(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073793
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230519BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20230519BHJP
B08B 7/00 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H01L21/304 643Z
H01L21/304 648A
H01L21/68 A
B08B7/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186477
(22)【出願日】2021-11-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 良樹
(72)【発明者】
【氏名】渕上 慶太
【テーマコード(参考)】
3B116
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
3B116AA03
3B116AB13
3B116BB21
5F131AA02
5F131BA37
5F131CA12
5F131CA32
5F131DA32
5F131DA42
5F131DA62
5F131DB12
5F131DB14
5F131DB52
5F131DB53
5F131DB62
5F131DB76
5F131DB82
5F157AA03
5F157AA08
5F157AA73
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB36
5F157AC01
5F157BA06
5F157BG13
5F157BG62
5F157BG86
5F157BG94
5F157CF70
5F157CF74
5F157CF80
5F157CF94
(57)【要約】
【課題】半導体ウエハ表面のパーティクル等の量を低減できるとともに、氷形成に伴う洗浄効率の低下を防止でき、大量の半導体ウエハの連続的且つ効果的な洗浄処理が可能な半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法を提供する。
【解決手段】半導体ウエハWが順次搬入されるとともに、半導体ウエハWを洗浄するための内部空間11を有する洗浄室1と、洗浄室1の内部空間11に配置され、半導体ウエハWの洗浄面に向けてドライアイスDを噴射する噴射洗浄ノズル5と、洗浄室1の内部空間11に配置され、半導体ウエハWを洗浄室1の外部から内部空間11へ順次搬入する搬送ロボット2と、を備え、搬送ロボット2が、内部空間11に搬入した半導体ウエハWを非水平に保持した状態で、噴射洗浄ノズル5が、半導体ウエハWにドライアイスDを噴射する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハにドライアイスを噴射することにより、前記半導体ウエハの洗浄面に付着した不純物を除去する、半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置であって、
前記半導体ウエハが順次搬入されるとともに、前記半導体ウエハを洗浄するための内部空間を有する洗浄室と、
前記洗浄室の内部空間に配置され、前記半導体ウエハの洗浄面に向けて前記ドライアイスを噴射する噴射洗浄ノズルと、
前記洗浄室の内部空間に配置され、前記半導体ウエハを、前記洗浄室の外部から前記内部空間へ順次搬入する搬送ロボットと、を備え、
前記搬送ロボットが、前記内部空間に搬入した前記半導体ウエハを非水平に保持した状態で、前記噴射洗浄ノズルが、前記半導体ウエハに前記ドライアイスを噴射することを特徴とする半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置。
【請求項2】
前記搬送ロボットは、
前記半導体ウエハを保持する背板を含む保持部と、
前記保持部を非水平状態に支持可能であるとともに、前記保持部を、前記洗浄室の内部空間において移動自在に支持するアーム部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置。
【請求項3】
前記搬送ロボットが、前記内部空間に搬入した前記半導体ウエハを、鉛直方向に対して0°~30°の角度で、前記半導体ウエハが垂直、又は、該半導体ウエハの洗浄面側が斜め上向きとなるように保持することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置。
【請求項4】
前記噴射洗浄ノズルが、前記半導体ウエハの洗浄面への直交方向に対して0°~80°の角度で、前記半導体ウエハの洗浄面に直交するか、又は、前記半導体ウエハの洗浄面への直交方向よりも下向きとなる方向で前記ドライアイスを噴射することを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄室の内部空間に、さらに、浄化ガスを、前記洗浄室の天井部側から床部側に向かうようにダウンフローで循環させるファンフィルターユニットが備えられていることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか一項に記載の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置。
【請求項6】
前記ファンフィルターユニットは、前記浄化ガスとして、高純度窒素ガス又はクリーンドライエアを前記洗浄室の内部空間に循環させることを特徴とする請求項5に記載の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか一項に記載の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置を用いて、前記半導体ウエハに前記ドライアイスを噴射することにより、前記半導体ウエハの洗浄面に付着した不純物を除去する洗浄方法であって、
前記洗浄室の前記内部空間に搬入した前記半導体ウエハを非水平に保持した状態で、前記半導体ウエハに前記ドライアイスを噴射することを特徴とする半導体ウエハの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハの洗浄には、主としてウェット洗浄による方法が採用されている。これは、薬液を用いた洗浄方法であり、ウエハ上に存在するサブミクロンサイズのゴミ(パーティクル)や、金属汚れ、有機物、油脂、及び自然酸化膜等を除去する方法である。このような洗浄方法は、例えば、ウエハ上にパターニングを行うエッチング工程等においても採用されている。
【0003】
上述したウェット洗浄方法は、多くのメリットを有するものの、有害な薬液や排水の処理や、基板を乾燥させる工程が必要になる等、幾つかのデメリットもある。それらのデメリットを解消できる方法として、薬剤を使用しないドライ洗浄による方法が広く採用されるようになっている。ドライ洗浄方法は、ガスによる洗浄プロセスを採用していることから、廃液が発生せず、また、乾燥の工程も不要となる等のメリットがある。
【0004】
上記のような、ドライ洗浄によって半導体ウエハの表面を洗浄する方法として、半導体基板を構成する半導体ウエハ上に金属の薄膜を成膜し、エッチングにてパターニングする工程と、パターニング後にエッチング生成物によって構成されたフェンスを除去するドライアイス洗浄を行う工程とを含む、半導体装置の製造方法が提案されている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0005】
また、ドライ洗浄によって半導体ウエハの表面を洗浄する装置として、半導体ウエハをロボットで保持し、ドライアイスを噴射するノズルを半導体ウエハに近接させ、半導体ウエハの表面をなぞるようにノズルを移動させながら洗浄を行う洗浄装置が提案されている(例えば、下記非特許文献1を参照)。
【0006】
特許文献1及び非特許文献1に記載されたような、ドライアイスを用いた半導体ウエハの洗浄方法は、以前から工業的に活用されている方法であり、近年ではドライ洗浄方法の一つとして半導体製造分野にも利用されつつある方法である。このようなドライアイスを用いた洗浄方法は、上述した一般的なドライ洗浄方法と同様、廃液処理や乾燥工程が不要であり、被洗浄物へのダメージを抑制できる等の大きなメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】エア・ウォーター社,ニュースリリース,「複雑な形状でも高効率に洗浄できるシステムをNTN社と開発」,2017年3月29日,インターネット<URL:https://www.awi.co.jp/ja/business/news/news649299410893875824/main/0/link/e49c641bddc7e569edc8bebdbeb4eae2155254a3.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、上記のようなドライ洗浄方法は、除去しきれないパーティクルや微小なバリが半導体ウエハの表面に残存し、半導体ウエハの歩留まりが低下するという問題がある。特に、ドライアイスを用いた方法の場合、ドライアイスは、温度が-79℃と非常に低い温度であることから、例えば、周辺に水分が存在すると、氷を形成して昇華してしまい、所望の洗浄性能を得ることが難しい面もある。このため、半導体ウエハの表面に付着したパーティクル等を除去しきれず、洗浄後の半導体ウエハの表面にパーティクルが残存してしまうという問題がある。
【0010】
ここで、特許文献1に記載の洗浄方法では、半導体ウエハ上でパターニングを行った後に、エッチング生成物から構成されるフェンスを除去するドライアイス洗浄を行っているが、洗浄後の半導体ウエハの表面に存在する残渣については言及されておらず、パーティクルの除去効果は不明である。
【0011】
また、非特許文献1に記載の洗浄装置では、半導体ウエハの表面が上方を向いて設置されていることから、上方から落下してくるパーティクルが残存するのを抑制する効果には限界があった。
【0012】
近年、半導体回路の微細化に伴い、半導体装置の歩留まりや素子特性等をさらに高めることが、特に重要となっている。このため、半導体装置の製造時の歩留まりや素子特性に大きな影響を与える、洗浄後の半導体ウエハの表面に残存するパーティクルをさらに低減することが求められていた。
【0013】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、半導体ウエハの表面に残存するパーティクル等の量を低減できるとともに、大量の半導体ウエハを連続的且つ効果的に洗浄処理することが可能な半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を包含する。
本発明は、半導体ウエハにドライアイスを噴射することにより、前記半導体ウエハの洗浄面に付着した不純物を除去する、半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置であって、前記半導体ウエハが順次搬入されるとともに、前記半導体ウエハを洗浄するための内部空間を有する洗浄室と、前記洗浄室の内部空間に配置され、前記半導体ウエハの洗浄面に向けて前記ドライアイスを噴射する噴射洗浄ノズルと、前記洗浄室の内部空間に配置され、前記半導体ウエハを、前記洗浄室の外部から前記内部空間へ順次搬入する搬送ロボットと、を備え、前記搬送ロボットが、前記内部空間に搬入した前記半導体ウエハを非水平に保持した状態で、前記噴射洗浄ノズルが、前記半導体ウエハに前記ドライアイスを噴射することを特徴とする半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置を提供する。
【0015】
本発明によれば、搬送ロボットが、半導体ウエハを非水平に保持した状態で、噴射洗浄ノズルが、半導体ウエハにドライアイスを噴射する構成を採用することにより、半導体ウエハの表面に付着したパーティクルやバリ等を効果的に除去できる。これにより、半導体ウエハの表面に残存するパーティクル等の量を低減できるとともに、大量の半導体ウエハを連続的且つ効果的に洗浄処理することが可能となる。
【0016】
また、本発明の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置は、上記構成において、前記搬送ロボットが、前記半導体ウエハを保持する背板を含む保持部と、前記保持部を非水平状態に支持可能であるとともに、前記保持部を、前記洗浄室の内部空間において移動自在に支持するアーム部と、を有する構成を採用することができる。
【0017】
本発明によれば、上記のような、背板を含む保持部とアーム部とを有する搬送ロボットを備えることにより、噴射洗浄ノズルから噴射されるドライアイスを高圧とした場合においても、半導体ウエハが背板によって安定して支持される。これにより、高圧のドライアイスによって半導体ウエハが変形したり、破損したりするのを防止できる。
【0018】
また、本発明の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置は、上記構成において、前記搬送ロボットが、前記内部空間に搬入した前記半導体ウエハを、鉛直方向に対して0°~30°の角度で、前記半導体ウエハが垂直、又は、該半導体ウエハの洗浄面側が斜め上向きとなるように保持する構成であることがより好ましい。
【0019】
本発明によれば、搬送ロボットが、半導体ウエハを上記角度で保持し、半導体ウエハが垂直、又は、半導体ウエハの洗浄面側が斜め上向きとなるように保持することで、半導体ウエハの表面に付着したパーティクルやバリ等が、噴射洗浄ノズルから噴射されるドライアイスによって効果的に落下する。これにより、上記のような、半導体ウエハの表面に残存するパーティクル等の量を低減できる効果がより顕著に得られる。
【0020】
また、本発明の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置は、上記構成において、前記噴射洗浄ノズルが、前記半導体ウエハの洗浄面への直交方向に対して0°~80°の角度で、前記半導体ウエハの洗浄面に直交するか、又は、前記半導体ウエハの洗浄面への直交方向よりも下向きとなる方向で前記ドライアイスを噴射する構成であることがより好ましい。
【0021】
本発明によれば、噴射洗浄ノズルが、半導体ウエハの洗浄面に直交するか、又は、半導体ウエハの洗浄面への直交方向よりも下向きとなる方向でドライアイスを噴射することで、半導体ウエハの表面に付着したパーティクルやバリ等が、噴射洗浄ノズルから噴射されるドライアイスによってより効果的に落下する。これにより、半導体ウエハの表面に残存するパーティクル等の量をより効果的に低減できる。
【0022】
また、本発明の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置は、上記構成において、前記洗浄室の内部空間に、さらに、浄化ガスを、前記洗浄室の天井部側から床部側に向かうようにダウンフローで循環させるファンフィルターユニットが備えられた構成を採用してもよい。
【0023】
本発明によれば、上記構成のファンフィルターユニットを備え、浄化ガスが洗浄室内においてダウンフローで循環することにより、半導体ウエハの表面に付着したパーティクルやバリ等が、噴射洗浄ノズルから噴射されるドライアイスによって剥離された後、浄化ガスの流れ方向に沿って循環して、ファンフィルターユニットによって確実に捕集される。これにより、清浄な浄化ガスを洗浄室内に循環させることができるので、半導体ウエハの洗浄効果がより高められる。
【0024】
また、本発明の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置は、上記構成において、前記ファンフィルターユニットが、前記浄化ガスとして、高純度窒素ガス又はクリーンドライエアを前記洗浄室の内部空間に循環させる構成であることが好ましい。
【0025】
本発明によれば、ファンフィルターユニットによってダウンフローで循環させる浄化ガスに高純度窒素ガス又はクリーンドライエアを用いることにより、半導体ウエハにドライアイスを噴射したときに、洗浄面に、ドライアイスによって雰囲気ガスに由来する氷が形成されてしまうのを抑制できる。また、ドライアイスによって噴射洗浄ノズルが結露してしまうのを防止できる。従って、半導体ウエハの洗浄効果がさらに高められるとともに、大量の半導体ウエハを連続的に洗浄処理することが可能になる。
【0026】
さらに、本発明は、上記の何れかの半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置を用いて、前記半導体ウエハに前記ドライアイスを噴射することにより、前記半導体ウエハの洗浄面に付着した不純物を除去する洗浄方法であって、前記洗浄室の前記内部空間に搬入した前記半導体ウエハを非水平に保持した状態で、前記半導体ウエハに前記ドライアイスを噴射することを特徴とする半導体ウエハの洗浄方法を提供する。
【0027】
本発明によれば、上述した本発明に係る半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置を用いて半導体ウエハにドライアイスを噴射し、半導体ウエハの表面を洗浄する方法なので、上記同様、半導体ウエハの表面に付着したパーティクルやバリ等を効果的に除去できる。これにより、半導体ウエハの表面に残存するパーティクル等の量を低減できるとともに、大量の半導体ウエハを連続的且つ効果的に洗浄処理することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置によれば、上記構成により、半導体ウエハの表面に付着したパーティクルやバリ等を効果的に除去できる。従って、半導体ウエハの表面に残存するパーティクル等の量を低減できるとともに、大量の半導体ウエハを連続的且つ効果的に洗浄処理することが可能となる。
【0029】
また、本発明に係る半導体ウエハの洗浄方法によれば、本発明に係る半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置を用いて半導体ウエハにドライアイスを噴射し、半導体ウエハの表面を洗浄する方法なので、上記同様、半導体ウエハの表面に付着したパーティクルやバリ等を効果的に除去できる。従って、半導体ウエハの表面に残存するパーティクル等の量を低減できるとともに、大量の半導体ウエハを連続的且つ効果的に洗浄処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態である半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法について模式的に説明する図であり、半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態である半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法について模式的に説明する図であり、
図1に示した半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置に備えられる搬送ロボットを拡大して示す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態である半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法について模式的に説明する図であり、
図2に示した搬送ロボットの正面図である。
【
図4A】本発明の一実施形態である半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法について模式的に説明する図であり、
図2及び
図3に示した搬送ロボットに備えられる背板を含む保持部を拡大して示す断面図である。
【
図4B】本発明の一実施形態である半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法について模式的に説明する図であり、
図4Aに示した背板を含む保持部の平面図である。
【
図5A】本発明の一実施形態である半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法について模式的に説明する図であり、
図4A及び
図4Bに示した背板を含む保持部に半導体ウエハを保持させる手順を示す断面図である。
【
図5B】本発明の一実施形態である半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法について模式的に説明する図であり、
図4A及び
図4Bに示した背板を含む保持部に半導体ウエハを保持させる手順を示す平面図である。
【
図6A】本発明の一実施形態である半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法について模式的に説明する図であり、
図4A及び
図4Bに示した背板を含む保持部に半導体ウエハを保持させた状態を示す断面図である。
【
図6B】本発明の一実施形態である半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法について模式的に説明する図であり、
図4A及び
図4Bに示した背板を含む保持部に半導体ウエハを保持させた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を適用した一実施形態である半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法について、
図1~
図6A及び
図6Bを適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、その特徴をわかり易くするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0032】
本発明に係る半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法による被洗浄物である半導体ウエハは、例えば、シリコン等の単結晶からなる半導体基板である。通常、この半導体ウエハの表面に、例えば、気相成長法等の方法によって各種の半導体結晶を成長させ、さらに、金属薄膜を成膜してパターニングすることで、微細な配線や素子等からなる回路パターンを形成し、半導体装置が製造される。
【0033】
従って、半導体装置を製造する際の歩留まりや、得られる半導体装置の素子特性等を考慮した場合、半導体ウエハの表面に残存するパーティクルやバリ等の不純物は、可能な限り除去されていることが求められる。本発明に係る半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法は、半導体ウエハの洗浄面に残存する不純物を、可能な限り除去することが可能なものである。
【0034】
<半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置>
本実施形態の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置の構成について、各図面を参照しながら説明する。
【0035】
図1は、本実施形態の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置(以下、単に洗浄装置と略称することがある)10の全体構成を示す概略図である。また、
図2は、
図1に示した洗浄装置10に備えられる搬送ロボット2を拡大して示す側面図であり、
図3は、
図2に示した搬送ロボット2の正面図である。また、
図4Aは、
図2及び
図3に示した搬送ロボット2に備えられる背板44を含む保持部4を拡大して示す断面図であり、
図4Bは、
図4Aに示した保持部4の平面図である。また、
図5Aは、
図4A及び
図4Bに示した背板44を含む保持部4に半導体ウエハWを保持させる手順を示す断面図であり、
図5Bはその平面図である。また、
図6Aは、
図4A及び
図4Bに示した背板44を含む保持部4に半導体ウエハWを保持させた状態を示す断面図であり、
図6Bはその平面図である。
【0036】
本実施形態の洗浄装置10は、半導体ウエハWにドライアイスDを噴射することにより、半導体ウエハWの洗浄面に付着した図示略の不純物を除去するものである。
図1に示すように、本実施形態の洗浄装置10は、半導体ウエハWが順次搬入されるとともに、半導体ウエハWを洗浄するための内部空間11を有する洗浄室1と、洗浄室1の内部空間11に配置され、半導体ウエハWの洗浄面W1(
図5A等を参照)に向けてドライアイスDを噴射する噴射洗浄ノズル5と、洗浄室1の内部空間11に配置され、半導体ウエハWを、洗浄室1の外部から内部空間11へ順次搬入する搬送ロボット2と、を備える。
そして、本実施形態の洗浄装置10は、搬送ロボット2が、内部空間11に搬入した半導体ウエハWを非水平に保持した状態で、噴射洗浄ノズル5が、半導体ウエハWにドライアイスDを噴射する構成とされている。
【0037】
また、本実施形態の洗浄装置10は、さらに、洗浄室1の内部空間11に被洗浄物である半導体ウエハWを順次供給するためのウエハ搬入用パスボックス6と、洗浄室1の内部空間11から洗浄済みの半導体ウエハWを順次搬出するウエハ搬出用パスボックス7とを備えている。
また、図示例の洗浄装置10は、洗浄室1の内部空間11に、さらに、浄化ガスCを、洗浄室1の天井部1C側から床部1D側に向かうようにダウンフローで循環させるファンフィルターユニット8が備えられている。
さらに、図示例の洗浄装置10は、洗浄室1の内部空間11に、ファンフィルターユニット8によって浄化ガスCを循環させるためのブロワ9が備えられている。
【0038】
洗浄室1は、洗浄装置10の筐体として機能するとともに、内部空間11において半導体ウエハWを洗浄するものである。
図示例の洗浄室1は、立方体状の外形並びに内部空間を有しており、上述したように、内部空間11に、噴射洗浄ノズル5、搬送ロボット2、ファンフィルターユニット8、及びブロワ9等を収容している。
【0039】
また、
図1中においては詳細な図示を省略しているが、洗浄室1の側壁1A側には、詳細を後述するウエハ搬入用パスボックス6が取り付けられており、このウエハ搬入用パスボックス6と連通する連通部14が開口している。
さらに、洗浄室1において側壁1Aと対向して配置される側壁1B側には、詳細を後述するウエハ搬出用パスボックス7が取り付けられており、このウエハ搬出用パスボックス7と連通する連通部15が開口している。
【0040】
また、洗浄室1の天井部1Cには、内部空間11に浄化ガスCを供給・循環させるための浄化ガス導入管12が接続されている。
さらに、洗浄室1の床部1Dには、内部空間11を循環した浄化ガスCや、内部空間11に滞留した残存ガス等を外部に向けて排出するための浄化ガス排出管13が接続されている。
【0041】
洗浄装置10は、上記構成により、内部空間11を、常時、新鮮なガス雰囲気とすることで、半導体ウエハWを効率的に洗浄することが可能となる。
さらに、洗浄装置10は、浄化ガス導入管12から内部空間11に浄化ガスCを導入しながら、浄化ガス排出管13から循環後の浄化ガスCを排出する動作を一定時間以上で実施することにより、内部空間11のガス雰囲気を、例えば、クリーンドライエアあるいは高純度窒素ガス等の所望のガス雰囲気に置き換えることが可能となる。
【0042】
また、洗浄室1の天井部1C近傍には、詳細については後述するが、ファンフィルターユニット8を構成する天井部ユニット8Aが備えられている。
また、洗浄室1の床部1D近傍には、上記同様、ファンフィルターユニット8を構成する床部ユニット8Bが備えられている。
【0043】
搬送ロボット2は、上述したように、半導体ウエハWを、洗浄室1の外部から内部空間11へ順次搬入するものである。より具体的には、搬送ロボット2は、
図1中に示すウエハ搬入用パスボックス6に収容された半導体ウエハWを、1枚単位で内部空間11に順次搬入し、詳細を後述する噴射洗浄ノズル5の噴出口5aと対向する位置まで半導体ウエハWを搬送・配置する。また、搬送ロボット2は、噴射洗浄ノズル5から噴出されるドライアイスDによって半導体ウエハWが洗浄されているときに、この半導体ウエハWを噴射洗浄ノズル5に近接移動させる機能も有する。
さらに、搬送ロボット2は、噴射洗浄ノズル5から噴射するドライアイスDによって洗浄された後の半導体ウエハWを、ウエハ搬出用パスボックス7に向けて搬出する。
【0044】
搬送ロボット2は、
図1及び
図2に示すように、基台20に取り付けられたアーム部3と、アーム部3の先端に取り付けられた保持部4とから構成される。本実施形態で説明する搬送ロボット2は、アーム部3が、半導体ウエハWを保持する背板44を含んだ構成の保持部4を、非水平状態に支持可能であるとともに、この保持部4を、洗浄室1の内部空間11において移動自在に支持する。
搬送ロボット2の基台20は、
図1中では図示を省略しているが、洗浄室1における何れかの側壁に対し、図示略の固定部材等によって固定されている。
【0045】
アーム部3は、基台20の固定部21に固定されており、図示略の基軸によって固定部21に対して回動自在に取り付けられている。また、図示例のアーム部3は、3本のアーム31,32,33が直列に接続されるとともに、これらのアーム31,32,33の各々の間が、3つの支持軸34,35,36のうちの何れかによって回動自在に接続されている。これにより、アーム部3は、後述の保持部4を三次元方向で移動させることが可能な、所謂マジックアームのように動作することが可能な構成とされている。
【0046】
なお、アーム部3は、例えば、基台20の内部に設けられた図示略のモータにより、固定部21が360°の範囲で回転可能とされ、さらに、固定部21、及び支持軸34,35,36の内部にそれぞれ設けられた図示略のモータにより、31,32,33の各々が回動するように構成される。
【0047】
保持部4は、アーム部3の先端に取り付けられ、半導体ウエハWを保持して移動させることが可能に構成されており、
図1及び
図2に示す例においては、アーム部3のアーム33に対して、支持軸36によって回動可能に取り付けられている。即ち、保持部4は、アーム部3と一体化され、アーム部3とともに、マジックアームのように一体的に動作するように構成されている。
【0048】
保持部4は、
図3に示すように、支持ベース41の先端に、半導体ウエハWを保持するための保持アーム42が取り付けられており、上記の支持ベース41がアーム部3のアーム33に取り付けられることで、アーム部3と一体化されている。
【0049】
また、保持部4は、保持アーム42の一面側に、半導体ウエハWを安定して保持するための背板44が配置されている。図示例の背板44は平面視円形状であり、例えば、被洗浄物である半導体ウエハWと同じ径を有する板状部材から構成される。
【0050】
また、保持部4には、半導体ウエハWを上下方向から挟み込むように保持するための上部爪43a及び下部爪43bが設けられている(
図6A及び
図6B等も参照)。
図4A及び
図4Bに示す例においては、上部爪43aが背板44の周縁に固定されているとともに、下部爪43bが、保持アーム42の下端に固定されている。
また、上部爪43a及び下部爪43bは、平面視において、被洗浄物である半導体ウエハWの周端が嵌め込まれるように、背板44側に配置される側面が円弧状に凹んだ形状とされている。
【0051】
保持部4に半導体ウエハWを保持させるときは、まず、
図4A及び
図4Bに示すように、下部爪43bが背板44から離間した状態となるように、保持アーム42をスライドさせる。
次いで、
図5A及び
図5Bに示すように、背板44の保持面44a上に半導体ウエハWの背面W2が接するように半導体ウエハWを配置する。この状態においては、上部爪43a及び下部爪43bの何れも、半導体ウエハWには接していない。
次いで、
図6A及び
図6Bに示すように、下部爪43bが半導体ウエハWの周端に接する方向に移動するように、保持アーム42をスライドさせる。これにより、半導体ウエハWが、上部爪43a及び下部爪43bにより、上下方向から周端を挟まれるように保持されるとともに、背面W2が背板44によって安定的に保持された状態となる。
【0052】
図6A及び
図6Bに示すように、上部爪43a及び下部爪43bによって半導体ウエハWを挟み込んだとき、上部爪43a及び下部爪43bは半導体ウエハWの周端にのみ接触した状態であり、洗浄面W1を隠すことがないので、この洗浄面W1をムラ無く均一に洗浄することが可能となる。
また、半導体ウエハWの背面W2の全面が、背板44の保持面に密着した状態なので、これらの間に隙間はほとんど存在せず、半導体ウエハWが安定して保持された状態となる。
【0053】
上記のような保持アーム42のスライド移動は、例えば、支持ベース41の内部に設けられた図示略のモータ等からなる駆動手段によって行われる。
【0054】
本実施形態においては、上記のような、背板22を含む保持部4と、アーム部3とを有する搬送ロボット2を備えることにより、詳細を後述する噴射洗浄ノズル5から噴射されるドライアイスDを高圧とした場合においても、半導体ウエハWが背板44によって安定して支持される。これにより、高圧のドライアイスDによって半導体ウエハWが変形したり、破損したりするのを防止できる。
【0055】
なお、本実施形態の洗浄装置10に用いられる搬送ロボット2は、内部空間11に搬入した半導体ウエハWを、鉛直方向に対して0°~60°の角度、より好ましくは0°~30°の角度で、半導体ウエハWが垂直、又は、半導体ウエハWの洗浄面W1側が斜め上向きとなるように保持する構成であることがより好ましい。この際、
図2に示すように、半導体ウエハWを洗浄するときは、半導体ウエハWを上記角度で保持したうえで、洗浄面W1に噴射洗浄ノズル5の噴出口5aを近接させる。
【0056】
上記のように、搬送ロボット2が、半導体ウエハWを上記角度で保持し、半導体ウエハWが垂直、又は、半導体ウエハWの洗浄面側が斜め上向きとなるように保持することで、半導体ウエハWの洗浄面(表面)W1に付着したパーティクルやバリ等が、噴射洗浄ノズル5から噴射されるドライアイスDによって効果的に落下する。これにより、上記のような、半導体ウエハWの洗浄面W1に残存するパーティクル等の量を低減できる。
【0057】
噴射洗浄ノズル5は、噴出口5aから半導体ウエハWの洗浄面W1に向けてドライアイスDを噴射するものである。即ち、噴射洗浄ノズル5は、搬送ロボット2によって内部空間11に搬入され、非水平に保持された状態の半導体ウエハWの洗浄面W1に対し、ドライアイスDを噴射する。
【0058】
図示例の噴射洗浄ノズル5は、ノズル本体51の流入口5bに、ドライアイスDを供給するドライアイス導入管52と、浄化ガスCを供給する浄化ガス導入管53が接続されている。これらのドライアイスDと浄化ガスCとは、ノズル本体51内で混合され、噴出口5aから噴出される。
即ち、噴射洗浄ノズル5は、ドライアイスDに加え、例えば、高純度窒素ガスやクリーンドライエアからなる浄化ガスCを、半導体ウエハWの洗浄面W1に衝突させ、この洗浄面W1に付着した不純物を除去する。
【0059】
噴射洗浄ノズル5は、半導体ウエハWの洗浄面W1への直交方向に対して0°~80°の角度、より好ましくは0°~30°の角度、即ち、半導体ウエハWの洗浄面W1に直交するか、又は、半導体ウエハWの洗浄面W1への直交方向よりも下向きとなる方向で、噴出口5aからドライアイスDを噴射する構成であることがより好ましい。噴射洗浄ノズル5から半導体ウエハWの洗浄面W1へのドライアイスDの噴出方向を上記範囲の角度とすることで、半導体ウエハWの洗浄面W1に付着したパーティクルやバリ等が、噴射洗浄ノズル5から噴射されるドライアイスDによってより効果的に落下する。これにより、半導体ウエハWの洗浄面W1に残存するパーティクル等の量をより効果的に低減できる。
【0060】
なお、本実施形態においては、噴射洗浄ノズル5は洗浄装置1の内部空間11で固定されているので、ドライアイス導入管52及び浄化ガス導入管53も固定されている。つまり、洗浄時に、搬送ロボット2が、固定された噴射洗浄ノズル5に対して半導体ウエハWを相対移動させる。このように、ドライアイス導入管52及び浄化ガス導入管53が固定されていることで、配管や継手が移動したり振動したりすることによるパーティクルの発生を防止することが可能になる。
また、本実施形態では、噴射洗浄ノズル5が洗浄装置1の内部空間11で固定され、固定された噴射洗浄ノズル5に対して、半導体ウエハWを搬送ロボット2によって相対移動させる構成について説明したが、これには限定されない。例えば、配管や継手から発生するパーティクル量が十分に抑制されている場合には、半導体ウエハWが洗浄装置1の内部空間11に固定され、固定された半導体ウエハWに対して、噴射洗浄ノズル5がロボットによって相対移動する構成を採用することも可能である。
【0061】
ウエハ搬入用パスボックス6は、洗浄室1の内部空間11に半導体ウエハWを搬入する際に、内部空間11を大気と遮断した状態での搬入を可能とするものであり、洗浄室1の側壁1A側に開口した連通部14を介して内部空間11と連通可能に設けられる。ウエハ搬入用パスボックス6には、別途、ロボット等の装置や手動の方法により、搬入用ボックス64内に並び揃えられた状態の半導体ウエハWが搬入される。
【0062】
図1に示す例のウエハ搬入用パスボックス6は、ボックス本体61の内部に、搬入用ボックス64内に並び揃えられた半導体ウエハWを収容する。ボックス本体61には、該ボックス本体61の内部にクリーンドライエア又は高純度窒素ガスからなる浄化ガスCを供給するための導入管65が接続されている。また、ボックス本体61には、ボックス本体61の内部を循環した後の浄化ガスCを外部に排出する排出管66が接続されている。
これにより、ウエハ搬入用パスボックス6は、洗浄室1の場合と同様、導入管65からボックス本体61内に浄化ガスCを導入しながら、排出管66から循環後の浄化ガスCを排出する動作を一定時間以上で実施することで、ボックス本体61内のガス雰囲気を、例えば、クリーンドライエアあるいは高純度窒素ガス等の所望のガス雰囲気に置き換えることが可能となる。
【0063】
また、ウエハ搬入用パスボックス6には、洗浄装置10の外部から、ボックス本体61内に半導体ウエハWを搬入するための搬入扉62が設けられている。
さらに、ウエハ搬入用パスボックス6には、洗浄室1の内部空間11に半導体ウエハWを搬入するときに開閉する搬入ゲート弁63が設けられている。
これら搬入扉62及び搬入ゲート弁63は、半導体ウエハWの洗浄時は、通常、閉じた状態とされることで、洗浄室1の内部空間11を大気と遮断した状態とする。一方、半導体ウエハWを搬入用ボックス64に収容した状態でボックス本体61に搬入するときは、搬入扉62を開放し、半導体ウエハWを洗浄室1の内部空間11に搬入するときは、搬入ゲート弁63を開放する。
【0064】
搬入用ボックス64には、例えば、25枚程度の半導体ウエハWを縦向きに並び揃えることが可能なサイズ及び形状のものが用いられる。
【0065】
ウエハ搬出用パスボックス7は、洗浄室1の内部空間11から洗浄済みの半導体ウエハWを搬出する際に、内部空間11を大気と遮断した状態での搬入を可能とするものであり、洗浄室1の側壁1B側に開口した連通部15を介して内部空間11と連通可能に設けられる。また、ウエハ搬出用パスボックス7からは、別途、ロボット等の装置や手動の方法により、搬入用ボックス64内に並び揃えられた洗浄済みの半導体ウエハWが搬出される。
【0066】
図1に示す例のウエハ搬出用パスボックス7は、ボックス本体71の内部に、洗浄後の半導体ウエハWを、搬出用ボックス74内に並び揃えられた状態で収容する。ボックス本体71には、ウエハ搬入用パスボックス6の場合と同様、ボックス本体71の内部にクリーンドライエア又は高純度窒素ガスからなる浄化ガスCを供給するための導入管75が接続されている。また、ボックス本体71には、ボックス本体71の内部を循環した後の浄化ガスCを外部に排出する排出管76が接続されている。
これにより、ウエハ搬出用パスボックス7は、洗浄室1やウエハ搬入用パスボックス6の場合と同様、導入管75からボックス本体71内に浄化ガスCを導入しながら、排出管76から循環後の浄化ガスCを排出する動作を一定時間以上で実施することで、ボックス本体71内のガス雰囲気を、例えば、クリーンドライエアあるいは高純度窒素ガス等の所望のガス雰囲気に置き換えることが可能となる。
【0067】
また、ウエハ搬出用パスボックス7には、洗浄室1の内部空間11から洗浄済みの半導体ウエハWを搬出するときに開閉する搬出ゲート弁73が設けられている。
さらに、ウエハ搬出用パスボックス7には、洗浄装置10の外部に、ボックス本体61内から洗浄済みの半導体ウエハWを搬出するための搬出扉72が設けられている。
これら搬出扉72及び搬出ゲート弁73は、ウエハ搬入用パスボックス6に備えられる搬入扉62及び搬入ゲート弁63の場合と同様、半導体ウエハWの洗浄時は、通常、閉じた状態とされることで、洗浄室1の内部空間11を大気と遮断した状態とする。一方、洗浄済みの半導体ウエハWを洗浄室1の内部空間11から搬出するときは、搬出ゲート弁73を開放し、洗浄済みの半導体ウエハWを搬出用ボックス74に収容する。また、洗浄済みの半導体ウエハWを、搬出用ボックス74に収容した状態でボックス本体71から搬出するときは、搬出扉72を開放する。
【0068】
搬出用ボックス74には、搬入用ボックス64と同様、例えば、25枚程度の半導体ウエハWを縦向きに並び揃えることが可能なサイズ及び形状のものが用いられる。
【0069】
本実施形態の洗浄装置10は、上記のウエハ搬入用パスボックス6及びウエハ搬出用パスボックス7を備えることで、上述した搬送ロボット2は、まず、搬入ゲート弁63の開放時に搬入用ボックス64内にアクセスして、半導体ウエハWを1枚ずつ洗浄室1の内部空間に導入する。そして、噴射洗浄ノズル5から噴出されるドライアイスDによって洗浄面W1が洗浄された半導体ウエハWは、搬送ロボット2により、搬出ゲート弁73の開放時に、搬出用ボックス74内に並べ揃えられる。そして、搬出用ボックス74内に収容された洗浄済みの半導体ウエハWは、別途、ロボット等の装置や手動の方法により、ウエハ搬出用パスボックス7から外部に搬出される。この際、例えば、ウエハ搬入用パスボックス6には、25枚の半導体ウエハWを並び揃えた搬入用ボックス64をセットし、ウエハ搬出用パスボックス7には、25枚分の収容量を有した空の搬出用ボックス74をセットすることで、計25枚の半導体ウエハWを連続的に洗浄処理することが可能となる。
【0070】
ファンフィルターユニット8は、上述したように、洗浄室1の内部空間11において、浄化ガスCを、天井部1C側から床部1D側に向かうようにダウンフローで循環させるものである。
図1中に示す例のファンフィルターユニット8は、天井部1C側に配置される天井部ユニット8Aと、床部1D側に配置される床部ユニット8Bとからなる。
【0071】
ファンフィルターユニット8としては、特に限定されないが、例えば、JIS Z8122:2000に規定されているようなHEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)や、ULPAフィルター (Ultra Low Penetration Air Filter) 等を何ら制限無く採用することができる。
【0072】
図示例においては、洗浄室1の内部空間11の上下方向(
図1における縦長方向)において、天井部ユニット8Aが、天井部1Cに対して離間して設けられた上部パーテーション16に取り付けられている。
また、床部ユニット8Bが、床部1Dに対して離間して設けられた下部パーテーション17に取り付けられている。
【0073】
天井部ユニット8Aは、浄化ガス導入管12から内部空間11における天井部1Cと上部パーテーション16及び天井部ユニット8Aとの間の空間に導入された浄化ガスCを、下方に向けて吹き出させることにより、天井部1C側から床部1D側に向かうようにダウンフローで循環させる。
また、床部ユニット8Bは、天井部ユニット8Aから吹き出され、ダウンフローで循環した浄化ガスCを吸い込むことで、内部空間11における床部1Dと下部パーテーション17及び床部ユニット8Bとの間の空間に導入する。
【0074】
そして、本実施形態の洗浄装置10においては、上述したブロワ9の動作により、内部空間11における床部1Dと下部パーテーション17及び床部ユニット8Bとの間の空間に導入された、ダウンフロー循環後の浄化ガスCが、循環入路管91に導入される。循環入路管91に導入された浄化ガスCは、循環出路管92を介して、内部空間11における天井部1Cと上部パーテーション16及び天井部ユニット8Aとの間の空間に還流され、繰り返し、循環するように構成されている。
【0075】
本実施形態では、上記のファンフィルターユニット8を備え、浄化ガスCが洗浄室1の内部空間11においてダウンフローで循環する構成を採用することにより、半導体ウエハWの洗浄面W1に付着したパーティクルやバリ等が、噴射洗浄ノズル5から噴射されるドライアイスDによって剥離された後、浄化ガスCの流れ方向に沿って循環して、ファンフィルターユニット8によって確実に捕集される。これにより、清浄な浄化ガスを洗浄室1内に循環させることができるので、半導体ウエハWの洗浄効果がより高められる。
【0076】
なお、本実施形態の洗浄装置10において、洗浄室1の内部空間11、ウエハ搬入用パスボックス6のボックス本体61、並びにウエハ搬出用パスボックス7のボックス本体71に供給し、必要に応じて循環させる浄化ガスCとしては、特に限定されない。一方、浄化ガスCとしては、上述した高純度窒素ガス又はクリーンドライエアを用いることが好ましい。
【0077】
本実施形態では、まず、洗浄室1の内部空間11に供給する浄化ガスC、即ち、ファンフィルターユニット8によってダウンフローで循環させる浄化ガスCに高純度窒素ガス又はクリーンドライエアを用いることにより、半導体ウエハWにドライアイスDを噴射したときに、洗浄面W1に、ドライアイスDによって雰囲気ガスに由来する氷が形成されてしまうのを抑制できる。また、ドライアイスDによって噴射洗浄ノズル5が結露して、氷によって閉塞してしまうのを防止できる。従って、半導体ウエハWの洗浄効果がさらに高められるとともに、大量の半導体ウエハWを連続的に洗浄処理することが可能になる。
【0078】
また、ウエハ搬入用パスボックス6のボックス本体61に供給する浄化ガスCに高純度窒素ガス又はクリーンドライエアを用いることにより、洗浄前の半導体ウエハWを清浄な状態に維持することが可能になる。
さらに、ウエハ搬出用パスボックス7のボックス本体71に供給する浄化ガスCに高純度窒素ガス又はクリーンドライエアを用いることにより、搬出用ボックス74に一時保管された洗浄後の半導体ウエハWを清浄な状態に維持することが可能になる。
従って、半導体ウエハの表面に残存するパーティクル等の量を低減できる効果がより顕著に得られる。
【0079】
なお、本実施形態の洗浄装置10において浄化ガスCに用いられるクリーンドライエアとは、ミストクリーナーやドライヤーを通して不純物や水分を低減されたエア、例えば、露点が-60℃あるいはそれ以下となるようなエアである。
また、本実施形態において浄化ガスCに用いられる高純度窒素ガスとは、不純物や水分が十分に低減された窒素であり、例えば、純度が99.99%あるいはそれ以上となるような窒素ガスである。
【0080】
本実施形態の洗浄装置10によれば、上記のように、搬送ロボット2が、半導体ウエハWを非水平に保持した状態で、噴射洗浄ノズル5が、半導体ウエハWの洗浄面W1にドライアイスDを噴射する構成を採用することにより、半導体ウエハWの洗浄面W1に付着したパーティクルやバリ等を効果的に除去できる。これにより、半導体ウエハWの洗浄面W1に残存するパーティクル等の量を低減できるとともに、大量の半導体ウエハWを連続的且つ効果的に洗浄処理することが可能となる。
【0081】
<半導体ウエハの洗浄方法>
以下に、本実施形態の半導体ウエハの洗浄方法について説明する。
なお、以下の説明においては、上述した本実施形態の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置10と同じ図面(
図1~
図6A,
図6B)を参照して説明するとともに、洗浄装置10に関する詳細な説明を省略する場合がある。
【0082】
本実施形態の半導体ウエハの洗浄方法(以下、単に洗浄方法と略称する場合がある。)は、上述した本実施形態の洗浄装置10を用いて半導体ウエハWにドライアイスDを噴射することにより、半導体ウエハWの洗浄面W1に付着した不純物を除去する洗浄方法である。即ち、本実施形態の洗浄方法は、洗浄室1の内部空間11に搬入した半導体ウエハWを非水平に保持した状態で、半導体ウエハWにドライアイスDを噴射する方法である。
【0083】
まず、
図1に示した洗浄装置10において、ウエハ搬入用パスボックス6の搬入扉62を開放し、被洗浄物である半導体ウエハWが計25枚、縦置き姿勢で収容された搬入用ボックス64をボックス本体61内にセットする。
次いで、ウエハ搬入用パスボックス6内に、導入管65を介して、浄化ガスCとしてクリーンドライエアを供給し、これを排出管66から排出しながら、この状態を、例えば10分間保つ。これにより、ウエハ搬入用パスボックス6のガス雰囲気は、クリーンドライエア雰囲気に完全置換される。
【0084】
これと同時に、ウエハ搬出用パスボックス7のボックス本体71内に、半導体ウエハWを縦置き姿勢で計25枚収容することが可能な搬出用ボックス74をセットし、ウエハ搬入用パスボックス6の場合と同様、ウエハ搬出用パスボックス7内に、導入管75を介して、浄化ガスCとしてクリーンドライエアを供給し、これを排出管76から排出しながら、この状態を、例えば10分間保つ。これにより、ウエハ搬出用パスボックス7のガス雰囲気は、クリーンドライエア雰囲気に完全置換される。
【0085】
洗浄室1の内部空間11は、予め、浄化ガス導入管12を介して、浄化ガスCとしてクリーンドライエアを供給し、このクリーンドライエアを、浄化ガス排出管13から常時排出している状態に保つ。
また、ファンフィルターユニット8及びブロワ9も起動することで、内部空間11内にクリーンドライエアをダウンフローで循環させるとともに、このクリーンドライエア(浄化ガスC)の清浄化を連続的に実施している状態とする。
【0086】
次いで、ウエハ搬入用パスボックス6の搬入ゲート弁63を開放し、洗浄室1内に設置された搬送ロボット2のアーム部3により、このアーム部3及び保持部4をウエハ搬入用パスボックス6のボックス本体61内に移動させる。
次いで、上述したように、
図4A,
図4B~
図6A,
図6Bに示した保持部4の動作により、搬入用ボックス64から1枚目の半導体ウエハWをキャッチし、洗浄室1に移動させる。
【0087】
この際、
図2中に示すように、半導体ウエハWが、噴射洗浄ノズル5の噴出口5aと近接する位置に配置されるように、アーム部3及び保持部4を作動させる。また、このとき、
図2及び
図3に示すように、半導体ウエハWは、鉛直方向に対して0°、即ち垂直な状態でセットされる。
【0088】
次いで、噴射洗浄ノズル5から、ドライアイスD及び高純度窒素からなる浄化ガスCを、半導体ウエハWの洗浄面W1に向けて噴出させる。この際、搬送ロボット2のアーム部3により、保持部4を、背板44の平面視で上下左右に移動させることにより、半導体ウエハWの洗浄面W1に付着した不純物を均一に満遍なく除去する。
そして、半導体ウエハWの洗浄面W1の全面から不純物が除去された状態となった後、噴射洗浄ノズル5からのドライアイスDの噴出を停止させる。
【0089】
次いで、ウエハ搬出用パスボックス7に備えられる搬出ゲート弁73を開放し、搬送ロボット2のアーム部3により、このアーム部3及び保持部4をウエハ搬出用パスボックス7のボックス本体71内に移動させる。
そして、洗浄済みの半導体ウエハWを、搬出用ボックス74内に縦置き姿勢で収容する。
【0090】
次いで、搬送ロボット2は、洗浄室1の内部空間11における初期位置に戻る。
そして、ウエハ搬出用パスボックス7の搬出ゲート弁73を閉める。
【0091】
上記のような手順を、搬入用ボックス64に収容した計25枚の半導体ウエハWの分だけ繰り返し、全ての半導体ウエハWの洗浄処理が完了したら、ウエハ搬出用パスボックス7に備えられる搬出扉72を開放し、洗浄処理済みの半導体ウエハWが計25枚収容された搬出用ボックス74を取り出した後、搬出扉72を閉じる。
【0092】
本実施形態の洗浄方法によれば、上述した本実施形態の洗浄装置10を用いて半導体ウエハWにドライアイスDを噴射し、半導体ウエハWの洗浄面W1を洗浄する方法なので、上記同様、半導体ウエハWの洗浄面W1に付着したパーティクルやバリ等を効果的に除去できる。これにより、半導体ウエハWの洗浄面W1に残存するパーティクル等の量を低減できるとともに、ドライアイスDによる氷形成に伴って洗浄効率が低下するのを防止でき、大量の半導体ウエハWを連続的且つ効果的に洗浄処理することが可能となる。
【0093】
なお、本実施形態で使用するドライアイスDとしては、特に限定されないが、例えば、粒子径が5~100μm程度の粒状のものを用いることができる。
また、ドライアイスDの使用量も、特に限定されないが、例えば、1枚の半導体ウエハWの洗浄処理において、ドライアイスDの使用量を0.1~1kgとし、この量のドライアイスDを噴射する洗浄時間を1~20分とすることができる。
また、ドライアイスDとともに噴射洗浄ノズル5から噴射する浄化ガスCの噴射圧力としても、特に限定されないが、例えば、0.3~1.0MPa程度とすることができる。
【0094】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置10によれば、上記のように、搬送ロボット2が、内部空間11に搬入した半導体ウエハWを非水平に保持した状態で、噴射洗浄ノズル5が、半導体ウエハWにドライアイスDを噴射する構成を採用している。これにより、半導体ウエハWの洗浄面W1に付着したパーティクルやバリ等を効果的に除去できる。従って、半導体ウエハWの洗浄面W1に残存するパーティクル等の量を低減できるとともに、大量の半導体ウエハWを連続的且つ効果的に洗浄処理することが可能となる。
【0095】
また、本実施形態の半導体ウエハの洗浄方法によれば、上述した本実施形態の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置10を用いて半導体ウエハWにドライアイスDを噴射し、半導体ウエハWの洗浄面W1を洗浄する方法なので、上記同様、半導体ウエハWの洗浄面W1に付着したパーティクルやバリ等を効果的に除去できる。従って、半導体ウエハWの洗浄面W1に残存するパーティクル等の量を低減できるとともに、大量の半導体ウエハWを連続的且つ効果的に洗浄処理することが可能となる。
【実施例0096】
以下、実施例により、本発明に係る半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
<実験例1~4における試験方法並びに条件>
以下に説明する実験例1~4においては、上述した本発明の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置及び半導体ウエハの洗浄方法による効果を実証するため、
図1~
図6A,
図6Bに示したような本発明に係る洗浄装置10を用い、以下に示した条件並びに手順により、半導体ウエハの表面をドライアイスで洗浄し、洗浄面における不純物(パーティクル)の残渣の量を確認した。
【0098】
[実験例1:半導体ウエハの角度に依る洗浄効果]
実験例1では、インゴットから切り出した6inchのシリコン単結晶からなる半導体基板(半導体ウエハW)を、洗浄装置10に備えられる搬送ロボット2の保持部4に保持させた。この際、半導体ウエハWを、鉛直方向に対して0°~30°の角度で、半導体ウエハWが垂直、又は、半導体ウエハWの洗浄面W1側が斜め上向きとなるように、非水平状態で保持させた。そして、この状態の半導体ウエハWの洗浄面W1に対して、噴射洗浄ノズル5からドライアイスDを噴射し、洗浄処理を行った後、洗浄面W1に残存したパーティクルの数を調査した。
【0099】
この際、ドライアイスDとして、平均粒子径(D50)が50μmのものを使用した。
また、1枚の半導体ウエハWの洗浄に用いるドライアイスDの使用量は0.3kgとし、この量のドライアイスDを噴射する洗浄時間を5分として実験を行った。
また、ドライアイスDとともに噴射洗浄ノズル5から半導体ウエハWの洗浄面W1に対して噴射する浄化ガスCとして高純度窒素ガスを用い、その噴射圧力を0.5MPa程度とした。
【0100】
また、上記の条件に対する比較例として、半導体ウエハWを鉛直方向に対して垂直(90°)、即ち、水平状態として、上記同様、半導体ウエハWの洗浄面W1に対してドライアイスDを噴射した場合の、洗浄面W1に残存したパーティクルの数を調査した。この際に用いたドライアイスDの平均粒子径(D50)、使用量、洗浄時間(噴出時間)についても、上記同様とした。
【0101】
上記の手順並びに条件による実験の結果、半導体ウエハWを、鉛直方向に対して0°~30°の角度で、半導体ウエハWが垂直、又は、半導体ウエハWの洗浄面W1側が斜め上向きとなるように、非水平に保持した状態で、洗浄面W1にドライアイスDを噴射した場合には、半導体ウエハWを水平状態とした場合と比較して、洗浄面W1に残存するパーティクルの数が、最大で1/100以下に抑制されることが確認できた。
この結果より、半導体ウエハWを、垂直又は洗浄面W1側が斜め上向きとなるように保持することで、洗浄面W1にパーティクル等が残存し難くなることが確認できた。
【0102】
[実験例2:背板の有無に依る半導体ウエハの洗浄効果]
実験例2では、背板44の効果を調べるため、
図6A,
図6Bに示すような状態において、背板44を備えた場合、並びに、背板44を備えない場合の両方について、半導体ウエハWの洗浄実験を行った。
【0103】
なお、実験例2においては、洗浄効率をより高めるため、噴射洗浄ノズル5から噴射するドライアイスD及び浄化ガスCの噴射圧力を、0.8MPaと比較的高圧に設定した。なお、実験例2においては、上記背板44の有無、並びに、ドライアイスDの噴射圧力以外の条件及び手順については、上記実験例1と同様にして実験を行った。
【0104】
上記条件による実験の結果、背板44を設けない例では、保持アーム42のみで半導体ウエハWを保持した状態で、半導体ウエハWの背面W2の一部の領域のみが支持された状態であることから、高圧力でドライアイスD及び浄化ガスCを噴射することで、洗浄面W1側から過剰な力が印加された状態となり、半導体ウエハWが変形し、破損に至った。
これに対し、背板44を設けた例においては、背板44によって半導体ウエハWの背面W2の全面を支持していることから、洗浄面W1側からドライアイスD及び浄化ガスCによる高圧力が印加された場合でも、半導体ウエハWが変形することがなく、破損には至らなかった。
【0105】
[実験例3:浄化ガスのダウンフローによる洗浄効果]
実験例3では、半導体ウエハWの洗浄時に、浄化ガスCをダウンフローで循環させた場合の効果を調べた。
【0106】
具体的には、
図1中に示したファンフィルターユニット8を用い、洗浄室1の内部空間11において、浄化ガスCをダウンフローで循環させながら、半導体ウエハWの洗浄面W1にドライアイスDを噴射して洗浄処理を行った場合と、ファンフィルターユニット8を用いなかった場合とで、洗浄処理後の半導体ウエハWの洗浄面W1に残存するパーティクルの数を調べた。
なお、実験例3では、上記のファンフィルターユニット8の有無の点以外の条件並びに手順については、上記の実験例1と同様にして実験を行った。
【0107】
上記条件による実験の結果、ファンフィルターユニット8を用いて、洗浄室1の内部空間11に浄化ガスCをダウンフローで循環させながら半導体ウエハWの洗浄面W1を洗浄処理した場合には、ダウンフローによる浄化ガスCの循環を行わなかった場合に比べて、半導体ウエハWの洗浄面W1に残存するパーティクルの数が、最大で1/100以下に抑制されることが確認できた。
【0108】
[実験例4:洗浄室への浄化ガスの供給による洗浄効果]
実験例4では、洗浄室1の内部空間11に供給する浄化ガスC、即ち、クリーンドライエア及び高純度窒素ガスを供給した場合の効果を確認した。
なお、実験例4では、洗浄室1の内部空間11に供給する浄化ガスCのガス種を上記とした点以外の条件並びに手順については、上記の実験例1と同様にして実験を行った。
【0109】
上記条件による実験の結果、洗浄室1の内部空間11に供給する浄化ガスCとして、クリーンドライエア又は高純度窒素ガスを供給しながら半導体ウエハWの洗浄面W1を洗浄処理した場合には、半導体ウエハWの洗浄面W1の汚れをほぼ完全に除去することができた。
一方、洗浄室1の内部空間11に通常の空気を供給した場合には、ドライアイスDが、空気中の水分から氷を形成してしまい、洗浄面W1の汚れを完全に除去することができなかった。あるいは、噴射洗浄ノズル5の噴出口5aが結露してしまい、洗浄処理を連続的に実施できなくなるケースがあった。
【0110】
以上説明した実施例の結果より、本発明の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置、及び、それを用いた半導体ウエハの洗浄方法が、半導体ウエハ表面のパーティクル等の量を低減できるとともに、氷形成に伴う洗浄効率の低下を防止できることが確認できた。
本発明の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置は、半導体ウエハ表面のパーティクル等の量を低減できるとともに、氷形成に伴う洗浄効率の低下を防止でき、大量の半導体ウエハの連続的且つ効果的な洗浄処理が可能なものである。従って、本発明の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置は、例えば、半導体装置の製造工程において、半導体ウエハ上からパーティクルやバリ等を除去する用途において非常に好適である。
前記搬送ロボットが、前記内部空間に搬入した前記半導体ウエハを、鉛直方向に対して0°~30°の角度で、前記半導体ウエハが垂直、又は、該半導体ウエハの洗浄面側が斜め上向きとなるように保持することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置。
前記噴射洗浄ノズルが、前記半導体ウエハの洗浄面への直交方向に対して0°~80°の角度で、前記半導体ウエハの洗浄面に直交するか、又は、前記半導体ウエハの洗浄面への直交方向よりも下向きとなる方向で前記ドライアイス及び前記浄化ガスを噴射することを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置。
前記洗浄室の内部空間に、さらに、浄化ガスを、前記洗浄室の天井部側から床部側に向かうようにダウンフローで循環させるファンフィルターユニットが備えられていることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか一項に記載の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置。
前記ファンフィルターユニットは、前記浄化ガスとして、高純度窒素ガス又はクリーンドライエアを前記洗浄室の内部空間に循環させることを特徴とする請求項5に記載の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置。
また、本発明の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置は、上記構成において、前記噴射洗浄ノズルが、前記半導体ウエハの洗浄面への直交方向に対して0°~80°の角度で、前記半導体ウエハの洗浄面に直交するか、又は、前記半導体ウエハの洗浄面への直交方向よりも下向きとなる方向で前記ドライアイス及び前記浄化ガスを噴射する構成であることがより好ましい。
前記搬送ロボットが、前記内部空間に搬入した前記半導体ウエハを、鉛直方向に対して0°~30°の角度で、前記半導体ウエハが垂直、又は、該半導体ウエハの洗浄面側が斜め上向きとなるように保持することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置。
前記噴射洗浄ノズルが、前記半導体ウエハの洗浄面への直交方向に対して0°~80°の角度で、前記半導体ウエハの洗浄面に直交するか、又は、前記半導体ウエハの洗浄面への直交方向よりも下向きとなる方向で前記ドライアイス及び前記浄化ガスを噴射することを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載の半導体ウエハ用ドライアイス洗浄装置。