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特開2023-72963肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、毛髪のハリコシ向上剤、及び外用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023072963
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、毛髪のハリコシ向上剤、及び外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20230518BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20230518BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230518BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230518BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20230518BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/63
A61K8/9789
A61Q19/00
A61K36/484
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185725
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】木曽 昭典
(72)【発明者】
【氏名】エン チグン
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC642
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC792
4C083AC841
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD412
4C083AD512
4C083AD531
4C083AD532
4C083AD552
4C083AD662
4C083BB51
4C083BB53
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC31
4C083CC38
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE10
4C083EE12
4C083EE28
4C083EE29
4C088AB60
4C088AC01
4C088BA08
4C088BA11
4C088CA03
4C088CA13
4C088MA02
4C088MA17
4C088MA22
4C088ZA89
4C088ZA92
(57)【要約】
【課題】優れた肌の質改善作用を有し、かつ安全性が高い肌の質改善剤、優れたむくみの予防及び/又は改善作用を有し、かつ安全性が高いむくみの予防及び/又は改善剤、優れた表皮機能向上作用を有し、かつ安全性が高い表皮機能向上剤、優れた毛髪のハリコシ向上作用を有し、かつ安全性が高い毛髪のハリコシ向上剤、並びに優れた肌の質改善作用、むくみの予防及び/又は改善作用、表皮機能向上作用、及び毛髪のハリコシ向上作用の少なくともいずれかを有し、かつ安全性が高い外用組成物の提供。
【解決手段】(A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を併用する、肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤、並びにこれらを用いる外用組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を併用することを特徴とする肌の質改善剤。
【請求項2】
角層タンパク質のカルボニル化抑制作用を有する請求項1に記載の肌の質改善剤。
【請求項3】
(A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を併用することを特徴とするむくみの予防及び/又は改善剤。
【請求項4】
リンパ管活性化因子(VEGF-C) mRNA発現促進作用を有する請求項3に記載のむくみの予防及び/又は改善剤。
【請求項5】
(A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を併用することを特徴とする表皮機能向上剤。
【請求項6】
前記表皮機能が、保湿機能及びバリア機能の少なくともいずれかである請求項5に記載の表皮機能向上剤。
【請求項7】
セルピンb3(SCCA1) mRNA発現抑制作用、ナトリウム/水素イオン交換輸送体1(NHE1) mRNA発現促進作用、アクアポリン3(AQP3) mRNA発現促進作用、インボルクリン(IVL) mRNA発現促進作用、クローディン-1(CLDN1) mRNA発現促進作用、及びクローディン-4(CLDN4) mRNA発現促進作用、並びにこれらの2種以上の組合せからなる群から選択されるいずれかを有する請求項5から6のいずれかに記載の表皮機能向上剤。
【請求項8】
(A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を併用することを特徴とする毛髪のハリコシ向上剤。
【請求項9】
ヘアケラチンタンパク質(KAP5.1) mRNA発現促進作用を有する請求項8に記載の毛髪のハリコシ向上剤。
【請求項10】
請求項1から2のいずれかに記載の肌の質改善剤、請求項3から4のいずれかに記載のむくみの予防及び/又は改善剤、請求項5から7のいずれかに記載の表皮機能向上剤、及び請求項8から9のいずれかに記載の毛髪のハリコシ向上剤、並びにこれらの2種以上の組合せからなる群から選択されるいずれかを用いることを特徴とする外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、毛髪のハリコシ向上剤、及び外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚の加齢に伴う老化や光老化との関係で、角層カルボニル化タンパク質の研究が盛んに行われている。カルボニル化タンパク質としては、一般に、タンパク質におけるLys、Arg、Proといったアミノ酸残基のNH基が直接酸化されてカルボニル基となった結果生成されるものと、脂質が酸化して過酸化脂質、さらには分解して反応性の高いアルデヒドとなり、それがタンパク質と結合することで生成されるものとがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
皮膚においては、タンパク質が直接的に酸化される場合、また皮膚表面の皮脂がフリーラジカルによって酸化し、過酸化脂質が生成されることでタンパク質の酸化は開始される場合があると考えられる。いったん過酸化脂質が生成されると、酸化は連鎖的に進行し、肌表面に刺激を与えるだけにとどまらず、角質層の奥まで入り込んで細胞にダメージを与える。
【0004】
また、皮膚の最表層である角層は角層細胞からなり、その85%がタンパク質であるケラチンから構成されている。近年、このケラチンが、日常的に皮膚が受ける酸化的ストレス(紫外線、タバコの煙)等によってカルボニル化されることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。通常、ケラチンは水分子を多く取り込んでいるが、カルボニル化されることによって水分子を排除してしまい、カルボニル化された後のケラチンは水分子を取り込むことができなくなり、さらに、このことが皮膚を乾燥させ、皮膚の外観を損なうことが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
このように角層中のカルボニル化タンパク質が増加することによって、肌の透明性・保水性が失われるとともに(例えば、特許文献3参照)、肌の柔軟性・弾力性が失われてしまうことが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
皮脂、皮膚タンパク質のカルボニル化は、潤い、張り、明るさ等を維持することのできる、肌本来が有する機能をことごとく低下させると考えられ、外界の影響による角層タンパク質のカルボニル化が、肌の透明感の低下の一因と考えられている(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】
したがって、表皮の角層タンパク質のカルボニル化を予防したり、そのカルボニル化度を低減させたりすることが、肌の質の改善に必要とされる。すなわち、タンパク質のカルボニル化を抑制することは、肌の質の改善に有用であると考えられる。
【0008】
皮膚脈管系は真皮中に存在し、血管とリンパ管から構成される。ホメオスタシスを保つためには、血管外に移動した組織液は、再び静脈に還流しなければならない。皮膚の静脈は、中枢へ効率良く血流を送る。しかし、静脈自体が組織液を取り込む能力は乏しい。このことから、組織液を取り込む組織、すなわちリンパ管が皮膚においても必須の構造であることが理解されてきた。
【0009】
リンパ管は、皮膚中に存在する不要物や血管から恒常的に漏れ出す水分、たんぱく質の回収を行うことにより、細胞周囲の微小環境を一定の状態を保つために重要な役割を担っている。また、外界からの感染因子や外的因子に対してTリンパ球の輸送を介して抵抗する役割を担っていると考えられてきた。
【0010】
リンパ管の機能不全の病態として、むくみやリンパ浮腫などの症状が知られている(例えば、非特許文献3参照)。
【0011】
これまでの研究から、リンパ管に特異的に存在する膜貫通型受容体としてVEGFR-3が同定され、そのリガンドの1つとしてリンパ管活性化因子(VEGF-C)(「血管内皮増殖因子C」と称することもある。)が見つかっている。VEGF-Cはリンパ管に作用してリンパ管内皮細胞の増殖、遊走そして管腔形成を促進してリンパ管の機能を活性化する(例えば、非特許文献3参照)。また、むくみの病的状態としての浮腫にVEGF-Cの導入による遺伝子治療の可能性が模索されている(例えば、非特許文献4参照)。
【0012】
皮膚中のVEGF-Cは表皮に強く発現している。VEGF-Cを表皮で高発現したマウスは真皮中に存在するリンパ管の数が増加しており(例えば、非特許文献5参照)、一方でVEGF-Cの受容体であるVEGFR-3の中和抗体を表皮で高発現して表皮にあるVEGF-Cの効果をブロックしたところ、真皮のリンパ管の数が極端に減少し、浮腫が形成する知見が得られている(例えば、非特許文献6参照)。これらのことから、皮膚真皮内に存在するリンパ管の機能は表皮に発現するVEGF-Cによって制御されており、VEGF-Cが機能しなくなることでむくみ(浮腫)を呈することがわかっている。
【0013】
したがって、VEGF-Cの発現を促進することは、むくみの予防及び/又は改善に有用であると考えられる。
【0014】
表皮の最外層に位置する角層は表皮細胞の核が分解することによって消失する過程を経て完成するが、何らかの要因により角層細胞に核が残存し、角層での有核細胞の出現を特徴とする不全角化の状態となると、表皮のバリア機能が著しく低下することが知られている。これまでの研究から、核の分解に関するメカニズムの一つとして、セルピンb3(SCCA1)が正常な角層形成を阻害する因子として見いだされている。正常な表皮にはセルピンb3(SCCA1)はほとんど認められないが、肌荒れを生じた表皮では、正常な表皮と比較して、アトピー性皮膚炎では16倍、露光部皮膚では90倍、花粉症アレルギー性皮膚炎では232倍、乾癬皮膚では466倍も発現が増加しているという知見が得られている(例えば、非特許文献7参照)。
【0015】
したがって、セルピンb3(SCCA1)の発現を抑制することは、保湿機能やバリア機能といった表皮機能の向上に有用であると考えられる。
【0016】
健常な皮膚表面のpHは通常4.5~6.0の弱酸性に保たれており、ブドウ球菌、真菌、アクネ菌などの異常な増殖を阻止する役割を果たしている。pHの弱酸性化には、汗や皮脂に含まれる成分の影響が考えられていたが、近年、内因性のpH調節因子として、ナトリウム/水素イオン交換輸送体1(Na/H exchanger1;NHE1)が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。これまでの研究から、NHE1ノックアウトマウスでは皮膚表面のpHが高く、バリア回復能が低下していることや、老齢マウスでは若齢マウスと比較して、皮膚pHの値が高く、表皮のNHE1発現量が少ないことが明らかとなっており、ヒトの皮膚でもNHE1タンパク質量が少ないほど、皮膚表面のpHの値が上昇し、肌荒れが進行する可能性が示唆されている(例えば、非特許文献8参照)。
【0017】
したがって、ナトリウム/水素イオン交換輸送体1(NHE1)の発現を促進することは、保湿機能やバリア機能といった表皮機能の向上に有用であると考えられる。
【0018】
皮膚細胞では、水チャンネルとして知られるアクアポリンが、細胞膜上に発現して、細胞間隙の水をはじめとする低分子物質を細胞内へ取り込む役割を担っていることが知られている。ヒトでは、13種類のアクアポリン(AQP0~AQP12)の存在が知られている。表皮細胞においては、主としてAQP3が存在しており、水に加えて、水分保持作用に関与するグリセロールや尿素等の低分子化合物をも取り込む役割を担っていると考えられている。
【0019】
しかしながら、AQP3は加齢とともに減少し、このことが水分保持機能の低下の一因であることが示唆されている。そのため、AQP3の発現を促進することは、保湿機能やバリア機能といった表皮機能の向上に有用であると考えられる。
【0020】
角質細胞は、ケラチン線維を主成分とし、それを包む角化外膜細胞(cornified envelope,CE)から構成される。このCEは、表皮角化細胞の分化に従って産生される複数のCE前駆体蛋白質が、酵素トランスグルタミナーゼにより架橋され、不溶化することで形成される。さらに、セラミド等が共有結合して疎水的な構造をとることで、CEの一部に細胞間脂質のラメラ構造の土台が供給され、これにより角層バリア機能の基礎が形成される。
【0021】
このCE前駆体蛋白質の1つとして、インボルクリン(IVL)が知られている。そのため、IVLの発現を促進することは、保湿機能やバリア機能といった表皮機能の向上に有用であると考えられる。
【0022】
生体においてその内と外とを隔てる構造の1つに、上皮細胞から構成される上皮組織がある。上皮組織は、物質透過を制御するバリア機能を有しており、これにより生体において外界とは異なる内部環境を作り上げている。このようなバリア機能は、主に細胞間の接着により形成されるが、かかる接着の1つがタイトジャンクション(以下、「TJ」と称することがある。)である。TJは、隣接する上皮細胞同士を密着させるだけでなく、細胞と細胞との隙間をシールすることで物質の透過を制御する細胞間接着構造である。TJを構成しているのは、細胞膜タンパク質であるクローディンやオクルディン、裏打ちタンパク質であるZO-1やZO-2等であり、これらのタンパク質はTJストランドの骨格を構成し、TJのバリア機能を制御すると考えられている(例えば、非特許文献9参照)。
【0023】
現在までクローディンは20種以上のクローディン分子が報告され、クローディンファミリーを形成している。これらは組織特異的な発現パターンを示すことが分かっており、表皮においてはクローディン-1(CLDN1)及びクローディン-4(CLDN4)が発現している。クローディン-4は粘膜上皮においても多く発現しており、身体の内外で異物の侵入を防ぐバリアとして機能している。
【0024】
クローディンやオクルディンの発現が何らかの原因で減少した場合、TJの機能低下を引き起こす。例えば、従来は、皮膚のバリア機能は角層のみが担っていると考えられていたが、近年、表皮顆粒層に存在するTJの構成タンパク質を遺伝子レベルで欠損させると皮膚のバリア機能が崩壊することが見いだされ、TJも皮膚のバリア機能に重要な役割を担うと考えられるようになっている(例えば、非特許文献10参照)。
【0025】
そのため、CLDN1やCLDN4の発現を促進することは、保湿機能やバリア機能といった表皮機能の向上に有用であると考えられる。
【0026】
毛髪は人々の印象に多大なる影響を与えることから、その変化や異常は古来より人々の重大な関心事となっている。毛髪に関する問題としては、抜け毛、薄毛等といった毛根・毛包の状態に関するものの他に、毛髪が硬い、柔らかい、細い、ハリやコシがない、枝毛、くせ毛等といった毛髪の髪質に関するもの等があり、実に様々である。さらに、毛髪の髪質に関する問題としても、日常のヘアケア、ヘアメイク、紫外線暴露等による毛髪の損傷に起因するものや、毛幹形成における問題に起因するものなどがあり、極めて多様な要因が関与している。
【0027】
従来、毛髪の細さや、ハリやコシのなさを改善するために、例えば育毛有効成分を配合した育毛剤や養毛剤などが利用されてきた。しかしながら、従来の育毛剤や養毛剤では、髪は太くならず、ハリやコシを与えるほどの効果は期待できないという問題があった。これらを改善するため、アルコキシシランの加水分解で生成したシラノール化合物を毛髪に浸透させ、かつ毛髪内部で重合させる方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかし、化学物質を用いて毛髪を改質するこの方法では、毛髪に自然なハリやコシを付与するという点で十分とはいえなかった。
【0028】
一方、生化学的・分子生物学的に髪質を改善する試みもなされている。毛髪は、その表面を覆うキューティクル(毛小皮)、その内部にある毛皮質(コルテックス)、及び毛髪の中心を占める毛髄質(メデュラ)から構成されている。このうち、毛髪の損傷においては、その表面を覆うキューティクルがもっとも影響を受けやすく、また毛髪の硬さ、ハリやコシ等にはキューティクルが重要な役割を担っていることが知られている(例えば、非特許文献11参照)。そのため、キューティクルを効果的に再生することができれば、毛髪の硬さ、ハリやコシ等の髪質の改善が可能になると考えられる。
【0029】
ここで、ケラチン関連タンパク質(Keratin-associated protein;KAP)のうち、KAP5ファミリー遺伝子のmRNA発現量と毛髪のハリやコシの強さとの間に相関関係があることが明らかにされている(例えば、特許文献6参照)。また、KAP5ファミリーの1つであるKAP5.1が、成長過程にあるキューティクルに局在することも報告されている(例えば、非特許文献12参照)。
【0030】
そのため、KAP5.1の発現を促進することは、毛髪のハリやコシの向上に有用であると考えられる。
【0031】
以上のように、これまでに様々な研究がなされている。しかしながら、上述した少なくともいずれかの作用を有し、かつ安全性が高く、そのため、化粧料等の外用組成物や研究用試薬などの成分として広く利用が可能な新たな素材に対する要望は依然として強く、その速やかな開発が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2004-340935号公報
【特許文献2】特開2004-107269号公報
【特許文献3】特開2005-249672号公報
【特許文献4】特開2006-349372号公報
【特許文献5】特開2005-320314号公報
【特許文献6】特開2006-014721号公報
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】Jens J. Thiele et al., THE JOURNAL OF INVESTIGATIVE DERMATOLOGY, Vol.113, No.3, 1999年, p.335, 339
【非特許文献2】Ichiro Iwai et al., J. Soc. Cosmet. Chem. Jpn., Vol.42, No.1, 2008年, p.16-21
【非特許文献3】Jussila, L. & Alitalo, K.(2002) Physiol Rev 82, 673-700
【非特許文献4】Saaristo, A., Tammela, T., Timonen, J., Yla-Herttuala, S., Tukiainen, E., Asko-Seljavaara, S. & Alitalo, K.(2004) Faseb J 18, 1707-9
【非特許文献5】Jeltsch, M., Kaipainen, A., Joukov, V., Meng, X., Lakso, M., Rauvala, H., Swartz, M., Fukumura, D., Jain, R. K. & Alitalo, K. (1997) Science 276, 1423-5
【非特許文献6】Makinen, T., Jussila, L., Veikkola, T., Karpanen, T., Kettunen, M. I., Pulkkanen, K. J., Kauppinen, R., Jackson, D. G., Kubo, H., Nishikawa, S., Yla-Herttuala, S. & Alitalo, K.(2001) Nat Med 7, 199-205
【非特許文献7】C.,Katagiri et al.,(2010) J.Dermatol.Sci., 57, 95-101
【非特許文献8】日本香粧品科学会誌,2018年,vol.42,pp.79-84
【非特許文献9】日本香粧品科学会誌,2007年,vol.31,pp.296-301
【非特許文献10】J. Cell Biol.,2002年,vol.156,pp.1099-1111
【非特許文献11】曽我部敦ら,日本化粧品技術者会誌,2002年,第36巻,第3号,p.207-216
【非特許文献12】Jones LN. et al.,Int J Trichology,2010年,Vol.2,No.2,p.89-95
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた肌の質改善作用を有し、かつ安全性が高い肌の質改善剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れたむくみの予防及び/又は改善作用を有し、かつ安全性が高いむくみの予防及び/又は改善剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた表皮機能向上作用を有し、かつ安全性が高い表皮機能向上剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた毛髪のハリコシ向上作用を有し、かつ安全性が高い毛髪のハリコシ向上剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた肌の質改善作用、むくみの予防及び/又は改善作用、表皮機能向上作用、及び毛髪のハリコシ向上作用の少なくともいずれかを有し、かつ安全性が高い外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
前記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、(A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を組み合わせると、より一層優れた肌の質改善作用、むくみの予防及び/又は改善作用、表皮機能向上作用、及び毛髪のハリコシ向上作用の少なくともいずれかの作用が得られることを知見し、本発明を完成したものである。
【0036】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を併用することを特徴とする肌の質改善剤である。
<2> 角層タンパク質のカルボニル化抑制作用を有する前記<1>に記載の肌の質改善剤である。
<3> (A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を併用することを特徴とするむくみの予防及び/又は改善剤である。
<4> リンパ管活性化因子(VEGF-C) mRNA発現促進作用を有する前記<3>に記載のむくみの予防及び/又は改善剤である。
<5> (A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を併用することを特徴とする表皮機能向上剤である。
<6> 前記表皮機能が、保湿機能及びバリア機能の少なくともいずれかである前記<5>に記載の表皮機能向上剤である。
<7> セルピンb3(SCCA1) mRNA発現抑制作用、ナトリウム/水素イオン交換輸送体1(NHE1) mRNA発現促進作用、アクアポリン3(AQP3) mRNA発現促進作用、インボルクリン(IVL) mRNA発現促進作用、クローディン-1(CLDN1) mRNA発現促進作用、及びクローディン-4(CLDN4) mRNA発現促進作用、並びにこれらの2種以上の組合せからなる群から選択されるいずれかを有する前記<5>から<6>のいずれかに記載の表皮機能向上剤である。
<8> (A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を併用することを特徴とする毛髪のハリコシ向上剤である。
<9> ヘアケラチンタンパク質(KAP5.1) mRNA発現促進作用を有する前記<8>に記載の毛髪のハリコシ向上剤である。
<10> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の肌の質改善剤、前記<3>から<4>のいずれかに記載のむくみの予防及び/又は改善剤、前記<5>から<7>のいずれかに記載の表皮機能向上剤、及び前記<8>から<9>のいずれかに記載の毛髪のハリコシ向上剤、並びにこれらの2種以上の組合せからなる群から選択されるいずれかを用いることを特徴とする外用組成物である。
【発明の効果】
【0037】
本発明の肌の質改善剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた肌の質改善作用を有し、かつ安全性が高い肌の質改善剤を提供することができる。
本発明のむくみの予防及び/又は改善剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れたむくみの予防及び/又は改善作用を有し、かつ安全性が高いむくみの予防及び/又は改善剤を提供することができる。
本発明の表皮機能向上剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた表皮機能向上作用を有し、かつ安全性が高い表皮機能向上剤を提供することができる。
本発明の毛髪のハリコシ向上剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた毛髪のハリコシ向上作用を有し、かつ安全性が高い毛髪のハリコシ向上剤を提供することができる。
本発明の外用組成物によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた肌の質改善作用、むくみの予防及び/又は改善作用、表皮機能向上作用、及び毛髪のハリコシ向上作用の少なくともいずれかを有し、かつ安全性が高い外用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、及び毛髪のハリコシ向上剤)
本発明の肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、及び毛髪のハリコシ向上剤は、(A)グリチルレチン酸ステアリル(以下、「(A)成分」と称することがある。)と、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物(以下、「(B)成分」と称することがある。)と、(C)甘草葉抽出物(以下、「(C)成分」と称することがある。)と、を少なくとも併用し、更に必要に応じてその他の成分を用いる。
【0039】
前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分とを併用することにより、飛躍的に向上した、肌の質改善作用、むくみの予防及び/又は改善作用、表皮機能向上作用、及び毛髪のハリコシ向上作用を発揮する詳細については不明であるが、前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分と、の併用がこのような優れた作用を有し、肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、及び毛髪のハリコシ向上剤として非常に有用であることは、従来は全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0040】
本明細書において、肌の質の改善とは、失われた肌の透明性や保水性を高めたり、失われた肌の柔軟性や弾力性を高めることをいう。なお、肌の透明感があるとは、皮膚がくもりなく透き通ったように見える状態のことをいう。
【0041】
本明細書において、むくみとは、皮膚又は皮膚の下に水分が溜まった状態のことをいう(「浮腫」と称することもある。)。本明細書において、むくみの予防とは皮膚又は皮膚の下に水分が溜まることを防ぐことをいい、むくみの改善とは皮膚又は皮膚の下に水分が溜まった状態を緩和又は解消することをいう。
【0042】
本明細書において、表皮機能としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、保湿機能、バリア機能が好適に挙げられる。前記保湿機能とは肌の水分を保つ機能のことをいい、前記バリア機能とは体内の水分の蒸発、ならびに外部からの刺激物の侵入を防ぐ機能のことをいう。本明細書において、表皮機能向上とは、低下した表皮機能を高めることをいう。
【0043】
本明細書において、毛髪のハリとは引っ張ったときの毛髪の強度のことをいい、毛髪のコシとは毛髪の弾力のことをいう。本明細書において、毛髪のハリコシ向上とは、低下した毛髪のハリ又はコシを高めることをいう。
【0044】
本発明の肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、及び毛髪のハリコシ向上剤は、有効成分である前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分とが同一の組成物中に含まれる態様であってもよいし、前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分とが2種以上の異なる組成物中に含まれ、使用時に組み合わせて用いる態様であってもよい。すなわち、使用時に組み合わせて用いる態様では、前記(A)成分と、前記(B)成分と、前記(C)成分とが、それぞれ別の組成物に含まれているものを組み合わせて用いてもよいし、前記成分のうち2種を含む組成物と、1種を含む組成物を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
<(A)成分:グリチルレチン酸ステアリル>
前記グリチルレチン酸ステアリルは下記構造式で表される化合物である。前記グリチルレチン酸ステアリルは、グリチルレチン酸にステアリルアルコールをエステル結合させることで、軟膏やクリーム等に使用される油脂類に対する溶解性を向上させた成分で、薬用スキンケア製品の抗炎症有効成分として汎用されている。前記グリチルレチン酸ステアリルは、塩の態様であってもよい。
【化1】
【0046】
前記グリチルレチン酸ステアリルは、合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0047】
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤における前記(A)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0048】
<(B)成分:グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物>
前記(B)成分は、グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
-油溶性甘草抽出物-
甘草は、マメ科グリチルリーザ(Glycyrrhiza)属に属する多年生草本植物である。該甘草としては、中国・東北~内蒙古~西北地方などに産する東北甘草、西北甘草(Glycyrrhiza uralensis)、中国・新疆地方などに産する新疆甘草(脹果甘草、Glycyrrhiza inflata)、旧ソ連、アフガニスタン、トルコ、パキスタン、スペインなどに産するスペイン甘草(光果甘草、Glycyrrhiza glabra)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、グリチルリーザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)が好ましい。
【0050】
前記油溶性甘草抽出物は、抽出原料として使用する抽出部位から調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0051】
前記甘草の抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、根部、根茎部、葉部、葉部などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、根部、根茎部が好ましい。
前記甘草の抽出原料の形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0052】
前記甘草の抽出部位の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抽出部位を乾燥させた後、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供する方法などが挙げられる。前記乾燥は、天日で行ってもよいし、通常使用されている乾燥機を用いて行ってもよい。また、抽出原料としては、工業的に製造されているグリチルリチンの抽出原料となっている乾燥根部及び乾燥根茎部、又はグリチルリチン等を得るために水で抽出した後の水抽出残渣を原料として使用することもできる。
【0053】
前記油溶性甘草抽出物は、抽出溶媒として有機溶媒を使用する植物の抽出に一般に用いられる方法により容易に得ることができる。前記抽出物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抽出液そのもの、抽出液の希釈液、抽出液の濃縮液、これらの乾燥物、粗精製物、精製物などが挙げられる。
【0054】
前記抽出の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抽出原料に対し2~10倍量の有機溶媒を加え、攪拌しながら常温で抽出する方法、加熱還流して抽出する方法等が挙げられる。前記抽出の方法は、1種単独で行ってもよいし、2種以上を組み合わせて行ってもよい。また、前記抽出は、1回でもよいし、2回以上繰り返し行ってもよい。
【0055】
前記抽出における条件(抽出時間及び抽出温度)、抽出溶媒及び抽出溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0056】
前記抽出溶媒として使用し得る有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、含水メタノール、含水エタノール、含水プロパノールなどが挙げられる。さらには、超臨界流体として二酸化炭素を用いることもできる。これらの有機溶媒の中では、エタノール又は含水エタノールを使用するのが食品衛生法上の問題が少なく、好ましい。
【0057】
前記抽出溶媒の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。
【0058】
得られた抽出液は、遠心分離及び濾過等により不溶物を取り除いた後、油溶性甘草抽出物として、そのまま使用することもできるし、更に常法により、濃縮して使用することもできる。また、適当な方法で抽出液を乾燥させれば、油溶性甘草抽出物として、黄褐色の抽出物粉末を得ることもできる。
得られた液状抽出物をそのまま、又は液状抽出物を濃縮したもの、更には液状抽出物の粉末或いは固形の乾燥物が油溶性甘草抽出物として利用される。前記乾燥物を得るに当たって、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリンなどのキャリアーを加えてもよい。
【0059】
得られた油用性甘草抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0060】
-グラブリジン-
前記グラブリジンは、前記油溶性甘草抽出物を精製することにより調製することができる。
【0061】
前記油溶性甘草抽出物の精製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性炭を用いる方法、多孔性樹脂を用いる方法、吸着剤を用いる方法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などが挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を組み合わせて行ってもよい。
【0062】
前記多孔性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、芳香族系又は芳香族系修飾型のものが挙げられる。使用可能な多孔性樹脂の具体例としては、ダイヤイオンHP、同20、同21、セパビーズSP207、同825、同850(以上、三菱化学社製)、アンバーライトXAD2、同4、同7(以上、オルガノ社製)などが挙げられる。
前記吸着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オクタデシルシリカゲル(ODS)などが挙げられる。
【0063】
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤における前記(B)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記グラブリジンと、前記油溶性甘草抽出物との質量比としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0064】
<(C)成分:甘草葉抽出物>
甘草は、上記した(B)成分の油溶性甘草抽出物の甘草と同様である。
前記甘草葉抽出物に用いる甘草の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、グリチルリーザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)が好ましい。
【0065】
前記甘草葉抽出物は、抽出原料として使用する葉から調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0066】
前記甘草の抽出部位は、葉部である。
前記甘草の抽出原料の形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0067】
前記甘草の抽出部位の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抽出部位を乾燥させた後、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供する方法などが挙げられる。前記乾燥は、天日で行ってもよいし、通常使用されている乾燥機を用いて行ってもよい。
【0068】
前記甘草葉抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法により容易に得ることができる。前記甘草葉抽出物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抽出液そのもの、抽出液の希釈液、抽出液の濃縮液、これらの乾燥物、粗精製物、精製物などが挙げられる。
【0069】
前記抽出の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出する方法などが挙げられ、より具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料である前記甘草の前記抽出部位を投入し、必要に応じて適宜撹拌しながら、例えば、30分間~4時間静置して可溶性成分を溶出した後、濾過して抽出残渣を除くことにより抽出液を得る方法などが挙げられる。前記抽出液は、更に、抽出溶媒を留去し、乾燥してもよい。
また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0070】
前記甘草葉部の抽出における条件(抽出時間及び抽出温度)、抽出溶媒及び抽出溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0071】
前記抽出溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性溶媒、又は水と親水性溶媒との混合溶媒などが挙げられる。
【0072】
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水などの他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。なお、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水なども含まれる。前記水は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
前記親水性溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
前記混合溶媒における前記水に対する前記親水性溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低級アルコールを使用する場合は、水10容量部に対して1容量部~90容量部、低級脂肪族ケトンを使用する場合は、水10容量部に対して1容量部~40容量部、多価アルコールを使用する場合は、水10容量部に対して1容量部~90容量部添加することが好ましい。
【0075】
前記抽出溶媒の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。
【0076】
得られた前記甘草葉抽出物は、前記甘草葉抽出物の希釈物、濃縮物、乾燥物、粗精製物、精製物などを得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製などの処理を施してもよい。
【0077】
前記甘草葉抽出物の精製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理などの精製方法が挙げられる。前記精製方法により精製することで、有効成分の濃度を高めたり、不要物を除去したりすることができる。
【0078】
得られた前記甘草葉抽出物は、そのままでも前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤の有効成分として使用することができるが、利用しやすい点で、前記濃縮液、前記乾燥物が好ましい。前記乾燥物を得るに当たって、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリンなどのキャリアーを加えてもよい。
【0079】
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤における前記(C)成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0080】
前記(A)成分と前記(B)成分との使用量の比(以下、「配合比」と称することもある。)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、質量比((A)成分:(B)成分)として、50:1~1:10などが挙げられる。
なお、前記(A)成分と前記(B)成分との質量比は、固形分換算した値である。
【0081】
前記(A)成分と前記(C)成分との使用量の比(以下、「配合比」と称することもある。)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、質量比((A)成分:(C)成分)として、50:1~1:50などが挙げられる。
なお、前記(A)成分と前記(C)成分との質量比は、固形分換算した値である。
【0082】
前記(B)成分と前記(C)成分との使用量の比(以下、「配合比」と称することもある。)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、質量比((B)成分:(C)成分)として、20:1~1:10などが挙げられる。
なお、前記(B)成分と前記(C)成分との質量比は、固形分換算した値である。
【0083】
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤は、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分のみからなるものであってもよい。
【0084】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤の利用形態に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、着色料、香料、美白剤、保湿剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、皮膚栄養剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0086】
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤は、上記した各成分を組み合わせた混合物としてもよいし、上記した各成分の組合せを製剤化してもよい。製剤化する場合は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤等を用いることができる。
【0087】
<用途>
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品などが挙げられる。
【0088】
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤の用法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、外用などの用法が挙げられる。
【0089】
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤の投与部位、投与量、用法、及び剤型としては、その使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0090】
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、美容液、ローション、ジェル、美容オイル、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、ファンデーション、入浴剤、石鹸、ボディーソープ、アストリンゼント、ヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、ヘアリキッド、ポマード、シャンプー、リンス、コンディショナー等の外用剤などが挙げられる。
前記各剤型の肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0091】
本発明の肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することもできる。
【0092】
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤の使用量、使用期間等の使用方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0093】
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤は、優れた肌の質改善作用、むくみの予防及び/又は改善作用、表皮機能向上作用、又は毛髪のハリコシ向上作用を有し、安全性が高いので、例えば、外用組成物、より具体的には、肌の質改善用外用組成物、むくみの予防及び/又は改善用外用組成物、表皮機能向上用外用組成物、又は毛髪のハリコシ向上用外用組成物などの有効成分として好適に用いることができる。
【0094】
前記肌の質改善剤が奏する肌の質改善作用は、例えば、角層タンパク質のカルボニル化抑制作用によって発揮される。そのため、前記肌の質改善剤は、角層タンパク質のカルボニル化抑制作用を有することが好ましい。なお、前記肌の質改善剤が奏する肌の質改善作用は、角層タンパク質のカルボニル化抑制作用に基づいて発揮される肌の質改善作用に限定されるものではない。
また、本発明は、前記(A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を併用することを特徴とする角層タンパク質のカルボニル化抑制剤にも関する。
【0095】
上述したように、本発明の肌の質改善剤は、優れた肌の質改善作用を奏する。したがって、本発明は、個体に前記肌の質改善剤を投与することを特徴とする、肌の質改善方法にも関する。
また、本発明は、個体に前記角層タンパク質のカルボニル化抑制剤を投与することを特徴とする、角層タンパク質のカルボニル化抑制方法にも関する。
【0096】
前記むくみの予防及び/又は改善剤が奏するむくみの予防及び/又は改善作用は、例えば、リンパ管活性化因子(VEGF-C) mRNA発現促進作用によって発揮される。そのため、前記むくみの予防及び/又は改善剤は、リンパ管活性化因子(VEGF-C) mRNA発現促進作用を有することが好ましい。なお、前記むくみの予防及び/又は改善剤が奏するむくみの予防及び/又は改善作用は、リンパ管活性化因子(VEGF-C) mRNA発現促進作用に基づいて発揮されるむくみの予防及び/又は改善作用に限定されるものではない。
また、本発明は、前記(A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を併用することを特徴とするリンパ管活性化因子(VEGF-C) mRNA発現促進剤にも関する。
【0097】
上述したように、本発明のむくみの予防及び/又は改善剤は、優れたむくみの予防及び/又は改善作用を有する。したがって、本発明は、個体に前記むくみの予防及び/又は改善剤を投与することを特徴とする、むくみの予防及び/又は改善方法にも関する。
また、本発明は、個体に前記リンパ管活性化因子(VEGF-C) mRNA発現促進剤を投与することを特徴とする、リンパ管活性化因子(VEGF-C) mRNA発現促進方法にも関する。
【0098】
前記表皮機能向上剤が奏する表皮機能向上作用は、例えば、セルピンb3(SCCA1) mRNA発現抑制作用、ナトリウム/水素イオン交換輸送体1(NHE1) mRNA発現促進作用、アクアポリン3(AQP3) mRNA発現促進作用、インボルクリン(IVL) mRNA発現促進作用、クローディン-1(CLDN1) mRNA発現促進作用、及びクローディン-4(CLDN4) mRNA発現促進作用、並びにこれらの2種以上の組合せからなる群から選択されるいずれかによって発揮される。そのため、前記表皮機能向上剤は、セルピンb3(SCCA1) mRNA発現抑制作用、ナトリウム/水素イオン交換輸送体1(NHE1) mRNA発現促進作用、アクアポリン3(AQP3) mRNA発現促進作用、インボルクリン(IVL) mRNA発現促進作用、クローディン-1(CLDN1) mRNA発現促進作用、及びクローディン-4(CLDN4) mRNA発現促進作用、並びにこれらの2種以上の組合せからなる群から選択されるいずれかを有することが好ましい。なお、前記表皮機能向上剤が奏する表皮機能向上作用は、セルピンb3(SCCA1) mRNA発現抑制作用、ナトリウム/水素イオン交換輸送体1(NHE1) mRNA発現促進作用、アクアポリン3(AQP3) mRNA発現促進作用、インボルクリン(IVL) mRNA発現促進作用、クローディン-1(CLDN1) mRNA発現促進作用、及びクローディン-4(CLDN4) mRNA発現促進作用、並びにこれらの2種以上の組合せからなる群から選択されるいずれかに基づいて発揮される表皮機能向上作用に限定されるものではない。
【0099】
前記表皮機能としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、保湿機能及びバリア機能の少なくともいずれかが好ましい。
【0100】
また、本発明は、前記(A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を併用することを特徴とする、セルピンb3(SCCA1) mRNA発現抑制剤、ナトリウム/水素イオン交換輸送体1(NHE1) mRNA発現促進剤、アクアポリン3(AQP3) mRNA発現促進剤、インボルクリン(IVL) mRNA発現促進剤、クローディン-1(CLDN1) mRNA発現促進剤、クローディン-4(CLDN4) mRNA発現促進剤、保湿機能向上剤、又はバリア機能向上剤にも関する。
【0101】
上述したように、本発明の表皮機能向上剤は、優れた表皮機能向上作用を奏する。したがって、本発明は、個体に前記表皮機能向上剤を投与することを特徴とする、表皮機能向上方法にも関する。前記表皮機能としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、保湿機能及びバリア機能の少なくともいずれかが好ましい。
【0102】
また、本発明は、個体に前記セルピンb3(SCCA1) mRNA発現抑制剤を投与することを特徴とする、セルピンb3(SCCA1) mRNA発現抑制方法;個体に前記ナトリウム/水素イオン交換輸送体1(NHE1) mRNA発現促進剤を投与することを特徴とする、ナトリウム/水素イオン交換輸送体1(NHE1) mRNA発現促進方法;個体に前記アクアポリン3(AQP3) mRNA発現促進剤を投与することを特徴とする、アクアポリン3(AQP3) mRNA発現促進方法;個体に前記インボルクリン(IVL) mRNA発現促進剤を投与することを特徴とする、インボルクリン(IVL) mRNA発現促進方法;個体に前記クローディン-1(CLDN1) mRNA発現促進剤を投与することを特徴とする、クローディン-1(CLDN1) mRNA発現促進方法;個体に前記クローディン-4(CLDN4) mRNA発現促進剤を投与することを特徴とする、クローディン-4(CLDN4) mRNA発現促進方法;個体に前記保湿機能向上剤を投与することを特徴とする、保湿機能向上方法;個体に前記バリア機能向上剤を投与することを特徴とする、バリア機能向上方法にも関する。
【0103】
前記毛髪のハリコシ向上剤が奏する毛髪のハリコシ向上作用は、例えば、ヘアケラチンタンパク質(KAP5.1) mRNA発現促進作用によって発揮される。そのため、前記毛髪のハリコシ向上剤は、ヘアケラチンタンパク質(KAP5.1) mRNA発現促進作用を有することが好ましい。なお、前記毛髪のハリコシ向上剤が有する毛髪のハリコシ向上作用は、ヘアケラチンタンパク質(KAP5.1) mRNA発現促進作用に基づいて発揮される毛髪のハリコシ向上作用に限定されるものではない。
また、本発明は、前記(A)グリチルレチン酸ステアリルと、(B)グラブリジン及び/又は油溶性甘草抽出物と、(C)甘草葉抽出物と、を併用することを特徴とするヘアケラチンタンパク質(KAP5.1) mRNA発現促進剤にも関する。
【0104】
上述したように、本発明の毛髪のハリコシ向上剤は、優れた毛髪のハリコシ向上作用を奏する。したがって、本発明は、個体に前記毛髪のハリコシ向上剤を投与することを特徴とする、毛髪のハリコシ向上方法にも関する。
また、本発明は、個体に前記ヘアケラチンタンパク質(KAP5.1) mRNA発現促進剤を投与することを特徴とする、ヘアケラチンタンパク質(KAP5.1) mRNA発現促進方法にも関する。
【0105】
また、本発明の肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤は、肌の質改善作用、むくみの予防及び/又は改善作用、表皮機能向上作用、又は毛髪のハリコシ向上作用の作用機構に関する研究のための試薬としても用いることができる。
【0106】
(外用組成物)
本発明の外用組成物は、本発明の肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、及び毛髪のハリコシ向上剤、並びにこれらの2種以上の組合せからなる群から選択されるいずれかを用い、更に必要に応じてその他の成分を用いる。
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、及び毛髪のハリコシ向上剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0107】
<肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、及び毛髪のハリコシ向上剤、並びにこれらの2種以上の組合せからなる群から選択されるいずれか>
前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、及び毛髪のハリコシ向上剤は、上述した本発明の肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、及び毛髪のハリコシ向上剤である。
前記外用組成物に配合する前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、及び毛髪のハリコシ向上剤、並びにこれらの2種以上の組合せからなる群から選択されるいずれかは、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分の混合物をそのまま配合してもよいし、前記混合物を製剤化したものを配合してもよいし、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分をそれぞれ単独で又は複数種類を異なる外用組成物に配合し、使用時に前記各外用組成物を組み合わせて使用してもよい。
【0108】
前記外用組成物における前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、及び毛髪のハリコシ向上剤、並びにこれらの2種以上の組合せからなる群から選択されるいずれかの含有量としては、特に制限はなく、外用組成物の形態や前記各剤における有効成分(前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分)の生理活性等によって適宜調整することができるが、前記(A)成分、前記(B)成分、及び前記(C)成分の合計含有量(固形分換算した値)に換算して、0.0001質量%~20質量%が好ましく、0.001質量%~2質量%がより好ましい。前記外用組成物は、前記肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、及び毛髪のハリコシ向上剤、並びにこれらの2種以上の組合せからなる群から選択されるいずれかのみからなるものであってもよい。
【0109】
<その他の成分>
前記外用組成物におけるその他の成分としては、特に制限はなく、前記外用組成物の利用形態に応じて適宜選択することができ、例えば、通常化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分などが挙げられる。前記通常化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分としては、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0110】
前記外用組成物におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0111】
前記外用組成物としては、その区分に制限はなく、経皮的に使用される皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものである。
【0112】
前記外用組成物の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、美容液、ローション、ジェル、美容オイル、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、ファンデーション、入浴剤、石鹸、ボディーソープ、アストリンゼント、ヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、ヘアリキッド、ポマード、シャンプー、リンス、コンディショナーなどが挙げられる。
前記各外用組成物の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0113】
前記外用組成物の使用部位、使用量、用法、使用期間、及び剤型としては、その使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0114】
前記外用組成物は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、その作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することもできる。
【0115】
本発明の外用組成物は、安全性が高く、日常的に使用することが可能であり、有効成分の働きによって、肌の質改善作用、むくみの予防及び/又は改善作用、表皮機能向上作用、及び毛髪のハリコシ向上作用をはじめとする様々な生理活性作用を極めて効果的に発揮させることができる。
【0116】
上述したように、本発明の肌の質改善剤、むくみの予防及び/又は改善剤、表皮機能向上剤、又は毛髪のハリコシ向上剤は、優れた肌の質改善作用、むくみの予防及び/又は改善作用、表皮機能向上作用、又は毛髪のハリコシ向上作用を有する。
したがって、本発明は、個体に前記外用組成物を投与することを特徴とする、肌の質改善方法、むくみの予防及び/又は改善方法、表皮機能向上方法、又は毛髪のハリコシ向上方法にも関する。
【0117】
また、本発明は、個体に前記外用組成物を投与することを特徴とする、角層タンパク質のカルボニル化抑制方法、リンパ管活性化因子(VEGF-C) mRNA発現促進方法、セルピンb3(SCCA1) mRNA発現抑制方法、ナトリウム/水素イオン交換輸送体1(NHE1) mRNA発現促進方法、アクアポリン3(AQP3) mRNA発現促進方法、インボルクリン(IVL) mRNA発現促進方法、クローディン-1(CLDN1) mRNA発現促進方法、クローディン-4(CLDN4) mRNA発現促進方法、保湿機能向上方法、バリア機能向上方法、又はヘアケラチンタンパク質(KAP5.1) mRNA発現促進方法にも関する。
【実施例0118】
以下、本発明の試験例、配合例を説明するが、本発明は、これらの試験例、配合例に何ら限定されるものではない。
【0119】
(被験試料)
後述の試験例で用いる被験試料として、下記のものを用意した。
(1) グリチルレチン酸ステアリル(丸善製薬社製)
(2) 油溶性甘草抽出物(油溶性甘草エキスHG、丸善製薬社製)
(3) 甘草葉抽出物(甘草葉抽出液BG、丸善製薬社製)
(4) 上記(1)、(2)、及び(3)を固形分の質量比((1):(2):(3))として、200:10:1で含む混合物(以下、「混合物」と称することがある。)
【0120】
(試験例1:角層タンパク質カルボニル化抑制作用試験)
上記した被験試料を用い、下記の試験方法により、角層タンパク質カルボニル化抑制作用を試験した。
【0121】
非露光部である上腕内側の角層を、角質チェッカーを用いてテープストリッピング法により剥離・回収した。
剥離・回収した角層を、各種濃度の被験試料(濃度は下記表1を参照)と、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(NaClO)を40μmol/L含む又は含まない溶液1mL中に浸漬し、37℃で16時間反応させた。
その後、0.1mol/L MES(2-morpholinoethane sulfonic acid-Na)(pH5.5)緩衝液1mLで2回洗浄し、20μmol/L蛍光ヒドラジド(fluorescein-5-thiosemicarbazide;FTSC)含有MES(pH 5.5)1mLに浸漬して、室温・遮光下で1時間反応させ、角層タンパク質のカルボニル基をラベル化した。
その後、PBS(-)1mLで2回洗浄し、カバーガラス上に乗せ、オールインワン蛍光顕微鏡BZ-X800(キーエンス社製)で画像撮影し、付属の画像解析ソフトを用いて、角層面積あたりの蛍光輝度をカルボニル化レベルとした。
得られた結果から、下記式により角層タンパク質カルボニル化抑制率を算出した。結果を表1に示す。
角層タンパク質カルボニル化抑制率(%)=[1-{(A-C)/(B-C)}]×100
上記式中のA~Cは、それぞれ以下を表す。
A : NaClO処理あり・被験試料処理ありのときのカルボニル化レベル
B : NaClO処理あり・被験試料処理なしのときのカルボニル化レベル(コントロール)
C : NaClO処理なし・被験試料処理なしのときのカルボニル化レベル(ノーマル)
【0122】
【表1】
【0123】
表1の結果から、グリチルレチン酸ステアリルと、油溶性甘草抽出物と、甘草葉抽出物とを併用すると、非常に優れた角層タンパク質カルボニル化抑制作用を示すことが確認された。
【0124】
(試験例2:リンパ管活性化因子(VEGF-C) mRNA発現促進作用試験)
上記した被験試料を用い、下記の試験方法により、VEGF-C mRNA発現促進作用を試験した。
【0125】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、1.5×10細胞/mLの濃度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに1ウェル当たり2mLずつ播種し、37℃、5%CO下で一晩培養した。
一晩培養後、増殖因子を添加していない培地(KBM)に交換した。24時間後に培養液を捨て、KBMで必要濃度に溶解した被験試料(濃度は下記表2を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。
培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にてトータルRNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、200ng/μLになるようにトータルRNAを調製した。
このトータルRNAを鋳型とし、VEGF-C及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出は、リアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(Takara社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(Takara社製)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。VEGF-CのmRNAの発現量は、被験試料無添加又は被験試料添加でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHのmRNAの発現量で補正値を求め、さらに被験試料無添加時の補正値を100としたときの被験試料添加時の補正値を算出した。
得られた結果から、下記式によりVEGF-C mRNA発現促進率を算出した。結果を表2に示す。
VEGF-C mRNA発現促進率(%)=A/B×100
上記式中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A : 被験試料添加時の補正値
B : 被験試料無添加時の補正値
【0126】
【表2】
【0127】
表2の結果から、グリチルレチン酸ステアリルと、油溶性甘草抽出物と、甘草葉抽出物とを併用すると、非常に優れたVEGF-C mRNA発現促進作用を示すことが確認された。
【0128】
(試験例3:セルピン(Serpin) b3(SCCA1) mRNA発現抑制作用試験)
上記した被験試料を用い、下記の試験方法により、セルピンb3 mRNA発現抑制作用を試験した。
【0129】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、1.5×10細胞/mLの濃度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに1ウェル当たり2mLずつ播種し、37℃、5%CO下で一晩培養した。
一晩培養後、増殖因子を添加していない培地(KBM)に交換した。24時間後に培養液を捨て、KBMで必要濃度に溶解した被験試料(濃度は下記表3を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。
培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にてトータルRNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、200ng/μLになるようにトータルRNAを調製した。
このトータルRNAを鋳型とし、セルピンb3及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出は、リアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(Takara社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(Takara社製)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。セルピンb3のmRNAの発現量は、被験試料無添加又は被験試料添加でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHのmRNAの発現量で補正値を求め、さらに被験試料無添加時の補正値を100としたときの被験試料添加時の補正値を算出した。
得られた結果から、下記式によりセルピンb3 mRNA発現抑制率を算出した。結果を表3に示す。
セルピンb3 mRNA発現抑制率(%)={1-(A/B)}×100
上記式中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A : 被験試料添加時の補正値
B : 被験試料無添加時の補正値
【0130】
【表3】
【0131】
表3の結果から、グリチルレチン酸ステアリルと、油溶性甘草抽出物と、甘草葉抽出物とを併用すると、非常に優れたセルピンb3 mRNA発現抑制作用を示すことが確認された。
【0132】
(試験例4:ナトリウム/水素イオン交換輸送体1(NHE1) mRNA発現促進作用試験)
上記した被験試料を用い、下記の試験方法により、NHE1 mRNA発現促進作用を試験した。
【0133】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、1.5×10細胞/mLの濃度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに1ウェル当たり2mLずつ播種し、37℃、5%CO下で一晩培養した。
一晩培養後、増殖因子を添加していない培地(KBM)に交換した。24時間後に培養液を捨て、KBMで必要濃度に溶解した被験試料(濃度は下記表4を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。
培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にてトータルRNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、200ng/μLになるようにトータルRNAを調製した。
このトータルRNAを鋳型とし、NHE1及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出は、リアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(Takara社製)を用いて、TaKaRa SYBR(登録商標) PrimeScriptTM RT-PCR Kit(Perfect Real Time)(code No.RR063A)(Takara社製)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。NHE1のmRNAの発現量は、GAPDHのmRNAの発現量で補正し、算出した。
得られた結果から、下記式によりNHE1 mRNA発現促進率を算出した。結果を表4に示す。
NHE1 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
上記式中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A : 被験試料添加時の補正値
B : 被験試料無添加時の補正値
【0134】
【表4】
【0135】
表4の結果から、グリチルレチン酸ステアリルと、油溶性甘草抽出物と、甘草葉抽出物とを併用すると、非常に優れたNHE1 mRNA発現促進作用を示すことが確認された。
【0136】
(試験例5:アクアポリン3(AQP3) mRNA発現促進作用試験)
上記した被験試料を用い、下記の試験方法により、AQP3 mRNA発現促進作用を試験した。
【0137】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、1.5×10細胞/mLの濃度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに1ウェル当たり2mLずつ播種し、37℃、5%CO下で一晩培養した。
一晩培養後、増殖因子を添加していない培地(KBM)に交換した。24時間後に培養液を捨て、KBMで必要濃度に溶解した被験試料(濃度は下記表5を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。
培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にてトータルRNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、200ng/μLになるようにトータルRNAを調製した。
このトータルRNAを鋳型とし、AQP3及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出は、リアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(Takara社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(Takara社製)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。AQP3のmRNAの発現量は、GAPDHのmRNAの発現量で補正し、算出した。
得られた結果から、下記式によりAQP3 mRNA発現促進率を算出した。結果を表5に示す。
AQP3 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
上記式中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A : 被験試料添加時の補正値
B : 被験試料無添加時の補正値
【0138】
【表5】
【0139】
表5の結果から、グリチルレチン酸ステアリルと、油溶性甘草抽出物と、甘草葉抽出物とを併用すると、非常に優れたAQP3 mRNA発現促進作用を示すことが確認された。
【0140】
(試験例6:インボルクリン(IVL) mRNA発現促進作用試験)
上記した被験試料を用い、下記の試験方法により、IVL mRNA発現促進作用を試験した。
【0141】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、1.5×10細胞/mLの濃度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに1ウェル当たり2mLずつ播種し、37℃、5%CO下で一晩培養した。
一晩培養後、増殖因子を添加していない培地(KBM)に交換した。24時間後に培養液を捨て、KBMで必要濃度に溶解した被験試料(濃度は下記表6を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。
培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にてトータルRNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、200ng/μLになるようにトータルRNAを調製した。
このトータルRNAを鋳型とし、IVL及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出は、リアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(Takara社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(Takara社製)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。IVLのmRNAの発現量は、GAPDHのmRNAの発現量で補正し、算出した。
得られた結果から、下記式によりIVL mRNA発現促進率を算出した。結果を表6に示す。
IVL mRNA発現促進率(%)=A/B×100
上記式中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A : 被験試料添加時の補正値
B : 被験試料無添加時の補正値
【0142】
【表6】
【0143】
表6の結果から、グリチルレチン酸ステアリルと、油溶性甘草抽出物と、甘草葉抽出物とを併用すると、非常に優れたIVL mRNA発現促進作用を示すことが確認された。
【0144】
(試験例7:クローディン-1(CLDN1) mRNA発現促進作用試験)
上記した被験試料を用い、下記の試験方法により、CLDN1 mRNA発現促進作用を試験した。
【0145】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、1.5×10細胞/mLの濃度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに1ウェル当たり2mLずつ播種し、37℃、5%CO下で一晩培養した。
一晩培養後、増殖因子を添加していない培地(KBM)に交換した。24時間後に培養液を捨て、KBMで必要濃度に溶解した被験試料(濃度は下記表7を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。
培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にてトータルRNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、200ng/μLになるようにトータルRNAを調製した。
このトータルRNAを鋳型とし、CLDN1及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出は、リアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(Takara社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(Takara社製)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。CLDN1のmRNAの発現量は、GAPDHのmRNAの発現量で補正し、算出した。
得られた結果から、下記式によりCLDN1 mRNA発現促進率を算出した。結果を表7に示す。
CLDN1 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
上記式中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A : 被験試料添加時の補正値
B : 被験試料無添加時の補正値
【0146】
【表7】
【0147】
表7の結果から、グリチルレチン酸ステアリルと、油溶性甘草抽出物と、甘草葉抽出物とを併用すると、非常に優れたCLDN1 mRNA発現促進作用を示すことが確認された。
【0148】
(試験例8:クローディン-4(CLDN4) mRNA発現促進作用試験)
上記した被験試料を用い、下記の試験方法により、CLDN4 mRNA発現促進作用を試験した。
【0149】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、1.5×10細胞/mLの濃度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに1ウェル当たり2mLずつ播種し、37℃、5%CO下で一晩培養した。
一晩培養後、増殖因子を添加していない培地(KBM)に交換した。24時間後に培養液を捨て、KBMで必要濃度に溶解した被験試料(濃度は下記表8を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。
培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にてトータルRNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、200ng/μLになるようにトータルRNAを調製した。
このトータルRNAを鋳型とし、CLDN4及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出は、リアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(Takara社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(Takara社製)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。CLDN4のmRNAの発現量は、GAPDHのmRNAの発現量で補正し、算出した。
得られた結果から、下記式によりCLDN4 mRNA発現促進率を算出した。結果を表8に示す。
CLDN4 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
上記式中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A : 被験試料添加時の補正値
B : 被験試料無添加時の補正値
【0150】
【表8】
【0151】
表8の結果から、グリチルレチン酸ステアリルと、油溶性甘草抽出物と、甘草葉抽出物とを併用すると、非常に優れたCLDN4 mRNA発現促進作用を示すことが確認された。
【0152】
(試験例9:ヘアケラチンタンパク質(KAP5.1) mRNA発現促進作用試験)
上記した被験試料を用い、下記の試験方法により、KAP5.1 mRNA発現促進作用を試験した。
【0153】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、1.5×10細胞/mLの濃度になるようにKGMで希釈した後、6ウェルプレートに1ウェル当たり2mLずつ播種し、37℃、5%CO下で一晩培養した。
一晩培養後、増殖因子を添加していない培地(KBM)に交換した。24時間後に培養液を捨て、KBMで必要濃度に溶解した被験試料(濃度は下記表9を参照)を各ウェルに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加のKBMを用いて同様に培養した。
培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にてトータルRNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、200ng/μLになるようにトータルRNAを調製した。
このトータルRNAを鋳型とし、KAP5.1及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出は、リアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time SystemIII(Takara社製)を用いて、PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(Takara社製)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。KAP5.1のmRNAの発現量は、GAPDHのmRNAの発現量で補正し、算出した。
得られた結果から、下記式によりKAP5.1 mRNA発現促進率を算出した。結果を表9に示す。
KAP5.1 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
上記式中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A : 被験試料添加時の補正値
B : 被験試料無添加時の補正値
【0154】
【表9】
【0155】
表9の結果から、グリチルレチン酸ステアリルと、油溶性甘草抽出物と、甘草葉抽出物とを併用すると、非常に優れたKAP5.1 mRNA発現促進作用を示すことが確認された。
【0156】
(配合例1)
下記組成の乳液を常法により製造した。
・ グリチルレチン酸ステアリル(丸善製薬社製) 0.20g
・ 油溶性甘草抽出物(油溶性甘草エキスHG、丸善製薬社製) 0.01g
・ 甘草葉抽出物(甘草葉抽出液BG、丸善製薬社製) 0.001g
・ ホホバオイル 4.00g
・ 1,3-ブチレングリコール 3.00g
・ アルブチン 3.00g
・ ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.50g
・ オリーブオイル 2.00g
・ スクワラン 2.00g
・ セタノール 2.00g
・ モノステアリン酸グリセリル 2.00g
・ オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.00g
・ パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
・ 黄杞エキス 0.10g
・ グリチルリチン酸ジカリウム 0.10g
・ イチョウ葉エキス 0.10g
・ コンキオリン 0.10g
・ オウバクエキス 0.10g
・ カミツレエキス 0.10g
・ 香料 0.05g
・ 精製水 残部(全量を100gとする)
【0157】
(配合例2)
下記組成のクリームを常法により製造した。
・ グリチルレチン酸ステアリル(丸善製薬社製) 0.1g
・ 油溶性甘草抽出物(油溶性甘草エキスHG、丸善製薬社製) 0.01g
・ 甘草葉抽出物(甘草葉抽出液BG、丸善製薬社製) 0.001g
・ クジンエキス 0.1g
・ オウゴンエキス 0.1g
・ 流動パラフィン 5.0g
・ サラシミツロウ 4.0g
・ スクワラン 10.0g
・ セタノール 3.0g
・ ラノリン 2.0g
・ ステアリン酸 1.0g
・ オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
・ モノステアリン酸グリセリル 3.0g
・ 1,3-ブチレングリコール 6.0g
・ パラオキシ安息香酸メチル 1.5g
・ 香料 0.1g
・ 精製水 残部(全量を100gとする)
【0158】
(配合例3)
下記組成の美容液を常法により製造した。
・ グリチルレチン酸ステアリル(丸善製薬社製) 0.3g
・ 油溶性甘草抽出物(油溶性甘草エキスHG、丸善製薬社製) 0.01g
・ 甘草葉抽出物(甘草葉抽出液BG、丸善製薬社製) 0.01g
・ カミツレエキス 0.1g
・ ニンジンエキス 0.1g
・ キサンタンガム 0.3g
・ ヒドロキシエチルセルロース 0.1g
・ カルボキシビニルポリマー 0.1g
・ 1,3-ブチレングリコール 4.0g
・ グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
・ グリセリン 2.0g
・ 水酸化カリウム 0.25g
・ 香料 0.01g
・ 防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 0.15g
・ エタノール 2.0g
・ 精製水 残部(全量を100gとする)
【0159】
(配合例4)
下記組成のヘアトニックを常法により製造した。
・ グリチルレチン酸ステアリル(丸善製薬社製) 0.01g
・ 油溶性甘草抽出物(油溶性甘草エキスHG、丸善製薬社製) 0.05g
・ 甘草葉抽出物(甘草葉抽出液BG、丸善製薬社製) 0.1g
・ 酢酸トコフェロール 適量
・ セファランチン 0.002g
・ イソプロピルメチルフェノール 0.1g
・ ヒアルロン酸ナトリウム 0.15g
・ グリセリン 15.0g
・ エタノール 15.0g
・ 香料 適量
・ キレート剤(エデト酸ナトリウム) 適量
・ 防腐剤(ヒノキチオール) 適量
・ 可溶化剤(ポリオキシエチレンセチルエーテル) 適量
・ 精製水 残部(全量を100gとする)
【0160】
(配合例5)
下記組成のシャンプーを常法により製造した。
・ グリチルレチン酸ステアリル(丸善製薬社製) 0.20g
・ 油溶性甘草抽出物(油溶性甘草エキスHG、丸善製薬社製) 0.02g
・ 甘草葉抽出物(甘草葉抽出液BG、丸善製薬社製) 0.01g
・ マジョラム抽出物 1.0g
・ ウメ果実部抽出物 0.2g
・ ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 10.0g
・ ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 10.0g
・ ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 20.0g
・ ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0g
・ プロピレングリコール 2.0g
・ 香料 適量
・ 精製水 残部(全量を100gとする)