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特開2023-73797液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073797
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/14 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186484
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】秋山 幸太
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF71
2C057AG14
2C057AG44
2C057AN01
2C057BA03
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】ノズル孔周囲の振動変位を均一にでき、良好な吐出特性が得られるとともに、コストを抑えた液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【解決手段】基材層12、圧電体層13、第1電極16及び第2電極17を含む複数の層からなるノズル板1と、前記ノズル板を貫通するノズル孔1aと、前記ノズル孔に連通する液室21と、を有し、前記第1電極は、前記基材層と前記圧電体層との間に設けられ、前記第2電極は、前記圧電体層を介して前記第1電極の反対側に設けられ、前記ノズル板は、前記ノズル孔の周囲の領域に、前記ノズル孔に接続されたスリット31を有し、前記第1電極及び前記第2電極は、前記スリットによって分割されていないことを特徴とする。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、圧電体層、第1電極及び第2電極を含む複数の層からなるノズル板と、
前記ノズル板を貫通するノズル孔と、
前記ノズル孔に連通する液室と、を有し、
前記第1電極は、前記基材層と前記圧電体層との間に設けられ、
前記第2電極は、前記圧電体層を介して前記第1電極の反対側に設けられ、
前記ノズル板は、前記ノズル孔の周囲の領域に、前記ノズル孔に接続されたスリットを有し、
前記第1電極及び前記第2電極は、前記スリットによって分割されていないことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
基材層、圧電体層、第1電極及び第2電極を含む複数の層からなるノズル板と、
前記ノズル板を貫通するノズル孔と、
前記ノズル孔に連通する液室と、を有し、
前記第1電極は、前記基材層と前記圧電体層との間に設けられ、
前記第2電極は、前記圧電体層を介して前記第1電極の反対側に設けられ、
前記ノズル板は、前記ノズル孔の周囲の領域に、前記ノズル孔に接続されたスリットを有し、
前記第1電極は、平面視における前記スリットの長手の方向の端部近傍で連続しており、かつ、前記第2電極は、平面視における前記スリットの長手の方向の端部近傍で連続していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
基材層、圧電体層、第1電極及び第2電極を含む複数の層からなるノズル板と、
前記ノズル板を貫通するノズル孔と、
前記ノズル孔に連通する液室と、を有し、
前記第1電極は、前記基材層と前記圧電体層との間に設けられ、
前記第2電極は、前記圧電体層を介して前記第1電極の反対側に設けられ、
前記ノズル板は、前記ノズル孔の周囲の領域であって、前記複数の層のうちの少なくとも1つの層に、前記ノズル孔に接続されたスリットを有し、
前記第1電極及び前記第2電極は、前記スリットによって分割されていないことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記スリットは、平面視において前記ノズル孔の中心から放射線状に伸びることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記スリットは、平面視において前記ノズル孔の中心に対して回転対称となることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記スリットは、前記複数の層のうち少なくともヤング率が最も高い層に設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記スリットは、前記複数の層のうちの一部の層に設けられており、前記ノズル板における液体吐出面側を最表面としたとき、最表面の層以外の層に設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記スリットの一部又は全部が、弾性を有する部材で封止されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項10】
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化したことを特徴とする請求項9に記載の液体吐出ユニット。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項9若しくは10に記載の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドにおいて、ノズル孔を有する膜状部材を振動させて液滴を吐出する技術が知られている。
【0003】
特許文献1では、ノズルが形成された膜状部材を振動させ、細胞溶液を液滴として吐出することが開示されている。特許文献1によれば、細胞溶液を安定的に吐出することができるとしている。
【0004】
特許文献2では、吐出孔が形成された膜状部材と、膜状部材を加振する2つ以上の加振手段を有する液滴形成装置が開示されており、加振手段は、膜状部材の曲げモーメントの極性が異なる領域それぞれに1つ以上配置されることが開示されている。特許文献2によれば、膜状部材の変位効率の増加による十分な駆動力を有し、かつ膜状部材の残留振動の短期化による液滴の生産性向上を実現できるとしている。
【0005】
特許文献3では、ノズルが形成された、圧電材料からなるノズルプレートと、液体流路が形成された流路構造体と、前記ノズルプレートの両面の、前記ノズルの周囲領域にそれぞれ配置された、第1電極及び第2電極とを有する液体吐出装置が開示されている。特許文献3では、エネルギー付与手段によって液体流路内の液体に吐出エネルギーが付与されたときの、第1電極と第2電極の電位差に基づいて、ノズルからの液滴の吐出状態が正常か否かを判定することが開示されており、特許文献3によれば、液滴の吐出状態が正常か否かを検出することが可能になるとしている。
【0006】
また特許文献3では、ノズルプレートの、複数に分割された第1電極の間の領域に、ノズルから放射状に延びるスリットを設けることが開示されている。これにより、ノズルプレートの、第1電極(61)が配置された部分の各々が、スリットによって隣接する部分と切り離されることから、第1電極が配置された部分がそれぞれ独立して変形しやすくなるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、ノズル孔周囲の振動変位にムラが生じることを十分に防げておらず、ノズル孔から液滴を真っ直ぐに吐出できない問題を解決することが望まれている。また、ノズル孔周囲の振動変位にムラが生じる場合、ノズル孔ごとに吐出がばらついてしまい、ノズル孔ごとに液滴の速度がばらつく等、良好な吐出特性が得られないという問題があった。
【0008】
これを解決するために、例えば特許文献3のように、ノズル孔周囲の電極を分割し、各電極に異なる電位を加えることで補正し、インクが真っ直ぐ吐出するよう調整する手段も考えられる。しかし、この場合、駆動回路の構成が複雑化してしまうことに加え、ノズル孔ごとに補正値の取得が必要になり、補正にかかる手間も大きい。また、特許文献3のように電極を分割する場合、製造にかかるコストが増えてしまう。
【0009】
そこで本発明は、ノズル孔周囲の振動変位を均一にでき、良好な吐出特性が得られるとともに、コストを抑えた液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の液体吐出ヘッドは、基材層、圧電体層、第1電極及び第2電極を含む複数の層からなるノズル板と、前記ノズル板を貫通するノズル孔と、前記ノズル孔に連通する液室と、を有し、前記第1電極は、前記基材層と前記圧電体層との間に設けられ、前記第2電極は、前記圧電体層を介して前記第1電極の反対側に設けられ、前記ノズル板は、前記ノズル孔の周囲の領域に、前記ノズル孔に接続されたスリットを有し、前記第1電極及び前記第2電極は、前記スリットによって分割されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノズル孔周囲の振動変位を均一にでき、良好な吐出特性が得られるとともに、コストを抑えた液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例を示す外観斜視図である。
図2】ノズル板の一例を示す平面概略図である。
図3】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例を示す断面概略図である。
図4】本発明に係る液体吐出ヘッドの他の例を示す断面概略図である。
図5A】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例におけるノズル板が変形していない状態を説明するための断面概略図(a)及び平面概略図(b)である。
図5B】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例におけるノズル板が変形した状態を説明するための断面概略図(a)及び平面概略図(b)である。
図6】本発明に係る液体吐出ヘッドの他の例を示す断面概略図である。
図7】本発明に係る液体吐出ヘッドの他の例を示す断面概略図である。
図8】本発明に係る液体吐出ヘッドの他の例を示す断面概略図である。
図9】本発明に係る液体吐出ヘッドの他の例を示す平面概略図(a)及び(b)である。
図10】本発明に係る液体吐出ヘッドの他の例を示す平面概略図である。
図11】本発明に係る液体を吐出する装置の一例を示す概略図である。
図12】インクタンクの一例を示す概略図である。
図13】本発明に係る液体を吐出する装置の一例を示す概略図である。
図14】本発明に係る液体を吐出する装置の他の例を示す概略図である。
図15】液体吐出ユニットの一例を示す概略図である。
図16】液体吐出ユニットの他の例を示す概略図である。
図17】従来例に係る液体吐出ヘッドの断面概略図(a)及び平面概略図(b)である。
図18】その他の従来例に係る液体吐出ヘッドの平面概略図(a)及び断面概略図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0014】
(液体吐出ヘッド)
本実施形態の液体吐出ヘッドは、基材層、圧電体層、第1電極及び第2電極を含む複数の層からなるノズル板と、前記ノズル板を貫通するノズル孔と、前記ノズル孔に連通する液室と、を有し、前記第1電極は、前記基材層と前記圧電体層との間に設けられ、前記第2電極は、前記圧電体層を介して前記第1電極の反対側に設けられ、前記ノズル板は、前記ノズル孔の周囲の領域に、前記ノズル孔に接続されたスリットを有し、前記第1電極及び前記第2電極は、前記スリットによって分割されていないことを特徴とする。
【0015】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッドは、基材層、圧電体層、第1電極及び第2電極を含む複数の層からなるノズル板と、前記ノズル板を貫通するノズル孔と、前記ノズル孔に連通する液室と、を有し、前記第1電極は、前記基材層と前記圧電体層との間に設けられ、前記第2電極は、前記圧電体層を介して前記第1電極の反対側に設けられ、前記ノズル板は、前記ノズル孔の周囲の領域に、前記ノズル孔に接続されたスリットを有し、前記第1電極は、平面視における前記スリットの長手の方向の端部近傍で連続しており、かつ、前記第2電極は、平面視における前記スリットの長手の方向の端部近傍で連続していることを特徴とする。
【0016】
また、他の実施形態に係る液体吐出ヘッドは、基材層、圧電体層、第1電極及び第2電極を含む複数の層からなるノズル板と、前記ノズル板を貫通するノズル孔と、前記ノズル孔に連通する液室と、を有し、前記第1電極は、前記基材層と前記圧電体層との間に設けられ、前記第2電極は、前記圧電体層を介して前記第1電極の反対側に設けられ、前記ノズル板は、前記ノズル孔の周囲の領域であって、前記複数の層のうちの少なくとも1つの層に、前記ノズル孔に接続されたスリットを有し、前記第1電極及び前記第2電極は、前記スリットによって分割されていないことを特徴とする。
【0017】
まず本実施形態の液体吐出ヘッドの外観斜視図を図1に示す。
図示される液体吐出ヘッドでは、底面がノズル板1となっており、ノズル板1に設けられたノズル孔1aから液体を吐出する。
ノズル孔1aは、流路部材20、共通液室部材40、供給ポート71の順に通じており、供給ポート71から液体が供給される。供給ポート71の配置や数等は図示されるものに限られない。
【0018】
流路部材20は、液室(加圧室、個別液室などと称してもよい)を形成し、また液室の隔壁を構成することから隔壁部材などと称してもよい。
共通液室部材40は、共通液室を形成し、共通液室は各液室と連通する。
図示するように、本実施形態の液体吐出ヘッドはカバー72を有していてもよい。
なお、必要に応じて、循環ポートを設けて液体を循環させるようにしてもよい。
【0019】
図2は、ノズル板の一例を示す平面概略図であり、液体吐出ヘッドを下から見た場合のノズル板の平面図の一例である。液体吐出ヘッドの底面にはノズル板1が取り付けられており、ノズル板1には液体を吐出するノズル孔1aが設けられている。
【0020】
ノズル板1は、複数のノズル孔1aを配列させたノズル列を有していてもよい。ノズル列は、例えば図2(a)に示すように1列であってもよいし、図2(b)に示すように複数の列であってもよい。また、ノズル列を複数備える場合には、ノズル列をずらし、ノズル孔1aを千鳥配列にしてもよい。
【0021】
また図中の矢印10はノズル板1の短手方向を表し、矢印11はノズル板1の長手方向を表す。図に示す例のように、ノズル孔1aは長手方向に沿って配列していることが好ましいが、これに限られるものではなく、角度をつけて配列してもよい。
【0022】
次に、本実施形態の液体吐出ヘッドの断面概略図を用いて更に説明する。
図3は、液体吐出ヘッドにおけるノズル列に平行な断面概略図である。
【0023】
ノズル板1は、基材層12、圧電体層13、第1電極及び第2電極を含み、必要に応じて保護層14などを有していてもよい。また後述するように、必要に応じて撥水膜を有していてもよい。図示される例では、液室21側から、基材層12、圧電体層13、保護層14の順に形成されている。なお、ノズル板1の液体吐出面を符号1bで表している。
図3では、電極の図示を省略している。
【0024】
基材層12としては、適宜選択することができ、例えばSiを用いることができる。
圧電体層13としては、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用いることができる。また、例えばノズル孔1aの貫通方向に柱状の結晶を基材層12上に形成して圧電体層13を得ることができる。
保護層14としては、適宜選択することができ、例えば樹脂を用いることができる。
【0025】
ノズル孔1aは、ノズル板1を貫通するように形成されている。本実施形態では、例えばノズル孔1aにおける一方の穴から他方の穴に向かう方向は液体吐出方向とも称される。
【0026】
流路部材20は、ノズル孔1aに連通する液室21を有している。液室21には、ノズル孔1a以外の開口部があってもよく、液体供給経路や液体循環経路が通じていてもよい。図示する例において、流路部材20は供給路26を有しており、液体は供給路26を通って液室21に供給される。
【0027】
流路部材20は、液室21を隔てる隔壁24を有しており、流路部材20を隔壁部材とも称する。流路部材20は、ノズル板1と接合されており、接合領域を符号28で示している。
【0028】
本実施形態の液体吐出ヘッドでは、圧電体層13に電圧を印加し、変形させることで液室21内の液体に圧力をかけ、ノズル孔1aから液体(例えばインク)を吐出することができる。
【0029】
図3に示す例では、1ノズルにつき、隔壁24で隔てられた1つの液室が割り当てられているが、必ずしも各ノズルの液室が隔てられている必要はない。例えば、隔壁の一部を支柱にしてもよい。
【0030】
図4に、本実施形態のその他の例を示す。図4は、液体吐出ヘッドの断面概略図であり、ノズル配列方向と垂直な方向の断面を模式的に示す図である。ここで示す例は、隔壁24の一部を変更している。また図4では、電極の図示を省略している。
【0031】
図示するように、液室21同士を隔てる支柱25は、その上部が液室21の天井(紙面上側の箇所)と接していない。隔壁の一部、図示するように液室21同士を隔てる隔壁を支柱25にすることで、液室21間で液体が移動できるようになる。換言すると、一の液室21から他の液室21に液体が移動できる。
【0032】
また、図4に示す例では、保護層14上に撥水膜15を有している。撥水膜15を有することにより、ノズル板1が液体で汚れることをより抑制することができる。なお、図3に示す例においても撥水膜15を有していてもよい。また、撥水膜を撥液膜と称してもよい。
【0033】
次に、図5A及び図5Bを用いて本実施形態の詳細例を説明する。図5A(a)は液体吐出ヘッドの要部断面概略図であり、図5A(b)は図5A(a)の液体吐出面から見たときの要部平面概略図である。同様に、図5B(a)は液体吐出ヘッドの要部断面概略図であり、図5B(b)は図5B(a)の液体吐出面から見たときの要部平面概略図である。
【0034】
本実施形態において、ノズル板1は、基材層12、圧電体層13、第1電極16及び第2電極17を含む複数の層からなり、必要に応じて保護層14等を有していてもよい。また、ノズル板1は、ノズル孔1aの周囲の領域に、ノズル孔1aに接続されたスリット31を有する。スリット31を有することで、ノズル孔1a周囲の振動変位を均一にでき、吐出特性を向上させることができる。
【0035】
図5Aは、ノズル板1が変形していないときの状態を模式的に示す断面概略図(a)及び平面概略図(b)である。図5A(b)は、本実施形態の液体吐出ヘッドを下から見た場合の平面概略図である。換言すると、図5A(a)を液体吐出面1bから見た場合、更にいうとノズル板1の面方向と垂直な方向から見た場合の平面概略図であり、要部を図示したものである。また、図5A(b)のAA断面が図5A(a)に該当する。
【0036】
図5Bは、ノズル板1が変形したときの状態を模式的に示す断面概略図及び平面概略図である。図5B(b)は図5A(b)と同様の平面概略図である。図5B(b)のAA断面が図5B(a)に該当する。図5B(a)に示すように、ノズル孔1a周囲の領域が変位して振動することにより、液体(例えばインク)が吐出される。
【0037】
図5B(b)では、ノズル孔1a周囲の領域が変位した際に生じる張力を模式的に白矢印で図示している。本実施形態では、ノズル孔1aの周囲の領域に、ノズル孔1aに接続されたスリット31が設けられていることにより、ノズル孔1a周囲の領域を変位させた際に生じる張力を大幅に低減させることができる。このため、ノズル孔1a周囲の振動変位を均一にすることができ、液滴を真っ直ぐに吐出することができる。また、ノズル孔1a周囲の振動変位を均一にすることができるため、ノズル孔ごとに振動変位がばらつくことを抑え、またノズル孔ごとに液滴の速度がばらつくことを抑えることができる。このため、安定して吐出を行うことができ、従来よりも吐出特性を向上させることができる。
【0038】
図17に、従来例の液体吐出ヘッドの断面概略図を示す。図17図5Bと同様の図であり、ノズル板1’が変形したときの状態を模式的に示す断面概略図(a)及び平面概略図(b)である。
【0039】
従来例ではノズル孔1aの周囲の領域にスリットを有していない。そのため、ノズル孔1a周囲の振動変位を均一にすることができず、良好な吐出特性が得られない。
【0040】
図5B(b)でも模式的に図示しているように、例えば平面に形成された小さなノズル孔の周囲の部材を振動させて液体を吐出する液体吐出ヘッドにおいては、ノズル孔1a周囲の部材が変位する際に周囲の部材に張力が発生する。
【0041】
従来例においては、例えば図17(b)に示すように、ノズル孔1a周囲の部材に生じる張力は均一ではなく、周囲の部材のわずかな厚みの差や形状の差で、場所によって張力に差が生じる。このため、図17(a)に示すように、ノズル孔1a周囲の振動変位が均一にならず、またノズル孔1aの向きに傾きも生じてしまう。これにより、液滴を真っ直ぐに吐出できない問題や、ノズル孔ごとに液滴の速度がばらついてしまう問題があった。
【0042】
これを解決するために、例えば、ノズル孔周囲の電極を分割し、各電極に異なる電位を加えることで補正し、インクが真っ直ぐ吐出するよう調整する手段も考えられる。しかし、この場合、駆動回路の構成が複雑化してしまうことに加え、ノズル孔ごとに補正値の取得が必要になり、補正にかかる手間も大きい。
【0043】
これに対して、上述のように本実施形態によれば、ノズル孔1aの周囲の領域に、ノズル孔1aに接続されたスリット31が設けられていることで、ノズル孔1a周囲の振動変位を均一にでき、吐出特性を向上させることができる。また、液体吐出ヘッドにおける駆動回路の構成が複雑化する等の問題を回避できる。
【0044】
次に、スリットの詳細例について説明する。
図6は、図5A(b)のBB断面を示す断面概略図である。なお、ノズル孔1aを破線で示している。
図示するように、スリット31は、基材層12、圧電体層13、第1電極16、第2電極17及び保護層14に形成されている。このように、ノズル板1が複数の層からなる場合において、複数の層の全てにスリット31が形成されていてもよい。ノズル板1を構成する全ての層にスリットが形成されている場合、ノズル孔1a周囲の部材を変位させた際に生じる張力を大幅に低減させることができる。
【0045】
本実施形態において、第1電極16及び第2電極17は、スリット31によって分割されていない。例えば、図5A(b)に示す平面概略図、及び、図6に示す図5A(b)のBB断面の断面概略図からもわかるように、第1電極16及び第2電極17がスリット31によって分割されていない。なお、図5A(b)には、符号16a、17aを図示しており、これは連続領域とも称する。
【0046】
詳述すると、図5A(b)に示すように、第1電極16は、スリット31により区画されているものの、区画された領域どうしは連続領域16aによってつながっている。そのため、第1電極16はスリット31によって分割されていない。これにより、例えば、第1電極16に対する配線は1つでよく、区画された領域は共通の電極となる。
【0047】
同様に、第2電極17は、スリット31により区画されているものの、区画された領域どうしは連続領域17aによってつながっている。そのため、第2電極17はスリット31によって分割されていない。これにより、例えば、第2電極17に対する配線は1つでよく、区画された領域は共通の電極となる。
【0048】
なお、図5A(b)に示す例では、4つの連続領域が図示されている。また、図6には、連続領域16a、17aが図示されている。
【0049】
このように、本実施形態では、第1電極16及び第2電極17がスリット31によって分割されていないため、電極の作製が複雑化することを防止でき、また、配線が複雑化することを防止できる。このため、製造にかかるコストを抑えることができる。
【0050】
第1電極16及び第2電極17がスリット31によって分割されていないことについては別の表現も可能である。例えば、本実施形態において、第1電極16は、平面視におけるスリット31の長手の方向の端部近傍で連続しており、かつ、第2電極17は、平面視におけるスリット31の長手の方向の端部近傍で連続している。これは、図5A(b)や図5B(b)に図示されることを別の表現で記載したともいえる。平面視におけるスリット31の長手の方向の端部近傍は、連続領域16a、17aの部分に相当する。
【0051】
ここで、他の従来例について、図18を用いて説明する。図18(a)は、本従来例の平面概略図であり、図5A(b)と同様の平面概略図である。図18(b)は、本従来例の断面概略図であり、図18(a)のCC断面である。
【0052】
図示するように、第1電極16がスリット31によって分割されている。一方、第2電極17はスリット31によって分割されておらず、図18(b)には、連続領域17aが図示されている。このように、第1電極16及び第2電極17の少なくとも一方がスリット31によって分割されている場合、配線が複雑化してしまうため、製造にかかるコストが増えてしまう。また、分割された第1電極16のそれぞれに配線を行う必要があるため、コストや手間が増えてしまう。更に、配線状況などにより、分割された第1電極16や第2電極17の駆動がばらついてしまうと、ノズル孔周囲の振動変位を均一にすることができず、良好な吐出特性が得られなくなってしまう。
【0053】
次に、他の実施形態の例について説明する。上記と同様の事項については説明を省略する。
本実施形態では、ノズル板1が複数の層からなる場合において、ノズル孔1aの周囲の領域であって、複数の層のうちの少なくとも1つの層にスリットが設けられていてもよい。ノズル板1を構成する全ての層にスリットが形成されていない場合であっても、ノズル孔1a周囲の振動変位を均一にでき、本発明の効果が得られる。
【0054】
また、ノズル板1における複数の層のうちの一部の層にスリット31が設けられている場合、すなわち、ノズル板1を構成する全ての層にスリットが形成されていない場合、ノズル板1を構成する全ての層にスリットが形成されている場合に比べて、スリットからのインク蒸発を防ぐことができる。詳述すると、スリット31が全ての層に形成されていない場合、スリット31において、液室21から液体吐出面1bまで連通していないことになり、スリット31を通じてインクが乾燥することを抑制できる。このため、低湿環境や、長時間吐出が行われない環境においても、安定した吐出をすることが可能となる。
【0055】
このようなスリットについて、以下例示する。
図7は、図6と同様の断面概略図であり、図5A(b)のBB断面に相当するともいえる図である。図示する例では、保護層14にスリット31が設けられている。換言すると、ノズル板1における液体吐出面側を最表面としたとき、スリット31は、最表面の層に設けられている。
【0056】
次に、本実施形態におけるその他の例について説明する。
図8は、図7と同様の断面概略図である。図示する例では、基材層12、圧電体層13、第1電極16及び第2電極17にスリット31が設けられ、保護層14にはスリット31が設けられていない。換言すると、ノズル板1における液体吐出面側を最表面としたとき、スリット31は、最表面の層以外の層に設けられている。
【0057】
スリット31は、ノズル板1における複数の層のうち少なくともヤング率が最も高い層に設けられていることが好ましい。この場合、ノズル板1が変位しやすくなり、吐出特性をより向上させることができる。
【0058】
また、スリット31は、ノズル板1における複数の層のうちの一部の層に設けられている場合、ノズル板1における液体吐出面側を最表面としたとき、スリット31は、最表面の層以外の層に設けられていることが好ましい。この観点からすると、図7図8を比べた場合、図8に示す例が好ましい。図8に示す例では、保護層14を最表面の層としており、スリット31は最表面の層である保護層14の層に設けられている。
【0059】
この場合、ノズル板1の表面形状は凹凸部や溝を持たず平坦になるため、ノズル板1の表面(液体吐出面)の凹凸部や溝にインクがつまることやインクが固着することを防ぐことができる。これにより、長期間にわたって安定した吐出状態を維持しやすくなり、良好な吐出特性を維持しやすくなる。
【0060】
スリット31の形状としては、適宜選択することができるが、ノズル孔1aの中心から放射線状に伸びる形状であることが好ましい。ノズル孔1aの中心から放射線状に伸びる形状とすることで、ノズル板1が変形するときの張力がより小さくなるため、より安定して曲がりのない液滴を吐出することができる。
【0061】
放射線状に伸びる形状としては、適宜選択することができ、図5A(b)及び図5B(b)に示したような十字の形状としてもよい。
また、スリット31の形状のその他の例を図9に示す。図9は、図5と同様の平面概略図である。図9(a)は図5に示す例よりもスリット31の数が多い例であり、図9(b)は図5に示す例よりもスリット31の数が少ない例である。図5及び図9(a)に示す例は、放射線状に伸びる形状の例であるといえる。
【0062】
スリット31の形状としては、特に制限されるものではないが、図5A(b)及び図5B(b)に示したような十字の放射状に伸びる形状であることがより好ましい。この場合、スリット31を形成する箇所を減らしつつ、ノズル孔1a周囲の領域に生じる張力を低減することができる。
【0063】
また、スリット31の形状としては、ノズル孔1aの中心に対して回転対称となるように配置されていることが好ましい。図5及び図9に示す例は、回転対象となるように配置されている例である。この場合、ノズル板1の変形時に、変形の大きさに偏りが生じることを抑制でき、より安定して曲がりのない液滴を吐出することができる。
【0064】
また、スリット31の一部又は全部が、弾性を有する部材で封止されていることが好ましい。この場合、スリット31による張力を低減する効果が得られつつ、スリット31にインクが入り込むことを抑制できる。このため、スリット31に入り込んだインクが乾燥することで生じる問題を防止でき、例えば、スリット31による張力を低減する効果が下がることを防止できる。また、最表面の層にスリット31が形成されている場合、スリット31の一部又は全部が弾性を有する部材で封止されていることにより、インクの詰まりや固着を防ぐことができる。
【0065】
弾性を有する部材としては、適宜選択することができ、公知の部材を用いることができる。
【0066】
スリット31の一部又は全部が弾性を有する部材で封止されている場合の例を図10に示す。図10は、図5と同様の平面概略図である。図示するように、スリット31が弾性部材32により封止されている。この例では、スリット31の全部が弾性部材32で封止されている。
【0067】
本実施形態において、スリットを形成する方法としては、適宜選択することができる。例えば、ノズル板1の複数の層を形成した後にスリットを作製してもよいし、ノズル板1の複数の層を形成する際に、各層がスリット形状を有するように各層を形成してもよい。
【0068】
(液体を吐出する装置、液体吐出ユニット)
次に、本発明の液体を吐出する装置について説明する。以下、本発明の液体を吐出する装置の一例として記録装置を例に挙げて説明する。
本発明の液体吐出ヘッドは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/複合機、立体造形装置、バイオプリンターなどに使用することができる。
【0069】
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
【0070】
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
【0071】
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
【0072】
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。また、記録装置には、特に限定しない限り、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
【0073】
記録装置の一例について図11及び図12を参照して説明する。図11は同装置の斜視説明図である。図12はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。
【0074】
ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
【0075】
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0076】
なお、記録に用いる記録媒体としては、特に限定されないが、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙等が挙げられる。
【0077】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の他の例について図13及び図14を参照して説明する。図13は同装置の要部平面説明図、図14は同装置の要部側面説明図である。
【0078】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0079】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズル11からなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0080】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0081】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0082】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0083】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0084】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0085】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0086】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズル11が形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0087】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0088】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0089】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0090】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0091】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について図15を参照して説明する。図15は同ユニットの要部平面説明図である。
【0092】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0093】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0094】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について図16を参照して説明する。図16は同ユニットの正面説明図である。
【0095】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0096】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0097】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0098】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0099】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0100】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像
が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0101】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0102】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0103】
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
【0104】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0105】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0106】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0107】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0108】
例えば、液体吐出ユニットとして、図14で示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0109】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0110】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、図15で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0111】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0112】
また、液体吐出ユニットとして、図16で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
【0113】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0114】
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0115】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0116】
1 ノズル板
1a ノズル孔
1b 液体吐出面
12 基材層
13 圧電体層
14 保護層
15 撥水膜
16 第1電極
17 第2電極
20 流路部材
21 液室
24 隔壁
25 支柱
26 供給路
31 スリット
32 弾性部材
40 共通液室部材
71 供給ポート
72 カバー
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 液体吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0117】
【特許文献1】特開2019-150069号公報
【特許文献2】特開2020-018288号公報
【特許文献3】特開2009-126155号公報
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18