨てマスクは、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、各実施形態の技術や当該技術分野の公知の技術を用いた組合せや置換等が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 (使い捨て)マスク
3 マスク本体
5 耳掛け部
11 襞部
12 連結部
20 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8