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特開2023-74559X線分析装置、X線分析方法、及び、X線分析用プログラム
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  • 特開-X線分析装置、X線分析方法、及び、X線分析用プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074559
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】X線分析装置、X線分析方法、及び、X線分析用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20230523BHJP
   G01B 11/25 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
G01N23/223
G01B11/25 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187525
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】小松原 隆司
(72)【発明者】
【氏名】青山 淳一
【テーマコード(参考)】
2F065
2G001
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD03
2F065FF01
2F065FF04
2F065FF08
2F065FF09
2F065GG00
2F065HH05
2F065HH06
2F065JJ03
2F065JJ26
2G001AA01
2G001AA07
2G001BA04
2G001BA29
2G001CA01
2G001CA07
2G001EA03
2G001KA01
(57)【要約】
【課題】試料の表面が非平面であっても、一次X線の照射領域を特定して、二次X線の発生箇所を知ることができる。
【解決手段】試料Wに一次X線XR1を照射するX線照射部2と、試料Wから生じる二次X線XR2を検出するX線検出部3と、試料Wの三次元形状情報を取得する三次元形状情報取得部4と、三次元形状情報を用いて一次X線XR1の照射領域IAを特定する照射領域特定部5とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に一次X線を照射するX線照射部と、
前記試料から生じる二次X線を検出するX線検出部と、
前記試料の三次元形状情報を取得する三次元形状情報取得部と、
前記三次元形状情報を用いて前記一次X線の照射領域を特定する照射領域特定部とを備える、X線分析装置。
【請求項2】
前記三次元形状取得部は、
前記試料にパターン光を照射するパターン光照射部と、
前記パターン光が照射された前記試料を撮像する撮像部と、
前記撮像部の撮像画像に基づいて、前記試料の三次元形状情報を求める演算部とを備える、請求項1に記載のX線分析装置。
【請求項3】
前記照射領域特定部は、前記三次元形状情報と、前記X線照射部の出射角度と、前記試料に対する前記X線照射部の幾何学的配置とを用いて、前記照射領域を特定する、請求項1又は2に記載のX線分析装置。
【請求項4】
前記撮像画像に前記照射領域を重畳してディスプレイに表示する表示制御部をさらに備える、請求項1乃至3の何れか一項に記載のX線分析装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記照射領域が重畳された前記撮像画像とともに、前記二次X線のスペクトル又は当該スペクトルを用いた分析結果を前記ディスプレイに表示する、請求項4に記載のX線分析装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記照射領域において前記X線検出部により前記二次X線が検出できない検出不可領域又は前記二次X線を検出できる検出可能領域を前記ディスプレイに表示する、請求項4又は5に記載のX線分析装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記X線照射部により一次X線が照射される前に、前記撮像画像に前記一次X線が照射した場合の仮想照射領域を重畳して前記ディスプレイに表示する、請求項4乃至6の何れか一項に記載のX線分析装置。
【請求項8】
試料に一次X線を照射して前記試料から生じる二次X線を検出するX線分析方法であって、
前記試料の三次元形状情報を取得し、前記三次元形状情報を用いて前記一次X線の照射領域を特定する、X線分析方法。
【請求項9】
試料に一次X線を照射するX線照射部と、前記試料から生じる二次X線を検出するX線検出部とを備えるX線分析装置に用いられるX線分析用プログラムであって、
前記試料の三次元形状情報を取得する三次元形状情報取得部、及び、
前記三次元形状情報を用いて前記一次X線の照射領域を特定する照射領域特定部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする、X線分析用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線分析装置、X線分析方法、及び、X線分析用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のX線分析装置は、例えば特許文献1に示すように、試料に一次X線を照射して当該試料から発生する二次X線(蛍光X線)を検出し、その検出した二次X線に基づいて試料を分析する。
【0003】
このX線分析装置では、X線源から射出される一次X線は円錐状に放射される。このため、試料の表面が平面の場合には、一次X線の照射領域は楕円形状で表現することができ、試料の表面とX線源との相対位置が分かれば、照射領域を特定することができる。その結果、二次X線の発生箇所を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/240011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、試料の表面が非平面の場合には、照射領域を楕円形状で表現することができず、一次X線が試料表面のどこに当たっているのかが分からない。このため、検出された二次X線が試料のどこから発生したのかを知ることができない。
【0006】
そこで、本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、試料の表面が非平面であっても、一次X線の照射領域を特定して、二次X線の発生箇所を知ることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係るX線分析装置は、試料に一次X線を照射するX線照射部と、前記試料から生じる二次X線を検出するX線検出部と、前記試料の三次元形状情報を取得する三次元形状情報取得部と、前記三次元形状情報を用いて前記一次X線の照射領域を特定する照射領域特定部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このX線分析装置であれば、試料の三次元形状情報を用いて一次X線の照射領域を特定するので、試料の表面が非平面であっても、二次X線の発生箇所を知ることができる。
【0009】
具体的な実施の態様としては、前記三次元形状取得部は、前記試料にパターン光を照射するパターン光照射部と、前記パターン光が照射された前記試料を撮像する撮像部と、前記撮像部の撮像画像に基づいて、前記試料の三次元形状情報を求める演算部とを備えることが望ましい。
【0010】
具体的な実施の態様としては、前記照射領域特定部は、前記三次元形状情報と、前記X線照射部の出射角度と、前記試料に対する前記X線照射部の幾何学的配置とを用いて、前記照射領域を特定することが望ましい。
【0011】
照射領域をユーザが目視できるようにするためには、前記撮像画像に前記照射領域を重畳してディスプレイに表示する表示制御部をさらに備えることが望ましい。
【0012】
二次X線のスペクトル又は当該スペクトルを用いた分析結果と、その発生源である照射領域とをユーザが目視できるようにするためには、前記表示制御部は、前記照射領域が重畳された前記撮像画像とともに、前記二次X線のスペクトル又は当該スペクトルを用いた分析結果を前記ディスプレイに表示することが望ましい。
【0013】
前記表示制御部は、前記照射領域において前記X線検出部により前記二次X線が検出できない検出不可領域又は前記二次X線を検出できる検出可能領域を前記ディスプレイに表示することが望ましい。
検出不可領域を併せて表示することにより、ユーザは検出された二次X線の発生源となっている領域をさらに正確に知ることができる。同様に、検出可能領域を併せて表示することにより、ユーザは検出された二次X線の発生源となっている領域をさらに正確に知ることができる。
【0014】
前記表示制御部は、前記X線照射部により一次X線が照射される前に、前記撮像画像に前記一次X線が照射した場合の仮想照射領域を重畳して前記ディスプレイに表示することが望ましい。
この構成であれば、ユーザは仮想照射領域を見ながら、実際に一次X線を照射するかどうかを判断することができる。
【0015】
また、本発明に係るX線分析方法は、試料に一次X線を照射して前記試料から生じる二次X線を検出するX線分析方法であって、前記試料の三次元形状情報を取得し、前記三次元形状情報を用いて前記一次X線の照射領域を特定することを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明に係るX線分析用プログラムは、試料に一次X線を照射するX線照射部と、前記試料から生じる二次X線を検出するX線検出部とを備えるX線分析装置に用いられるX線分析用プログラムであって、前記試料の三次元形状情報を取得する三次元形状情報取得部、及び、前記三次元形状情報を用いて前記一次X線の照射領域を特定する照射領域特定部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上に述べた本発明によれば、試料の表面が非平面であっても、一次X線の照射領域を特定して、二次X線の発生箇所を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るX線分析装置の全体模式図である。
図2】同実施形態のX線分析装置の機能ブロック図である。
図3】同実施形態の試料表面における照射領域を示す模式図である。
図4】同実施形態の撮像画像に照射領域を重畳した画像を示す図である。
図5】同実施形態の撮像画像に照射領域及び検出不可領域を重畳した画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係るX線分析装置について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略または誇張して模式的に描かれている。
【0020】
<装置構成>
本実施形態のX線分析装置100は、試料Wに一次X線XR1を照射し、試料Wから発生する二次X線(蛍光X線)XR2を検出することにより、試料Wに含まれている元素を定量分析又は定性分析する蛍光X線分析装置である。
【0021】
具体的にX線分析装置100は、図1に示すように、試料Wに一次X線XR1を照射するX線照射部2と、試料Wから生じる蛍光X線XR2を検出するX線検出部3とを備えている。本実施形態のX線照射部2及びX線検出部3は、情報処理装置10に通信ケーブルK1で接続されたセンサヘッド20に搭載されている。その他、センサヘッド20には、電源ケーブルK2を介して電源ユニット30に接続されている。
【0022】
X線照射部2は、X線発生部21及びコリメータ22を備えている。X線発生部21は、X線管を備えるものであり、X線管から発生させた熱電子によりターゲット金属を励起させて一次X線XR1を発生させる。また、コリメータ22は、X線発生部21で発生させた一次X線XR1を通過させる通過窓を有し、当該通過窓によって一次X線XR1を絞るものである。
【0023】
X線検出部3は、X線検出器31と、当該X線検出器31からの信号を情報処理装置10に出力する出力部32とを備えている。X線検出器31は、例えば、Si素子等のX線検出素子(例えば、シリコンドリフト検出器(SDD))を用いて構成されている。また、出力部32は、X線検出器31に試料Wから発生した蛍光X線XR2が入射することによって生じるエネルギーの大きさに応じた電荷を検出し、検出した電荷を電荷の大きさに対応した高さを持つ台形波信号へ変換するデジタルパルスプロセッサ(DPP)等である。
【0024】
そして、情報処理装置10は、図2に示すように、X線検出部3の出力に基づいて、蛍光X線XR2のスペクトルを生成するスペクトル生成部11と、蛍光X線XR2のスペクトルに基づいて、試料Wに含まれる元素の定性分析又は定量分析を行う分析部12とを備えている。その他、情報処理装置10は、X線照射部2を制御するものでもある。
【0025】
なお、情報処理装置10は、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信ポートなどからなるコンピュータ本体10aと、このコンピュータ本体10aに接続されたキーボード、マウスなどの入力手段10b及びディスプレイ10cとからなるものである。前記メモリに所定のプログラムをインストールすることによって、この情報処理装置10が、図2に示すように、スペクトル生成部11及び分析部12等としての機能を発揮する。
【0026】
そして、本実施形態のX線分析装置100は、試料Wの表面において一次X線XR1の照射領域IAを特定できるように構成されている。
【0027】
具体的にX線分析装置100は、図1及び図2に示すように、試料Wの三次元形状情報を取得する三次元形状情報取得部4と、三次元形状情報を用いて一次X線XR1の照射領域IAを特定する照射領域特定部5とを備えている。
【0028】
三次元形状取得部4は、光学的に試料Wの表面の3次元形状情報を取得するものであり、図1及び図2に示すように、試料Wにパターン光を照射するパターン光照射部41と、パターン光が照射された試料Wを撮像する撮像部42と、撮像部42の撮像画像に基づいて、試料Wの三次元形状情報を求める三次元形状演算部43とを備えている。ここで、パターン光照射部41及び撮像部42は、情報処理装置10に通信ケーブルK1で接続されたセンサヘッド20に搭載されている。また、演算部43は、情報処理装置10によりその機能が発揮される。
【0029】
パターン光照射部41は、図3に示すように、光源411と、当該光源411からの光をパターン光に変換して試料Wに投影するパターン変換素子412とを有している。ここでパターン光としては、格子状パターン、グリッド状パターン、同心円状パターン、直線状パターン等の試料Wの表面の三次元形状(凹凸形状)においてパターン像が変化するものであれば良い。
【0030】
ここで、試料Wの表面が非平面であれば、試料Wの表面には歪んだパターン像が形成される。この歪んだパターン像が撮像部42により撮像される。そして、演算部43は、試料Wの表面に対するパターン光照射部41(光源411)の位置と、試料Wの表面に対する撮像部42の位置と、撮像画像中の歪んだパターン像とから、試料Wの表面の三次元形状情報を求める。
【0031】
照射領域特定部5は、三次元形状取得部4により取得された三次元形状情報と、X線照射部2の出射角度等の照射特性と、試料Wに対するX線照射部2の幾何学的配置とを用いて、一次X線XR1の照射領域IAを特定する(図3参照)。なお、本実施形態では、試料Wに対するX線照射部2の幾何学的配置は、撮像部42により撮像されたパターン像を用いて算出することができる。つまり、本実施形態では、試料Wの表面の三次元形状情報と試料Wに対するX線照射部2の幾何学的配置は、同時に取得することができる。
【0032】
本実施形態のX線分析装置100は、図4に示すように、撮像画像IMGに照射領域IAを重畳してディスプレイ10cに表示する表示制御部6をさらに備えている。表示制御部6は、情報処理装置10によりその機能が発揮される。
【0033】
この表示制御部6は、照射領域IAが重畳された撮像画像IMGとともに、当該照射領域IAに対応する蛍光X線のスペクトルSP又は当該スペクトルを用いた分析結果ARをディスプレイ10cに表示するものである。ここで、分析結果ARは、試料Wの照射領域IAに含まれる元素の定性的又は定量的な分析結果である。
【0034】
さらに、表示制御部6は、図5に示すように、照射領域IAにおいてX線検出部3により蛍光X線XR2が検出できない検出不可領域UDAをディスプレイ10cに表示する。ここで検出不可領域UDAは、三次元形状取得部4により取得された三次元形状情報と、X線検出部3の検出角度等の検出特性と、試料Wに対するX線検出部3の幾何学的配置とを用いて特定される。この検出不可領域UDAは、試料Wから生じる蛍光X線XR2が試料Wの表面形状(例えば一次X線XR1の照射領域にある凸部等)により遮られてX線検出部3には届かない領域である。
【0035】
なお、図5では、検出不可領域UDAをディスプレイ10cに表示した例を示しているが、照射領域IAにおいてX線検出部3により蛍光X線XR2が検出できる検出可能領域(検出不可領域以外の部分)をディスプレイ10cに表示しても良い。
【0036】
その他、表示制御部6は、X線照射部2により一次X線XR1が照射される前に、撮像画像に一次X線XR1を照射した場合の仮想照射領域(不図示)を重畳してディスプレイ10cに表示することもできる。
【0037】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のX線分析装置100によれば、試料Wの三次元形状情報を用いて一次X線XR1の照射領域IAを特定するので、試料Wの表面が非平面であっても、蛍光X線XR2の発生箇所を知ることができる。
【0038】
<その他の実施形態>
例えば、前記実施形態では、センサヘッド20にX線照射部21及びX線検出部22だけでなく、パターン光照射部41及び撮像部42を設けているが、パターン光照射部41及び撮像部42をセンサヘッド20とは別に設けても良い。
【0039】
また、前記実施形態では、試料Wにパターン光を照射して撮像しつつ、当該試料Wに一次X線XR1を照射して蛍光X線XR2を検出する構成、つまり、三次元形状情報の取得と蛍光X線分析を同時に行う構成であったが、三次元形状情報は、蛍光X線分析の前に、予め取得しても良い。
【0040】
さらに、前記実施形態では、外部に配置された試料Wに対してX線分析装置を移動可能な可搬型のX線分析装置であったが、試料Wを筐体内のステージに載置して分析する据え置き型のX線分析装置としても良い。
【0041】
加えて、三次元形状取得部は、外部の三次元形状計測装置により得られた三次元形状情報を取得するものであっても良い。
【0042】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0043】
100・・・X線分析装置
2 ・・・X線照射部
3 ・・・X線検出部
4 ・・・三次元形状情報取得部
41 ・・・パターン光照射部
42 ・・・撮像部
43 ・・・演算部
5 ・・・照射領域特定部
6 ・・・表示制御部
10c・・・ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5