(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000075
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】ノズル先端管理装置及び塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 11/00 20060101AFI20221222BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20221222BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
B05C11/00
B05C5/02
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100679
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】丸山 健治
(72)【発明者】
【氏名】池田 孝生
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA02
4F041AB01
4F041BA60
4F041CA02
4F041CA28
4F042AA02
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA09
4F042CA01
4F042CB02
4F042CC02
4F042CC08
4F042DH09
4F042DH10
(57)【要約】
【課題】スリットノズルの先端に対して効率よく乾燥を防止する。
【解決手段】ノズル先端管理装置10は、スリットノズル20の先端21を囲み、先端の乾燥を防止するための液体Lを貯留する貯留槽11と、貯留槽11内に設けられる多孔質ブロック121と、を備え、貯留槽11は、挿入されたスリットノズル20と液体Lとが非接触となるように液体Lが貯留されており、多孔質ブロック121は、下部が液体Lに浸漬し、かつ貯留槽Lに挿入されたスリットノズル20から離間するように配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットノズルの先端を囲み、前記先端の乾燥を防止するための所定液体を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽内に設けられる多孔質ブロックと、を備え、
前記貯留槽は、挿入された前記スリットノズルと前記所定液体とが非接触となるように前記所定液体が貯留されており、
前記多孔質ブロックは、下部が前記所定液体に浸漬し、かつ前記貯留槽に挿入された前記スリットノズルから離間するように配置されている、ノズル先端管理装置。
【請求項2】
前記貯留槽は、前記スリットノズルが挿入された際に前記スリットノズルの一部に当接して封止するための封止部を備える、請求項1に記載のノズル先端管理装置。
【請求項3】
前記貯留槽は、前記所定液体の液面が所定高さを超えないように規制するためのオーバーフロー管を備える、請求項1又は請求項2に記載のノズル先端管理装置。
【請求項4】
前記貯留槽は、底部の一部に、前記所定液体を流すために一方向に延びる凹部を備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のノズル先端管理装置。
【請求項5】
前記多孔質ブロックは、前記凹部の両側にそれぞれ配置される、請求項4に記載のノズル先端管理装置。
【請求項6】
前記多孔質ブロックは、気孔径が5μm~200μmである、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のノズル先端管理装置。
【請求項7】
前記多孔質ブロックは、通気率が0.5×10-13m2~300×10-13m2である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のノズル先端管理装置。
【請求項8】
前記多孔質ブロックは、無機セラミックにより形成される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のノズル先端管理装置。
【請求項9】
前記多孔質ブロックは、アルミナ系又は炭化ケイ素系の素材により形成される、請求項8に記載のノズル先端管理装置。
【請求項10】
前記貯留槽内の前記所定液体の液面の高さを計測する液面センサと、前記貯留槽に前記所定液体を供給する液体供給装置と、を備え、
前記液体供給装置は、前記液面センサの出力に基づいて、前記所定液体を前記貯留槽に供給する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のノズル先端管理装置。
【請求項11】
前記液体供給装置は、予め設定された所定間隔かつ所定量で前記所定液体を前記貯留槽に供給する、請求項10に記載のノズル先端管理装置。
【請求項12】
基板に塗布液を塗布するスリットノズルと、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のノズル先端管理装置と、を備える、塗布装置。
【請求項13】
前記スリットノズルによる塗布動作を行わないときに前記スリットノズルを待機させる待機領域を備え、
前記ノズル先端管理装置は、前記待機領域に設けられる、請求項12に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル先端管理装置及び塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体又はガラスなどの基板に薄膜を形成するため、基板上に所定の塗布液をスリットノズルから吐出して、基板上に塗布液の薄膜を形成する塗布装置が用いられる。この塗布装置には、基板への塗布を行っていない間に、スリットノズルの先端の乾燥を防止するため、スリットノズルの先端の乾燥を防止するノズル先端管理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したノズル先端管理装置において、スリットノズルの先端を塗布液の溶媒などの所定液体に浸漬させると、毛細管現象により液体が先端からスリットノズルの内部に浸入する。そのため、このまま基板上に塗布液を塗布すると、塗布液に所定液体が混合しているため、塗布ムラが発生する場合がある。この塗布ムラを解消するには、基板上への塗布前に、内部に侵入した所定液体を排出することが必要となる。その際、所定液体とともに大量の塗布液を排出しなければならず、塗布液の使用量を増加させることになる。
【0005】
本発明は、スリットノズルの先端に対して効率よく乾燥を防止することが可能なノズル先端管理装置及び塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るノズル先端管理装置は、スリットノズルの先端を囲み、先端の乾燥を防止するための所定液体を貯留する貯留槽と、貯留槽内に設けられる多孔質ブロックと、を備え、貯留槽は、挿入されたスリットノズルと所定液体とが非接触となるように所定液体が貯留されており、多孔質ブロックは、下部が所定液体に浸漬し、かつ貯留槽に挿入されたスリットノズルから離間するように配置されている。
【0007】
また、本発明の態様に係る塗布装置は、基板に塗布液を塗布するスリットノズルと、上記した態様のノズル先端管理装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記した態様のノズル先端管理装置によれば、貯留槽に多孔質ブロックを備えるので、貯留槽に貯留される所定液体は、多孔質ブロック内を介してその表面から蒸発する。多孔質ブロックは、スリットノズルから離間して非接触で配置されている。その結果、スリットノズルの先端は、多孔質ブロックの表面から蒸発する所定液体の雰囲気に覆われた状態となり、スリットノズルの先端が乾燥するのを効率よく防止できる。また、多孔質ブロックがスリットノズルから離間しているので、スリットノズルの内部に所定液体が侵入するのを防止できる。
【0009】
また、上記した態様の塗布装置によれば、上記した態様のノズル先端管理装置を備えるので、スリットノズルの待機中に所定液体がスリットノズルの内部に侵入しない。その結果、基板上に塗布液を吐出する際、基板への塗布に先立って吐出させる塗布液の量を少なくすることができる。さらに、スリットノズルの内部に所定液体が侵入しないので、基板への塗布液の塗布時に塗布ムラが生じるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るノズル先端管理装置の一例を示す断面図である。
【
図2】ノズル先端管理装置の一例を示す斜視図である。
【
図3】ノズル先端管理装置の要部を分解した一例を示す斜視図である。
【
図4】スリットノズルの一例を示し、(A)は、X方向から見た図、(B)は、(A)のA-A線に沿った断面図である。
【
図5】ノズル先端管理装置を適用した形態の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】ノズル先端管理装置を適用した形態の一例を模式的に示す平面図である。
【
図7】ノズル先端管理装置の一部を拡大して示す図である。
【
図8】液体が多孔質ブロックから蒸発している状態を示す図である。
【
図9】実施形態に係る塗布装置の一例を模式的に示す側面図である。
【
図10】塗布装置の一例を模式的に示す平面図である。
【
図11】ノズル先端管理装置の他の使用形態を示す断面図である。
【
図12】(A)は、第2実施形態に係るノズル先端管理装置の一例を示す断面図であり、(B)は、第3実施形態に係るノズル先端管理装置の一例を示す断面図であ。
【
図13】(A)は、第4実施形態に係るノズル先端管理装置の一例を示す断面図であり、(B)は、第5実施形態に係るノズル先端管理装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下に説明する内容に限定されない。図面においては、各構成をわかりやすくするために、一部を強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造又は形状、縮尺等が異なっている場合がある。図面においては、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。水平面における一方向をX方向と表記する。
図9及び
図10において、X方向は、後述するステージ30とスリットノズル20との間の相対移動方向である。水平面においてX方向に直交する方向をY方向と表記する。X方向及びY方向を含む水平面に垂直な方向をZ方向と表記する。なお、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向と反対の方向が-方向である。
【0012】
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係るノズル先端管理装置10の一例を示す断面図である。
図2は、ノズル先端管理装置10の一例を示す斜視図である。
図3は、ノズル先端管理装置10の要部を分解した一例を示す斜視図である。ノズル先端管理装置10は、後述するスリットノズル20の先端21の乾燥を防止する。
【0013】
図1に示すように、ノズル先端管理装置10は、液体L(所定液体)を貯留する貯留槽11と、多孔質ブロック121を備える多孔質構造体12と、を備える。貯留槽11は、封止部111と、凹部112と、を備える。
図2及び
図3に示すように、貯留槽11は、内部に多孔質構造体12を配置可能な寸法(スリットノズル20の大きさ、形状に対応した寸法)に設けられており、上方が開放された箱型形状を有している。貯留槽11の材質は、特に限定されず、例えば、金属、樹脂、ガラス等が挙げられる。液体Lが有機溶剤等を含む場合、例えば、耐腐食性等を考慮すると金属製であることが好ましい。
【0014】
封止部111は、貯留槽11の上部端面に形成されている。封止部111は、後述するスリットノズル20の一部である当接部22と当接して、貯留槽11内を封止する。封止部111は、スリットノズル20の先端21を囲むように当接部22と当接する。封止部111は、上方(+Z方向)から見て矩形の環状である。封止部111は、スリットノズル20の当接部22が平面状である場合、当接部22に合わせて平面状に設けられ、当接部22と面接触する。なお、封止部111は、平面状に設けられることに限定されず、例えば、曲面状又は半球面状などであってもよい。封止部111に当接部22が当接した状態では、貯留槽11内において、スリットノズル20の先端21を含んで封止された空間Vが形成される。なお、封止部111には、ゴム製又は樹脂製の膜、シートなどが設けられてもよい。この構成により、当接部22又は封止部111の損傷等を防止できる。
【0015】
凹部112は、貯留槽11の底部110の一部に設けられている。凹部112は、貯留槽11に投入された液体Lを、貯留槽11の下方の底部110において部分的に貯留させるために設けられる。凹部112は、底部110におけるX方向のほぼ中央において、Y方向に沿って設けられている。凹部112のX方向の幅は、任意であり、後述する多孔質ブロック121の切り欠き部121Cに合わせて設定される。凹部112は、底部110のY方向の全長にわたって設けられている。なお、凹部112の+Y側の端部及び-Y側の端部の一方から例えば液体Lが貯留槽11に投入され、凹部112の+Y側の端部及び-Y側の端部の他方から例えば液体Lが貯留槽11から排出される。従って、凹部112は、液体Lを流すための流路としても用いられる。なお、凹部112を設けるか否かは任意であり、凹部112は、設けられなくてもよい。
【0016】
液体Lは、スリットノズル20の先端21に残留している塗布液(後述する塗布液Q1)が乾燥して、例えば、先端21に固着するのを防止する目的で用いられる。すなわち、液体Lは、スリットノズル20から吐出される塗布液に応じて、その塗布液中の溶媒が蒸発するのを防止又は抑制する目的で選定される。液体Lは、例えば、塗布液中の溶媒と同一であってもよいし、塗布液中の溶媒と異なってもよい。液体Lは、例えば、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME)、γ-ブチロラクトン、メトキシブチルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸エチル等の半導体、ディスプレイ分野で使用されるフォトレジスト用の溶媒、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のフレキシブルディスプレイ分野で使用されるポリイミド用の溶媒、パラメンタン、デカヒドロナフタリン等の半導体パッケージ分野で使用される接着剤用の溶媒などが挙げられる。これら液体Lは、塗布液に対応して用いられ、蒸発することにより空間V内を液体Lの雰囲気にして、スリットノズル20の先端21に残留する塗布液の乾燥を防止する。
【0017】
多孔質構造体12は、貯留槽11内に配置され、下部が、貯留槽11に溜められた液体Lに浸漬している。多孔質構造体12は、2つの多孔質ブロック121と、2つのブロック結合部122とを備える。2つの多孔質ブロック121は、同一形状であり、互いに向き合い、かつX方向に離間した状態で、+Y側及び-Y側の端部がそれぞれブロック結合部122により連結されている。多孔質ブロック121とブロック結合部122とは、例えば、無機接着剤を用いて焼結により接合されている。その結果、2つの多孔質ブロック121と、2つのブロック結合部122とは一体化される。ブロック結合部122の材質は、液体Lに対する耐性等を有していれば特に限定されない。また、ブロック結合部122は、多孔質ブロック121と同様の素材が用いられてもよい。多孔質構造体12は、貯留槽11内に挿入されることで貯留槽11の底部110に載置され、貯留槽11に固定される。このような構成により多孔質ブロック121と貯留槽11との間に多少の隙間が生じるので、その隙間からも液体Lが多孔質ブロック121に浸透するとともに、多孔質構造体12の貯留槽11に対する取り付け、取り外しも容易になる。また、多孔質ブロック121の上端は、貯留槽11の封止部111より低くし、スリットノズル20との接触を避けるようにしている。多孔質構造体12の上端側には、カバー枠123が配置される。なお、カバー枠123の詳細については後述する。
【0018】
2つの多孔質ブロック121は、それぞれ、複数の気孔121Aと、表面121Bと、切り欠き部121Cとを有する。複数の気孔121Aは、多孔質ブロック121内において連通しており、液体Lを毛細管現象により表面121Bまで吸い上げることが可能である。なお、気孔121Aの詳細については後述する。表面121Bは、スリットノズル20の先端21を含む部分と対向する面となる。表面121Bは、上端から下方に向かって円弧状又は曲面状に設けられている。2つの多孔質ブロック121において、互いの表面121Bは対向している。表面121Bは、スリットノズル20の先端21を含む部分の形状に合わせて設けられる。本実施形態では、スリットノズル20の先端21を含む部分が円弧状であるため、表面121Bは、この部分に合わせて円弧状又は曲面状に設けられている。その結果、貯留槽11の封止部111にスリットノズル20の当接部22が当接した状態では、表面121Bは、スリットノズル20の先端21を含む部分に対して、一定又はほぼ一定の距離Dを隔てた状態で配置されることになる。
【0019】
切り欠き部121Cは、表面121Bの下部に設けられている。切り欠き部121Cは、凹部112に沿うようにY方向全長にわたって設けられている。すなわち、2つの多孔質ブロック121は、切り欠き部121C同士が対向した状態で、凹部112を挟んだ両側に配置された状態となっている。
【0020】
複数の気孔121Aは、多孔質ブロック121の全体で一様又はほぼ一様に設けられている。多孔質ブロック121の気孔率は、例えば25%から70%となるように設けられる。気孔率が25%より低いと液体Lを吸い上げる量が少なくなり、気孔率が70%を超えると多孔質ブロック121が脆くなって破損しやすくなる。なお、多孔質ブロック121の気孔率を35%から60%の範囲とすることが好ましい。この範囲では、液体Lを十分に吸い上げることができ、かつ多孔質ブロック121の強度低下を回避できる。また、複数の気孔121Aにおける気孔径は、例えば5μmから200μmである。気孔径が5μmより小さいと液体Lを十分に吸い上げることができなくなり、気孔径が200μmを超えると多孔質ブロック121が脆くなる。複数の気孔121Aにおける気孔径を50μmから100μmの範囲とすることが好ましい。この範囲では、液体Lを十分に吸い上げることができ、かつ多孔質ブロック121の強度低下を回避できる。
【0021】
また、多孔質ブロック121の通気率は、例えば0.5×10-13m2から300×10-13m2である。多孔質ブロック121の通気率が0.5×10-13m2より低いと十分に液体Lを吸い上げることができなくなり、通気率が300×10-13m2を超えると多孔質ブロック121が脆くなる。多孔質ブロック121の通気率を5×10-13m2から100×10-13m2の範囲とすることが好ましい。この範囲では、液体Lを十分に吸い上げることができ、かつ多孔質ブロック121の強度低下を回避できる。多孔質ブロック121の材質は、耐久性、加工性等を考慮して、例えば、無機セラミックが用いられる。無機セラミックとしては、例えば、アルミナ系や炭化ケイ素系の多孔質セラミックが挙げられる。また、液体Lに対する耐性等を有していれば、多孔質ブロック121の材質は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等のフッ素系の多孔質樹脂が用いられてもよい。
【0022】
カバー枠123は、平面視で多孔質構造体12上を覆うように配置されている。カバー枠123は、所定の厚さを有する矩形枠状であり、例えばポリプロピレン(PP)製である。カバー枠123は、多孔質ブロック121とスリットノズル20との接触を避ける目的で使用される。カバー枠123の厚みは任意であり、上面123Aが貯留槽11の封止部111と同じ高さとなる厚みであってもよいし、封止部111を越える厚みであってもよい。カバー枠123の厚みが封止部111を越える場合、カバー枠123の上面123Aがスリットノズル20の当接部22と当接して空間Vを封止させることが可能となる。なお、カバー枠123を配置するか否かは任意である。カバー枠123は、配置されなくてもよい。
【0023】
図4は、上記したノズル先端管理装置10を使用可能なスリットノズル20の一例を示し、(A)は、X方向から見た図、(B)は、(A)のA-A線に沿った断面図である。スリットノズル20は、例えば、基板Sの表面上に所定の薄膜を形成するための塗布液Q1を基板Sに向けて吐出する(
図9参照)。
図4(A)に示すように、スリットノズル20は、下端である先端21に、Y方向に沿ったスリット状の開口部23を備える。先端21から続く円弧面を介して平面部分は、貯留槽11の封止部111と当接する当接部22を備えている。
【0024】
図4(B)に示すように、スリットノズル20の内部には、塗布液Q1を開口部23に流通させる通路24と、通路24の上流側において塗布液Q1を貯留する貯留部25と、が設けられている。貯留部25には、後述する塗布液供給装置50(
図9参照)が接続されている。貯留部25には塗布液供給装置50から送液用のポンプにより塗布液Q1が送られる。このポンプの送液圧力によって貯留部25の塗布液Q1は、通路24を介して開口部23から吐出される。
【0025】
図5は、ノズル先端管理装置10を適用した形態の一例を模式的に示す断面図であり、
図6は、ノズル先端管理装置10を適用した形態の一例を模式的に示す平面図である。
図7は、ノズル先端管理装置10の一部を拡大して示す図であり、
図5における液面調整空間115の下部を拡大した図である。
図5及び
図6に示すように、ノズル先端管理装置10は、支持体16よって支持されている。支持体16は、複数の支柱161を備え、貯留槽11の下面と当接して貯留槽11を支持する。支柱161は、例えば、ばね式の支柱が用いられ、スリットノズル20と封止部111とが当接する際、スリットノズル20が封止部111をバネの弾性力に抗して下方に押すことにより、両者をより密着させることが可能となっている。ノズル先端管理装置10は、排出管113と、オーバーフロー管114と、液面センサ13と、液面管理用配管131と、液体供給装置14と、供給管141と、制御部15と、を備えている。
【0026】
貯留槽11は、上記した
図2の貯留槽11と異なり、内側に液面調整空間115を形成するように設けられている。液面調整空間115は、貯留槽11に多孔質構造体12を配置した際、多孔質構造体12の+Y側に設けられる。なお、液面調整空間115の部分においても凹部112が設けられている。この凹部112により、液面調整空間115と多孔質構造体12(多孔質ブロック121)の下方とは、凹部112を介して連通している。そのため、貯留槽11に液体Lが投入されると、多孔質構造体12の下部だけでなく、液面調整空間115にも凹部112を介して液体Lが流れ込むことになる。従って、多孔質構造体12に液体Lの液面は、液面調整空間115における液体Lの液面と同一となる。液面調整空間115の下部側には、排出管113、オーバーフロー管114、及び液面管理用配管131が接続される。
【0027】
排出管113は、液面調整空間115の下部において、貯留槽11の凹部112に連結されている。排出管113の一部には、開閉バルブB1が設けられる。開閉バルブB1は、例えば、制御部15の指示により開閉する。開閉バルブB1を開くことにより、
図7に示すように、貯留槽11の液体Lは、排出管113を介して外部に排出される。排出管113を介して貯留槽11の液体Lを排出することで、貯留槽11内の液体Lの液面の高さを調整可能となり、また、貯留槽11内の液体Lを交換することができる。排出管113は、例えば廃液タンク等に接続されており、貯留槽11から排出された液体Lを廃液タンクに貯留させる。なお、排出管113の内径は、適宜設定できる。また、排出管113の一部には、流量計等が設けられてもよい。
【0028】
オーバーフロー管114は、液面調整空間115の下部において、貯留槽11の底部110を貫通して設けられている。オーバーフロー管114の上端は、凹部112より上方に配置されている。オーバーフロー管114の上端は、貯留槽11における液体Lの許容貯留限界の液面(液位)と同じ高さになるように設定されている。
図7に示すように、貯留槽11の液体Lの貯留量が許容貯留限界の液位H0を超えて液位H1になると、オーバーフロー管114の上端から液体Lが流れ込み、液体Lを外部に排出する。なお、オーバーフロー管114の内径は、適宜設定できる。また、オーバーフロー管114の一部には、流量計等が設けられてもよい。
【0029】
液面センサ13は、液面管理用配管131を介して貯留槽11に接続されている。液面管理用配管131は、貯留槽11の底部110を貫通して設けられ、上端が凹部112内に配置されている。液面センサ13は、例えば、貯留槽11に貯留する液体Lの圧力に基づいて、貯留槽11内の液体Lの液面(液位)の高さ(例えば、
図7に示す液位H2、H3)を検出する。液面センサ13は、例えば、貯留槽11の+Y側において支持体16内に配置されている。液面センサ13は、液体Lの液面の高さに関するデータを制御部15に出力する。なお、液面センサ13の形態は上記した形態に限定されず、液体Lの液面の高さを非接触又は接触により検出する任意のセンサを用いることができる。
【0030】
本実施形態では、液面調整空間115において、排出管113、オーバーフロー管114、液面管理用配管131が+Y方向に順に並んだ形態を示しているが、これらが並ぶ順番は任意である。また、図示では、排出管113、オーバーフロー管114、液面管理用配管131を同一の内径で示しているが、それぞれ目的に応じた内径に設定することができる。
【0031】
液体供給装置14は、供給管141を介して貯留槽11に接続されている。液体供給装置14は、制御部15からの指示により、供給管141を介して貯留槽11に液体Lを供給する。供給管141は、貯留槽11の-Y側に接続されている。すなわち、供給管141は、貯留槽11において液面調整空間115と反対側に接続されている。供給管141の一部には、開閉バルブB2が設けられる。開閉バルブB2は、例えば、制御部15の指示により開閉する。液体供給装置14は、例えば、液体Lを貯留する不図示の液体タンクを備えている。液体Lは、例えば、加圧した窒素ガス等により液体タンクから貯留槽11に圧送される。なお、液体供給装置14は、例えば、送液ポンプを用いて液体タンクから液体Lを貯留槽11に送る構成が適用されてもよい。
【0032】
制御部15は、ノズル先端管理装置10を統括的に制御する。制御部15は、不図示の記憶部等に予め記憶されている所定のプログラム等により各部の制御を実行する。例えば、制御部15は、液体供給装置14及び開閉バルブB2を駆動させて、貯留槽11に供給する液体Lの供給量を制御する。また、制御部15は、開閉バルブB1を駆動させて、貯留槽11からの液体Lの排出量を制御する。また、制御部15は、液面センサ13の出力に基づいて、液位H2(
図7参照)を維持するように、液体供給装置14及び開閉バルブB1、B2を駆動して液体Lの供給量及び排出量を制御する。なお、液体供給装置14及び開閉バルブB1、B2の一部又は全部の駆動は、制御部15で制御されることに限定されず、作業者による手作業で行われてもよい。
【0033】
上記したノズル先端管理装置10の使用状態について説明する。先ず、制御部15は、液体供給装置14を駆動させ、かつ開閉バルブB2を開いて、貯留槽11に液体Lを供給させる。このとき、排出管113の開閉バルブB1は閉じておく。また、制御部15は、液面センサ13の出力に基づいて、液体Lが液位H2(所望の液位)となった段階で液体供給装置14の駆動を停止させ、かつ開閉バルブB2を閉じさせる。その結果、貯留槽11には液位H2の液体Lが貯留した状態となる。なお、貯留槽11に液体Lを供給するタイミングは、スリットノズル20を貯留槽11に配置する前であってもよいし、スリットノズル20を貯留槽11に配置した後であってもよい。
【0034】
図8は、液体Lが多孔質ブロック121から蒸発している状態を示す図である。また、
図8は、スリットノズル20と多孔質ブロック121との位置関係を示している。液体Lが貯留槽11に供給されると、多孔質ブロック121の下部が液体Lに浸漬される。その結果、液体Lは、多孔質ブロック121内において連通する複数の気孔121Aの毛細管現象により上部に向けて浸透し(吸い上げられ)、
図8の点線矢印で示すように、多孔質ブロック121の表面121Bから蒸発する。従って、スリットノズル20と貯留槽11とで形成されている空間Vは、蒸発した液体Lの雰囲気となる。
【0035】
また、スリットノズル20と多孔質ブロック121との間は、距離Dの一定の隙間が設けられており、スリットノズル20の先端21は、多孔質ブロック121の表面121Bの近傍に配置される。そのため、先端21は、蒸発した液体Lの濃度が比較的高い空間に配置されることになる。その結果、スリットノズル20の先端21(開口部23の塗布液Q1)が乾燥するのを効率よく防止できる。なお、スリットノズル20の当接部22(
図1参照)が貯留槽11の封止部111(
図1参照)に当接して空間Vを封止しているので、空間Vにおいて、蒸発した液体Lの濃度が低下するのを防止している。また、スリットノズル20は、多孔質ブロック121と非接触であるので、スリットノズル20の先端21に液体Lが付着するのを防止し、開口部23から液体Lが通路24に侵入することを防止している。
【0036】
液体Lが蒸発することで、貯留槽11内の液体Lの液位が低下する。制御部15は、液面センサ13の出力に基づいて、液体Lが液位H2(所望の液位)で維持するように液体供給装置14及び開閉バルブB2を駆動して、適宜液体Lを貯留槽11に供給する。また、制御部15は、液位H2を維持しつつ、液体供給装置14による液体Lの供給と、排出管113による液体Lの排出とを同時に行ってもよい。この場合、液体Lは、貯留槽11内を-Y側から+Y側に向けて流れる状態となる。また、排出管113から排出された液体Lを液体供給装置14に戻し、この液体Lを再度貯留槽11に供給するといった液体Lを循環させる形態が適用されてもよい。この場合、排出された液体L中から異物を除去するため、循環経路中にフィルタを設けてもよい。
【0037】
このように、本実施形態のノズル先端管理装置10によれば、貯留槽11に備える多孔質ブロック121から液体Lを蒸発させるので、多孔質ブロック121と非接触のスリットノズル20の先端21は、蒸発した液体Lの雰囲気に覆われた状態となり、スリットノズル20の先端21が乾燥するのを効率よく防止できる。また、多孔質ブロック121がスリットノズル20から離間しているので、スリットノズル20の内部に液体Lが侵入することを防止できる。
【0038】
<塗布装置>
次に、実施形態に係る塗布装置100について説明する。塗布装置100は、上記したノズル先端管理装置10を備える。
図9は、実施形態に係る塗布装置100の一例を模式的に示す側面図であり、
図10は、塗布装置100の一例を模式的に示す平面図である。塗布装置100は、基板Sの表面に薄膜を形成するための塗布液Q1を塗布する。塗布装置100は、
図9及び
図10に示すように、ノズル先端管理装置10と、スリットノズル20と、ステージ30と、移動装置40と、塗布液供給装置50と、制御装置60と、を備える。なお、ノズル先端管理装置10は、上記した構成に加えてワイピング装置70を備えている。
【0039】
ノズル先端管理装置10は、ステージ30とスリットノズル20との相対的な移動方向であるX方向において、ステージ30の+X側に設けられている。ただし、ノズル先端管理装置10は、ステージ30の-X側に設けられてもよいし、ステージ30の+Y側又は-Y側に設けられてもよい。ノズル先端管理装置10は、待機領域R1及び吐出・清掃領域R2を含んで設けられている。すなわち、待機領域R1においてノズル先端管理装置10の一部である貯留槽11が設けられ、吐出・清掃領域R2においてノズル先端管理装置10の一部であるワイピング装置70が設けられている。待機領域R1は、吐出・清掃領域R2に対して-X側に設けられている。すなわち、待機領域R1は、ステージ30と吐出・清掃領域R2との間に設けられる。待機領域R1は、スリットノズル20の乾燥を防止するため、基板Sに塗布液Q1の塗布動作を行わないときにスリットノズル20を待機させる領域である。待機領域R1には、貯留槽11が配置されている。吐出・清掃領域R2は、ダミーディスペンスによる塗布液Q1の排出及び塗布前後にスリットノズル20の先端21に付着した塗布液Q1を清掃(ワイピング)する領域である。吐出・清掃領域R2には、ワイピング装置70が設けられている。ワイピング装置70は、例えば、不図示のブレードを備え、このブレードをスリットノズル20に接触させつつY方向に移動させることで、スリットノズル20の先端21に付着している塗布液Q1を掻きとる。また、ノズル先端管理装置10(貯留槽11、ワイピング装置70)の設置高さは任意であるが、スリットノズル20が上下方向に動く距離が大きいと塗布までに時間を要するため(タクトが遅くなるため)、ステージ30と同じ高さか、あるいは、ステージ30より低い方が好ましい。ワイピング装置70をステージ30より低くすることにより、ワイピング装置70から清掃用のシンナー等のミストがステージへ付着するのを抑制できる。
【0040】
ステージ30は、上面に基板Sを載置する載置面31を有する。載置面31は、基板Sを支持可能な寸法に設定されている。なお、ステージ30は、載置された基板Sを吸着して保持させる吸着機構を備えていてもよい。載置面31には、例えば、不図示の基板搬送装置により外部から搬送された基板Sが載置される。また、載置面31からは、例えば塗布液Q1が塗布された基板Sが不図示の基板搬送装置により搬出される。なお、作業者が手作業でステージ30に対する基板Sの搬入、搬出を行ってもよい。
【0041】
スリットノズル20は、X方向及びZ方向に移動可能に支持されている。スリットノズル20は、基板Sに対して塗布液Q1の塗布を行う場合、ステージ30の上方に配置される。また、スリットノズル20は、待機領域R1に設定される待機位置P1と、吐出・清掃領域R2に設定される吐出・清掃位置P2と、基板Sに対して塗布液Q1の塗布を行う場合の塗布開始位置P3と、基板Sに対して塗布液Q1の塗布を終了した塗布終了位置P4と、の間を移動可能である。塗布開始位置P3及び塗布終了位置P4は、載置面31に載置される基板Sの大きさ又は位置に応じて設定される。塗布開始位置P3については、吐出・清掃領域R2においてスリットノズル20の清掃後、早期に塗布を開始しないと乾燥による塗布不良が発生するため、ノズル先端管理装置10に近い側(すなわちステージ30の+X側)に設定される。
【0042】
移動装置40は、スリットノズル20をX方向及びZ方向に移動させる。スリットノズル20をX方向に移動させることにより、ステージ30との相対移動を行うことができる。また、スリットノズル20をZ方向に移動させることにより、基板Sに対する間隔を調整することができる。スリットノズル20は、塗布開始位置P3から-X方向に塗布終了位置P4まで移動する間に塗布液Q1を吐出することで、基板S上に塗布液Q1を塗布する。また、移動装置40は、スリットノズル20を待機位置P1に移動させた後、スリットノズル20を下方に移動させることにより、先端21を貯留槽11に挿入させることができる。さらに、その後スリットノズル20を上方に移動させ、+X方向に移動させて、ワイピング装置70の上方である吐出・清掃位置P2に移動させた後、スリットノズル20を下方に移動させることにより、先端21をワイピング装置70に挿入させることができる。挿入された先端21は、上述したワイピング装置70によって、付着している塗布液Q1が掻きとられる。移動装置40の構成は任意であり、例えば、リニアモータ、ボールねじ機構、シリンダ装置などが用いられる。なお、上記した構成ではスリットノズル20を移動させているが、この構成に限定されず、例えば、ステージ30、ノズル先端管理装置10をスリットノズル20に対して移動させる構成が適用されてもよい。
【0043】
塗布液供給装置50は、スリットノズル20に塗布液Q1を供給する。塗布液供給装置50は、塗布液Q1を貯留する不図示のタンクと、スリットノズル20に塗布液Q1を送る不図示の送液用のポンプと、を備えている。塗布液供給装置50は、ポンプを駆動することにより、タンクから塗布液Q1をスリットノズル20の貯留部25(
図4参照)に送る。スリットノズル20は、貯留部25及び通路24(
図4参照)を介して開口部23(
図4参照)から塗布液Q1を基板S上に吐出する。スリットノズル20における開口部23のY方向の寸法は、例えば、載置面31の基板SのY方向の寸法よりも小さい。ただし、開口部23のY方向の寸法は、基板SのY方向の寸法よりも大きくてもよい。この場合、開口部23のうち、基板Sから外れる部分を所定の閉塞部材等で塞ぎ、基板SのY方向の寸法に合わせるように調整可能としてもよい。
【0044】
制御装置60は、塗布装置100を統括的に制御する。なお、ノズル先端管理装置10の制御部15(
図5及び
図6参照)は、制御装置60の一部であってもよいし、制御装置60とは別に設けられてもよい。制御装置60は、移動装置40、塗布液供給装置50、及びノズル先端管理装置10のそれぞれの動作を制御する。制御装置60は、不図示の記憶部等に予め記憶されたプログラム、情報等に基づいて各部を制御する。
【0045】
上記した塗布装置100の動作について説明する。制御装置60は、ステージ30の載置面31に基板Sが載置された情報を取得すると、又は、作業者からの塗布動作開始が入力されると、スリットノズル20を待機位置P1から吐出・清掃位置P2まで移動させるように、移動装置40を駆動させる。続いて、制御装置60は、スリットノズル20にダミーディスペンスを実行させ、ワイピング装置70によりスリットノズル20を清掃させる。続いて、制御装置60は、移動装置40を駆動させ、スリットノズル20を塗布開始位置P3に移動させる。続いて、塗布液供給装置50を駆動させつつ移動装置40によりスリットノズル20を-X方向に塗布終了位置P4まで移動させる。スリットノズル20は、塗布液Q1を吐出しながら基板S上を-X方向に移動することで、基板S上に塗布液Q1による膜を形成させる。基板Sへの膜の形成が終了すると、基板Sの交換等のため、スリットノズル20からの塗布液Q1の吐出停止時間が長くなる場合がある。また、次の基板Sに対する塗布液Q1の吐出に際して、スリットノズル20の先端21を管理する(きれいにする)必要がある。
【0046】
このような場合、制御装置60は、移動装置40を駆動して、スリットノズル20を吐出・清掃位置P2に移動させ、スリットノズル20をワイピング装置70によりで清掃して先端21をきれいにした後、さらにスリットノズル20を待機位置P1に移動させ、先端21を貯留槽11に挿入させる。制御装置60は、先端21が貯留槽11に挿入される際、又は先端21が貯留槽11に挿入される前にノズル先端管理装置10を駆動させる。制御装置60は、液体供給装置14(
図5及び
図6参照)を駆動させ、液体Lを貯留槽11に供給させる。貯留槽11に供給された液体Lは、上記したように多孔質ブロック121(
図8参照)の上部に移動し、表面121Bから蒸発する。スリットノズル20の先端21は、表面121Bの近傍に配置されているので、蒸発した液体Lの濃度が比較的高い雰囲気下に晒される。その結果、スリットノズル20の先端21において塗布液Q1の固化等を防止するなど、次の基板Sに対する塗布を行うまでの間、先端21の乾燥が防止される。
【0047】
制御装置60は、次の基板Sに対する塗布動作を開始するまで、この状態を維持させる。このとき、貯留槽11の液体Lが減少した場合は、液体供給装置14を駆動させ、液体Lを適宜貯留槽11に供給する。また、制御装置60は、液体供給装置14により液体Lを貯留槽11に供給しつつ、排出管113から液体Lを排出させる動作を連続させてもよい。この場合、貯留槽11には新たな液体Lが供給されるので、劣化した液体Lの継続使用を回避することができる。制御装置60は、次の基板Sに対して塗布を行う場合、スリットノズル20を待機位置P1から吐出・清掃位置P2に移動させ、スリットノズル20の先端21を清掃した後、塗布開始位置P3に移動させる。その後の動作については上記したとおりであり、このような動作が繰り返される。なお、基板Sへの塗布を行わない場合、すなわち、長時間スリットノズル20を待機させる場合、制御装置60は、移動装置40を駆動して、待機位置P1と吐出・清掃位置P2との移動を繰り返して実行させてもよい。
【0048】
なお、上記した塗布装置100は、待機領域Rに1台のノズル先端管理装置10を設置しているが、この形態に限定されず、複数台のノズル先端管理装置10が待機領域Rに設置されてもよい。例えば、スリットノズル20から異なる塗布液Q1、Q2が切り替えられて吐出され、塗布液Q1を吐出する場合と、塗布液Q2を吐出する場合とで異なるノズル先端管理装置10が用いられてもよい。塗布液Q1の乾燥を防止する液体Lと、塗布液Q2の乾燥を防止する液体Lとが異なる場合、複数台のノズル先端管理装置10に異なる液体Lが供給されてもよい。また、1台のノズル先端管理装置10に異なる液体Lを供給可能とし、塗布液Q1に応じて液体Lを切り替える構成であってもよい。
【0049】
上記した実施形態では、ノズル先端管理装置10において、スリットノズル20の当接部22が貯留槽11の封止部111に当接する形態を例に挙げて説明しているが、この形態に限定されない。
図11は、ノズル先端管理装置10の他の使用形態を示す断面図である。スリットノズル20の当接部22と、貯留槽11の封止部111とは密着していることが好ましいが、
図11に示すように、スリットノズル20の当接部22と、貯留槽11の封止部111とが離間した状態で、ノズル先端管理装置10が使用されてもよい。当接部22と封止部111との間隔Wは、上限が数百μm程度の範囲に設定される。この範囲の隙間Wであれば、蒸発した液体Lが隙間Wから外部に漏れるのを少なくすることができる。また、当接部22が封止部111に接触しないので、スリットノズル20又は貯留槽11の破損を防止できる。
【0050】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。
図12(A)は、第2実施形態に係るノズル先端管理装置210の一例を示す断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。ノズル先端管理装置210は、第1実施形態のノズル先端管理装置10と多孔質ブロック221の形状が異なり、その他の構成はノズル先端管理装置10と同様である。また、本実施形態では、スリットノズル20の形状が第1実施形態とは異なりV字型である点で異なる。なお、
図12(A)では、カバー枠123の記載を省略している。
図12(A)に示すように、ノズル先端管理装置210は、多孔質構造体212に備える多孔質ブロック221の表面221Bが、V字型のスリットノズル20に沿うように平面状に形成されている。
【0051】
多孔質構造体212は、2つの多孔質ブロック221を備える。2つの多孔質ブロック221は、貯留槽11の凹部112を挟んだ両側に配置されている。多孔質ブロック221は、複数の気孔221Aを有している。また、多孔質ブロック221の表面221Bは、スリットノズル20の先端21から離間している。なお、
図12(A)では、スリットノズル20が封止部111から離間した状態を示しているが、この形態に限定されず、スリットノズル20を封止部111に当接させてもよい。なお、スリットノズル20と封止部111との間隔W1は、上記と同様に、上限が数百μm程度の範囲に設定される。このノズル先端管理装置210においても、第1実施形態と同様に、スリットノズル20の先端21が乾燥するのを効率よく防止でき、スリットノズル20の内部に液体Lが侵入することを防止できる。
【0052】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。
図12(B)は、第3実施形態に係るノズル先端管理装置310の一例を示す断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。ノズル先端管理装置310は、第1実施形態のノズル先端管理装置10と多孔質ブロック321の形状が異なり、その他の構成はノズル先端管理装置10と同様である。なお、
図12(B)では、カバー枠123の記載を省略している。
図12(B)に示すように、ノズル先端管理装置310は、多孔質構造体312に備える多孔質ブロック321の表面321Bが複数の平面で形成され、断面が五角形状に設けられている。
【0053】
多孔質構造体312は、2つの多孔質ブロック321を備える。2つの多孔質ブロック321は、貯留槽11の凹部112を挟んだ両側に配置されている。多孔質ブロック321は、複数の気孔321Aを有している。また、多孔質ブロック321の表面321Bは、スリットノズル20の先端21から離間している。このノズル先端管理装置310においても、第1実施形態と同様に、スリットノズル20の先端21が乾燥するのを効率よく防止でき、スリットノズル20の内部に液体Lが侵入することを防止できる。また、表面321Bが複数の平面で形成されるので、多孔質ブロック321の製造(成形)が容易であることに加えて、上記した第2実施形態のノズル先端管理装置210と比べて、表面321Bの傾斜面をスリットノズル20の先端21近傍に配置させることができる。
【0054】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。
図13(A)は、第4実施形態に係るノズル先端管理装置410の一例を示す断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。ノズル先端管理装置410は、第1実施形態のノズル先端管理装置10と多孔質ブロック421L1、421L2の形状が異なり、その他の構成はノズル先端管理装置10と同様である。なお、
図13(A)では、スリットノズル20及びカバー枠123の記載を省略している。
図13(A)に示すように、ノズル先端管理装置410は、外側と内側とに分割された多孔質ブロック421L1、421L2を備える。
【0055】
外側の多孔質ブロック421L1と、内側の多孔質ブロック421L2とが1組として用いられ、両者間は面接触している。また、両者間は、部分的に接着されてもよい。多孔質構造体412は、2組の多孔質ブロック421L1、421L2を備える。2組の多孔質ブロック421L1、421L2は、貯留槽11の凹部112を挟んだ両側に配置されている。すなわち、内側の多孔質ブロック421L2同士が凹部112を挟んで対向している。多孔質ブロック421L1、421L2は、複数の気孔421Aを有している。また、多孔質ブロック421L1、421L2を合わせることで、第1実施形態のノズル先端管理装置10と同様に、円弧状の表面421Bを形成しており、この表面421Bは、スリットノズル20の先端21から離間している。液体Lは、外側の多孔質ブロック421L1、内側の多孔質ブロック421L2のそれぞれで吸い上げられ、表面421Bから蒸発する。
【0056】
このノズル先端管理装置410においても、第1実施形態と同様に、スリットノズル20の先端21が乾燥するのを効率よく防止でき、スリットノズル20の内部に液体Lが侵入することを防止できる。また、外側の多孔質ブロック421L1と、内側の多孔質ブロック421L2とで異なる気孔421Aを形成することができる。すなわち、外側と内側とで、気孔率、気孔径、及び通気率のうち少なくとも1つを変えることができる。例えば、内側の多孔質ブロック421L2の気孔率を、外側の多孔質ブロック421L1より大きくして、スリットノズル20の先端21に近い内側の多孔質ブロック421L2で多くの液体Lを吸い上げさせてもよい。この場合、外側の多孔質ブロック421L1の気孔率を小さくして剛性を上げ、内側の多孔質ブロック421L2の変形等を防止させてもよい。なお、本実施形態は、2つの多孔質ブロック421L1、421L2を1組としているが、3つ以上で1組とする形態であってもよい。
【0057】
[第5実施形態]
第5実施形態について説明する。
図13(B)は、第5実施形態に係るノズル先端管理装置510の一例を示す断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。ノズル先端管理装置510は、第1実施形態のノズル先端管理装置10と多孔質ブロック521L1、521L2の形状が異なり、その他の構成はノズル先端管理装置10と同様である。なお、
図13(B)では、スリットノズル20及びカバー枠123の記載を省略している。
図13(B)に示すように、ノズル先端管理装置510は、下側と上側とに分割された多孔質ブロック521L1、521L2を備える。
【0058】
下側の多孔質ブロック521L1と、上側の多孔質ブロック521L2とが1組として用いられ、両者間は面接触している。また、両者間は、部分的に接着されてもよい。多孔質構造体512は、2組の多孔質ブロック521L1、521L2を備える。2組の多孔質ブロック521L1、521L2は、貯留槽11の凹部112を挟んだ両側に配置されている。すなわち、下側の多孔質ブロック521L1同士、及び上側の多孔質ブロック521L2同士が、凹部112を挟んで対向している。多孔質ブロック521L1、521L2は、複数の気孔521Aを有している。また、多孔質ブロック521L1、521L2を合わせることで、第1実施形態のノズル先端管理装置10と同様に、円弧状の表面521Bを形成しており、この表面521Bは、スリットノズル20の先端21から離間している。液体Lは、下側の多孔質ブロック521L1から上側の多孔質ブロック521L2に移動し、表面521Bから蒸発する。
【0059】
このノズル先端管理装置510においても、第1実施形態と同様に、スリットノズル20の先端21が乾燥するのを効率よく防止でき、スリットノズル20の内部に液体Lが侵入することを防止できる。また、下側の多孔質ブロック521L1と、上側の多孔質ブロック521L2とで異なる気孔521Aを形成することができる。すなわち、下側と上側とで、気孔率、気孔径、及び通気率のうち少なくとも1つを変えることができる。例えば、上側の多孔質ブロック521L2の気孔率を、下側の多孔質ブロック521L1より大きくして、下側の多孔質ブロック521L1から移動してきた液体Lを効率よく表面521Bまで移動させることができる。この場合、下側の多孔質ブロック521L1の気孔率を小さくして剛性を上げ、上側の多孔質ブロック521L2の変形等を防止させてもよい。なお、本実施形態は、2つの多孔質ブロック521L1、521L2を1組としているが、3つ以上で1組とする形態であってもよい。
【実施例0060】
次に、実施例について説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されない。
【0061】
[多孔質ブロック]
材質、気孔径、気孔率、通気率のうち少なくとも1つが異なる試料1から試料5のテストピース(長さ:30mm、幅:30mm、高さ:5mm)を用意し、それぞれについて検討した。試料1から試料5を表1に示す。
【0062】
【0063】
材質は、酸化アルミニウム系、炭化ケイ素系の2種類を用意して、それぞれ気孔径、気孔率、及び通気率が異なる試料1から試料5を作成した。酸化アルミニウム系では5種類、炭化ケイ素系では1種類用意した。試料1から試料5について、加工性、パラメンタンの浸透性を評価した。加工性の評価については、上記した実施形態の多孔質ブロックの形状に加工する際、成形しやすい場合を◎とし、成形できる場合を〇とし、脆くて成形できない場合を×とした。浸透性の評価については、各試料上に紙片(縦:10mm、横:10mm)を載せ、下部をパラメンタン中に浸漬させて、浸漬開始から紙片全体が濡れるまでの時間(秒)を計測した。時間が短ければ、試料におけるパラメンタンの浸透性が高いと評価した。
【0064】
表1の試料1のように、気孔径が5μm~40μmで気孔率が50%では、加工性は確保されるものの、通気率が小さく、浸透性の評価で15秒となって浸透性が低いことが確認された。また、表1の試料2のように、気孔径が5μm~40μmで気孔率が60%では、加工性はよいが、通気率が小さく、浸透性の評価で15秒となって浸透性が低いことが確認された。また、表1の試料4のように、気孔径が300μm~1000μmとなると、気孔率が40%程度でも加工性が悪くなり(脆くなり)、多孔質ブロックの形状に成形できないことが確認された。また、表1の試料6のように、気孔径が5μm~30μmで気孔率が40%では、加工性は確保されるものの、通気率が小さく、浸透性の評価で15秒となって浸透性が低いことが確認された。
【0065】
表1から加工性及び浸透性を考慮すると、多孔質ブロックとして適切な条件は、試料3、5に示すように、気孔径が50μm~200μmが好ましく、気孔率としては、35%~40%が好ましく、通気率については、100×10-13m2~270×10-13m2が好ましい。なお、材料のコストを考慮すると、炭化ケイ素系より、酸化アルミニウム系の方が好ましい。以上から、試料3が多孔質ブロックとしては適切と判断される。
【0066】
試料3と同様の特性を有する材料で第1実施形態の多孔質ブロック121を成形し、多孔質ブロック121を備える多孔質構造体12を作成した。この多孔質構造体12を貯留槽11内に配置した。その後、液体L(所定液体)としてパラメンタンを貯留槽11に供給した。多孔質ブロック121の下部は、8mm程度、パラメンタンに浸漬させた。60秒経過した後、多孔質ブロック121上に紙片(縦:50mm、横:20mm)を載せ、紙片の濡れ状態(パラメンタンが多孔質ブロック121の表面121Bまで達しているか)を確認した。
【0067】
紙片の濡れが確認されたので、貯留槽11にスリットノズル20(スリット開口部100μm)を挿入した。この際、スリットノズル20の先端21を多孔質ブロック121から離して、スリットノズル20の先端21を封止(キャッピング)した。スリットノズル20には、塗布液Q1としてTZNR-A4030H(TOK社製、粘度300cp)を充填した。24時間経過後、スリットノズル20を貯留槽11から取り出し、塗布液Q1をスリットノズル20から適正に吐出できるか否かを確認した。また、貯留槽11の底部110、及び多孔質ブロック121の表面121Bの濡れ状態を確認した。
【0068】
スリットノズル20について検証すると、スリットノズル20の先端21は乾燥してなく、開口部23の目詰まりもないことが確認された。スリットノズル20から塗布液Q1を吐出させると、先端21から塗布液Q1が滴下する様子が観察された。よって、パラメンタンに下部を浸漬させた多孔質ブロック121と非接触でスリットノズル20の先端21を貯留槽11内において封止することで(キャッピングすることで)、スリットノズル20の乾燥が防止され、その後、スリットノズル20から塗布液Q1を適正に吐出できることが確認された。また、貯留槽11の底部110、及び多孔質ブロック121の表面121Bは、ともに濡れていることが確認され、貯留槽11内が乾燥していないことが確認された。
【0069】
以上、実施形態及び実施例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施形態及び実施例で説明した範囲には限定されない。上記した実施形態で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上記した実施形態で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、上記した実施形態に多様な変更又は改良を加えることが可能であることは当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0070】
また、上記した実施形態では、1つの多孔質ブロック121等において、複数の気孔121A等が一様に設けられる形態を例に挙げて説明しているが、この形態に限定されない。複数の気孔121A等は、1つの多孔質ブロック121等において、異なる形態で設けられてもよい。例えば、1つの多孔質ブロック121等において、下部では気孔径又は気孔率が大きく、上部では気孔径又は気孔率が小さくなる形態であってもよいし、この形態とは逆に、下部では気孔径又は気孔率が小さく、上部では気孔径又は気孔率が大きくなる形態であってもよい。また、1つの多孔質ブロック121等において、下部から上部にかけて、気孔径又は気孔率が徐々に変化する形態であってもよい。
【0071】
また、上記した実施形態において、多孔質ブロック121等は、例えば、多孔質シートを複数積層させて形成されてもよい。この場合、各多孔質シート間は部分的に接着されてもよい。