(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023073801
(43)【公開日】2023-05-26
(54)【発明の名称】ダンパ部材、一体型ダンパ部材、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 613
B41J2/14 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186491
(22)【出願日】2021-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】平林 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】黒田 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌央
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG75
2C057AN01
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】ダンパの物性の自由度を高めたダンパ部材を提供する。
【解決手段】凹部141を有するフレーム部材104と共通液室121を有するアクチュエータ基板102とに接合され、前記アクチュエータ基板102と接合されたときに前記共通液室121の壁面の一部を形成するダンパ131を有するダンパ部材103であって、前記ダンパ131は、複数の層からなる積層構造であり、積層方向の中心から積層方向に対して対称な構成であることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有するフレーム部材と共通液室を有するアクチュエータ基板とに接合され、前記アクチュエータ基板と接合されたときに前記共通液室の壁面の一部を形成するダンパを有するダンパ部材であって、
前記ダンパは、複数の層からなる積層構造であり、積層方向の中心から積層方向に対して対称な構成であることを特徴とするダンパ部材。
【請求項2】
前記ダンパは、弾性コンプライアンスが7×10-17Pa-1以上であることを特徴とする請求項1に記載のダンパ部材。
【請求項3】
前記ダンパは、ヤング率が3GPa以上200GPa以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のダンパ部材。
【請求項4】
前記ダンパは、膜応力が-200MPa以上200MPa以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のダンパ部材。
【請求項5】
前記ダンパは、厚みが2μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のダンパ部材。
【請求項6】
前記ダンパの複数の層は、Si、Poly-Si、SiN、SiO2及びAl2O3から選ばれることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のダンパ部材。
【請求項7】
前記フレーム部材と、請求項1~6のいずれかに記載のダンパ部材とを有し、
前記フレーム部材と前記ダンパ部材とが接合されていることを特徴とする一体型ダンパ部材。
【請求項8】
前記フレーム部材と、前記アクチュエータ基板と、ダンパ部材と、ノズル基板とを有する液体吐出ヘッドであって、
前記ノズル基板は、ノズルを有し、前記アクチュエータ基板と接合され、
前記アクチュエータ基板は、前記ノズルに連通する個別液室を有し、
前記ダンパ部材は、請求項1~6のいずれかに記載のダンパ部材であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記アクチュエータ基板と、一体型ダンパ部材と、ノズル基板とを有する液体吐出ヘッドであって、
前記ノズル基板は、ノズルを有し、前記アクチュエータ基板と接合され、
前記アクチュエータ基板は、前記ノズルに連通する個別液室を有し、
前記一体型ダンパ部材は、請求項7に記載の一体型ダンパ部材であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項11】
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化したことを特徴とする請求項10に記載の液体吐出ユニット。
【請求項12】
請求項8又は9に記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項10若しくは11に記載の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ部材、一体型ダンパ部材、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドでは、半導体プロセスによって形成するSi系のメンブレンを持つダンパ部材を活用する技術が知られている。
【0003】
特許文献1では、共通液室の壁面の一部を形成する変形可能なダンパを有するダンパ部材を備えた液体吐出ヘッドが開示されている。特許文献1のダンパ部材では、共通液室の長手方向端部側に向かうに従って厚みが厚くなる厚肉部分が設けられている。特許文献1によれば、共通液室内の気泡排出性を向上することができるとしている。
【0004】
特許文献2では、記複数の圧力チャンバそれぞれの他端部に対応する位置に複数のダンパが貫通形成された中間基板を備えた圧電方式のインクジェットプリントヘッドが開示されている。特許文献2によれば、インクの吐出時にクロストークを抑制できるとしている。また中間基板には、マニホールドの内圧の変化を緩和させるダンピングメンブレインが設けられており、ダンピングメンブレインの下部にキャビティが形成されている。また、中間基板であるSi基板の一部を薄膜化してダンピングメンブレインを形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に開示されているダンパでは、応力等が偏在する場合があり、ダンパの機能が十分に発揮されない場合がある。しかしながら、ダンパの機能を十分に発揮させるために物性を調整して最適化しようとしても、従来技術ではダンパの物性を調整しにくいという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、ダンパの物性の自由度を高めたダンパ部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のダンパ部材は、凹部を有するフレーム部材と共通液室を有するアクチュエータ基板とに接合され、前記アクチュエータ基板と接合されたときに前記共通液室の壁面の一部を形成するダンパを有するダンパ部材であって、前記ダンパは、複数の層からなる積層構造であり、積層方向の中心から積層方向に対して対称な構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ダンパの物性の自由度を高めたダンパ部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のダンパ部材及び液体吐出ヘッドの一例を説明するための斜視分解概略図である。
【
図2】本発明のダンパ部材及び液体吐出ヘッドの一例を説明するための断面概略図である。
【
図3】本発明のダンパ部材及び液体吐出ヘッドの一例を説明するための断面概略図である。
【
図4】本発明におけるダンパの一例を説明するための断面概略図である。
【
図5】本発明のダンパ部材及び液体吐出ヘッドの一例を説明するための他の断面概略図である。
【
図6】本発明の一体型ダンパ部材の一例を説明するための断面概略図(A)~(C)である。
【
図7】液体を吐出する装置の一例における概略図である。
【
図8】液体を吐出する装置の他の例における概略図である。
【
図9】液体吐出ユニットの一例における概略図である。
【
図10】液体吐出ユニットの他の例における概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るダンパ部材、一体型ダンパ部材、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
本発明のダンパ部材は、凹部を有するフレーム部材と共通液室を有するアクチュエータ基板とに接合され、前記アクチュエータ基板と接合されたときに前記共通液室の壁面の一部を形成するダンパを有するダンパ部材であって、前記ダンパは、複数の層からなる積層構造であり、積層方向の中心から積層方向に対して対称であることを特徴とする。
なお、フレーム部材が有する凹部はキャビティなどと称してもよく、ダンパはメンブレンなどと称してもよい。
【0012】
また、本発明の液体吐出ヘッドは、本発明のダンパ部材を有し、その他、フレーム部材、アクチュエータ基板、ノズル基板等を有する。本発明では、ダンパ部材とフレーム部材は一体型のダンパ部材としてもよい。
【0013】
本実施形態のダンパ部材及び液体吐出ヘッドを説明するための図を
図1に示す。
図1は、本実施形態の液体吐出ヘッドの分解斜視図を模式的に説明するための図である。本実施形態の液体吐出ヘッドは、ノズル基板101、アクチュエータ基板102、ダンパ部材103、フレーム部材104を有している。
【0014】
ノズル基板101は、液体(例えばインク)を吐出するノズル111を有している。
アクチュエータ基板102は、共通液室121を有し、ノズル基板101とダンパ部材103とに接合される。図示される共通液室121は模式的に示すものであり、図示されるものに限られない。
フレーム部材104は、後述の凹部を有しており、ダンパ部材103と接合される。
【0015】
ダンパ部材103は、フレーム部材104とアクチュエータ基板102とに接合される。接合方式は、後述するように適宜選択することができる。
【0016】
ダンパ部材103は、アクチュエータ基板102と接合されたときに共通液室121の壁面の一部を形成するダンパ131を有する。図示されるダンパ131の形状は、模式的に示すものであり、図示されるものに限られない。
【0017】
ダンパ部材103を用いることにより、ダンパ131が振動することで、液の振動を抑えることができる。例えば、ダンパ部材103を用いることにより、アクチュエータ基板102上に形成されている支流(流路)を流れる液体の振動を抑えることができる。また、1つのノズル単位をチャネルとしたとき、あるチャネルで生じた振動が他のチャネルに伝搬することを抑制できる。
【0018】
次に、本実施形態のダンパ部材を説明するための図を
図2及び
図3に示す。
図2は、本実施形態の液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面概略図であり、
図1のAA断面概略図に相当する。
図3は、本実施形態の液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面概略図であり、
図1のBB断面概略図に相当する。
【0019】
図示するように、フレーム部材104は凹部141を有している。凹部141が設けられていることにより、例えばダンパ131が変形した場合にダンパ131がフレーム部材104と接触しないようにすることができる。凹部141は、キャビティ、ダンパ領域、ダンパ室などと称されてもよい。
【0020】
図2及び
図3に示す例では、フレーム部材104とダンパ部材103が接着剤151で接合されているが、接合方式はこれに限られない。
【0021】
アクチュエータ基板102は共通液室121を有しており、ダンパ部材103がアクチュエータ基板102と接合されたときに、ダンパ131は共通液室121の壁面の一部を形成する。例えば、共通液室121中の液体に振動が生じた場合に、ダンパ131が振動することで液体の振動を抑えることができる。隣接するチャネルへの圧力伝搬やインク流量変動に対する変動を緩和することができる。例えば、アクチュエータ基板102内の液室や流路の圧力の変動を緩和することができる。
【0022】
ダンパ部材103は、例えば、ダンパ131と周辺厚肉部132を有する。周辺厚肉部132は、アクチュエータ基板102と接合される箇所である。周辺厚肉部132を設けることで、アクチュエータ基板102やフレーム部材104との接合性が向上するが、周辺厚肉部132を有していない構成であってもよい。
【0023】
図示する例では、アクチュエータ基板102において共通液室121のみを図示しているが、アクチュエータ基板102は他にも個別液室、圧電素子、流路等を有していてもよい。例えば、個別液室はノズル基板101が有するノズル111に連通する。ノズル111の形状、配置、個数は、図示されるものに限られず、適宜選択することができる。
【0024】
本実施形態のダンパ部材を説明するための他の図を
図4に示す。
図4は、
図3のアクチュエータ基板102を説明するための断面概略図である。
【0025】
図示するように、アクチュエータ基板102は、例えば振動板125と流路板127を有する。また、アクチュエータ基板102は、ノズル111に連通する個別液室122を有し、その他にも流体抵抗123、圧電素子124(圧力発生手段)、流路126等を有する。また、流路126と流体抵抗123との間には、流路126(共通流路)から流体抵抗123に導入する導入流路が設けられている。本例では、圧電素子124により個別液室122内の液体に圧力が印加され、ノズル111から液体が吐出される。個別液室122には、共通液室121から流路126を通って液体が供給される。
【0026】
次に、本実施形態におけるダンパの詳細例について説明する。
本実施形態において、ダンパは、複数の層からなる積層構造であり、積層方向の中心から積層方向に対して対称な構成である。
【0027】
ダンパを複数の層からなる積層構造にすることで、ダンパの物性をコントロールしやすくすることができる。例えば、各層の種類(材料)や厚みを適宜選択でき、積層数を適宜選択することができる。ダンパが一層である場合、膜種に依存した物性を変更することができない。一方で、積層構造にすると、ダンパの応力等が偏在する場合があり、ダンパとしての機能を発揮できない場合がある。そこで、本実施形態では、ダンパを複数の層からなる積層構造にするとともに、積層方向の中心から積層方向に対して対称の構成にする。これにより、ダンパの物性の自由度を高める利点を確保しつつ、応力等の偏りを抑えることができる。
【0028】
また、ダンパを積層方向に中心から対称に設計することで、ダンパの膜応力や剛性中心の制御がしやすくなる。本実施形態によれば、液体の振動における負圧、陽圧のいずれに対してもダンパが同等の変形量に変形でき、またリニアに変形することができ、効率的な振動抑制が可能となる。
【0029】
ダンパの積層構造の一例を
図5に示す。
図5は、
図2及び
図3に示す破線の円部分における断面概略図である。
【0030】
図示する例では、積層方向の下側から順に第1層301~第5層305の5層の構造としている。図中の破線は、積層方向における中心を示している。
本例では、第1層301及び第5層305をSiO2とし、第2層302及び第4層304をPoly-Siとし、第3層303をSiNとしている。すなわち、積層方向における中心を境にして対応する層同士は、同じ材料、成分で形成されている。
【0031】
各層の厚みについては、適宜選択することができるが、積層方向における中心を境にして対応する層同士は、同じ厚みにする。例えば、第1層301と第5層305を同じ厚みにし、第2層302と第4層304を同じ厚みにする。
【0032】
また、積層方向における中心を境に、例えば上の部分を上層と称し、下の部分を下層と称したとき、上層の厚みaと下層の厚みbは同じになる。積層方向における中心とは、ダンパ131の全厚みの半分の箇所(1/2の箇所)であるともいえる。
【0033】
このように、本実施形態におけるダンパ131は、積層方向の中心から積層方向に対して対称な構成になっている。
【0034】
各層の材料、積層数等は、上記に限られるものではなく、適宜変更することができる。例えば、図示する例では5層の積層構造としたが、これに限られず、3層であってもよいし、その他の数であってもよい。
【0035】
ダンパが複数の層からなる積層構造であることにより、各層の材料や各層の厚み等を調整することができ、膜全体の物性を任意に設計できる。これにより、膜物性の自由度を高めることができ、ダンパの機能に最適な層構成を設定しやすくなる。
【0036】
ダンパは、弾性コンプライアンスが7×10-17Pa-1以上であることが好ましい。ダンパの機能を十分に発揮させるには、弾性コンプライアンスを好適な範囲に調整することが重要である。ダンパの弾性コンプライアンスを上記の範囲にすることにより、ダンパの機能に最適な層構成を設定しやすくなる。
【0037】
ダンパの弾性コンプライアンスは、液体が流れる支流寸法をそのままとすると、ダンパの膜厚とヤング率によって決定される。制限されるものではないが、ダンパは、ヤング率が3GPa以上200GPa以下であることが好ましい。この場合、ダンパの弾性コンプライアンスを上記の好ましい範囲にしやすくなるとともに、液体の伝搬をより抑えることができる。
【0038】
ダンパは、厚みが2μm以上10μm以下であることが好ましい。この場合、ダンパの弾性コンプライアンスを上記の好ましい範囲にしやすくなるとともに、液体の伝搬をより抑えることができる。
【0039】
ダンパの機能を十分に発揮させるには、膜応力を好適な範囲に調整することも重要である。ダンパは、膜応力が-200MPa以上200MPa以下であることが好ましい。引っ張り応力が強すぎればダンパが破断する場合があり、圧縮応力が強すぎればダンパが座屈し、皺が発生する場合がある。膜応力が上記の範囲であることにより、ダンパの破断を防ぎ、ダンパの形状を保つことができるため、液体の伝搬をより抑えることができる。
【0040】
ダンパの膜応力の好適な範囲は、各層の材料をどのように選択するかによっても適宜変更することが可能である。例えば、SiO2、SiN、Poly-Siからなる積層構造である場合、300MPaでダンパが破損し、-100MPa程度になると、実施には耐えられるものの、座屈が生じ始める。このようなことも考慮し、ダンパの破断や座屈等を防げる範囲として、ダンパの膜応力は-200MPa以上200MPa以下であることが好ましい。また、延性のない脆性材料を用いる場合においても、ダンパの膜応力は-200MPa以上200MPa以下であることが好ましいといえる。
【0041】
層を構成する材料としては、適宜選択でき、例えばSi、Poly-Si、SiN、SiO2、Al2O3等が挙げられる。これら例示した材料を用いることにより、弾性コンプライアンス、膜応力、ヤング率を上記の好ましい範囲にしやすくなる。上記の他にも、蒸着やスピンコートを用いた有機材料も使用できる。
【0042】
次に、本実施形態の一体型ダンパ部材について説明する。
本実施形態では、フレーム部材と、本実施形態のダンパ部材とを有し、前記フレーム部材と前記ダンパ部材とが接合された一体型ダンパ部材が提供される。
【0043】
本実施形態の一体型ダンパ部材の一例を
図6に示す。一体型ダンパ部材は、例えば、ダンパ部材と、フレーム部材を、半導体プロセスを活用して一体化することにより作製できる。
【0044】
図6(A)に示す一体型ダンパ部材では、フレーム部材104とダンパ部材103が接着剤151で接合されている。この一体型ダンパ部材は、例えば、多層膜であるダンパ131を成膜したウェハをフレーム部材104に接着剤151で貼り付け、ウェハの基板部分を除去することにより作製できる。
【0045】
なお、基板部分とあるのは、例えば、フレーム部材104と対応する部分以外の箇所であるともいえる。その他にも、ダンパ131がフレーム部材104の面積と同じである場合、換言すると、ダンパ131がフレーム部材104と同じ箇所に形成されている場合、基板部分とはダンパ131以外の箇所であるともいえる。
【0046】
図6(B)に示す一体型ダンパ部材では、フレーム部材104とダンパ部材103が直接接合されている。この一体型ダンパ部材は、例えば、多層膜であるダンパ131を成膜したウェハをフレーム部材104に一体化接合にて貼り付け、基板部分を除去することにより作製できる。
【0047】
接合としては、接着接合と直接接合の2種を用いることができる。
直接接合としては、加圧等での接合と、成膜での接合を用いることができる。
【0048】
図6(A)及び
図6(B)では、ダンパ部材103とフレーム部材104を別々に作製した後、接合している。この場合、フレーム部材104の凹部141を形成する方法としては、適宜選択することができ、例えば、犠牲層を用いたエッチングといった方法により形成することができる。
【0049】
図6(C)に示す一体型ダンパ部材では、フレーム部材104とダンパ部材103とが一体として形成されている。この一体型ダンパ部材は、例えば、多層膜であるダンパ131を成膜したウェハとフレーム部材104とを一体として形成し、その後、フレーム部材104における凹部141となる部分を除去することにより作製できる。このように、本実施形態の一体型ダンパ部材は、一枚のウェハに直接ダンパを形成することによっても作製することができる。
【0050】
図6(C)に示す一体型ダンパ部材の場合、凹部141を形成するために、凹部141の天井部分を除去している。このように、天井部分がない場合であっても凹部に含まれるが、ダンパ領域などと称することが好ましい。
【0051】
(液体を吐出する装置及び液体吐出ユニット)
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について
図7及び
図8を参照して説明する。
図7は同装置の要部平面説明図、
図8は同装置の要部側面説明図である。
【0052】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0053】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0054】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0055】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0056】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0057】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0058】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0059】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0060】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0061】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0062】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0063】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0064】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0065】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図9を参照して説明する。
図9は同ユニットの要部平面説明図である。
【0066】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0067】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0068】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図10を参照して説明する。
図10は同ユニットの正面説明図である。
【0069】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0070】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0071】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0072】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0073】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0074】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0075】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0076】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0077】
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
【0078】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0079】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0080】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0081】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0082】
例えば、液体吐出ユニットとして、
図8で示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0083】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0084】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、
図9で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0085】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0086】
また、液体吐出ユニットとして、
図10で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
【0087】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0088】
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0089】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0090】
101 ノズル板
102 アクチュエータ基板
103 ダンパ部材
104 フレーム部材
111 ノズル
121 共通液室
131 ダンパ
132 周辺厚肉部
141 キャビティ
151 接着剤
301~305 第1層~第5層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特開2016-168804号公報
【特許文献2】特許第4823714号公報