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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072912
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
B41J2/165 301
B41J2/165 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185636
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】竹内 則康
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056FA09
2C056FA10
2C056FB08
2C056FB09
2C056JB03
2C056JB08
2C056JB15
(57)【要約】
【課題】ノズル面の払拭後、払拭に使用した洗浄液がノズル面に流れ、ノズル面に流れ込んだ洗浄液がノズルやノズル面に残っていた液体と混ざりながら流れることで、ノズル面を再度汚してしまう。
【解決手段】
水平方向に液体を吐出するノズルを設けたノズル面を有するヘッドと、前記ノズル面を払拭する払拭部材と、前記払拭部材に洗浄液を供給する洗浄液供給部材と、を備え、前記ヘッドまたは前記払拭部材を、鉛直方向および前記水平方向と交差する方向に移動して、前記ノズル面を前記払拭部材で払拭する液体吐出装置であって、前記ヘッドの外周部上面は、前記ヘッドまたは前記払拭部材の前記移動の方向において、前記払拭部材による払拭終了側の鉛直方向位置が、払拭開始側の鉛直方向位置よりも低くなる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に液体を吐出するノズルを設けたノズル面を有するヘッドと、
前記ノズル面を払拭する払拭部材と、
前記払拭部材に洗浄液を供給する洗浄液供給部材と、
を備え、
前記ヘッドまたは前記払拭部材を、鉛直方向および前記水平方向と交差する方向に移動して、前記ノズル面を前記払拭部材で払拭する液体吐出装置であって、
前記ヘッドの外周部上面は、前記ヘッドまたは前記払拭部材の前記移動の方向において、前記払拭部材による払拭終了側の鉛直方向位置が、払拭開始側の鉛直方向位置よりも低くなることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記ヘッドまたは前記払拭部材は、前記ヘッドまたは前記払拭部材の前記移動の方向において往復移動が可能であり、前記往復移動の往路および復路で前記ノズル面を払拭するとともに、前記払拭終了側は、前記復路での払拭終了側であることを特徴とする請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記払拭部材に対して前記ノズル面を接離する接離機構を備えることを特徴とする請求項1または2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記ヘッドまたは前記払拭部材の前記往復移動において、前記ヘッドまたは前記払拭部材を前記払拭終了側から前記払拭開始側に動かす場合は、前記接離機構により前記払拭部材と前記ノズル面とを離すことを特徴とする請求項3記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、ヘッドのノズル面を払拭する払拭部材を含むクリーニング機構部とを一体に備えた吐出ユニットを開示している。払拭部材は、移動部材を介してノズル面に対向する位置とノズル面から退避する位置との間を移動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術では、ノズル面の払拭後、払拭に使用した洗浄液がノズル面に流れ、ノズル面に流れ込んだ洗浄液がノズルやノズル面に残っていた液体(例えばインク)と混ざりながら流れることで、ノズル面を再度汚してしまうことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、水平方向に液体を吐出するノズルを設けたノズル面を有するヘッドと、前記ノズル面を払拭する払拭部材と、前記払拭部材に洗浄液を供給する洗浄液供給部材と、を備え、前記ヘッドまたは前記払拭部材を、鉛直方向および前記水平方向と交差する方向に移動して、前記ノズル面を前記払拭部材で払拭する液体吐出装置であって、前記ヘッドの外周部上面は、前記ヘッドまたは前記払拭部材の前記移動の方向において、前記払拭部材による払拭終了側の鉛直方向位置が、払拭開始側の鉛直方向位置よりも低くなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ノズル面への液体の流れ込みを低減した液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出装置の全体斜視図。
図2】退避位置におけるキャリッジの全体斜視図。
図3】液体吐出位置におけるキャリッジの全体斜視図。
図4】本発明の実施形態におけるヘッド位置の説明図。
図5】本発明の第1の実施形態に係るヘッドおよび清掃装置周りの概略構成を示した正面図。
図6】本発明の実施形態に係るヘッドの外周部上面の説明図。
図7】本発明の第2の実施形態の説明図。
図8】本発明の第3の実施形態の説明図。
図9】本発明の第3の実施形態の説明図。
図10】本発明の第3の実施形態の説明図。
図11】本発明の第4の実施形態の説明図。
図12】本発明の実施形態に係る液体吐出装置の別の例を示す説明図。
図13】本発明の実施形態に係る液体吐出装置のさらに別の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態を、図面を用いて以下に説明する。
【0008】
図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出装置の全体斜視図であり、例示した液体吐出装置は例えばトラックの車体側面などに画像を形成する印刷装置である。
【0009】
印刷装置1000は、対象物の一例として示した車体側面100に対向して設置している。印刷装置1000は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101およびY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。
【0010】
Y軸レール102は、X軸レール101がY方向(正側および負側)に移動可能なようにX軸レール101を保持する。X軸レール101は、Z軸レール103がX方向(正側および負側)に移動可能なようにZ軸レール103を保持する。Z軸レール103は、キャリッジ1がZ方向(正側および負側)に移動可能なようにキャリッジ1を保持する。
【0011】
印刷装置1000は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ方向に動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX方向に動かすX方向駆動部72を備える。また、印刷装置1000は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY方向に動かすY方向駆動部82を備える。さらに、印刷装置1000は、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ方向に動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0012】
上記構成の印刷装置1000は、キャリッジ1をX方向、Y方向およびZ方向に動かしながらヘッド保持体70に設けたヘッドから液体(本例ではインク)を吐出し、車体側面100に画像を形成する。ここで、キャリッジ1およびヘッド保持体70のZ方向の移動は、必ずしもZ方向に平行であることを意味するものではなく、少なくともZ方向の成分を含んでいれば斜めの移動であってもよい。
【0013】
また、図1において車体側面100の表面形状は平面としているが、車体側面100の表面形状は、鉛直に近い面、曲率半径の大きい面、または多少の凹凸を有する面でもよい。次に、キャリッジ1の構成を説明する。
【0014】
図2は、図1に示した印刷装置におけるキャリッジの全体斜視図であり、キャリッジ1がZ軸上の退避位置にある状態を示したものである。
【0015】
キャリッジ1は、ヘッド保持体70を備える。また、キャリッジ1は、第1のZ方向駆動部92からの動力によりZ軸レール103に沿ってZ方向へ移動可能である。ヘッド保持体70は、ヘッド300を保持し、図1に示した第2のZ方向駆動部93からの動力によりキャリッジ1に対してZ方向へ移動可能である。ヘッド300について、本実施形態ではヘッド保持体70に6つのヘッド300a~300fを積層状に並べて設けた構成を例示している。
【0016】
ヘッド300a~300fは、それぞれ複数のノズル302を有したノズル面302aを備える。なお、ヘッド300a~300fで用いるインクの色の種類や数は、ヘッド毎に異なる色としてもよいし、すべて同じ色としてもよい。例えば印刷装置1000が単色を用いる装置である場合は、ヘッド300a~300fで用いるインクは同色でよい。また、ヘッド300を構成するヘッドの数は6つに限るものではない。6つより多くてもよく、また6つより少なくてもよい。
【0017】
ヘッド300は、図示のように各ヘッドのノズル面302aが水平面(X-Z面)と交わり、かつ複数のノズル302の配列方向をX軸に対して傾きを持つようにしてヘッド保持体70に固定する。これにより、ノズル302は水平方向(Z方向)にインクを吐出する。
【0018】
また、キャリッジ1は、ヘッド300を清掃する清掃装置4を備える。キャリッジ1は、ヘッド保持体70の周囲を囲むように設けた枠体2を支持している。枠体2は、X方向に伸びたシャフト部材からなるガイドロッド3を備えており、清掃装置4は、ガイドロッド3に沿ってX方向、つまり水平方向(Z方向)および鉛直方向(Y方向)と交差する方向へ移動が可能なように、ガイドロッド3に取り付けている。
【0019】
枠体2内には、清掃装置4をガイドロッド3に沿って動かすための駆動モータ、清掃装置4のX方向における位置(待機位置、折り返し位置)を検知するための位置センサ等を備えている。これにより、駆動モータは、動力伝達ベルト5に動力を伝達し、動力伝達ベルト5に連結した清掃装置4は、ガイドロッド3に沿ってX方向正側に移動する。そして、清掃装置4は、ヘッド300のノズル面302aおよびノズル302を清掃する。清掃装置4がさらにX方向正側へ移動して折り返し位置に到達すると、清掃装置4の移動方向はX方向負側に切り替わり、清掃装置4は待機位置へ戻る。
【0020】
図3は、図1に示した印刷装置におけるキャリッジの全体斜視図であり、キャリッジ1とヘッド300がZ軸上の液体吐出位置にある状態を示したものである。
【0021】
図2との違いは、キャリッジ1およびヘッド保持体70がZ方向正側へ移動した点である。ヘッド保持体70もキャリッジ1と同様に、液体吐出位置(図3)と退避位置(図2)との間でZ方向に移動可能である。なお、インク吐出時のキャリッジ1のZ方向位置は、常に一定とは限らない。インク吐出時のキャリッジ1のZ方向位置は、車体側面100の表面形状に追従して可変する。
【0022】
図4は、本発明の実施形態におけるヘッド位置の説明図であり、図4(a)は液体吐出位置、図4(b)は洗浄位置、図4(c)は退避位置にヘッドがある状態を示している。なお、以下の説明ではヘッドの数を4つ(300a~300d)とし、簡略化して説明する。
【0023】
ヘッド300は、ヘッド保持体70を介してスライド機構90と連結している。スライド機構90は、図1に示した第1のZ方向駆動部92および第2のZ方向駆動部93に相当し、ここでは便宜上、一まとめにして説明することとする。このスライド機構90により、ヘッド300はノズル面302aの法線方向(Z方向)において液体吐出位置、洗浄位置および退避位置への移動が可能である。ここで、スライド機構90は接離機構の一例である。
【0024】
液体吐出位置では、図4(a)のようにヘッド300は清掃装置4よりもX方向正側へ突出し、図1に示した車体側面100とヘッド300との距離を適切な範囲に保ちながらヘッド300からインクを吐出し、車体側面100に画像を形成する。ヘッド300が清掃装置4よりもX方向正側へ突出することで、印刷中の車体側面100と清掃装置4との干渉を防ぎ、ノズル面302aが車体側面100と適切な距離を保てるようにしている。
【0025】
洗浄位置では、図4(b)のようにヘッド300は清掃装置4よりもX方向負側へ後退し、ワイパ41がヘッド300に適切な食い込み量で当接する。退避位置では、図4(c)のようにヘッド300は洗浄位置よりもさらにX方向負側へ後退し、ワイパ41がヘッド300と当接しない状態を形成する。なお、退避位置の状態においても清掃装置4はX方向(正側および負側)への移動が可能である。次に、ヘッド300および清掃装置4周りの構成を説明する。
【0026】
図5は、本発明の第1の実施形態に係るヘッドおよび清掃装置周りの概略構成を示した正面図である。
【0027】
キャリッジ1に設けた枠体2は、その上部と下部にガイドロッド3を備える。ガイドロッド3はブッシュ部材3aを介して清掃装置4を保持している。清掃装置4の上部は、ガイドロッド3の上方に設けた動力伝達ベルト5に連結しており、動力伝達ベルト5からの動力により清掃装置4はガイドロッド3に沿ってX方向(正側および負側)に移動する。
【0028】
清掃装置4は、ワイパ41、洗浄液供給部材42および洗浄液回収部材43を備える。ワイパ41は、清掃装置4のX方向への移動に伴い、ヘッド保持体70に固定したヘッド300(300a~300d)のノズル面302aを払拭し、ノズル面302aの汚れを除去する。ここで、ワイパ41は払拭部材の一例である。洗浄液供給部材42は、ワイパ41の上方(Y方向正側)に位置し、洗浄液をワイパ41の上方から下方(Y方向負側)に向けて供給する。洗浄液回収部材43は、ワイパ41の下方(Y方向負側)に位置し、余剰な洗浄液などの排液を回収する。なお、洗浄液供給部材42および洗浄液回収部材43は、洗浄液供給元または洗浄液回収先にそれぞれ配管で接続しており、洗浄液供給元から洗浄液供給部材42に洗浄液を供給し、洗浄液回収部材43からの排液を洗浄液回収先で回収する構成となっている。
【0029】
ヘッド300a~300dの外周部上面301は、ワイパ41の移動方向(X方向)において、ワイパ41による払拭終了側(X方向正側)の鉛直方向(Y方向)位置が、払拭開始側(X方向負側)の鉛直方向位置よりも低くなるように設けている。
【0030】
上記の構成において、ノズル面302aを清掃する場合は、ヘッド300と清掃装置4とを図4(b)に示した配置とし、清掃装置4のX方向正側への移動とともにワイパ41でノズル面302aを払拭する。ワイパ41がノズル面302aを通過し、ノズル面302aの払拭が終了したならば、ヘッド300と清掃装置4とを図4(c)に示した配置とし、ワイパ41がヘッド300と当接しない状態にして清掃装置4をX方向負側へ動かす。これにより、清掃装置4は待機位置へ戻る。
【0031】
なお、清掃装置4の待機位置については、図5に示したようにヘッド300の右側に清掃装置4が位置する状態を待機位置としてもよいし、またはヘッド300の左側に清掃装置4が位置する状態を待機位置としてもよい。後者の場合は、往路、すなわち清掃装置4をX方向負側へ動かす際は、ワイパ41とヘッド300とを離間状態にして清掃装置4をヘッド300の右側まで動かす。そして、復路、すなわち清掃装置4をX方向正側へ動かす際は、ワイパ41とヘッド300とを当接状態にして清掃装置4をヘッド300の左側まで動かし、ノズル面302aの払拭を行う。
【0032】
このように清掃装置4の往復移動のうち、往路移動時または復路移動時のいずれか一方で清掃を実施する場合、ヘッド300の外周部上面301は、払拭方向において、払拭終了側の鉛直方向位置が、払拭開始側の鉛直方向位置よりも低くなるように設ける。これにより、払拭後にヘッド300の外周部上面301に溢れた洗浄液がノズル面302aに流れてきてノズル面302aを汚してしまうという不具合を防ぐことが可能になる。
【0033】
また、清掃装置4の往路移動時または復路移動時のいずれか一方での片道清掃とすることにより、洗浄液の消費を抑制することが可能になる。また、ワイパ41とノズル面302aとが当接する機会も低減できるため、ワイパ41の寿命を長くすることができる。特に、印刷率の低い画像を印刷する場合や印刷する幅が短い場合などは、インク使用量が少なく、ノズル面302aへのインク付着量も少ないため、上記の片道清掃とするのが好ましい。
【0034】
図6は、本発明の実施形態に係るヘッドの外周部上面の説明図であり、図6(a)は本発明の実施形態を示し、図6(b)は比較例の構成を示している。
【0035】
本発明の実施形態では、図6(a)のようにヘッド300の外周部上面301は、ワイパ41による払拭終了側(X方向正側)の鉛直方向(Y方向)位置が、払拭開始側(X方向負側)の鉛直方向位置よりも低くなるようにしている。これにより、ノズル面302aをワイパ41で払拭後、払拭に使用した余剰の洗浄液Lcはヘッド外周部上面301上を流れ、洗浄液Lcは直ぐにヘッド300のエッジ部分(角部)に達する。そのため、洗浄液Lcはノズル面302aに流れ込みにくくなり、ワイパ41で払拭したノズル面302aが再度汚れてしまうという不具合を低減できる。
【0036】
本実施形態においてワイパ41はスポンジ、低硬度ゴムなどの弾性体からなり、ワイパ41はノズル面302aとの当接により変形し、ノズル面302aに付着したインク汚れを拭き取る。このため、余剰な洗浄液Lcはワイパ41とノズル面302aとの当接面から溢れ出た後、外周部上面301の傾きに沿って鉛直方向(Y方向)負側へ流れていく。
【0037】
一方、図6(b)の比較例のように外周部上面301を、ワイパ41による払拭終了側の鉛直方向位置が、払拭開始側の鉛直方向位置よりも高くなるようにした場合は、余剰な洗浄液Lcが外周部上面301に沿ってX方向負側へ流れていく。
【0038】
この場合、洗浄液Lcの流れる距離が長く、洗浄液LcはX方向負側へ流れていく途中でノズル面302a側へも溢れ出てしまう。溢れた洗浄液Lcは、ノズル302やノズル面302aに残っていたインクと混ざりながら流れることで、ノズル面302aを再度汚してしまう。
【0039】
上述のように、本実施形態は、水平方向(Z方向)にインクを吐出するノズル302を設けたノズル面302aを有するヘッド300と、ノズル面302aを払拭するワイパ41と、ワイパ41に洗浄液を供給する洗浄液供給部材42とを備え、ワイパ41を、鉛直方向(Y方向)および水平方向(Z方向)と交差する方向(X方向)に移動して、ノズル面302aをワイパ41で払拭する印刷装置1000であって、ヘッド300の外周部上面301は、ワイパ41の移動の方向において、ワイパ41による払拭終了側の鉛直方向位置が、払拭開始側の鉛直方向位置よりも低くなる。これにより、ノズル面302aの払拭に使用した洗浄液がノズル面302aに流れ込みにくくなり、払拭後のノズル面302aが再度汚れてしまうという不具合を低減できる。なお、「水平方向」(Z方向)に関しては、必ずしも重力方向と直交する方向のみに限るものではない。払拭終了側の位置を低くすることで上記効果を奏することが可能な範囲であれば多少方向がずれていてもよい。
【0040】
また、上述のように、ワイパ41に対してノズル面302aを接離するスライド機構90を備える。これにより、ノズル面302aを払拭せずにワイパ41をX方向に動かす際に、ノズル面302aをワイパ41から離間することが可能になり、洗浄液の無駄な消費、およびワイパ41のノズル面302aに対する不要な当接をなくすことができる。
【0041】
図7は、本発明の第2の実施形態の説明図である。なお、上述の実施形態にて説明した部材と同等の部材には同一符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0042】
図5に示した実施形態では、清掃装置4の往路移動時または復路移動時のいずれか一方で片道清掃を行う構成とした。これに対し第2の実施形態では、清掃装置4の往復移動、つまり清掃装置4のX方向負側への往路移動時と、清掃装置4のX方向正側への復路移動時との両方でノズル面302aを往復清掃する構成としている。印刷率の高い画像を印刷する場合や印刷する幅が長い場合などは、インク使用量が多く、ノズル面302aへのインク付着量も多くなるため、往復清掃とするのが好ましい。
【0043】
往復移動の往路と復路とでノズル面302aをワイパ41で払拭する場合、ヘッド300の外周部上面301は、復路での払拭終了側(X方向正側)の鉛直方向位置が、当該復路での払拭開始側(X方向負側)の鉛直方向位置よりも低くなるように設ける。これにより、払拭後にヘッド300の外周部上面301に溢れ出た、インクの混ざった洗浄液がノズル面302aに流れてノズル面302aを汚してしまうという不具合を防止できる。
【0044】
なお、ワイパ41を、復路での払拭終了側から払拭開始側に動かす場合、つまり図7の往路での払拭方向に動かす場合であって、且つ往路において払拭を実施する必要がない場合は、上述のスライド機構90によってワイパ41をノズル面302aから離間してもよい。
【0045】
上述のように、本実施形態において、ワイパ41は、ワイパ41の移動の方向(X方向)において往復移動が可能であり、往復移動の往路および復路でノズル面302aを払拭するとともに、払拭終了側は、復路での払拭終了側である。これにより、往復清掃の場合においても、ノズル面302aの払拭に使用した洗浄液がノズル面302aに流れ込みにくくなり、払拭後のノズル面302aが再度汚れてしまうという不具合を低減できる。
【0046】
また、上述のように、ワイパ41の往復移動において、ワイパ41を復路での払拭終了側から当該復路での払拭開始側に動かす場合は、スライド機構90によりワイパ41とノズル面302aとを離す。これにより、往復移動のうちの片道で払拭を実施する場合でも洗浄液がノズル面302aに流れ込みにくくなり、払拭後のノズル面302aが再度汚れてしまうという不具合を低減できる。
【0047】
図8は、本発明の第3の実施形態の説明図であり、図8(a)はヘッドおよび清掃装置周りの概略構成を示した正面図、図8(b)はその側面図である。なお、第1および第2の実施形態において説明した部材と同等の部材には同一符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0048】
第1および第2の実施形態は、キャリッジ1に清掃装置4を搭載したが、本実施形態は、清掃装置4をキャリッジ1に搭載せず、印刷装置1000のX軸レール101の端部に固定して設けた点が異なる。
【0049】
キャリッジ1は、X軸レール101に沿ってX方向(正側および負側)に移動可能であり、キャリッジ1はスライド機構90を介してヘッド保持体70を保持している。ヘッド保持体70は、上述の実施形態と同様にヘッド300を備えている。また、X軸レール101は、その端部に清掃装置4を固定している。清掃装置4は、上述の実施形態と同様にワイパ41、洗浄液供給部材42および洗浄液回収部材43を備える。
【0050】
図9も第3の実施形態の説明図であり、図9(a)はヘッドおよび清掃装置周りの概略構成を示した上面図、図9(b)はヘッド部の正面図である。
【0051】
第3の実施形態においてノズル面302aの洗浄を行う場合は、一度キャリッジ1を清掃装置4の右側に位置するように動かし、次にヘッド300と清掃装置4とが図8(b)に示した配置となるようにする。その後、キャリッジ1のX方向正側への移動とともにワイパ41でノズル面302aを払拭する。
【0052】
なお、本実施形態では、ヘッド300の外周部上面301は、X方向負側が低くなるように傾けているが、ワイパ41による払拭終了側の鉛直方向位置が、払拭開始側の鉛直方向位置よりも低くなる関係が成立するならば、図10のようにX方向正側が低くなるように傾けてもよい。
【0053】
このようにキャリッジ1の往復移動のうち、往路移動時または復路移動時のいずれか一方で清掃を実施する場合、ヘッド300の外周部上面301は、払拭方向において、払拭終了側の鉛直方向位置が、払拭開始側の鉛直方向位置よりも低くなるように設ける。これにより、払拭後にヘッド300の外周部上面301に溢れた洗浄液がノズル面302aに流れてきてノズル面302aを汚してしまうという不具合を防ぐことが可能になる。
【0054】
また、キャリッジ1の往路移動時または復路移動時のいずれか一方で片道清掃を実施することにより、洗浄液の消費を抑制することが可能になる。また、ワイパ41とノズル面302aとが当接する機会も低減できるため、ワイパ41の寿命を長くすることができる。特に、印刷率の低い画像を印刷する場合や印刷する幅が短い場合などは、インク使用量が少なく、ノズル面302aへのインク付着量も少ないため、上記の片道清掃とするのが好ましい。
【0055】
上述のように、本実施形態は、水平方向(Z方向)にインクを吐出するノズル302を設けたノズル面302aを有するヘッド300と、ノズル面302aを払拭するワイパ41と、ワイパ41に洗浄液を供給する洗浄液供給部材42とを備え、ヘッド300を、鉛直方向(Y方向)および水平方向(Z方向)と交差する方向(X方向)に移動して、ノズル面302aをワイパ41で払拭する印刷装置1000であって、ヘッド300の外周部上面301は、ヘッド300の移動の方向において、ワイパ41による払拭終了側の鉛直方向位置が、払拭開始側の鉛直方向位置よりも低くなる。これにより、ノズル面302aの払拭に使用した洗浄液がノズル面302aに流れ込みにくくなり、払拭後のノズル面302aが再度汚れてしまうという不具合を低減できる。
【0056】
また、上述のように、ワイパ41に対してノズル面302aを接離するスライド機構90を備える。これにより、ノズル面302aを払拭せずにヘッド300をX方向に動かす際に、ノズル面302aをワイパ41から離間することが可能になり、洗浄液の無駄な消費、およびワイパ41のノズル面302aに対する不要な当接をなくすことができる。
【0057】
図11は、本発明の第4の実施形態の説明図であり、図11(a)はヘッドおよび清掃装置周りの概略構成を示した上面図、図11(b)はヘッド部の正面図である。なお、第3の実施形態に示した部材と同等の部材には同一符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0058】
第3の実施形態では、キャリッジ1の往路移動時または復路移動時のいずれか一方で片道清掃を行う構成とした。これに対し第4の実施形態では、キャリッジ1の往復移動、つまりキャリッジ1のX方向負側への往路移動時と、キャリッジ1のX方向正側への復路移動時との両方でノズル面302aを往復清掃する構成としている。印刷率の高い画像を印刷する場合や印刷する幅が長い場合などは、インク使用量が多く、ノズル面302aへのインク付着量も多くなるため、往復清掃とするのが好ましい。
【0059】
往復移動の往路と復路とでノズル面302aをワイパ41で払拭する場合、ヘッド300の外周部上面301は、復路での払拭終了側(X方向負側)の鉛直方向位置が、当該復路での払拭開始側(X方向正側)の鉛直方向位置よりも低くなるように設ける。これにより、払拭後にヘッド300の外周部上面301に溢れ出た、インクの混ざった洗浄液がノズル面302aに流れてノズル面302aを汚してしまうという不具合を防止できる。
【0060】
キャリッジ1がX方向正側へ移動し、ヘッド300が清掃装置4を通過したならば、ヘッド保持体70はスライド機構90によりZ方向正側へ移動する。このスライド機構90を使用することで、ワイパ41に対するノズル面302aの位置を調整することが可能であり、ワイパ41とノズル面302aとの接離を切り替えることができる。
【0061】
なお、キャリッジ1を往路での払拭方向(復路での払拭終了側から払拭開始側)に動かす場合であって、且つ往路において払拭を実施する必要がない場合は、スライド機構90によってノズル面302aをワイパ41から離間してもよい。
【0062】
上述のように、本実施形態において、ヘッド300(キャリッジ1)は、ヘッド300の移動の方向(X方向)において往復移動が可能であり、往復移動の往路および復路でノズル面302aを払拭するとともに、払拭終了側は、復路での払拭終了側である。これにより、往復清掃の場合においても、ノズル面302aの払拭に使用した洗浄液がノズル面302aに流れ込みにくくなり、払拭後のノズル面302aが再度汚れてしまうという不具合を低減できる。
【0063】
また、上述のように、ヘッド300(キャリッジ1)の往復移動において、ヘッド300を復路での払拭終了側から当該復路での払拭開始側に動かす場合は、スライド機構90によりワイパ41とノズル面302aとを離す。これにより、往復移動のうちの片道で払拭を実施する場合でも洗浄液がノズル面302aに流れ込みにくくなり、払拭後のノズル面302aが再度汚れてしまうという不具合を低減できる。
【0064】
図12は、本発明の実施形態に係る液体吐出装置の別の例を示す説明図であり、図12(a)は全体構成図、図12(b)は図12(a)の要部拡大図である。
【0065】
例示した液体吐出装置は、例えば航空機の機体側面などに画像を形成する印刷装置である。印刷装置2000は、キャリッジ1を往復直線移動可能に支持するリニアレール404と、リニアレール404を適宜所定の位置へ動かし、その位置で保持する多関節ロボット405とを備える。多関節ロボット405は、複数の関節によって人間の腕のように自由な動きを可能としたロボットアーム405aを備えており、ロボットアーム405aの先端を自由に動かし、正確な位置に配置することができる。
【0066】
多関節ロボット405としては、例えば、6つの軸、すなわち6つの関節を備えた6軸制御型の産業用ロボットを用いることができる。6軸型の多関節ロボットによれば予め動作に関する情報をティーチングしておくことで、きわめて正確、且つ迅速にリニアレール404を機体702の所定位置に対峙することができる。ロボット405は、6軸に限るものではなく、5軸、7軸など適宜の軸数を備えた多関節ロボットを用いることができる。
【0067】
ロボット405のロボットアーム405aはフォーク状の支持部材424を備えている。この支持部材424の左側の枝部424aの先端には垂直リニアレール423aを、右側の枝部424bの先端には垂直リニアレール423bを平行になるようにして取り付けている。そして、キャリッジ1を移動可能に保持したリニアレール404の両端を、2つの垂直リニアレール423a、423bが支持している。
【0068】
キャリッジ1は、第1乃至第4の実施形態の構成などを備えるものであり、機体702に向けて液体を吐出するヘッドを備えている。ヘッドとしては、上述のヘッド300や、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ホワイトなどの各色の液体を吐出する複数のヘッド300、または複数のノズル列を有するヘッド300を備えている。このキャリッジ1の各ヘッド300またはヘッド300の各ノズル列に対しては、インクタンク400から各色の液体を供給している。
【0069】
キャリッジ1は、リニアレール404上を移動することで第1の方向へ動き、このリニアレール404が垂直リニアレール423a、423b上を移動することで第1の方向と交差する第2の方向へ動くことが可能である。また、キャリッジ1には、第1の方向および第2の方向と交差する第3の方向(本例では機体702に向けての液体吐出方向)にてキャリッジ1を動かす第1のスライド機構を備えている。また、キャリッジ1は、ヘッドをキャリッジ1に対して第3の方向にて動かす第2のスライド機構を備えている。
【0070】
印刷装置2000は、ロボット405によりリニアレール404を機体702の画像形成領域に動かし、画像データに応じてキャリッジ1をリニアレール404に沿って移動しながらヘッド300を駆動して、画像形成を行う。そして、1ライン分の印刷が終了したときに、垂直リニアレール423a、423bを駆動することにより、キャリッジ1のヘッド300をあるラインから次のラインに動かす。この動作を繰り返して、機体702の所要の画像形成領域に画像形成することが可能となる。
【0071】
図13は、本発明の実施形態に係る液体吐出装置のさらに別の例を示す概略構成図である。
【0072】
例示した液体吐出装置は、例えばウォールクライミングロボットのような無人車両型の印刷装置である。印刷装置7000は、対象物(本例では建物の壁面)100を印刷装置7000の底部で吸引しながらローラ710を駆動して移動することが可能である。印刷装置7000は、インク等の液体を吐出するヘッド、および清掃装置を含む液体吐出ユニット720を備えており、液体タンク730に収容した液体を、ケーブル740を介して液体吐出ユニット720へ供給する。そして、印刷装置7000は液体吐出ユニット720に備えたヘッドから対象物100に向けて液体を吐出し、対象物100の塗装部Pに液体を塗布する。
【0073】
なお、本例は、液体タンク730を地上に設置し、ケーブル740を介して液体タンク730から液体吐出ユニット720への液体の供給を行っているが、液体タンク730は印刷装置7000に備えてもよい。印刷装置7000に液体タンク730を備えることで、ケーブル740による移動範囲の制限をなくすことができ、印刷装置7000を自由に動かすことが可能になる。
【0074】
そして、このような印刷装置7000の液体吐出ユニット720に、第1の実施形態または第2の実施形態の構成を適用した場合にも、本発明の効果を得ることができる。
【0075】
なお、本発明において、液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどでもよい。これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0076】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0077】
[第1態様]
第1態様は、水平方向(例えばZ方向)に液体を吐出するノズルを設けたノズル面(例えばノズル面302a)を有するヘッド(例えばヘッド300)と、前記ノズル面を払拭する払拭部材(例えばワイパ41)と、前記払拭部材に洗浄液を供給する洗浄液供給部材(例えば洗浄液供給部材42)と、を備え、前記ヘッドまたは前記払拭部材を、鉛直方向(例えばY方向)および前記水平方向と交差する方向(例えばX方向)に移動して、前記ノズル面を前記払拭部材で払拭する液体吐出装置(例えば印刷装置1000)であって、前記ヘッドの外周部上面(例えば外周部上面301)は、前記ヘッドまたは前記払拭部材の前記移動の方向において、前記払拭部材による払拭終了側の鉛直方向位置が、払拭開始側の鉛直方向位置よりも低くなることを特徴とするものである。第1態様によれば、ノズル面への液体の流れ込みを低減した液体吐出装置を提供することができる。
【0078】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記ヘッド(例えばヘッド300)または前記払拭部材(例えばワイパ41)は、前記ヘッドまたは前記払拭部材の前記移動の方向(例えばX方向)において往復移動が可能であり、前記往復移動の往路および復路で前記ノズル面(例えばノズル面302a)を払拭するとともに、前記払拭終了側は、前記復路での払拭終了側であることを特徴とするものである。第2態様によれば、往復清掃の場合においても、ノズル面の払拭に使用した洗浄液がノズル面に流れ込みにくくなり、払拭後のノズル面が再度汚れてしまうという不具合を低減できる。
【0079】
[第3態様]
第3態様は、第1態様または第2態様において、前記払拭部材(例えばワイパ41)に対して前記ノズル面(例えばノズル面302a)を接離する接離機構(例えばスライド機構90)を備えることを特徴とするものである。第3態様によれば、ノズル面を払拭せずにヘッドまたは払拭部材を動かす際に、ノズル面と払拭部材とを離間することが可能になり、洗浄液の消費を抑制することが可能になる。また、払拭部材とノズル面とが当接する機会も低減できるため、払拭部材の寿命を長くすることができる。
【0080】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記ヘッド(例えばヘッド300)または前記払拭部材(例えばワイパ41)の前記往復移動において、前記ヘッドまたは前記払拭部材を前記払拭終了側から前記払拭開始側に動かす場合は、前記接離機構(例えばスライド機構90)により前記払拭部材と前記ノズル面とを離すことを特徴とするものである。第4態様によれば、往復移動のうちの片道で払拭を実施する場合でも洗浄液がノズル面に流れ込みにくくなり、払拭後のノズル面が再度汚れてしまうという不具合を低減できる。
【符号の説明】
【0081】
1 キャリッジ
300 ヘッド
301 外周部上面
302 ノズル
302a ノズル面
4 清掃装置
41 ワイパ
42 洗浄液供給部材
43 洗浄液回収部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【特許文献1】特開2020-168786号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13