(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007521
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】配線付板状体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
E06B 7/28 20060101AFI20230112BHJP
C03C 27/06 20060101ALI20230112BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20230112BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20230112BHJP
E06B 9/24 20060101ALI20230112BHJP
E06B 3/64 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
E06B7/28 B
C03C27/06 101Z
H02G3/30
H02G3/04
E06B9/24 C
E06B3/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019230616
(22)【出願日】2019-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(71)【出願人】
【識別番号】507090421
【氏名又は名称】エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr. Suite 400, Alpharetta, GA 30022, U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】516170945
【氏名又は名称】エージーシー ヴィドロ ド ブラジル リミターダ
【氏名又は名称原語表記】AGC Vidros do Brasil Ltda.
【住所又は居所原語表記】Estrada Municipal Doutor Jaime Eduardo Ribeiro Pereira, n 500, Jardim Vista Alegre, Guaratingueta, Sao Paulo, CEP 12523-671, Brasil
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】林 真行
(72)【発明者】
【氏名】小島 浩士
【テーマコード(参考)】
2E016
4G061
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
2E016AA01
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
2E016DA06
2E016DC02
2E016DD03
4G061AA20
4G061BA01
4G061CD25
5G357DA06
5G357DB01
5G357DB02
5G357DC01
5G357DD02
5G357DD14
5G363AA08
5G363AA16
5G363BA01
5G363DA01
5G363DB05
5G363DB06
5G363DB40
(57)【要約】
【課題】本発明は、コネクタを収容可能な枠体を用い、配線付板状体を設置してから枠体内でコネクタを用いた配線作業を行うことが可能な配線付板状体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】板状体と、
前記板状体の所定箇所に接続されて設けられた配線と、
前記配線の先端に設けられたコネクタと、
開口部を有し、少なくとも前記コネクタを収納する枠体と、
前記枠体の前記開口部の少なくとも一部を塞ぐ蓋と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体と、
前記板状体の所定箇所に接続されて設けられた配線と、
前記配線の先端に設けられたコネクタと、
開口部を有し、少なくとも前記コネクタを収納する枠体と、
前記枠体の前記開口部の少なくとも一部を塞ぐ蓋と、を有する配線付板状体。
【請求項2】
前記板状体と前記枠体との距離は20mm以上である請求項1に記載の配線付板状体。
【請求項3】
前記枠体は、前記配線及び前記板状体の所定箇所を含む所定領域も収納し、
前記蓋は、前記枠体の前記開口部の端部又は前記開口部の端部よりも突出した位置に設けられる請求項1又は2に記載の配線付板状体。
【請求項4】
前記蓋は、L字形の断面形状を有する請求項3に記載の配線付板状体。
【請求項5】
前記蓋と前記板状体とがシール材により接着されている請求項3又は4に記載の配線付板状体。
【請求項6】
前記シール材の前記蓋と前記板状体との間の距離により示されるシール幅と、該シール幅と垂直で前記板状体の面に沿った厚さにより示されるシール深さとの比が、1.0~4.0である請求項5に記載の配線付板状体。
【請求項7】
前記配線は、前記板状体の上端面に接続される請求項1乃至6のいずれか一項に記載の配線付板状体。
【請求項8】
前記板状体は、調光ガラスである請求項1乃至7のいずれか一項に記載の配線付板状体。
【請求項9】
第2の板状体を更に有し、
前記枠体は、前記第2の板状体を収納する領域を更に有し、
前記第2の板状体は、前記枠体にシール材を介して支持される請求項1乃至8のいずれか一項に記載の配線付板状体。
【請求項10】
壁面に設置された枠体内の所定位置に、所定箇所に接続された第1の配線を有し、該第1の配線の先端にコネクタが設けられた板状体を取り付ける工程と、
前記枠体内に予め設置された第2の配線と前記第1の配線とを、前記コネクタを用いて前記枠体内で接続する工程と、
前記第1及び第2の配線を覆う蓋を前記枠体に取り付ける工程と、を有し、
前記板状体を取り付ける工程、前記枠体内で接続する工程及び前記蓋を前記枠体に取り付ける工程を、この順序で行う配線付板状体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線付板状体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、調光ガラスをサッシ本体に固着すると同時に、隣接するもの同士を突き合わせ接着した開閉不能の窓が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、窓用板体から延出している電気配線のための配線収容空間を、サッシ本体内に形成するとともに、サッシ溝内の窓用板体からの電気配線を配線収容空間内に引き込むための配線引込孔を設けている。そして、配線収容空間内に収容される電気配線の配線作業用開口部をサッシの長手方向に形成している。かかる構成により、電気配線を配線収容空間に収容するとともに、結線等の配線作業をサッシ長手方向に沿って形成された開口部を通して外部から行うことができ、窓用板外の建て込み作業と配線作業とを別々に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、配線収容空間内に、配線よりも大きいコネクタを収容する十分なスペースが設けられておらず、また、配線作業自体はサッシ長手方向に沿って形成された開口部を通して外部で行う必要があるため、配線長さを予め引きだし長さを考慮して長くしておく必要がある。更にコネクタを用いた結線を行う場合、外部にコネクタを引き出し、結線をしてから配線収容空間内にコネクタを挿入する必要がある。上述のように、必ずしも十分なスペースを有しない細長い配線収容空間に配線よりも遥かに径の大きいコネクタと、冗長な配線を押し込むように挿入収容する必要があるため、配線作業にはなお困難性が残るという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、コネクタを収容可能な枠体を用い、配線付板状体を設置してから枠体内でコネクタを用いた配線作業を行うことが可能な配線付板状体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る配線付板状体は、板状体と、
前記板状体の所定箇所に接続されて設けられた配線と、
前記配線の先端に設けられたコネクタと、
開口部を有し、少なくとも前記コネクタを収納する枠体と、
前記枠体の前記開口部の少なくとも一部を塞ぐ蓋と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、配線付板状体を設置した状態でコネクタ付配線の結線を行うことができ、配線付板状体の設置の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る配線付板状体の一例の縦断面図である。
【
図2】シール材のシール幅とシール深さとの比の設定を説明するための図である。
【
図3】コネクタ同士の接続の一例を説明するための斜視図である。
【
図4】コネクタ同士の接続の一例を説明するための側面透過図である。
【
図5】従来の配線付板状体の設置方法の一例を示した図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る配線付板状体の製造方法を説明するための図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る配線付板状体の一例を示した図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る配線付板状体の一例を示した図である。
【
図9】本発明の第4の実施形態に係る配線付板状体の一例を示した縦断面図である。
【
図10】第4の実施形態に係る配線付板状体153の透過正面図及び側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0010】
本明細書において、方向、位置を表わす「上」「下」「左」「右」は、配線付板状体を天井面と床面との間に設置した際の「上」「下」「左」「右」を意味する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る配線付板状体150の一例の縦断面図である。第1の実施形態に係る配線付板状体150は、天井面200と床面201との間に設置されている。第1の実施形態においては、配線が上部に設けられた配線付板状体150について説明する。
【0012】
第1の実施形態に係る配線付板状体150は、天井面200側に、板状体10と、配線20と、コネクタ21と、枠体30と、蓋40と、シール材50と、緩衝材51と、バックアップ材60とを備える。また、枠体30内には、予め設置されている配線25と、コネクタ26とが設けられている。
【0013】
更に、板状体10の下端部、つまり床面201側には、下端枠体70と、セッティングブロック90が設けられ、下端枠体70と板状体10との間には、緩衝材80、81が設けられている。また、下端枠体70は、ネジ100により床面201に固定されている。
【0014】
板状体10は、所定箇所に配線20が設けられた板状の形状を有する種々の対象物を含む。例えば、調光ガラスや、ディスプレイ等の発光機能を有するガラスで構成されていてもよい。調光ガラス10は、調光機能を有するガラスであり、ガラス自体が変色して自身の透過率及び遮蔽性能を変化させることができる。これにより、日光が強い場合には遮蔽性能を高めてブラインドやカーテン等の役割を果たすことができ、日光が弱い場合には、透過率を高めて眺望を確保する、また、積極的に日光を透過して部屋の中を温める、といった機能を果たすことができる。
【0015】
板状体10は、配線20から電源供給又は配線20への放電が必要な電子デバイスを含む種々の板状の部材を対象とすることができるが、本実施形態では、説明の容易のため、板状体10を調光ガラスとして構成した例を挙げて説明する。
【0016】
調光ガラスとして構成された板状体10は、例えば、2枚のガラス板11、12の間に、調光機能材料13が挟まれるように設けられた構成を有する。調光機能材料13としては、例えば、エレクトロクロミック機能材料を用いてもよい。エレクトロクロミック機能材料は、電気的に引き起こされる可逆的な酸化還元反応によって着色したり消えたりする高分子材料であり、電圧の印加により色を変えることができる。調光機能材料13としては、光学的性質を可逆的に可変できる材料であればよく、2枚のガラス板11、12のうち少なくとも一方にコーティングすることが可能な薄膜や、2枚のガラス板11、12の間に配置可能な固体やゲル状体であってもよい。調光機能材料13は、上述のエレクトロクロミック機能材料の他、SPD(Suspended Particle Device)、液晶、高分子分散型液晶等であってもよい。2枚のガラス板11、12によって調光機能材料13を外部から保護することによって、1枚の調光ガラス10が構成される。
【0017】
調光機能材料13は、電圧を印加することにより透過率及び遮蔽性能が変化するので、電圧の印加が可能なように調光用の配線が接続される。例えば、調光機能材料13には、配線20が接続される。配線20には、図示されていない建築物の電源及びコントローラに接続される。
図1においては、調光ガラス10の上端面の所定箇所から配線20が延び、配線20の先端にはコネクタ21が設けられ、天井面200に予め設けられた配線25の先端に設けられたコネクタ26と接続可能な構成となっている。即ち、コネクタ21、26同士を接続することにより、調光機能材料13への電源供給が可能な接続状態となる。なお、配線25は天井面200よりも上方の天井裏に引き込まれ、天井裏に設けられた図示しない電源及びコントローラに接続される。
【0018】
このように、板状体10は、調光機能材料13のような、電源供給が必要な電子デバイスを備え、配線20が接続されている種々の板状部材を含む。ディスプレイのように、画素やトランジスタを備える板状体10を用いてもよいし、太陽電池のように、発生した電力を、配線20を通じて蓄電池に蓄えるために電力を出力する構成であってもよい。このように、本実施形態に係る板状体10は、電子デバイスの形態や構成、電流の流れる方向は問わない。
【0019】
配線20は、板状体10内に設けられた電子デバイスと電気的に接続されており、外部からの電力供給、又は外部への電力供給を行うために設けられる。配線20は、一般的な導線を絶縁体で被覆したケーブルを用いてよいが、余分に体積を増加させず、また、電気抵抗を小さくするため、可能な限り短くすることが好ましい。
【0020】
配線20の先端には、コネクタ21が設けられる。コネクタ21は、天井面200に設置された配線25の先端に設けられたコネクタ26との接続を容易にするために設けられる。即ち、半田付け等の加工により配線20、25同士を接続するのは作業量が多いが、コネクタ21、26同士の接続は加工が不要であり、嵌合のみであるから、配線20、25同士の電気的接続を容易に行うことができるため、設けられる。
【0021】
しかしながら、コネクタ21、26の直径は、配線20、25の直径よりも大きく、結線作業を小さなスペース内で行おうとすると、作業が困難である。後に詳細に説明するが、従来、枠体30の左側の小部屋程度のスペースしか設けられていなかったため、コネクタ21、26同士の接続は作業的に非常に困難であるという問題があった。
【0022】
そこで、本実施形態に係る配線付板状体150においては、十分な幅を有する枠体30を用い、枠体30の中で作業者が手を入れて枠体30内のスペースでコネクタ21、26同士の接続が可能なスペースを確保している。
【0023】
枠体30は、少なくともコネクタ21、26を収納する容器である。枠体30は、コネクタ21、26のみならず、配線20、25及び板状体10の上端面を収納可能なスペースを有することが好ましい。これにより、枠体30内の板状体10と接続された配線20及びコネクタ21を、板状体10の上端面を包含するように収納することができ、コネクタ21、26同士の結線作業を容易に行うことができる。
【0024】
図1に示されるように、板状体10の上端面が枠体30の左側寄りに収納され、右側に大きくスペースを確保し、その領域で板状体10の上端面の所定箇所に接続された配線20のコネクタ21と天井面200の裏から延びる配線25のコネクタ26とを容易に接続可能に構成している。
【0025】
枠体30は、例えば、外枠部30aと、仕切部30bと、貫通孔30cと、開口部30dとを有する。外枠部30aは、箱のような形状を有し、略長方体の収納空間を形成するように構成される。
図1は縦断面図であり、奥行き方向に板状体10が延びるとともに、板状体10の上端面に設けられたコネクタ21を覆うように枠体30も奥行き方向に延びる。枠体30は、板状体10の奥行き方向を総て覆うべく、通し部材として構成することが好ましい。
【0026】
外枠部30aは、細長い直方体形状、又は
図1における手前と奥の側面が設けられていないレール状の形状として構成され、少なくともコネクタ26を収納可能な幅及び深さ(又は高さ)を有し、好ましくは、外枠部30a内でコネクタ21、26同士を結線する作業が可能な程度の幅及び深さを有して構成される。
図1に示されるように、コネクタ21は、板状体10の上端面上に載置可能なスペースがあるが、天井面200側に設けられたコネクタ26はそのような載置スペースが存在しないので、板状体10と枠部30aの右側の側面との間の距離Aが、少なくともコネクタ26の直径より大きくなるように構成されることが好ましい。例えば、板状体10の右側の面と枠部30aの右側の内側面との間の距離Aは、20mm以上に設定される。距離Aは、25mm以上がより好ましく、30mm以上がさらに好ましく、35mm以上が特に好ましい。また、美観に優れた形状とするために、距離Aは50mm以下が好ましい。
【0027】
図1に示されるように、枠体30は、左側の空間と右側の空間とを仕切る仕切部30bを必要に応じて備えてもよい。仕切部30bにより仕切られた左右の空間は、同一の幅で構成してもよいし、異なる幅を有して構成してもよい。左右の空間のうち、一方の空間に板状体10に接続されたコネクタ21を収容し、他方の空間に天井面200の裏の電気配線に接続されたコネクタ26を収容し、両者を貫通孔30cを介して接続するように構成してもよい。仕切部30bを設けることにより、枠体30の強度を増加させることができる。なお、仕切部30bは必須ではなく、必要に応じて設けるようにしてもよい。
【0028】
なお、枠体30に仕切部30bを設ける場合、貫通孔30cが設けられる。貫通孔30cは、コネクタ21、26同士の接続が必要な箇所にのみ設けるようにしてよい。
【0029】
枠体30は、開口部30dを備える。即ち、密閉的な容器の形状ではなく、下端が開口部30dにより開放された形状を有する。かかる開口部30dを有することにより、コネクタ21のみならず、配線20及び板状体10の上端部を含む上部を収容することが可能となる。
【0030】
枠体30は、要求される強度と耐食性を有する限り、金属、樹脂等の種々の材料で構成してよい。例えば、アルミニウムやステンレス等の金属で枠体30を構成してもよい。
【0031】
蓋40は、枠体30の開口部30dの少なくとも一部を塞ぐために設けられる。
図1においては、板状体10と外枠部30aの側面との間の部分を塞ぐために設けられている。板状体10は、仕切部30bが存在しない場合であっても、コネクタ21、26同士の接続スペースを十分に確保する観点から、外枠部30aの左側又は右側の内側面付近に配置される場合が多い。
図1においては、外枠部30aの内側面と板状体10の主表面とが接近して設けられた左側は、板状体10と外枠部30aとの間の距離が短いため、緩衝材51を用いて板状体10と外枠部30aとを密着固定することが可能である。緩衝材51としては、例えばガスケットが挙げられる。
【0032】
しかしながら、
図1における外枠部30a内の右側においては、板状体10の主表面と外枠部30aとの間の距離Aが長く、例えば20mm以上あるため、シール材50及びバックアップ材60のみでこの間隔を塞ぐのは困難である。
【0033】
そこで、本実施形態に係る配線付板状体150では、板状体10の右側主表面と外枠部30aの内側面との間の開口部30dを塞ぐ蓋40を設けている。これにより、コネクタ21、26同士の結線は、配線20、25を蓋40で覆って隠すことができ、下から天井面200を見上げた場合にも、美観に優れた形状とすることができる。
【0034】
なお、蓋40及び枠体30は、互いに容易に係合又は嵌合できるような形状に構成することが好ましく、
図1においては、外枠部30aと仕切部30bとの間に蓋40が係合するような係合構造30e、40aを構成している。
【0035】
更に、蓋40は、端部40bがL字形に構成され、板状体10と平行な面を有し、シール材50及びバックアップ材60を板状体10の主表面と端部40bの平行面との間に設けることが可能な構成となっている。このように、蓋40を設置した後のシール性も考慮され、下から見上げても接続部は総て蓋40、枠体30、シール材50及び緩衝材51で覆い隠すことが可能に構成されており、審美性にも優れた状態で板状体10を設置することができる。
【0036】
蓋40の材料は、枠体30と同一であってもよいし、異なっていてもよい。蓋40は、枠体30と何ら問題無く係合又は嵌合でき、シール材50、緩衝材51によりシールされた状態で設置可能であれば、金属や樹脂等の種々の材料で構成することができる。
【0037】
シール材50は、蓋40と板状体10との間をシールするために設けられる。シール材50は、用途に応じて種々のシール材料を用いることができるが、例えば、1液性であり、湿気を吸って硬化する湿気硬化型のシール材料や、アルコール成分が揮発して硬化する脱アルコール型のシール材料を用いることができる。シール材50としては、例えばシリコンシーラントが挙げられる。このようなシール材料を用いる場合、空気との接触面積を広くしておいた方が、湿気も吸収し易いし、アルコールの脱気もし易いので、ある程度のシール幅を持たせることが好ましい。硬化の速度は、一般的に、シール材50のシール幅とシール深さの比に依存する。シール幅は、
図1における横方向(左右方向)の距離であり、シール材50では、板状体10の主表面と蓋40の端部40bの平行面との間の最短距離である。一方、シール深さは、シール材50の厚さ、つまり板状体10の主表面と平行な方向におけるシール材50の高さである。
【0038】
なお、
図1において、天井面200と枠体30の側面との間に隙間があるが、これは、必要に応じてシール材を充填すればよい。
【0039】
図2は、シール材50のシール幅Wとシール深さDとの比を説明するための図である。
図2に示されるように、ある間隔をシールしている場合、その間隔の幅がシール幅Wとなる。また、その間隔に垂直な方向がシール深さDとなる。シール材50のシール幅Wとシール深さDとの比W/Dは、例えば、1.0~4.0の範囲内にあることが好ましく、1.5~3.0の範囲内にあることが更に好ましく、1.8~2.3の範囲内にあることが一層好ましい。上述のように、シール幅Wがシール深さDに対して大きい値であると、空気との接触面積が大きくなり、シール材50が湿気も吸収し易いし、アルコールの脱気もし易いので、シール幅Wとシール深さDとの比W/Dは、構造上無理の無い範囲で大きく設定することが好ましい。
【0040】
図1の説明に戻る。シール材50には、2液性のシール材料も存在し、2液性のシール材料では、2液を混合した瞬間に硬化する性質を有する。しかしながら、本実施形態で用いるシール材50は、1液性のシール材料で十分であることから、上述のような構成としている。但し、本実施形態に係る配線付板状体150において、2液性のシール材料をシール材50として用いることを否定している訳ではなく、必要に応じて2液性のシール材料も用いてよい。
【0041】
バックアップ材60としては、例えばポリエチレンを用いることができる。
【0042】
蓋40は、枠体30の下端部の開口部30dを塞ぐように設けることが好ましい。蓋40により枠体30の下端面も覆って隠すことができ、審美性にも優れた取り付け状態とすることができるし、コネクタ21、26の収納空間も広くすることができるからである。しかしながら、蓋40の高さ方向(上下方向)の位置は、枠体30の下端部に限定される訳ではなく、枠体30の開口部30dを適切に塞ぐことができる限り、用途に応じて種々の位置とすることができる。
【0043】
枠体30及び蓋40の高さは、天井面200と同一面上に設定してもよいし、異なる高さに設定してもよい。蓋40を天井面200と異なる高さに設定する場合、用途に応じて種々の高さとしてよいが、一般的には、やや天井面200よりも下方の高さに設定し、下方に少しだけ突出するように設定するのが一般的である。
【0044】
このように、本実施形態に係る配線付板状体150によれば、枠体30内でコネクタ21、26同士の十分な結線作業スペースを確保することができる。また、結線後に蓋40で開口部30dを塞ぐことにより、コネクタ21、26同士の接続や配線20、25を覆い隠すことができ、高い審美性を有する取り付け状態とすることができる。
【0045】
次に、配線付板状体150の下端部の構成について説明する。板状体10の下端部は、板状体10を適切に固定できる限り、種々の取り付け構成を採用することができる。
図1は、そのような取り付け構成の一例を示している。
【0046】
板状体10の下端には、下端枠体70が設けられる。下端枠体70は、板状体10の下辺を支持する。下端枠体70は、配線を考慮する必要が無いので、枠体30と同様の形状を有する必要は無く、板状体10の下端部を固定できればよい。
図1においては、下端枠体70は、枠状の形状を有し、左側と右側から挟むようにして板状体10の下端部を支持する。下端枠体70は、ベース部材71と、固定部材72とを有する。
【0047】
ベース部材71は、板状体10の下端部を固定するための部材である。ベース部材71は、床面201に密着固定される基部71aと、基部71aから垂直に上方に延びる側面固定部71bとを有し、L字形の断面形状を有する。ベース部材71は、板状体10の下端面を、セッティングブロック90を介して下方から支持する。ベース部材71は、例えば、ネジ100により床面201に締結固定され、左側で鉛直上方に延びる側面固定部71bを支持している。側面固定部71bの先端には、緩衝材80が設けられてもよい。緩衝材80としては、例えばガスケットが挙げられる。
【0048】
固定部材72は、板状体10の下端部の右側を固定するための部材である。固定部材72は、例えば、形状がL字形を有する。固定部材72は、ベース部材71と係合部73で係合し、板状体10の下端部を右側から固定している。固定部材72の先端にも、緩衝材81が設けられ、緩衝材81を介して弾性的に板状体10の右側の面を固定支持してよい。緩衝材81としては、例えばガスケットが挙げられる。
【0049】
板状体10の下端と、ベース部材71の基部71aとの間には、セッティングブロック90が設けられていてもよい。これにより、板状体10の下端を安定して支持することができる。セッティングブロック90は、板状体10を支持可能な強度を有すれば、種々の材料から構成されてよい。また、セッティングブロック90は、板状体10の下端に沿って、2ピース設けられる構成が板状体10を安定して支持するために好ましいが、1ピースだけ設けられる構成としてもよいし、3ピース以上設けられる構成としてもよい。
【0050】
ベース部材71及び固定部材72は、板状体10を支持可能な強度を有すれば、種々の材料から構成されてよいが、例えば、アルミニウム等の金属材料から構成されてもよい。また、樹脂等から構成されてもよい。このように、下端枠体70は、必要な強度を有する限り、用途に応じて種々の材料から構成され得る。
【0051】
なお、下端枠体70には、枠体30の開口部30dに設けられていた蓋40に対応する部材は設けられていない。調光機能材料13は、外側の1つの端面又はその近傍で配線20と接続していればよいので、上端面において配線20及びコネクタ21と接続しているが、下端部において、床の下方に延出するように配線を設けることも可能であり、床面201に沿って延出するように配線を設けることも可能である。そのような下端部に配線を備える配線付板状態150については、後に詳述する。
【0052】
図3は、コネクタ21、26同士の接続の一例を説明するための斜視図である。
図3に示されるように、コネクタ21は配線20よりも太い径を有し、コネクタ26も配線25よりも太い径を有する。
図3に示されるように、枠体30内にコネクタ21、26同士を接続可能なスペースがあるので、例えば、指を枠体30内に入れて作業を行うことも可能である。また、
図3よりも枠体30内にスペースの余裕が無い場合には、コネクタ21、26を枠体30の下端よりも下方に引き出し、コネクタ21、26同士を接続してから枠体30内に再び収納することも可能である。いずれにしても、板状体10を床面201上に載置又は設置した状態での結線作業が可能である。
【0053】
図4は、コネクタ21、26同士の接続の一例を説明するための側面透過図である。
図4に示される通り、例えば、配線20、25が板状体10の幅方向に沿って互いに反対側から延び、コネクタ21、26同士を接続しようとしている状態が示されている。このような結線作業は、板状体10を床面201上に載置又は設置した状態であれば、容易に行うことができる。
【0054】
次に、配線付板状体の製造方法について説明する。
【0055】
図5は、従来の配線付板状体の製造方法の一例を示した図である。従来、枠体130が非常に狭いため、板状体10を設置する際に、板状体10を枠体130内に挿入する際に、板状体10を浮かせた状態で、コネクタ21、26同士の結線を行う必要があった。このため、安定した状態で結線作業を行うことが困難であり、また、結線と板状体10の設置は、必ず同時に行わなければならないという制約があった。
【0056】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る配線付板状体150の製造方法を説明するための図である。
【0057】
図6(a)は、板状体設置工程の一例を示した図である。板状体設置工程においては、枠体30内にコネクタ21が入るように板状体10を設置する。なお、コネクタ21を枠体30内に収納すると、配線20及び配線が接続された板状体10の上端面又は上端部も枠体30内に収納される場合が多い。
【0058】
図6(b)は、結線工程の一例を示した図である。結線工程においては、コネクタ21、とコネクタ26との接続が行われ、配線20と配線25とが電気的に接続される。コネクタ21、26同士の接続作業は、枠体30内で行ってもよいし、枠体30の下方で行い、接続し終えてから接続されたコネクタ21、26を枠体30内に再度収納してもよい。
【0059】
図6(c)は、蓋設置工程の一例を示した図である。蓋設置工程では、蓋40が枠体30の開口部30dを塞ぐように設置される。これにより、板状体10の設置が終了し、配線付板状体150が設置され、製造される。
【0060】
図6(a)~(c)の各工程は、連続して行うことが好ましいが、個々の工程が独立しており、各工程で作業を中止することが可能であるから、間隔を空けても何ら問題は無い。例えば、
図6(a)に示されるように、板状体10を設置した後、電気工事業者を呼んだり、蓋40を取り付ける業者を呼んだりする都合がつかない場合には、そのまま放置しておき、後日に作業を行うことも可能である。
【0061】
図5に示した従来の配線付板状体の製造方法では、コネクタ21、26同士の結線と、板状体10の設置を同時に行う必要があるため、本実施形態に係る配線付板状体の製造方法のように、製造途中で作業を停止することはできないため、制約が大きく不便である。
【0062】
このように、本実施形態に係る配線付板状体の製造方法では、配線付板状体30を容易かつ柔軟に設置及び製造することができ、作業性を高めることができる。
【0063】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態に係る配線付板状体151の一例を示した図である。第2の実施形態に係る配線付板状体151は、枠体31の構成が、第1の実施形態に係る配線付板状体150と異なっている。
【0064】
図7に示されるように、第2の実施形態に係る配線対板状体151では、枠体31の幅が小さくなり、蓋41の幅も非常に小さくなっているが、枠体31と蓋41との係合は適切に行われる構成となっている。このような構成であっても、枠体31はコネクタ21、26の直径よりも幅が大きく、指を入れたり、又はコネクタ21、26を枠体31の下端よりも下方に引き出したりするスペースは十分にあるので、やはり作業性を確保でき、容易に配線付板状体151の設置・製造を行うことができる。
【0065】
また、蓋41で開口部31dを覆うことができるので、完成後の審美性も保つことができる。このように、所定の収納スペースを有する枠体31と、枠体31の開口部31dを適切に塞ぐことができる蓋41を設けることにより、より狭いスペースであっても、高い作業性を実現することができる。
【0066】
このように、枠体31及び蓋41の形状は、枠体31が板状体10を設置してからのコネクタ21、26同士の接続を可能とするスペースを有し、接続後に蓋41で枠体31の開口31dを塞ぐことが可能である限り、用途に応じて種々の構成とすることができる。
【0067】
また、
図7において、下端枠体75の形状が
図1に示す下端枠体70と異なっており、長方形で上辺が無い断面形状となっている。また、開放された上辺部分は、シール材55とバックアップ材65により塞がれている。バックアップ材65上にシール材55が設けられ、板状体10の下部を両面から挟むようにして板状体10を支持している。板状体10の下端はセッティングブロック90上に載置されて支持され、下端枠体75がネジ100で床に固定されている点は、
図1に示す下端枠体70と同様である。このように、下端枠体75も用途に応じて種々の形状とすることができる。
【0068】
なお、第2の実施形態に係る配線付板状体151の製造方法は、第1の実施形態に係る配線付板状体150の製造方法と同様であるので、その説明を省略する。
【0069】
また、シール材50のシール幅W及びシール深さDについても、第1の実施形態において説明した内容をそのまま適用することができる。
【0070】
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態に係る配線付板状体152の一例を示した図である。第3の実施形態に係る配線付板状体152は、板状体10に加え、第2の板状体110を備え、枠体30に加えて、第2の板状体110を保持する枠体32が付加されている点で、第1の実施形態に係る配線付板状体150と異なっている。
【0071】
枠体30と枠体32は、一体的に構成され、全体として枠体33を構成する。枠体32は、枠体30の右側の外側面との間にスペースを形成し、シール材52により第2の板状体110を保持している。
【0072】
第2の板状体110は、配線を有しないガラス等の種々の板状の面材を設置することが可能である。また、シール材52も、第2の板状体110を適切に保持できれば、種々のシール材料を用いることができる。第2の板状体110は、配線を有しないため、蓋を設ける必要は無く、シール材52で固定的にシールすれば十分である。
【0073】
枠体32は、第2の板状体110が板状体10から大きく離間して設けられる場合には、枠体30と別体として独立して構成してもよい。しかしながら、枠体30と一体として構成可能な場合には、
図8に示されるように、枠体30の外側面等を利用することができ、第2の板状体110を支持するのに効果的であるとともに、配線付板状体152を全体としてコンパクトに構成することができる。
【0074】
このように、枠体33を複数の板状体10、110を支持することが可能に構成することにより、幅広い用途に配線付板状体152を適用することができる。
【0075】
[第4の実施形態]
図9は、本発明の第4の実施形態に係る配線付板状体153の一例を示した縦断面図である。第4の実施形態に係る配線付板状体153においては、板状体10の配線20、コネクタ21が設けられている端面を下側に配置している。これに伴い、床面201に枠体34及び蓋42が設けられた構成となっている。
【0076】
下端部に配線20及びコネクタ21が配置されるように板状体10を設置する場合であっても、枠体34及び蓋42の構成は、第1乃至第3の実施形態と大きく変わらない。第4の実施形態において、第1乃至第3の実施形態と大きく異なる点は、セッティングブロック90が板状体10の下端面の下方に配置され、板状体10を下方から支持している点である。そのため、枠体34の深さは上部に設ける場合よりも浅くなり、セッティングブロック90上に板状体10を載置した状態で、適切にコネクタ21、26同士が接続される空間を形成する形状を有するように枠体34は構成される。
【0077】
図10は、第4の実施形態に係る配線付板状体153の透過正面図及び側断面図である。
図10(a)は、第4の実施形態に係る配線付板状体153の透過正面図であり、
図10(b)は、第4の実施形態に係る配線付板状体153の側断面図である。
【0078】
図10(a)に示される通り、セッティングブロック90は、複数点、例えば、板状体10の正面から見て両側の2点で板状体10を支持する。そして、コネクタ21、26同士の接続は、2個のセッティングブロック90の間で行う。基本的な構成は、第1乃至第3の実施形態に係る配線付板状体150~153と同様であり、枠体34に収容された状態でコネクタ21、26同士を接続すればよい。
【0079】
なお、セッティングブロック90は、板状体10を支持するために最低2個必要であるが、必要に応じて3個以上設けてもよい。コネクタ21、26同士は、セッティングブロック90の間で行えばよいので、セッティングブロック90の個数が増加しても、支障はない。
【0080】
このように、用途に応じて、板状体10の配線20及びコネクタ21を下端に配置することも可能である。この場合、当然に床面201側に配線25及びコネクタ26が設けられる。また、あまり多くは無いが、板状体10の上端部及び下端部の双方に配線20が設けられている場合には、実施形態1乃至3と実施形態4を組み合わせて配線付板状体を構成すればよい。
【0081】
このように、本実施形態に係る配線付板状体150~153は、用途に応じて種々の変形が可能である。
【0082】
本実施形態に係る配線付板状体によれば、板状体を床面上に設置した状態で、枠体内で板状体に接続されている配線のコネクタを天井面又は床面に設けられている配線のコネクタと接続することができ、作業性を高めることができる。また、完成後も、コネクタ同士の接続部分を蓋で覆うことができ、意匠的にも優れた形状を維持しつつ、配線付板状体を構成することができる。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0084】
10 板状体
20、25 配線
21、26 コネクタ
30~34 枠体
40~42 蓋
50、52、55 シール材
60、65 バックアップ材
90 セッティングブロック
150~153 配線付板状体
200 天井面
201 床面