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特開2023-7352積層体及びその製造方法、並びに、偏光フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007352
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法、並びに、偏光フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/24 20060101AFI20230111BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20230111BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230111BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230111BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230111BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230111BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20230111BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B32B27/24
B32B7/027
B32B7/023
B32B27/18 A
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009705
(22)【出願日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2021107640
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪股 貴道
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB16
2H149BA02
2H149BA12
2H149DA02
2H149DA12
2H149DB22
2H149EA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA03W
2H149FA05Y
2H149FA12Z
2H149FA54Y
2H149FA63
2H149FA64
2H149FA66
2H149FA68
2H149FA69
2H149FB01
2H149FD05
2H149FD06
2H149FD18
2H149FD25
2H149FD33
2H149FD46
2H149FD47
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC33
3K107CC45
3K107EE26
3K107FF04
3K107FF06
3K107FF07
3K107FF14
3K107FF15
4F100AK02B
4F100AK07A
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA07B
4F100EC04
4F100GB41
4F100JA05
4F100JB16B
4F100JD04B
4F100JK06A
4F100JL04
4F100JL14A
4F100JN10C
4F100JN18B
4F100YY00A
4F100YY00B
5G435AA14
5G435BB05
5G435BB12
5G435HH02
5G435KK07
(57)【要約】
【課題】基材及び樹脂層とを備え、樹脂層の転写性に優れる積層体を提供する。
【解決手段】基材と、重合体及び溶媒を含む熱可塑性樹脂で前記基材上に形成された樹脂層と、を備え、前記樹脂層中の前記溶媒の含有率が、0.01重量%~10重量%であり、前記基材が、前記樹脂層が含むのと同一の前記溶媒を含み、前記基材と前記樹脂層との剥離力が、0.1N/25mmより大きく2.5N/25mmより小さい、積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、重合体及び溶媒を含む熱可塑性樹脂で前記基材上に形成された樹脂層と、を備え、
前記樹脂層中の前記溶媒の含有率が、0.01重量%~10重量%であり、
前記基材が、前記樹脂層が含むのと同一の前記溶媒を含み、
前記基材と前記樹脂層との剥離力が、0.1N/25mmより大きく2.5N/25mmより小さい、積層体。
【請求項2】
前記基材中の前記溶媒の含有率が、0.05重量%以上、1.5重量%以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
120℃で15分加熱した場合の、前記積層体の幅方向の寸法変化率が、-0.4%以上1.3%以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂の厚み100μm当たりの水蒸気透過率が、4g/(m・day)以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記樹脂層の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、5nm以下であり、
前記樹脂層の測定波長550nmにおける厚み方向のレターデーションが、-5nm以上5nm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記重合体が、脂環式構造を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記樹脂層の厚みが、9μm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記樹脂層が、2重量%~40重量%の紫外線吸収剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記紫外線吸収剤が、炭化水素溶媒又は環状エーテル溶媒に、2重量%以上の濃度で溶解できる、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記基材が、1又は複数の層を備え、
前記基材が備える前記層のうち、最も前記樹脂層に近い層が、第一樹脂を含み、
前記第一樹脂中の前記溶媒の含有率が、0.05重量%以上、1.5重量%以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の積層体の製造方法であって、
前記基材に、前記重合体及び前記溶媒を含む樹脂液を塗工する工程と、
前記基材に塗工された樹脂液を乾燥させる工程と、を含む、積層体の製造方法。
【請求項12】
前記樹脂液を塗工される前記基材が、120℃で15分加熱した場合に、-0.4%以上1.3%以下の幅方向の寸法変化率を有する、請求項11に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
偏光子層と、請求項1~10のいずれか一項に記載の積層体の前記樹脂層とを貼り合わせる工程と、
前記積層体の前記基材を剥離する工程と、を含む、偏光フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記偏光子層の厚みが、19μm以下である、請求項13に記載の偏光フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその製造方法、並びに、偏光フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、偏光フィルムは、偏光子層と、この偏光子層の表面に設けられた樹脂層とを備える(特許文献1)。樹脂層は、偏光子層を保護する保護層として機能できる。このような保護層は、例えば、樹脂層の材料を含む塗工液を基材上に塗工し、乾燥して、製造されることがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/087806号
【特許文献2】特開2014-130298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基材上に形成された樹脂層を用いて偏光フィルムを製造する場合、通常は、偏光子層への樹脂層の転写を行う。具体的には、偏光子層と樹脂層とを貼り合わせることと、基材を剥離することとを行って、偏光フィルムを得る。よって、基材と樹脂層とは、剥離し易いことが求められる。しかし、基材と樹脂層とが過剰に剥離し易いと、意図しないタイミングで基材と樹脂層との間で剥離を生じることがある。このような意図しない剥離を生じると、偏光子層への樹脂層の転写を安定して行うことが困難となりうる。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたものであって、基材及び樹脂層を備え、樹脂層の転写性に優れる積層体、及び、その製造方法;並びに、前記の積層体を用いた偏光フィルムの製造方法;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、基材と、この基材上に形成された樹脂層とを備える積層体であって、基材と樹脂層とが同一の溶媒を含み、樹脂層中の溶媒の含有率が特定の範囲にあり、且つ、基材と樹脂層との剥離力が特定の範囲にあるものが、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0007】
〔1〕 基材と、重合体及び溶媒を含む熱可塑性樹脂で前記基材上に形成された樹脂層と、を備え、
前記樹脂層中の前記溶媒の含有率が、0.01重量%~10重量%であり、
前記基材が、前記樹脂層が含むのと同一の前記溶媒を含み、
前記基材と前記樹脂層との剥離力が、0.1N/25mmより大きく2.5N/25mmより小さい、積層体。
〔2〕 前記基材中の前記溶媒の含有率が、0.05重量%以上、1.5重量%以下である、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕 120℃で15分加熱した場合の、前記積層体の幅方向の寸法変化率が、-0.4%以上1.3%以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の積層体。
〔4〕 前記熱可塑性樹脂の厚み100μm当たりの水蒸気透過率が、4g/(m・day)以下である、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔5〕 前記樹脂層の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、5nm以下であり、
前記樹脂層の測定波長550nmにおける厚み方向のレターデーションが、-5nm以上5nm以下である、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔6〕 前記重合体が、脂環式構造を含有する、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔7〕 前記樹脂層の厚みが、9μm以下である、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔8〕 前記樹脂層が、2重量%~40重量%の紫外線吸収剤を含む、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔9〕 前記紫外線吸収剤が、炭化水素溶媒又は環状エーテル溶媒に、2重量%以上の濃度で溶解できる、〔8〕に記載の積層体。
〔10〕 前記基材が、1又は複数の層を備え、
前記基材が備える前記層のうち、最も前記樹脂層に近い層が、第一樹脂を含み、
前記第一樹脂中の前記溶媒の含有率が、0.05重量%以上、1.5重量%以下である、〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔11〕 〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の積層体の製造方法であって、
前記基材に、前記重合体及び前記溶媒を含む樹脂液を塗工する工程と、
前記基材に塗工された樹脂液を乾燥させる工程と、を含む、積層体の製造方法。
〔12〕 前記樹脂液を塗工される前記基材が、120℃で15分加熱した場合に、-0.4%以上1.3%以下の幅方向の寸法変化率を有する、〔11〕に記載の積層体の製造方法。
〔13〕 偏光子層と、〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の積層体の前記樹脂層とを貼り合わせる工程と、
前記積層体の前記基材を剥離する工程と、を含む、偏光フィルムの製造方法。
〔14〕 前記偏光子層の厚みが、19μm以下である、〔13〕に記載の偏光フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基材及び樹脂層を備え、樹脂層の転写性に優れる積層体、及び、その製造方法;並びに、前記の積層体を用いた偏光フィルムの製造方法;を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0010】
以下の説明において、「長尺」とは、幅に対して、通常5倍以上の長さを有する形状をいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有する形状をいう。幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば10万倍以下でありうる。
【0011】
以下の説明において、接着剤と粘着剤とは、別に断らない限り、剪断貯蔵弾性率によって区別される。具体的には、別に断らない限り、接着剤とは、エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後に、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa~500MPaである材料を示す。また、別に断らない限り、粘着剤とは、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である材料を示す。
【0012】
以下の説明において、ある層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。また、ある層の厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×dで表される値である。ここで、nxは、前記層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記層の面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。nzは、層の厚み方向の屈折率を表す。dは、前記層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0013】
以下の説明において、(メタ)アクリル樹脂とは、別に断らない限り、アクリル樹脂、メタクリル樹脂及びこれらの組み合わせを包含する。また、(メタ)アクリル酸とは、別に断らない限り、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの組み合わせを包含する。
【0014】
以下の説明において、「板」、「層」及び「フィルム」とは、別に断らない限り、剛直な部材であってもよく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材であってもよい。
【0015】
以下の説明において、2種類以上の成分を含むものの「含有率」とは、別に断らない限り、それらの成分の合計の含有率を表す。
【0016】
[1.積層体の概要]
本発明の一実施形態に係る積層体は、基材と、重合体及び溶媒を含む熱可塑性樹脂で前記基材上に形成された樹脂層と、を備える。以下の説明では、本実施形態に係る積層体が備える「基材」及び「樹脂層」を、「仮基材」及び「特定樹脂層」と呼ぶことがある。また、以下の説明では、仮基材及び特定樹脂層を備える本実施形態に係る積層体を「転写型積層体」と呼ぶことがある。
【0017】
特定樹脂層中の溶媒の含有率は、特定の範囲にある。また、仮基材は、特定樹脂層が含むのと同一の溶媒を含む。すなわち、仮基材と特定樹脂層とは、共通の溶媒を含む。以下、このように仮基材と特定樹脂層との両方に含まれる溶媒を「共通溶媒」と呼ぶことがある。そして、仮基材と特定樹脂層とは、特定の範囲の剥離力を有する。ここで、仮基材と特定樹脂層との「剥離力」とは、仮基材を特定樹脂層から剥がすために要する力のことをいう。よって、剥離力が大きいほど、仮基材と特定樹脂層との密着力が高いことを表す。
【0018】
転写型積層体は、通常、特定樹脂層を仮基材からある部材(例えば、偏光子層)へと転写することを含む方法によって、前記部材上に特定樹脂層を設けるために用いられる。具体的には、ある部材と転写型積層体の特定樹脂層とを貼り合わせることと、仮基材を剥離することとを行って、前記部材上に特定樹脂層を設けうる。ここで、ある層の「転写」とは、その層を一方の部材から他方の部材へと移動させることをいい、一方の部材から層を剥がした後でその層を他方の部材に貼り合わせること、及び、一方の部材上の層を他方の部材に貼り合わせた後で一方の部材を除くこと、の両方を包含する。したがって、転写型積層体の使用時には、ある部材と転写型積層体の特定樹脂層とを貼り合わせた後で、仮基材を剥離して、前記部材上に特定樹脂層を設けてもよい。また、転写型積層体の使用時には、転写型積層体から仮基材を剥離した後で、特定樹脂層とある部材とを貼り合わせて、前記部材上に特定樹脂層を設けてもよい。いずれの場合でも、本実施形態に係る転写型積層体は、特定樹脂層の転写性に優れるので、円滑な転写を行うことが可能である。
【0019】
詳細には、この転写型積層体は、仮基材と特定樹脂層との間の意図しない剥離を抑制できるので、ハンドリング性に優れるから、特定樹脂層と部材との貼り合わせを円滑に行うことができる。また、この転写型積層体は、仮基材を容易に剥離できるから、仮基材の剥離による特定樹脂層の変形及び破壊を抑制できる。したがって、特定樹脂層を仮基材から別の部材へと転写することを円滑に行うことができるので、優れた転写性を得ることができる。
【0020】
[2.仮基材]
仮基材は、特定樹脂層を支持できる部材であり、例えば、適切な材料で形成されたフィルム、シート又は板を用いうる。転写型積層体のハンドリング性を高める観点から、仮基材は、フィルムであることが好ましい。
【0021】
仮基材は、特定樹脂層に含まれる共通溶媒と同一の共通溶媒を含む。この共通溶媒の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。特定樹脂層に含まれる共通溶媒と同一の共通溶媒を仮基材が含む場合に、仮基材と特定樹脂層との剥離力を高めることができる。仮基材の重量100重量%に対して、仮基材中の共通溶媒の含有率は、仮基材と特定樹脂層との剥離力を適切な範囲に調整する観点から、特定の範囲にあることが好ましい。この共通溶媒の含有率の特定の範囲は、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.08重量%以上、特に好ましくは0.10重量%以上であり、好ましくは1.5重量%以下、より好ましくは1.2重量%以下、特に好ましくは1.0重量%以下である。
【0022】
仮基材中の共通溶媒の含有率は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定できる。具体的な測定方法は、実施例に記載の方法を採用しうる。
【0023】
仮基材中の共通溶媒の含有率は、例えば、共通溶媒の種類、仮基材に含まれる重合体の種類及び量、並びに、特定樹脂層の形成時における樹脂液の乾燥温度及び乾燥時間により、調整できる。
【0024】
仮基材は、通常、樹脂によって形成される。よって、仮基材は、通常は樹脂を含み、好ましくは樹脂のみを含む。仮基材に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。以下、仮基材に含まれる樹脂と特定樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂との区別を明確にするため、仮基材に含まれる前記の樹脂を「第一樹脂」と呼ぶことがあり、また、特定樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂を「第二樹脂」と呼ぶことがある。
【0025】
仮基材に含まれる第一樹脂は、通常は重合体を含み、好ましくは熱可塑性の重合体を含む。以下の説明では、第一樹脂に含まれる重合体を「第一重合体」と呼ぶことがある。また、仮基材が共通溶媒を含むので、当該仮基材に含まれる第一樹脂は、第一重合体に組み合わせて共通溶媒を含みうる。第一樹脂に含まれる第一重合体の具体的な種類は、共通溶媒との親和性に応じて選択することが好ましい。より詳細には、第一重合体は、共通溶媒に対し、当該共通溶媒が仮基材に浸入できる程度に高い親和性を有することが好ましい。このように高い親和性を有する第一重合体を含む第一樹脂には、共通溶媒が容易に浸入できるから、仮基材が、特定樹脂層に含まれる共通溶媒と同一の共通溶媒を含むことができる。仮基材は、例えば、このような高い親和性を有する第一重合体を含む層のみで構成してもよい。また、仮基材は、例えば、樹脂等の材料で形成された支持層と、この支持層上に形成された第一重合体を含む層と、を備えていてもよい。
【0026】
第一重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポチエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリメチルメタクリレート等のアクリルポリマー;トリアセチルセルロース等のセルロースポリマー;ポリカーボネート;などが挙げられ、中でもポリオレフィンが好ましい。第一重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
仮基材の重量100重量%に対して、仮基材中の第一重合体の含有率は、特定の範囲にあることが好ましい。この第一重合体の含有率の特定の範囲は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量以上、特に好ましくは90重量%以上であり、好ましくは99.95重量%以下、より好ましくは99.90重量%以下である。また、第一樹脂の総量100重量%に対して、第一樹脂中の第一重合体の含有率は、好ましくは、仮基材の重量100重量%に対する仮基材中の第一重合体の含有率と同じ特定の範囲にある。第一重合体の含有率が前記の下限値以上である場合、仮基材の剛性を高めて転写型積層体のハンドリング性を高めることができる。また、第一重合体の含有率が前記の上限値以下である場合、仮基材と特定樹脂層との密着性を効果的に高められるので、仮基材と特定樹脂層との剥離力を効果的に高めることができる。
【0028】
前記のように、特定樹脂層に含まれる共通溶媒と同一の共通溶媒を仮基材が含むので、その仮基材に含まれる第一樹脂は、第一重合体に組み合わせて共通溶媒を含みうる。第一樹脂の総量100重量%に対して、第一樹脂中の共通溶媒の含有率は、好ましくは、上述した仮基材の重量100重量%に対する仮基材中の共通溶媒の含有率と同じ特定の範囲にある。第一樹脂中の共通溶媒の含有率は、ガスクロマトグラフ質量分析によって測定できる。
【0029】
第一樹脂は、前記の第一重合体及び共通溶媒に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;帯電防止剤;などが挙げられる。任意の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
仮基材は、同じ組成を有する1層のみを備える単層構造を有していてもよく、異なる組成を有する複数の層を備える複層構造を有していてもよい。仮基材が複層構造を有する場合、その仮基材は、最も特定樹脂層に近い層が上述した第一樹脂を含むことが好ましい。一例において、仮基材は、第一樹脂のみを含む単層構造を有していてもよい。
【0031】
仮基材は、120℃で15分加熱する加熱試験を施した場合に、特定の範囲の寸法変化率を示すことが好ましい。具体的には、前記の加熱試験を施した場合の仮基材の寸法変化率は、好ましくは-0.4%以上、より好ましくは-0.3%以上、特に好ましくは-0.2%以上であり、好ましくは1.3%以下、より好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.5%以下である。前記の寸法変化率は、仮基材の幅方向の寸法変化率を表す。また、この寸法変化率は、正の値は仮基材が膨張することを表し、負の値は仮基材が収縮することを表す。仮基材は、転写型積層体を製造する前の時点で前記特定の範囲の寸法変化率を有することが好ましく、転写型積層体を製造する前の時点及び後の時点の両方で前記特定の範囲の寸法変化率を有することがより好ましい。仮基材がこのような範囲の寸法変化率を有する場合、仮基材と特定樹脂層との剥離力を特に適切な範囲に調整できる。また、通常は、転写型積層体におけるトラフ及び折れ等の変形の発生を抑制できる。ここで、転写型積層体の「トラフ」とは、転写型積層体の波打ちを表す。
【0032】
仮基材の寸法変化率は、下記の方法によって測定できる。
仮基材を150mm角の正方形にカットし、その中央に100mm角の正方形を描く。この正方形の二辺は、仮基材の幅方向(長尺の仮基材の幅方向に相当する方向)に平行に描く。万能投影機(Nikon製 「PROFILE PROJECTOR V-12B」)を用い、描いた正方形の頂点間の距離を仮基材の幅方向で測定して、加熱試験前の間隔を得る。その後、仮基材を120℃で15分加熱する加熱試験を行う。仮基材を常温まで放冷した後、描いた正方形の頂点間の距離を再び仮基材の幅方向で測定して、加熱試験後の間隔を得る。加熱試験後の間隔から加熱試験前の間隔を引き算して、加熱試験による仮基材の寸法変化量を求める。この寸法変化量を、加熱試験前の間隔で割り算して、加熱試験による寸法変化率を計算できる。
【0033】
仮基材は、長尺の形状を有していてもよく、枚葉の形状を有していてもよい。
【0034】
仮基材の厚みは、特段の制限は無い。具体的な範囲を示すと、仮基材の厚みは、好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上、特に好ましくは38μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、特に好ましくは70μm以下である。
【0035】
上述した仮基材は、例えば、第一樹脂をフィルム状に成形することを含む方法によって、製造できる。成形方法としては、例えば、溶融成形法、溶液流延法などが挙げられる。また、こうして得られる第一樹脂のフィルムを仮基材として用いてもよいが、そのフィルムに延伸処理を施してもよい。延伸処理としては、一方向のみに延伸処理を行う一軸延伸処理、異なる2方向に延伸処理を行う二軸延伸処理などが挙げられ、二軸延伸処理が好ましい。さらに、延伸処理は、長時間をかけてゆっくりと行うことが好ましい。長時間の延伸処理を施す場合、仮基材に大きな熱履歴を与えることができ、その結果、仮基材の寸法変化率を上述した特定の範囲に容易に収めることができる。さらに、例えば、仮基材は、、支持層上に第一樹脂の層を形成することを含む方法によって製造してもよい。
【0036】
また、仮基材は、市販のものを市場から購入して用いてもよい。上述した好ましい寸法変化率を有する市販の仮基材としては、例えば、東レ社製の二軸延伸ポリプロピレンフィルム「新タイプ トレファン BO40-2500」、ユニチカ製のポリエチレンテレフタレートフィルム「ユニピールTR1」、「ユニピールTR5」、「ユニピールTR6」などが挙げられる。
【0037】
ただし、仮基材は、転写型積層体の製造前の時点においては、特定樹脂層に含まれる共通溶媒と同一の共通溶媒を含まなくてもよい。通常、仮基材上に特定樹脂層を形成する過程で仮基材中に共通溶媒が浸入して、共通溶媒を含む仮基材が得られる。
【0038】
[3.特定樹脂層]
特定樹脂層は、仮基材上に形成されている。通常、特定樹脂層は、仮基材上に直に形成されている。特定樹脂層が仮基材上に「直に」形成される、とは、仮基材と特定樹脂層とが接しており、仮基材と特定樹脂層との間に他の層が無いことをいう。
【0039】
特定樹脂層は、重合体及び共通溶媒を含む熱可塑性樹脂としての第二樹脂で形成されている。よって、特定樹脂層は、第二樹脂を含み、好ましくは第二樹脂のみを含む。通常、前記の重合体が熱可塑性を有することにより、第二樹脂も熱可塑性を有しうる。以下の説明では、第二樹脂に含まれる重合体を「第二重合体」と呼ぶことがある。
【0040】
第二樹脂で形成された特定樹脂層は、仮基材に含まれる共通溶媒と同一の共通溶媒を含む。この共通溶媒は、特定樹脂層を形成する工程で用いる樹脂液に含まれていた溶媒のうち、乾燥によっても除去されずに残った残量溶媒でありうる。この共通溶媒としては、有機溶媒が好ましく、第二重合体を溶解可能な有機溶媒が特に好ましい。共通溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、アルキルシクロヘキサン(メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、など)、トルエン等の炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン等の環状エーテル溶媒;等が挙げられる。共通溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
特定樹脂層の重量100重量%に対して、特定樹脂層中の共通溶媒の含有率は、特定の範囲にあることが好ましい。この共有溶媒の含有率の特定の範囲は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは9重量%以下、特に好ましくは8.5重量%以下である。また、第二樹脂の総量100重量%に対して、第二樹脂中の共通溶媒の含有率は、好ましくは、前記の特定樹脂層の重量100重量%に対する特定樹脂層中の共通溶媒の含有率と同じ特定の範囲にある。共通溶媒の含有率が前記範囲にある場合、仮基材と特定樹脂層との剥離力を適切な範囲に調整できる。また、通常は、特定樹脂層の機械的強度を高くできるので、特定樹脂層と別の部材との貼り合わせ時に、特定樹脂層の破断を抑制でき、よって特定樹脂層の転写を特に円滑に行うことができる。
【0042】
特定樹脂層中の共通溶媒の含有率は、例えば、共通溶媒の種類、特定樹脂層の厚み、並びに、特定樹脂層の形成時における樹脂液の乾燥温度及び乾燥時間により、調整できる。
【0043】
特定樹脂層中の共通溶媒の含有率は、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて測定できる。具体的な測定方法は、実施例に記載の方法を採用しうる。
【0044】
第二樹脂が含む第二重合体としては、例えば、ポリエステル、アクリル重合体、脂環式構造を含有する重合体などが挙げられる。これらの第二重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、特定樹脂層の水蒸気透過率を低くする観点から、脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0045】
脂環式構造を含有する重合体は、その重合体の繰り返し単位が脂環式構造を含有する。脂環式構造を含有する重合体は、通常、水蒸気透過率が低い。そのため、脂環式構造を含有する重合体を含む第二樹脂で特定樹脂層を形成した場合、水蒸気透過率が低い特定樹脂層を得ることができる。
【0046】
脂環式構造を含有する重合体は、主鎖に脂環式構造を含有していてもよく、側鎖に脂環式構造を含有していてもよく、主鎖及び側鎖の双方に脂環式構造を含有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点からは、少なくとも主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0047】
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0048】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にある場合に、第二樹脂の機械的強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
【0049】
脂環式構造を含有する重合体において、脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうる。脂環式構造を含有する重合体における脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を含有する重合体における脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、第二樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
【0050】
脂環式構造を含有する重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体及びその水素化物は、透明性と成形性が良好である。
【0051】
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002-321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。
【0052】
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」;JSR社製「アートン」;TOPAS ADVANCED POLYMERS社製「TOPAS」が挙げられる。
【0053】
第二重合体の重量平均分子量Mwは、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、第二樹脂の機械的強度及び成形性が高度にバランスされる。
【0054】
第二重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。分子量分布が前記範囲の下限値以上である場合、第二重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、分子量分布が前記範囲の上限値以下である場合、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、特定樹脂層の安定性を高めることができる。
【0055】
前記の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。GPCで用いる溶媒としては、シクロヘキサン、トルエン、テトラヒドロフランが挙げられる。GPCを用いた場合、重量平均分子量は、例えばポリイソプレン換算またはポリスチレン換算の相対分子量として測定しうる。
【0056】
第二重合体のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上であり、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下である。第二重合体のガラス転移温度が前記範囲にある場合、高温環境下における偏光フィルムの耐久性を高めることができる。ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して測定しうる。
【0057】
特定樹脂層の重量100重量%に対して、特定樹脂層中の第二重合体の含有率は、特定の範囲にあることが好ましい。この第二重合体の含有率の特定の範囲は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上であり、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下、更に好ましくは99重量%以下、特に好ましくは96重量%以下である。また、第二樹脂の総量100重量%に対して、第二樹脂中の第二重合体の含有率は、好ましくは、特定樹脂層の重量100重量%に対する特定樹脂層中の第二重合体の含有率と同じ特定の範囲にある。第二重合体の含有率が前記の下限値以上である場合、特定樹脂層の機械的強度を高めることができる。よって、特定樹脂層を偏光子層と貼り合わせた場合に、偏光子層を安定して保護できる。また、第二重合体の含有率が前記範囲の上限値以下である場合、仮基材と特定樹脂層との密着性を効果的に高められるので、仮基材と特定樹脂層との剥離力を効果的に高めることができる。
【0058】
第二樹脂は、前記の第二重合体及び共通溶媒に組み合わせて、任意の成分として、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。よって、その第二樹脂で形成される特定樹脂層も、任意の成分として、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。この紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びアクリロニトリル系紫外線吸収剤などが挙げられる。好ましい紫外線吸収剤の例としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4、6-ビス(1―メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2´-ヒドロキシ-3´-t-ブチル―5´-メリルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
中でも、紫外線吸収剤としては、共通溶媒に溶解できるものが好ましい。共通溶媒に溶解できる紫外線吸収剤を用いることにより、特定樹脂層に紫外線吸収剤を高い均一性で容易に分布させることができる。したがって、均一で高い紫外線遮断能力を有する特定樹脂層を得ることができる。
【0060】
共通溶媒として炭化水素溶媒又は環状エーテル溶媒を用いることが好ましいから、紫外線吸収剤としては、炭化水素溶媒又は環状エーテル溶媒に高い濃度で溶解できるものが特に好ましい。具体的には、紫外線吸収剤は、炭化水素溶媒又は環状エーテル溶媒に、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上、特に好ましくは10重量%以上の濃度で溶解できるものが好ましい。炭化水素溶媒又は環状エーテル溶媒に溶解できる紫外線吸収剤の濃度の上限はないが、通常は90重量%以下である。前記の濃度は、炭化水素溶媒又は環状エーテル溶媒に紫外線吸収剤を溶解して得られる溶液の重量を100%とした場合の濃度を表す。
【0061】
特定樹脂層の重量100重量%に対して、特定樹脂層中の紫外線吸収剤の含有率は、特定の範囲にあることが好ましい。この紫外線吸収剤の含有率の特定の範囲は、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上、特に好ましくは10重量%以上であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下、特に好ましくは30重量%以下である。また、好ましくは、第二樹脂の総量100重量%に対して、第二樹脂中の紫外線吸収剤の含有率は、好ましくは、特定樹脂層の重量100重量%に対する特定樹脂層中の紫外線吸収剤の含有率と同じ特定の範囲にある。紫外線吸収剤の含有率が前記範囲にある場合、特定樹脂層が高い紫外線遮断能力を得ることができる。
【0062】
第二樹脂は、第二重合体、共通溶媒及び紫外線吸収剤に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、吸湿剤;分散剤;有機金属化合物;酸化防止剤、光安定剤などの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;染料、顔料などの着色剤;帯電防止剤;などが挙げられる。任意の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
第二樹脂は、小さい水蒸気透過率を有することが好ましい。具体的には、第二樹脂の厚み100μm当たりの水蒸気透過率は、好ましくは4.0g/(m・day)以下、より好ましくは3.0g/(m・day)以下、特に好ましくは2.0g/(m・day)以下である。下限値は、理想的には0g/(m・day)以上であり、0.1g/(m・day)以上であってもよい。第二樹脂が前記のように小さい水蒸気透過率を有する場合、特定樹脂層によって偏光子層を安定して保護できる。よって、偏光子層の湿気による劣化を効果的に抑制できるので、偏光子層の偏光度の低下を抑制できる。さらに、偏光子層に浸入した湿気により偏光子層内のヨウ素がブリードアウトすることを抑制できるので、そのヨウ素が表示装置内の電極等の金属部品を腐食することを効果的に抑制できる。
【0064】
特定樹脂層を形成する第二樹脂の厚み100μm当たりの水蒸気透過率は、下記の方法で測定できる。特定樹脂層の水蒸気透過率を、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W」)により、JIS K 7129 B法に従って、温度40℃、湿度90%RHの条件で測定する。この水蒸気透過率の測定値に「100(μm)/特定樹脂層の厚み(μm)」を掛け算して、厚み100μm当たりの値に換算して、第二樹脂の厚み100μm当たりの水蒸気透過率を得る。
【0065】
第二樹脂の水蒸気透過率は、例えば、第二樹脂に含まれる第二重合体の種類及び量によって、調整できる。
【0066】
第二樹脂の光弾性定数は、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、第二樹脂の光弾性定数は、小さいほど好ましく、好ましくは10×10-13cm/dyn以下、より好ましくは5×10-13cm/dyn以下、特に好ましくは2×10-13cm/dyn以下である。下限は、通常0.0×10-13cm/dyn以上である。第二樹脂の光弾性定数が前記範囲にある場合、膨張又は収縮の応力によるレターデーションの変化を小さくできるので、表示装置の表示均一性を保つことができる。第二樹脂の光弾性定数は、第二樹脂に応力を加えた場合に生じる複屈折から、計算による求めうる。具体的な測定方法は、実施例に記載の方法を採用しうる。
【0067】
特定樹脂層に含まれる第二重合体の分子は、配向の程度が小さいことが好ましく、配向していないことがより好ましい。特定樹脂層に含まれる第二重合体の配向の程度が小さい場合、第二重合体の分子の絡み合いの程度を大きくできるので、特定樹脂層の靱性を高めることができる。したがって、特定樹脂層の破壊を伴う仮基材の意図しない剥離の発生を抑制できるので、剥離性を効果的に改善できる。また、通常は、特定樹脂層に含まれる第二重合体の配向の程度が小さい場合、特定樹脂層を透過することによる偏光の偏光状態の変化を通常は小さくでき、好ましくは無くすことができる。したがって、特定樹脂層を偏光子層と貼り合わせた場合に、特定樹脂層による偏光状態の変化を抑制できるので、それら特定樹脂層及び偏光子層を含む偏光フィルムを透過する偏光の偏光状態の制御をシンプルにできる。
【0068】
特定樹脂層に含まれる第二重合体の分子の配向の程度は、特定樹脂層の光学異方性によって表すことができる。通常、第二重合体の分子の配向の程度が小さい場合、特定樹脂層の光学異方性は小さい。よって、特定樹脂層は、面内方向及び厚み方向の両方において、光学異方性が小さいことが好ましく、光学等方性を有することが更に好ましい。
【0069】
したがって、特定樹脂層の面内レターデーションは、小さいことが好ましい。具体的には、特定樹脂層の測定波長550nmにおける面内レターデーションは、好ましくは5nm以下、より好ましくは4nm以下、更に好ましくは3nm以下、特に好ましくは2nm以下である。
また、特定樹脂層の厚み方向のレターデーションは、ゼロ又はゼロに近いことが好ましい。具体的には、特定樹脂層の測定波長550nmにおける厚み方向のレターデーションは、好ましくは-5nm以上、より好ましくは-4nm以上、更に好ましくは-3nm以上、特に好ましくは-2nm以上であり、好ましくは5nm以下、より好ましくは4nm以下、更に好ましくは3nm以下、特に好ましくは2nm以下である。
【0070】
配向の程度が小さい第二重合体の分子を含む特定樹脂層は、例えば、後述する塗工法のように、特定樹脂層に加えられる応力を小さくできる特定樹脂層の形成方法により、形成できる。
【0071】
特定樹脂層は、紫外線の透過率が低いことが好ましい。例えば、特定樹脂層の波長380nmにおける光線透過率は、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下であり、下限は、0%でもよい。特定樹脂層を厚くすることにより透過率を下げることが可能だが、9μm以下の厚みでこれら数値を満たすことが薄膜化の観点から好ましい。紫外線の透過率が低い特定樹脂層によれば、偏光子層を紫外線から効果的に保護できる。特定樹脂層の波長380nmにおける光線透過率は、分光光度計(例えば、日本分光社製「V-7200」)を用いて測定できる。具体的な測定条件は、実施例に記載のものを採用しうる。
【0072】
特定樹脂層は、光学フィルムとしての偏光板保護フィルム層として機能する観点から、透明であることが好ましい。よって、特定樹脂層の全光線透過率は、高いことが好ましい。特定樹脂層の具体的な全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm~700nmの範囲で測定しうる。
【0073】
特定樹脂層のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。ヘイズは、JIS K7361-1997に準拠して、ヘイズメーターを用いて測定できる。
【0074】
特定樹脂層は、薄いことが好ましい。特定樹脂層の具体的な厚みは、通常0μmより大きく、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.5μm以上であり、好ましくは9μm以下、より好ましくは6μm以下、特に好ましくは5μm以下である。特定樹脂層は、このように薄くても、偏光子層を効果的に保護できるので、薄い偏光フィルムを得ることができる。
【0075】
[4.任意の層]
転写型積層体は、仮基材及び特定樹脂層に組み合わせて、更に任意の層を備えていてもよい。例えば、仮基材の、特定樹脂層とは反対側の面に、任意の層を備えていてもよい。ただし、転写型積層体は、任意の層を備えず、仮基材及び特定樹脂層のみを備えることが好ましい。
【0076】
[5.仮基材と特定樹脂層との剥離力]
仮基材と特定樹脂層とは、特定の範囲の剥離力を有する。具体的には、前記の剥離力は、通常0.1N/25mmより大きく、好ましくは0.12N/25mmより大きく、特に好ましくは0.15N/25mmより大きく、また、通常2.5N/25mmより小さく、好ましくは2.0N/25mmより小さく、特に好ましくは1.5N/25mmより小さい。
【0077】
仮基材と特定樹脂層との剥離力が前記の範囲にある場合、特定樹脂層の優れた転写性を得ることができる。詳細には、剥離力が前記範囲の下限値より大きい場合、仮基材と特定樹脂層との間の意図しない剥離を抑制できるので、転写型積層体の製造、保存、運搬、貼り合わせ時のハンドリングを円滑に行うことができる。よって、転写型積層体の特定樹脂層を仮基材からある部材(例えば、偏光子層)へと転写する場合に、特定樹脂層と前記部材との貼り合わせを安定して行うことができる。また、剥離力が前記範囲の上限値より小さい場合、仮基材の剥離を容易に行うことができる。よって、仮基材の剥離による特定樹脂層へのダメージを抑制できる。
【0078】
前記のように優れた転写性が得られる仕組みを、本発明者は、下記のように推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の仕組みによって制限されない。
仮基材と特定樹脂層とが同じ共通溶媒を含む場合、仮基材と特定樹脂層との界面に、仮基材の材料、特定樹脂層の材料及び共通溶媒が混在する部分が形成されうる。この部分を、以下「中間部分」ということがある。この中間部分は、仮基材の材料及び特定樹脂層の材料が混在することにより、仮基材及び特定樹脂層の両方に適切な範囲の親和性を有することができる。したがって、中間部分の親和性の作用により、中間部分を介した仮基材及び特定樹脂層の密着力を高めることができる。他方、前記の中間部分の厚みは、一般に小さい。また、中間部分には、仮基材の材料と特定樹脂層の材料とが混在するので、応力による破壊の起点となりうる微小なレベルでの相界面が含まれうる。したがって、中間部分は、引き剥がし応力が加えられた場合に容易に破壊されることができるから、中間部分を介した仮基材及び特定樹脂層の密着力は、過剰に高くならない。よって、仮基材と特定樹脂層との剥離力は、前記の適切な範囲にあることができるので、優れた転写性を実現できる。
【0079】
中間部分の形成され易さ、厚み及び機械的強度は、通常、特定樹脂層中の共通溶媒の含有率の影響を受ける。また、中間部分の形成され易さ、厚み及び機械的強度は、更に、仮基材中の共通溶媒の含有率の影響も受けうる。したがって、特定樹脂層中の共通溶媒の含有率が特定の範囲にある場合に優れた転写性が得られ、特定樹脂層中の共通溶媒の含有率及び仮基材中の共通溶媒の含有率の両方が特定の範囲にある場合に特に優れた転写性が得られる。
【0080】
さらに、中間部分の厚みは、仮基材が加熱された場合の変形性の影響を受けうる。中間部分は、通常、仮基材上に樹脂液を塗工し、乾燥させて特定樹脂層を形成する過程において形成される。また、前記の乾燥時に、仮基材は加熱されうる。例えば、前記のように加熱された仮基材が大きく収縮すると、仮基材内に厚み方向への応力が生じて中間部分への仮基材の材料の浸入が促進され、中間部分の厚みが大きくなりうるので、剥離力は大きくなりうる。また、例えば、前記のように加熱された仮基材が大きく膨張すると、仮基材内に厚み方向に垂直な面内方向への応力が生じて中間部分への仮基材の材料の浸入が抑制され、中間部分の厚みが小さくなりうるので、剥離力は小さくなりうる。よって、通常は、前記の仮基材が加熱された場合の変形性を抑制するべく、加熱試験を施した場合の寸法変化率が特定の範囲にある場合に、剥離力を適切な範囲に収め易いので、特に優れた転写性が得られる。
【0081】
仮基材と特定樹脂層との剥離力は、下記の方法によって測定できる。転写型積層体の特定樹脂層を、剛性の平板(例えば、ソーダガラス板)に貼り合わせ、固定する。仮基材の一部を剥がす。その剥がされた一部を90度方向(即ち、樹脂層の主面に対する法線方向)に300mm/min.の速さで引っ張って、仮基材を剥がした時の剥離力を、剥離力測定器(例えば、IMADA製「MX-500N-L550-E」)を用いて測定しうる。
【0082】
仮基材と特定樹脂層との剥離力は、通常は特定樹脂層中の共通溶媒の含有率で調整できる。さらに、前記の剥離力は、仮基材中の共通溶媒の含有率、及び、120℃で15分加熱した場合の仮基材の寸法変化率を調整することによって、更に効果的に調整できる。
【0083】
[6.転写型積層体の平坦性]
転写型積層体は、好ましくは、高い平坦性を有する。具体的には、転写型積層体は、トラフ及び折れ等の変形の小さいことが好ましく、前記変形の無い平坦な形状を有することが好ましい。このように平坦性の高い転写型積層体が備える特定樹脂層は、高い平坦性を有することができる。よって、当該特定樹脂層を偏光板保護フィルム層として偏光子層と貼り合わせた場合に、その特定樹脂層を備える偏光フィルムが意図しない光の反射及び屈折を生じることを抑制できるので、高品質の偏光フィルムを得ることができる。
【0084】
平坦性の高い転写型積層体は、例えば、加熱試験を施した場合の寸法変化率が特定の範囲にある仮基材を用いることによって得ることができる。
【0085】
[7.転写型積層体の寸法変化率]
転写型積層体が備える仮基材が、加熱試験を施した場合に、好ましくは特定の範囲の寸法変化率を有するので、転写型積層体は、加熱試験を施した場合の寸法変化率が仮基材と同じ特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、120℃で15分加熱する加熱試験を施した場合の転写型積層体の寸法変化率は、好ましくは-0.4%以上、より好ましくは-0.3%以上、特に好ましくは-0.2%以上であり、好ましくは1.3%以下、より好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.5%以下である。前記の寸法変化率は、転写型積層体の幅方向の寸法変化率を表す。また、この寸法変化率は、正の値は転写型積層体が膨張することを表し、負の値は転写型積層体が収縮することを表す。
【0086】
転写型積層体の寸法変化率は、仮基材の寸法変化率と同じ方法によって測定できる。具体的には、下記の方法によって測定できる。
転写型積層体を150mm角の正方形にカットし、その中央に100mm角の正方形を描く。この正方形の二辺は、転写型積層体の幅方向(長尺の転写型積層体の幅方向に相当する方向)に平行に描く。万能投影機(Nikon製 「PROFILE PROJECTOR V-12B」)を用い、描いた正方形の頂点間の距離を転写型積層体の幅方向で測定して、加熱試験前の間隔を得る。その後、転写型積層体を120℃で15分加熱する加熱試験を行う。転写型積層体を常温まで放冷した後、描いた正方形の頂点間の距離を再び転写型積層体の幅方向で測定して、加熱試験後の間隔を得る。加熱試験後の間隔から加熱試験前の間隔を引き算して、加熱試験による転写型積層体の寸法変化量を求める。この寸法変化量を、加熱試験前の間隔で割り算して、加熱試験による寸法変化率を計算できる。
【0087】
[8.転写型積層体の製造方法]
転写型積層体は、仮基材に、第二重合体及び共通溶媒を含む樹脂液を塗工する工程(i)と;仮基材に塗工された樹脂液を乾燥させる工程(ii)と;を含む製造方法によって、製造できる。この製造方法は、枚葉の仮基材を用いて行ってもよいが、長尺の仮基材を用いて行うことが好ましい。長尺の仮基材を用いる場合、長尺の転写型積層体を連続的に製造できる。以下、この製造方法について詳細に説明する。
【0088】
[8.1.仮基材に樹脂液を塗工する工程(i)]
前記の転写型積層体の製造方法では、仮基材に樹脂液を塗工する工程(i)を行う。仮基材としては、上述したものを用いうる。このように樹脂液を塗工される仮基材は、120℃で15分加熱する加熱試験を施した場合に、上述した特定の範囲の寸法変化率を有することが好ましい。
【0089】
樹脂液は、特定樹脂層を形成するための液体材料であるから、通常、特定樹脂層に含まれうる各成分を含む。具体的には、樹脂液は、溶媒と、第二重合体と、必要に応じて特定樹脂層に含まれうる任意の成分とを含みうる。樹脂液の溶媒は、共通溶媒を含み、好ましくは共通溶媒のみを含む。樹脂液に含まれる第二重合体及び任意の成分等の不揮発成分の一部又は全部は、溶媒に溶解していてもよい。また、前記不揮発成分の一部又は全部は、溶媒に分散していてもよい。
【0090】
樹脂液の溶媒は、共通溶媒と共通溶媒以外の任意の溶媒とを組み合わせて用いてもよいが、共通溶媒のみを含むことが好ましい。共通溶媒の種類は、上述した通りである。共通溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、任意の溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
樹脂液における不揮発成分の濃度は、樹脂液が塗工に適した粘度となる範囲で、任意に設定しうる。具体的な濃度範囲は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、特に好ましくは13重量%以上であり、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下、特に好ましくは25重量%以下である。
【0092】
仮基材への樹脂液の塗工方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ギャップコーティング法、及びディッピング法などが挙げられる。
【0093】
工程(i)で仮基材に樹脂液を塗工することにより、仮基材上に樹脂液の層が形成される。また、樹脂液に含まれていた共通溶媒の一部は、仮基材中に浸入する。
【0094】
[8.2.仮基材に塗工された樹脂液を乾燥させる工程(ii)]
前記のとおり、工程(i)で仮基材に樹脂液を塗工したことにより、その仮基材上に樹脂液の層が形成される。よって、仮基材への樹脂液の塗工の後で、仮基材上の樹脂液を乾燥させる工程(ii)を行う。工程(ii)での乾燥により、樹脂液の層から溶媒等の揮発成分の大部分が除去されるが、共通溶媒の少なくとも一部は残留する。よって、工程(ii)での乾燥により、第二重合体及び共通溶媒を含む特定樹脂層が仮基材上に形成される。また、工程(ii)での乾燥によって、仮基材に浸入した共通溶媒の一部は除去されうるが、その共通溶媒の少なくとも一部は仮基材中に残留しうる。よって、共通溶媒を含む仮基材が得られる。
【0095】
樹脂液の乾燥の条件は、乾燥後に得られる特定樹脂層に含まれる共通溶媒の含有率が上述した特定の範囲に収まるように設定される。例えば、乾燥温度及び乾燥時間等の乾燥条件を適切に設定することで、特定樹脂層に含まれる共通溶媒の含有率を、特定の範囲に調整できる。
【0096】
具体的な乾燥温度は、第二重合体及び共通溶媒の種類及び量によって異なりうるが、一般的には、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、特に好ましくは130℃以下である。
【0097】
具体的な乾燥時間は、重合体、逆可塑剤及び溶媒の種類及び量によって異なりうるが、一般的には、好ましくは30秒以上、より好ましくは60秒以上、特に好ましくは90秒以上であり、好ましくは5分以下、より好ましくは4分以下、特に好ましくは3分以下である。
【0098】
[8.3.任意の工程]
転写型積層体の製造方法は、前記の工程(i)及び工程(ii)に組み合わせて、更に任意の工程を行ってもよい。例えば、転写型積層体の製造方法は、製造された転写型積層体をトリミングする工程、製造された転写型積層体をロール状に巻き取る工程、などの任意の工程を含んでいてもよい。
【0099】
[9.偏光フィルムの製造方法]
上述した転写型積層体は、特定樹脂層を備える偏光フィルムの製造方法に適用できる。例えば、転写型積層体は、
偏光子層と、転写型積層体の特定樹脂層とを貼り合わせる工程(I)と、
転写型積層体の仮基材を剥離する工程(II)と、
を含む偏光フィルムの製造方法に適用できる。以下、この偏光フィルムの製造方法について詳細に説明する。
【0100】
[9.1.偏光子層と特定樹脂層とを貼り合わせる工程(I)]
偏光フィルムの製造方法は、偏光子層と、転写型積層体の特定樹脂層とを貼り合わせる工程(I)を含む。偏光子層としては、振動方向が直角に交わる二つの直線偏光のうち、一方を透過させ、他方を吸収又は反射できるフィルムを用いることができる。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を表す。このようなフィルムは、通常、偏光透過軸を有し、当該偏光透過軸と平行な振動方向を有する直線偏光を透過でき、偏光透過軸と垂直な振動方向を有する直線偏光を吸収又は反射できる。
【0101】
偏光子層は、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系重合体を含む、ポリビニルアルコール樹脂のフィルムに、ヨウ素等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したものが挙げられる。偏光子層は、ポリビニルアルコール樹脂を含むことが好ましい。
【0102】
偏光子層の厚みは、好ましくは1μmより大きく、より好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上であり、好ましくは19μm以下、より好ましくは18μm以下である。偏光子層の厚みが前記下限値より大きい場合、偏光フィルムの光学性能を十分に高めることができる。また、偏光子層の厚みが前記上限値以下である場合、偏光フィルムを備える表示体の反りを軽減し、偏光フィルムの屈曲復元性を効果的に高めることができる。
【0103】
特定樹脂層と偏光子層との貼り合わせは、必要に応じて、接着剤を介して行ってもよい。接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、変性ポリビニルアルコール系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、変性ポリオレフィン系接着剤、ポリビニルアルキルエーテル系接着剤、ゴム系接着剤、塩化ビニル-酢酸ビニル系接着剤、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)系接着剤、エチレン-スチレン共重合体などのエチレン系接着剤、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル系接着剤などが挙げられる。接着剤としては、当該接着剤の硬化を短時間で行うという観点では、紫外線硬化型の接着剤が好ましいが、接着層をより薄くするという観点ではポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール系の水系接着剤であってもよい。
【0104】
接着剤を用いて特定樹脂層と偏光子層との貼り合わせた場合、通常は、特定樹脂層と偏光子層との間に接着剤層が形成される。紫外線硬化型接着剤層の厚みは、通常0μmより大きく、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。水系接着剤の厚みは、通常0μmより大きく、好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.04μm以上であり、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.08μm以下である。それぞれの接着剤層の厚みが上記範囲にある場合、良好な外観を得ることができ、また、特定樹脂層と偏光子層とを強く接着することができる。
【0105】
偏光子層と特定樹脂層との具体的な貼り合わせ方法は、特に制限は無い。例えば、長尺の特定樹脂層及び長尺の偏光子層を、必要に応じて接着剤を介して、ピンチローラー等の貼合具を用いて貼合してもよい。
【0106】
特定樹脂層には共通溶媒が含まれるが、共通溶媒の含有率が上述した特定の範囲にあるので、その特定樹脂層は容易に破断しない程度の機械的強度を有することができる。したがって、工程(I)における特定樹脂層と偏光子層との貼り合わせ時に、当該貼り合わせのための応力が特定樹脂層に加わっても、特定樹脂層の破断を抑制できる。したがって、特定樹脂層と偏光子層との貼り合わせを、特定樹脂層の破断を抑制しながら行うことができる。
【0107】
[9.2.仮基材を剥離する工程(II)]
偏光フィルムの製造方法は、仮基材を剥離する工程(II)を含む。この工程(II)は、工程(I)の前に行ってもよく、工程(I)と同時に行ってもよいが、仮基材から偏光子層への特定樹脂層の転写を特に円滑に進める観点では、工程(I)の後に行うことが好ましい。仮基材と特定樹脂層との剥離力が上述した特定の範囲にあるので、工程(II)での仮基材の剥離は、円滑に行うことができる。したがって、仮基材の剥離による特定樹脂層の変形及び破壊を抑制できる。
【0108】
通常、仮基材の剥離は、連続的に行われる。この際、仮基材の剥離速度は、特定樹脂層の破断を効果的に抑制する観点から、好ましくは70m/分以下、より好ましくは60m/分以下、特に好ましくは50m/分以下である。下限は、特段の制限は無いが、偏光フィルムの製造を速やかに進める観点から、好ましくは10m/分以上、より好ましくは15m/分以上、特に好ましくは20m/分以上である。
【0109】
一例において、前記の工程(I)及び工程(II)は、下記のように行ってもよい。偏光子層の両側に、転写型積層体の特定樹脂層を貼り合わせて、転写型積層体/偏光子層/転写型積層体をこの順に備えるフィルムを得る(工程(I))。その後、偏光子層の両側の転写型積層体の仮基材を剥離する(工程(II))。この例に係る方法によれば、特定樹脂層/偏光子層/特定樹脂層をこの順に備える偏光フィルムを得ることができる。
【0110】
また、偏光フィルムは、前記のように転写型積層体/偏光子層/転写型積層体をこの順に備えるフィルムとして製造し、当該フィルムとして保存及び運搬してもよい。このフィルムは、仮基材/特定樹脂層/偏光子層/特定樹脂層/仮基材をこの順に備えるので、特定樹脂層及び偏光子層を仮基材によって保護できる。また、この場合、使用の直前に仮基材を剥離して複層フィルムを得て、その複層フィルムが表示装置への取り付け等の用途に用いられうる。
【0111】
[9.3.任意の保護層を設ける工程]
偏光フィルムの製造方法では、上述した工程(I)と工程(II)との組み合わせにより、偏光子層の片側のみに特定樹脂層を設けてもよく、偏光子層の両側に特定樹脂層を設けてもよい。偏光子層の片側のみに特定樹脂層を設ける場合、偏光子層のもう片側には、任意の保護層を設けてもよい。よって、偏光フィルムの製造方法は、任意の工程として、特定樹脂層とは反対側の偏光子層の面に任意の保護層を設ける工程を含んでいてもよい。
【0112】
任意の保護層は、例えば、第二樹脂以外の任意の熱可塑性樹脂によって形成しうる。任意の熱可塑性樹脂としては、透明性、機械的強度、熱安定性及び水分遮蔽性に優れる例として、トリアセチルセルロース等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。中でも、硬度が高く、水蒸気透過率が低い保護層が得られることから、(メタ)アクリル樹脂及び環状オレフィン樹脂が好ましく、水蒸気透過率が更に低い環状オレフィン樹脂がより好ましい。
任意の保護層は、例えば、折り曲げ可能な超薄膜ガラスであってもよい。
【0113】
任意の保護層の厚みは、制限は無い。例えば、任意の熱可塑性樹脂の層及び超薄膜ガラス等の保護層の厚みは、13μm~100μmでありうる。
【0114】
任意の保護層は、例えば、任意の熱可塑性樹脂もしくは超薄膜ガラスによって形成された任意の保護層を、必要に応じて接着剤を介して偏光子層に貼り合わせることを含む方法によって、形成できる。偏光子層と任意の保護層との貼り合わせに用いる接着剤としては、特定樹脂層と偏光子層との貼り合わせに用いうる接着剤と同じものを用いうる。接着剤を用いる場合、偏光子層と任意の保護層との間に接着剤層が形成されうるが、この接着剤層の厚みの範囲は、特定樹脂層と偏光子層との間に形成される接着剤層の厚みと同じ範囲であってもよい。
【0115】
任意の保護層は、特定樹脂層よりも前に、偏光子層上に設けてもよい。また、任意の保護層は、特定樹脂層よりも後に、偏光子層上に設けてもよい。さらに、任意の保護層は、特定樹脂層と同時に、偏光子層上に設けてもよい。
【0116】
偏光子層の両側に特定樹脂層を設ける場合、一方の特定樹脂層からは、仮基材を剥離しなくてもよい。この場合、特定樹脂層及び仮基材を含む転写型積層体を、保護層として用いることができる。例えば、特定樹脂層/偏光子層/転写型積層体をこの順で備える偏光フィルムを得ることができる。
【0117】
[9.4.任意の粘着剤層を設ける工程]
偏光フィルムの製造方法は、任意の工程として、粘着剤層を設ける工程を含んでいてもよい。粘着剤層は、通常、偏光フィルムの最外層として設けられる。例えば、粘着剤層は、偏光子層、特定樹脂層及び粘着剤層が、厚み方向においてこの順に並ぶように設けられうる。粘着剤層は、粘着剤によって形成されるので、粘着力を発揮できる。よって、粘着剤層の粘着力によって、偏光フィルムは、他の部材に貼り合わせられることができる。例えば、液晶パネル及び有機エレクトロルミネッセンスパネル(以下、適宜「有機ELパネル」ということがある。)等の表示体を備える表示装置に偏光フィルムを組み込む場合には、粘着剤層と表示体とを貼り合わせることにより、表示体上に偏光フィルムを設けることができる。
【0118】
粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系、ポリオレフィン系粘着剤等の粘着剤が挙げられる。中でも、耐熱性及び生産性の観点からアクリル系粘着剤及びポリオレフィン系粘着剤が好ましく、アクリル系粘着剤が特に好ましい。また、粘着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
粘着剤層の厚みは、好ましくは2.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上であり、好ましくは30.0μm以下、より好ましくは25.0μm以下、特に好ましくは20.0μm以下である。粘着剤層の厚みが前記下限値以上である場合、粘着剤層の粘着力を高めることができ、貼り合わせ時の気泡の巻き込みを抑制できる。また、粘着剤層の厚みが前記上限値以下である場合、偏光フィルムの膨張及び収縮の挙動を抑制でき、ベゼルフリー化が可能となる。
【0120】
粘着剤層は、例えば、粘着剤の塗工によって形成してもよい。また、粘着剤層は、例えば、予め用意した粘着剤層の貼り合わせにより形成してもよい。粘着剤層を形成する時期に制限はない。例えば、偏光子層、特定樹脂層及び粘着剤層をこの順に備える偏光フィルムを製造する場合、通常は、偏光子層上に特定樹脂層を形成した後で、粘着剤層を形成しうる。
【0121】
[9.5.任意のλ/4層を設ける工程]
偏光フィルムの製造方法は、任意の工程として、λ/4層を設ける工程を含んでいてもよい。例えば、偏光フィルムを有機ELパネルの反射防止フィルムとして用いる場合、λ/4層は、偏光子層と有機ELパネルの間に設けられうる。このとき、偏光子層、特定樹脂層及びλ/4層は、(偏光子層)/(特定樹脂層)/(λ/4層)の順に並ぶように設けてもよく、(特定樹脂層)/(偏光子層)/(λ/4層)の順に並ぶように設けてもよい。偏光フィルムの製造方法においては、接着剤、粘着層を用いることが出来る。
【0122】
例えば、有機ELディスプレイ又は液晶パネルのサングラスリーダブル用としてλ/4層を設ける場合、λ/4は、偏光子層と視認者との間に設けられうる。このとき、偏光子層、特定樹脂層及びλ/4層は、視認者/(λ/4層)/(偏光子層)/(特定樹脂層)の順に並ぶように設けてもよく、視認者/(λ/4層)/(特定樹脂層)/(偏光子層)の順にと並ぶように設けてもよい。偏光フィルムの製造方法においては、同様に接着剤、粘着層を用いることが出来る。
【0123】
λ/4層は、波長550nmにおいて特定の範囲の面内レターデーションを有する。具体的には、λ/4層の波長550nmにおける面内レターデーションは、好ましくは110nm以上、より好ましくは120nm以上、特に好ましくは125nm以上であり、好ましくは165nm以下、より好ましくは155nm以下、特に好ましくは150nm以下である。
【0124】
λ/4層の遅相軸は、偏光子層の偏光透過軸に対して、好ましくは40°~50°、より好ましくは42°~48°、特に好ましくは44°~46°の角度をなす。この場合、偏光子層とλ/4層との組み合わせにより、円偏光板を得ることができる。よって、λ/4層を備える偏光フィルムは、表示装置に設けられた場合に、反射抑制フィルムとして機能できる。
【0125】
λ/4層は、逆波長分散特性を有することが好ましい。逆波長分散特性とは、測定波長450nm及び550nmにおける面内レターデーションRe(450)及びRe(550)がRe(450)<Re(550)を満たす性質をいう。逆波長分散特性を有するλ/4層は、広い波長範囲においてその光学的機能を発揮できる。
【0126】
λ/4層は、例えば、適切な樹脂で形成された延伸前フィルムを延伸した延伸フィルムとして製造してもよい。また、λ/4層は、例えば、適切な液晶性化合物を含む液晶組成物の層を形成し、液晶性化合物の分子を配向させた後で、その液晶組成物を硬化させた液晶硬化層として製造してもよい。中でも、薄くフレキシブルな偏光フィルムを得る観点では、λ/4層は液晶硬化層であることが好ましい。このような液晶硬化層としてのλ/4層は、例えば、国際公開第2016/121602号に記載の方法によって製造できる。
【0127】
λ/4層は、例えば、予め用意したλ/4層の貼り合わせにより形成してもよい。この貼り合わせには、必要に応じて、接着剤を用いてもよい。λ/4層の貼り合わせに用いる接着剤としては、特定樹脂層と偏光子層との貼り合わせに用いうる接着剤と同じものを用いうる。
【0128】
視野角を拡大する為には、λ/4層の屈折率を、nx>nz>nyに制御したり、視野角補償層と呼ばれるポジティブCプレート(nx=ny<nz)又はネガティブCプレート(nx=ny>nz)をλ/4層に積層したりしてもよい。
【0129】
[9.6.その他の任意の工程]
偏光フィルムの製造方法は、必要に応じて、更に任意の工程を含んでいてもよい。例えば、偏光フィルムの製造方法は、クリアハードコート層、アンチグレアハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防汚層、導電層などの任意の層を偏光フィルムに設ける工程を含んでいてもよい。任意の層の数は、1層でもよく、2層以上でもよい。さらに、任意の層の位置は、本発明の効果を著しく損なわない限り、制限されない。
【0130】
また、偏光フィルムの製造方法は、例えば、接着剤を硬化させる工程を含んでいてもよい。通常、接着剤を硬化させる工程は、前記の接着剤を用いて層同士を貼り合わせた後に行われる。接着剤の硬化方法は、接着剤の種類に応じて適切な方法を採用できる。例えば、紫外線硬化型の接着剤を用いる場合には、紫外線の照射によって接着剤を硬化させることができる。
【0131】
さらに、偏光フィルムの製造方法は、当該偏光フィルムをトリミングする工程を含んでいてもよい。例えば、長尺の偏光子層及び長尺の転写型積層体を用いて長尺の偏光フィルムを製造した後で、当該偏光フィルムを所望の寸法にトリミングしてもよい。
【0132】
[9.7.製造される偏光フィルム]
前記の製造方法によれば、偏光子層及び特定樹脂層の貼り合わせ、並びに、仮基材の剥離を、特定樹脂層の変形及び破壊を抑制しながら行うことができる。したがって、仮基材から偏光子層への特定樹脂層の転写を円滑に行うことができるので、偏光子層及び特定樹脂層を備える偏光フィルムを円滑に製造できる。
【0133】
製造される偏光フィルムは、必要に応じて、接着剤層、保護層、粘着剤層、λ/4層等の任意の層を備えていてもよい。例えば、偏光フィルムは、保護層、接着剤層、偏光子層、接着剤層、特定樹脂層、λ/4層及び粘着剤層を、この順に備えていてもよい。
【0134】
特定樹脂層が薄くても偏光子層を効果的に保護できるので、通常は、偏光フィルム全体を薄くすることが可能である。偏光フィルムの厚みは、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、特に好ましくは70μm以下である。偏光フィルムの厚みの下限に特に制限は無く、例えば、表示体を曲げたり折りたたんだりする用途では薄いほど好ましい。
【0135】
[10.表示装置]
上述した偏光フィルムは、例えば、表示装置に設けてもよい。偏光フィルムを備える表示装置は、通常、偏光フィルムに組み合わせて表示体を備える。この際、偏光フィルムは、特定樹脂層及び偏光子層を表示体側からこの順に備えるように設けられうる。この表示装置は、例えば、表示体と偏光フィルムとを貼り合わせることを含む製造方法によって製造できる。ただし、表示装置の製造方法は、これに限定されない。
【0136】
表示体としては、例えば、液晶表示装置用の表示体としての液晶パネル、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、適宜「有機EL表示装置」ということがある。)用の表示体としての有機ELパネルが挙げられる。通常は、これらの表示体の視認側に、偏光フィルムが設けられる。
【0137】
液晶パネルは、通常、液晶と、この液晶に電圧を印加しうる電極と、を備える液晶セルを備える。液晶セルは、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなど、任意のモードの液晶セルを用いうる。
【0138】
有機ELパネルは、通常、通常、透明電極層、発光層及び電極層をこの順に備える有機EL素子を備える。この有機EL素子では、透明電極層及び電極層から電圧を印加されることにより、発光層が光を生じうる。有機発光層を構成する材料の例としては、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリフルオレン系、およびポリビニルカルバゾール系の材料を挙げることができる。また、発光層は、複数の発光色が異なる層の積層体、あるいはある色素の層に異なる色素がドーピングされた混合層を有していてもよい。さらに、有機EL素子は、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、等電位面形成層、電荷発生層等の機能層を備えていてもよい。
【実施例0139】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0140】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧(23℃、1気圧)大気中において行った。
【0141】
[溶媒の含有率の測定方法]
転写型積層体を樹脂層と仮基材とに剥離した。樹脂層及び仮基材をそれぞれ40mm×200mmにカットした後、秤量し、バイアル瓶に投入した。樹脂層及び仮基材をそれぞれ150℃で30分加熱して樹脂層及び仮基材中の溶媒を気化させ、その気化した溶媒の量を、ガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所製「GC-2010 Plus/Trubomatrix 40」;カラムはAgilent techologies製「DB-5ms」)を用いて測定した。具体的な溶媒の量は、予め準備した検量線に基づいて求めた。求めた溶媒の量から、溶媒の含有率を計算した。
【0142】
また、特に実施例4及び5において、離型層に含まれる樹脂(離型剤)中の溶媒の含有率は、下記の方法によって測定した。転写型積層体を樹脂層と仮基材とに剥離した。仮基材を0.1g秤量後、トルエン溶液中で離型剤のみを溶解させ、フィルタでろ過、回収し、試料溶液とした。ガスクロマトグラフ質量分析計(島津製作所「GCMS-QP2020」(カラムはAgilent techologies製「DB-1」)を用いて溶媒の量を測定した。具体的な溶媒の量は、予め準備した検量線に基づいて求めた。求めた溶媒の量から、溶媒の含有率を計算し、離型層に含まれる樹脂(離型剤)中の溶媒の含有率を測定した。
【0143】
[水蒸気透過率の測定方法]
転写型積層体から樹脂層を剥がした。この樹脂層について、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W」)により、JIS K 7129 B法に従って、温度40℃、湿度90%RHの条件にて、水蒸気透過率を測定した。こうして得られた水蒸気透過率の測定値を、厚み100μm当たりの値に換算して、樹脂層に含まれる樹脂の厚み100μm当たりの水蒸気透過率を得た。具体的には、測定値に「100(μm)/特定樹脂層の厚み(μm)」を掛け算して、厚み100μm当たりの水蒸気透過率を得た。
【0144】
[光弾性定数の測定]
転写型積層体から樹脂層を剥がした。この樹脂層をカットして、幅1cmのフィルム片を複数用意した。これらのフィルム片に、重さ50g、100g、150g及び200gの分銅を吊り下げ、測定波長550nmで面内レターデーションを測定した。面内レターデーションの測定は、位相差計(AXOMETRICS社製「Axo Scan」)を用いて行った。測定された面内レターデーションを樹脂層の厚みで割り算して、複屈折を求めた。得られた複屈折、及び、その複屈折に対応する分銅によって樹脂層に与えられる単位断面積当たりの力の大きさを、力の大きさを横軸、複屈折を縦軸とする座標系にプロットした。得られたプロットから最小二乗法によって近似直線を得た。この近似直線の傾きとして、樹脂層の光弾性定数を求めた。
【0145】
[レターデーションの測定方法]
転写型積層体から樹脂層を剥がした。この樹脂層について、位相差計(AXOMETRICS社製「Axo Scan」)を用いて、測定波長550nmにおける面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthを測定した。
【0146】
[380nm透過率の測定方法]
ガラス基板(コーニング社製「イーグルXG」;厚さ0.5mm)を用意した。このガラス基板に、光学用粘着シート(日東電工製「LUCIACS CS9861US」)を介して、転写型積層体の樹脂層をハンドロールを用いて貼り合わせた。その後、仮基材を剥離して、ガラス基板/光学用粘着シート/樹脂層の層構成を有するサンプルを得た。ガラス基板及び光学用粘着シートが波長380nmにおいて吸収を有さないので、サンプルの光線透過率は、樹脂層の光線透過率に一致する。そこで、分光光度計(日本分光社製「V-7200」)を用いて、波長380nmにおける光線透過率を測定した。
【0147】
[寸法変化率の測定方法]
仮基材及び転写型積層体といったフィルム試料の寸法変化率は、下記の方法で測定した。
フィルム試料(即ち、仮基材又は転写型積層体)を150mm角の正方形にカットし、その中央に100mm角の正方形を描いた。この正方形の二辺は、フィルム試料の幅方向(長尺のフィルム試料の幅方向に相当する方向)に平行に描いた。万能投影機(Nikon製 「PROFILE PROJECTOR V-12B」)を用い、フィルム試料に描いた正方形の頂点間の距離をフィルム試料の幅方向で測定して、加熱試験前の間隔を得た。その後、フィルム試料を120℃で15分加熱する加熱試験を行った。フィルム試料を常温まで放冷した後、フィルム試料に描いた正方形の頂点間の距離を再びフィルム試料の幅方向で測定して、加熱試験後の間隔を得た。加熱試験後の間隔から加熱試験前の間隔を引き算して、加熱試験によるフィルム試料の寸法変化量を求めた。この寸法変化量を、加熱試験前の間隔で割り算して、加熱試験によるフィルム試料の寸法変化率を計算した。
【0148】
[剥離力の測定方法]
片面に軽剥離ライナーを貼り合わせられ、もう片面に重剥離ライナーを貼り合わせられた光学用粘着シート(日東電工製「LUCIACS CS9861US」)を用意した。軽剥離ライナーを剥がして光学用粘着シートの片面を露出させ、その露出面を厚さ2mmのソーダガラス板に貼り合わせた。また、重剥離ライナーを剥がして光学用粘着シートのもう片面を露出させ、その露出面に転写型積層体の樹脂層を、ハンドロールを用いて貼り合わせた。仮基材の一部をテープを用いて剥がし、その剥がされた一部を90度方向(即ち、樹脂層の主面に対する法線方向)に300mm/min.の速さで引っ張って剥がした時の剥離力を、剥離力測定器(IMADA製「MX-500N-L550-E」)を用いて測定した。
【0149】
[転写性の評価方法]
長尺の原反フィルムとして、厚み20μmの未延伸ポリビニルアルコールフィルム(ビニロンフィルム、平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%)を用意した。ガイドロールを介してこのフィルムを長手方向に連続搬送しながら、当該フィルムに対して、30℃で1分間純水に浸漬し2倍に延伸する処理を行った。その後、このフィルムに対して、染色溶液(ヨウ素及びヨウ化カリウムを重量比1:23で含む染色剤溶液、染色剤濃度1.2mmol/L)に32℃で2分間浸漬する染色処理を行い、フィルムにヨウ素を吸着させた。その後、フィルムを35℃で30秒間、ホウ酸3重量%水溶液に浸漬して、架橋及び洗浄を行った。その後、57℃で、フィルムを、ホウ酸3重量%及びヨウ化カリウム5重量%を含む水溶液中で、3.0倍に延伸した。その後、フィルムに対して、35℃で、ヨウ化カリウム5%及びホウ酸1.0%を含む水溶液中で、補色処理を行った。その後、フィルムを70℃で2分間乾燥させて、厚み8μmの長尺の偏光子層を得た。この偏光子層の偏光度を紫外可視分光光度計(日本分光社製「V-7200」)で測定したところ、99.996%であり、十分な偏光能を有していた。
【0150】
転写型積層体の樹脂層の表面に、コロナ処理を施した。その後、その樹脂層のコロナ処理面に、紫外線硬化型の接着剤(ADEKA社製「アークルズKRX-7007」)を塗工して、接着剤の層を形成した。この接着剤の層を介して、樹脂層と偏光子層とを貼り合わせた。貼り合わせの直後に、紫外線照射装置を用いて、仮基材側から750mJ/cmの紫外線照射を行って、接着剤を硬化させた。その後、仮基材を剥離して、仮基材から偏光子層への樹脂層の転写を達成した。
【0151】
前記の樹脂層の転写の様子と、樹脂層からの仮基材の剥離力とに基づいて、下記の基準で樹脂層の転写性を評価した。
「A」:剥離力が0.1/25mm以上2.5N/25mm以下であり、安定的なウェブハンドドリングが可能である。
「B」:剥離力が0.1/25mm以上2.5N/25mm以下の範囲外であり、時折、転写不良が発生する。
「C」:剥離力が非常に小さく、ウェブハンドドリングが不可能である。樹脂層が意図せず剥離して、破断する。
【0152】
[フィルム平坦性の評価方法]
転写型積層体を観察して、その転写型積層体のフィルム平坦性を下記の基準で評価した。
「A」:転写型積層体に、トラフの発生がない。
「B」:転写型積層体に、トラフが発生がある。
「C」:転写型積層体の端部に、折れが発生する。
【0153】
[実施例1]
ノルボルネン系重合体(日本ゼオン社製「ZEONOR」;ガラス転移温度138℃)、及び、溶媒としてシクロヘキサンを混合して、樹脂液として、ノルボルネン系重合体の濃度15重量%の樹脂溶液を得た。
【0154】
仮基材として、長尺のポリプロピレンフィルム(東レ社製「新タイプ トレファン BO40-2500」)を用意した。仮基材「新タイプ トレファン BO40-2500」を120℃で15分加熱した場合の幅方向の寸法変化率は、0.32%であった。この仮基材の平滑面上に、前記の樹脂溶液を塗工して、樹脂溶液の層を形成した。その後、樹脂溶液の層を、120℃で2分間の乾燥条件で乾燥して、仮基材上に厚み9μmの樹脂層を形成した。以上の操作により、仮基材と、この仮基材上に形成された樹脂層とを備える転写型積層体を得た。
【0155】
得られた転写型積層体を用いて、上述した方法により、樹脂層の溶媒の含有率、水蒸気透過率、光弾性定数、面内レターデーション、厚み方向のレターデーション及び転写性;仮基材の溶媒の含有率、剥離力及び転写性;並びに、転写型積層体のフィルム平坦性及び寸法変化率;の評価を行った。
【0156】
[実施例2]
仮基材に塗工する樹脂溶液の量を、乾燥後に形成される樹脂層の厚みが5μmとなるように変更したこと以外は、実施例1と同じ方法により、転写型積層体の製造及び評価を行った。
【0157】
[実施例3]
仮基材に塗工する樹脂溶液の量を、乾燥後に形成される樹脂層の厚みが2μmとなるように変更したこと以外は、実施例1と同じ方法により、転写型積層体の製造及び評価を行った。
【0158】
[実施例4]
樹脂溶液の溶媒として、シクロヘキサンの代わりに、シクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンの混合溶媒(シクロヘキサン:エチルシクロヘキサン=1:2)を用いた。また、仮基材の種類を、片面をポリオレフィン系離型剤で処理された長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「ユニピールTR1」)に変更した。この仮基材「ユニピールTR1」は、ポリエチレンテレフタレートで形成された層と、この層上に形成されたポリオレフィン系離型剤を含む離型層と、を備えていた。また、仮基材「ユニピールTR1」を120℃で15分加熱した場合の幅方向の寸法変化率は、-0.13%であった。また、樹脂溶液は、仮基材の離型剤で処理された面(離型コート面)に塗工した。さらに、仮基材の溶媒の含有率の代わりに、離型層に含まれるポリオレフィン系離型剤の溶媒の含有率を測定した。以上の事項以外は、実施例3と同じ方法により、転写型積層体の製造及び評価を行った。
【0159】
[実施例5]
仮基材の種類を、片面をオレフィン系離型剤で処理された長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製「ユニピールTR5」)に変更した。この仮基材「ユニピールTR5」は、ポリエチレンテレフタレートで形成された層と、この層上に形成されたポリオレフィン系離型剤を含む離型層と、を備えていた。また、仮基材「ユニピールTR5」を120℃で15分加熱した場合の幅方向の寸法変化率は、-0.13%であった。以上の事項以外は、実施例4と同じ方法により、転写型積層体の製造及び評価を行った。
[実施例6]
ノルボルネン系重合体(日本ゼオン社製「ZEONOR」;ガラス転移温度138℃)、紫外線吸収剤(2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール;BASF製「Tinuvin(登録商標)329」)、及び溶媒としてシクロヘキサンを混合して、樹脂液として、ノルボルネン系重合体の濃度11.7重量%、紫外線吸収剤の濃度3.3重量%の樹脂溶液を得た。前記の紫外線吸収剤は、溶媒であるシクロヘキサンに濃度16質量%まで可溶であった。また、得られた樹脂溶液の固形分100重量%に対して、ノルボルネン系重合体は78重量%、紫外線吸収剤は22重量%であった。
【0160】
仮基材として、長尺のポリプロピレンフィルム(東レ社製「新タイプ トレファン BO40-2500」)を用意した。この仮基材上に、前記の樹脂溶液を塗工して、樹脂溶液の層を形成した。その後、樹脂溶液の層を、120℃で2分間の乾燥条件で乾燥して、仮基材上に厚み5μmの樹脂層を形成した。以上の操作により、仮基材と、この仮基材上に形成された樹脂層とを備える転写型積層体を得た。
【0161】
得られた転写型積層体を用いて、上述した方法により、樹脂層の溶媒の含有率、水蒸気透過率、光弾性定数、面内レターデーション、厚み方向のレターデーション、転写性及び光線透過率;仮基材の溶媒の含有率、剥離力及び転写性;並びに、転写型積層体のフィルム平坦性及び寸法変化率;の評価を行った。
【0162】
[比較例1]
長尺の仮基材の種類を、長尺のポリプロピレンフィルム(東レ社製「トレファン BO40-2500」)に変更した。仮基材「トレファン BO40-2500」を120℃で15分加熱した場合の幅方向の寸法変化率は、-0.95%であった。また、仮基材の平滑面上に塗工する樹脂溶液の量を、乾燥後に形成される樹脂層の厚みが2μmとなるように変更した。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、転写型積層体の製造及び評価を行った。
【0163】
[比較例2]
長尺の仮基材の種類を、長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「コスモシャインA4160」)に変更した。長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「コスモシャインA4160」)を120℃で15分加熱した場合の幅方向の寸法変化率は、-0.15%であった。また、樹脂溶液は、仮基材の凹凸面にコロナ処理を施した後、その凹凸面に塗工した。また、仮基材に塗工する樹脂溶液の量を、乾燥後に形成される樹脂層の厚みが2μmとなるように変更した。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、転写型積層体の製造及び評価を行った。
【0164】
[比較例3]
長尺の仮基材の種類を、長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「コスモシャインA4160」)に変更した。また、樹脂溶液は、仮基材の平滑面にコロナ処理を施した後、その平滑面に塗工した。また、仮基材に塗工する樹脂溶液の量を、乾燥後に形成される樹脂層の厚みが2μmとなるように変更した。以上の事項以外は、実施例1と同じ方法により、転写型積層体の製造及び評価を行った。
【0165】
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、下記の通りである。
COP:脂環式構造を有する重合体。
UVA:紫外線吸収剤。
Re:面内レターデーション。
Rth:厚み方向のレターデーション。
OPP1:東レ製のポリプロピレンフィルム「新タイプ トレファン BO40-2500」。
離型PET1:ユニチカ社製の離型面を片面に有するポリエチレンテレフタレートフィルム「ユニピールTR1」。樹脂溶液は離型面に塗布した。
離型PET2:ユニチカ社製の離型面を片面に有するポリエチレンテレフタレートフィルム「ユニピールTR5」。樹脂溶液は離型面に塗布した。
OPP2:東レ製のポリプロピレンフィルム「トレファン BO40-2500」。
易接PET:東洋紡社製の凹凸面及び平滑面を有するポリエチレンテレフタレートフィルム「コスモシャインA4160」。樹脂溶液は凹凸面に塗布した。
PET:東洋紡の凹凸面及び平滑面を有するポリエチレンテレフタレートフィルム「コスモシャインA4160」。樹脂溶液は平滑面に塗布した。
【0166】
【表1】