(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072840
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】横型熱処理炉、熱処理方法及びシリコンウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20230518BHJP
H01L 21/22 20060101ALI20230518BHJP
H01L 21/324 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
H01L21/22 501B
H01L21/324 G
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185522
(22)【出願日】2021-11-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 悠平
(72)【発明者】
【氏名】品川 正行
(72)【発明者】
【氏名】草場 辰己
(57)【要約】
【課題】ウェーハ面内の温度分布が均一となる横型熱処理炉、熱処理方法及びシリコンウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】一端に開口部12を有する炉芯管11と、前記炉芯管を取り囲むヒータ15と、前記炉芯管の開口部を開放及び閉塞するドア13と、前記炉芯管の内部に配置され、立てた状態のウェーハWを搭載するウェーハボート16,17と、前記炉芯管の内部において前記ドアから水平方向に延在し、前記ウェーハボートを支持するフォーク18と、を備える横型熱処理炉1において、前記フォーク18は、前記ウェーハボートを支持する枠部181と、前記枠部181に囲まれた空間部182とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有する炉芯管と、
前記炉芯管を取り囲むヒータと、
前記炉芯管の開口部を開放及び閉塞するドアと、
前記炉芯管の内部に配置され、立てた状態のウェーハを搭載するウェーハボートと、
前記炉芯管の内部において前記ドアから水平方向に延在し、前記ウェーハボートを支持するフォークと、を備える横型熱処理炉において、
前記フォークは、前記ウェーハボートを支持する枠部と、前記枠部に囲まれた空間部とを有する横型熱処理炉。
【請求項2】
前記フォークの先端部と前記炉芯管の内面との間に設けられ、垂直方向に延在する支柱部と、
前記ドアに設けられ、前記フォークを昇降させる昇降機構と、
をさらに備える請求項1に記載の横型熱処理炉。
【請求項3】
前記支柱部は、前記フォークの先端部に一体的に形成されている請求項2に記載の横型熱処理炉。
【請求項4】
前記フォークにより前記ウェーハボートを支持した場合の、前記ウェーハボートの設置面積に対する前記空間部の面積割合が、60%~85%である請求項1~3のいずれか一項に記載の横型熱処理炉。
【請求項5】
前記フォークは、
鉛直方向に見た場合の形状が長方形又は正方形とされた複数の空間部と、
前記複数の空間部の間に形成された架橋部と、を有する請求項1~4のいずれか一項に記載の横型熱処理炉。
【請求項6】
前記フォークにより前記ウェーハボートを支持した場合に、前記ウェーハボートに搭載されたウェーハの下方に前記空間部が位置し、前記ウェーハが存在しない領域の下方に前記架橋部が位置する請求項5に記載の横型熱処理炉。
【請求項7】
前記フォークは、
鉛直方向に見た場合の形状が三角形とされた複数の空間部と、
前記複数の空間部の間に形成された架橋部と、を有する請求項1~6のいずれか一項に記載の横型熱処理炉。
【請求項8】
ウェーハを立てた状態でウェーハボートに搭載し、
前記ウェーハボートを、当該ウェーハボートを支持する枠部と、前記枠部に囲まれた空間部とを有するフォークにより支持した状態で、横型熱処理炉の炉芯管の内部に配置し、
この状態で前記ウェーハを加熱する熱処理方法。
【請求項9】
前記横型熱処理炉は、
前記フォークの先端部と前記炉芯管の内面との間に設けられ、垂直方向に延在する支柱部と、
前記炉芯管を開閉するドアに設けられ、前記フォークを昇降させる昇降機構と、
をさらに備え、
前記昇降機構により前記フォークを上昇させた状態で、前記ウェーハボートを支持した前記フォークを前記炉芯管の内部に投入し、
前記炉芯管を閉塞したのち、前記昇降機構により前記フォークを下降させ、当該フォークの先端部と前記支柱部と前記炉芯管とを接触させた状態で前記ウェーハを加熱する請求項8に記載の熱処理方法。
【請求項10】
前記支柱部は、前記フォークの先端部に一体的に形成され、
前記炉芯管を閉塞したのち、前記昇降機構により前記フォークを下降させ、当該フォークの先端部と前記炉芯管とを接触させた状態で前記ウェーハを加熱する請求項9に記載の熱処理方法。
【請求項11】
前記フォークにより前記ウェーハボートを支持した場合の、前記ウェーハボートの設置面積に対する前記空間部の面積割合が、60%~85%である請求項8~10のいずれか一項に記載の熱処理方法。
【請求項12】
前記フォークは、
鉛直方向に見た場合の形状が長方形又は正方形とされた複数の空間部と、
前記複数の空間部の間に形成された架橋部と、を有する請求項8~11のいずれか一項に記載の熱処理方法。
【請求項13】
前記フォークにより前記ウェーハボートを支持した場合に、前記ウェーハボートに搭載されたウェーハの下方に前記空間部が位置し、前記ウェーハが存在しない領域の下方に前記架橋部が位置する請求項12に記載の熱処理方法。
【請求項14】
前記フォークは、
鉛直方向に見た場合の形状が三角形とされた複数の空間部と、
前記複数の空間部の間に形成された架橋部と、を有する請求項8~11のいずれか一項に記載の熱処理方法。
【請求項15】
シリコンウェーハを立てた状態でウェーハボートに搭載し、
前記ウェーハボートを、当該ウェーハボートを支持する枠部と、前記枠部に囲まれた空間部とを有するフォークにより支持した状態で、横型熱処理炉の炉芯管の内部に配置し、
この状態で前記シリコンウェーハを加熱する請求項8~14のいずれか一項に記載の熱処理方法を含むシリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横型熱処理炉、熱処理方法及びシリコンウェーハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の熱処理炉として、一端にガス導入口を有し、他端が蓋部で閉じられた円筒形の反応管と、反応管内に、反応管の中心軸に対して垂直に複数のウェーハを配置するフォークと、ガス導入口とフォークとの間に、反応管の内壁に周囲が接するように設けられ、下方に開口部を有する遮蔽板と、遮蔽板とフォークとの間に、反応管の内壁に周囲が接するように設けられ、複数の貫通孔を有する整流板と、反応管の周囲に設けられたヒータと、を含む半導体製造装置が知られている。これにより、プロセスチューブ中で複数のウェーハに酸化膜を均一に形成することができるとされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の半導体製造装置では、ウェーハがフォークに載置された状態で熱処理が行われるため、ウェーハの下部はフォークにより熱が伝わり難く、ウェーハ面内の温度分布が不均一になる。そのため、酸化膜厚が不均一になったりスリップ転位が発生したりするという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ウェーハ面内の温度分布が均一となる横型熱処理炉、熱処理方法及びシリコンウェーハの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一端に開口部を有する炉芯管と、
前記炉芯管を取り囲むヒータと、
前記炉芯管の開口部を開放及び閉塞するドアと、
前記炉芯管の内部に配置され、立てた状態のウェーハを搭載するウェーハボートと、
前記炉芯管の内部において前記ドアから水平方向に延在し、前記ウェーハボートを支持するフォークと、を備える横型熱処理炉において、
前記フォークは、前記ウェーハボートを支持する枠部と、前記枠部に囲まれた空間部とを有する横型熱処理炉によって上記課題を解決する。
【0007】
また本発明は、ウェーハを立てた状態でウェーハボートに搭載し、
前記ウェーハボートを、当該ウェーハボートを支持する枠部と、前記枠部に囲まれた空間部とを有するフォークにより支持した状態で、横型熱処理炉の炉芯管の内部に配置し、
この状態で前記ウェーハを加熱する熱処理方法によって上記課題を解決する。
【0008】
また本発明は、シリコンウェーハを立てた状態でウェーハボートに搭載し、
前記ウェーハボートを、当該ウェーハボートを支持する枠部と、前記枠部に囲まれた空間部とを有するフォークにより支持した状態で、横型熱処理炉の炉芯管の内部に配置し、
この状態で前記シリコンウェーハを加熱する熱処理方法を含むシリコンウェーハの製造方法によって上記課題を解決する。
【0009】
上記発明において、前記フォークの先端部と前記炉芯管の内面との間に設けられ、垂直方向に延在する支柱部と、前記ドアに設けられ、前記フォークを昇降させる昇降機構と、をさらに備えることもできる。この場合の前記支柱部は、前記フォークの先端部に一体的に形成されていてもよく、炉芯管に固定されていてもよい。
【0010】
上記発明において、前記フォークにより前記ウェーハボートを支持した場合の、前記ウェーハボートの設置面積に対する前記空間部の面積割合が、60%~85%であることがより好ましい。ウェーハボートの設置面積に対する空間部の面積割合が60%より小さいと、フォークにより遮断される熱量が多くなりウェーハ面内の温度分布が充分に均一にならない。逆にウェーハボートの設置面積に対する空間部の面積割合が85%より大きいと、フォークの剛性が低下し、ウェーハボートを強固に支持することができない。
【0011】
上記発明において、前記フォークは、鉛直方向に見た場合の形状が長方形又は正方形とされた複数の空間部と、前記複数の空間部の間に形成された架橋部と、を有するように構成してもよい。この場合において、前記フォークにより前記ウェーハボートを支持した場合に、前記ウェーハボートに搭載されたウェーハの下方に前記空間部が位置し、前記ウェーハが存在しない領域の下方に前記架橋部が位置するように構成することが好ましい。
【0012】
上記発明において、前記フォークは、鉛直方向に見た場合の形状が三角形とされた複数の空間部と、前記複数の空間部の間に形成された架橋部と、を有するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ウェーハ面内の温度分布が均一となる横型熱処理炉、熱処理方法及びシリコンウェーハの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る横型熱処理炉の一実施の形態を示す断面図である。
【
図3A】
図1のウェーハ,シリコンボート及びマザーボートをセットする前の状態を示す断面図である。
【
図3B】
図1のウェーハ,シリコンボート及びマザーボートをセットした状態を示す断面図である。
【
図5】本発明に係る横型熱処理炉の他の実施の形態であってウェーハ,シリコンボート,マザーボート及びフォークを示す断面図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】本発明に係るフォークの他の実施形態を示す平面図である。
【
図9】本発明に係るフォークのさらに他の実施形態を示す平面図である。
【
図10A】本発明に係る横型熱処理炉のさらに他の実施の形態を示す断面図(その1)である。
【
図10B】本発明に係る横型熱処理炉のさらに他の実施の形態を示す断面図(その2)である。
【
図11A】本発明に係る横型熱処理炉のさらに他の実施の形態を示す断面図(その1)である。
【
図11B】本発明に係る横型熱処理炉のさらに他の実施の形態を示す断面図(その2)である。
【
図12】本発明の実施例1及び比較例1の熱処理プロファイルを示すグラフである。
【
図13】本発明の実施例1及び比較例1の膜厚の測定ポイントを示す断面図である。
【
図14】本発明の実施例1に対する比較例1で用いたフォークを示す平面図である。
【
図15】本発明の実施例1及び比較例1の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る横型熱処理炉1の一実施の形態を示す断面図、
図2は、
図1のフォーク18を示す平面図、
図3Aは、
図1のウェーハW,シリコンボート16及びマザーボート17をセットする前の状態を示す断面図、
図3Bは 同じくウェーハW,シリコンボート16及びマザーボート17をセットした状態を示す断面図、
図4は、
図1のIV-IV線に沿う断面図である。
【0016】
本実施形態の横型熱処理炉1は、横長に延在する、断面が円筒形状の炉芯管11を備える。炉芯管11は石英で構成され、
図1において右側の一端に開口部12及びこれを開閉するドア13が設けられ、
図1において左側の他端は閉塞されている。開口部12を開閉するドア13は、図示しない搬送機構により、
図1に示す閉塞位置と、ここから右側へ移動する開放位置とに移動可能とされている。ドア13の開放位置においては、後述するフォーク18も炉芯管11の外部へ移動し、シリコンボートに配置したウェーハの交換作業が行われる。
【0017】
図1に示す炉芯管11の左側の閉塞された他端には、ガス導入部14が設けられている。ガス導入部14からは、窒素、酸素、アルゴン等の熱処理仕様に応じた適宜のガスが供給される。炉芯管11の外周には、円筒状のヒータ15が設けられ、炉芯管11の内部に投入されたウェーハWを設定した温度に加熱する。
【0018】
本実施形態の熱処理炉1の処理対象とされるウェーハWは、たとえばシリコンウェーハである。複数枚のウェーハWは、
図3Aに示すシリコン製のシリコンボート16に、ウェーハWを立てた状態で、若干の間隔をおいて搭載される。
図3A及び
図3Bに示すシリコンボート16においては、1枚のウェーハWは、四角のハッチングで示す3点でシリコンボート16に接触して支持される。
【0019】
さらに、複数のシリコンボート16は、
図1及び
図3Aに示す石英製のマザーボート17に搭載される。
図3A及び
図3Bに示すマザーボート17においては、1つのシリコンボート16は、円形のハッチングで示す4点でマザーボート17に接触して支持される。なお、
図1に示す例では、1つのマザーボート17に3つのシリコンボート16が搭載されており、
図5に示す例では、1つのマザーボート17に1つのシリコンボート16が搭載されている。このように、1つのマザーボート17に搭載するシリコンボート16の数量は適宜変更することができる。
【0020】
複数枚のウェーハWを搭載したシリコンボート16は、
図3Bに示すようにマザーボート17に搭載され、この状態でウェーハW,シリコンボート16及びマザーボート17がフォーク18に搭載して支持される。本実施形態のシリコンボート16及びマザーボート17が本発明に係るウェーハボートに相当するが、本発明に係るウェーハボートは1つのボート又は複数のボートで構成してもよい。
【0021】
本実施形態のフォーク18は、炭化珪素又は石英から構成され、その一端がドア13に固定されている。また本実施形態のフォーク18は、ウェーハW,シリコンボート16及びマザーボート17を支持した状態で炉芯管11の内部に投入され、ドア13から水平方向に延在した状態で、熱処理が行われる。特に本実施形態のフォーク18は、
図2の平面図に示すように、ウェーハW及びシリコンボート16が搭載されたマザーボート17を支持する枠部181と、この枠部181に囲まれた空間部182と、架橋部183とを有する。
図1及び
図2に示す実施形態では、1つのマザーボート17に3つのシリコンボート16が搭載されているので、3つのシリコンボート16それぞれの下方に3つの空間部182が位置し、3つのシリコンボート16それぞれの間の2箇所のウェーハWが存在しない下方に2つの架橋部183が位置し、3つの空間部182の全体を囲む先端側,基端側及び両側部の4箇所の、ウェーハWが存在しない下方に、4つの枠部181が位置するように、枠部181と空間部182と架橋部183とが形成されている。
【0022】
本発明に係る枠部181と空間部182は、必要に応じて種々改変することができる。
図5~
図7は、本発明に係る横型熱処理炉1の他の実施の形態であって、
図5は、ウェーハW,シリコンボート16,マザーボート17及びフォーク18を示す断面図、
図6は、
図5のフォーク18を示す平面図、
図7は、
図6のVII-VII線に沿う断面図である。
図5~
図7に示す実施形態のマザーボート17は1つのシリコンボート16を搭載したものであるため、これに対応するフォーク18は、1つの空間部182と、この1つの空間部182を囲む4つの枠部181とを有する。そして、1つのシリコンボート16の下方に1つの空間部182が位置し、先端部,基端部及び両側部の4箇所のウェーハWが存在しない下方に、4つの枠部181が位置するように、枠部181と空間部182が形成されている。この実施形態において架橋部183は存在しない。
【0023】
図8及び
図9のそれぞれは、本発明に係るフォーク18のさらに他の実施形態を示す平面図である。上述した2つの実施形態に係るフォーク18では、空間部182は矩形の開口部のみとして構成したが、フォーク18に所望の剛性が求められる場合には、空間部182に筋交いとしての架橋部183を設けてもよい。
図8に示す実施形態のフォーク18は、
図2に示す実施形態の3つの空間部182のそれぞれに、対角線に沿う筋交いとしての架橋部183を設けた例である。また、
図9に示す実施形態のフォーク18は、
図6に示す実施形態の1つの空間部182に、対角線に沿う筋交いとしての架橋部183を設けた例である。
【0024】
これにより、この実施形態のフォーク18は、
図8及び
図9に示すように鉛直方向に見た場合の形状が三角形とされた複数の空間部182と、これら複数の空間部182の間に形成された架橋部183と、を有することになる。このように筋交いとしての架橋部183を設けることで、空間部182の近傍の剛性を高めることができる。
【0025】
本実施形態の横型熱処理炉1を用いてウェーハWを熱処理する場合、シリコンボート16をマザーボート17に配置し、このシリコンボート16に複数枚のウェーハWを立てた状態で搭載し、ウェーハWを搭載したシリコンボート16が配置されたマザーボート17をフォーク18に搭載する。そして、マザーボート17を支持したフォーク18をドア13と共に移動し、フォーク18を炉芯管11の開口部12から挿入してドア13を閉じ、略密閉したのち、ガス導入部14から所定の窒素、酸素、アルゴン等のガスを流し、ドア13の間の隙間からガスを炉芯管外に排気する。これにより、炉芯管内雰囲気を清浄に保ちつつ、ウェーハWのドーパント拡散や酸化等の熱処理が行われる。このとき、ヒータ15からの熱は、炉芯管11の外周の全周からウェーハWに向かって伝達するが、炉芯管11の下部領域のヒータ15から伝達される熱もフォーク18の空間部182を通過してウェーハWに伝達される。これにより、ウェーハ面内の温度分布を均一にすることができる。
【0026】
このように本実施形態のフォーク18は、空間部182によりヒータ15からの伝熱性を高めることができる一方、枠部181及び架橋部183によりウェーハW,シリコンボート16及びマザーボート17を支持する剛性を確保する。そのため、フォーク18を鉛直方向に見た平面視における空間部182の全体に対する面積割合は、トレードオフの関係になり、空間部182の面積割合が大きいほど伝熱性は向上するが、剛性は低下する。ここで、本実施形態における「フォーク18のマザーボート17を搭載する面積」を、フォーク18を横方向から見た場合に枠181が一定の幅で先端に向かって延在し、マザーボート17を載置できるようになっている部分の上方から見たときの投影面積とする。フォーク18のマザーボート17を搭載する面積、すなわち本願発明でいうウェーハボートの設置面積に対する空間部182の面積割合が最も大きいのが
図6に示す実施形態であり、約85%である。また、フォーク18のマザーボート17を搭載する面積、すなわち本願発明でいうウェーハボートの設置面積に対する空間部182の面積割合が最も小さいのが
図8に示す実施形態であり、約60%である。したがって、伝熱性と剛性の両方を考慮すると、フォーク18のマザーボート17を搭載する面積、すなわち本願発明でいうウェーハボートの設置面積に対する空間部182の面積割合は、60%~85%であることが望ましい。
【0027】
本発明に係るフォーク18は、必要に応じて種々改変することができる。
図10A及び
図10Bの右図は、本発明に係る熱処理炉のさらに他の実施の形態を示す断面図、左図はXA-XA線又はXB-XB線に沿う断面図であり、ガス導入部14及びヒータ15の図示は省略する。また
図10Aは、フォーク18が上昇位置に上昇した状態を示し、
図10Bは、フォーク18が下降位置に降下した状態を示す。
図10A及び
図10Bに示す本実施形態の熱処理炉1は、
図1に示す実施形態の熱処理炉1に対し、ドア13に対しフォーク18を昇降させる昇降機構19と、フォーク18の先端部に設けられた支柱部20と、を有する点が相違し、その他の構成は同じとされている。
【0028】
昇降機構19は、ドア13の内面に装着され、フォーク18の一端が固定されている。そして、図示しない駆動源によりフォーク18を
図10Aに示す上昇位置と
図10Bに示す下降位置とに昇降移動させる。具体的には、ドア13及びフォーク18を炉芯管11に投入する場合には、
図10Aに示すようにフォーク18を上昇位置に上昇させた状態で行い、ドア13を閉塞したら、
図10Bに示すようにフォーク18を下降位置に下降させる。この下降位置においては、フォーク18の先端部に設けられた支柱部20が炉芯管11の内面に接触する。これにより、熱処理中において、フォーク18は、右端の昇降機構19に支持されているだけでなく、左端が支柱部20に支持されることになる。
【0029】
フォーク18の先端部に設けられる支柱部20は、
図10Aの左図に示すように、フォーク18の先端部の左右それぞれの側部から垂下し、
図10Bに示すように、フォーク18を下降位置に降下させた場合に、支柱部20の下端面が炉芯管11の内面に面接触する形状とされている。これにより、熱処理中においては、フォーク18の先端部に設けられた支柱部20が、左右の2箇所において炉芯管11の内面に支持されることから、撓んだり捩れたりするのを防止することができる。また、左右の両端に支柱部20を設けることで、支柱部20がガスの流れを妨げることを抑制し、ウェーハWの直下にも均一にガスが供給されるようになる。なお、支柱部20の形状は、
図10A及び
図10Bの形状に限定されず、中心に1本とすることもできる。
【0030】
なお、
図10A及び
図10Bに示す支柱部20は、フォーク18の先端部に一体的に形成したが、支柱部20をフォーク18とは別の部材として構成し、接合手段を用いて接合してもよい。また、支柱部20はフォーク18側に設けるほか、
図11A及び
図11Bに示すように、炉芯管11の内面に設けてもよい。
図11A及び
図11Bの右図は、本発明に係る熱処理炉のさらに他の実施の形態を示す断面図、左図はXIA-XIA線に沿う断面図であり、ガス導入部14及びヒータ15の図示は省略する。また
図11Aは、フォーク18が上昇位置に上昇した状態を示し、
図11Bは、フォーク18が下降位置に降下した状態を示す。
図11A及び
図11Bに示す本実施形態の熱処理炉1は、
図1に示す実施形態の熱処理炉1に対し、ドア13に対しフォーク18を昇降させる昇降機構19と、フォーク18の先端部に設けられた支柱部20と、を有する点が相違し、その他の構成は同じとされている。また、
図10A及び
図10Bに示す実施形態の熱処理炉1に対し、支柱部20の固定位置が相違し、その他の構成は同じものとされている。
【0031】
本発明をさらに詳細な実施例に基づいて説明する。
《実施例1》
直径200mmのシリコンウェーハを150枚準備し、
図1及び2に示す熱処理炉1を用いて
図12に示す熱処理プロファイルで酸化熱処理を施した。すなわち、
図12に示すように、700℃の炉芯管11にシリコンウェーハを投入し、1150℃まで1時間で昇温した後、2時間熱処理を行い、その後1時間で700℃まで降温し、シリコンウェーハを取り出した。酸化熱処理を終えたシリコンウェーハの中から1枚を抽出し、膜厚測定器を用いて、シリコンウェーハの表面に形成された酸化膜厚を、
図13に示す1~5の測定ポイントで測定した。その結果を
図15に示す。
【0032】
《比較例1》
熱処理炉1に用いるフォーク18を、
図14に示すように空間部182のないものにしたこと以外は、実施例1と同じ条件で酸化熱処理を行った。酸化熱処理を終えたシリコンウェーハに対し、膜厚測定器を用いて、シリコンウェーハの表面に形成された酸化膜厚を、
図13に示す1~5の測定ポイントで測定した。その結果を
図15に示す。
【0033】
《結果の考察》
比較例1のシリコンウェーハに形成された酸化膜の膜厚は、測定ポイント4及び5において、測定ポイント1~3に比べて薄くなり、ウェーハ面内における膜厚が不均一であった。これに対し、実施例1のシリコンウェーハの酸化膜の膜厚は、全ての測定ポイントにおいてほぼ等しく、ウェーハ面内における膜厚が均一になることが確認された。これにより、ウェーハ面内の温度分布が均一になっているものと推察される。
【符号の説明】
【0034】
1…熱処理炉
11…炉芯管
12…開口部
13…ドア
14…ガス導入部
15…ヒータ
16…シリコンボート
17…マザーボート
18…フォーク
181…枠部
182…空間部
183…架橋部
19…昇降機構
20…支柱部
W…ウェーハ
【手続補正書】
【提出日】2023-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有する炉芯管と、
前記炉芯管を取り囲むヒータと、
前記炉芯管の開口部を開放及び閉塞するドアと、
前記炉芯管の内部に配置され、立てた状態のウェーハを搭載するウェーハボートと、
前記炉芯管の内部において前記ドアから水平方向に延在し、前記ウェーハボートを支持するフォークと、
前記フォークの先端部と前記炉芯管の内面との間に設けられ、垂直方向に延在する支柱部と、
前記ドアに設けられ、前記フォークを昇降させる昇降機構と、を備える横型熱処理炉において、
前記フォークは、前記ウェーハボートを支持する枠部と、前記枠部に囲まれた空間部とを有する横型熱処理炉。
【請求項2】
前記支柱部は、前記フォークの先端部に一体的に形成されている請求項1に記載の横型熱処理炉。
【請求項3】
前記フォークは、
鉛直方向に見た場合の形状が長方形又は正方形とされた複数の空間部と、
前記複数の空間部の間に形成された架橋部と、を有する請求項1又は2に記載の横型熱処理炉。
【請求項4】
前記フォークにより前記ウェーハボートを支持した場合に、前記ウェーハボートに搭載されたウェーハの下方に前記空間部が位置し、前記ウェーハが存在しない領域の下方に前記架橋部が位置する請求項3に記載の横型熱処理炉。
【請求項5】
前記フォークは、
鉛直方向に見た場合の形状が三角形とされた複数の空間部と、
前記複数の空間部の間に形成された架橋部と、を有する請求項1~4のいずれか一項に記載の横型熱処理炉。
【請求項6】
一端に開口部を有する炉芯管と、
前記炉芯管を取り囲むヒータと、
前記炉芯管の開口部を開放及び閉塞するドアと、
前記炉芯管の内部に配置され、立てた状態のウェーハを搭載するウェーハボートと、
前記炉芯管の内部において前記ドアから水平方向に延在し、前記ウェーハボートを支持するフォークと、を備える横型熱処理炉において、
前記フォークは、
前記ウェーハボートを支持する枠部と、
前記枠部に囲まれ、鉛直方向に見た場合の形状が三角形とされた複数の空間部と、
前記複数の空間部の間に形成された架橋部と、を有する横型熱処理炉。
【請求項7】
前記フォークの先端部と前記炉芯管の内面との間に設けられ、垂直方向に延在する支柱部と、
前記ドアに設けられ、前記フォークを昇降させる昇降機構と、
をさらに備える請求項6に記載の横型熱処理炉。
【請求項8】
前記フォークにより前記ウェーハボートを支持した場合の、前記ウェーハボートの設置面積に対する前記空間部の面積割合が、60%~85%である請求項1~7のいずれか一項に記載の横型熱処理炉。
【請求項9】
ウェーハを立てた状態でウェーハボートに搭載し、
前記ウェーハボートを、当該ウェーハボートを支持する枠部と、前記枠部に囲まれた空間部とを有するフォークにより支持した状態で、横型熱処理炉の炉芯管の内部に配置し、
この状態で前記ウェーハを加熱する熱処理方法において、
前記横型熱処理炉は、
前記フォークの先端部と前記炉芯管の内面との間に設けられ、垂直方向に延在する支柱部と、
前記炉芯管を開閉するドアに設けられ、前記フォークを昇降させる昇降機構と、
をさらに備え、
前記昇降機構により前記フォークを上昇させた状態で、前記ウェーハボートを支持した前記フォークを前記炉芯管の内部に投入し、
前記炉芯管を閉塞したのち、前記昇降機構により前記フォークを下降させ、当該フォークの先端部と前記支柱部と前記炉芯管とを接触させた状態で前記ウェーハを加熱する熱処理方法。
【請求項10】
前記支柱部は、前記フォークの先端部に一体的に形成され、
前記炉芯管を閉塞したのち、前記昇降機構により前記フォークを下降させ、当該フォークの先端部と前記炉芯管とを接触させた状態で前記ウェーハを加熱する請求項9に記載の熱処理方法。
【請求項11】
前記フォークは、
鉛直方向に見た場合の形状が長方形又は正方形とされた複数の空間部と、
前記複数の空間部の間に形成された架橋部と、を有する請求項9又は10に記載の熱処理方法。
【請求項12】
前記フォークにより前記ウェーハボートを支持した場合に、前記ウェーハボートに搭載されたウェーハの下方に前記空間部が位置し、前記ウェーハが存在しない領域の下方に前記架橋部が位置する請求項11に記載の熱処理方法。
【請求項13】
ウェーハを立てた状態でウェーハボートに搭載し、
前記ウェーハボートを、当該ウェーハボートを支持する枠部と、前記枠部に囲まれた空間部とを有するフォークにより支持した状態で、横型熱処理炉の炉芯管の内部に配置し、
この状態で前記ウェーハを加熱する熱処理方法において、
前記フォークは、
鉛直方向に見た場合の形状が三角形とされた複数の空間部と、
前記複数の空間部の間に形成された架橋部と、を有する熱処理方法。
【請求項14】
前記フォークにより前記ウェーハボートを支持した場合の、前記ウェーハボートの設置面積に対する前記空間部の面積割合が、60%~85%である請求項9~13のいずれか一項に記載の熱処理方法。
【請求項15】
シリコンウェーハを立てた状態でウェーハボートに搭載し、
前記ウェーハボートを、当該ウェーハボートを支持する枠部と、前記枠部に囲まれた空間部とを有するフォークにより支持した状態で、横型熱処理炉の炉芯管の内部に配置し、
この状態で前記シリコンウェーハを加熱する請求項9~14のいずれか一項に記載の熱処理方法を含むシリコンウェーハの製造方法。