(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072784
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】水素混合ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
C25B 1/04 20210101AFI20230518BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20230518BHJP
B01F 23/10 20220101ALI20230518BHJP
A61M 16/12 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C25B1/04
B01F15/02 A
B01F3/02
A61M16/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185436
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】橋 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】米内 冠
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
4K021
【Fターム(参考)】
4G035AB01
4G035AE02
4G035AE10
4G037AA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA09
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】 爆発性ガスを生成しない、又は生成したとしても瞬間的に水素濃度を爆発限界以下とならないようにすることに加え、窒息性ガスとならない酸素濃度を維持した水素混合ガスを安全に供給できる水素混合ガス供給装置を提供する。
【解決手段】 吸入用の水素混合ガスを供給する水素混合ガス供給装置1であって、一端が水素ガス供給源2に接続されて、他端がガス放出口となるガス流路L1と、不活性ガス供給源3に接続され、ガス流路L1に不活性ガスを供給する不活性ガス供給路L2と、ガス流路L1の不活性ガス供給路との合流部よりもガスの流れ方向において下流側に設けられるガスミキサ4と、酸素ガス供給源5に接続され、ガスミキサ4に酸素ガスを供給する酸素ガス供給路L3と、酸素ガス供給路L3に設けられる第1逆止弁6とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入用の水素混合ガスを供給する水素混合ガス供給装置であって、
一端が水素ガス供給源に接続されて、他端がガス放出口となるガス流路と、
不活性ガス供給源に接続され、前記ガス流路に不活性ガスを供給する不活性ガス供給路と、
前記ガス流路の不活性ガス供給路との合流部よりもガスの流れ方向において下流側に設けられるガスミキサと、
酸素ガス供給源に接続され、前記ガスミキサに酸素ガスを供給する酸素ガス供給路と、
前記酸素ガス供給路に設けられる第1逆止弁と
を備えたことを特徴とする水素混合ガス供給装置。
【請求項2】
前記ガス流路の前記ガスミキサと前記ガス放出口までの間に酸素濃度計を設け、
前記酸素濃度計によって検知された酸素濃度が所定の値を下回ったら、水素ガスの供給開始を可能とするよう制御されていることを特徴とする請求項1記載の水素混合ガス供給装置。
【請求項3】
前記ガス放出口を第1ガス放出口と第2ガス放出口とに分岐させ、
前記酸素濃度計によって検知された酸素濃度があらかじめ定められた酸素濃度よりも低い場合には、水素混合ガスを前記第1ガス放出口から放出し、
前記酸素濃度計によって検知された酸素濃度があらかじめ定められた酸素濃度以上の場合には、水素混合ガスを前記第2ガス放出口から放出するように、切換制御されていることを特徴とする請求項2記載の水素混合ガス供給装置。
【請求項4】
前記ガス流路の前記ガスミキサと前記ガス放出口までの間に第1酸素濃度計を設け、
前記ガス流路の不活性ガス供給路との合流部と前記ガスミキサとの間に第2逆止弁と第2酸素濃度計を設け、
前記第2酸素濃度計によって検知された酸素濃度が所定の値を下回ったら、水素ガスの供給開始を可能とするよう制御されていることを特徴とする請求項1記載の水素混合ガス供給装置。
【請求項5】
前記第1酸素濃度計によって検知された酸素濃度があらかじめ定められた酸素濃度よりも低い場合には、水素ガス及び不活性ガスの供給を停止するように制御されていることを特徴とする請求項4記載の水素混合ガス供給装置。
【請求項6】
前記水素ガス供給源が、水の電気分解によることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の水素混合ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入用の水素混合ガスを供給する水素混合ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素を含ませたいわゆる水素水の飲用に加え、健康維持や疾病改善のために水素混合ガスを鼻腔カニューラ等から体内に吸入する医療技術が注目されており、医療現場や家庭で使用可能な水素ガス供給装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸入用の水素混合ガスの場合、人間が吸入するものであるから、酸欠状態となってしまう酸素濃度18vol%未満のいわゆる窒息性ガスとならないようにする必要がある。
【0005】
さらに、水素ガス供給装置は、水素ガスと空気(酸素)を混合したガスを用いるため、爆発下限界である水素濃度4vol%を超えないようにする必要がある。水の電気分解により水素ガスを発生させる水素ガス供給装置においては、水素ガスが発生する陰極表面又は陰極水面で爆発下限界を超えないように工夫する必要もある。
【0006】
そこで本発明は、爆発性ガスを生成しない、又は生成したとしても瞬間的に水素濃度を爆発下限界未満となるようにすることに加え、窒息性ガスとならない酸素濃度を維持した水素混合ガスを安全に供給できる水素混合ガス供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の水素混合ガス供給装置は、吸入用の水素混合ガスを供給する水素混合ガス供給装置であって、一端が水素ガス供給源に接続されて、他端がガス放出口となるガス流路と、不活性ガス供給源に接続され、前記ガス流路に不活性ガスを供給する不活性ガス供給路と、前記ガス流路の不活性ガス供給路との合流部よりもガスの流れ方向において下流側に設けられるガスミキサと、酸素ガス供給源に接続され、前記ガスミキサに酸素ガスを供給する酸素ガス供給路と、前記酸素ガス供給路に設けられる第1逆止弁とを備えたことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の水素混合ガス供給装置は、前記ガス流路の前記ガスミキサと前記ガス放出口までの間に酸素濃度計を設け、前記酸素濃度計によって検知された酸素濃度が所定の値を下回ったら、水素ガスの供給開始を可能とするよう制御されていることを特徴としている。さらに、前記ガス放出口を第1ガス放出口と第2ガス放出口とに分岐させ、前記酸素濃度計によって検知された酸素濃度があらかじめ定められた酸素濃度よりも低い場合には、水素混合ガスを前記第1ガス放出口から放出し、前記酸素濃度計によって検知された酸素濃度があらかじめ定められた酸素濃度以上の場合には、水素混合ガスを前記第2ガス放出口から放出するように、切換制御されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の水素混合ガス供給装置は、前記ガス流路の前記ガスミキサと前記ガス放出口までの間に第1酸素濃度計を設け、前記ガス流路の不活性ガス供給路との合流部と前記ガスミキサとの間に第2逆止弁と第2酸素濃度計を設け、前記第2酸素濃度計によって検知された酸素濃度が所定の値を下回ったら、水素ガスの供給開始を可能とするよう制御されていることを特徴としている。さらに、前記第1酸素濃度計によって検知された酸素濃度があらかじめ定められた酸素濃度よりも低い場合には、水素ガス及び不活性ガスの供給を停止するように制御されていることを特徴としている。
【0010】
そして、本発明の水素混合ガス供給装置は、前記水素ガス供給源が、水の電気分解によることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水素混合ガス供給装置によれば、ガスミキサを備えることにより、水素を含むガスと酸素ガスとが、ムラなく瞬間的に混合し、水素濃度が高い爆発性ガスが生成されない。また、第1逆止弁を備えることにより、水素を含むガスが酸素ガス供給源側へ流入し爆発性ガスが生成されることを確実に防ぐことができる。
【0012】
また、酸素濃度計(第2酸素濃度計)を設けることにより、水素ガスを供給する前に流路を不活性ガスで確実に置換されてから、水素ガスを供給することができるので、爆発性ガスが生成されない。
【0013】
さらに、酸素濃度計(第1酸素濃度計)を設けることにより、患者等へ供給するガスが一定の酸素濃度以上であるので、窒息性ガスを供給してしまうことを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の水素混合ガス供給装置の第1形態例を示す説明図である。
【
図2】本発明の水素混合ガス供給装置の第2形態例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1形態例に係る水素混合ガス供給装置1は、
図1に示すように、一端が水素ガス供給源2に接続され、他端がガス放出口となるガス流路L1と、不活性ガス供給源3に接続され、ガス流路L1に不活性ガスを供給する不活性ガス供給路L2と、ガス流路L1の不活性ガス供給路L2との合流部よりもガスの流れ方向において下流側に設けられるガスミキサ4と、酸素ガス供給源5に接続され、ガスミキサ4に酸素ガスを供給する酸素ガス供給路L3によって、概略構成されている。
【0016】
酸素ガス供給路L3には、ガスミキサ4から酸素ガス供給源5への逆流を防止する第1逆止弁6が設けられている。
【0017】
また、ガス流路L1のガスミキサ4とガス放出口までの間に酸素濃度計7及び水素濃度計8が設けられている。
【0018】
ガス流路L1の終端であるガス放出口については、切換弁9を介して、第1ガス放出口と第2ガス放出口に分岐されている。
【0019】
水素ガス供給源2及び酸素ガス供給源5は、水の電気分解を利用したものである。すなわち、被電解水Wを電解槽11に収容し、直流電源より直流電圧を印加することで、被電解水Wは電気分解され、陰極に水素ガスが、陽極に酸素ガスが発生し、これらを供給源とするものである。電解槽11は、上部から被電解水Wの水面下までを、液体及び気体を透過させない仕切板11aによって、陰極室12と陽極室13に仕切られている。陰極室12の内部の電極板12aは陰極であり、陽極室13の内部の電極板13aは陽極である。
【0020】
電気分解によって陰極に発生した水素ガスは、陰極室12内の被電解水W中を上昇しながら、陰極室内部のヘッドスペース部(水面上部の空間)に移行する。この水素ガスの発生を、水素ガス供給源2としている。また、ヘッドスペース部の上部側は、ガス流路L1の実質的な一部となっており、不活性ガス供給路L2が接続されている。
【0021】
また、電気分解によって陽極に発生した酸素ガスは、陽極室13内の被電解水W中を上昇しながら、陽極室内部のヘッドスペース部に移行する。この酸素ガスの発生を、酸素ガス供給源5としている。ヘッドスペース部には、ガスミキサ4へ酸素ガスを供給する酸素ガス供給路L3が接続されている。また、酸素ガスを収容した高圧ガス容器14を調整弁15を介してヘッドスペース部に接続することで、電気分解をしない間や酸素成分が不足する場合においても酸素ガスを供給可能としている。
【0022】
不活性ガスは、本形態例では、高圧ガス容器に収容された窒素ガスが用いられている。
【0023】
水素混合ガス供給装置1による水素混合ガスの供給について、具体的に説明する。
【0024】
まず、不活性ガス供給源3から不活性ガスを供給し、ガス流路L1(陰極室12のヘッドスペース部を含む)を不活性ガスで置換する。酸素濃度計7により検知された酸素濃度が所定の値、例えば、5vol%を下回った場合には、電気分解を開始可能に制御されており、水素ガス供給源2からの水素ガスが供給開始される。
【0025】
このように、水素ガスが最初に供給される箇所をあらかじめ不活性ガスで置換することにより、水素ガスの供給直後に爆発性ガスが生成することが防止される。また、酸素濃度計7により、ガス流路L1が確実に不活性ガスで置換されてから、水素ガスの供給を開始し、水素ガスと不活性ガスのみを混合できるように制御可能としている。
【0026】
次に、水素ガスと不活性ガスの混合ガスと、酸素ガス供給源5からの酸素ガスをガスミキサ4で混合する。ガスミキサ4で混合することにより、ムラなく混合し瞬間的に水素濃度を4vol%未満まで下げることが可能であり、爆発性ガスが生成されない。さらに、第1逆止弁6を設けることで、高濃度の水素を含む混合ガスが酸素ガス供給源5側へ流入して爆発性ガスが生成されてしまうことを確実に防ぐことができる。
【0027】
酸素ガスの供給が開始され、水素混合ガス中の酸素濃度が高くなる。酸素濃度計7によって検知された酸素濃度があらかじめ定められた酸素濃度、例えば、酸欠状態か否かの境界である酸素濃度18vol%よりも低い場合には、水素混合ガスを第1ガス放出口から排気したままとし、酸素濃度計7によって検知された酸素濃度が18vol%以上になったら、水素混合ガスを第2ガス放出口から供給するように、切換弁9が切換制御されている。
【0028】
第2ガス放出口には、鼻腔カニューラ等を接続しておくことにより、安全に水素混合ガスを吸入することができる。
【0029】
また、水素濃度計8によって検知された水素濃度が4vol%以上となった場合には、電解槽11での直流電圧の印加を中止し、水素ガス供給源2からの水素ガスの供給を停止するように制御される。これにより、供給される水素混合ガスを爆発性のない濃度のガスに維持することができる。
【0030】
図2は、本発明の水素混合ガス供給装置の第2形態例を示すものである。なお、以下の説明において、前記形態例に示した装置の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0031】
第2形態例の水素混合ガス供給装置1aは、第1形態例と異なり、ガス流路L1のガスミキサ4とガス放出口までの間に第1酸素濃度計7aを、ガス流路L1の不活性ガス供給路との合流部とガスミキサ4との間に第2逆止弁16と第2酸素濃度計7bを設けている。なお、ガスの流れ方向の上流側から第2逆止弁16、第2酸素濃度計7bの順に設けられている。その一方で、ガス放出口については、第1形態例のように分岐することなく、一つのガス放出口となっている。
【0032】
本形態例における水素混合ガス供給装置1aによる水素混合ガスの供給について、具体的に説明する。
【0033】
まず、酸素ガス供給源5から酸素ガスをガスミキサ4に供給を開始する。次いで、不活性ガス供給源3から不活性ガスを供給し、ガス流路L1(陰極室12のヘッドスペース部を含む)のガスミキサ4までを不活性ガスで置換する。
【0034】
第2逆止弁16が設けられているので、当該箇所に酸素ガスが流入することはない。第2酸素濃度計7bにより検知された酸素濃度が所定の値、例えば、5vol%を下回った場合には、水素ガス供給源2からの水素ガスが供給開始される。
【0035】
このように、第1形態例と同じく水素ガスが供給される箇所をあらかじめ不活性ガスで置換することにより、水素ガスの供給直後に爆発性ガスが生成することが防止される。
【0036】
また、第1酸素濃度計7aにより検知された酸素濃度が18vol%未満になったら、水素ガス及び不活性ガスの供給を停止するように制御されているので、酸素濃度が窒息性のガスとなることはない。
【0037】
このように、酸素ガス、不活性ガス、水素ガスの順で供給することにより、酸素濃度が100%から薄くなっていくので、常に酸素濃度が18vol%以上の水素混合ガスを供給可能であることから、第1形態例と異なり、一つのガス放出口に鼻腔カニューラ等を接続しておいても、安全に水素混合ガスを吸入することができる。
【0038】
なお、第1形態例、第2形態例のいずれも、水素ガス供給源及び酸素ガス供給源として水の電気分解を利用したものとしているが、それぞれのガスを収容した高圧ガス容器やPSAを利用したものであってもよい。また、水素ガス供給源としては水素吸蔵合金を利用したものや、酸素ガス供給源としては院内配管のアウトレットを利用したものであってもよい。不活性ガス供給源についても、高圧ガス容器だけでなくPSAを利用したもの等であってもよい。また、第1形態例、第2形態例のいずれも、水素ガス供給源、酸素ガス供給源、不活性ガス供給源については、水素混合ガス供給装置の外部の構成としているが、これら供給源の全部又は一部を水素混合ガス供給装置と一体的に構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1,1a…水素混合ガス供給装置、2…水素ガス供給源、3…不活性ガス供給源、4…ガスミキサ、5…酸素ガス供給源、6…第1逆止弁、7…酸素濃度計、7a…第1酸素濃度計、7b…第2酸素濃度計、8…水素濃度計、9…切換弁、11…電解槽、12…陽極室、13…陰極室、12a,13a…電極板、14…高圧ガス容器、15…調整弁、16…第2逆止弁,L1…ガス流路、L2…不活性ガス供給路、L3…酸素ガス供給路、W…被電解水