(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023074975
(43)【公開日】2023-05-30
(54)【発明の名称】半導体封止用樹脂組成物、半導体封止材料及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/20 20060101AFI20230523BHJP
C08G 59/06 20060101ALI20230523BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230523BHJP
C08G 61/02 20060101ALI20230523BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G59/06
C08L63/00 C
C08G61/02
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188210
(22)【出願日】2021-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】矢本 和久
(72)【発明者】
【氏名】青山 和賢
(72)【発明者】
【氏名】秋元 源祐
【テーマコード(参考)】
4J002
4J032
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J002CC032
4J002CD071
4J002CE002
4J002DA037
4J002DE077
4J002DE107
4J002DE137
4J002DE147
4J002DE187
4J002DE237
4J002DE247
4J002DE267
4J002DE297
4J002DF017
4J002DG047
4J002DH047
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002DK007
4J002EL136
4J002EN036
4J002EN046
4J002EN066
4J002EN076
4J002EN086
4J002EP016
4J002EU076
4J002EU236
4J002FD017
4J002FD142
4J002FD146
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4J032CE03
4J032CE22
4J032CE24
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4J036FA01
4J036FA05
4J036FB08
4J036JA07
4M109AA01
4M109EA03
4M109EB02
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4M109EB09
4M109EB12
4M109EB13
4M109EC01
4M109EC09
4M109FA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本開示は、硬化時における低吸湿性及び金属材料に対する優れた密着性を示す半導体封止用樹脂組成物及び半導体封止材料、並びに当該半導体封止材料を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示は、フェノール性水酸基及び2以上の炭化水素基を有する芳香環を含む芳香族化合物(i)及び芳香族ビニル化合物(ii)を反応原料(1)とする多価ヒドロキシ樹脂(P)のグリシジルエーテル化物である、エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)と、無機充填剤(C)とを含有する、半導体封止用樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性水酸基及び2以上の炭化水素基を有する芳香環を含む芳香族化合物(i)及び芳香族ビニル化合物(ii)を反応原料(1)とする多価ヒドロキシ樹脂(P)のグリシジルエーテル化物である、エポキシ樹脂(A)と、
硬化剤(B)と、
無機充填剤(C)と、を含有する、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(A)の含有量は、前記エポキシ樹脂(A)と、前記硬化剤(B)と、前記無機充填剤(C)との合計量に対して、5~40質量%である、請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化剤(B)の含有量は、前記エポキシ樹脂(A)と、前記硬化剤(B)と、前記無機充填剤(C)との合計量に対して、5~40質量%である、請求項1又は2に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機充填剤(C)の含有量は、前記エポキシ樹脂(A)と、前記硬化剤(B)と、前記無機充填剤(C)との合計量に対して、60~95質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)と、前記エポキシ樹脂(A)の数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)を示す分子量分布が、1.1~1.8の範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物を含有する半導体封止材料。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物の硬化物を含む半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体封止用樹脂組成物、半導体封止材料及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、高耐熱性、耐湿性、低粘性等の諸物性に優れる点から、半導体封止材料やプリント回路基板等の電子部品、導電ペースト等の導電性接着剤、その他接着剤、複合材料用マトリックス、塗料、フォトレジスト材料、及び、顕色材料等で広く用いられている。これらの各種用途のうち、半導体封止材料の分野では、電子機器の小型化、高集積化への要求が高く、BGA、CSPといった表面実装パッケージへの移行又は高温環境下での接合における信頼性が高い銅ワイヤの採用が進んでいる。
【0003】
しかしながら、銅ワイヤは従来の金よりも腐食されやすい。そのため、半導体封止材料とリードフレームとの界面に剥離などの界面劣化が生じると、毛細管現象により剥離部分に水分が集中し、チップ又はワイヤボンディング接合部を腐食させる。更には高温でのリフロー工程において水分が急激に膨張し、クラック発生の要因となる。そのため、半導体封止材料特性はリフロー時のリードフレーム界面の剥離低減が必須であり、さらには、低い吸湿率特性、リードフレームとの接着特性の向上が求められている。また、前記各特性に加え、半導体封止材料は熱膨張を抑えることを目的に半導体封止材料にシリカ等のフィラーを高充填させて使用することが望ましい。そのため、充填率を高めるためには、半導体封止材料中の樹脂材料が低粘度で優れた流動性を有することが重要となる。
【0004】
このような要求特性に応えるため、例えば、特許文献1には、アルキルフェノール核の一部がエチルフェネチル基で置換された多価ヒドロキシ樹脂のOH基をエピクロルヒドリンでエポキシ化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、銅基板等のリードフレーム界面の剥離低減について一切検討されておらず、また開示されているエポキシ樹脂組成物の特性も不十分であった。そこで、本開示が解決しようとする課題は、硬化時における低吸湿性及び金属材料に対する優れた密着性を示す半導体封止用樹脂組成物及び半導体封止材料、並びに当該半導体封止材料を有する半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の化学構造を有するエポキシ樹脂を使用することにより、低吸湿性及び金属材料に対する優れた密着性を示す半導体封止用樹脂組成物を見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本開示は、フェノール性水酸基及び2以上の炭化水素基を有する芳香環を含む芳香族化合物(i)及び芳香族ビニル化合物(ii)を反応原料とする多価ヒドロキシ樹脂(P)のグリシジルエーテル化物である、エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)と、無機充填剤(C)と、を含有する、半導体封止用樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、硬化時における低吸湿性及び金属材料に対する優れた密着性を示す半導体封止用樹脂組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本開示は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[半導体封止用樹脂組成物]
本開示は、エポキシ樹脂(A)(以下、(A)成分)と、硬化剤(B)(以下、(B)成分)と、無機充填剤(C)(以下、(C)成分)とを含有する半導体封止用樹脂組成物である。そして、前記エポキシ樹脂(A)は、フェノール性水酸基及び2以上の炭化水素基を有する芳香環を含む芳香族化合物(i)(以下、単に芳香族化合物(i)とも称する。)及び芳香族ビニル化合物(ii)を反応原料とする多価ヒドロキシ樹脂(P)のグリシジルエーテル化物である。
これにより、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物全体として、硬化時における低吸湿性及び金属材料との優れた密着性を両立する効果を発揮することができる。
なお、本明細書における「反応原料」とは、化合又は分解といった化学反応により目的の化合物を得るために用いられ、目的の化合物の化学構造を部分的に構成する化合物をいい、溶媒、触媒といった、化学反応の助剤の役割を担う物質は除外される。本明細書では特に、「反応原料」とは、目的のプレポリマー(多価ヒドロキシ樹脂(P)又はグリシジルエーテル化物)を重合反応により得るための前駆体となる単量体化合物をいう。
【0010】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を構成する各成分(エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、無機充填剤(C)及び任意成分(D))について以下説明する。
「エポキシ樹脂(A)」
本実施形態におけるエポキシ樹脂(A)は、フェノール性水酸基及び2以上の炭化水素基を有する芳香環を含む芳香族化合物(i)及び芳香族ビニル化合物(ii)を反応原料とする多価ヒドロキシ樹脂(P)のグリシジルエーテル化物である。また、本実施形態における芳香族ビニル化合物(ii)は、芳香族ジビニル化合物(ii-1)を必須に含有し、必要により芳香族モノビニル化合物(ii-2)をさら含みうる。
換言すると、本実施形態におけるグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂(A)は、フェノール性水酸基及び2以上の炭化水素基を有する芳香環を含む芳香族化合物(i)単位と、芳香族ジビニル化合物(ii-1)単位とが前記芳香環を介して化学結合され、かつ必要により芳香族モノビニル化合物(ii-2)単位が前記芳香族化合物(i)単位中の前記芳香環に化学結合された構造を有し、かつ前記フェノール性水酸基がグリシジルエーテル基に置換されている化学構造を有する。
より詳細には、本実施形態のエポキシ樹脂(A)は、芳香族ビニル化合物(ii)から形成されるカチオノイド試剤によるArSE反応により、芳香族化合物(i)中の芳香環の特定の位置に導入されたグリシジルエーテル化物である。そのため、均一な化学構造又は鎖長のグリシジルエーテル化物が得られやすくなり、その結果、高い流動性、金属材料に対する優れた密着性、又は低吸湿性を示しうる。
なお、本明細書でいう「化合物単位」とは、反応又は重合時に形成される化学構造の繰り返し単位をいう。
【0011】
本実施形態のエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、150~400g/eqであることが好ましく、200~350g/eqであることがより好ましく、240~330g/eqであることが更に好ましい。前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が前記範囲内であると、エポキシ樹脂(A)が硬化剤と反応する際に発生する活性水酸基の発生が抑えられ、得られる硬化物の耐熱性と低吸湿性、及びこれに起因する耐リフロー性にも優れることから好ましい。本明細書におけるエポキシ当量の測定は、実施例の欄にも記載の通り、JIS K 7236に基づいて測定されるものである。
【0012】
本実施形態のエポキシ樹脂(A)は、ICI粘度計で測定した150℃における溶融粘度が、0.01~5dPa・sであることが好ましく、0.01~2dPa・sであることがより好ましく、0.01~0.6dPa・sであることが更に好ましい。前記エポキシ樹脂(A)の溶融粘度が前記範囲内であると、低粘度で流動性に優れるため、得られる硬化物の成形性が優れることから好ましい。本明細書における溶融粘度は、実施例の欄にも記載の通り、ASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定されるものである。
【0013】
本実施形態のエポキシ樹脂(A)は、低粘度で流動性に優れるものとなることから、数平均分子量(Mn)が200~1800の範囲であることが好ましく、250~1500の範囲であることがより好ましく、430~1500の範囲であることがさらに好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は250~2000の範囲であることが好ましく、300~1800の範囲であることがより好ましい。また別の形態では、800~2000の範囲であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比である分子量分布(Mw/Mn)は1~1.6の範囲であることが好ましい。本明細書においてエポキシ樹脂(A)の分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)を用いて、後述する実施例に記載の測定条件で測定したものである。
芳香族化合物(i)同士の連結部位となる芳香族ビニル化合物(ii)から芳香族化合物(i)への反応部位を制御することにより、均一な化学構造又は鎖長の多価ヒドロキシ樹脂(P)が得られやすくなるため、そのグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂(A)も同様に、従来のフェノール樹脂より分子量分布が狭くなり、低粘度となり、その結果、半導体封止材用樹脂組成物に使用することで高流動性、優れた成型性を発揮することができる。
【0014】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物において、(A)成分の含有量は、(A)成分、(B)及び(C)成分の合計量100質量%に対して、5~40質量%であることが好ましく、より好ましくは8~30質量%、さらに好ましくは10~25質量%である。(A)成分の含有量を10質量%以上とすることにより、良好な硬化性を発揮する。一方、(A)成分の含有量を25質量%以下とすることにより、低吸湿性を発揮する。
【0015】
以下、エポキシ樹脂(A)の前駆体である多価ヒドロキシ樹脂(P)の反応原料の構成成分(芳香族化合物(i)及び芳香族ビニル化合物(ii))について説明した後、多価ヒドロキシ樹脂(P)の好ましい形態及び多価ヒドロキシ樹脂(P)のグリシジルエーテル化物について説明する。
<多価ヒドロキシ樹脂(P)>
本実施形態における多価ヒドロキシ樹脂(P)は、フェノール性水酸基及び2以上の炭化水素基を有する芳香環を含む芳香族化合物(i)及び芳香族ビニル化合物(ii)を反応原料とする。また、本実施形態における芳香族ビニル化合物(ii)は、芳香族ジビニル化合物(ii-1)を必須に含有し、必要により芳香族モノビニル化合物(ii-2)をさらに含んでもよい。換言すると、本実施形態における多価ヒドロキシ樹脂(P)は、フェノール性水酸基及び2以上の炭化水素基を有する芳香環を含む芳香族化合物(i)単位と、芳香族ジビニル化合物(ii-1)単位とが化学結合され、かつ必要により芳香族モノビニル化合物(ii-2)単位が前記芳香族化合物(i)単位中の前記芳香環に化学結合された構造を有する。
本実施形態において、2以上の炭化水素基を芳香環に有するフェノール系化合物である芳香族化合物(i)を反応原料としていることから、後述の芳香族ジビニル化合物(ii-1)と反応部位を制御しやすくなるため、均一な化学構造又は鎖長の多価ヒドロキシ樹脂(P)が得られやすくなり、その結果、低吸湿性及び金属材料との優れた密着性を有する半導体封止用樹脂組成物を提供しうる。
【0016】
-芳香族化合物(i)-
本実施形態における芳香族化合物(i)は、フェノール性水酸基及び2以上の炭化水素基(Ra)を芳香環に有する。そのため、芳香族化合物(i)はフェノール系化合物でありうる。また、芳香族化合物(i)の中心構造を形成する芳香環は、単環式であってもよく、あるいは縮合多環式であってもよく、さらには芳香族炭化水素環を含む。芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環が挙げられるがこれらに限定されない。芳香環は、樹脂の溶融粘度の観点から、単環式が好ましい。
また、芳香族化合物(i)は、当該芳香族化合物(i)の芳香環中の所定の部位と結合した連結基としての芳香族ジビニル化合物(ii-1)単位を介して、複数の芳香族化合物(i)が連結可能な芳香族化合物(i)単位を形成しうる。
【0017】
本実施形態の芳香族化合物(i)において、当該芳香族化合物(i)中の芳香環の少なくとも1つが有する2以上の炭化水素基(Ra)としては、炭素原子数1~6の炭化水素基が挙げられる。前記炭化水素基(Ra)としては、炭素原子数1~6の一価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよい。前記脂肪族炭化水素基は、他の化合物との付加反応を防ぐために、飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましい。飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。前記炭化水素基の分子量が低くなるほど、本発明が奏する効果(硬化物にした際の優れた密着性)が一層顕著なものとなる。また、前記炭化水素基(Ra)の分子量が高くなるほど、本発明が奏する効果(硬化物にした際の低吸湿性)が一層顕著なものとなる。
【0018】
本実施形態の芳香族化合物(i)中の芳香環が有する炭化水素基(Ra)の数(すなわち、置換数)は、2以上である。前記炭化水素基(Ra)の数が2以上であることにより、金属材料との優れた密着性及び低吸湿性とを示しうる。
前記炭化水素基(Ra)の数の上限は、前記芳香環がフェノール性水酸基を有し、かつ2本の結合手が重合に用いられる観点から、無置換状態(水素原子による置換以外)の前記芳香環における置換可能な環構成原子の数から3を引いた数であればよい。例えば、前記芳香環がベンゼン環である場合、前記炭化水素基の数は、3以下である。
また、芳香族化合物(i)中の芳香環が有する炭化水素基(Ra)の数を2以上にすることにより、後述の芳香族ジビニル化合物(ii-1)と反応部位を制御しやすくなるため、均一な化学構造又は鎖長の多価ヒドロキシ樹脂(P)が得られやすくなり、その結果、優れた溶融粘度、或いは金属材料との優れた密着性及び低吸湿性を発揮しやすくなる。
また、2以上の置換基を有するフェノール化合物である芳香族化合物(i)を使用することにより、反応部位を制御できるため、均一な化学構造又は鎖長の多価ヒドロキシ樹脂(A)が得られやすくなる。そのため、いわゆる連結基と作用する芳香族ジビニル化合物(ii-1)との架橋点間距離が最適化され、熱時弾性率を低減できると考えられる。
【0019】
本実施形態における芳香族化合物(i)がフェノール性水酸基及び2以上の炭化水素基(Ra)を有する芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)である場合を一例として、芳香族化合物(i)の好ましい形態について説明する。
本実施形態において、芳香族化合物(i)を構成する芳香族炭化水素環中の炭素原子のうち、最も大きいHOMOの電子密度(ヒュッケル係数)を有する炭素原子が1以上無置換である(又は水素原子に置換されている)ことが好ましい。
これにより、後述の芳香族ジビニル化合物(ii-1)から形成されるカチオノイド試剤によるArSE反応及び分子設計を制御しやすくなる。より詳細に説明すると、芳香族化合物(i)を構成する芳香族炭化水素環中の炭素原子のうち、最も大きいHOMOの電子密度(ヒュッケル係数)を有する炭素原子が無置換である(又は水素原子と結合している)と、当該最も大きいHOMOの電子密度を有する炭素原子に対して、カチオノイド試剤である芳香族ジビニル化合物(ii-1)のカルボカチオンが反応しやすい。そのため、炭化水素基(Ra)の数及び位置、あるいはフェノール性水酸基の数及び位置等を制御することにより、芳香族ジビニル化合物との結合部位又は結合数等を調整できる。そのため、得られる多価ヒドロキシ樹脂(P)の化学構造又は分子鎖長を設計しやすくなると推測している。
例えば、芳香族化合物(i)が1つのベンゼン環と1つの水酸基とを有するフェノール骨格である場合、2位,4位及び6位のうち少なくとも1つの炭素原子が水素原子に置換されていることが好ましい。これにより、フェノール核の電子密度の高いオルト位及びパラ位である2位,4位及び6位のうち少なくとも1つの炭素原子に対して、後述の芳香族ジビニル化合物(ii-1)から形成されるカチオノイド試剤が攻撃しやすくなる。
特に、芳香族ジビニル化合物(ii-1)から形成されるカチオノイド試剤がフェノール核の4位への付加が好ましい。これにより、フェノール核のベンゼン環がp位置換となることから、対称構造である点からも応力緩和しやすい架橋構造を形成し、密着性やシャルピー衝撃強度が有利に働くと考えられる。このような作用機序は、多価ヒドロキシ樹脂(A)がエポキシ樹脂として使用する場合でも、あるいはフェノール樹脂(硬化剤)として使用する場合でも同様に作用すると考えられる。
同様に、無置換のナフタレン環は、1位,4位、5位及び8位の炭素原子が最も大きいHOMOの電子密度を有する。フェノール性水酸基の結合位置により最も大きいHOMOの電子密度を有する炭素原子の位置は変化するが、例えば、1つのナフタレン環と1つの水酸基を有する2-ナフトールでは、1位と3位に対して芳香族ジビニル化合物(ii-1)から生成されるカルボカチオンが反応しやすい。そのため、例えば1位のCH基の水素原子を炭化水素基(Ra)により置換すると、3位の炭素原子に対してArSE反応しやすくなるため、得られる多価ヒドロキシ樹脂(P)の化学構造などを制御できる。さらに言うと、例えば、芳香族化合物(i)が2,7-ヒドロキシナフタレン骨格を有する場合は、1位、3位、6位及び8位に対して芳香族ジビニル化合物(ii-1)から生成されるカルボカチオンが反応しやすい。そのため、例えば、1位、3位及び6位の3つの炭素原子に炭化水素基(Ra)が結合されていると、8位の炭素原子に対してArSE反応しやすくなる。
以上のことから、2以上の炭化水素基(Ra)を有することにより樹脂構造を制御しやすくなると考えられる。
【0020】
本実施形態の芳香族化合物(i)の具体例としては、例えば、キシレノール(2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール)、トリメチルフェノール(2,3,4-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,4,5-トリメチルフェノール、2,4,6-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール)及びこれらの誘導体からなる化合物等のジアルキルフェノール系化合物、並びに、1-ナフトール、2-ナフトール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン及び2,7-ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される化合物中の2以上のCH基の水素原子を上記炭化水素基(Ra)で置換した化合物、いわゆるジアルキルヒドロキシナフタレン系化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
なお、本実施形態における芳香族化合物(i)は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、溶融時の低粘度性の観点から、ジアルキルフェノール化合物が好ましい。
【0021】
本実施形態における多価ヒドロキシ樹脂(P)の反応原料である芳香族化合物(i)は、例えば、下記一般式(i)で表すことができる。
【化1】
(上記一般式(i)中、R
iは炭素原子数1~6の炭化水素基を表し、炭素原子数1~3の炭化水素基であることが好ましく、p
iは、2又は3を表す。複数存在するR
iは同一であっても、あるいは異なっていてもよい。)
【0022】
上記一般式(i)中、炭素原子数1~6の炭化水素基は、上記炭化水素基(Ra)として定義したものと同様である。
【0023】
-芳香族ビニル化合物(ii)-
本実施形態における芳香族ビニル化合物(ii)は、芳香族ジビニル化合物(ii-1)を必須に含む。芳香族ビニル化合物(ii)は、芳香族ジビニル化合物(ii-1)及び芳香族モノビニル化合物(ii-2)を含むことが好ましい。
芳香族ビニル化合物中の芳香族ジビニル化合物(ii-1)が占める割合は、芳香族ビニル化合物の総量に対して、45質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50~92質量%の範囲がより好ましい。
また、芳香族ジビニル化合物(ii-1)は、芳香族化合物(i)同士を所定の部位を介して連結する連結基としての芳香族ジビニル化合物(ii-1)単位を形成する。さらには、芳香族モノビニル化合物(ii-2)は芳香族化合物(i)中の環構造の水素原子を必要により置換する基である。
【0024】
--芳香族ジビニル化合物(ii-1)--
本実施形態における芳香族ジビニル化合物(ii-1)は、芳香環上の置換基として2つのビニル基を有し、前記芳香族化合物(i)と反応できれば、特に制限なく使用できる。芳香族ジビニル化合物(ii-1)としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、及びこれらの芳香環上にアルキル基又はアルコキシ基、ハロゲン原子等が一つ乃至複数置換した各種の化合物等が挙げられる。前記アルキル基又はアルコキシ基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよい。中でも、優れた溶融粘度、或いは金属材料との優れた密着性及び低吸湿性を示す観点から、前記アルキル基又はアルコキシ基の炭素原子数は、1~4であることが好ましい。前記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
上述の通り、芳香族ジビニル化合物(ii-1)から形成されるカチオノイド試剤によるArSE反応により、芳香族ジビニル化合物(ii-1)を芳香族化合物(i)中の環の特定の位置に導入しうる。そのため、均一な化学構造又は鎖長の多価ヒドロキシ樹脂(P)が得られやすくなり、その結果、優れた溶融粘度、或いは金属材料との優れた密着性及び低吸湿性を示す半導体封止用樹脂組成物を提供しうる。
【0025】
本実施形態の芳香族ジビニル化合物(ii-1)の具体例としては、例えば、1,2-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、2,5-ジメチル-1,4-ジビニルベンゼン、2,5-ジエチル-1,4-ジビニルベンゼン、cis,cis,β,β’-ジエトキシ-m-m-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニル-2,5-ジブチルベンゼン、1,4-ジビニル-2,5-ジヘキシルベンゼン、1,4-ジビニル-2,5-ジメトキシベンゼン及びこれらの誘導体からなる化合物等のジビニルベンゼン類、並びに、1,3-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、1,5-ジビニルナフタレン、1,6-ジビニルナフタレン、1,7-ジビニルナフタレン、2,3-ジビニルナフタレン、2,6-ジビニルナフタレン、2,7-ジビニルナフタレン、3,4-ジビニルナフタレン、1,8-ジビニルナフタレン、1,5-ジメトキシ-4,8-ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体からなる化合物等のジビニルナフタレン類が挙げられるが、これらに限定されない。
なお、本実施形態における芳香族ジビニル化合物(ii-1)は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、流動性の観点から、芳香族ジビニル化合物(ii-1)として、ジビニルベンゼン及びその芳香環上に置換基を有する化合物が好ましく、ジビニルベンゼンがより好ましい。また、本実施形態において、ジビニルベンゼンのビニル基の置換位置は、特に限定されないが、メタ体を主成分とすることが好ましい。ジビニルベンゼン中のメタ体の含有量は、ジビニルベンゼンの総量に対して40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0026】
本開示の多価ヒドロキシ樹脂(P)の反応原料である芳香族ジビニル化合物(ii-1)は、下記式(ii-1)で表されることができる。
【化2】
(上記一般式(ii-1)中、R
iiは、ハロゲン原子又は炭素原子数1~4のアルキル基若しくはアルコキシ基を表し、炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましく、p
iiは0~4の整数を表し、0~1であることが好ましい。なお、p
iiが2以上の整数の場合、複数存在するR
iiは互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。)
【0027】
上記一般式(ii-1)中、炭素原子数1~4のアルキル基若しくはアルコキシ基の例示は、上記のアルキル基若しくはアルコキシ基と同様である。
【0028】
--芳香族モノビニル化合物(ii-2)--
本実施形態における多価ヒドロキシ樹脂(P)は、芳香族化合物(i)、及び芳香族ジビニル化合物(ii-1)の他、更に、その他の化合物を反応原料として用いてもよい。当該その他の化合物としては、例えば、芳香族モノビニル化合物(ii-2)等が挙げられる。すなわち、実施形態における多価ヒドロキシ樹脂(P)は、芳香族化合物(i)と、芳香族ジビニル化合物(ii-1)と、芳香族モノビニル化合物(ii-2)とを反応原料とすることが好ましい。本実施形態の多価ヒドロキシ樹脂(P)が、その反応原料として前記芳香族化合物(i)、前記芳香族ジビニル化合物(ii-1)に加えて、芳香族モノビニル化合物(ii-2)を用いることにより、最終的に得られる多価ヒドロキシ樹脂(P)のグリシジルエーテル化物を半導体封止用材料として使用した場合、樹脂の流動性に優れ、その硬化物は熱時弾性率が低くなるため、好ましい。また、前記芳香族モノビニル化合物(ii-2)を用いることにより、芳香族性が向上し、耐湿性の向上にも有用である。
また、芳香族モノビニル化合物(ii-2)も芳香族ジビニル化合物(ii-1)と同様にカルボカチオンを生成するため、芳香族化合物(i)を構成する芳香族炭化水素環中の炭素原子のうち、最も大きいHOMOの電子密度(ヒュッケル係数)を有する炭素原子に対して反応しやすい。
【0029】
本実施形態における芳香族モノビニル化合物(ii-2)は、例えば、ビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、及びこれらの芳香環上にアルキル基又はアルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基が一つ乃至複数置換した各種の化合物等が挙げられる。前記アルキル基又はアルコキシ基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。中でも、低吸湿性を重視する場合、前記アルキル基又は前記アルコキシ基は、炭素原子数1~4の基であることが好ましい。前記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。前記アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。前記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0030】
本実施形態の芳香族モノビニル化合物(ii-2)の具体例としては、例えば、スチレン、フルオロスチレン、ビニル塩化ベンジル、アルキルビニルベンゼン(o-,m-,p-メチルスチレン、o-,m-,p-エチルビニルベンゼン)、o-,m-,p-(クロロメチル)スチレン及びこれらの誘導体からなる化合物等のビニルベンゼン類;4-ビニルビフェニル、4-ビニル-p-ターフェニル及びこれらの誘導体からなる化合物等のビフェニル化合物;並びに、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン及びこれらの誘導体からなる化合物等のビニルナフタレン類が挙げられるが、これらに限定されない。
特に、熱時弾性率を低くできる観点から、アルキルビニルベンゼン及びその芳香環上に置換基を有する化合物が好ましく、エチルビニルベンゼンがより好ましい。
また、前記エチルビニルベンゼンのビニル基及びエチル基の置換位置は、特に限定されないが、メタ体を主成分とすることが好ましく、エチルビニルベンゼン中のメタ体の含有量は、エチルビニルベンゼンの総量に対して40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。
【0031】
本開示の多価ヒドロキシ樹脂(P)の反応原料となり得る芳香族モノビニル化合物(ii-2)は、下記一般式(ii-2)で表すことができる。
【化3】
(上記一般式(ii-2)中、R
iiは、ハロゲン原子又は炭素原子数1~4のアルキル基若しくはアルコキシ基を表し、炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましく、p
iiは0~5の整数を表し、0~1であることが好ましい。なお、p
iiが2以上の整数の場合、複数存在するR
iiは互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。)
【0032】
上記一般式(ii)中、炭素原子数1~4のアルキル基若しくはアルコキシ基は、上記のアルキル基若しくはアルコキシ基と同様である。
【0033】
本実施形態における多価ヒドロキシ樹脂(P)の反応原料として、前記芳香族モノビニル化合物(ii-2)を用いる場合、前記反応原料中の前記芳香族ジビニル化合物(ii-1)の前記芳香族モノビニル化合物(ii-2)に対する質量比((ii-1)/(ii-2))が、30/70~99/1であることが好ましく、より好ましくは、50/50~99/1であり、更に好ましくは、50/50~98/2である。前記芳香族ジビニル化合物(ii-1)と芳香族モノビニル化合物(ii-2)との質量比が前記範囲内であることにより、得られる多価ヒドロキシ樹脂(P)の取り扱い性や、前記多価ヒドロキシ樹脂(P)から得られるエポキシ樹脂の製造時の成形性、硬化性の物性バランスをとることができ、好ましい。
【0034】
以下、本開示の好適な多価ヒドロキシ樹脂(P)の態様について、各芳香環がベンゼン環である場合を例に取り説明する。以下の化学構造式は、本開示を例示的に説明するためのものであり、本開示の範囲は、以下の化学構造式に限定されることはない。
【0035】
本実施形態における多価ヒドロキシ樹脂(P)は、以下の一般式(I)及び/又は(II)で表される部分構造を有することが好ましい。
【化4】
【化5】
(上記一般式(I)及び(II)中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、炭素原子数1~6の炭化水素基を表し、
R
4及びR
5は、各々独立して、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
R
6は、一般式(a)
【化6】
(一般式(a)中、R
7は水素原子又は炭素原子数1~6の炭化水素基を表す。)
で表される置換基を表し、
R
8は、水素原子又は有機基を表し、
pは、多価ヒドロキシ樹脂(P)全体における、フェノール環1つ当たりのR
6の置換数の平均値であり、0~1の数を表す。尚、上記一般式(I)及び(II)中の*は、他の原子との結合を表す。)
上記一般式(I)及び(II)中、炭素原子数1~6の炭化水素基は、上述した炭化水素基(R
a)として定義したものと同様であることが好ましい。また、上記一般式(I)及び(II)中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、R
4及びR
5は、各々独立して、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
上記一般式(a)中、R
7は、炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましい。
上記一般式(I)及び(II)中の有機基は、一価の有機基であり、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルケニル基又は炭素原子数1~6のアルコキシ基であることが好ましい。また、当該アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基中の1個又は隣接しない2個以上の-CH
2-は、-O-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよい。
【0036】
本実施形態における多価ヒドロキシ樹脂(P)は、下記一般式(III)及び/又は(IV)で表されることが好ましい。
【化7】
(上記一般式(III)及び(IV)中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、炭素原子数1~6の炭化水素基を表し、
R
4及びR
5は、各々独立して、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
R
6は、一般式(a)
【化8】
(一般式(a)中、R
7は水素原子又は炭素原子数1~6の炭化水素基を表す。)
で表される置換基を表し、
R
8は、水素原子又は有機基を表し、
nは、0~20の整数を表し、
mは、0~20の整数を表し、
pは、フェノール環1つ当たりの平均のR
6の置換数であり、0~1の数であることが好ましい。)
一般式(III)及び(IV)中のR
1~R
8は、上記一般式(I)及び(II)中のR
1~R
8と同様であるためここでは省略する。)
【0037】
本実施形態の多価ヒドロキシ樹脂(P)の水酸基当量としては、200~500g/eqであることが好ましく、より好ましくは200~400g/eqである。
なお、本明細書における多価ヒドロキシ樹脂(P)の水酸基当量の測定は、JIS K 0070(1992)に規定される中和滴定法に準拠した方法で測定した値とする。
本実施形態の多価ヒドロキシ樹脂(P)の軟化点は、40~150℃であることがよく、好ましくは50~120℃の範囲である。ここでの軟化点は、後述する実施例の欄に記載の測定条件により、JIS K 7234(環球法)に基づき測定されるものである。
本実施形態の多価ヒドロキシ樹脂(P)は、低粘度で流動性に優れるものとなることから、数平均分子量(Mn)が200~1500の範囲であることが好ましく、220~1000の範囲であることがより好ましい。また、当該多価ヒドロキシ樹脂(P)の重量平均分子量(Mw)は250~2000の範囲であることが好ましく、300~1500の範囲であることがより好ましく、400~1200の範囲であることがさらに好ましい。前記重量平均分子量(Mw)の前記数平均分子量(Mn)に対する比で表される分子量分布(Mw/Mn)は1.1~3の範囲であることが好ましく、1.1~1.8の範囲であることがより好ましい。
本実施形態の多価ヒドロキシ樹脂(P)は、2以上の炭化水素基(Ra)を芳香環に有するフェノール系化合物である芳香族化合物(i)単位を繰り返し単位としているため、芳香族ジビニル化合物(ii-1)単位との結合部位を制御しやすい。一方、1以下の炭化水素基を芳香環に有するフェノール系化合物を繰り返し単位とするフェノール樹脂では、当該フェノール系化合物に対する芳香族ジビニル化合物単位との結合部位が多数存在するため、得られるフェノール樹脂の鎖長又は化学構造も多数存在し、分子量分布がどうしても広くなる傾向を示す。したがって、本開示の多価ヒドロキシ樹脂(P)は、従来のフェノール樹脂より分子量の揃った均質な特性を発揮することができる。
【0038】
<グリシジルエーテル化物>
本実施形態におけるエポキシ樹脂(A)は、多価ヒドロキシ樹脂(P)中の1以上の水酸基がグリシジル基に置換された化合物である。換言すると、本実施形態におけるグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂(A)は、フェノール性水酸基及び2以上の炭化水素基を有する芳香環を含む芳香族化合物(A)単位と、芳香族ジビニル化合物(B1)単位とが化学結合され、かつ必要により芳香族モノビニル化合物(B2)単位が前記芳香族化合物(A)単位中の前記芳香環に化学結合された構造を有し、かつ前記フェノール性水酸基がグリシジルエーテル基に置換されている化学構造を有する。後述のグリシジルエーテル化物の製造方法の欄でも説明するが、多価ヒドロキシ樹脂(P)をエピハロヒドリンと反応させることにより、グリシジルエーテル化物を製造することができる。上述の通り、芳香族ジビニル化合物(ii-1)から形成されるカチオノイド試剤によるArSE反応により、芳香族ジビニル化合物(ii-1)を芳香族化合物(i)中の環の特定の位置に導入しうる。そのため、均一な化学構造又は鎖長の多価ヒドロキシ樹脂(P)が得られやすくなり、そのグリシジルエーテル化物も同様に均一な化学構造又は鎖長を有しやすくなる。その結果、グリシジルエーテル化物全体として、加熱時の弾性率を制御しやすくなるため、硬化反応時の内部応力が緩和されることから、低吸湿性を有する半導体封止用樹脂組成物を提供しうる。
【0039】
本実施形態におけるエポキシ樹脂(A)は、以下の一般式(V)及び/又は(VI)で表される部分構造を有することが好ましい。
【化9】
【化10】
(上記一般式(V)及び(VI)中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、炭素原子数1~6の炭化水素基を表し、
R
4及びR
5は、各々独立して、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
R
6は、一般式(a)
【化11】
(一般式(a)中、R
7は水素原子又は炭素原子数1~6の炭化水素基を表す。)
で表される置換基を表し、
R
8は、水素原子又は有機基を表し、
pは、エポキシ樹脂(A)全体における、フェノール環1つ当たりのR
6の置換数の平均値であり、0~1の数であることがより好ましい。尚、上記一般式(V)及び(VI)中の*は、他の原子との結合を表す。)
上記一般式(V)及び(VI)中、R
1~R
8は、上記一般式(I)及び(II)中のR
1~R
8と同様であるためここでは省略する。
【0040】
本実施形態におけるエポキシ樹脂(A)は、下記一般式(VII)及び/又は(VIII)で表されることが好ましい。
【化12】
【化13】
(上記一般式(VII)及び(VIII)中、Gはグリシジル基を表し、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、炭素原子数1~6の炭化水素基を表し、
R
4及びR
5は、各々独立して、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、
R
6は、一般式(a)
【化14】
(一般式(a)中、R
7は水素原子又は炭素原子数1~6の炭化水素基を表す。)
で表される置換基を表し、
R
8は、水素原子又は有機基を表し、
nは、0~20の整数を表し、
mは、0~20の整数を表し、
pは、エポキシ樹脂(A)全体における、フェノール環1つ当たりの平均のR
6の置換数であり、0~1の数であることがより好ましい。)を表す。
一般式(VII)及び(VIII)中のR
1~R
8は、上記一般式(I)及び(II)中のR
1~R
8と同様であるためここでは省略する。)
【0041】
以下、多価ヒドロキシ樹脂(P)の製造からグリシジルエーテル化物の製造までの工程について順に説明する。
<多価ヒドロキシ樹脂(P)の製造方法>
以下に、前記多価ヒドロキシ樹脂(P)の製造方法について説明する。
本実施形態における多価ヒドロキシ樹脂(P)の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、フェノール性水酸基及び2以上の炭化水素基を含有する芳香族化合物(i)と芳香族ジビニル化合物(ii-1)(例えば、ジビニルベンゼン)、更に必要に応じて、芳香族モノビニル化合物(ii-2)(例えば、エチルビニルベンゼン)等のその他の化合物を、酸触媒の存在下で反応させて、多価ヒドロキシ樹脂(P)を製造することができる。
【0042】
本実施形態の多価ヒドロキシ樹脂(P)の製造方法で得られる多価ヒドロキシ樹脂(P)は、芳香族ジビニル化合物(ii-1)や、更に使用できる芳香族モノビニル化合物(ii-2)の配合割合に応じて、水酸基当量等を制御することができる。
前記芳香族化合物(i)と、前記芳香族ジビニル化合物(ii-1)の配合割合としては、得られる硬化物の製造時の成形性、硬化性の物性バランスを考慮すると、前記芳香族化合物(i)1モルに対して、前記芳香族ジビニル化合物(ii-1)のモル割合として、0.1~1モルが好ましく、0.1~0.8モルがより好ましい。また、前記芳香族モノビニル化合物(ii-2)を併用する場合には、前記芳香族化合物(i)1モルに対して、前記芳香族ジビニル化合物(ii-1)と前記芳香族モノビニル化合物(ii-2)との合計のモル割合として、0.1~1モルが好ましく、0.1~0.8モルがより好ましい。
前記芳香族化合物(i)と、前記芳香族ジビニル化合物(ii-1)及び前記芳香族モノビニル化合物(ii-2)の配合割合としては、得られる硬化物の製造時の成形性、硬化性の物性バランスを考慮すると、前記芳香族化合物(i)1モルに対して、前記芳香族ジビニル化合物(ii-1)及び前記芳香族モノビニル化合物(ii-2)に含まれるビニル基のモル数が0.1~1モルが好ましく、0.1~0.95モルとなることが好ましい。
【0043】
本実施形態において、芳香族化合物(i)と、芳香族ジビニル化合物(ii-1)及び/又は芳香族モノビニル化合物(ii-2)等との反応は、酸触媒の存在下で行うことができる。この酸触媒としては、周知の無機酸、有機酸から適宜選択することができる。例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の鉱酸や、ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸水和物、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸あるいはイオン交換樹脂、活性白土、シリカ-アルミナ、ゼオライト等の固体酸等が挙げられる。前記酸触媒の配合量は、前記多価ヒドロキシ樹脂(P)の原料の合計100質量部に対して、0.01~50質量部配合することが好ましく、より好ましくは0.01~10質量部であり、更に好ましくは0.1~5質量部である。また、上記反応は通常、10~250℃で1~20時間行われる。
【0044】
上記反応の際に使用できる溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族化合物等が挙げられる。
【0045】
上記反応を実施する具体的方法としては、全原料を一括装入し、そのまま所定の温度で反応させるか、または、芳香族化合物(i)と酸触媒とを装入し、所定の温度に保ちつつ、芳香族ジビニル化合物(ii-1)やその他の化合物(例えば、芳香族モノビニル化合物(ii-2))等を滴下させながら反応させる方法が一般的である。この際、滴下時間は、通常、1~10時間であり、5時間以下が好ましい。反応後、溶媒を使用した場合は、必要により、溶媒と未反応物を留去させて、前記多価ヒドロキシ樹脂(P)を得ることができ、溶媒を使用しない場合は、未反応物を留去することによって目的物である前記多価ヒドロキシ樹脂(P)を得ることができる。
【0046】
<グリシジルエーテル化>
前記多価ヒドロキシ樹脂(P)とエピハロヒドリンとの反応は、例えば、塩基性触媒の存在下、通常20~150℃、好ましくは、30~80℃の範囲で0.5~10時間反応させる方法などが挙げられる。
【0047】
本実施形態において、エピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β-メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。エピハロヒドリンの添加量は、多価ヒドロキシ樹脂(P)が有する水酸基の合計1モルに対して、過剰に用いられるが、通常、1.5~30モルであり、好ましくは、2~15モルの範囲である。
【0048】
前記塩基性触媒としては、例えば、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、及び、アルカリ金属水酸化物等が挙げられる。中でも、触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、具体的には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等がより好ましい。また、これら塩基性触媒は、固形の状態で使用してもよいし、水溶液の状態で使用してもよい。前記塩基性触媒の添加量は、多価ヒドロキシ樹脂(P)が有する水酸基の合計1モルに対して、0.9~2モルの範囲であることが好ましい。
【0049】
本実施形態において、多価ヒドロキシ樹脂(P)と、エピハロヒドリンとの反応は、有機溶媒中で行ってもよい。用いる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4-ジオキサン、1、3-ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調製するために適宜二種以上を併用してもよい。
【0050】
前記エピハロヒドリンとの反応終了後は、過剰のエピハロヒドリンを留去することにより、粗生成物を得ることができる。必要に応じて、得られた粗生成物を再度有機溶剤に溶解させ、塩基性触媒を加えて再度反応させることにより、加水分解性ハロゲンを低減させてもよい。反応で生じた塩は濾過や水洗等により除去することができる。また、有機溶媒を用いた場合には、留去して樹脂固形分のみを取り出してもよいし、そのまま溶液として用いてもよい。
【0051】
「硬化剤(B)」
本開示の半導体封止用樹脂組成物は、硬化剤(B)を含有する。本実施形態における硬化剤(B)は、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基と架橋反応が可能な硬化剤であれば、特に制限なく使用できる。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分、(B)及び(C)成分の合計量100質量%に対して、3~30質量%であることが好ましく、より好ましくは4~25質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。(B)成分の含有量を5質量%以上とすることにより、良好な硬化性の効果を発揮する。一方、(B)成分の含有量を20質量%以下とすることにより、低吸湿性の効果を発揮する。
【0052】
本実施形態の硬化剤(B)としては、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、多価ヒドロキシ樹脂(P)等が挙げられる。前記硬化剤は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
前記フェノール系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェニロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール性水酸基含有化合物)等の多価フェノール性水酸基含有化合物が挙げられる。中でも、成形性の観点から、フェノールノボラック樹などがより好ましい。これらは、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
前記アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン(DTA)、トリエチレンテトラミン(TTA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジプロプレンジアミン(DPDA)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、N-アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン(MDA)、イソフオロンジアミン(IPDA)、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3-BAC)、ピペリジン、N,N,-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン等の脂肪族アミン;m-キシレンジアミン(XDA)、メタンフェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ベンジルメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香族アミン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0055】
前記アミド系硬化剤としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0056】
前記酸無水物硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0057】
前記活性エステル系樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン-フェノール付加構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル樹脂等が好ましく、なかでもピール強度の向上に優れるという点で、ジシクロペンタジエン-フェノール付加構造を含む活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂がより好ましい。これらはそれぞれ単独で使用しても、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0058】
前記シアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0059】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物において、エポキシ樹脂(A)の配合量に対する硬化剤(B)の配合量としては、例えば、官能基当量比(活性水素原子(例えば、フェノール系硬化剤(B)の水酸基当量)/(エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量))として、特に制限されるものではないが、得られる硬化物の機械的物性等が良好である点から、前記エポキシ樹脂(A)及び必要に応じて併用される後述のその他のエポキシ樹脂(F)とのエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤(B)中の活性基が0.5~1.5当量になる量が好ましく、0.8~1.2であることがより好ましい。
【0060】
「無機充填剤(C)」
本開示の半導体封止用樹脂組成物は、無機充填剤(C)を含有する。本実施形態における無機充填剤(C))は、特に制限なく使用できる。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物において、(C)成分の含有量は、(A)成分、(B)及び(C)成分の合計量100質量%に対して、40~95質量%であることが好ましく、より好ましくは50~92質量%、さらに好ましくは60~90質量%である。(C)成分の含有量を60質量%以上とすることにより、高い寸法安定性、高い難燃性の効果を発揮する。一方、(C)成分の含有量を90質量%以下とすることにより、高い成型性の効果を発揮する。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物において、半導体封止用樹脂組成物中の無機充填剤(C)の充填率としては、50~92%であることが好ましく、60~90%であることがより好ましい。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物では、流動性に優れるエポキシ樹脂(A)を使用しているため、(C)成分を比較的高充填することができる。
【0061】
本実施形態の無機充填剤(C)としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、カーボンブラック等が挙げられる。これらのうち、シリカを用いることが好ましい。この際、シリカとしては、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が用いられうる。中でも、無機質充填剤(C)をより多く配合することが可能となることから、溶融シリカが好ましい。溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。なお、これらはそれぞれ単独で使用しても、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0062】
また、前記無機充填剤(C)は、必要に応じて表面処理されていてもよい。この際、使用されうる表面処理剤としては、特に制限されないが、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が使用されうる。表面処理剤の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0063】
本実施形態における無機充填剤(C)の配合量は、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の混合物の合計量100質量部に対して、0.5~95質量部であることが好ましい。前記無機充填剤(C)の配合量が前記範囲内にあると、難燃性、及び、絶縁信頼性に優れ、好ましい。
また、本開示の特性を損なわない範囲であれば、無機充填剤(C)に加えて、有機充填剤を配合することができる。前記有機充填剤としては、例えば、ポリアミド粒子等が挙げられる。
【0064】
「任意成分(D)」
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、必須成分である、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び無機充填剤(C)以外に、本開示の効果を損なわない範囲において、任意成分(D)を配合してもよい。
当該任意成分(D)としては、その他の樹脂(E)及び添加剤が挙げられる。そして、当該添加剤としては、硬化促進剤、難燃剤、シランカップリング剤、離型剤、顔料、着色剤及び乳化剤等が挙げられる。
【0065】
<その他の樹脂(E)>
本実施形態における半導体封止用樹脂組成物は、その他の樹脂(E)を含有してもよい。当該その他の樹脂(E)としては、例えば、前記エポキシ樹脂(A)以外のエポキシ樹脂(F)、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレート等のアリル基含有樹脂、ポリリン酸エステル、リン酸エステル-カーボネート共重合体等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用しても、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0066】
本実施形態のその他のエポキシ樹脂(F)は、具体的には、2,7-ジグリシジルオキシナフタレン、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトール/β-ナフトール共縮合型ノボラックのポリグリシジルエーテル、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、1,1-ビス(2,7-ジグリシジルオキシ-1-ナフチル)アルカン等のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール系化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;リン原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0067】
前記その他のエポキシ樹脂(F)を用いる場合には、流動性に優れ、かつ、硬化物における、金属材料に対する密着性及び吸湿性に優れる効果が十分に発揮されることから、半導体封止用樹脂組成物における全エポキシ成分中、エポキシ樹脂(A)が50質量%以上となる範囲で用いることが好ましい。
【0068】
また、その他のエポキシ樹脂(F)を用いる場合、半導体封止用樹脂組成物の配合割合は、硬化性に優れる樹脂組成物となり、溶融粘度、或いは金属材料に対する密着性及び吸湿性に優れる硬化物が得られることから、半導体封止用樹脂組成物における全エポキシ成分中のエポキシ基と、前記硬化剤(B)中の活性水素原子との当量比(エポキシ基/活性水素原子)が1/0.5~1/1.5となる割合であることが好ましい。
【0069】
<溶媒>
本開示の半導体封止用樹脂組成物は、無溶剤で調製してもよく、あるいは溶媒を含有してもよい。前記溶媒は、半導体封止用樹脂組成物の粘度を調整する機能等を有する。前記溶媒の具体例としては、特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル系溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
前記溶媒の配合量としては、半導体封止用樹脂組成物の全質量に対して、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。溶媒の配合量が10質量%以上であると、ハンドリング性に優れることから好ましい。一方、溶媒の配合量が90質量%以下であると、経済性の観点から好ましい。
【0071】
<添加剤>
本開示の半導体封止用樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤、難燃剤、シランカップリング剤、離型剤、顔料、着色剤、乳化剤等の種々の添加剤を配合することができる。
【0072】
-硬化促進剤-
前記硬化促進剤としては、特に制限されないが、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、尿素系硬化促進剤等が挙げられる。なお、前記硬化促進剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
前記リン系硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等の有機ホスファイト化合物;エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、ブチルフェニルホスホニウムジシアナミド、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩等のホスホニウム塩等が挙げられる。
【0074】
前記アミン系硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(4-ジメチルアミノピリジン、DMAP)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-ノネン-5(DBN)等が挙げられる。
【0075】
前記イミダゾール系硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン等が挙げられる。
【0076】
前記グアニジン系硬化促進剤としては、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-ブチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド等が挙げられる。
【0077】
前記尿素系硬化促進剤としては、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、クロロフェニル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロルフェニル)-1,1-ジメチル尿素等が挙げられる。
【0078】
前記硬化促進剤のうち、特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)を用いることが好ましい。
【0079】
前記硬化促進剤の配合量は、所望の硬化性を得るために適宜調整できるが、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)との混合物の合計量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。前記硬化促進剤の配合量が前記範囲内にあると、硬化性、及び、絶縁信頼性に優れ、好ましい。
【0080】
<難燃剤>
前記難燃剤としては、特に制限されないが、無機リン系難燃剤、有機リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。なお、難燃剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
前記無機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等が挙げられる。
前記有機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等のリン酸エステル;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィンオキシド等ジフェニルホスフィン;10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(1,4-ジオキシナフタレン)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル-1,4-ジオキシナフタリン、1,4-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール、1,5-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール等のリン含有フェノール;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状リン化合物;前記リン酸エステル、前記ジフェニルホスフィン、前記リン含有フェノールと、エポキシ樹脂やアルデヒド化合物、フェノール化合物と反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0082】
前記ハロゲン系難燃剤としては、特に制限されないが、臭素化ポリスチレン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールAビス(ジブロモプロピルエーテル)、1,2、-ビス(テトラブロモフタルイミド)、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、テトラブロモフタル酸等が挙げられる。
【0083】
前記難燃剤の配合量は、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましい。
【0084】
[硬化物]
本開示は、半導体封止用樹脂組成物の硬化物である。前記半導体封止用樹脂組成物から得られる硬化物は、低吸湿性及び金属材料との高い接着性を発揮でき、好ましい態様となる。前記半導体封止用樹脂組成物を硬化反応させた硬化物を得る方法としては、例えば、加熱硬化する際の加熱温度は、特に制限されないが、通常、100~300℃であり、加熱時間としては、1~24時間である。
【0085】
本実施形態の硬化物は、吸湿率が1.3%以下であることが好ましい。前記吸湿率の測定方法は、実施例の欄に記載の評価方法と同様である。
また、本実施形態の硬化物は、シャルピー衝撃強度が3J/cm2以上であることが好ましく、3.5J/cm2以上であることがより好ましく、4J/cm2以上であることが特に好ましい。シャルピー衝撃強度の測定方法は、JIS K 6911に準拠し、175℃×120秒間、成型圧6.9MPaの条件で、トランスファー成型し、更にポストキュアとして、175℃で5時間の処理を行い、シャルピー衝撃強度試験用の試験片を作成した後、当該試験片をPendulum Impact Tester Zwick 5102を用いて測定した。
【0086】
[半導体封止材料]
本開示は、半導体封止用樹脂組成物を含有する半導体封止材料である。前記半導体封止用樹脂組成物を用いて得られる半導体封止材料は、吸湿性及び金属材料との接着性が改善されているため、製造工程における加工性や成形性、耐リフロー性に優れ、好ましい態様となる。
【0087】
本実施形態の半導体封止材料を得る方法としては、半導体封止用樹脂組成物に、更に任意成分である添加剤とを必要に応じて、押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法などが挙げられる。
【0088】
[半導体装置]
本開示は、前記半導体封止材料の硬化物を含む半導体装置である。前記半導体封止材料を用いて得られる半導体装置は、エポキシ樹脂(A)を使用するため、吸湿性及び金属材料に対する接着性が改善されているため、製造工程における加工性や成形性、耐リフロー性に優れ、好ましい態様となる。
【0089】
前記半導体装置を得る方法としては、前記半導体封止材料を注型、または、トランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに室温(20℃)~250℃の温度範囲で、加熱硬化する方法が挙げられる。
【0090】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物により得られる硬化物は、低吸湿性及び金属材料に対する高い密着性を有することから、半導体封止材料、及び半導体装置に好適に用いることができる。また、その他、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム等の用途や、ビルドアップ基板、接着剤、レジスト材料、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂など、各種用途にも好適に使用可能であり、用途においては、これらに限定されるものではない。
【実施例0091】
以下に実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの範囲に限定されるものではない。
[評価方法]
<エポキシ当量>
JIS K 7236に基づいて測定した。
【0092】
<150℃における溶融粘度>
ASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定した。
【0093】
<軟化点>
JIS K7234(環球法)に準拠して、軟化点(℃)を測定した。なお、表2のハンドリング性は軟化点温度が50℃未満を×、50℃以上を〇とした。
【0094】
<GPC測定>
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 :前記「GPCワークステーション EcoSEC―WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:以下に示す製造例・合成例・実施例等で得られた樹脂などの固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)を使用し、前記GPCの測定結果より、得られた樹脂等の合成を確認した。また、得られた樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0095】
(製造例1:多価ヒドロキシ樹脂(P1)の合成)
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管及び撹拌器を取り付けたフラスコに、2,6-キシレノール488.6g(4.00モル)とトルエン244gとを仕込み、p-トルエンスルホン酸4.9gを加えて、115℃まで昇温した。原料が完全に溶解したことを確認後、ジビニルベンゼンとエチルビニルベンゼンとの混合物(新日鉄化学社製「DVB-810」)260.4gを2時間かけて滴下し、そのまま115℃で1時間反応させた。反応終了後、80℃まで降温し、水酸化ナトリウム水溶液を使用して中和した。未反応の2,6-キシレノール及びトルエンを加熱減圧下に除去し、多価ヒドロキシ樹脂(P1)を得た。得られた多価ヒドロキシ樹脂(P1)の水酸基当量を表1に示した。
【0096】
(製造例2:多価ヒドロキシ樹脂(P2)の合成)
上記製造例1で使用した「2,6-キシレノール488.6g(4.00モル)」を「2,4-キシレノール488.6g(4.00モル)」に変更した以外は上記製造例1と同様の条件で反応を行い、多価ヒドロキシ樹脂(P2)を得た。得られた多価ヒドロキシ樹脂(P2)の水酸基当量を表1に示した。
【0097】
(製造例3:多価ヒドロキシ樹脂(P3)の合成)
上記製造例1で使用した「2,6-キシレノール488.6g(4.00モル)」を「2,3,6-トリメチルフェノール544.8g(4.00モル)」に変更した以外は上記製造例1と同様の条件で反応を行い、多価ヒドロキシ樹脂(P3)を得た。得られた多価ヒドロキシ樹脂(P3)の水酸基当量を表1に示した。
【0098】
(製造例4:フェノール樹脂(1)の合成)
「2,6-キシレノール488.6g(4.00モル)」を「フェノール376.4g」に変更した以外は上記製造例1と同様の条件で反応を行い、フェノール樹脂(1)を得た。得られたフェノール樹脂(1)の水酸基当量を表1に示した。
【0099】
【0100】
(合成例1:エポキシ樹脂(1)の合成)
温度計、滴下ロート、冷却管及び撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、製造例1で得られた多価ヒドロキシ樹脂(P1)300.0gと、エピクロルヒドリン923g(5.0当量)と、n-ブタノール238gと、水90gとを仕込み溶解させて混合溶液を調製した。当該混合溶液を60℃に昇温させた後、49%水酸化ナトリウム水溶液134g(1.1当量)を5時間かけて滴下した。その後、同条件で0.5時間撹拌を続けた。そして、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留によって留去させた。続いて、得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン700gを加え溶解して粗エポキシ樹脂溶液を得た。更にこの粗エポキシ樹脂溶液に5%水酸化ナトリウム水溶液15gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水190gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去してエポキシ樹脂(1)(=多価ヒドロキシ樹脂(P1)のグリシジルエーテル化物(1))を得た。得られたエポキシ樹脂(1)の性状値を表2に示した。
【0101】
(合成例2:エポキシ樹脂(2)の合成)
合成例1において、「多価ヒドロキシ樹脂(P1)300.0g」を「多価ヒドロキシ樹脂(P2)300.0g(水酸基1.0当量)」に変更した以外は合成例1と同様の条件で反応を行い、エポキシ樹脂(2)(=多価ヒドロキシ樹脂(P2)のグリシジルエーテル化物(2))を得た。得られたエポキシ樹脂(2)の性状値を表2に示した。
【0102】
(合成例3:エポキシ樹脂(3)の合成)
合成例1において、「多価ヒドロキシ樹脂(P1)300.0g」を「多価ヒドロキシ樹脂(P3)300.0g(水酸基1.0当量)」に変更した以外は合成例1と同様の条件で反応を行い、エポキシ樹脂(3)(=多価ヒドロキシ樹脂(P3)のグリシジルエーテル化物(3))を得た。得られたエポキシ樹脂(3)の性状値を表2に示した。
【0103】
(比較合成例1:エポキシ樹脂(4)の合成)
合成例1において、「多価ヒドロキシ樹脂(P1)300.0g」を「フェノール樹脂(1)300.0g(水酸基1.0当量)」に変更した以外は合成例1と同様の条件で反応を行い、エポキシ樹脂(4)(=フェノール樹脂(1)のグリシジルエーテル化物(4))を得た。得られたエポキシ樹脂(3)の性状値を表2に示した。
【0104】
(比較合成例2:エポキシ樹脂(5))
ビフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製「YX-4000K」)を使用した。エポキシ樹脂(5)の性状値を表2に示した。
【0105】
【0106】
(実施例1~3及び比較例1~2)
<半導体封止用樹脂組成物の調製>
合成例1~3及び比較合成例1~2で製造したエポキシ樹脂を用いて、下記表3に示す組成で各成分を配合し、2本ロールを用いて90℃の温度で5分間溶融混練をすることにより、実施例1~3及び比較例1~2の硬化性組成物(実施例1~3の半導体封止用樹脂組成物及び比較例1~2の組成物の総称)を調製した。
そして、実施例1~3及び比較例1~2の硬化性組成物から以下に記載の方法により、各種評価に使用する評価用硬化物を作製した後、吸湿性評価及び密着性評価を行った。その結果を表3に示す。
【0107】
<評価用硬化物の作製>
上記で得られた硬化性樹脂組成物を粉砕し、トランスファー成形機を用いて圧力70kg/cm2、ラム速度5cm/秒、温度180℃、時間600秒の条件にて成形したものを180℃で5時間加熱することにより、評価用硬化物を得た。
<吸湿性評価>
上記各評価用硬化物を、ダイヤモンドカッターで75mm×25mm×2.4mmt(厚さ2.4mm)の大きさに切り出し、これらを吸湿性評価の各試験片(a)とした。吸湿性評価は、温度/湿度:85℃/85%の環境下で、300時間放置した後、下記式にて、吸湿率(%)を算出し、吸湿性を評価した。
吸湿率=[(試験後の試験片(a)の質量-試験前の試験片(a)の質量)/試験前の試験片(a)の質量×100(%)]
<密着性評価>
密着性はダイシェアテストにより評価した。上記評価用硬化物を粉砕し、トランスファー成形機を用いて圧力70kg/cm2、ラム速度5cm/秒、温度175℃、時間600秒の条件にて成形品寸法が6mm×6mm×2mmt(厚さ2mm)となるように銅箔上に成形し、試験片を得た。テストはボンディングテスタ(RHESCA社製「PTR-1102」)を用いて行った。シェア速度は0.1mm/秒、一つの試験についてN5で実施し、銅箔からの剥離強度の平均値(gf)を算出した。剥離強度は相対評価とし、比較例2の成型品を1.0としたときの、各組成物の強度を算出した。なお、銅箔は、EFTEC-64T(0.15mmt、古河電気工業株式会社製)を使用した。
【0108】
【表3】
注)上記表3中の硬化剤は、フェノールノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製「TD-2131」水酸基当量104g/eq)である。また、硬化促進剤は、トリフェニルホスフィン(北興化学工業株式会社製「TPP」)である。さらに、溶融シリカは、電気化学株式会社製「FB-560」であり、シランカップリング剤は、γ-グリシドキシエトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM-403」)を使用した。離型剤は、カルナバワックス(大日本化学株式会社製「F1-100」)、着色剤は、カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)を使用した。
【0109】
上記表2及び表3の評価結果より、全ての実施例において得られた半導体封止用樹脂組成物は、比較例により得られた硬化性樹脂組成物と比べて、硬化時において、低い吸湿性及び金属材料に対する優れた密着性とを示すことが確認された。