(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073749
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】波長変換部材及びその製造方法、発光装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230519BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20230519BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20230519BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20230519BHJP
F21V 9/32 20180101ALI20230519BHJP
B28B 11/00 20060101ALI20230519BHJP
B28B 11/14 20060101ALI20230519BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20230519BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230519BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20230519BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/26
G02B5/22
H01S5/022
F21V9/32
B28B11/00
B28B11/14
F21Y115:30
F21Y115:10
F21Y115:15
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186402
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 利章
【テーマコード(参考)】
2H148
4G055
5F173
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA09
2H148CA05
2H148CA24
2H148FA05
2H148FA22
4G055AA08
4G055AB01
4G055AC09
4G055BA01
4G055BB13
5F173MA10
5F173MB03
5F173MC30
5F173MD64
5F173ME22
5F173ME33
5F173MF28
5F173MF40
(57)【要約】
【課題】複数の発光部を含む波長変換部を備え、隣接する発光部からの光の伝搬を抑制する効果を向上させた波長変換部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る波長変換部材の製造方法は、反射部材を有するグリーンシート、遮光部材を有するグリーンシート、及び反射部材を有するグリーンシートがこの順番で積層された積層体を、蛍光体を有するセラミックシートと交互に積層して複合体を作製する工程と、前記複合体を加圧及び焼成する工程と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射部材を有するグリーンシート、遮光部材を有するグリーンシート、及び反射部材を有するグリーンシートがこの順番で積層された積層体を、蛍光体を有するセラミックシートと交互に積層して複合体を作製する工程と、
前記複合体を加圧及び焼成する工程と、
を含む、波長変換部材の製造方法。
【請求項2】
加圧及び焼成した前記複合体を切断する工程をさらに有し、該工程は、前記複合体を第1平面に平行な平面で切断する工程と、前記第1平面と交差する第2平面に平行な平面で切断する工程と、を含む、請求項1に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項3】
前記複合体を切断する工程において、前記第1平面及び前記第2平面は、前記複合体の積層方向に平行な平面である、請求項2に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項4】
さらに、切断した前記複合体の周囲に、セラミック材料を含む部材を配置し、切断した前記複合体の2つの積層面と接続する光反射部を形成する工程を含む、請求項2または3に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項5】
前記光反射部を形成する工程は、前記積層面の周囲に、前記セラミック材料を含む液状の前記部材を配置し、焼成させる工程を含む、請求項4に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項6】
前記光反射部は、前記反射部材を有するグリーンシートが焼成されて形成される層より低密度である、請求項4または5に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項7】
前記反射部材を有するグリーンシートが焼成されて形成される層及び前記遮光部材を有するグリーンシートが焼成されて形成される層は、セラミックから構成されており、
前記遮光部材は、光吸収体を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項8】
前記複合体を作製する工程において、複数の前記積層体と複数の前記蛍光体を有するセラミックシートを交互に積層した前記複合体を作製し、
焼成後の複数の前記積層体の積層方向の長さは、それぞれ等しい、請求項1から7のいずれか1項に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項9】
前記複合体を加圧及び焼成する工程の前後において、前記蛍光体を有するセラミックシートの収縮率は、前記積層体の収縮率よりも小さい、請求項1から8のいずれか1項に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項10】
蛍光体を有するセラミックを主材料とする複数の発光部と、
光反射層、遮光層、及び光反射層がこの順番で積層された複数の積層体と、を含み、
前記積層体の積層方向において、前記積層体と前記発光部が交互に並ぶ、波長変換部材。
【請求項11】
前記光反射層及び前記遮光層は、セラミックを主材料とする請求項10に記載の波長変換部材。
【請求項12】
前記光反射層は、光反射性を有し、
前記遮光層は、光吸収体を含む、請求項10又は11に記載の波長変換部材。
【請求項13】
それぞれの前記積層体の積層方向の長さは等しい、請求項10から12のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項14】
さらに光反射部と、を備え、
前記光反射部は、前記発光部の2つの側面と接続する、請求項10から13のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項15】
前記光反射部はセラミックを主材料としており、前記光反射層よりも低密度である、請求項14に記載の波長変換部材。
【請求項16】
前記積層体の積層方向に関して、前記発光部の長さは0.3mm以上1.5mm以下であり、前記積層体の長さは0.1mm以上1.5mm以下である請求項10から15のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項17】
前記積層体の積層方向に関して、前記発光部の長さは、前記積層体の長さよりも長い請求項16に記載の波長変換部材。
【請求項18】
複数の半導体レーザ素子と、
請求項10から17のいずれか1項に記載の波長変換部材と、を有し、
前記複数の半導体レーザ素子のそれぞれから出射された光は、異なる前記発光部に入射し、
それぞれの前記発光部は、入射する前記光を異なる波長の光に変換する、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長変換部材及びその製造方法、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の発光ダイオードからの光が入射する蛍光体セラミックを備えたデバイスが開示されている。このデバイスは、横方向の光の伝播を低減するために、蛍光体セラミック内に光バリアを有している。蛍光体セラミックは、例えば、蛍光体セラミック前駆体および光バリア/反射体/散乱体から構成される2つまたはそれぞれ以上の層膜が繰り返し折り畳まれ、スライスされ、そして、焼成されて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複数の発光部を含む波長変換部を備え、隣接する発光部からの光の伝搬を抑制する効果を向上させた波長変換部材及びその製造方法を提供することを目的とする。また、この波長変換部材を有する発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態に係る波長変換部材の製造方法は、反射部材を有するグリーンシート、遮光部材を有するグリーンシート、及び反射部材を有するグリーンシートがこの順番で積層された積層体を、蛍光体を有するセラミックシートと交互に積層して複合体を作製する工程と、前記複合体を加圧及び焼成する工程と、を含む。
【0006】
本開示の一実施形態に係る波長変換部材は、蛍光体を有するセラミックを主材料とする複数の発光部と、光反射層、遮光層、及び光反射層がこの順番で積層された複数の積層体と、を含み、前記積層体の積層方向において、前記積層体と前記発光部が交互に並ぶ。
【0007】
本開示の一実施形態に係る発光装置は、複数の半導体レーザ素子と、本開示の一実施形態に係る波長変換部材と、を有し、前記複数の半導体レーザ素子のそれぞれから出射された光は、異なる前記発光部に入射し、それぞれの前記発光部は、入射する前記光を異なる波長の光に変換する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、複数の発光部を含む波長変換部を備え、隣接する発光部からの光の伝搬を抑制する効果を向上させた波長変換部材及びその製造方法を提供できる。また、この波長変換部材を有する発光装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る波長変換部材の斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る波長変換部材の製造方法を例示する図(その1)である。
【
図3】第1実施形態に係る波長変換部材の製造方法を例示する図(その2)である。
【
図4】第1実施形態に係る波長変換部材の製造方法を例示する図(その3)である。
【
図5】第1実施形態に係る波長変換部材の製造方法を例示する図(その4)である。
【
図6】第1実施形態に係る波長変換部材の製造方法を例示する図(その5)である。
【
図7】第1実施形態に係る波長変換部材の製造方法を例示する図(その6)である。
【
図8】第1実施形態に係る波長変換部材の製造方法を例示する図(その7)である。
【
図9】第1実施形態の変形例1に係る波長変換部材の斜視図である。
【
図10】第1実施形態の変形例2係る波長変換部材の斜視図である。
【
図11】第1実施形態の変形例3に係る波長変換部材の斜視図である。
【
図12】第2実施形態に係る波長変換部材の斜視図である。
【
図13】第3実施形態に係る発光装置の上面図である。
【
図14】
図13のXIV-XIV断面線で切った発光装置の断面図である。
【
図15】第3実施形態に係る発光装置から波長変換部材、透光性部材及び遮光部材を除いた状態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる。しかし、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
【0011】
また、本開示において、三角形や四角形等の多角形に関しては、多角形の隅に角丸め、面取り、角取り、丸取り等の加工が施された形状も含めて、多角形と呼ぶものとする。また、隅(辺の端)に限らず、辺の中間部分に加工が施された形状も同様に、多角形と呼ぶものとする。つまり、多角形をベースに残しつつ、部分的な加工が施された形状は、本開示で記載される"多角形"の解釈に含まれるものとする。
【0012】
また、多角形に限らず、台形や円形や凹凸等、特定の形状を表す言葉についても同様である。また、その形状を形成する各辺を扱う場合も同様である。つまり、ある辺において、隅や中間部分に加工が施されていたとしても、"辺"の解釈には加工された部分も含まれる。なお、部分的な加工のない"多角形"や"辺"を、加工された形状と区別する場合は"厳密な"を付して、例えば、"厳密な四角形"等と記載するものとする。
【0013】
さらに、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための波長変換部材等を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施形態において説明する内容は、他の実施形態や変形例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。さらに、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略した模式図を用いたり、断面図として切断面のみを示す端面図を用いたりすることがある。
【0014】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る波長変換部材の斜視図である。
図1に示すように、波長変換部材10は、複数の発光部20と、複数の積層体30とを含む。波長変換部材10の各構成要素について説明する。
図1には、参考のため、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸と平行な方向を、それぞれ第1方向X、第2方向Y、第3方向Zとしている。
【0015】
(発光部20)
発光部20は、上面と、上面の反対面である下面と、上面及び下面と交わる複数の側面とを有する。
図1では、各発光部20において、第3方向Zは、その上面及び/又は下面に垂直な方向である。複数の側面は、上面の外縁と下面の外縁とに接続する。各発光部20の形状は、例えば直方体である。また、各発光部20の上面は、矩形である。
図1の例では、各発光部20は立方体である。各発光部20の上面、下面、及び4つの側面は何れも正方形である。なお、発光部20の形状は、これに限定されない。
【0016】
各発光部20は、上面又は下面が光入射面となり得、下面又は上面が光出射面となり得る。光入射面に入射した所定の波長の光を異なる波長の光に変換し、変換された光を光出射面から出射できる。各発光部20は、入射した光の一部を出射してもよい。各発光部20は、入射した光をすべて異なる波長の光に変換してもよい。この場合、各発光部20に入射した光は、各発光部20から出射されない。
【0017】
各発光部20には、光が照射されるため、各発光部20の母材は、光の照射により分解されにくい無機材料を主材料に用いて形成することが好ましい。主材料は、例えば、セラミックである。主材料に用いられるセラミックとしては、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、又は酸化マグネシウムが挙げられる。セラミックの主材料は、各発光部20に熱による変形や変色等の変質が生じないように、融点が1200℃~2500℃の材料を選択することが好ましい。発光部20は、例えば、セラミックを主材料として形成された焼結体である。
【0018】
各発光部20は、例えば、蛍光体と酸化アルミニウム等の透光性材料とを焼結させて形成できる。蛍光体の含有量は、セラミックの総体積に対して0.05体積%~50体積%とすることができる。また、例えば、蛍光体の紛体を焼結させた、実質的に蛍光体のみからなるセラミックを用いてもよい。また、各発光部20は、蛍光体の単結晶で形成されてもよい。
【0019】
蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG)、ユウロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)2SiO4)、αサイアロン蛍光体、βサイアロン蛍光体等が挙げられる。なかでも、YAG蛍光体は、耐熱性が良好である。このように、各発光部20は、蛍光体を有するセラミックを主材料とする。
【0020】
例えば、各発光部20がYAG蛍光体を有する場合、下面から青色の励起光が入射すると、青色の励起光と黄色の蛍光とを組み合わせて白色光を上面から出射できる。
【0021】
(積層体30)
各積層体30は、光反射層31、遮光層32、及び光反射層31がこの順番で積層された構造である。なお、
図1では、光反射層31及び遮光層32の全てに参照符号を付す代わりに、光反射層31と遮光層32とを密度の異なるドットパターンで示している。
【0022】
光反射層31は、光反射性を有する。光反射層31は、発光部20から入射する光に対して70%以上の反射率を有する。光反射層31は、より好ましくは、80%以上の反射率を有する。光反射層31の膜厚は、例えば、30μm以上1000μm以下である。
【0023】
光反射層31は、例えば、セラミックを主材料とする。主材料に用いられるセラミックとしては、例えば、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素等が挙げられる。なお、光反射層31は、セラミック以外から形成されていてもよい。
【0024】
遮光層32は、入射する光を遮断又は減衰させる性質を有する。遮光層32は、入射する光の透過率が20%以下であることが好ましい。より好ましくは、15%以下である。遮光層32の光透過率をこのようにすることで、後述する発光部20同士の光の干渉を抑制することができる。また、遮光層32は、光吸収体をその構成に含めて形成することができる。その場合には、遮光層32は、光反射層31を通して入射する光に対して70%以上の吸収率を有することが好ましい。より好ましくは、80%以上の吸収率を有する。このような構成とすることで、上述の効果をより高めることができる。なお、遮光層32は、光吸収体を含まなくてもよい。遮光層32の膜厚は、例えば、30μm以上1000μm以下である。
【0025】
遮光層32は、例えば、光反射層31を形成する主材料と同じセラミックが主材料であり、さらに光を吸収する暗色系のセラミックを含む層である。暗色系としては、例えば、黒色、茶色、濃紺、灰色等が挙げられる。これらのなかでも、光の吸収率が高い黒色が好ましい。遮光層32の主材料を、光反射層31の主材料として用いるセラミックと同じセラミックとすることで、後述する波長変換部材10の製造工程における焼結時に、収縮率の違いからひび、割れ等が発生する可能性を低減することができる。なお、遮光層32の主材料を光反射層31の主材料とは異なるセラミックとしてもよい。遮光層32の主材料に用いられるセラミックとしては、例えば、光反射層31の主材料として用いるセラミックとして挙げた、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素等が挙げられる。また、主材料のセラミックと共に遮光層32に含まれる暗色系のセラミックとして、酸化ルテニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。本明細書中では、光を吸収する性質を有するセラミックは、光吸収体に含まれる。なお、遮光層32は、セラミックとは異なる材料から形成されてもよい。
【0026】
(波長変換部材10)
図1において、積層体30において光反射層31、遮光層32、及び光反射層31は、第1方向Xに積層されている(以降、
図1の第1方向Xを積層方向と称する場合がある)。波長変換部材10では、積層体30の積層方向において、発光部20と積層体30とが交互に並ぶ。つまり、波長変換部材10では、積層方向に隣接する発光部20の間に積層体30が配置されており、各発光部20は積層体30を挟んで互いに離隔している。各発光部20は、例えば、上面視で、各発光部20の中心が積層方向に平行な一直線上に並ぶように配置される。
【0027】
図示される波長変換部材10では、複数の発光部20のうち、積層方向(第1方向X)に関して両端に位置する2つの発光部20において、積層体30と接する側面と反対側の側面に、光反射層31が設けられている。図示される例において、波長変換部材10の両端には、光反射層31が設けられる。積層方向から見る平面視において、発光部20に接して設けられる光反射層31が、波長変換部材10の側面となる。両端に位置する光反射層31において、発光部20と接する側面の反対側の側面には、遮光層32が設けられない。なお、波長変換部材は、両端に光反射層31が配置される形態には限定されず、様々な形態を取り得る。これに関しては、後述する。
【0028】
波長変換部材10は、積層方向から見る平面形状が正方形の棒状である。ここで、棒状とは、積層方向に沿って長尺状に伸びる形状である。なお、波長変換部材10は、積層方向から見る平面形状が正方形でなくともよい。それぞれの発光部20の積層方向の長さは等しいことが好ましい。また、それぞれの積層体30の積層方向の長さは等しいことが好ましい。これにより、波長変換部材10において、発光部20のピッチを均一化できる。ここで、等しいとは、±10%以内の差を許容する。発光部20のピッチは、例えば、0.1mm以上2.0mm以下とすることができる。発光部20のピッチのばらつきは、例えば、発光部20のピッチの平均値に対して±5%以下とすることができる。
【0029】
積層方向に関して、積層体30の長さは、発光部20の長さよりも短くすることが好ましい。このようにすることで、波長変換部材10において、発光部20のピッチを狭くできる。なお、積層方向に関して、積層体30の長さは、発光部20の長さと同じ、あるいは長くてもよい。積層方向に関して、発光部20の長さは、例えば0.3mm以上2.0mm以下である。より好ましくは、0.5mm以上1.5mm以下である。積層方向に関して、積層体30の長さは、例えば0.1mm以上2.0mm以下である。積層方向に関して、積層体30の長さは発光部20の長さの1/2倍以上2倍以下であってもよい。
【0030】
波長変換部材10は、複数の発光部20を有し、隣接する発光部20間に積層体30が配置されている。これにより、隣接する発光部20に光が入射した場合に、それぞれの光が干渉することを抑制できる。これに関し、以下に詳しく説明する。
【0031】
各発光部20において、積層方向と交差する2つの側面に光反射層31が接して配置されている。これにより、各発光部20が有する蛍光体で波長変換されて、各発光部20の側面から光反射層31に向かって出射した光を各発光部20に反射する。また、各発光部20に入射して、各発光部20で波長変換されず、各発光部20の側面から光反射層に向かって出射した光を各発光部20に反射する。これにより、各発光部20の発光効率を向上できる。
【0032】
また、各発光部20の発光効率をより向上する観点から、光反射層31はセラミックで形成することが好ましい。発光部20からの光が光反射層31の表面に達すると、エバネッセント光を含む光が光反射層31の内部に滲み出す。光反射層31がセラミックから形成されている場合、光反射層31は、金属等で形成されている場合と比べて、発光部20から滲み出した光の吸収を低減し、光の反射を高めることができるため、発光部20の発光効率の低下を抑制できる。
【0033】
遮光層32は、積層方向と交差する2つの側面に光反射層31が接するように配置される。また、遮光層32は、積層方向において、隣り合う発光部20間に位置するように配置されている。これにより、隣り合う発光部20同士から出射される光の干渉を抑制することができる。それぞれの遮光層32の両側方には、光反射層31、発光部20がこの順で配置されている。発光部20、光反射層31、遮光層32の配置について、以下でさらに説明する。
【0034】
図示される例において、波長変換部材10の有する複数の発光部20のうちの一つを第1発光部、積層体30を挟んで第1発光部に隣接する発光部を第2発光部とする。第1発光部に入射した光は、蛍光体で波長変換されずに隣接する第2発光部が配される方向に向かって進む光を一部有する。その多くは、光反射層31によって反射され、第1発光部側に戻る。第1発光部に入射し、蛍光体で波長変換された光の一部は、隣接する第2発光部が配される方向に向かって進むが、その多くが光反射層31によって反射され、第1発光部側に戻る。第1発光部から光反射層31に入射した光の一部は、光反射層31を透過して第2発光部側に滲み出す可能性がある。しかしながら、光反射層31から第2発光部側に滲み出した光は、その全部または一部が遮光層32に吸収される。これにより、第2発光部に達する光を、遮光層32がない場合と比べて低減することができる。同様に、第2発光部に入射し、蛍光体で波長変換されて第1発光部側に進む光及び/又は波長変換されずに第1発光部側に進む光は、その多くが光反射層31によって反射されて第2発光部側に戻る。第2発光部から光反射層31に入射した光の一部は、光反射層31を透過して第1発光部側に滲み出す可能性があるが、その全部または一部が遮光層32に吸収される。これにより、第1発光部に達する光を、遮光層32がない場合と比べて低減することができる。このように、第1発光部に入射した光と第2発光部に入射した光が干渉することを抑制できる。
【0035】
その結果、例えば、第1発光部に光が入射し、第2発光部には光が入射しない場合に、第1発光部に入射した光の一部が、第2発光部に伝搬して第2発光部が発光することを抑制できる。すなわち、隣接する発光部20からの光の伝搬を抑制する効果を向上させた波長変換部材10を実現できる。その結果、隣接する発光部20で光の干渉を実質的に起こすことなく、それぞれの発光部20から、独立して光を出射させることができる。また、隣接する発光部20からの光の伝搬を抑制する効果は、積層体30が薄くなっても得られるため、隣接する発光部20からの光の伝搬を抑制し、かつ発光部20のピッチが狭い波長変換部材10を実現できる。
【0036】
なお、積層体30を遮光層32のみから構成すると、遮光層32がエバネッセント光を含む発光部20から滲み出した光の多くを吸収するため、発光部20の発光効率が低下する。波長変換部材10のように、積層体30を光反射層31、遮光層32、光反射層31のサンドイッチ構造とすることで、発光部20から滲み出した光の多くを光反射層31で反射し、光反射層31で反射されず、光反射層31を通過する一部の光を遮光層32で吸収できる。これにより、各発光部20が出射する光が、他の発光部20に入射することを抑制しつつ、発光部20の発光効率を向上できる。
【0037】
また、例えば、発光部20にレーザ光が入射する場合、発光部20に発光ダイオードからの光が入射する場合と比べて、発光部20の発熱が大きくなり得る。光反射層31をセラミックから形成することにより、発光部20の発熱による高温下においても、セラミックは変質しにくいため、積層体30及び発光部20の機能を維持することが可能である。
【0038】
(波長変換部材の製造方法)
第1実施形態に係る波長変換部材の製造方法は、反射部材を有するグリーンシート、遮光部材を有するグリーンシート、及び反射部材を有するグリーンシートがこの順番で積層された積層体を、蛍光体を有するセラミックシートと交互に積層して複合体を作製する工程と、複合体を加圧及び焼成する工程とを含む。第1実施形態に係る波長変換部材の製造方法は、これ以外の工程を含んでもよい。
【0039】
図2~
図6は、第1実施形態に係る波長変換部材の製造方法を例示する図である。ここでは、
図2~
図6を順次参照しながら、第1実施形態に係る波長変換部材の製造方法の一例として、
図1に示す波長変換部材10の製造方法について説明する。なお、
図5及び
図6では、参考のために互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸と平行な方向を、それぞれ第1方向X、第2方向Y、第3方向Zとしている。
【0040】
まず、
図2に示すように、反射部材を有するグリーンシート31S、遮光部材を有するグリーンシート32S、及び蛍光体を有するセラミックシート20Sを必要な枚数準備する。グリーンシート31S及び32Sは、例えば、主材料の粉末、バインダ、溶剤等を含有するスラリーを調整し、ドクターブレード法等の公知の方法により得られる。複数のグリーンシート31Sを用いる場合、グリーンシート31S同士の密度が等しくなるように、スラリーを調整することが好ましい。このようにすることで、焼成前後のグリーンシート31Sの収縮率をグリーンシート31S同士で揃えることができるので、焼成後の光反射層31の厚さのばらつきを小さくすることができる。複数のグリーンシート32Sを用いる場合、グリーンシート32S同士の密度が等しくなるように、スラリーを調整することが好ましい。このようにすることで、焼成前後のグリーンシート32Sの収縮率を、グリーンシート32S同士で揃えることができるので、焼成後の遮光層32の厚さのばらつきを小さくすることができる。なお、ここでの密度が等しいとは、密度(g/cm
3)の差が10%以内であることを指す。グリーンシート31S、32Sの主材料として、例えば、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素等が挙げられる。グリーンシート32Sはさらに、主材料に光吸収体を混合する。混合する光吸収体としては、例えば、酸化ルテニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0041】
セラミックシート20Sは、例えば、蛍光体の粉末、バインダ、溶剤等を含有するスラリーを調整し、ドクターブレード法等の公知の方法により蛍光体グリーンシートとし、蛍光体グリーンシートを所定温度で焼成することで得られる。セラミックシート20Sは、高密度化するために後述の焼成工程における焼成温度よりも高い温度で焼成されることが好ましい。セラミックシート20Sは、厚さが最終的に作製される波長変換部材10の発光部20の1辺と同じになるように作製する。セラミックシート20Sに含まれる蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG)、ユウロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)2SiO4)、αサイアロン蛍光体、βサイアロン蛍光体等が挙げられる。
【0042】
各シートは、最も大きな面を上面とする上面視で、例えば略同じ大きさの長方形であることが好ましい。各シートを上面視で長方形とすることで、棒状の波長変換部材10を作製する場合には、後述する切断工程の際に、効率的に波長変換部材10を作製することができる。また、切断工程後に廃棄する部分を少なくすることができる。なお、各シートの上面視における形状はこれに限定されず、平行四辺形、円形、楕円形、その他の形状であってもよい。
【0043】
次に、
図3の矢印上側に示すように、グリーンシート31S、グリーンシート32S、及びグリーンシート31Sがこの順番で積層された積層体30Sを複数個作製する。さらに、後に作製する波長変換部材10の発光部20間のピッチが所望の大きさとなるように、積層体30Sの厚みを加圧等で調整する。後の加圧工程、焼成工程を考えて、積層体30Sの厚みは、波長変換部材10の発光部20間のピッチの1.2倍から2倍とすることが望ましい。そして、
図3の矢印下側に示すように、複数の積層体30Sと複数のセラミックシート20Sとを交互に積層して複合体100を作製する(複合体作製工程)。
図3の例では、最も下側に配置されるセラミックシート20Sの下層及び最も上側に配置されるセラミックシート20Sの上層にそれぞれグリーンシート31Sが配置されている。なお、複合体100は、
図3に示す下側のシートから順番に積層して作製してもよい。
【0044】
先に3枚のグリーンシート31S、32Sを重ねて、積層体30Sを複数個作製し、複数の積層体30Sと複数のセラミックシート20Sとを交互に積層して複合体100を作製することにより、後述する複合体100の加圧工程でのそれぞれの積層体30Sの収縮のムラを低減できる。また、グリーンシート31S及びグリーンシート32Sをそれぞれ所望の厚さに調整して、セラミックシート20Sと合わせて1枚ずつ重ねるのに比べて、3枚のグリーンシートを重ねて積層体30Sを所望の厚みに調整し、セラミックシート20Sと重ねることで、後の波長変換部材10の発光部20のピッチ間となる積層体30Sの厚みについて、誤差を小さくすることができ、それぞれの積層体30S間での厚みのばらつき抑制することができる。なお、
図3では、グリーンシート31S及び32Sの全てに参照符号を付す代わりに、グリーンシート31Sとグリーンシート32Sとを密度の異なるドットパターンで示している。以降の
図4~
図6についても同様である。
【0045】
次に、
図3に示す複合体100を加圧及び焼成し、
図4に示す複合体100Aを作製する。具体的には、まず、
図3に示す複合体100を上下面から加圧する(加圧工程)。複合体100の加圧は、例えば、冷間等方圧加圧装置等で行うことができる。加圧工程において、複合体100の加圧は、80MPa以上の圧力下で行うことが好ましい。複合体100の加圧は、より好ましくは100MPa以上である。これにより、グリーンシート31S及び32Sの密度を高くできるため、焼成時のグリーンシート31S及び32Sの収縮率を低く抑えることが可能となり、焼成時にグリーンシート31S及び32Sに割れが生じることを抑制できる。また、焼成後のグリーンシート31S及び32Sの厚さのばらつきを低減できる。また、焼成後のグリーンシート31S及び32Sの厚さを薄くすることが可能となり、発光部20のピッチが狭い波長変換部材10を実現できる。
【0046】
続いて、加圧後の複合体100を焼成して複合体100Aを得る(焼成工程)。焼成工程において、焼成温度は、例えば、1300~1500℃である。複合体100の焼成は、例えば、ホットプレス等で行うことができる。この際、複合体100を上下面から加圧しながら焼成を行うことが好ましい。焼成工程における複合体100の加圧は、加圧工程における複合体100の加圧よりも低い。焼成工程において、複合体100の加圧は、例えば、10MPa以下である。なお、加圧工程と焼成工程を同時に行ってもよい。つまり、複合体100を例えば100MPa以上に加圧しながら、焼成を行ってもよい。
【0047】
複合体100を加圧及び焼成する工程の前後において、セラミックシート20Sの収縮率は、積層体30の収縮率よりも小さい。すなわち、セラミックシート20Sは、複合体作製工程よりも前に焼成工程における焼成温度よりも高い温度で焼成されているため、複合体100を加圧及び焼成する工程の前後で、積層方向に関してほとんど収縮しない。一方、グリーンシート31S及び32Sは、加圧工程で20~30%程度、焼成工程で10%程度、積層方向に関して収縮する。つまり、複合体100Aにおいて、セラミックシート20Sの厚さは複合体100と変わらないが、グリーンシート31S及び32Sの厚さは複合体100よりも薄くなる。グリーンシート31S及び32Sが薄くなることで、セラミックシート20Sのピッチを狭くすることができる。なお、焼成後の複数の積層体30Sの積層方向の長さは、それぞれ等しいことが好ましい。これにより、最終的に作製される波長変換部材10において、発光部20のピッチを均一化できる。ここで、等しいとは、±10%以内の差を許容する。
【0048】
次に、
図5及び
図6に示すように、複合体100Aを切断して、複数の波長変換部材10を作製する。図示される例において、積層方向と第1方向Xが一致する。複合体100Aは、例えば、ワイヤーソーを用いて切断することができる。まず、
図5に示すように、複合体100Aを第1方向Xと第2方向Yにより構成される第1平面に平行な平面で切断する。第1平面に平行な切断面は、複合体100Aの積層方向(第1方向X)に平行である。
図5の例では、複合体100Aを第2方向Yに平行な複数の一点鎖線CL1に沿って積層方向に切断し、複数の複合体100Bを作製する。
図5の例では、一点鎖線CL1が14本あり、15個の複合体100Bが作製される。一点鎖線CL1の本数は任意であり、
図5の例には限定されない。なお、ここでの平行あるいは垂直は、±5度以内の差を許容する。
図6の説明においても同様である。
【0049】
ここで、複合体や波長変換部材において、積層方向(第1方向X)に平行な直線に垂直でない面を積層面と呼ぶものとする。さらに詳しくは、積層面は、複合体の積層方向(第1方向X)に平行な直線に平行な面である。図示される複合体は、積層面を4つ有する。例えば、
図5に示す複合体100Bでは、積層方向(第1方向X)に平行な4つの側面が積層面であり、具体的には、XY平面に平行な2つの側面、XZ平面に平行な2つの側面が積層面である。図示される例において、YZ平面と平行な2つの側面は、積層面に含まれない。つまり、1つのシートや層の側面、例えばセラミックシート20Sや光反射層31の側面しか有さない面は、積層面とは呼ばない。2以上のシートや層の側面を有する面を、積層面と呼ぶ。積層面は、切断前の複合体100Aの側面の一部又は全部であった面を含む。また、積層面は、前述の切断した際に形成された切断面を含み、第1平面に平行な切断面、及び後述する第2平面に平行な切断面は、複数のセラミックシート20S及び積層体30Sが積層した積層面に含まれる。
【0050】
複合体100Bを作製後、複合体100Bの積層面を研削する工程を有する。具体的には、前述した切断工程で形成された切断面を含む、第1平面に平行な2つの積層面(XY平面に平行な積層面)を研削する。複合体100Bの2つの積層面を研削することで、各セラミックシート20Sの第3方向Zの厚さのばらつきを低減できる。また、各セラミックシート20Sの第3方向Zの厚さを所望の厚さに調整できる。さらに、上述の2つの積層面を研磨する研磨工程を設けることができる。2つの積層面を研磨することで、複合体100Bの2つの積層面の面精度を向上できる。例えば、研磨された積層面を、後に個片化されて作製される波長変換部材10の上面又は下面とすることができる。なお、4つの積層面のすべてを研削、研磨しても良いし、研磨工程を設けなくてもよい。
【0051】
次に、
図6に示すように、複合体100Bを第1方向Xと第3方向Zにより構成される第2平面に平行な平面で切断する。第2平面に平行な平面で切断した切断面は、複合体100Bの第1方向X(積層方向)に平行な方向である。第1平面と第2平面は、第1方向X(積層方向)に平行な平面である。つまり、切断工程において切断の際に形成される切断面は、積層方向に平行である。積層方向に垂直な平面では、複合体100A、及び100Bは切断されない。
図6の例では、複合体100Bを第1方向Xに平行な複数の一点鎖線CL2に沿って垂直方向に切断し、複数の波長変換部材10を作製する。
図6の例では、一点鎖線CLが3本あり、1個の複合体100Bから4個の波長変換部材10が作製される。
図5の工程で15個の複合体100Bが作製されているため、この工程では合計で60個の波長変換部材10が作製される。一点鎖線CL2の本数は任意であり、
図6の例には限定されない。作製された波長変換部材10において、反射部材を有するグリーンシート31Sが焼成されて形成される層及び遮光部材を有するグリーンシート32Sが焼成されて形成される層は、セラミックから構成されており、遮光部材は、光吸収体を含む。
【0052】
第1平面と第2平面は、交差する。第1平面と第2平面は、直交することが好ましい。このとき、第1平面と平行な平面で切断した際に形成された切断面と第2平面と平行な平面で切断した際に形成された切断面とは直交する。切断する平面同士が直交することにより、例えば矩形のシートを積層させて複合体100を作製する場合に、効率的に棒状の波長変換部材10を作製できる。このとき、波長変換部材10の上面、下面、及び側面は矩形となる。なお、2つの切断面が交差する角度は直角に限定されない。2つの平面で切断を行うことで、複合体100の形状にかかわらず、所望の形状の波長変換部材10を複数製造することができる。なお、1つの平面での切断のみで所望の形状の波長変換部材10を複数製造できる場合には、2つの平面での切断は不要である。このような場合として、例えば、波長変換部材の一辺が極端に短い場合や、小数個の波長変換部材のみを作製する場合等が挙げられる。
【0053】
複合体作製工程は、
図3に示すような、複数の積層体30Sと複数のセラミックシート20Sとを交互に積層する工程には限定されない。複合体作製工程は、例えば、
図7に示すように、1つの積層体30Sと1つのセラミックシート20Sとを積層して複合体100Cを作製する工程であってもよい。また、複合体作製工程は、
図8に示すように、1つの積層体30Sの両側に、それぞれセラミックシート20Sを積層して複合体100Dを作製する工程であってもよい。
図7や
図8に示す複合体を作製する場合にも、本発明に係る波長変換部材の製造方法は有効である。
【0054】
本明細書において、「セラミックシート20Sと積層体30Sを交互に積層する工程」とは、
図7及び
図8に示される複合体を作製する工程を含むものとする。また、「複数のセラミックシート20Sと積層体30Sを交互に積層する工程」とは、
図7に示される複合体を作製する工程を含まず、
図8に示される複合体を作製する工程を含むものとする。「複数のセラミックシート20Sと複数の積層体30Sを交互に積層する工程」とは、
図7及び
図8に示す複合体を作製する工程を含まない。
【0055】
このように、第1実施形態に係る波長変換部材10の製造方法では、隣接する発光部20からの光の伝搬を抑制する効果を向上させた波長変換部材10の製造方法を実現できる。また、第1実施形態に係る波長変換部材10の製造方法では、発光部20のピッチは、グリーンシート31Sを焼成して作製した光反射層31及びグリーンシート32Sを焼成して作製した遮光層32の厚さで決まる。また、グリーンシート31S及び32Sの密度を調整することで、焼成工程におけるグリーンシート31S及び32Sの収縮によって生じる誤差を小さくできるため、グリーンシート31S及び32Sをあらかじめ決まった厚さとすることで、形成される波長変換部材10において、発光部20のピッチを、ほぼ一定とすることができる。つまり、複数の発光部20が高い位置精度で配置された波長変換部材10を作製できる。
【0056】
(波長変換部材の変形例)
図9は、第1実施形態の変形例1に係る波長変換部材の斜視図である。
図1に示す波長変換部材10では、積層方向(第1方向X)の両端に光反射層31が配置されていたが、
図9に示す波長変換部材10Aのように、積層方向の両端に光反射層31が配置されていなくてもよい。波長変換部材10Aでは、積層方向の両端は発光部20である。言い換えると、波長変換部材10Aの積層方向(第1方向X)に垂直な2つの側面は、発光部20の側面となる。波長変換部材10Aのように、積層方向の両端に光反射層31を配置しなくても、隣接する発光部20に別々の光が入射した場合に、それぞれの光が干渉することを抑制する効果が得られる。
【0057】
波長変換部材10Aは、
図3に示す工程で、複数のセラミックシート20Sのうち最も下側に配置されるセラミックシート20Sの下層及び最も上側に配置されるセラミックシート20Sの上層にグリーンシート31Sを配置せずに複合体を作製し、その後
図4~
図6と同様の工程により作製できる。
【0058】
図10は、第1実施形態の変形例2に係る波長変換部材の斜視図である。
図10に示す波長変換部材10Bのように、積層方向の両端に、発光部20に近い側から光反射層31及び遮光層32が順次配置されていてもよい。積層方向から見る平面視において、遮光層32の側面が、波長変換部材10Bの側面となる。波長変換部材10Bの側面となる遮光層32の側面と反対側の側面に接するように、光反射層31が配置されている。
図11は、第1実施形態の変形例3に係る波長変換部材の斜視図である。
図11に示す波長変換部材10Cのように、積層方向の両端は、積層体30であってもよい。積層方向から見る平面視において、光反射層31の側面が、波長変換部材10Cの側面となる。さらに、波長変換部材10Cの側面となる光反射層31の側面と接するように、遮光層32、光反射層31、発光部20がこの順で配置されている。波長変換部材10、10B、及び10Cのように、積層方向の両端に光反射層31、光反射層31と遮光層32の積層体、または積層体30が配置されていると、積層方向の両端に最も近い2つの発光部20と、その他の発光部20との間で、発光部20から積層方向に滲み出す光の量を均一化または均一に近づけることができる点で好ましい。これにより、発光部20間の色ムラや輝度ムラを低減できる。
【0059】
波長変換部材10Bは、
図3に示す工程で、最も下側のグリーンシート31Sの下層及び最も上側のグリーンシート31Sの上層にグリーンシート32Sを配置して複合体を作製し、その後
図4~
図6と同様の工程により作製できる。波長変換部材10Cは、
図3に示す工程で、複数のセラミックシート20Sのうち最も下側に配置されるセラミックシート20Sの下層及び最も上側に配置されるセラミックシート20Sの上層に、グリーンシート31Sに代えて積層体30を配置して複合体を作製し、その後
図4~
図6と同様の工程により作製できる。
【0060】
〈第2実施形態〉
図12は、第2実施形態に係る波長変換部材の斜視図である。
図12では、参考のために互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を示されている。X軸、Y軸、及びZ軸と平行な方向を、それぞれ第1方向X、第2方向Y、第3方向Zとしている。本実施形態に係る波長変換部材は、
図12に示す波長変換部材10Dのように、第1実施形態に係る波長変換部材10に、さらに光反射部40を有する。以下の説明では、波長変換部材10Dと、波長変換部材10を区別するため、波長変換部材10を積層部15と呼ぶ。なお、波長変換部材10Dは、積層部15として、波長変換部材10の代わりに、波長変換部材10A、10B、10Cのいずれかを有するものであってよい。
【0061】
光反射部40は、例えば、矩形状の開口を有する枠状部材である。光反射部40は、上面と、上面の反対面である下面と、上面の内縁と下面の内縁とを接続する1又は複数の内側面と、上面の外縁と下面の外縁とを接続する1又は複数の外側面とを有する。上面の外縁及び内縁、下面の外縁及び内縁は、例えば、矩形である。この場合、光反射部40は、4つの矩形の内側面と、4つの矩形の外側面とを有する。なお、上面の外縁及び内縁、下面の外縁及び内縁は、矩形には限定されず、円形、楕円形、多角形等の任意の形状とすることが可能である。
【0062】
光反射部40は、例えば、セラミックを主材料として形成された焼結体である。主材料に用いられるセラミックとしては、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、酸化アルミニウムは高反射率である点で好ましい。また、酸化アルミニウムは、これらのセラミックの中では比較的熱伝導率が高いという点でも好ましい主材料である。なお、光反射部40は、セラミックを主材料としなくてもよい。
【0063】
波長変換部材10Dにおいて、上面視で、光反射部40は、積層部15の2つの積層面と、積層方向と垂直な2つの側面とを囲う。つまり、光反射部40の内側面は、積層部15の4つの積層面のうち、2つの積層面と接続する。他の2つの積層面は、光反射部40の内側面と接続しない。詳細には、光反射部40は、各発光部20の2つの側面と、各積層体30の2つの側面と、波長変換部材10の積層方向の2つの側面、つまり、両端に位置する2つの光反射層31の積層方向に垂直な面と接続する。波長変換部材10Dは、平板形状であり、例えば、直方体である。
【0064】
光反射部40の内側面と接続しない積層部15の2つの積層面は、波長変換部材10Dの上面及び下面の一部となりうる。このとき、積層部15の上面と光反射部40の上面は、例えば、連続する1つの平面を形成する。また、積層部15の下面と光反射部40の下面は、例えば、連続する1つの平面を形成する。なお、積層部15の上面及び/又は下面は、光反射部40の上面及び/又は下面よりも突出した形状であってもよい。この場合は、積層部15の4つの側面は、その一部が、光反射部40の内側面から露出する。
【0065】
波長変換部材10Dは、例えば、スリップキャスト方式で製造可能である。具体的には、波長変換部材10Dの製造方法は、
図6に示す工程で切断した複合体100B(この場合、波長変換部材10と同一構造の積層部15)の周囲に、セラミック材料を含む部材を配置し、切断した複合体100Bの2つの積層面と接続する光反射部40を形成する工程を含む。また、光反射部40を形成する工程は、切断した複合体100Bの2つの積層面の周囲に、セラミック材料を含む液状の部材を配置し、焼成させる工程を含む。なお、本明細書において、セラミックは焼成後のものを指し、セラミック材料は焼成前のものを指す。
【0066】
積層部15の周囲にセラミック材料を含む液状の部材を配置し、焼成させることで、形成される光反射部40の、積層部15との境界付近に空隙を多く含ませて空隙率を高め、反対に積層部15から遠い外縁付近の空隙率を境界付近に比べて低くすることができる。光反射部40の境界付近の空隙率を高くすることで、積層部15との境界付近での光反射率を高めることができる。また、光反射部40の外縁付近の空隙率を低くすることで、外縁付近の密度を高めることができ、波長変換部材10D全体の強度を確保することができる。
【0067】
光反射部40は、積層部15との境界付近の密度が、反射部材を有するグリーンシート31Sが焼成されて形成される光反射層31の密度よりさらに低いことが好ましい。上述したように、積層部15との境界付近の光反射部40の空隙率を高めることで、各発光部20の側面と光反射部40の内側面との境界に空気による反射領域がより多く形成され、各発光部20側から光反射部40の内側面に当たる光を各発光部20側に反射させる効果を高めることができる。このような構造を有することで、波長変換部材10Dの光取出し効率を高めることができる。空隙率は、焼結条件(焼結温度、焼結時間、昇温速度)、材料の種類や粒径、焼結助剤の濃度等により調整できる。
【0068】
例えば、
図12に示す波長変換部材10Dにおいて、積層部15の上面の第2方向Yに延伸する2辺のそれぞれの中点を結ぶ直線を通るように積層方向(第1方向X)に切断した縦断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察した場合に、光反射部40に含まれる空隙の割合(例えば面積比)が、光反射層31に含まれる空隙の割合よりも高い場合は、光反射部40は光反射層31より低密度であると判断できる。
【0069】
〈第3実施形態〉
第3実施形態では、第2実施形態に係る波長変換部材を用いた発光装置の例を示す。
図13は、第3実施形態に係る発光装置の上面図である。
図14は、
図13のXIV-XIV断面線で切った発光装置の断面図である。
図15は、第3実施形態に係る発光装置から波長変換部材、透光性部材及び遮光部材を除いた状態の上面図である。
図13乃至
図15において、参考のために互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を示している。X軸、Y軸、及びZ軸と平行な方向を、それぞれ第1方向X、第2方向Y、第3方向Zとしている。
【0070】
第3実施形態に係る発光装置は、複数の発光素子と、波長変換部材とを有し、複数の発光素子のそれぞれから出射された光は、波長変換部材の異なる発光部に入射し、それぞれの発光部は、入射する光を異なる波長の光に変換する。
【0071】
図示される発光装置200は、第3実施形態に係る発光装置の一例である。発光装置200は、波長変換部材10Dと、パッケージ210と、複数の発光素子220と、1又は複数のサブマウント230と、1又は複数の光反射部材240と、透光性部材280と、遮光部材290とを有する。
【0072】
発光装置200の各構成要素について説明する。波長変換部材10Dの説明は省略する。
【0073】
(パッケージ210)
パッケージ210は、基部211と、基部211を囲み、上方に延伸する枠部212を有する。また、枠部212は、その内側に段差部213を有する。基部211は、上面211a、下面を有する。枠部212は、上面212a、1又は複数の内側面212c、1又は複数の外側面212dを有する。段差部213は、枠部212の内側に設けられ、枠部の内側面212cと接続する上面213aを有する。段差部213の上面213aは、基部の上面211aよりも上方に位置し、枠部の上面212aよりも下方に位置する。図示される枠部212の上面212aには、複数の電極が設けられている。
【0074】
パッケージ210は、例えば、セラミックを主材料として形成できる。例えば、セラミックとして、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、又は炭化ケイ素を用いることができる。なお、パッケージ210は、セラミックに限らず、例えば金属等の他の材料を主材料に用いて形成してもよい。
【0075】
(発光素子220)
発光素子220は、例えば、半導体レーザ素子である。発光素子220は、半導体レーザ素子に限らず、例えば、発光ダイオード(LED)や有機発光ダイオード(OLED)などであってもよい。
【0076】
発光素子220は、例えば、上面視で長方形の外形を有する。また、長方形の2つの短辺のうちの一辺と交わる側面が、発光素子220から出射される光の出射面となる。また、発光素子220の上面及び下面は、出射面よりも面積が大きい。
【0077】
ここで、発光素子220が半導体レーザ素子である場合について説明する。なお、発光素子220から出射される光(レーザ光)は拡がりを有し、出射面と平行な面において楕円形状のファーフィールドパターン(以下「FFP」という。)を形成する。ここで、FFPとは、出射面から離れた位置における出射光の形状や光強度分布を示す。
【0078】
発光素子220から出射される楕円形状の光に基づき、楕円形状の長径を通る方向をFFPの速軸方向、楕円形状の短径を通る方向をFFPの遅軸方向とする。発光素子220におけるFFPの速軸方向は、発光素子220の活性層を含む複数の半導体層が積層される積層方向と一致し得る。
【0079】
また、発光素子220のFFPの光強度分布に基づいて、ピーク強度値に対する1/e2以上の強度を有する光を、主要部分の光と呼ぶものとする。また、この光強度分布において1/e2の強度に相当する角度を拡がり角と呼ぶものとする。FFPの速軸方向における拡がり角は、FFPの遅軸方向における拡がり角よりも大きい。
【0080】
また、FFPの楕円形状の中心を通る光、言い換えると、FFPの光強度分布においてピーク強度の光を、光軸を進む光、あるいは、光軸を通る光、と呼ぶものとする。また、光軸を進む光の光路を、その光の光軸、と呼ぶものとする。
【0081】
発光素子220として、例えば、青色の光を出射する半導体レーザ素子を採用することができる。
【0082】
ここで、青色の光は、その発光ピーク波長が420nm~494nmの範囲内にある光をいうものとする。例えばYAG蛍光体と組み合わせて半導体レーザ素子を用いる場合、その励起効率を考慮すると、ピーク波長が480nm以下である光を出射する半導体レーザ素子を用いることが好ましい。
【0083】
青色の光を発する半導体レーザ素子として、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。窒化物半導体としては、例えば、GaN、InGaN、及びAlGaNを用いることができる。なお、発光素子220として、青色以外の光を出射する半導体レーザ素子を用いてもよい。
【0084】
(サブマウント230)
サブマウント230は、例えば、直方体の形状で構成され、下面、上面、及び、複数の側面を有する。なお、サブマウント230の形状は直方体に限らなくてよい。サブマウント230は、例えば、窒化アルミニウム、又は炭化ケイ素を用いて形成されるが、他の材料を用いてもよい。また、サブマウント230の上面には、例えば、金属膜が設けられている。
【0085】
(光反射部材240)
光反射部材240は、光を反射する光反射面を有する。光反射面は、例えば、照射された光のピーク波長に対する光反射率が90%以上となる面である。ここでの光反射率は100%であってもよいし、100%未満であってもよい。光反射面は、下面に対して傾斜している。下面に対する光反射面の傾斜角は、例えば、45度である。
【0086】
光反射部材240は、主材料に熱に強い材料を選択することが好ましく、例えば、石英又はBK7(硼珪酸ガラス)等のガラス、アルミニウム等の金属、又はSiを用いることができる。また、光反射面は、例えば、Ag、Al等の金属やTa2O5/SiO2、TiO2/SiO2、又はNb2O5/SiO2の誘電体多層膜を用いて形成できる。なお、A/Bは、Aの膜とBの膜が順番に積層された多層膜を示す。
【0087】
(透光性部材280)
透光性部材280は、透光性の部材である。ここで、透光性とは、入射する光のピーク波長に対する透過率が80%以上であることとする。透光性部材280は、上面と、上面の反対面である下面と、上面及び下面と交わる側面とを有する。側面は上面の外縁と下面の外縁とを接続する。透光性部材280は、例えば、直方体又は立方体である。この場合、透光性部材280の上面及び下面は何れも矩形であり、透光性部材280は4つの矩形の側面を有する。
【0088】
なお、透光性部材280は、直方体や立方体には限定されない。すなわち、上面視において、透光性部材280は矩形には限定されず、円形、楕円形、多角形等の任意の形状とすることが可能である。
【0089】
透光性部材280は、直方体等の平板形状で構成される母材を有する。透光性部材280の母材は、例えば、サファイアを主材料に用いて形成できる。サファイアは、比較的透過率が高く、比較的強度も高い材料である。なお、主材料には、サファイアの他に、例えば、石英、炭化ケイ素、又は、ガラス等を含む透光性の材料を用いてもよい。
【0090】
(遮光部材290)
遮光部材290は、例えば、遮光性を有する樹脂によって形成できる。ここで、遮光性とは、光を透過しない性質を示し、光を遮る性質の他、光を吸収する性質や反射する性質等を利用して、遮光性を実現してもよい。遮光部材290は、例えば、樹脂に、光拡散材及び/又は光吸収材等のフィラーを含有させることで形成できる。
【0091】
遮光部材290を形成する樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、BTレジン等が挙げられる。また、遮光部材290に含有される光吸収性のフィラーとしては、カーボンブラック等の暗色系の顔料等が挙げられる。
【0092】
(発光装置200)
図示される発光装置200の例では、波長変換部材10Dは、透光性部材280の上面に接合する。波長変換部材10Dは、例えば、上面視で透光性部材280よりも小さい。透光性部材280は、その上面において、波長変換部材10Dの下面と接合する。、上面視で、波長変換部材10Dの各発光部20は、透光性部材280の上面の外縁形状の内側に位置する。
【0093】
透光性部材280の下面の外周部は、例えば、パッケージ210の枠部212の内側に設けられた段差部213の上面213aと接合される。透光性部材280がパッケージ210に接合されることで、発光素子220が配された閉空間が形成される。このように、発光装置200では、透光性部材280は蓋部材としての役割を果たすことができる。また、この閉空間は気密封止された状態で形成される。気密封止されることで、発光素子220の出射面に有機物等が集塵することを抑制できる。
【0094】
図示される発光装置200の例では、基部211の上面211aに、5つの光反射部材240が配置されている。5つの光反射部材240は、例えば、同一の金属膜の上に配置され、金属膜の下面が基部211の上面211aに接合されている。5つの光反射部材240は、それぞれ異なる金属膜の上に配置されてもよい。5つの光反射部材240は、例えば、上面視でX方向に所定間隔で配置されている。
【0095】
図示される発光装置200の例では、基部211の上面211aに、1つのサブマウント230が配置されている。サブマウント230は、金属膜の上に配置され、金属膜の下面が基部211の上面211aに接合されている。サブマウント230は、例えば、上面視で矩形状であり、矩形の長辺をX方向に向けて配置されている。また、サブマウント230は、光反射部材240が配置されている金属膜に配置されている。なお、サブマウント230と光反射部材240は、異なる金属膜に配置されてもよい。金属膜の上に、複数のサブマウント230が配置されてもよい。
【0096】
各発光素子220は、基部211の上面211aに配置される。具体的には、各発光素子220は、サブマウント230の上面に配置されている。図示される発光装置200の例では、5つの発光素子220が、同一のサブマウント230の上面に配置され、サブマウント230の下面が基部211の上面211aに接合されている。また、5つの発光素子220は、例えば、上面視で矩形状であり、矩形の長辺をY方向に向けて、X方向に所定間隔で配置されている。各発光素子220は、上面視で、出射面が、枠部212の内側面212c又は外側面212dと平行又は垂直になる。各発光素子220は、出射面を同一方向に向けて配置されている。各発光素子220は、それぞれ異なるサブマウント230の上面に配置されてもよい。
【0097】
各光反射部材240は、各発光素子220側に傾斜する光反射面を備えている。各発光素子220のそれぞれで、出射面から出射された光は、対応する光反射部材240の光反射面に照射される。対応する光反射部材240とは、上面視で各発光素子220の出射面と対向する面を有する光反射部材240である。少なくとも主要部分の光が光反射面に照射されるように、発光素子220は配置される。
【0098】
各発光素子220によって出射された光の主要部分は、対応する光反射部材240の光反射面で反射されて透光性部材280に入射する。各光反射部材240の光反射面で反射される光の主要部分は、透光性部材280を透過した後に、各発光部20に入射する。各発光部20に入射した光の一部あるいは全部は、各発光部20によって異なる波長の光に変換される。各発光部20に入射した光または各発光部20で波長変換された光が、各発光部20の上面から発光装置200の外部に出射される。発光装置200において、各発光素子220は、独立に駆動することが可能である。
【0099】
遮光部材290は、透光性部材280の上方に形成されている。遮光部材290は、パッケージ210の枠部212と波長変換部材10との隙間を埋めるようにして形成される。遮光部材290は、例えば、熱硬化性の樹脂を流し込み、これを熱で硬化させることで形成できる。遮光部材290を設けることで光の漏れを抑制する。
【0100】
遮光部材290は、波長変換部材10Dの上面には達しない。あるいは、遮光部材290は、波長変換部材10Dの光反射部40の上面に達したとしても、発光部20の上面には達しない。
【0101】
発光装置200では、波長変換部材10Dにおいて複数の発光部20が高い位置精度で配置されているため、各光反射部材240の光反射面で反射される光の主要部分を、対応する発光部20に確実に入射させることができる。また、発光装置200では、積層体30により、隣接する発光部20からの光の伝搬を抑制できるため、隣接する発光部20で光の干渉を実質的に起こすことなく、それぞれの発光部20に独立に光を入射し、発光部20で波長変換された光を出射できる。
【0102】
発光装置200は、例えば、車載ヘッドライトに利用できる。また、発光装置200は、これに限らず、照明、プロジェクター、ヘッドマウントディスプレイ、その他ディスプレイのバックライト等の光源に利用できる。
【0103】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、前述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、前述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0104】
10,10A,10B,10C,10D 波長変換部材
15 積層部
20 発光部
20S セラミックシート
30,30S 積層体
31 光反射層
31S,32S グリーンシート
32 遮光層
40 光反射部
100,100A,100B,100C,100D 複合体
200 発光装置
210 パッケージ
211 基部
211a 上面
212 枠部
212a 上面
212c 内側面
212d 外側面
213 段差部
213a 上面
220 発光素子
230 サブマウント
240 光反射部材
280 透光性部材
290 遮光部材