(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074844
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル系樹脂発泡体、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20230523BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CEY
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021187992
(22)【出願日】2021-11-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】景山 大地
(72)【発明者】
【氏名】田井 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】依田 智
(72)【発明者】
【氏名】大谷 実
(72)【発明者】
【氏名】小野 巧
(72)【発明者】
【氏名】竹林 良浩
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA48
4F074AC32
4F074AF03
4F074AG01
4F074BA32
4F074BC12
4F074CA29
4F074CC04X
4F074CC04Y
4F074CC10X
4F074CC34X
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA32
4F074DA33
(57)【要約】
【課題】ナノサイズの気泡を有しながらも良好な発泡状態となるように製造することが容易な樹脂発泡体やその製造方法を提供し、良好な断熱性能を有する断熱材を提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系樹脂と、ナノ粒子とを含む樹脂組成物で構成され、且つ、ナノサイズの気泡を有しており、前記ナノ粒子が表面に有機官能基を備え、該有機官能基のSP値と、前記(メタ)アクリル系樹脂の前記構成単位のSP値との差の絶対値が0.3以上4.0以下である(メタ)アクリル系樹脂発泡体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系樹脂と、ナノ粒子とを含む樹脂組成物で構成され、且つ、ナノサイズの気泡を有しており、
前記ナノ粒子が表面に有機官能基を備え、
該有機官能基のSP値と、前記(メタ)アクリル系樹脂の前記構成単位のSP値との差の絶対値が0.3以上4.0以下である(メタ)アクリル系樹脂発泡体。
【請求項2】
前記有機官能基が前記ナノ粒子の表面を被覆している表面被覆率が10%以上90%以下である請求項1記載の(メタ)アクリル系樹脂発泡体。
【請求項3】
前記有機官能基の炭素数が5以上16以下である請求項1又は2記載の(メタ)アクリル系樹脂発泡体。
【請求項4】
前記ナノ粒子と前記(メタ)アクリル系樹脂との吸着エネルギーと、前記ナノ粒子の表面から前記(メタ)アクリル系樹脂までの距離との関数である第1のポテンシャル曲線を第一原理計算に基づいて推算し、
前記ナノ粒子の表面と前記(メタ)アクリル系樹脂との分子間相互作用と、前記ナノ粒子の表面から前記(メタ)アクリル系樹脂までの距離との関数である第2のポテンシャル曲線を力場パラメーターに基づいて推算し、
前記第一原理計算に基づく前記第1のポテンシャル曲線に、前記第2のポテンシャル曲線を合わせるように前記力場パラメーターをフィッティングした際に、
前記ナノ粒子と前記(メタ)アクリル系樹脂とは、
前記フィッティングされた前記力場パラメーターを用いた古典分子動力学による引きはがし計算での応力値が100MPa以上1500MPa以下である請求項1乃至3の何れか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂発泡体。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、前記有機官能基を有する化合物で表面修飾されているシリカ粒子である請求項1乃至4の何れか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂発泡体。
【請求項6】
前記樹脂組成物での前記ナノ粒子の割合が0.01体積%以上30体積%以下である請求項1乃至5の何れか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂発泡体。
【請求項7】
前記ナノ粒子の平均粒子径が1nm以上100nm以下である請求項1乃至6の何れか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂発泡体。
【請求項8】
平均気泡径が10nm以上1000nm以下である請求項1乃至7の何れか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂発泡体。
【請求項9】
空隙率が10%以上95%以下である請求項1乃至8の何れか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂発泡体。
【請求項10】
樹脂発泡体で構成された断熱材であって、該樹脂発泡体が請求項1乃至9の何れか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂発泡体である断熱材。
【請求項11】
(メタ)アクリル系樹脂発泡体の製造方法であって、
表面に有機官能基を備えているナノ粒子と、(メタ)アクリル系モノマーとを含有するモノマー組成物を重合して発泡用樹脂組成物を調製する第1工程と、
前記発泡用樹脂組成物に発泡剤を含ませて発泡性樹脂組成物を調製する第2工程と、
前記発泡性樹脂組成物を発泡させる第3工程と、を実施し、ナノサイズの気泡を有している(メタ)アクリル系樹脂発泡体を製造する(メタ)アクリル系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項12】
前記発泡剤が、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、及び、水の内の1つ以上を含む請求項11記載の(メタ)アクリル系樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系樹脂発泡体、断熱材、及び、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂発泡体は軽量性、緩衝性、断熱性などの種々の特性が要求される場面で広く用いられている。樹脂発泡体を作製する際には、その発泡度や気泡の大きさなどを調整すべく“核剤”や“気泡調整剤”などと称される添加剤が従来用いられている。核剤は、通常、樹脂との親和性に乏しい物質からなる微粒子であり、樹脂との界面に発泡剤ガスが析出し易い環境を与えて気泡の核となるため、樹脂発泡体を作製する際の発泡性を調整するのに有効である。
【0003】
ところで、一般的な樹脂発泡体の気泡のサイズは、通常、小さくても数μm程度であるが、これをナノオーダーのサイズにすることが試みられている(下記特許文献1、2参照)。ナノサイズの気泡を有する樹脂発泡体は、気泡サイズが空気の平均自由行程と同レベルか、それ以下になるため一般的な樹脂発泡体よりも格段に高い断熱性を発揮することが期待される。また、ナノサイズの気泡を有する樹脂発泡体については、断熱性以外にも従来の樹脂発泡体とは異なる特徴を発揮し得る。このようなことからナノサイズの気泡を有する樹脂発泡体の応用方法が検討されている。ここで、下記特許文献1にはナノサイズの気泡を有する樹脂発泡体を作製する方法が記載され、用いる核剤をナノ粒子とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/066060号
【特許文献2】特開2020-079374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように気泡の核となる機能を発揮するために、発泡させる樹脂と過度に良好な親和性を有するものは核剤とはなり難い。一方で樹脂との親和性が低い核剤は樹脂と混合した際に凝集し易い。そのため、ナノサイズの気泡を有する樹脂発泡体は、良好な発泡状態となるように製造することが難しい。そのため、ナノサイズの気泡を有する樹脂発泡体を断熱材に適用しようとした場合、良好な断熱性能を得ることが難しい。そこで本発明は、上記のような問題を解決することを課題としており、ナノサイズの気泡を有しながらも良好な発泡状態となるように製造することが容易な樹脂発泡体やその製造方法を提供し、ひいては良好な断熱性能を有する断熱材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、(メタ)アクリル系樹脂発泡体では、SP値に関して樹脂との間に特定の関係を示す有機官能基を備えたナノ粒子を用いることで上記課題が解決されることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、
(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系樹脂と、ナノ粒子とを含む樹脂組成物で構成され、且つ、ナノサイズの気泡を有しており、
前記ナノ粒子が表面に有機官能基を備え、
該有機官能基のSP値と、前記(メタ)アクリル系樹脂の前記構成単位のSP値との差の絶対値が0.3以上4.0以下である(メタ)アクリル系樹脂発泡体、を提供する。
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、
樹脂発泡体で構成された断熱材であって、該樹脂発泡体が上記のような(メタ)アクリル系樹脂発泡体である断熱材、を提供する。
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、
(メタ)アクリル系樹脂発泡体の製造方法であって、
表面に有機官能基を備えているナノ粒子と、(メタ)アクリル系モノマーとを含有するモノマー組成物を重合して発泡用樹脂組成物を調製する第1工程と、
前記発泡用樹脂組成物に発泡剤を含ませて発泡性樹脂組成物を調製する第2工程と、
前記発泡性樹脂組成物を発泡させる第3工程と、を実施し、ナノサイズの気泡を有している(メタ)アクリル系樹脂発泡体を製造する(メタ)アクリル系樹脂発泡体の製造方法、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、(メタ)アクリル系樹脂とナノ粒子との親和性が適度に高いため、核剤同士の凝集が抑制され、ナノ粒子が均質に分散し易くなり、核剤としての良好な効果が期待できる。さらに、本発明では、このような(メタ)アクリル系樹脂との特定の親和性を示すナノ粒子を含むことで、本来の核剤としての効果を損なうことなく、細かな気泡を有する(メタ)アクリル系樹脂発泡体が容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ナノ粒子が表面に有機官能基を有するシリカ粒子である場合の
29Si核NMRスペクトルの一例。
【
図2】引きはがし計算での応力値の算出手順の一例を示すフロー図。
【
図3A】引きはがし計算での応力値の算出手順において、第4ステップS4の一例を模式的に示す図。
【
図3B】引きはがし計算での応力値の算出手順において、第5ステップS5の一例を模式的に示す図。
【
図3C】引きはがし計算での応力値の算出手順において、第6ステップS6の一例を模式的に示す図。
【
図4】実施例、比較例で得られた(メタ)アクリル系樹脂発泡体の拡大写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
まず、(メタ)アクリル系樹脂発泡体について説明する。
【0013】
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂発泡体は、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位を含む(メタ)アクリル系樹脂と、ナノ粒子とを含む樹脂組成物で構成されている。そして本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂発泡体は、ナノサイズの気泡を有する発泡体である。尚、以下においては、気泡の断面形状における最大寸法を、その気泡の“長さ”などと称し、この“長さ”の方向とは直交する方向での気泡の最大寸法をその気泡の“幅”などと称することがある。また、以下においては、“長さ”と“幅”とを足して2分した値を気泡の“径”などと称することがある。そして、本明細書において“ナノサイズの気泡”とは、気泡の“径”がナノオーダーであることを意味し、“(メタ)アクリル系樹脂発泡体がナノサイズの気泡を有する”とは“(メタ)アクリル系樹脂発泡体が、1μm未満の径の気泡を有している”ということを意味する。
【0014】
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂発泡体を構成する樹脂組成物に含まれる前記(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、1種類の(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位のみを備えた樹脂であっても複数種類の(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位を備えた樹脂であってもよい。前記(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なビニルモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0015】
ここで、本明細書における“(メタ)アクリル”との用語は、“アクリル”と“メタクリル”とを包括的に表現する意図で用いている。即ち、(メタ)アクリル系モノマーとの用語には、アクリル系モノマーとメタクリル系モノマーとが含まれている。
【0016】
本実施形態での前記(メタ)アクリル系樹脂は、上記のような(メタ)アクリル系モノマーどうし、又は、(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル系モノマー以外のモノマーとを重合開始剤の存在下で重合させることにより得られる樹脂とすることができる。
【0017】
前記(メタ)アクリル系樹脂の構成単位となる前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイン酸イミドなどが挙げられる。
【0018】
前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコールの両末端の水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したもの、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の2価のアルコールの水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化したものなどであってもよい。
【0019】
本実施形態における(メタ)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロブチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;メタクリル酸イソボルニルなどの架橋環型(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸キシリル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸ビナフチル、(メタ)アクリル酸アントリル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルが挙げられる。
【0020】
本実施形態における(メタ)アクリル系モノマーは、炭素数6以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが特に好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル系モノマー以外の構成単位としては、スチレン、α-アルキルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどの芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、ブテンなどのアルケンモノマー;ブタジエン、ペンタジエンなどのアルカジエンモノマーなどが挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリル系樹脂は、その構成単位に占める(メタ)アクリル系モノマーの割合が80質量%以上であることが好ましい。前記割合は、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。即ち、(メタ)アクリル系樹脂における(メタ)アクリル系モノマー以外の構成単位の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、その構成単位に占める(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が85質量%以上であることがより好ましい。該割合は、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0023】
これらのモノマーによって(メタ)アクリル系樹脂を構成させるための前記重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。
【0024】
前記重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、イソプロピル-t-ブチルパーオキシカーボネート、過安息香酸ブチル、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートなどの有機過酸化物であってもよい。前記重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても良い。
【0025】
前記モノマーによって(メタ)アクリル系樹脂を構成させる際には、作製される(メタ)アクリル系樹脂の分子量を制御するなどの目的において連鎖移動剤や重合禁止剤を用いてもよい。
【0026】
前記連鎖移動剤は、例えば、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン類;チオグリコール酸エステル類;メルカプトエタノール、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。前記重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、パラ-t-ブチルヒドロキノン、パラベンゾキノンなどのヒドロキノン類;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、6-t-ブチル-2,4-ジメチルフェノールなどのフェノール類;カテコール類;アミン類などが挙げられる。
【0027】
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂発泡体を構成する前記樹脂組成物には、(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂を含有させることも可能であるが、前記樹脂組成物に含有される全ての樹脂に占める(メタ)アクリル系樹脂の割合は、80質量%以上であることが好ましい。前記割合は、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。前記(メタ)アクリル系樹脂発泡体に含有される樹脂は、実質的に(メタ)アクリル系樹脂のみであることがとりわけ好ましい。即ち、前記樹脂組成物に含有される全ての樹脂に占める(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂の割合は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、実質的に0質量%であることがとりわけ好ましい。
【0028】
(メタ)アクリル系樹脂とともに前記樹脂組成物に含まれるナノ粒子は、前述のように表面に有機官能基が備えられている。該有機官能基としては、例えば、下記一般式(1)又は(2)で表されるものが挙げられる。
-R1-X ・・・(1)
-Y-R1-X ・・・(2)
【0029】
式(1)、(2)における「R1」の具体例を挙げると、例えば、直鎖状飽和炭化水素、分岐状飽和炭化水素、環状飽和炭化水素、直鎖状不飽和炭化水素、分岐状不飽和炭化水素、及び、環状不飽和炭化水素の何れかから2つの水素を除いた構造のものが挙げられる。
【0030】
式(1)、(2)における「X」の具体例を挙げると、例えば、水素(-H)、ハロゲン(-F,-Cl,-Br,・・・)、ヒドロキシ基(-OH)、カルボキシ基(-COOH)、酸無水物基(-CH-(-CH2-CO-O-)-C=O,-(CO)-O-(CO)-CH3,・・・)、アミノ基(-NH2)、アミド基(-CONH2)、スルホン酸基(-SO3H)、ニトロ基(-NO2)、ビニル基(-CH=CH2)、アクリル基(-OOCCH=CH2)、メタクリル基(-OOCC(CH3)=CH2)、イソシアネート基(-N=C=O)、ニトリル基(-CN)、メルカプト基(-SH)、ウレイド基(-NHCONH2)、エポキシ基(-CH-(-O-)-CH2)等を挙げることができる。
【0031】
式(2)における「Y」の具体例を挙げると、例えば、酸素、硫黄、窒素などのヘテロ原子(-O-,-S-,-NH-,・・・);ケトン(-CO-);エステル(-COO-);アミド(-CONH-)等を挙げることができる。
【0032】
有機官能基としては、炭素数は、5以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましく、8以上であることが特に好ましい。炭素数は16以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、14以下であることがさらに好ましく、12以下であることが特に好ましい。前記炭素数が上記下限値以上であると、ナノ粒子が樹脂中に均質に分散し易くなり、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の気泡をより細かくできる。前記炭素数が上記上限値以下であると、核剤としての良好な効果が得られ、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の気泡をより細かくできる。
【0033】
前記有機官能基としては、プロピル基、へキシル基、デシル基、ドデシル基、アセトキシプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基などが好ましく、へキシル基、デシル基、ドデシル基などが特に好ましい。
【0034】
前記ナノ粒子は、前記有機官能基以外のナノ粒子本体を構成するものが有機物粒子であっても無機物粒子であってもよい。前記ナノ粒子は、前記有機官能基を有する化合物で無機物粒子の表面を修飾したものであることが好ましい。無機物粒子としては、鉄、コバルト、ニッケル、スズ、亜鉛、鉛、銅、アルミニウム、タングステン、銀、金、白金族(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム)などの金属粒子;カーボンブラック、カーボンナノファイバー、フラーレンなどの炭素粒子;シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化ホウ素などの無機酸化物粒子;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機水酸化物粒子;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの無機窒化物粒子;炭化ケイ素などの無機炭化物粒子;炭酸カルシウムなどの無機炭酸化物粒子;チタン酸バリウム粒子;硫酸バリウム粒子;粘土鉱物粒子(ケイ酸塩化合物粒子)などが挙げられる。
【0035】
上記のような粒子の内、有機物粒子やカーボンブラックなどでは、表面に水酸基やカルボキシ基を有するため、例えば、末端に水酸基やアルコキシ基などを有する有機化合物を縮合反応により表面に結合させることで有機官能基を表面に備えさせることができる。上記のような粒子の内、無機水酸化物粒子や無機酸化物粒子は、表面に多くの水酸基を有し、有機官能基を表面に備えさせるのに有利である。即ち、前記ナノ粒子本体としては、シリカ粒子などの金属酸化物粒子が好適である。
【0036】
無機炭化物粒子や、無機窒化物粒子などについても、無機酸化物粒子などに比べると量は少ないものの表面に水酸基が存在する。また、上記のような粒子に対し、必要であれば、コロナ処理やプラズマ処理などを施すことによって表面の水酸基を増量させてもよい。
【0037】
本実施形態の前記ナノ粒子は、前記有機官能基を有する化合物で表面修飾されているシリカ粒子であることが好ましい。シリカ粒子は、乾式法シリカ(フュームドシリカ)であっても湿式法シリカ(ゾルゲル法シリカ)であってもよい。ナノシリカは、中実であっても中空であってもよい。
【0038】
前記有機官能基は、例えば、シランカップリング剤により導入することができる。例えば、無処理のシリカ粒子を下記一般式(3)で表されるようなシランカップリング剤で表面処理すれば前述の式(1)に示したような有機官能基をシリカ粒子の表面に備えさせることができる。
(R2O)n(R3)3-nSi-R1-X ・・・(3)
(尚、式(3)での「R2」、「R3」は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基を表し、「n」は、1~3の整数を表す。)
【0039】
前記ナノ粒子における有機官能基は、前記(メタ)アクリル系樹脂を構成している構成単位とのSP値の差の絶対値が0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.9以上であることがさらに好ましく、1.5以上であることが特に好ましい。前記ナノ粒子における有機官能基は、前記(メタ)アクリル系樹脂を構成している構成単位とのSP値の差の絶対値が4.0以下であることが好ましく、3.8以下であることがより好ましく、3.3以下であることがさらに好ましく、2.7以下であることが特に好ましい。前記(メタ)アクリル系樹脂を構成している構成単位とのSP値の差の絶対値が上記下限値以上であると、核剤としての良好な効果が得られ、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の気泡をより細かくできる。前記(メタ)アクリル系樹脂を構成している構成単位とのSP値の差の絶対値が上記上限値以下であると、ナノ粒子が樹脂中に均質に分散し易くなり、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の気泡をより細かくできる。
【0040】
上記のようなナノ粒子は、樹脂中での分散性に優れることから、本来の核剤としての性能が損なわれ難い。
【0041】
前記有機官能基や前記構成単位のSP値(溶解度パラメータ値)は、Fedorsの計算方法「Robert F.Fedors,Polymer Engineering and Science,14,147-154(1974)」に記載の方法によって算出される。
すなわち、SP値(δ)は下記の式(I)に基づいて求められた値である。
SP値(δ)=(ΣΔE/ΣV)1/2 ・・・(I)
〔単位:(cal/cm3)1/2〕
ΔE:蒸発エネルギー(cal/mol)
V:モル分子容(cm3/mol)
【0042】
尚、官能基ごとの蒸発エネルギーとモル分子容の一例を実施例での表1に示す。
【0043】
SP値の差の絶対値は以下の式(II)によって算出される。
SP値の差の絶対値=|SP値(δ1)-SP値(δ2)|・・・(II)
SP値(δ1):(メタ)アクリル系樹脂を構成している構成単位のSP値
SP値(δ2):ナノ粒子における有機官能基のSP値
【0044】
本実施形態では前記有機官能基が前記ナノ粒子の表面を被覆している表面被覆率が10%以上であることが好ましい。表面被覆率は、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、25%以上であることが特に好ましい。前記表面被覆率は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましく、35%以下であることが特に好ましい。前記表面被覆率が上記下限値以上であると、ナノ粒子が樹脂中に均質に分散し易くなり、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の気泡をより細かくできる。前記表面被覆率が上記上限値以下であると、核剤としての良好な効果が得られ、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の気泡をより細かくできる。
【0045】
前記表面被覆率については、有機官能基を除いたナノ粒子の本体部分(粒子本体ともいう)が水酸基などの表面官能基を有する金属酸化物粒子などである場合のように、表面官能基との縮合反応などによって有機官能基を化学的に固定できる場合は、下記式(III)で求めることができる。
表面被覆率=N1/NALL ・・・(III)
(尚、「NALL」は、有機官能基を化学結合させ得る全ての表面官能基の数であり、「N1」は、有機官能基が結合した表面官能基の数である。)
【0046】
前記表面被覆率については、例えば、粒子本体が表面処理されていない無処理のシリカ粒子である場合、下記式(IV)で求めることができる。
表面被覆率=SiOH1/SiOHALL ・・・(IV)
(尚、「SiOHALL」は、有機官能基を化学結合させる前の全てのシラノール基の数であり、「SiOH1」は、有機官能基が結合したシラノール基の数である。)
【0047】
図1はナノ粒子が表面に有機官能基を有するシリカ粒子である場合の
29Si核NMRスペクトルの一例である。-90~-95ppm付近のQ2構造(ケイ素原子が2個の水酸基と結合)、-100~-105ppm付近のQ3構造(ケイ素原子が1個の水酸基と結合)、―105~-120ppm付近のQ4構造(ケイ素原子が水酸基と結合していない)に由来するピークが観測される。また、-50~-60ppm付近のT2構造(ケイ素原子が2個の有機官能基と結合)、-60~-70ppm付近のT3構造(ケイ素原子が1個の有機官能基と結合)に由来するピークが観測される。尚、シリカの末端のQ1構造およびT1構造は観測されるがピークが微少なため、ここでは無視することができる。これらピークの面積比から下記式(V~XII)を用いて有機官能基が結合したシラノール基の数(SiOH
1)と有機官能基を化学結合させる前の全てのシラノール基の数(SiOH
ALL)を算出することができる。
【0048】
有機官能基が結合したシラノール基の数(SiOH1)は以下のようにして算出することができる。
有機官能基が結合したシラノール基密度(mol%)=(T2+T3)/(Q2+Q3+Q4)×100・・・(V)
T2:シリカのT2構造に由来するピーク面積
T3:シリカのT3構造に由来するピーク面積
Q2:シリカのQ2構造に由来するピーク面積
Q3:シリカのQ3構造に由来するピーク面積
Q4:シリカのQ4構造に由来するピーク面積
有機官能基が結合したシラノール基濃度(mol/g)=((有機官能基が結合したシラノール基密度(mol%))/100)/60.1・・・(VI)
有機官能基が結合したシラノール基の数(SiOH1)(個/nm2)=(有機官能基が結合したシラノール基濃度(mol/g))×(アボガドロ定数6.022×1023(/mol)/(ナノ粒子の比表面積(nm2/g)×1018)・・・(VII)
【0049】
有機官能基を化学結合させる前の全てのシラノール基の数(SiOHALL)は以下のようにして算出することが出来る。
有機官能基を化学結合させる前の全てのシラノール基密度(mol%)=(T2+T3+2×Q2+Q3)/(Q2+Q3+Q4)×100・・・(VIII)
T2:シリカのT2構造に由来するピーク面積
T3:シリカのT3構造に由来するピーク面積
Q2:シリカのQ2構造に由来するピーク面積
Q3:シリカのQ3構造に由来するピーク面積
Q4:シリカのQ4構造に由来するピーク面積
有機官能基を化学結合させる前の全てのシラノール基濃度(mol/g)=((有機官能基を化学結合させる前の全てのシラノール基密度(mol%))/100)/60.1・・・(IX)
有機官能基を化学結合させる前の全てのシラノール基(SiOHALL)(個/nm2)=(有機官能基を化学結合させる前の全てのシラノール基濃度(mol/g))×(アボガドロ定数6.022×1023(/mol)/(ナノ粒子の比表面積(nm2/g)×1018)・・・(X)
表面被覆率(%)=(有機官能基が結合したシラノール基(個/nm2)/有機官能基を化学結合させる事が出来る全てのシラノール基の数(個/nm2))×100・・・(XI)
【0050】
また、前記固体NMR測定から表面被覆率が既知となっているナノ粒子を使用して近赤外分光測定で得られるスペクトルのピークに基づく検量式を作成し、該検量式から表面被覆率が未知であるナノ粒子の表面被覆率を算出することができる。
【0051】
前記検量式の作成方法としては、まず、前記固体NMR測定から表面被覆率が既知となっているナノ粒子と、表面処理される前のナノ粒子とを、異なる割合で混合した試料を3つ以上調製する。次に、これらの試料について近赤外分光測定をそれぞれ実施する。得られる各スペクトルの近赤外領域では6000~5500cm-1に有機官能基のC-Hの対称・逆対称伸縮の倍音に帰属されるピークが観測される。最後に、各スペクトルで観測された前記ピークを基にして検量式を作成する。前記検量式の作成においては、該領域のピーク面積や、ピーク高さを表面被覆粒子の表面被覆率でプロットして検量式を作成してもよいし、PLS回帰法のような多変量回帰分析によって検量式を作成してもよい。
【0052】
粒子本体が金属ナノ粒子である場合のように、有機官能基が主に物理的な相互作用に依存してナノ粒子の表面に存在する場合も同様である。表面被覆率は下記式(XII)のようにして求めることができる。
表面被覆率=A1/AALL ・・・(XII)
(尚、「AALL」は、粒子本体の表面積であり、「A1」は、粒子本体の表面積の内、有機官能基が占有している面積である。)
【0053】
粒子本体の比表面積は、電子顕微鏡等による粒子サイズと粒子本体の構成原料の添加量から幾何学的に計算してもよい。そのような計算が困難な場合、そのような方法に代えて窒素や水素の吸着量から粒子本体の比表面積を求めてもよい。有機官能基の占める表面積については最小被覆面積(たとえば、佐貫須美子「ビニルトリエトキシシランによる酸化チタンのカップリング処理」、「表面技術」、(一般社団法人表面技術協会、1999年)、86頁)と担持量から求めることが可能である。
【0054】
前記樹脂組成物における前記ナノ粒子の含有量は、0.01体積%以上であることが好ましく、0.3体積%以上であることがより好ましく、0.5体積%以上であることがさらに好ましく、1体積%以上であることが特に好ましい。前記含有量は、30体積%以下であることが好ましく、25体積%以下であることがより好ましく、22体積%以下であることがさらに好ましく、20体積%以下であることが特に好ましい。前記ナノ粒子の含有量が上記下限値以上であると、核剤としての良好な効果が得られ、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の気泡をより細かくできる。前記ナノ粒子の含有量が上記上限値以下であると、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の気泡の空隙率をより大きくできる。
【0055】
前記ナノ粒子と前記(メタ)アクリル系樹脂については、古典分子動力学による引きはがし計算での応力値が100MPa以上であることが好ましい。応力値は、150MPa以上であることがより好ましく、200MPa以上であることがさらに好ましく、300MPa以上である事が特に好ましい。応力値は、1500MPa以下であることが好ましく、1000MPa以下であることがより好ましく、900MPa以下であることがさらに好ましく、700MPa以下である事が特に好ましい。前記応力値が上記下限値以上であると、ナノ粒子が樹脂中に均質に分散し易くなり、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の気泡をより細かくできる。前記応力値が上記上限値以下であると、核剤としての良好な効果が得られ、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の気泡をより細かくできる。
【0056】
引きはがし計算は、力場パラメーターを用いて実施することができる。力場パラメーターは、第一原理計算に基づき、前記ナノ粒子と前記(メタ)アクリル系樹脂との吸着エネルギーと、前記ナノ粒子の表面から前記(メタ)アクリル系樹脂までの距離との関数である第1のポテンシャル曲線(吸着エネルギー曲線)を推算し、次いで、前記ナノ粒子の表面と前記(メタ)アクリル系樹脂との分子間相互作用と、前記ナノ粒子の表面から前記(メタ)アクリル系樹脂までの距離との関数である第2のポテンシャル曲線を推算し、前記第一原理計算に基づく前記第1のポテンシャル曲線(吸着エネルギー曲線)に、前記第2のポテンシャル曲線を合わせるようにフィッティングしたものを用いることができる。
【0057】
すなわち、(メタ)アクリル系樹脂発泡体での前記ナノ粒子と前記(メタ)アクリル系樹脂については、前記ナノ粒子と前記(メタ)アクリル系樹脂との吸着エネルギーと、前記ナノ粒子の表面から前記(メタ)アクリル系樹脂までの距離との関数である第1のポテンシャル曲線(吸着エネルギー曲線)を第一原理計算に基づいて推算し、前記ナノ粒子の表面と前記(メタ)アクリル系樹脂との分子間相互作用と、前記ナノ粒子の表面から前記(メタ)アクリル系樹脂までの距離との関数である第2のポテンシャル曲線を力場パラメーターに基づいて推算し、前記第一原理計算に基づく前記第1のポテンシャル曲線(吸着エネルギー曲線)に、前記第2のポテンシャル曲線を合わせるように前記力場パラメーターをフィッティングした際に、前記フィッティングがされた前記力場パラメーターを用いた古典分子動力学による引きはがし計算での応力値が300MPa以上700MPa以下であることが好ましい。
【0058】
図2は、本発明にかかる引きはがし計算での応力値の算出手順の一例を示すフロー図である。
【0059】
前記引きはがし計算での応力値の算出方法について説明する。手順としては、まず、ナノ粒子表面に(メタ)アクリル系樹脂が付着している表面構造モデルを作成する(第1ステップS1)。次に、第一原理計算(DFT計算)による(メタ)アクリル系樹脂とナノ粒子との界面の第1のポテンシャル曲線(吸着エネルギー曲線)を解析する(第2ステップS2)。そして、第1のポテンシャル曲線(吸着エネルギー曲線)を再現出来るように力場パラメーターを最適化し、第2のポテンシャル曲線を求める(第3ステップS3)。最適化した力場パラメーターを用いた分子動力学計算による(メタ)アクリル系樹脂とナノ粒子との界面モデルの熱平衡化を行う(第4ステップS4)。そして、力場パラメーターを用いた分子動力学計算による(メタ)アクリル系樹脂とナノ粒子との界面の引きはがし解析を行う(第5ステップS5)。最後に、引きはがし計算における応力値を算出する(第6ステップS6)。
【0060】
次に、引きはがし計算での応力値の算出手順における各ステップの詳細を説明する。
【0061】
第1ステップS1では、ナノ粒子PCの表面に(メタ)アクリル系樹脂RZが付着している表面構造モデルを作成し、(メタ)アクリル系樹脂RZとナノ粒子PCとの界面の構造最適化を行う。(メタ)アクリル系樹脂RZの分子モデルとしては、例えば、2量体((メタ)アクリル酸メチルが2個結合した分子)を使用できる。ナノ粒子PCのモデルとしては、周期境界の影響を避けるため、十分大きな表面積(原子数)を有する構造を用意する。また、ナノ粒子PCのモデルは粒子本体SBの安定な面を切り出した構造を用意し、その表面を所定の有機官能基FGで被覆した表面構造モデルを作成する。前記有機官能基FGの種類や被覆率及び粒子本体SBを変更する場合は、前記表面構造モデルに反映される。作成した表面構造モデルは、始めに古典分子動力学計算によっていくつかの原子を1つの構成要素として構造最適化を行った後、第一原理計算(DFT計算)によって表面緩和構造を計算し、最終的な各原子の点電荷を設定する。
【0062】
第1ステップS1で古典分子動力学計算に用いるシミュレーションソフトウェアとしては、例えば、材料物性解析ソフトウェアJ-OCTA(株式会社JSOL社製)中の分子動力学シミュレーションエンジンCOGNACを使用することができる。第一原理計算(DFT計算)に用いるシミュレーションソフトウェアとしては、例えば、材料物性解析ソフトウェアJ-OCTA(株式会社JSOL社製)中の第一原理電子状態計算ソフトウェアSIESTAを使用することができる。
【0063】
第2ステップS2では、第一原理計算(DFT計算)による(メタ)アクリル系樹脂RZとナノ粒子PCとの界面の第1のポテンシャル曲線(吸着エネルギー曲線)を解析する。具体的には、第1ステップS1で作成した表面構造モデルから一定距離に(メタ)アクリル系樹脂RZを配置し、その後(メタ)アクリル系樹脂RZをランダムに回転させながらナノ粒子PCの表面から引き離していき、少なくとも3以上の(メタ)アクリル系樹脂RZがナノ粒子PCの表面に吸着した界面モデル(吸着構造)をサンプリングすることで第1のポテンシャル曲線(吸着エネルギー曲線)を求める。
【0064】
第2ステップS2で計算に用いるシミュレーションソフトウェアとしては、例えば、材料物性解析ソフトウェアJ-OCTA(株式会社JSOL社製)中の第一原理電子状態計算ソフトウェアSIESTAを使用することができる。
【0065】
第3ステップS3では、第2ステップS2で求めた第1のポテンシャル曲線(吸着エネルギー曲線)を再現出来るように力場パラメーター(レナード・ジョーンズパラメーター)を最適化し、第2のポテンシャル曲線を求める。
ここで、(メタ)アクリル系樹脂とナノ粒子の表面との分子間相互作用(ファン・デル・ワールス相互作用)は第1ステップS1で作成した表面緩和構造におけるナノ粒子PCを原点(Z=0)とした場合に、前記ナノ粒子PCから前記(メタ)アクリル系樹脂RZの幾何平均までのZ方向の最短距離(Z=R)との関数として以下のレナード・ジョーンズポテンシャル(U(R))で表すことができる。
U(R)=4Σijεij{(σij/rij)12-(σij/rij)6}・・・(XIII)
式(XIII)におけるεij,σijは(メタ)アクリル系樹脂RZを構成する各原子(i)とナノ粒子PCを構成する各原子(j)における力場パラメーター(レナード・ジョーンズパラメーター)であり、rijは(メタ)アクリル系樹脂RZを構成する各原子(i)とナノ粒子PCを構成する各原子(j)の距離である。第2ステップS2で求めた第1のポテンシャル曲線(吸着エネルギー曲線)を再現出来るように、各力場パラメーター(εij、σij)をシュミレーテッドアニーリング法とネルダー・ミード法を用いてフィッティング(最適化)することで、第2のポテンシャル曲線を求めることができる。
【0066】
図3A~
図3Cは、引きはがし計算での応力値の算出手順において、第4ステップS4~第6ステップS6の一例を模式的に示す図である。
【0067】
第4ステップS4では、第3ステップS3で求めた力場パラメーターを用いた分子動力学計算による(メタ)アクリル系樹脂とナノ粒子との界面モデルの熱平衡化を行う。まず、第1ステップS1と同様にして、ナノ粒子PCの表面に(メタ)アクリル系樹脂RZが付着している表面構造モデルを作成する。前記表面構造モデルは(メタ)アクリル系樹脂RZの位置や向きをランダムに変えて、少なくとも3以上のモデルを作成する。このとき、(メタ)アクリル系樹脂の分子モデルとしては、例えば、10量体((メタ)アクリル酸メチル)を使用できる。次に、熱平衡化するためのアニール手順として、例えば、300K,0.1ns、次いで350K,0.7ns、最後に300K,0.2nsの構造緩和を実施することで(メタ)アクリル系樹脂RZがナノ粒子PCの表面に吸着した界面モデル(吸着構造)を得ることができる。
【0068】
第5ステップS5では、第3ステップS3で求めた力場パラメーターを用いた分子動力学計算による(メタ)アクリル系樹脂RZとナノ粒子PCとの界面の引きはがし解析を行う。具体的には、第4ステップS4で作成した各吸着構造から(メタ)アクリル系樹脂の中央の炭素原子に一定速度(10m/s)で並進させる拘束条件を設定し、各吸着構造から20Å、Z方向に引きはがす解析(引きはがし計算)を行う。引きはがす解析(引きはがし計算)は、第4ステップS4で求めた3以上の界面モデル(吸着構造)に対してそれぞれ行う。
【0069】
第6ステップS6では、第5ステップS5で実施した引きはがし計算における応力値を算出する。具体的には、前記引きはがし計算の際に、ナノ粒子PCを構成する各原子(j)に作用する垂直方向の力を算出し、これらの総和によって応力値(P)を次式により求める。
P=(ΣjFj/S)・・・(XIV)
Fj:ナノ粒子PCを構成する各原子(j)に作用する垂直方向の力
S:ナノ粒子PCのXY面の断面積
前記応力値を1ps毎に算出し、その時間変化を求め、これらを積分することで、引きはがし計算における応力値とする。第5ステップS5で得た3以上の界面モデル(吸着モデル)の引きはがし解析(引きはがし計算)における、全ての応力値を算出し、全ての応力値の相加平均を、本発明における引きはがし計算での応力値とする。
【0070】
第3ステップS3~第6ステップS6で計算に用いるシミュレーションソフトウェアとしては、例えば、材料物性解析ソフトウェアJ-OCTA(株式会社JSOL社製)中の並列化分子動力学エンジンVSOPを使用することができる。
【0071】
前記ナノ粒子がナノサイズであることは、例えば、(メタ)アクリル系樹脂発泡体から作製した薄片試料を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することによって確認することができる。具体的には、TEMを使って前記薄片試料の写真を撮影し、該写真における前記ナノ粒子の面積(投影面積)を求め、該面積と同じ面積を有する円の直径が1μm未満であることで前記ナノ粒子がナノサイズであることを確認できる。前記ナノ粒子は、平均粒子径(無作為に選択した複数(例えば、20個以上)のナノ粒子に対して上記のような直径を求めた際の平均値)が100nm以下となる大きさであることが好ましく、80nm以下となる大きさであることがより好ましく、50nm以下となる大きさであることがさらに好ましい。前記ナノ粒子の平均粒子径は、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましい。該平均粒子径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。前記平均粒子径が上記下限値以上であると、核剤同士の凝集が抑制され、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の気泡をより細かくできる。前記平均粒子径が上記上限値以下であると、核剤としての良好な効果が得られ、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の気泡をより細かくできる。
【0072】
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂発泡体を構成する樹脂組成物には、(メタ)アクリル系樹脂に対する可塑化効果を発揮し得る可塑剤を含有させてもよい。前記可塑剤としては、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、ポリエステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、エポキシ化植物油、セバシル酸エステル、アゼライン酸エステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。前記スルホン酸エステルとしては、アルキルスルホン酸エステルが挙げられる。アルキルスルホン酸エステルにおいて、アルキル基の炭素数は、例えば、12~20とすることができる。
【0073】
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂発泡体を構成する樹脂組成物には、これら以外に、例えば、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料、染料、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光剤、等の各種添加剤を含有させてもよい。
【0074】
(メタ)アクリル系樹脂発泡体を作製する際に用いる発泡剤としては、反応によって気体を発生する化学発泡剤であってもよいが、化学発泡剤は、核剤としても作用する場合があるため、本実施形態においては物理発泡剤が好適である。該物理発泡剤としては、無機ガスや揮発性有機溶剤が挙げられる。前記無機ガスとしては、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、水などが挙げられる。
【0075】
前記揮発性有機溶剤としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの鎖状又は環状炭化水素類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族類;アセトニトリル、N,N-ジメチルフォルムアミド等の含窒素類:塩化メチレン、クロロホルム、フロン等の含ハロゲン類等が挙げられる。
【0076】
本実施形態における発泡剤は、これらの物理発泡剤のなかでは、無機ガスが好ましい。発泡剤は、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、及び、水の内の1つ以上を含むことが好ましい。
【0077】
次いで、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の製造方法について説明する。
本実施形態で、ナノサイズの気泡を有しているアクリル系樹脂発泡体を製造するにあたっては、以下の(A)~(C)のような工程を実施することが好ましい。
(A)表面に有機官能基を備えているナノ粒子と、(メタ)アクリル系モノマーとを含有するモノマー組成物を重合して発泡用樹脂組成物を調製する第1工程。
(B)前記発泡用樹脂組成物に発泡剤を含ませて発泡性樹脂組成物を調製する第2工程。
(C)前記発泡性樹脂組成物を発泡させる第3工程。
【0078】
前記第1工程(A)は、具体的には、次のようにして実施できる。
まず、ナノサイズのシリカ粒子を分散させたシリカゾルに、シランカップリング剤を加え超音波処理によって有機官能基によって表面修飾されたナノ粒子を含むナノ粒子分散ゾルを得る。
次いで、前記(メタ)アクリル系モノマーを加え、ナノ粒子分散ゾル中の溶媒と置換することでモノマー分散液を得る。
次いで、モノマー分散液に重合開始剤を含有させてモノマー組成物を調製する。
その後、該モノマー組成物を加熱して(メタ)アクリル系モノマーの重合を進行させ、前記発泡用樹脂組成物を得る。
【0079】
前記ナノ粒子分散ゾルを得ることでは、シリカゾルに含まれるシリカ粒子の比表面積(S:m2/g)を測定することと、該シリカ粒子100質量部に対して所定の質量部のシランカップリング剤をシリカゾルに添加することとを実施してもよい。シリカ粒子の比表面積は、窒素吸着によるBET法(JIS Z8830:2013(ISO9277:2010)ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)などによって測定できる。
【0080】
シランカップリング剤は、インテグラルブレンド法によってシリカ粒子と反応させてもよく、(メタ)アクリル系モノマーとともにシリカ粒子に混合されたり(メタ)アクリル系モノマーに添加した後でシリカ粒子と混合されたりしてもよい。シリカ粒子の表面に効率良く有機官能基を設ける意味では(メタ)アクリル系モノマーよりも前にシリカ粒子と混合されることが好ましく、上記のようにシリカゾルに対して添加されることが好ましい。
【0081】
「最小被覆面積」についてはStuart-brieglebの分子モデルに基づいて算出することができ、シランカップリング剤の分子量をM(g/mol)とした場合、シランカップリング剤の最小被覆面積(Smin(m2/g))は、式(XV)より下記のようにして求められる。
Smin(m2/g)=78.26×1000/M・・・(XV)
(尚、「Smin」は、最小被覆面積であり、「M」は、シランカップリング剤の分子量である。)
【0082】
本実施形態では前記有機官能基の仕込み被覆率(シランカップリング剤がシリカの表面積を占める割合)は、シランカップリング剤の添加量を「X(g)」、シリカの添加量を「Y(g)」とした場合、以下の式(XVI)から求められる。
仕込み被覆率(%)=(X×Smin/Y×S)×100・・・・(XVI)
仕込み被覆率は10%以上であることが好ましい。例えば、100gのシリカ粒子での表面積は、「100×S(m2)」となるので、「X×Smin(m2)」が「10×S(m2)」以上となるようにシランカップリング剤を添加すれば、仕込み被覆率が10%以上となる。
従って、シリカ粒子100質量部に対するシランカップリング剤の添加部数(X(質量部))については、下記の式(a1)を満たすことが好ましい。
X ≧ 10×S×M/78260 ・・・(a1)
【0083】
前記のように仕込み被覆率は、12%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることが特に好ましい。そこで、シリカ粒子100質量部に対するシランカップリング剤の添加部数(X(質量部))については、下記の式(a2)を満たすことがより好ましく、式(a3)を満たすことがさらに好ましく、式(a4)を満たすことが特に好ましい。
X ≧ 12×S×M/78260 ・・・(a2)
X ≧ 15×S×M/78260 ・・・(a3)
X ≧ 20×S×M/78260 ・・・(a4)
【0084】
前記のように仕込み被覆率は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましく、40%以下であることが特に好ましい。そこで、シリカ粒子100質量部に対するシランカップリング剤の添加部数(X(質量部))については、下記の式(b1)を満たすことが好ましく、式(b2)を満たすことがより好ましく、式(b3)を満たすことがさらに好ましく、式(b4)を満たすことが特に好ましい。
X ≦ 90×S×M/78260 ・・・(b1)
X ≦ 80×S×M/78260 ・・・(b2)
X ≦ 50×S×M/78260 ・・・(b3)
X ≦ 40×S×M/78260 ・・・(b4)
【0085】
前記第1工程(A)では、ナノ粒子が(メタ)アクリル系モノマーに対して優れた分散性を示すことで、モノマー分散液中における凝集塊の形成が抑制される。その結果、モノマー分散液に重合開始剤を含有させたモノマー組成物、およびモノマー組成物を加熱して重合させた発泡用樹脂組成物についてもナノ粒子の凝集塊の形成が抑制される。このように本実施形態においては(メタ)アクリル系樹脂を含む発泡用樹脂組成物中でのナノ粒子の分散状態を良好にすることが容易であるため、当該発泡用樹脂組成物が簡便な方法によって作製され得る。
【0086】
前記第1工程(A)の後に実施される前記第2工程(B)は、具体的には、次のようにして実施できる。
【0087】
発泡用樹脂組成物に発泡剤を含有させて発泡性樹脂組成物を得るためには、例えば、発泡用樹脂組成物を圧力容器に入れ、該圧力容器の空気を発泡剤ガスと置換するとともに前記圧力容器内が加圧状態となるまで発泡剤ガスを圧力容器に圧入し、当該加圧状態を維持したまま一定以上の時間を保持するような方法を採ることができる。
【0088】
このようにして加圧状態で発泡用樹脂組成物を保持することで発泡剤が樹脂組成物中に含浸し、該発泡剤が溶解している発泡性樹脂組成物を得ることができる。このとき発泡剤の含浸性を高めるために、発泡用樹脂組成物を加熱状態にしてもよい。発泡用樹脂組成物の加熱は、発泡剤の圧入前であっても圧入後であってもよい。前記圧力容器内は、例えば、ゲージ圧で5MPa以上100MPa以下の圧力とすればよく、10MPa以上50MPa以下のゲージ圧とされることが好ましい。
【0089】
前記第3工程(C)での発泡性樹脂組成物は、前記発泡剤が十分に含浸された状態において前記圧力容器内の発泡剤を開放して前記圧力容器を大気圧まで減圧することによって実施することができる。該工程は、発泡性樹脂組成物が適度な軟化状態となるように加熱された状態で実施されることが好ましい。尚、前記第1工程(A)において、成形空間と外部空間とが連通状態となった成形型に入れて発泡用樹脂組成物を圧力容器に収容させるようにすれば、当該第3工程では、成形型によって所望の形状が賦与された(メタ)アクリル系樹脂発泡体を製造することができる。
【0090】
本実施形態においては、このように簡便な方法によってナノサイズの気泡を有している(メタ)アクリル系樹脂発泡体を製造することができる。(メタ)アクリル系樹脂発泡体は、含有する気泡の体積割合を表す空隙率が10%以上であることが好ましい。前記空隙率は、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、25%以上であることが特に好ましい。空隙率は、30%以上であることがとりわけ好ましい。前記空隙率が上記下限値以上であると、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の断熱性能をより高められる。前記空隙率の上限は、特に限定されるものではないが、通常、95%以下となる。空隙率は、(メタ)アクリル系樹脂発泡体を製造することが容易なものとする上で、85%以下であってもよく、80%以下であってもよい。軽量性、断熱性、及び、生産性を総合的に考えると、空隙率は、30%以上80%以下であることが好ましい。
【0091】
(メタ)アクリル系樹脂発泡体は、平均気泡径が10nm以上1000nm以下であることが好ましい。平均気泡径は、900nm以下であることがより好ましく、800nm以下であることがさらに好ましく、700nm以下であることが特に好ましい。平均気泡径は、50nm以上であってもよく、100nm以上であってもよい。前記平均気泡径が上記下限値以上であると、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の断熱性能をより高められる。尚、本実施形態において作製される(メタ)アクリル系樹脂発泡体は、断面における長さ5μm以上の気泡の割合(面積割合)が20%以下であることが好ましい。このような粗大な気泡の割合は、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましい。尚、(メタ)アクリル系樹脂発泡体の平均気泡径及び気泡の割合(面積割合)は、実施例記載の方法で求めることができる。
【0092】
このように粗大な気泡の形成が抑制された(メタ)アクリル系樹脂発泡体は、断熱材として用いられることで優れた断熱性を発揮する。樹脂発泡体で構成された断熱材であって、該樹脂発泡体が本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂発泡体である断熱材は、高度な断熱性が求められるような用途に好適なものとなり得る。
【0093】
尚、本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂発泡体は、断熱材以外にも種々の用途に用いることができる。即ち、本発明は、上記例示に何等限定されるものではなく、上記に例示されていない技術事項を適宜採用することができる。
【実施例0094】
以下に、実施例を示して(メタ)アクリル系樹脂発泡体の製造方法を具体的に説明するが、本発明のアクリル系樹脂発泡体の製造方法は以下に例示の方法に限定されるものではない。
【0095】
(実施例1)
<発泡用樹脂組成物の作製>
(1)モノマー分散液の調製
100mLナスフラスコに、メタノールシリカゾル(シリカ純分として40質量%)を2.5g、有機官能基を導入するための化合物として、へキシルトリメトキシシランを0.080g、反応促進剤としてドデシルりん酸を0.005g加え、超音波処理を40分実施することで、表面にヘキシル基を備えたナノサイズのサイズのシリカ粒子がメタノールに分散したナノ粒子分散ゾルを得た。
次に、モノマーとして所定量のメタクリル酸メチルを入れ、攪拌した後エバポレータによって系内のメタノールを留去させた。留去前後の質量から留去したメタノール量を見積もり、1.0g以上留去させた。このとき、メタノールと同時にメタクリル酸メチルも留去されてしまう為、シリカ粒子が5.0体積%となるようメタクリル酸メチルを追加してモノマー分散液を得た。
このとき、メタクリル酸メチルは100mbar、50℃の条件にて予め減圧蒸留したものを用いた。
【0096】
このとき、仕込み被覆率はシリカ粒子の比表面積とへキシルトリメトキシシランの最小被覆面積から幾何学的に算出した。即ち、シリカ粒子表面積61.0m2に対して30.5m2被覆となる量のヘキシルトリメトキシシランを添加することで、仕込み被覆率が50%となるようにしてナノ粒子を得た。
【0097】
ナノ粒子(有機修飾シリカ)の表面被覆率は29Si核NMR測定によって求めた。また、表面被覆率は式(IV)によって算出した。即ち、29Si核NMR測定によって得られたシラノール基由来のSiのピーク面積とシランカップリング剤由来のSiピーク面積の比率とシリカの比表面積から有機官能基が結合したシラノール基の数(SiOH1)と有機官能基を化学結合させる事ができる全てのシラノール基の数(SiOHALL)を算出し、それらの比率からナノ粒子の表面被覆率を求めた。
【0098】
測定に使用した装置及び条件は以下の通りであった。
・装置:Bruker Biospin Avance NEO spectrometer
・プローブ:3.2mm HX-MAS probe
・共鳴周波数:79.46MHz
・測定:DPMAS法
・信号検出:CPMG法(この間、1H核にSPINAL64 decouplingを照射して測定した。)
・MAS周波数:20kHz
・緩和時間:1250秒
・積算回数:48回
・29Si RF磁場:56kHz
・1H RF磁場:100kHz
・CPMGエコー取得数:8
【0099】
実施例1における有機官能基が結合したシラノール基数(SiOH1)は2.8(個/nm2)、有機官能基を化学結合させる前の全てのシラノール基の数(SiOHALL)は7.9(個/nm2)、表面被覆率は35%であった。
【0100】
有機官能基と樹脂構成単位のSP値は前述の方法で算出した。ここで有機官能基としてのヘキシル基は蒸発エネルギー7025cal/mol、モル分子容114cm3/mol、SP値(δ)は7.85cal/cm3)1/2である。ポリメタクリル酸メチルの構成単位は蒸発エネルギー8080cal/mol、モル分子容81.9cm3/mol、SP値(δ)は9.93cal/cm3)1/2である。そして、有機官能基と構成樹脂のSP値の差の絶対値は前述の方法にて算出した。結果、実施例1におけるSP値の差の絶対値は2.1であった。
(2)モノマー組成物の調製
モノマー分散液10gに重合開始剤として、過酸化ベンゾイル57.86mg、アゾビスジメチルバレロニトリル38.58mgを添加し、室温にて30分間攪拌してモノマー組成物を調製した。
(3)発泡用樹脂組成物の調製
深さ1.0mm直径100mmの穴が設けられた金属板を用意し、モノマー組成物を金属板の穴に流し入れ、その上に離型用フィルムとして市販のポリイミドフィルム(厚さ:50μm)を重ね合わせ、上蓋として別の金属板を重ね合わせ、それを55℃のオーブン内で7時間加熱した後、105℃で2時間加熱し、重合固化させて発泡用樹脂組成物を調製するとともに該発泡用樹脂組成物で出来た円形状のタブレットを調製した。
得られた円形状のタブレットは110℃、-0.1MPaの条件で一晩静置した。
【0101】
<(メタ)アクリル系樹脂発泡体の作製>
(メタ)アクリル系樹脂発泡体の作製は、以下の手順で行った。
(1) 円形状のタブレットから(メタ)アクリル系樹脂発泡体を作製するための試料として直径8.0mm厚さ1.0mmの樹脂円板を切り出した。
(2) 樹脂円板を円筒状の内部空間を有する圧力容器に入れ、密封した。
(3) 圧力容器を設定温度100℃の小型高温チャンバーの中に入れて、5分間、-0.1MPaで圧力容器内を減圧した。
(4) 圧力容器内の圧力が40MPaになるまで二酸化炭素を供給した。
(5) 24時間静置し、樹脂円板に二酸化炭素を含浸させ、発泡性樹脂組成物で構成された円板を作製した。
(6)小型高温チャンバーは設定温度のままにし、圧力容器のバルブを開放し、急減圧させることで、前記円板を発泡させ、(メタ)アクリル系樹脂発泡体を作製した。
(7)圧力容器のバルブを開放後、直ちに圧力容器を水槽に入れて(メタ)アクリル系樹脂発泡体を急冷し圧力容器から取り出した。
【0102】
<(メタ)アクリル系樹脂発泡体の特性評価>
(発泡用樹脂組成物および(メタ)アクリル系樹脂発泡体の密度)
発泡前の発泡用樹脂組成物の密度ρ0(g/cm3)と(メタ)アクリル系樹脂発泡体の密度ρ1(g/cm3)は、アルキメデス法により求めた。
具体的には、簡易比重測定キット(株式会社島津製作所製、型式:SMK-601)を備え付けた電子天秤(株式会社島津製作所製、型式:AP224X)を用いて、空気中と水中での発泡用樹脂組成物及び(メタ)アクリル系樹脂発泡体の質量をそれぞれ測定し、両者から発泡前の発泡用樹脂組成物の密度ρ0(g/cm3)と(メタ)アクリル系樹脂発泡体の密度ρ1(g/cm3)を自動計算させた。
【0103】
((メタ)アクリル系樹脂発泡体の空隙率)
(メタ)アクリル系樹脂発泡体の空隙率p(%)は、発泡前の発泡用樹脂組成物の密度ρ0(g/cm3)と(メタ)アクリル系樹脂発泡体の密度ρ1(g/cm3)を用いて以下の式(XVII)より算出した。
p(%)=(1-(ρ1/ρ0))×100 ・・・(XVII)
【0104】
((メタ)アクリル系樹脂発泡体の発泡倍率)
(メタ)アクリル系樹脂発泡体の発泡倍率χは、発泡前の発泡用樹脂組成物の密度ρ0(g/cm3)と(メタ)アクリル系樹脂発泡体の密度ρ1(g/cm3)を用いて以下の式(XVIII)より算出した。
χ=ρ0/ρ1 ・・・(XVIII)
【0105】
(平均気泡径(A))
(メタ)アクリル系樹脂発泡体の平均気泡径(A)φAは、次の方法にて測定した。
まず、上記のようにして作製された円板状の(メタ)アクリル系樹脂発泡体を液体窒素で冷却した後、中心に沿って切断して(メタ)アクリル系樹脂発泡体を2分割し、2枚の半円板状の(メタ)アクリル系樹脂発泡体を作製した。
走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立製作所製、商品名:S-4800)を用いて、切断面を10000~15000倍に拡大して撮影し、拡大写真を得た。
次に、拡大写真のうち目視で確認できる気泡を画像処理ソフト(GIMP)(バージョン:2.10.24)を用いて黒色に塗りつぶし、それ以外の面積を白色で塗りつぶすことで二値化処理された拡大写真を得た。この二値化処理された拡大写真を画像処理ソフト(image J(バージョン:1.51))で処理することにより気泡の断面積を取得し、同じ面積となる円の直径を気泡径として平均気泡径を算出した。
【0106】
平均気泡径については次のように評価した。
[評価基準]
・A:平均気泡径が300nm以下
・B:平均気泡径が300nmより大きく600nm以下
・C:平均気泡径が600nmより大きい
【0107】
(実施例2、3)
モノマー分散液を調製する工程で、へキシルトリメトキシシランを0.080g用いるのに代えて、それぞれ、0.040g(実施例2)、0.027g(実施例3)としたこと以外は、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系樹脂発泡体を作製した。このとき、仕込み被覆率は実施例1と同様の方法にて算出した。即ち、シリカ粒子表面積61.0m2に対してそれぞれ15.3m2被覆(実施例2)、10.4m2被覆(実施例3)となる量のヘキシルトリメトキシシランを添加することで、仕込み被覆率25%(実施例2)、仕込み被覆率17%(実施例3)となるようにしてナノ粒子を得た。SP値の差の絶対値を算出するのに用いた値および方法は実施例1と同様である。
【0108】
実施例2および3におけるナノ粒子の表面被覆率は、実施例1におけるナノ粒子(有機修飾シリカ)と表面に有機官能基を備えていないナノ粒子(未修飾シリカ)とを混合して調製した試料の近赤外分光スペクトルからPLS回帰によって作成した検量式により求めた。
【0109】
検量式の作成方法は以下の通りに行った。まず、表面被覆率が既知である実施例1のナノ粒子(有機修飾シリカ)と表面に有機官能基を備えていないナノ粒子(未修飾シリカ)との質量比率を100:0、75:25、50:50、25:75、0:100の割合で混合した試料(表面被覆率がそれぞれ35.0%、26.3%、17.5%、8.8%、0%となるような試料)を調製した。前記試料について、紫外可視近赤外分光器(日本分光社製、V-770)を用いて拡散反射スペクトルをそれぞれ3回ずつ測定した。測定波長範囲は1550-1950nmとし、波長間隔は1nm間隔とした。得られたスペクトルのうち有機官能基に帰属される1600nmから1835nmの領域のスペクトルデータを説明変数とし、各試料のナノ粒子の表面被覆率の値を目的変数としてPLS回帰により検量式を作成した。このときPLS回帰における成分数は第3成分までとした。PLS回帰は機械学習ライブラリscikit-learn中のプログラムPLS Regressionで実行した。得られた検量式の決定係数は1.0であり、二乗平均平方根誤差は0.39であった。このことから、作成した検量式から高い精度でナノ粒子の表面被覆率を算出できることを確認した。
【0110】
次に、実施例2および3で使用したナノ粒子について、紫外可視近赤外分光器(日本分光社製、V-770)を用いて同様の測定方法で拡散反射スペクトルをそれぞれ3回測定した。得られたスペクトルを説明変数とし、作成したPLS回帰による検量式を用いてナノ粒子の表面被覆率を算出した。その結果、実施例2および3のナノ粒子の表面被覆率はそれぞれ30%、26%であった。
【0111】
(実施例4~6)
モノマー分散液を調製する工程で、へキシルトリメトキシシランに代えてアセトキシプロピルトリメトキシシランを用い、用いるアセトキシプロピルトリメトキシシランの量を、それぞれ、0.086g(実施例4)、0.043g(実施例5)、0.029g(実施例6)としたこと以外は、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系樹脂発泡体を作製した。このとき、仕込み被覆率は実施例1と同様の方法にて算出した。即ち、シリカ粒子表面積61.0m2に対してそれぞれ30.5m2被覆(実施例4)、15.3m2被覆(実施例5)、10.4m2被覆(実施例6)となるアセトキシプロピルトリメトキシシランを添加することで、仕込み被覆率50%(実施例4)、仕込み被覆率25%(実施例5)、仕込み被覆率17%(実施例6)となるようにしてナノ粒子を得た。アセトキシプロピル基の蒸発エネルギーは8965cal/mol、モル分子容は99.8cm3/molであり、SP値(δ)は9.48cal/cm3)1/2であり、(メタ)アクリル系樹脂を構成している構成単位のSP値とナノ粒子における有機官能基のSP値差の絶対値は0.5である。SP値の算出方法およびSP値差の絶対値の算出方法は実施例1と同様である。
【0112】
実施例4におけるナノ粒子の表面被覆率は、実施例1と同様の方法にて算出した。実施例4における有機官能基が結合したシラノール基の数(SiOH1)は3.5(個/nm2)、有機官能基を化学結合させる前の全てのシラノール基の数(SiOHALL)は8.2(個/nm2)、ナノ粒子の表面被覆率は43%であった。
【0113】
実施例5および6におけるナノ粒子の表面被覆率は、実施例4のナノ粒子を用いたこと以外は実施例2および実施例3と同様にしてPLS回帰による検量式から算出した。その結果、実施例5および6におけるナノ粒子の表面被覆率はそれぞれ30%、22%であった。
【0114】
(実施例7,8)
モノマー分散液を調製する工程で、へキシルトリメトキシシランに代えてドデシルトリメトキシシランを用い、用いるドデシルトリメトキシシランの量を、それぞれ、0.112g(実施例7)、0.056g(実施例8)としたこと以外は、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系樹脂発泡体を作製した。このとき、仕込み被覆率は実施例1と同様の方法にて算出した。即ち、シリカ粒子表面積61.0m2に対してそれぞれ30.5m2被覆(実施例7)、15.3m2被覆(実施例8)となるドデシルトリメトキシシランを添加することで、仕込み被覆率50%(実施例7)、仕込み被覆率25%(実施例8)のナノ粒子を得た。ドデシル基の蒸発エネルギーは14105cal/mol、モル分子容は210.6cm3/molであり、SP値(δ)は8.18cal/cm3)1/2であり、(メタ)アクリル系樹脂を構成している構成単位のSP値とナノ粒子における有機官能基のSP値差の絶対値は1.8である。SP値の算出方法およびSP値差の絶対値の算出方法は実施例1と同様である。
【0115】
実施例7におけるナノ粒子の表面被覆率は、実施例1と同様の方法にて算出した。実施例7における有機官能基が結合したシラノール基の数(SiOH1)は2.7(個/nm2)、有機官能基を化学結合させる前の全てのシラノール基の数(SiOHALL)は8.3(個/nm2)、ナノ粒子の表面被覆率は33%であった。
【0116】
実施例8におけるナノ粒子の表面被覆率は、実施例7のナノ粒子を用いたこと以外は実施例2および実施例3と同様にしてPLS回帰による検量式から算出した。その結果、実施例8におけるナノ粒子の表面被覆率は29%であった。
【0117】
(比較例1)
モノマー分散液を調製する工程で、へキシルトリメトキシシランなどを用いずに、表面に有機官能基を備えていないナノ粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂発泡体を作製したこと以外は、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系樹脂発泡体を作製した。
【0118】
(比較例2、3)
モノマー分散液を調製する工程で、へキシルトリメトキシシランに代えてメチルトリメトキシシランを用い、用いるメチルトリメトキシシランの量を、それぞれ、0.053g(比較例2)、0.026g(比較例3)としたこと以外は、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系樹脂発泡体を作製した。このとき、仕込み被覆率は実施例1と同様の方法にて算出した。即ち、シリカ粒子表面積61.0m2に対してそれぞれ30.5m2被覆(比較例2)、15.3m2被覆(比較例3)となるメチルトリメトキシシランを添加することで、仕込み被覆率50%(比較例2)、仕込み被覆率25%(比較例3)としてナノ粒子を得た。メチル基の蒸発エネルギーは1125cal/mol、モル分子容は33.5cm3/molであり、SP値(δ)は5.80cal/cm3)1/2であり、(メタ)アクリル系樹脂を構成している構成単位のSP値とナノ粒子における有機官能基のSP値差の絶対値は4.1である。SP値の算出方法およびSP値差の絶対値の算出方法は実施例1と同様である。
【0119】
比較例2におけるナノ粒子の表面被覆率は、実施例1と同様の方法にて算出した。比較例2における有機官能基が結合したシラノール基の数(SiOH1)は2.8(個/nm2)、有機官能基を化学結合させる前のすべてのシラノール基の数(SiOHALL)は9.3(個/nm2)、ナノ粒子の表面被覆率は30%であった。
【0120】
比較例3におけるナノ粒子の表面被覆率は、比較例2のナノ粒子を用いたこと以外は実施例2および実施例3と同様にしてPLS回帰による検量式から算出した。その結果、比較例3のナノ粒子の表面被覆率は15%であった。
【0121】
(比較例4)
ナノ粒子を含有させず、モノマー組成物を、メタクリル酸メチル、過酸化ベンゾイル、アゾビスジメチルバレロニトリルのみで調製し、ナノ粒子を含まない(メタ)アクリル系樹脂発泡体を作製したこと以外は、実施例1と同様にして(メタ)アクリル系樹脂発泡体を作製した。
【0122】
各実施例、比較例で得られた(メタ)アクリル系樹脂発泡体の作製条件と特性をそれぞれ下記表2、表3に示す。
また、得られた(メタ)アクリル系樹脂発泡体の拡大写真を
図4に示す。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
以上のことからも、本発明によれば、ナノサイズの気泡を有しながらも良好な発泡状態となるように製造することが容易な樹脂発泡体が得られることがわかる。