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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073090
(43)【公開日】2023-05-25
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
G03G15/20 525
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185916
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】氏家 大照
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA31
2H033BA49
2H033BA51
2H033BA55
2H033BA56
2H033BA57
2H033BB04
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB12
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BE00
2H033BE03
2H033BE06
2H033CA02
2H033CA07
2H033CA45
(57)【要約】
【課題】定着回転体の外周面に付着する付着物をより多く除去する。
【解決手段】定着回転体41,42,43の外周面を摺擦して該外周面に付着する付着物Wを除去する除去部材46を有し、加熱される該定着回転体の外周面を記録材Pに接触させて画像を該記録材に定着させる定着装置40であって、前記除去部材は、前記定着回転体の温度が定着時温度よりも低い所定温度を超える場合、該定着回転体が該所定温度以下になってから、前記定着回転体の外周面に付着する付着物を除去する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着回転体の外周面を摺擦して該外周面に付着する付着物を除去する除去部材を有し、加熱される該定着回転体の外周面を記録材に接触させて画像を該記録材に定着させる定着装置であって、
前記除去部材は、前記定着回転体の温度が定着時温度よりも低い所定温度を超える場合、該定着回転体が該所定温度以下になってから、前記定着回転体の外周面に付着する付着物を除去することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
前記除去部材は、前記定着回転体の外周面に対して接離可能に構成されており、前記定着回転体の温度が前記所定温度を超える場合、該定着回転体が該所定温度以下になってから、前記定着回転体の外周面に当接して付着物を除去することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の定着装置において、
前記所定温度は、前記定着回転体の温度が定着時温度である時に液体である除去対象の付着物が凝固する温度であることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項3に記載の定着装置において、
前記所定温度は、60℃以下の温度であることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記定着回転体の外周面を冷却する冷却手段を有することを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記除去部材は、前記定着回転体の外周面を摺擦するように回転する摺擦回転体であることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項6に記載の定着装置において、
前記摺擦回転体は、前記定着回転体の外周面に連れ回る方向へ該定着回転体の線速よりも速い線速で回転駆動することを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の定着装置において、
前記摺擦回転体の外周面は、表面粗さRzが40[μm]以上であることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記摺擦回転体の表層の下層には弾性層が設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の定着装置において、
前記除去部材は、電源投入時又は待機状態からの復帰時に、前記定着回転体の温度が定着時温度よりも低い所定温度を超える場合、該定着回転体が該所定温度以下になってから、前記定着回転体の外周面に付着する付着物を除去することを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、定着回転体の外周面を摺擦して該外周面に付着する付着物を除去する除去部材を有し、加熱される該定着回転体の外周面を記録材に接触させて画像を該記録材に定着させる定着装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、加熱定着ローラ(定着回転体)の外周面に付着したワックス(トナー中に分散含有されるワックスが定着時に溶融して付着したもの)を清掃ウェブ(除去部材)で除去する構成を備えた定着装置が開示されている。この定着装置では、効率よくワックスを除去する目的で、加熱定着ローラの外周面の温度がワックスの融点以上の温度に保たれているときに、液体状態であるワックスを清掃ウェブによって拭き取る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の定着装置では、定着回転体の外周面に付着するワックス等の付着物を除去しきれないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、定着回転体の外周面を摺擦して該外周面に付着する付着物を除去する除去部材を有し、加熱される該定着回転体の外周面を記録材に接触させて画像を該記録材に定着させる定着装置であって、前記除去部材は、前記定着回転体の温度が定着時温度よりも低い所定温度を超える場合、該定着回転体が該所定温度以下になってから、前記定着回転体の外周面に付着する付着物を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、定着回転体の外周面に付着する付着物をより多く除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態におけるプリンタの一例を示す概略構成図。
図2】同プリンタにおける定着装置の概略構成を示す、定着ローラ及び加熱ローラのローラ軸に対して直交する方向の断面図。
図3】同定着装置の概略構成を示す、定着ローラ及び加熱ローラのローラ軸に対して直交する方向の断面図。
図4】光沢残像が発生した用紙上の画像の例を示す説明図。
図5】用紙上のトナーのワックス成分が定着ベルト上に付着する様子を示す説明図。
図6】実施形態における、定着ベルトの外周面から付着物を除去するリフレッシュモードの制御の流れを示すフローチャート。
図7】実施形態における定着装置の一変形例を示す概略構成図。
図8】実施形態における定着装置による光沢残像の抑制効果を確認した効果確認試験の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を画像形成装置の定着装置に適用した一実施形態について説明する。
図1は、実施形態における画像形成装置としての電子写真方式のプリンタの一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のプリンタ100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を作像するための4つの作像ユニット2Y,2M,2C,2Kを備えている。このプリンタ100は、これら4つの作像ユニット2を、像担持体としての中間転写ベルト61に対してその無端移動方向に沿って並べて配置した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
【0009】
プリンタ100は、給紙路30、転写前搬送路31、手差し給紙路32、手差しトレイ33、レジストローラ対34、搬送ベルトユニット35、定着装置40、搬送切替装置50、排紙路51、排紙ローラ対52、排紙トレイ53等を備える。更には、2つの光書込ユニット1YM,1CK、一次転写ユニット60、二次転写ユニット78、第一給紙カセット101、第二給紙カセット102等を備えている。
【0010】
4つの作像ユニット2Y,2M,2C,2Kは、潜像担持体であるドラム状の感光体3Y,3M,3C,3Kをそれぞれ有している。また、第一給紙カセット101及び第二給紙カセット102は、それぞれ内部にシートである用紙Pの束を収容している。そして、第一給送ローラ101aまたは第二給送ローラ102aの回転駆動により、用紙束における一番上の用紙Pを給紙路30に向けて送り出す。
【0011】
プリンタ100の筐体における図1中の右側面には、手差しトレイ33が筐体に対して開閉可能に配設されており、筐体に対して開いた状態でトレイ上面に用紙束が手差しされる。手差しされた用紙束における一番上の用紙Pは、手差しトレイ33の送出ローラによって手差し給紙路32を介して給紙路30に向けて送り出される。
【0012】
2つの光書込ユニット1YM,1CKは、それぞれ、レーザーダイオード、ポリゴンミラー、各種レンズなどを有している。そして、プリンタ100の外部装置であるスキャナによって読み取られた画像情報や、パーソナルコンピュータから送られてくる画像情報に基づいて、レーザーダイオードを駆動し、作像ユニットの感光体3Y,3M,3C,3Kを光走査する。具体的には、作像ユニット2Y,2M,2C,2Kの感光体3Y,3M,3C,3Kは、駆動手段によってそれぞれ図1中の反時計回り方向に回転駆動される。
【0013】
第一光書込ユニット1YMは、駆動中のイエロー用感光体3Y及びマゼンタ用感光体3Mに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向されながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、イエロー用感光体3Y及びマゼンタ用感光体3Mには、イエローの画像情報及びマゼンタの画像情報に基づいた静電潜像がそれぞれ形成される。
第二光書込ユニット1CKは、駆動中のシアン用感光体3C及びブラック用感光体3Kに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向されながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、シアン用感光体3C及びブラック用感光体3Kには、シアンの画像情報及びブラックの画像情報に基づいた静電潜像がそれぞれ形成される。
【0014】
作像ユニット2Y,2M,2C,2Kは、それぞれ、感光体3Y,3M,3C,3Kと、その周囲に配設される各種機器とを一つのユニットとして共通の支持体に支持した状態で、それらがプリンタ100の筐体に対して一体的に着脱されるものである。作像ユニット2Y,2M,2C,2Kは、互いに使用するトナーの色が異なる点の他は同様の構成になっている。よって、以下の説明では、使用するトナーの色を示すY、M、C、Kを適宜省略して説明する。
【0015】
作像ユニット2は、感光体3のほか、これの表面に形成された静電潜像をトナー像に現像するための現像装置4を有している。また、作像ユニット2は、回転駆動される感光体3の表面に対して一様帯電処理を施す帯電装置5も有する。さらに、作像ユニット2は、後述する各色に対応した一次転写ニップを通過した後の感光体3表面に付着している転写残トナーをクリーニングするドラムクリーニング装置6なども有している。
【0016】
感光体3は、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材を塗布することによって感光層を形成したドラム状のものである。ドラム状のものに代えて、無端ベルト状のものを用いてもよい。
【0017】
現像装置4は、非磁性パイプからなる回転可能な現像スリーブと、これの中空内にスリーブに対して連れ回らないように配設されたマグネットローラとを具備している。そして、マグネットローラの発する磁力によって現像スリーブの表面に担持した磁性キャリアと非磁性の各色トナーとを含有する二成分現像剤(以下、単に現像剤という)により、感光体3上の静電潜像を現像する。
【0018】
各色の現像装置4Y,4M,4C,4Kに対しては、各色のトナー補給装置により、各色のトナーボトル103Y,103M,103C,103K内の各色トナーが適宜補給される。現像装置4内にはトナー濃度検知手段としてのトナー濃度センサが設けられている。トナー濃度センサは磁性体であるキャリアに起因する現像剤の透磁率を検出するものである。制御部は、各色のトナー濃度センサからの出力値と、トナー濃度目標値であるセンサからの出力目標値との比較に基づいて、各色のトナー補給装置の駆動を制御する。これにより、現像剤のトナー濃度を一定範囲内(例えば4[wt%]~9[wt%])にしている。
【0019】
ドラムクリーニング装置6は、感光体3に当接させたポリウレタンゴム製のクリーニングブレードによって感光体3の表面から転写残トナーを掻き取る方式のものである。かかる方式のものに代えて、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、ドラムクリーニング装置6は、クリーニングブレードに加えて、回転自在なファーブラシも感光体3に当接させている。このファーブラシは、固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体3の表面に塗布する役割も兼ねている。
【0020】
感光体3の上方には、除電ランプが配設されており、この除電ランプも作像ユニット2の一部になっている。除電ランプは、ドラムクリーニング装置6との対向部を通過した後の感光体3の表面を光照射によって除電する。除電された感光体3の表面は、帯電装置5によって一様に帯電された後、上述した光書込ユニット1による光走査が施される。帯電装置5は、電源から帯電バイアスの供給を受けながら回転駆動するものである。かかる方式のものに代えて、感光体3に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ方式のものを採用してもよい。
【0021】
4つの作像ユニット2Y,2M,2C,2Kの下方には、一次転写ユニット60が配設されている。この一次転写ユニット60は、複数のローラ63、67、68、69,70によって張架されている中間転写ベルト61を備える。そして、一次転写ユニット60は、中間転写ベルト61を、感光体3Y,3M,3C,3Kに当接させながら、何れか1つのローラの回転駆動によって図1中の時計回り方向(矢印A方向)に無端移動させる。これにより、感光体3Y,3M,3C,3Kと中間転写ベルト61とが当接する各色用の一次転写ニップが形成されている。
【0022】
各色用の一次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された一次転写ローラ62Y,62M,62C,62Kによって中間転写ベルト61を感光体3Y,3M,3C,3Kに向けて押圧している。4つの一次転写ローラ62Y,62M,62C,62Kには、それぞれ一次転写電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、各色用の一次転写ニップには、感光体3Y,3M,3C,3K上のトナー像を中間転写ベルト61に向けて静電移動させる一次転写電界が形成されている。
【0023】
中間転写ベルト61の図1中の時計回り方向の無端移動に伴って各色用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト61の外周面には、Yトナー像、Mトナー像、Cトナー像及びKトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト61の外周面には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0024】
中間転写ベルト61の図1中の下方には、二次転写ユニット78が配設されている。この二次転写ユニット78は、無端状の二次転写ベルト77、接地従動ローラ72、二次転写駆動ローラ71、二次ベルトクリーニング装置76、トナー付着量検知センサ64などを有している。二次転写ベルト77は、その内周面側に配設された接地従動ローラ72と、二次転写駆動ローラ71とによってテンション張架されながら、二次転写駆動ローラ71の回転駆動に伴って図1中の反時計回り方向(矢印B方向)に無端移動される。
【0025】
二次転写ユニット78の二次転写ベルト77は、自らの接地従動ローラ72に対する掛け回し箇所を、一次転写ユニット60の中間転写ベルト61における二次転写バイアスローラ68に対する掛け回し箇所に当接させて二次転写ニップを形成している。中間転写ベルト61の内周面側の二次転写バイアスローラ68には二次転写電源から出力される二次転写バイアスが印加されるのに対し、二次転写ベルト77の内周面側の接地従動ローラ72は接地されている。これにより、二次転写ニップ内に二次転写電界が形成される。
【0026】
二次転写ニップの図1中の右方には、レジストローラ対34が配設されており、ローラ間に挟み込んだ用紙Pを、中間転写ベルト61上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップ内では、中間転写ベルト61上の4色重ね合わせトナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によって用紙Pに一括二次転写され、用紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。
【0027】
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト61の外周面には、二次転写残トナーが付着している。この二次転写残トナーは、一次転写ユニット60の中間転写ベルトクリーニング装置75によって中間転写ベルト61の表面から除去される。
【0028】
二次転写ニップを通過した用紙Pは、中間転写ベルト61や二次転写ベルト77から離間して、搬送ベルトユニット35に受け渡される。この搬送ベルトユニット35は、無端状の搬送ベルト36を搬送駆動ローラ37と搬送従動ローラ38とによって張架しながら、搬送駆動ローラ37の回転駆動によって図1中の反時計回り方向(矢印C方向)に無端移動される。そして、二次転写ニップから受け渡された用紙Pを搬送ベルト36の上部張架面に保持しながら、搬送ベルト36の無端移動に伴って搬送し、用紙Pを定着装置40に受け渡す。
【0029】
定着装置40内に送られた用紙Pは、無端状の定着ベルト41と加圧ローラ44との当接によって形成される定着ニップに挟み込まれる。そして、加圧や加熱などの作用により、用紙Pの表面にトナー像が定着される。
【0030】
二次転写ニップで第一面にトナー像が転写され、かつ、定着装置40でその第一面にトナー像が定着された用紙Pは、搬送切替装置50に向けて送り出される。プリンタ100では、搬送切替装置50、再送路54、スイッチバック路55及びスイッチバック後搬送路56等により、再送手段が構成されている。搬送切替装置50は、定着装置40から受け取った用紙Pのその後の搬送先を、排紙路51と、再送路54とで切り替える。
【0031】
具体的には、用紙Pの第一面だけに対して画像を形成する片面モードのプリントジョブの実行時には、搬送先を排紙路51に設定する。これにより、第一面だけに画像が形成された用紙Pを、排紙路51経由で排紙ローラ対52に送って、機外の排紙トレイ53上に排紙する。また、用紙Pの両面に対してそれぞれ画像を形成する両面モードのプリントジョブの実行時において、両面にそれぞれ画像が定着された用紙Pを定着装置40から受け取ったときにも、搬送先を排紙路51に設定する。これにより、両面に画像が形成された用紙Pを、機外の排紙トレイ53上に排紙する。
【0032】
一方、両面モードのプリントジョブの実行時において、第一面だけに画像が定着された用紙Pを定着装置40から受け取ったときには、搬送先を再送路54に設定する。再送路54には、スイッチバック路55が繋がっており、再送路54に送られた用紙Pはこのスイッチバック路55に進入する。そして、用紙Pの搬送方向の全領域がスイッチバック路55に進入すると、用紙Pの搬送方向が逆転されて、用紙Pがスイッチバックする。
【0033】
スイッチバック路55には、再送路54の他に、スイッチバック後搬送路56が繋がっており、スイッチバックした用紙Pは、このスイッチバック後搬送路56に進入する。このとき、用紙Pの上下が反転する。そして、上下反転した用紙Pは、スイッチバック後搬送路56と、上述した給紙路30とを経由して、二次転写ニップに再送される。二次転写ニップで第二面にもトナー像が転写された用紙Pは、定着装置40を経由して第二面にトナー像が定着させられた後、搬送切替装置50と、排紙路51と排紙ローラ対52とを経由して、排紙トレイ53上に排紙される。
【0034】
図2及び図3は、本実施形態における定着装置40の概略構成を示す、定着ローラ42及び加熱ローラ43のローラ軸に対して直交する方向の断面図である。
【0035】
図2及び図3に示す定着装置40は、用紙Pの未定着トナー像が形成された表面に接触する定着ベルト41を備える。定着ベルト41は、定着ベルト駆動ローラである定着ローラ42と、定着ベルト従動ローラである加熱ローラ43とに張架され、定着ローラ42及び加熱ローラ43とともに定着回転体を構成する。定着ローラ42が図2及び図3中の時計回り方向(矢印D方向)に回転駆動することで、定着ベルト41が図2及び図3中の時計回り方向に回転走行する。
【0036】
定着ベルト41は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂からなる所定の層厚のベース層上に、シリコーンゴムなどの弾性層、離型層が順次積層された多層構造の無端ベルトである。定着ベルト41の弾性層は、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性材料で形成される。また、定着ベルト41の離型層は、例えば、PFA(4フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)等で形成されている。定着ベルト41の表層に離型層を設けることにより、トナー(トナー像)に対する離型性(剥離性)が確保されることになる。
【0037】
定着ベルト41は、具体例としては、ベース層としてPI層、弾性層としてシリコーンゴム層、離型層としてPFA樹脂層を用い、各層厚はPI層:80μm、シリコーンゴム層350μm、PFA樹脂層20μm等で構成される。
【0038】
加熱ローラ43は、加熱体である定着ヒータ45を内蔵する回転体からなる加熱部材であり、定着ローラ42は、回転体からなり、加熱ローラ43とともに定着ベルト41を張架する定着ニップ形成部材である。定着ヒータ45により加熱ローラ43が加熱され、加熱ローラ43によって定着ベルト41が加熱される。
【0039】
加熱ローラ43は、例えば、金属材料からなる薄肉の円筒体であって、その円筒体の内部に定着ヒータ45が固設される。定着ヒータ45としては、例えば、ハロゲンヒータやカーボンヒータ等を用いることができる。また、定着ヒータ45の両端部は、定着装置40の筺体に固定されている。また、定着ヒータ45は、加熱ローラ43を外部から加熱する誘導加熱手段(IH加熱手段)であっても良い。
【0040】
定着ローラ42は、熱源を有しておらず、例えば、金属(鉄やアルミ)などの剛性の高い芯材(芯金)を、シリコーンゴムなどの厚い弾性層で覆ったものである。
【0041】
定着装置40は、定着ローラ42の下方に加圧ローラ44を備える。加圧ローラ44は、定着ローラ42に対して定着ベルト41を挟んで対峙するように設けられており、加圧機構により定着ベルト41を介して定着ローラ42に加圧される。定着ローラ42が駆動機構によって回転駆動されることにより定着ベルト41が回転し、加圧ローラ44は、定着ベルト41に連れ回って図2及び図3中の反時計回り方向(矢印E方向)に回転する。
【0042】
加圧ローラ44は、例えば、定着ローラ42と同様に、SUS304等の芯金上に、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性層が形成されたローラ部材である。また、円筒体の内部には熱源として加圧ヒータを設けてもよい。
【0043】
定着ベルト41の表面温度は、温度検知手段としての温度センサ49によって検知される。制御部400は、温度制御手段として機能し、温度センサ49の出力値に基づいて定着ベルト41の表面温度が目標温度になるように定着ヒータ45を制御する。定着ヒータ45の制御には、ON/OFF制御またはPID制御等を用いる。なお、温度センサの設置位置および設置数は本実施形態のものに限られることはなく、加圧ローラ44の温度を検知する温度センサや、定着ローラ42の温度を検知する温度センサ等を設けるとともに、これに基づいて定着ヒータ45の制御をしてもよい。
【0044】
未定着トナー像を担持した用紙Pは、入口ガイド板49aに沿って、図2中の矢印αで示すように定着装置40に搬入され、定着ベルト41と加圧ローラ44とが定着ベルト41を介して形成する定着ニップを通過する。目標温度に制御されている定着ベルト41と加圧ローラ44とで形成される定着ニップでは、用紙P上のトナー像が溶融され、用紙Pに定着される。定着ニップを通過した用紙Pは、定着ニップ出口で定着分離板49b及び加圧分離爪49cにより定着ベルト41及び加圧ローラ44から分離され、搬送切替装置50内の搬送経路及び排紙路51を通り、プリンタ100本体の外に送り出される。
【0045】
また、図2及び図3に示すように、定着装置40は、加圧ローラ44の表面を清掃する加圧ローラクリーニング装置110を備える。加圧ローラクリーニング装置110は、帯状清掃部材である清掃ウェブ11と、ウェブ保持軸11bと、ウェブ巻取軸11aと、ウェブ当接ローラ11cとを備える。清掃ウェブ11の一端はウェブ巻取軸11aに固定され、他端はウェブ保持軸11bに固定され、清掃ウェブ11のウェブ巻取軸11aとウェブ保持軸11bとの間の部分がウェブ当接ローラ11cによって加圧ローラ44の表面に押し付けられる。
【0046】
ウェブ巻取軸11aが図2中の矢印G1方向に回転駆動することで清掃ウェブ11を巻き取り、清掃ウェブ11の加圧ローラ44と接触して清掃に使用された部分が図2中の矢印G2方向に移動し、未使用の部分が加圧ローラ44と接触する。清掃ウェブ11の未使用の部分はウェブ保持軸11bに巻きつけられている。そして、清掃ウェブ11が図2中の矢印G2方向に移動することで引っ張られ、ウェブ保持軸11bが図2中の矢印G3方向に回転し、清掃ウェブ11の未使用の部分が加圧ローラ44との接触部に向けて繰り出される。清掃部材として清掃ウェブ11を用いたクリーニング手段で加圧ローラ44の表面を清掃することで、加圧ローラ44に対して清掃部材の付着物の無い部分を用いて清掃し続けることが可能となる。よって、加圧ローラ44の表面に付着物が無い状態を維持することが可能となる。
【0047】
次に、定着ベルト41の外周面に付着する付着物の除去方法について説明する。
定着ベルト41の外周面には、用紙P上のトナー中に分散含有されているワックスが定着時に溶融して付着する。このようなワックスが定着ベルト41の外周面に付着したままだと、以後に定着処理される用紙P上の画像に、光沢残像と呼ばれる光沢ムラが発生する。詳しくは、例えば、ベタ画像部(高い画像濃度でトナーが付着した部分)と低画像濃度部又は余白部(低い画像濃度でトナーが付着した部分又はトナーが付着していない部分)とが混在する画像を定着する場合がある。この場合、ベタ画像部と低画像濃度部又は余白部との間で、定着ベルト41上に付着するワックスの量が異なる。そのため、この定着ベルト41がそのまま以後の定着処理に使用されると、ワックス量の多い定着ベルト部分に接触した画像部分と、ワックス量の少ない定着ベルト部分に接触した画像部分との間で、画像光沢の違いが出る光沢残像が発生する。
【0048】
図4は、光沢残像が発生した用紙P上の画像の例を示す説明図である。
図5は、用紙P上のトナーTdのワックス成分(ワックスW)が定着ベルト41上に付着する様子を示す説明図である。
図4に示す画像は、一部の余白部Pw以外は一様なベタ画像部Pdとなっている画像例において、光沢残像が発生したものを示している。なお、矢印αは用紙Pの搬送方向を示し、長さLは用紙搬送方向における定着ベルト41の一周分の長さを示している。
【0049】
用紙Pが定着装置40に通紙されると、ベタ画像部Pdが定着される際に、図5に示すように、そのベタ画像部を形成するトナーTdのワックス成分(ワックスW)が定着ベルト41上に付着する。したがって、例えば、図4に示す画像例の場合、用紙搬送方向上流側のベタ画像部Pd(トナーTd)のワックスWが定着ベルト41に付着し、このワックスWが定着ベルトの回転で再び定着ニップに到達すると、同じ用紙Pの下流側のベタ画像部Pdに付着する。
【0050】
一方、余白部Pwが定着される際には、その余白部Pwに対応する定着ベルト41上にはワックスWが付着しない。そのため、例えば、図4に示す画像例の場合、余白部Pwに対応する定着ベルト41の箇所にはワックスWが付着しない。したがって、この箇所が定着ベルト41の回転に伴って再び定着ニップに到達して同じ用紙Pの搬送方向下流側のベタ画像部Pd上に接触したとき、そのベタ画像部Pdの当該接触部分PuにはワックスWが付着しない。
【0051】
その結果、用紙P上の搬送方向下流側の部分では、図4に示すように、ベタ画像部Pdの中に、ワックスWの付着量が相対的に少ない部分Puと、ワックスWの付着量が相対的に多い部分(Pu以外のベタ画像部Pd)との間で光沢ムラが発生する。
【0052】
なお、定着ベルト41上に付着したワックスWは一定の熱量を与えることにより揮発するが、定着後から次の定着までの時間は印刷速度に依存するため、特に高速機であるほど熱量の供給が難しい。また、印刷速度を変えずに、定着後から次の定着までの時間を長くするためには定着ベルト41の周長を長くする必要が生じるが、これは、定着装置40の大型化に繋がるため好ましくない。
【0053】
そのため、従来、このような光沢残像のように、定着ベルト41上に付着するワックスW等の付着物によって生じ得る不具合を抑制するため、定着ベルト41の外周面を摺擦して当該外周面に付着する付着物を除去する除去部材を備えた定着装置が存在する。しかしながら、従来の定着装置では、除去対象の付着物(ワックスW等)が液体状態になるほど高温のままの定着ベルト41に対し、除去部材を摺擦して当該付着物を除去していた。この場合、液体状態である付着物が除去部材をすり抜けやすく、付着物を除去部材で除去しきれないことが判明した。
【0054】
そこで、本実施形態においては、定着ベルト41の温度が所定温度を超える場合、定着ベルト41が当該所定温度以下になってから、定着ベルト41の外周面に付着する付着物(ワックスW等)を除去する。ここでいう「所定温度」は、定着時温度では液体状態となる除去対象の付着物が凝固する温度(凝固点以下の任意の温度)に設定され、少なくとも、定着時温度よりも低い温度に設定される。
【0055】
これにより、本実施形態では、除去対象の付着物(ワックスW等)が定着時温度の時には液体状態になる場合でも、その付着物が凝固するのを待ってから、当該付着物を除去部材によって除去することができる。これにより、凝固した状態(固化した状態)の付着物を、定着ベルト41の外周面から除去部材で削り取る又は掻き取るようにして、除去することができるようになる。固化した状態の付着物を除去部材で削り取る又は掻き取る方法は、液体状態の付着物を拭き取る方法よりも、付着物が除去部材をすり抜けにくく、定着ベルト41の外周面から付着物をより多く除去することが可能である。
【0056】
以下、本実施形態における、定着ベルト41の外周面からワックスW等を除去するリフレッシュモードについて、説明する。
本実施形態の定着装置40には、定着ベルト41の表面を摺擦する除去部材としての回転体であるリフレッシュローラ46が備わっている。リフレッシュローラ46は、金属製の芯金の周囲に表面層である研磨層を有する研磨ローラである。研磨層は、表面粗さ(十点平均粗さRz)が40[μm]以上であるのが好ましい。リフレッシュローラ46は、ローラブラケット47に回転可能に支持され、モータ46aによって定着ベルト41の連れ回り方向(図3中の矢印F方向)へ回転駆動することができる。
【0057】
制御部400がリフレッシュモードを実行する場合、リフレッシュローラ46は、図3に示すように定着ベルト41の外周面に当接した状態で、定着ベルト41に対して所定の相対速度をもって回転駆動される。これにより、定着ベルト41の外周面がリフレッシュローラ46によって摺擦され、研磨される。この研磨により、定着ベルト41の外周面上に付着したワックスW等の付着物が除去され、光沢残像の発生を抑制することができる。
【0058】
本実施形態のリフレッシュローラ46は、定着ローラ42に巻き付いた定着ベルト41の部分に当接するように設けられている。これにより、リフレッシュローラ46が定着ベルト41を加圧する加圧力を定着ローラ42で受けることができ、リフレッシュローラ46を高い当接圧で定着ベルト41に当接させることができる。よって、定着ベルト41を高い摺擦力でリフレッシュローラ46により摺擦することができる。
【0059】
本実施形態において、リフレッシュローラ46を支持するローラブラケット47は、回動軸47aを中心に回動自在に支持されている。ローラブラケット47は、回動軸47aを中心に図2中時計回り方向に付勢手段により付勢されており、この付勢力によって偏心カム48のカム面に当接され、位置決めされる。
【0060】
偏心カム48は、制御部400によって制御されるモータ48aによって回転駆動され、偏心カム48の回転位置は制御部400によって制御される。画像形成動作中(少なくとも定着ニップを用紙Pが通過している時)には、偏心カム48が図2に示す回転位置に回転され、ローラブラケット47が図2に示す回動位置をとり、リフレッシュローラ46が定着ベルト41から離間した状態に配置される。
【0061】
一方、リフレッシュモードを実行する際には(例えば、電源投入時、待機状態からの復帰時など)、制御部400により偏心カム48が図3に示す回転位置に回転され、ローラブラケット47が図3に示す回動位置をとり。これにより、リフレッシュローラ46が定着ベルト41に当接した状態に配置される。そして、制御部400は、定着ベルト41の外周面を研磨してワックスW等の付着物を除去するリフレッシュモードを実行することで、定着ベルト41上のワックス等の付着物を除去する。
【0062】
図6は、本実施形態における、定着ベルト41の外周面からワックスW等を除去するリフレッシュモードの制御の流れを示すフローチャートである。
本実施形態において、電源投入時や待機状態からの復帰時、あるいは、印刷ジョブ終了時などのリフレッシュモード実行タイミングが到来すると、制御部400は、まず、温度センサ49により検知される定着ベルト41の温度(定着温度)を取得する(S1)。そして、制御部400は、取得した定着温度が所定温度以下であるか否かを判断する(S2)。なお、このとき、リフレッシュローラ46は定着ベルト41から離間している。
【0063】
本実施形態における所定温度は、除去対象の付着物が定着時温度(定着処理時の目標温度)では液体状態となるワックスWであるので、このワックスWが凝固する温度に設定される。この所定温度は、60℃以下であるのが好ましい。
【0064】
取得した定着温度が所定温度以下である場合(S2のYes)、制御部400は、リフレッシュモードを実行し(S6)、リフレッシュローラ46を定着ベルト41の外周面に当接させ、定着ベルト41に対して所定の相対速度をもって回転駆動させる。これにより、定着ベルト41の外周面がリフレッシュローラ46によって摺擦され、研磨される結果、定着ベルト41の外周面上に付着したワックスW等の付着物が除去され、光沢残像の発生が抑制される。
【0065】
一方、取得した定着温度が所定温度を超える場合(S2のNo)、制御部400は、定着温度が所定温度以下になってから、リフレッシュモードを実行する。このとき、制御部400は、例えば、定着ヒータ45等の熱源を停止させた状態で定着温度が所定温度以下になるまで待機してから、リフレッシュモードを実行してもよい。ただし、この場合、定着温度が所定温度以下になるまでの時間が長くかかってしまう。
【0066】
そのため、例えば、定着ヒータ45等の熱源を停止させた状態で定着ベルト41を空回転させるなどして、定着ベルト41を冷却し、定着温度が所定温度以下になるまでの時間を短縮するのが好ましい。
【0067】
また、定着温度が所定温度以下になるまでの時間を更に短縮するため、図7に示すように、定着ベルト41の外周面を冷却する冷却手段としての冷却部材80を設けてもよい。図7に示す冷却部材80は、定着ベルト41の外周面に対向する所定の位置に非接触で設けられている。冷却部材80としては、例えばファン(送風手段)を用いることが好ましいが、これに限られるものではなく、定着ベルト41の外周面を冷却して当該外周面上のワックスWを凝固あるいは固化(固体化)できるものであれば、その他の冷却手段を用いてもよい。
【0068】
また、冷却部材80は、図7に示すように、定着ベルト41の回転方向において、定着ニップの出口から温度センサ49による検知位置までの間で、定着ベルト41を冷却するように配置するのが好ましい。仮に、冷却部材80が定着ベルト41の回転方向において温度センサ49よりも下流側に設けられると、冷却された定着ベルト部分が温度センサ49によって検知されるまでの時間が長くなり、リフレッシュモードの実行開始が遅れるからである。
【0069】
また、冷却部材80は、図7に示すように、定着ベルト41の回転方向においてリフレッシュローラ46よりも上流側に設けるのが好ましい。この場合、冷却部材80によって冷却された直後の定着ベルト41上のワックスWをリフレッシュローラ46で除去できるので、より安定して固化した状態のワックスWをリフレッシュローラ46で除去できる。すなわち、仮に、冷却部材80が定着ベルト41の回転方向においてリフレッシュローラ46よりも下流側に設けられると、冷却された定着ベルト部分がリフレッシュローラ46による研磨位置まで到達するまでに時間がかかる。そのため、その間に高温雰囲気に晒されて定着ベルト41の温度が上昇し、固化が不十分な状態のワックスWをリフレッシュローラ46で除去することになり、十分な除去効果が得られないおそれがある。
【0070】
次に、本実施形態における定着装置40による光沢残像の抑制効果を確認した効果確認試験の結果について説明する。
図8は、本実施形態における定着装置40による光沢残像の抑制効果を確認した効果確認試験の結果を示すグラフである。
【0071】
図8に示すグラフは、定着時温度の状態(熱間状態)でリフレッシュモードを実行した比較例と、所定温度(60℃)まで冷却された状態(冷間状態)でリフレッシュモードを実行した実施形態との比較結果である。本効果確認試験では、所定のテスト画像について画像形成を行い、リフレッシュモード時におけるリフレッシュローラ46の当接時間(研磨時間)を振ったときの光沢残像ランクを、比較例及び実施形態のそれぞれで評価した。光沢残像ランクは、ランクの数値が大きいほど、光沢残像が少ないものである。
【0072】
比較例のように熱間状態でリフレッシュローラ46による研磨を行った場合には、図8に示すように、研磨時間が2分ではランク1、研磨時間が4分ではランク2であり、研磨時間が6分になるとランク3になった。しかしながら、研磨時間を8分以上かけてもランク3以上の評価を得ることはできなかった。これは、例えば、リフレッシュローラ46による研磨時にワックスWが液体状態であるため、ワックスWがリフレッシュローラ46の当接位置をすり抜けやすいことが原因であると考えられる。また、例えば、ワックスWが潤滑剤の役割を果たしてしまってリフレッシュローラ46による摺擦、研磨効果が損なわれたことも原因であると考えられる。
【0073】
一方、実施形態のように冷間状態でリフレッシュローラ46による研磨を行った場合には、図8に示すように、研磨時間が2分の時点ですでにランク5の最高評価が得られ、その後は研磨時間を長くしてもランク5の評価が維持された。これは、リフレッシュローラ46による研磨時のワックスWが固体の状態になったため、ワックスWがリフレッシュローラ46の当接位置をすり抜けにくくなり、リフレッシュローラ46の研磨でワックスWを削り取る又は掻き取ることができたためだと考えられる。また、ワックスWによる潤滑剤の役割が低下してリフレッシュローラ46による摺擦、研磨効果が損なわれずに済んだ結果、リフレッシュローラ46の研磨でワックスWを削り取る又は掻き取ることができたためだと考えられる。
【0074】
本実施形態によれば、熱間状態でリフレッシュローラ46による研磨を行う場合よりも、光沢残像を抑制できる。更には、より短時間で光沢残像を抑制できるため、リフレッシュローラ46の摺擦による定着ベルト41の劣化が抑制され、定着ベルト41の長寿命化を果たすこともできる。
【0075】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、定着回転体(例えば、定着ベルト41、定着ローラ42及び加熱ローラ43)の外周面を摺擦して該外周面に付着する付着物を除去する除去部材(例えばリフレッシュローラ46)を有し、加熱される該定着回転体の外周面を記録材(例えば用紙P)に接触させて画像を該記録材に定着させる定着装置40であって、前記除去部材は、前記定着回転体の温度が定着時温度よりも低い所定温度を超える場合、該定着回転体が該所定温度以下になってから、前記定着回転体の外周面に付着する付着物(例えばワックスW)を除去することを特徴とするものである。
ワックス等の除去対象の付着物が液体状態になる定着回転体の高温時に清掃ウェブ等の除去部材により付着物を除去する従来の方法では、付着物を除去部材で除去しきれないことが判明した。これは、液体状態である付着物が除去部材をすり抜けやすいことや、液体状態である付着物が潤滑剤の役割を果たしてしまって除去部材による摺擦、研磨効果が損なわれること、などが原因であると考えられる。
そこで、本態様においては、定着回転体の温度が所定温度を超える場合、定着回転体が当該所定温度(定着時温度よりも低い温度)以下になってから、定着回転体の外周面に付着する付着物が除去される。これによれば、当該所定温度として、定着時温度では液体状態となる除去対象の付着物が凝固する温度(当該付着物の凝固点以下である任意の温度)に設定することで、凝固した状態(固化した状態)の付着物を定着回転体の外周面から除去部材で削り取る又は掻き取るように除去することが可能となる。固化した状態の付着物を除去部材で削り取る又は掻き取る方法は、液体状態の付着物を拭き取る方法よりも、上述した効果確認試験の結果のとおり、定着回転体の外周面から付着物をより多く除去することが可能である。
【0076】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記除去部材は、前記定着回転体の外周面に対して接離可能に構成されており、前記定着回転体の温度が前記所定温度を超える場合、該定着回転体が該所定温度以下になってから、前記定着回転体の外周面に当接して付着物を除去することを特徴とするものである。
これによれば、定着回転体の外周面を除去部材で摺擦して付着物を除去する処理(リフレッシュモード)を実行していない時に、除去部材を定着回転体から離間させておくことができる。これにより、除去部材により定着回転体を不必要に摺擦することが避けられ、定着回転体の長寿命化を図ることができる。
【0077】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記所定温度は、前記定着回転体の温度が定着時温度である時に液体である除去対象の付着物(例えばワックスW)が凝固する温度であることを特徴とするものである。
これによれば、このような除去対象の付着物を、定着回転体の外周面から、より多く除去することができる。
【0078】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記所定温度は、60℃以下の温度であることを特徴とするものである。
これによれば、定着回転体の外周面に付着するトナーのワックス成分を、定着回転体の外周面から、より多く除去することができる。
【0079】
[第5態様]
第5態様は、第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記定着回転体の外周面を冷却する冷却手段(例えば冷却部材80)を有することを特徴とするものである。
これによれば、より短時間で定着回転体の外周面温度を所定温度以下まで下げることができるので、定着回転体の外周面に付着する付着物をより迅速に除去することができる。
【0080】
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第5態様のいずれかにおいて、前記除去部材は、前記定着回転体の外周面を摺擦するように回転する摺擦回転体(例えばリフレッシュローラ46)であることを特徴とするものである。
これによれば、定着回転体の外周面に付着する付着物を簡易な構成で摺擦して除去することができる。
【0081】
[第7態様]
第7態様は、第6態様において、前記摺擦回転体は、前記定着回転体の外周面に連れ回る方向へ該定着回転体の線速よりも速い線速で回転駆動することを特徴とするものである。
これによれば、定着回転体の外周面に付着する付着物を簡易な構成で摺擦して除去することができる。
【0082】
[第8態様]
第8態様は、第6又は第7態様において、前記摺擦回転体の外周面は、表面粗さRzが40[μm]以上であることを特徴とするものである。
これによれば、定着回転体の外周面に付着する付着物を適切に除去することができる。
【0083】
[第9態様]
第9態様は、第6乃至第8態様のいずれかにおいて、前記摺擦回転体の表層の下層には弾性層が設けられていることを特徴とするものである。
これによれば、定着回転体の外周面に付着する付着物を適切に除去することができる。
【0084】
[第10態様]
第10態様は、第1乃至第9態様のいずれかにおいて、前記除去部材は、電源投入時又は待機状態からの復帰時に、前記定着回転体の温度が定着時温度よりも低い所定温度を超える場合、該定着回転体が該所定温度以下になってから、前記定着回転体の外周面に付着する付着物を除去することを特徴とするものである。
これによれば、電源投入時又は待機状態からの復帰時に、定着回転体の外周面に付着する付着物を除去部材によって除去することができる。
【0085】
[第11態様]
第11態様は、画像形成装置(例えばプリンタ100)であって、第1乃至10態様のいずれかの定着装置を備えることを特徴とするものである。
定着回転体の外周面に付着する付着物によって生じ得る不具合が抑制された画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 :光書込ユニット
2 :作像ユニット
3 :感光体
4 :現像装置
5 :帯電装置
6 :ドラムクリーニング装置
40 :定着装置
41 :定着ベルト
42 :定着ローラ
43 :加熱ローラ
44 :加圧ローラ
45 :定着ヒータ
46 :リフレッシュローラ
46a :モータ
47 :ローラブラケット
47a :回動軸
48 :偏心カム
48a :モータ
49 :温度センサ
49a :入口ガイド板
49b :定着分離板
49c :加圧分離爪
60 :一次転写ユニット
61 :中間転写ベルト
62 :一次転写ローラ
68 :二次転写バイアスローラ
71 :二次転写駆動ローラ
75 :中間転写ベルトクリーニング装置
76 :二次ベルトクリーニング装置
77 :二次転写ベルト
78 :二次転写ユニット
80 :冷却部材
100 :プリンタ
400 :制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特開2007-047450号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8