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特開2023-74152曲げ状態推定装置、曲げ状態推定方法、およびプログラム
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  • 特開-曲げ状態推定装置、曲げ状態推定方法、およびプログラム 図1
  • 特開-曲げ状態推定装置、曲げ状態推定方法、およびプログラム 図2A
  • 特開-曲げ状態推定装置、曲げ状態推定方法、およびプログラム 図2B
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  • 特開-曲げ状態推定装置、曲げ状態推定方法、およびプログラム 図5
  • 特開-曲げ状態推定装置、曲げ状態推定方法、およびプログラム 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074152
(43)【公開日】2023-05-29
(54)【発明の名称】曲げ状態推定装置、曲げ状態推定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
G01M11/00 R
G01M11/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021186947
(22)【出願日】2021-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴章
(72)【発明者】
【氏名】河合 伸悟
(72)【発明者】
【氏名】乾 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】平野 章
【テーマコード(参考)】
2G086
【Fターム(参考)】
2G086CC02
2G086CC07
(57)【要約】
【課題】伝送路の曲げに関する定量的な情報を推定する装置を提供する。
【解決手段】波長の異なる2つ以上の光を使用して測定された伝送路の曲げに起因する曲げ損失と、異なる波長に対応する曲げ損失の比と前記伝送路の曲げの曲率との関係に基づいて、前記伝送路の曲げの曲率を推定する曲率推定部と、を備える曲げ状態推定装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長の異なる2つ以上の光を使用して測定された伝送路の曲げに起因する曲げ損失と、異なる波長に対応する曲げ損失の比と前記伝送路の曲げの曲率との関係に基づいて、前記伝送路の曲げの曲率を推定する曲率推定部と、
を備える曲げ状態推定装置。
【請求項2】
波長の異なる2つ以上の光を使用して測定された伝送路の曲げに起因する曲げ損失に基づいて、波長ごとの曲げ損失の比を示す損失比を算出する損失比算出部と、
をさらに備え、
前記曲率推定部は、前記損失比と前記伝送路の曲げの曲率との関係に基づいて。前記伝送路の曲げの曲率を推定する、
請求項1に記載の曲げ状態推定装置。
【請求項3】
前記曲げ損失、前記曲率推定部により推定された曲率、及び前記曲げの曲率と前記曲げの曲率における曲げの角度あたりの曲げ損失を示す損失係数との関係に基づいて、前記曲げの角度を推定する曲げ角度推定部と、
をさらに備える、
請求項2に記載の曲げ状態推定装置。
【請求項4】
前記損失比算出部は、異なる3つ以上の波長の光を使用して測定された前記曲げ損失から、異なる波長に係る損失の組み合わせに基づいて複数の損失比を算出し、
前記曲率推定部は、前記複数の損失比それぞれに基づいて前記曲率に係る複数の曲率標本を推定し、前記複数の曲率標本に基づいて、前記曲率を推定する
請求項2又は請求項3に記載の曲げ状態推定装置。
【請求項5】
前記損失比算出部により算出される前記損失比に基づいて、前記伝送路に曲げがあるか否かを推定する曲げ有無推定部と、
をさらに備える請求項2から4のいずれか一項に記載の曲げ状態推定装置。
【請求項6】
波長の異なる2つ以上の光を使用して測定された伝送路の曲げに起因する曲げ損失と、異なる波長に対応する曲げ損失の比と前記伝送路の曲げの曲率との関係に基づいて、前記伝送路の曲げの曲率を推定する曲率推定ステップと、
を有する曲げ状態推定方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の曲げ状態推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ状態推定装置、曲げ状態推定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの伝送路に生じた曲げは、通信品質の劣化や光ファイバの破損・断線につながることがある。そのため、光ファイバの曲げの状態や位置を把握することは光通信の設備の点検において重要である。例えば、非特許文献1には光ファイバの曲げの状態や位置を把握するために、複数の異なる波長を使用して伝送路の損失を測定できるOTDR(optical time-domain reflectometer)を使用して、異なる波長に対応する損失の差が10dB以上であるときに伝送路に曲げが生じていると判断することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】M. F. M. Salleh and Z. Zakaria, “Optical Fiber Bending Detection on Long Distance OPGW using OTDR,” TELKOMNIKA, Vol.13, No.3, September 2015, pp. 889-893, 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載された発明は曲げの有無を推定するのみであり、曲げに関する定量的な値は推定することができない。
本発明の目的は、伝送路の曲げに関する定量的な情報を推定する曲げ状態推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、波長の異なる2つ以上の光を使用して測定された伝送路の曲げに起因する曲げ損失と、異なる波長に対応する曲げ損失の比と前記伝送路の曲げの曲率との関係に基づいて、前記伝送路の曲げの曲率を推定する曲率推定部と、を備える曲げ状態推定装置である。
【0006】
本発明の一態様は、波長の異なる2つ以上の光を使用して測定された伝送路の曲げに起因する曲げ損失と、異なる波長に対応する曲げ損失の比と前記伝送路の曲げの曲率との関係に基づいて、前記伝送路の曲げの曲率を推定する曲率推定ステップと、を有する曲げ状態推定方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、伝送路の曲げに関する定量的な情報を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る曲げ状態推定システムの構成を示す図である。
図2A】伝送路に曲げが生じていないときの損失測定装置による測定結果を示す図である。
図2B】伝送路に曲げが生じているときの損失測定装置による測定結果を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る曲げ状態推定装置の構成を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る損失比曲率関係記憶部に記憶されるテーブルの一例である。
図5】第1の実施形態に係る損失係数記憶部に記憶されるテーブルの一例である。
図6】第1の実施形態に係る曲げ状態推定装置の動作を示すフローチャートである。
図7】第2の実施形態に係る損失比曲率関係記憶部が記憶するテーブルの一例である。
図8】第3の実施形態に係る曲げ状態推定装置を示す図である。
図9】第3の実施形態に係る曲げ状態推定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0010】
〈第1の実施形態〉
図1は、第1の実施形態に係る曲げ状態推定システム1の構成を示す図である。曲げ状態推定システム1は、伝送路11、損失測定装置12、曲げ状態推定装置13及び表示装置14を備える。
【0011】
伝送路11は、例えば光ファイバであり、光信号を伝送する。伝送路11は、損失測定装置12により伝送損失が測定され、曲げ状態推定装置13により曲げ状態が推定される。
【0012】
損失測定装置12は、光を使用して伝送路11の伝送損失を測定する。損失測定装置12は例えばOTDRであって、伝送路11にパルス光を送出し、送出した光が後方散乱し、伝送路を逆戻りする光を測定することで伝送路11の伝送損失を測定する。
図2Aは、伝送路に曲げが生じていないときの損失測定装置12による測定結果を示す図である。図2Bは、伝送路に曲げが生じているときの損失測定装置12による測定結果を示す図である。図2Aにおいて、損失測定装置12が測定する反射光のパルス強度は反射した位置が損失測定装置12からの距離が離れるに従って線形に小さくなる。しかしながら、図2Bにおいて損失測定装置12が測定する反射光のパルス強度は、曲げが生じている位置以遠からの反射光は少なくなることから、当該位置において反射光のパルス強度は急激に小さくなり段差が確認される。急激に小さくなる前のパルス強度の大きさと急激に小さくなる後のパルス強度の大きさとの差を「曲げ損失」と呼ぶ。損失測定装置12は、例えば損失測定装置12からの距離に対する反射光パルス強度の減少率が所定の値以上であるときに、パルス強度が急激に小さくなったと判定する。
【0013】
損失測定装置12は異なる波長の光を送出することで伝送路11の曲げ損失を測定することができる。損失測定装置12により測定される曲げ損失は送出する光の波長により異なる。これは、波長により光の伝播特性が変わるためであり、一般的に波長が長い方が曲げ損失は大きくなる。
【0014】
損失測定装置12により測定される曲げ損失は、伝送路11に生じる曲げの曲率や角度に依存する。曲げ損失は曲げの角度と線形の関係がある。
曲げ損失は式(1)により表すことができる。
【0015】
【数1】
【0016】
ここでLは曲げ損失である。kは損失係数であって、損失測定装置12の送出光の波長及び伝送路11に生じる曲げの曲率により決定される数である。θは伝送路11に生じる曲げの角度である。
【0017】
曲げ状態推定装置13は、損失測定装置12による測定結果に基づいて伝送路11における曲げ状態を推定する。
【0018】
表示装置14は、曲げ状態推定装置13による出力に基づいて曲げ状態に係る値を表示する。
【0019】
図3は、第1の実施形態に係る曲げ状態推定装置13の構成を示す図である。
曲げ状態推定装置13は、伝送損失取得部130、損失比算出部131、曲率推定部132、損失比曲率関係記憶部133、曲げ角度推定部134、損失係数記憶部135、出力部136を備える。
【0020】
伝送損失取得部130は、損失測定装置12より測定された曲げ損失を示すデータを取得する。
【0021】
損失比算出部131は、損失測定装置12の送出光の波長別に測定される曲げ損失に基づいて、2つの波長に係る曲げ損失の比(損失比)を算出する。例えば、損失比算出部131により算出される損失比は式(2)により表される。
【0022】
【数2】
【0023】
ここでαは損失比であり、Lは損失測定装置12の送出光の波長λに対応する曲げ損失であり、Lは損失測定装置12の送出光の波長λに対応する曲げ損失である。曲げ損失L及びLが式(1)に従う場合、損失比αは損失係数に依存する数であり、曲げの角度に依存しない。つまり、波長λ、λを固定すると、損失比と曲げの曲率は1対1の関係になる。波長λ、λは例えば一般的なOTDRが送出できる光パルスの波長であり、例えばλは1310nm、λは1550nmである。
【0024】
曲率推定部132は、損失比算出部131により算出された損失比と損失比曲率関係記憶部133に記憶された損失比と曲率との関係に基づいて伝送路11に生じている曲げの曲率を推定する。損失比と曲率との関係は、例えば損失比と曲率との関係式であり、損失測定装置12の送出光の波長がλ及びλである場合の損失比と曲率との関係式である。損失比曲率関係記憶部133が記憶する関係式は、損失測定装置12が送出する光と同じ波長の光を送出し伝送路の伝送損失を測定することができる装置と、伝送路11と同じ伝送損失を示す伝送路を用いて、伝送路に生じる曲げの曲率を変化させて損失比を測定し、例えば最小二乗法などの手法を適用することで作成された式である。損失比は角度に依存する値ではないため、伝送路に生じる曲げの曲率を変化させるときに曲げの角度は一定に保たれなくてもよい。曲率推定部132は、損失比算出部131により算出された損失比を損失比と曲率との関係式に代入することで曲率を推定する。
【0025】
損失比と曲率との関係は、損失比と曲率との関係を示すテーブルであってもよい。図4は、第1の実施形態に係る損失比曲率関係記憶部133に記憶されるテーブルの一例である。図4に示すテーブルは、損失測定装置12と同等の装置と伝送路11と同等の伝送路を用いて、伝送路に生じる曲げの曲率を変化させて損失比を測定することで作成される。
【0026】
曲率推定部132は、損失比算出部131により算出された損失比と最も近い損失比の値を損失比曲率関係記憶部133に記憶されたテーブルから見つけ出し、見つけ出した損失比に対応する曲率を伝送路11に生じている曲げの曲率と推定してもよい。
【0027】
曲げ角度推定部134は、損失測定装置12により測定された曲げ損失、曲率推定部132により推定された曲げの曲率及び損失係数記憶部135に記憶された曲率と損失係数との関係に基づいて曲げ角度を推定する。曲率と損失係数との関係は例えば曲率と損失係数との関係式であって、損失測定装置12の送出光の波長がλである場合の曲率と損失係数との関係式である。損失係数記憶部135により記憶される関係式は、損失測定装置12と同等の装置と伝送路11と同等の伝送路を用いて、送出光の波長をλに設定し伝送路に生じる曲げの曲率を変化させて、曲げ損失と曲げ角度を測定し、例えば最小二乗法などの手法を適用することで作成された式である。曲げ角度推定部134は、曲率推定部132により推定された曲げの曲率を曲率と損失係数との関係式に代入して損失係数を推定する。その後、曲げ角度推定部134は、推定した損失係数と損失測定装置12により測定された曲げ損失とを式(1)に代入し、曲げ角度を推定する。
【0028】
出力部136は、曲率推定部132により推定された曲げの曲率及び曲げ角度推定部134により推定された曲げ角度を示すデータを表示装置14に出力する。
【0029】
曲率と損失係数との関係は、曲率と損失係数との関係を示すテーブルであってもよい。図5は、第1の実施形態に係る損失係数記憶部135に記憶されるテーブルの一例である。図5に示すテーブルは損失測定装置12の送出光の波長がλである場合の曲げの曲率と損失係数の関係である。図5に示すテーブルは、損失測定装置12と同等の装置と伝送路11と同等の伝送路を用いて、送出光の波長をλに設定し伝送路に生じる曲げの曲率を変化させて、曲げ損失と曲げ角度を測定することで作成されたテーブルである。
【0030】
曲げ角度推定部134は、曲率推定部132により推定された曲率と最も近い曲率の値を損失係数記憶部135に記憶されたテーブルから見つけ出すことで損失係数を推定してもよい。
【0031】
図6は、第1の実施形態に係る曲げ状態推定装置13の動作を示すフローチャートである。
伝送損失取得部130は、損失測定装置12より測定された曲げ損失を示すデータを取得する(ステップS10)。損失比算出部131は、損失測定装置12の送出光の波長により別々に測定される曲げ損失の比である損失比を算出する(ステップS11)。曲率推定部132は、損失比算出部131により算出された損失比と損失比曲率関係記憶部133に記憶された損失比と曲率との関係に基づいて伝送路11に生じている曲げの曲率を推定する(ステップS12)。曲げ角度推定部134は、損失測定装置12により測定された曲げ損失、曲率推定部132により推定された曲げの曲率及び損失係数記憶部135に記憶された曲率と損失係数との関係に基づいて曲げ角度を推定する(ステップS14)。出力部136は、推定結果として曲げの曲率及び曲げ角度を表示装置14に出力する(ステップS16)。
【0032】
曲げ状態推定装置13は、以上の構成により伝送路の曲率及び曲げ角度、つまり曲げに関する定量的な値を推定することができる。
【0033】
〈第2の実施形態〉
第2の実施形態に係る損失測定装置12は、3つの異なる波長の光を用いて伝送路11の曲げ損失を測定する。つまり、第2の実施形態に係る損失測定装置12は用いる光の波長により異なる3つの曲げ損失を測定する。
【0034】
第2の実施形態に係る損失比算出部131は、損失測定装置12により測定された3つの損失に基づいて、2つの損失比を算出する。第2の実施形態に係る損失比算出部131は例えば波長λに対応する曲げ損失と波長λに対応する曲げ損失との比を算出し、さらに波長λに対応する曲げ損失と波長λに対応する曲げ損失との比を算出する。
【0035】
第2の実施形態に係る曲率推定部132は、損失比算出部131により算出された2つの損失比に基づき2つの曲率を推定する。第2の実施形態に係る損失比曲率関係記憶部133は、損失比がどの波長に対応する曲げ損失との比であるかにより異なる関係式又はテーブルを記憶する。図7は、第2の実施形態に係る損失比曲率関係記憶部133が記憶するテーブルの一例である。第2の実施形態に係る損失比曲率関係記憶部133は、損失比が波長λに対応する曲げ損失と波長λに対応する曲げ損失との比である場合の損失比と曲率の関係を示す関係式又はテーブルを記憶し、さらに損失比が波長λに対応する曲げ損失と波長λに対応する曲げ損失との比である場合の損失比と曲率の関係を示す関係式又はテーブルを記憶する。損失比曲率関係記憶部133に記憶された関係式又はテーブルに基づいて推定された曲率を曲率標本と呼ぶ。
【0036】
曲率推定部132は曲率標本に基づきさらに曲率を推定する。例えば曲率推定部132は、2つの曲率標本の平均値を最終的に推定結果とする曲率と決定する。
【0037】
第2の実施形態に係る曲げ状態推定装置13は、3つの波長を用いて測定された3つの曲げ損失に基づき2つの損失比を算出し、2つの曲率標本を推定し、2つの曲率標本に基づいて最終的に推定結果とする曲率を決定する。これにより、第2の実施形態に係る曲げ状態推定装置13は、推定する曲率の精度を高めることができる。
【0038】
損失比算出部131が算出する損失比は2つに限られず、3つ以上であってもよい。このとき、損失測定装置12により測定される損失は3つ以上である。損失比曲率関係記憶部133は、損失比算出部131が算出する損失比に対応する波長のテーブルを記憶し、曲率推定部132は、損失比算出部131が算出する損失比と同じ数の曲率標本を推定し、複数の曲率標本に基づいて最終的に推定結果とする曲率を決定してもよい。
【0039】
〈第3の実施形態〉
図8は、第3の実施形態に係る曲げ状態推定装置13を示す図である。第3の実施形態に係る曲げ状態推定装置13は、第1の実施形態に係る曲げ状態推定装置13に加え曲げ有無推定部137を備える。曲げ有無推定部137は、損失比算出部131により算出される損失比に基づいて、伝送路11に曲げがあるか否かを推定する。
【0040】
第3の実施形態に係る曲げ状態推定装置13は、損失比算出部131により算出される損失比が規定範囲内にないときに伝送路11に曲げはなく、生じている損失は別の要因によるものであると推定する。規定範囲の下限値は例えば、損失測定装置12により測定される2つの損失の差が伝送路の曲げを推定できる最小の損失差(例えば10dB)であるときの損失比である。規定範囲の上限値は例えば、伝送路11が許容可能な曲率(伝送路11が曲がったことにより破損しない限界の曲率)における損失比である。
【0041】
曲げ有無推定部137が伝送路11に曲げがないと推定したときは、曲率推定部132は曲率を推定しなくてもよく、曲げ角度推定部134は曲げ角度を推定しなくてもよい。
【0042】
図9は、第3の実施形態に係る曲げ状態推定装置13の動作の一例を示すフローチャートである。伝送損失取得部130は、曲げ損失を示すデータを取得する(ステップS30)。損失比算出部131が損失比を算出する(ステップS31)。曲げ有無推定部137が損失比算出部131により算出される損失比に基づいて、伝送路11に曲げがあるか否かを推定する(ステップS32)。その後、曲げ有無推定部137が伝送路11に曲げがあると推定した場合(ステップS34:YES)、曲率推定部132は曲率を推定し(ステップS36)、曲げ角度推定部134は曲げ角度を推定する(ステップS38)。出力部136は推定結果として曲げの曲率及び曲げ角度を出力し(ステップS40)、動作を終了する。曲げ有無推定部137が伝送路11に曲げがないと推定した場合(ステップS34:NO)、出力部136は推定結果として曲げがないことを出力し(ステップS40)、動作を終了する。
【0043】
第3の実施形態に係る曲げ状態推定装置13は、曲げ有無推定部137が伝送路11に曲げがあるか否かを推定する。これにより、曲げ状態推定装置13は、光フィルタなど波長依存性デバイスによる損失など、曲げ以外の要因による損失に基づいて曲げ状態を推定するのを避けることができる。
【0044】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0045】
上述した実施形態における曲げ状態推定装置13はコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 曲げ状態推定システム、11 伝送路、12 損失測定装置、13 曲げ状態推定装置、14 表示装置、130 伝送損失取得部、131 損失比算出部、132 曲率推定部、133 損失比曲率関係記憶部、134 曲げ角度推定部、135 損失係数記憶部、136 出力部、137 曲げ有無推定部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9