(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075411
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】極端紫外光生成システム、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20230524BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188299
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】新美 剛太
(72)【発明者】
【氏名】宮下 光太郎
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA24
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB20
4C092AC09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ダウンタイムを低減し得る極端紫外光生成システムを提供する。
【解決手段】極端紫外光生成システムは、チャンバ2aと、チャンバ内の第1の点を含むプラズマ生成領域25にターゲット物質27を供給するターゲット供給部26と、ターゲット物質に照射されるパルスレーザ光を通過させるウインドウ21と、第1の点で生成された極端紫外光を反射して第2の点292a,292bに集光するEUV集光ミラー23aと、EUV集光ミラーによって反射された極端紫外光の光路であって第1及び第2の点の間に設けられた平面ミラー43と、平面ミラーの姿勢を変更して第2の点を切り替えるアクチュエータ45と、第2の点の一方を通過した極端紫外光が外部装置に入射可能に構成された接続部29aと、第2の点の他方を通過した極端紫外光が入射する第1のEUV計測部60bと、外部装置からの信号に基づきアクチュエータを制御するプロセッサ5と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内の第1の点を含むプラズマ生成領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
前記ターゲット物質に照射されるパルスレーザ光を通過させるウインドウと、
前記第1の点で生成された極端紫外光を反射して第2の点に集光するEUV集光ミラーと、
前記EUV集光ミラーによって反射された前記極端紫外光の光路であって前記第1及び第2の点の間に設けられた平面ミラーと、
前記平面ミラーの姿勢を変更して前記第2の点を第1の位置と第2の位置とに切り替えるアクチュエータと、
前記第1の位置を通過した前記極端紫外光が入射する外部装置に接続可能に構成された接続部と、
前記第2の位置を通過した前記極端紫外光が入射する第1のEUV計測部と、
前記外部装置からの信号に基づいて前記アクチュエータを制御するプロセッサと、
を備える、極端紫外光生成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記アクチュエータは、前記平面ミラーが、前記第1の点と、前記第1の位置と、前記第2の位置と、を含む仮想の平面に垂直な軸周りに回転するように、前記平面ミラーの姿勢を変更する、
極端紫外光生成システム。
【請求項3】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記EUV集光ミラーから前記第2の点までの前記極端紫外光の光路が、前記第1の点と、前記第1の位置と、前記第2の位置と、を含む仮想の平面上に位置する、
極端紫外光生成システム。
【請求項4】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記第2の点を前記第1の位置とした場合の前記平面ミラーの反射面と前記極端紫外光の光路軸との第1のBragg角の絶対値と、前記第2の点を前記第2の位置とした場合の前記反射面と前記光路軸との第2のBragg角の絶対値とが等しい、
極端紫外光生成システム。
【請求項5】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記平面ミラーは反射膜を有する反射面を有し、前記アクチュエータは、前記反射面が前記極端紫外光の光路に位置したまま前記平面ミラーが回転するように、前記平面ミラーの姿勢を変更する、
極端紫外光生成システム。
【請求項6】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記接続部は、前記外部装置の代わりに第2のEUV計測部に接続可能に構成され、
前記プロセッサは、前記第2の点を前記第1の位置として前記第2のEUV計測部により前記極端紫外光を計測した結果に基づいて、前記EUV集光ミラー及び前記平面ミラーのいずれかのアライメント調整を行う、
極端紫外光生成システム。
【請求項7】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記接続部は、前記外部装置の代わりに第2のEUV計測部に接続可能に構成され、
前記プロセッサは、前記第2の点を前記第1の位置として前記第2のEUV計測部により前記極端紫外光を計測した結果と、前記第2の点を前記第2の位置として前記第1のEUV計測部により前記極端紫外光を計測した結果と、に基づいて前記第1のEUV計測部の較正データを生成する、
極端紫外光生成システム。
【請求項8】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記信号は、前記外部装置における前記極端紫外光の計測結果が第1の条件を満たさないことを示すEUV光NG信号を含み、
前記プロセッサは、前記外部装置から前記EUV光NG信号が出力された場合に前記第2の点を前記第2の位置とするよう前記アクチュエータを制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項9】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記第1のEUV計測部による計測結果が第2の条件を満たさない場合に前記プラズマ生成領域のアライメント調整を行う、
極端紫外光生成システム。
【請求項10】
請求項9に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記アライメント調整は、前記ターゲット供給部の位置調整を含む、
極端紫外光生成システム。
【請求項11】
請求項9に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記パルスレーザ光を出力するレーザシステムをさらに含み、
前記アライメント調整は、前記ターゲット供給部の位置調整及び前記パルスレーザ光の生成タイミング調整のいずれかを含む、
極端紫外光生成システム。
【請求項12】
請求項9に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記第1のEUV計測部による計測結果が前記第2の条件を満たす場合に前記極端紫外光の前記外部装置への出力を停止した状態で待機する、
極端紫外光生成システム。
【請求項13】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記第2の点を前記第1の位置とした場合の前記平面ミラーの反射面と前記極端紫外光の光路軸との第1のBragg角の絶対値よりも、前記第2の点を前記第2の位置とした場合の前記反射面と前記光路軸との第2のBragg角の絶対値が大きい、
極端紫外光生成システム。
【請求項14】
請求項13に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記第1のEUV計測部で得られた前記極端紫外光のパルスエネルギーに補正係数を乗算することにより、前記外部装置に入射する前記極端紫外光のパルスエネルギーを算出する、
極端紫外光生成システム。
【請求項15】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、
前記第1のEUV計測部による計測結果が第2の条件を満たさない場合に、前記ターゲット供給部の位置調整を行い、
前記位置調整を行っても前記第1のEUV計測部による計測結果が前記第2の条件を満たさない場合に、前記極端紫外光生成システムのメンテナンスのために前記極端紫外光の生成を停止する、
極端紫外光生成システム。
【請求項16】
請求項15に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記メンテナンスをする場合、前記プロセッサは、前記メンテナンスをすることを前記外部装置に通知する、
極端紫外光生成システム。
【請求項17】
請求項15に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記メンテナンスは、前記EUV集光ミラー及び前記平面ミラーのいずれかの交換を含む、
極端紫外光生成システム。
【請求項18】
請求項17に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記接続部は、前記外部装置の代わりに第2のEUV計測部に接続可能に構成され、
前記EUV集光ミラー及び前記平面ミラーのいずれかを交換した場合に、前記第2の点を前記第1の位置として前記第2のEUV計測部により前記極端紫外光を計測した結果に基づいて、前記EUV集光ミラー及び前記平面ミラーのいずれかのアライメント調整を行う、
極端紫外光生成システム。
【請求項19】
電子デバイスの製造方法であって、
チャンバと、
前記チャンバ内の第1の点を含むプラズマ生成領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
前記ターゲット物質に照射されるパルスレーザ光を通過させるウインドウと、
前記第1の点で生成された極端紫外光を反射して第2の点に集光するEUV集光ミラーと、
前記EUV集光ミラーによって反射された前記極端紫外光の光路であって前記第1及び第2の点の間に設けられた平面ミラーと、
前記平面ミラーの姿勢を変更して前記第2の点を第1の位置と第2の位置とに切り替えるアクチュエータと、
前記第1の位置を通過した前記極端紫外光が入射する外部装置に接続可能に構成された接続部と、
前記第2の位置を通過した前記極端紫外光が入射する第1のEUV計測部と、
前記外部装置からの信号に基づいて前記アクチュエータを制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成システムによって前記極端紫外光を生成し、
前記極端紫外光を露光装置である前記外部装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記極端紫外光を露光する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
電子デバイスの製造方法であって、
チャンバと、
前記チャンバ内の第1の点を含むプラズマ生成領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、
前記ターゲット物質に照射されるパルスレーザ光を通過させるウインドウと、
前記第1の点で生成された極端紫外光を反射して第2の点に集光するEUV集光ミラーと、
前記EUV集光ミラーによって反射された前記極端紫外光の光路であって前記第1及び第2の点の間に設けられた平面ミラーと、
前記平面ミラーの姿勢を変更して前記第2の点を第1の位置と第2の位置とに切り替えるアクチュエータと、
前記第1の位置を通過した前記極端紫外光が入射する外部装置に接続可能に構成された接続部と、
前記第2の位置を通過した前記極端紫外光が入射する第1のEUV計測部と、
前記外部装置からの信号に基づいて前記アクチュエータを制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成システムによって生成した前記極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光生成システム、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV)光を生成するEUV光生成装置と縮小投影反射光学系(reduced projection reflection optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にパルスレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/288937号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/140512号明細書
【特許文献3】特開2007-109451号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2010/284511号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光生成システムは、チャンバと、チャンバ内の第1の点を含むプラズマ生成領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、ターゲット物質に照射されるパルスレーザ光を通過させるウインドウと、第1の点で生成された極端紫外光を反射して第2の点に集光するEUV集光ミラーと、EUV集光ミラーによって反射された極端紫外光の光路であって第1及び第2の点の間に設けられた平面ミラーと、平面ミラーの姿勢を変更して第2の点を第1の位置と第2の位置とに切り替えるアクチュエータと、第1の位置を通過した極端紫外光が入射する外部装置に接続可能に構成された接続部と、第2の位置を通過した極端紫外光が入射する第1のEUV計測部と、外部装置からの信号に基づいてアクチュエータを制御するプロセッサと、を備える。
【0006】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、チャンバと、チャンバ内の第1の点を含むプラズマ生成領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、ターゲット物質に照射されるパルスレーザ光を通過させるウインドウと、第1の点で生成された極端紫外光を反射して第2の点に集光するEUV集光ミラーと、EUV集光ミラーによって反射された極端紫外光の光路であって第1及び第2の点の間に設けられた平面ミラーと、平面ミラーの姿勢を変更して第2の点を第1の位置と第2の位置とに切り替えるアクチュエータと、第1の位置を通過した極端紫外光が入射する外部装置に接続可能に構成された接続部と、第2の位置を通過した極端紫外光が入射する第1のEUV計測部と、外部装置からの信号に基づいてアクチュエータを制御するプロセッサと、を備える極端紫外光生成システムによって極端紫外光を生成し、極端紫外光を露光装置である外部装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含む。
【0007】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、チャンバと、チャンバ内の第1の点を含むプラズマ生成領域にターゲット物質を供給するターゲット供給部と、ターゲット物質に照射されるパルスレーザ光を通過させるウインドウと、第1の点で生成された極端紫外光を反射して第2の点に集光するEUV集光ミラーと、EUV集光ミラーによって反射された極端紫外光の光路であって第1及び第2の点の間に設けられた平面ミラーと、平面ミラーの姿勢を変更して第2の点を第1の位置と第2の位置とに切り替えるアクチュエータと、第1の位置を通過した極端紫外光が入射する外部装置に接続可能に構成された接続部と、第2の位置を通過した極端紫外光が入射する第1のEUV計測部と、外部装置からの信号に基づいてアクチュエータを制御するプロセッサと、を備える極端紫外光生成システムによって生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、LPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【
図2】
図2は、比較例に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【
図3】
図3は、EUV集光ミラーによるEUV光の反射率を示すグラフである。
【
図4】
図4は、平面ミラーによるEUV光の反射率を示すグラフである。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【
図8】
図8は、
図6に示される平面ミラー、ホルダ、及びアクチュエータの拡大図である。
【
図9】
図9は、
図7に示される平面ミラー、ホルダ、及びアクチュエータの拡大図である。
【
図10】
図10は、
図8に示される平面ミラー、ホルダ、及びアクチュエータを別の方向から示す。
【
図11】
図11は、第1の実施形態において第1のEUV計測部を較正するための構成を示す。
【
図12】
図12は、第1の実施形態におけるプロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第1の実施形態におけるプロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、第1の実施形態において第1のEUV計測部を較正する動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、較正データに含まれる較正曲線の例を示すグラフである。
【
図16】
図16は、第2の実施形態に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【
図17】
図17は、第2の実施形態に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【
図18】
図18は、
図16に示される平面ミラー、ホルダ、及びアクチュエータの拡大図である。
【
図19】
図19は、
図17に示される平面ミラー、ホルダ、及びアクチュエータの拡大図である。
【
図20】
図20は、第2の実施形態において第1のEUV計測部を較正する動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、第3の実施形態におけるプロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、第3の実施形態におけるプロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、EUV光生成システムに接続された露光装置の構成を概略的に示す。
【
図24】
図24は、EUV光生成システムに接続された検査装置の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0009】
<内容>
1.EUV光生成システム11の全体説明
1.1 構成
1.2 動作
2.比較例
2.1 構成
2.2 動作
2.3 比較例の課題
3.第1のEUV計測部60bによりEUV光を計測するEUV光生成システム11b
3.1 構成
3.2 動作
3.2.1 第1のEUV計測部60bを較正する動作
3.2.2 外部装置6にEUV光を伝送する動作
3.2.3 外部装置6からEUV光NG信号を受信した場合の動作
3.2.3.1 計測結果が第2の条件を満たす場合
3.2.3.2 計測結果が第2の条件を満たさない場合
3.2.4 第1のEUV計測部60bを較正する動作の詳細
3.3 作用
4.第1のEUV計測部60bの配置の自由度を向上したEUV光生成システム11c
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用
5.アライメント以外の不調を解消できるEUV光生成システム11b
5.1 構成及び動作
5.2 作用
6.その他
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.EUV光生成システム11の全体説明
1.1 構成
図1に、LPP式のEUV光生成システム11の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、レーザシステム3とともに用いられる。本開示においては、EUV光生成装置1及びレーザシステム3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。EUV光生成装置1は、チャンバ2及びターゲット供給部26を含む。チャンバ2は、密閉可能な容器である。ターゲット供給部26は、ターゲット物質を含むターゲット27をチャンバ2内部に供給する。ターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよい。
【0012】
チャンバ2の壁には、貫通孔が備えられている。その貫通孔は、ウインドウ21によって塞がれ、ウインドウ21をレーザシステム3から出力されるパルスレーザ光32が透過する。チャンバ2の内部には、回転楕円面形状の反射面を備えたEUV集光ミラー23が配置される。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を備える。EUV集光ミラー23の表面には、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成される。EUV集光ミラー23は、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点292に位置するように配置される。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が備えられ、貫通孔24をパルスレーザ光33が通過する。
第1の焦点から第2の焦点へ向かう方向をZ方向とする。Z方向に垂直なターゲット27の進行方向をY方向とする。Y方向とZ方向との両方に垂直な方向をX方向とする。
【0013】
EUV光生成装置1は、プロセッサ5、ターゲットセンサ4等を含む。プロセッサ5は、制御プログラムが記憶されたメモリ501と、制御プログラムを実行するCPU(central processing unit)502と、を含む処理装置である。プロセッサ5は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。ターゲットセンサ4は、ターゲット27の存在、軌跡、位置、速度の内の少なくとも1つを検出する。ターゲットセンサ4は、撮像機能を備えてもよい。
【0014】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部と外部装置6の内部とを連通させる接続部29を含む。外部装置6の例については、
図23及び
図24を参照しながら後述する。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が備えられる。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点に位置するように配置される。
【0015】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光伝送装置34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含む。レーザ光伝送装置34は、レーザ光の伝送状態を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備える。
【0016】
1.2 動作
図1を参照して、EUV光生成システム11の動作を説明する。レーザシステム3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光伝送装置34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射する。パルスレーザ光32は、レーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33としてターゲット27に照射される。
【0017】
ターゲット供給部26は、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力する。ターゲット27には、パルスレーザ光33が照射される。パルスレーザ光33が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射される。放射光251に含まれるEUV光は、EUV集光ミラー23によって他の波長域の光に比べて高い反射率で反射される。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光252aは、中間集光点292で集光され、外部装置6に出力される。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0018】
プロセッサ5は、EUV光生成システム11全体を制御する。プロセッサ5は、ターゲットセンサ4の検出結果を処理する。ターゲットセンサ4の検出結果に基づいて、プロセッサ5は、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御する。さらに、プロセッサ5は、レーザシステム3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御する。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0019】
2.比較例
2.1 構成
図2は、比較例に係るEUV光生成システム11aの構成を概略的に示す。本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。
図2に示されるように、比較例に係るEUV光生成システム11aは、チャンバ2の代わりにチャンバ2aを含み、接続部29の代わりに接続部29aを含む。レーザシステム3はプリパルスレーザ装置PPLとメインパルスレーザ装置MPLとを含む。
【0020】
レーザ光伝送装置34は、高反射ミラー34a及び34cと、ビームコンバイナ34bと、を含む。高反射ミラー34aは、プリパルスレーザ装置PPLから出力されたプリパルスレーザ光の光路に配置されている。ビームコンバイナ34bは、メインパルスレーザ装置MPLから出力されたメインパルスレーザ光の光路と高反射ミラー34aによって反射されたプリパルスレーザ光の光路とが重なる位置に配置されている。高反射ミラー34cは、ビームコンバイナ34bによって反射されたメインパルスレーザ光とビームコンバイナ34bを透過したプリパルスレーザ光との共通の光路に配置されている。
【0021】
チャンバ2aの内部には、レーザ光集光ミラー22の代わりにレーザ光集光光学系22aが設けられ、EUV集光ミラー23の代わりにEUV集光ミラー23aが設けられている。EUV集光ミラー23aは、チャンバ2aの内部のプラズマ生成領域25に位置する第1の焦点で生成されたEUV光を反射して第2の点292aに集光するように構成されている。EUV集光ミラー23aの第1の焦点は本開示における第1の点に相当する。
【0022】
チャンバ2aの内部には、さらに平面ミラー43が収容されている。平面ミラー43は、EUV集光ミラー23aによって反射されたEUV光252aの光路であって、EUV集光ミラー23aの第1の焦点と第2の点292aとの間に位置する。平面ミラー43は、ホルダ44に支持されている。
【0023】
EUV集光ミラー23aの表面にはモリブデンとシリコンの多層反射膜が形成されているのに対し、平面ミラー43の表面にはルテニウムの反射膜が形成されている。
図3はEUV集光ミラー23aによるEUV光の反射率を示すグラフであり、
図4は平面ミラー43によるEUV光の反射率を示すグラフである。
図3及び
図4の各々の横軸はBragg角θを示す。
図5はBragg角θの定義を示す。本開示におけるBragg角θとは、ミラーの反射面とEUV光の光路軸との角度である。光路軸とは光路の中心軸を意味する。
図3及び
図4のいずれにおいても、Bragg角θが0°に近いかすり入射においては高い反射率を示すが、Bragg角θが大きくなると反射率が急激に低下する。
図3においては、Bragg角θが90°に近くなると多層膜における干渉により約70%の反射率を得ることができる。
【0024】
そこで、EUV集光ミラー23aは、プラズマ生成領域25から放射した光のBragg角θが74°以上、90°以下となるように配置される。平面ミラー43は、EUV集光ミラー23aによって反射されたEUV光252aのBragg角θが0°より大きく、30°以下となるように配置される。
但し、本開示はこれに限定されず、平面ミラー43にモリブデンとシリコンの多層反射膜が形成されてもよい。その場合、平面ミラー43は、Bragg角θが0°より大きく、18°以下となるように配置される。
【0025】
図2を再び参照し、チャンバ2aには、複数のEUV光検出センサ41が取り付けられている。EUV光検出センサ41は、複数の方向からプラズマ生成領域25を観測し、EUV光の強度分布を検出するように構成されている。
【0026】
ターゲット供給部26及びEUV集光ミラー23aは、図示しない移動ステージによって移動可能に構成されている。レーザ光伝送装置34に含まれる高反射ミラー34c等の光学素子は図示しないアクチュエータによって姿勢を制御可能に構成されている。
【0027】
チャンバ2aは、接続部29aを介して外部装置6に接続可能に構成されている。接続部29a内部には、ゲートバルブGBaと、アパーチャが形成された壁291aとが備えられる。壁291aは、そのアパーチャが第2の点292aに位置するように配置される。
【0028】
2.2 動作
プリパルスレーザ装置PPLから出力されたプリパルスレーザ光の光路及びメインパルスレーザ装置MPLから出力されたメインパルスレーザ光の光路は、ビームコンバイナ34bによってほぼ一致させられる。プリパルスレーザ光は液滴状のターゲット27に照射され、ターゲット27を分散させる。メインパルスレーザ光は、プリパルスレーザ光が照射されて分散したターゲット27に照射され、ターゲット27をプラズマ化させる。プラズマから放射された光のうちのEUV光252aがEUV集光ミラー23aによって反射される。
EUV光252aは平面ミラー43によって反射され、接続部29a内の第2の点292aを通って外部装置6に入射する。
【0029】
プロセッサ5は、EUV光検出センサ41によって検出されたEUV光の強度分布から、プラズマ生成領域25で発生するEUV光の重心位置を計算し、この重心位置に基づいて、EUV集光ミラー23aの位置、ターゲット供給部26の位置、及びプリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光の生成タイミングを制御する。プロセッサ5は、プリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光がターゲット27に照射されるようにレーザ光伝送装置34に含まれる光学素子の姿勢を制御する。
【0030】
EUV集光ミラー23aを移動させることによって第1の焦点の位置が変化する。ターゲット供給部26を移動させるとターゲット27の軌道が変化するため、プラズマ生成領域25で発生するEUV光のX方向及びZ方向の重心位置が変化する。また、プリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光の生成タイミングを変化させると、これらのレーザ光によって照射されるターゲット27の軌道上の位置が変化するため、プラズマ生成領域25で発生するEUV光のY方向の重心位置が変化する。
【0031】
外部装置6は、EUV光を用いた半導体ウエハの露光又はマスクの検査を行う装置であって、EUV光が必要な条件を満たしているか計測しながら露光又は検査を行う。この条件は外部装置6が定める条件であって、本開示における第1の条件に相当する。第1の条件は、例えば、EUV光のパルスエネルギー、EUV光の光路軸に垂直な断面の光強度分布の重心位置及びスポットサイズを含む。EUV光が第1の条件を満たしていない場合に、外部装置6はEUV光NG信号をプロセッサ5に送信する。プロセッサ5は、外部装置6からEUV光NG信号を受信すると、外部装置6へのEUV光の伝送を停止する。
【0032】
2.3 比較例の課題
外部装置6においてEUV光が第1の条件を満たしていない場合に、その原因がEUV光生成システム11aにあるのか、外部装置6にあるのかを判断するためにEUV光生成システム11aと外部装置6とを切り離す必要が生じることがある。EUV光生成システム11aと外部装置6とを一旦切り離すと、外部装置6との再接続及びEUV光生成システム11aの再起動の工程が必要となり、ダウンタイムが大きくなる。
【0033】
また、EUV光生成システム11aは、第2の点292aにおけるEUV光252aのプロファイルの変化を検出することができない。すなわち、外部装置6からEUV光NG信号を受信しない限り、第2の点292aにおけるEUV光252aの異常の有無を判定できない。このため、EUV光生成システム11aの適切な制御が困難な場合がある。
【0034】
以下に説明する幾つかの実施形態においては、平面ミラー43の姿勢を変更することにより、第1のEUV計測部60bを用いて第2の点292bにおけるEUV光252aの計測を可能としている。
【0035】
3.第1のEUV計測部60bによりEUV光を計測するEUV光生成システム11b
3.1 構成
図6及び
図7は、第1の実施形態に係るEUV光生成システム11bの構成を概略的に示す。EUV光生成システム11bは、
図2に示される構成に加えて、接続部29bと、アクチュエータ45と、第1のEUV計測部60bと、表示部51と、を含む。
【0036】
アクチュエータ45は、ホルダ44に支持された平面ミラー43の姿勢を変更可能な回転ステージである。アクチュエータ45は、X方向に平行な軸周りに平面ミラー43を回転させる。X方向はEUV集光ミラー23aの第1の焦点と、第2の点292a及び292bと、を含む第1の仮想の平面に垂直である。アクチュエータ45が平面ミラー43の姿勢を変更することにより、EUV集光ミラー23aによってEUV光252aが集光される第2の点292aは、別の位置の第2の点292bに移動可能となっている。本開示では、第2の点292aの位置を第1の位置とし、第2の点292bの位置を第2の位置とする。第2の点292a及び292bは、XZ面に平行でプラズマ生成領域25を通る第2の仮想の平面による鏡像の関係にある。EUV集光ミラー23aの第1の焦点と、第2の点292a及び292bと、を含む第1の仮想の平面はYZ面に平行であり、EUV集光ミラー23aから第2の点292aまでのEUV光252aの光路及びEUV集光ミラー23aから第2の点292bまでのEUV光252aの光路は、第1の仮想の平面上に位置する。
【0037】
第1のEUV計測部60bは、第2の点292bを通過したEUV光252aの光路に位置する。第1のEUV計測部60bは、蛍光板61bと、イメージセンサ62bと、を含む。蛍光板61bは、EUV光に反応して可視光を発生させるYAG:Ce(cerium-doped yttrium aluminum garnet)結晶を含む。
【0038】
チャンバ2aは、接続部29bを介して第1のEUV計測部60bと接続されている。接続部29aと接続部29bとは、第2の仮想の平面による鏡像となる位置に配置されている。接続部29b内部には、ゲートバルブGBbと、アパーチャが形成された壁291bとが備えられる。壁291bは、そのアパーチャが第2の点292bに位置するように配置される。
【0039】
表示部51は、第1のEUV計測部60bの計測結果等を表示する装置であって、画像表示装置でもよいし、表示ランプでもよい。
【0040】
図8及び
図9は、それぞれ
図6及び
図7に示される平面ミラー43、ホルダ44、及びアクチュエータ45の拡大図である。
図10は、
図8に示される平面ミラー43、ホルダ44、及びアクチュエータ45を別の方向から示す。アクチュエータ45の駆動軸が平面ミラー43のホルダ44に接続されている。
【0041】
図8に示されるようにEUV光252aを第2の点292aに向けて反射するときの平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角を+θとする。
図9に示されるようにEUV光252aを第2の点292bに向けて反射するときの平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角は、
図8の場合と同じ大きさであるが、平面ミラー43の傾斜方向が異なるので、-θとする。Bragg角+θ及び-θは絶対値が等しく、
図4に示される反射率は
図8の場合と
図9の場合とで同じになる。Bragg角+θ及び-θはそれぞれ本開示における第1及び第2のBragg角の一例である。
【0042】
平面ミラー43を、Bragg角が+θとなる姿勢からBragg角が-θとなる姿勢まで回転させるためには、
図9に示されるように角度φの回転を行う。この場合、平面ミラー43の反射面がEUV光252aの光路に位置したまま平面ミラー43が回転することになる。
【0043】
図11は、第1の実施形態において第1のEUV計測部60bを較正するための構成を示す。接続部29aに外部装置6を接続する前に、第1のEUV計測部60bを較正するために、接続部29aに第2のEUV計測部60aを接続することができる。あるいは、接続部29aから外部装置6を取り外して、第2のEUV計測部60aを接続してもよい。
第2のEUV計測部60aは、蛍光板61aと、イメージセンサ62aと、を含む。これらの構成は第1のEUV計測部60bに含まれるものと同様でよい。
【0044】
3.2 動作
図12及び
図13は、第1の実施形態におけるプロセッサ5の動作を示すフローチャートである。
図12及び
図13に示される処理は、第1のEUV計測部60bを較正する動作と、外部装置6にEUV光を伝送する動作と、外部装置6からEUV光NG信号を受信した場合の動作と、を含む。
【0045】
3.2.1 第1のEUV計測部60bを較正する動作
まず、接続部29aに外部装置6が接続されていない状態で、
図11に示されるように接続部29aに第2のEUV計測部60aを接続する。
【0046】
その後、S10において、プロセッサ5は、EUV光生成システム11bのアライメント調整を行う。具体的には以下の制御を行う。
平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角を+θとする(
図8参照)。
EUV光の生成を開始させ、ゲートバルブGBaを開く。
第2のEUV計測部60aで計測されるEUV光が所定の条件を満たすようにアライメント調整を行う。このアライメント調整は、EUV集光ミラー23a、平面ミラー43、ターゲット供給部26、プリパルスレーザ装置PPL、メインパルスレーザ装置MPL、及びレーザ光伝送装置34のアライメント調整を含む。アライメント調整は、さらに、プリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光の生成タイミングの調整を含む。EUV光が満たすべき所定の条件は、例えば、EUV光のパルスエネルギー、第2のEUV計測部60aにおいて計測される光強度分布の重心位置、及びEUV光の光路軸に垂直な断面のスポットサイズを含む。
その後、ゲートバルブGBaを閉め、EUV光の生成を終了させる。
【0047】
S15において、プロセッサ5は、第1のEUV計測部60bの較正を行う。この処理の詳細については
図14及び
図15を参照しながら後述する。なお、S10でEUV光を計測した第2のEUV計測部60aを取り外して接続部29bに接続し、第1のEUV計測部60bとして使用する場合には、S15の処理は行わなくてもよい。
【0048】
3.2.2 外部装置6にEUV光を伝送する動作
S15の後、接続部29aから第2のEUV計測部60aを取り外し、
図6に示されるように接続部29aに外部装置6を接続する。
その後、S30において、プロセッサ5は、EUV光の生成を開始するようEUV光生成システム11bを制御する。
【0049】
S35において、プロセッサ5は、ゲートバルブGBaを開いて外部装置6へのEUV光の伝送を開始させる。このとき、平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角は+θとなっている。
【0050】
S40において、プロセッサ5は、外部装置6からEUV光NG信号を受信したか否かを判定する。EUV光NG信号は、外部装置6においてEUV光の計測結果が第1の条件を満たしてないと外部装置6が判定した場合に外部装置6から出力される信号である。
【0051】
EUV光NG信号を受信していない場合(S40:NO)、プロセッサ5は、S41に処理を進める。S41において、プロセッサ5は、外部装置6へのEUV光の伝送を継続するか否かを判定する。外部装置6へのEUV光の伝送を継続する場合(S41:YES)、プロセッサ5はS40に処理を戻す。外部装置6へのEUV光の伝送を継続しない場合(S41:NO)、プロセッサ5はS90に処理を進める。S90において、プロセッサ5は、ゲートバルブGBaを閉めて、EUV光の生成を終了させる。S90の後、プロセッサ5は本フローチャートの処理を終了する。
【0052】
3.2.3 外部装置6からEUV光NG信号を受信した場合の動作
EUV光NG信号を受信した場合(S40:YES)、プロセッサ5は、S45に処理を進める。
S45において、プロセッサ5は、ゲートバルブGBaを閉めることにより、外部装置6へのEUV光の伝送を中止する。
S50において、プロセッサ5は、平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角を-θとしてEUV光252aを第2の点292bに向けて反射させ、ゲートバルブGBbを開けることにより、第1のEUV計測部60bへのEUV光の伝送を開始させる。
【0053】
図13を参照し、S55において、第1のEUV計測部60bによるEUV光の計測結果が第2の条件を満たすか否かを判定する。第2の条件は、第1の条件と同等の条件でもよいし、第1の条件を満たすことに加えてさらに厳しい条件を含むものでもよい。
S55の判定結果に応じて、次のS56及びS57に分岐する。
【0054】
3.2.3.1 計測結果が第2の条件を満たす場合
第1のEUV計測部60bによるEUV光の計測結果が第2の条件を満たす場合(S55:YES)、プロセッサ5は、S56に処理を進める。
【0055】
S56において、プロセッサ5は、外部装置6に問題があることを外部装置6に通知し、表示部51に判定結果を表示させる。計測結果が第2の条件を満たす場合にはEUV光生成システム11bには問題がないことになるからである。この場合、外部装置6の調整が行われる。
【0056】
S85において、プロセッサ5は、EUV光の伝送を外部装置6から要求されるまで待機する。待機時間が短ければEUV光の生成は終了させなくてもよい。但し、外部装置6への出力はしないようにゲートバルブGBaは閉めたままにしておく。平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角は+θとしてもよい。外部装置6からEUV光の伝送を要求された場合(S85:YES)、プロセッサ5は、
図12のS35に処理を戻す。
【0057】
3.2.3.2 計測結果が第2の条件を満たさない場合
第1のEUV計測部60bによるEUV光の計測結果が第2の条件を満たさない場合(S55:NO)、プロセッサ5は、S57に処理を進める。
【0058】
S57において、プロセッサ5は、EUV光生成システム11bに問題があることを外部装置6に通知し、表示部51に判定結果を表示させる。
【0059】
S58において、プロセッサ5は、プラズマ生成領域25のアライメント調整を行う。プラズマ生成領域25のアライメント調整は、ターゲット供給部26の位置調整と、プリパルスレーザ光及びメインパルスレーザ光の生成タイミングの調整と、を含む。プラズマ生成領域25のアライメント調整とともに、EUV集光ミラー23aのアライメント調整が行われてもよい。プラズマ生成領域25のアライメント調整の間、EUV光の生成は終了させないが、ゲートバルブGBaは閉めたままにしておく。
【0060】
S58の後、プロセッサ5は、平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角を+θとし、
図12のS35に処理を戻す。
【0061】
3.2.4 第1のEUV計測部60bを較正する動作の詳細
図14は、第1の実施形態において第1のEUV計測部60bを較正する動作の詳細を示すフローチャートである。
図14に示される処理は、
図12のS15のサブルーチンに相当する。
【0062】
S150において、プロセッサ5は、EUV光の生成を開始するようEUV光生成システム11bを制御する。
S152において、プロセッサ5は、平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角を-θとする。
S153において、プロセッサ5は、ゲートバルブGBbを開け、第1のEUV計測部60bにEUV光の計測を行わせる。その後、プロセッサ5は、ゲートバルブGBbを閉める。
【0063】
S154において、プロセッサ5は、平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角を+θとする。このとき、ゲートバルブGBaを開けて第2のEUV計測部60aにEUV光の計測を行わせてもよいが、
図12のS10において計測した結果が使える場合は第2のEUV計測部60aによる計測を再度行う必要はない。
【0064】
S155において、プロセッサ5は、第1及び第2のEUV計測部60b及び60aによる計測結果から較正データを生成する。
図15は、較正データに含まれる較正曲線の例を示すグラフである。
図15において、横軸は繰り返し周波数を示し、縦軸はEUV光のパルスエネルギーを示す。横軸は繰り返し周波数である場合に限定されず、チャンバ2a内のガス圧でもよいし、プリパルスレーザ光又はメインパルスレーザ光の光強度でもよい。第1及び第2のEUV計測部60b及び60aは、平面ミラー43によって同じ反射率で反射されたEUV光252aを受光している。しかし、第1及び第2のEUV計測部60b及び60aの計測結果は、第1及び第2のEUV計測部60b及び60aの特性差に起因して異なる可能性がある。較正曲線がリニアであれば、第1のEUV計測部60bによる計測値に補正係数を乗算することで、第1及び第2のEUV計測部60b及び60aの特性差に依存しない値を算出できる。プロセッサ5が生成する較正データにはそのような補正係数も含まれる。
【0065】
図14を再び参照し、S156において、プロセッサ5は、較正曲線がリニアであるか否かを判定する。
【0066】
較正曲線がリニアでない場合(S156:NO)、プロセッサ5は、S157に処理を進める。
S157において、プロセッサ5は、EUV集光ミラー23a又はその他の光学素子の位置調整を行うことにより、EUV光252aの光路調整を行う。較正曲線がリニアでない原因として、例えば、EUV光252aが壁291bのアパーチャの中心からずれた位置を通過していることが考えられる。EUV光252aの光路調整を行うことにより、較正曲線が改善することがある。
S157の後、プロセッサ5は、S152に処理を戻す。
【0067】
較正曲線がリニアである場合(S156:YES)、プロセッサ5は、S158に処理を進める。
S158において、プロセッサ5は、第1のEUV計測部60bの較正完了を表示部51に表示させる。
S159において、プロセッサ5は、EUV光の生成を終了させる。S159の後、プロセッサ5は本フローチャートの処理を終了し、
図12に示される処理に戻る。
【0068】
3.3 作用
(1)第1の実施形態によれば、EUV光生成システム11bは、チャンバ2aと、ターゲット供給部26と、ウインドウ21と、EUV集光ミラー23aと、平面ミラー43と、アクチュエータ45と、接続部29aと、第1のEUV計測部60bと、プロセッサ5と、を備える。ターゲット供給部26は、EUV集光ミラー23aの第1の焦点を含むプラズマ生成領域25にターゲット27を供給する。ウインドウ21は、ターゲット27に照射されるパルスレーザ光を通過させる。EUV集光ミラー23aは、第1の焦点で生成されたEUV光を反射して第2の点292a又は292bに集光する。平面ミラー43は、EUV集光ミラー23aによって反射されたEUV光252aの光路であって第1の焦点と第2の点292a又は292bとの間に設けられている。アクチュエータ45は、平面ミラー43の姿勢を変更して第2の点292a及び292bを切り替える。接続部29aは、第2の点292aを通過したEUV光252aが入射する外部装置6に接続可能に構成されている。第1のEUV計測部60bには、第2の点292bを通過したEUV光252aが入射する。プロセッサ5は、外部装置6からの信号に基づいてアクチュエータ45を制御する。
これによれば、アクチュエータ45によって第2の点292a及び292bを切り替え、第2の点292bを通過したEUV光252aを第1のEUV計測部60bによって計測することで、EUV光生成システム11bに問題があるか否かを判定できる。従って、外部装置6を使用できないダウンタイムを低減し得る。
外部装置6からの信号は、EUV光NG信号である場合に限定されない。外部装置6における計測結果が第1の条件を満たしている場合であっても、例えば、EUV光252aの伝送中止を許可する信号を外部装置6から受信した場合に、EUV光生成システム11bは第1のEUV計測部60bによる計測を行い得る。計測結果が第2の条件を満たさない場合に、
図13のS57及びS58の処理が行われてもよい。
【0069】
(2)第1の実施形態によれば、アクチュエータ45は、平面ミラー43が、EUV集光ミラー23aの第1の焦点と、第2の点292a及び292bと、を含む第1の仮想の平面に垂直なX方向の軸周りに回転するように、平面ミラー43の姿勢を変更する。これによれば、平面ミラー43の姿勢変更のために複雑な機構を必要とすることなく、平面ミラー43のアライメントを正確に行い得る。但し、本開示はこれに限定されない。平面ミラー43の姿勢を変更して第2の点292a及び292bを切り替えることができればよく、他の方向の軸周りに平面ミラー43を回転させてもよい。
【0070】
(3)第1の実施形態によれば、EUV集光ミラー23aから第2の点292a又は292bまでのEUV光252aの光路が、EUV集光ミラー23aの第1の焦点と、第2の点292a及び292bと、を含む第1の仮想の平面上に位置する。これによれば、EUV光252aの光路が同一の平面内で切り替わるので、第1の焦点と、第2の点292a及び292bと、平面ミラー43と、のアライメントを容易に行い得る。
【0071】
(4)第1の実施形態によれば、EUV光252aを第2の点292aに向ける場合の平面ミラー43の反射面とEUV光252aの光路軸とのBragg角+θの絶対値と、EUV光252aを第2の点292bに向ける場合の反射面と光路軸とのBragg角-θの絶対値とが等しい。これによれば、EUV光252aを第2の点292aに向ける場合と、EUV光252aを第2の点292bに向ける場合とで第2の点292a及び292bにおけるビームプロファイルが同じになる。このため、外部装置6に入射するEUV光252aと同じビームプロファイルを、第1のEUV計測部60bによって計測することができる。
【0072】
(5)第1の実施形態によれば、平面ミラー43は、反射膜を有する反射面を有し、アクチュエータ45は、反射面がEUV光252aの光路に位置したまま平面ミラー43が回転するように、平面ミラー43の姿勢を変更する。これによれば、EUV光252aが平面ミラー43の裏面側のホルダ44に入射する可能性を低減し得る。但し、本開示はこれに限定されない。平面ミラー43の回転の途中でホルダ44がEUV光252aの光路に位置することがあってもよい。
【0073】
(6)第1の実施形態によれば、接続部29aは、外部装置6の代わりに第2のEUV計測部60aに接続可能に構成される。プロセッサ5は、EUV光252aを第2の点292aに向けて第2のEUV計測部60aにより計測した結果に基づいて、EUV集光ミラー23a及び平面ミラー43のいずれかのアライメント調整を行う。これによれば、外部装置6に入射する光と同じ光路を通ったEUV光252aを用いて正確にアライメント調整を行い得る。但し、本開示はこれに限定されない。外部装置6におけるテスト露光又は検査の結果に応じてアライメント調整を行うことがあってもよい。
【0074】
(7)第1の実施形態によれば、接続部29aは、外部装置6の代わりに第2のEUV計測部60aに接続可能に構成される。プロセッサ5は、EUV光252aを第2の点292aに向けて第2のEUV計測部60aにより計測した結果と、EUV光252aを第2の点292bに向けて第1のEUV計測部60bにより計測した結果と、に基づいて第1のEUV計測部60bの較正データを生成する。これによれば、EUV計測部の特性差を補正して正確な計測が行えるようになる。
【0075】
(8)第1の実施形態によれば、外部装置6からの信号は、外部装置6におけるEUV光252aの計測結果が第1の条件を満たさないことを示すEUV光NG信号を含む。プロセッサ5は、外部装置6からEUV光NG信号が出力された場合にEUV光252aを第2の点292bに向けるようアクチュエータ45を制御する。これによれば、外部装置6において第1の条件を満たさない原因を、第1のEUV計測部60bの計測結果を用いて判定することができる。
【0076】
(9)第1の実施形態によれば、プロセッサ5は、第1のEUV計測部60bによる計測結果が第2の条件を満たさない場合にプラズマ生成領域25のアライメント調整を行う。これによれば、EUV光生成システム11bを外部装置6に接続したまま問題箇所を特定し得るだけでなく、EUV光生成システム11bを外部装置6に接続したまま問題の解消を行い得る。
【0077】
(10)第1の実施形態によれば、プラズマ生成領域25のアライメント調整は、ターゲット供給部26の位置調整を含む。これによれば、プラズマ生成領域25で発生するEUV光のX方向及びZ方向の重心位置を変化させることができる。
【0078】
(11)第1の実施形態によれば、EUV光生成システム11bは、パルスレーザ光を出力するレーザシステム3をさらに含む。プラズマ生成領域25のアライメント調整は、ターゲット供給部26の位置調整及びパルスレーザ光の生成タイミング調整のいずれかを含む。これによれば、プラズマ生成領域25で発生するEUV光のX方向及びZ方向の重心位置を変化させるだけでなく、Y方向の重心位置も変化させることができる。
【0079】
(12)第1の実施形態によれば、プロセッサ5は、第1のEUV計測部60bによる計測結果が第2の条件を満たす場合に、EUV光252aの外部装置6への出力を停止した状態で待機する。これによれば、外部装置6の調整に専念できるのでダウンタイムを低減し得る。
その他の点については、第1の実施形態は比較例と同様である。
【0080】
4.第1のEUV計測部60bの配置の自由度を向上したEUV光生成システム11c
4.1 構成
図16及び
図17は、第2の実施形態に係るEUV光生成システム11cの構成を概略的に示す。EUV光生成システム11cは、第2の点292bの第2の位置、接続部29bの配置、及び第1のEUV計測部60bの配置が第1の実施形態と異なる。
【0081】
第2の実施形態において、第2の点292a及び292bは、XZ面に平行でプラズマ生成領域25を通る第2の仮想の平面による鏡像の関係にはない。接続部29a及び29bは、第2の仮想の平面による鏡像となる位置にはない。平面ミラー43は、EUV光252aを第2の点292a及び292bに向けて非対称の方向に反射する。
【0082】
図18及び
図19は、それぞれ
図16及び
図17に示される平面ミラー43、ホルダ44、及びアクチュエータ45の拡大図である。
図18に示されるようにEUV光252aを第2の点292aに向けて反射するときの平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角をθ1とする。
図19に示されるようにEUV光252aを第2の点292bに向けて反射するときの平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角は、
図18の場合より大きく、θ2とする。Bragg角θ1及びθ2は絶対値が異なり、
図4に示される反射率は
図18の場合よりも
図19の場合に低くなる。Bragg角θ1及びθ2はそれぞれ本開示における第1及び第2のBragg角の一例である。
【0083】
平面ミラー43を、Bragg角がθ1となる姿勢からBragg角がθ2となる姿勢まで回転させるためには、
図19に示されるように角度φの回転を行う。
【0084】
4.2 動作
図12及び
図13に示される処理は、第2の実施形態においても実行される。但し、第1のEUV計測部60bの較正については第1の実施形態と一部異なる。
【0085】
図20は、第2の実施形態において第1のEUV計測部60bを較正する動作の詳細を示すフローチャートである。
図20に示される処理は、
図12のS15のサブルーチンに相当する。
【0086】
第2の実施形態において、平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角が-θとされる代わりにθ2とされることで(S152c)、EUV光252aは第2の点292bに向けて反射される。また、平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角が+θとされる代わりにθ1とされることで(S154c)、EUV光252aは第2の点292aに向けて反射される。
【0087】
Bragg角θ2がBragg角θ1より大きいため、EUV光252aが第2の点292bに向けて反射されるときの反射率は小さくなる。第1のEUV計測部60bによるパルスエネルギーの計測値は、第2のEUV計測部60aを接続部29aに接続したときの第2のEUV計測部60aによるパルスエネルギーの計測値よりも小さい値となる。第1のEUV計測部60bによる計測値に1より大きい補正係数を乗算することで、Bragg角の変化による反射率の変化を相殺し得る。
【0088】
4.3 作用
(13)第2の実施形態によれば、EUV光252aを第2の点292aに向ける場合の平面ミラー43の反射面とEUV光252aの光路軸とのBragg角θ1の絶対値よりも、EUV光252aを第2の点292bに向ける場合の反射面と光路軸とのBragg角θ2の絶対値が大きい。これによれば、第1のEUV計測部60bの配置の自由度が向上し、設置スペースの余裕がある箇所、あるいは取り付け及び取り外しが容易な箇所に第1のEUV計測部60bを配置することができる。
【0089】
(14)第2の実施形態によれば、プロセッサ5は、第1のEUV計測部60bで得られたEUV光252aのパルスエネルギーに1より大きい補正係数を乗算することにより、外部装置6に入射するEUV光252aのパルスエネルギーを算出する。これによれば、Bragg角θ1及びθ2の違いによる反射率の違いを相殺してEUV光252aのパルスエネルギーを算出し得る。
その他の点については、第2の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0090】
5.アライメント以外の不調を解消できるEUV光生成システム11b
5.1 構成及び動作
以下に第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の構成は、第1の実施形態と同様である。
図21及び
図22は、第3の実施形態におけるプロセッサ5の動作を示すフローチャートである。
図22においてミラーの交換をした場合に(S84:YES)、
図21のS10に戻る点以外は、
図21に示される処理は、
図12に示される処理と同様である。
【0091】
図22に示される処理は、S59~S84の処理が加わっている点以外は、
図13に示される処理と同様である。
【0092】
S59において、プロセッサ5は、S58のアライメント調整によって第1のEUV計測部60bによるEUV光の計測結果が第2の条件を満たすようになったか否かを判定する。第2の条件はS55で判定される第2の条件と同様である。
【0093】
アライメント調整により第1のEUV計測部60bによるEUV光の計測結果が第2の条件を満たすようになった場合(S59:YES)、プロセッサ5は、平面ミラー43とEUV光252aとのBragg角を+θとし、
図21のS35に処理を戻す。
【0094】
アライメント調整をしても第1のEUV計測部60bによるEUV光の計測結果が第2の条件を満たさない場合(S59:NO)、プロセッサ5は、S70に処理を進める。
S70において、プロセッサ5は、メンテナンスの必要な箇所を特定する。例えば、EUV光の重心位置やスポットサイズが正常化しなかった場合はEUV集光ミラー23aの位置が異常であると判定できる。あるいは、EUV光のパルスエネルギーが正常化しなかった場合はEUV集光ミラー23a又は平面ミラー43が劣化したと判定できる。この判定結果に基づいてメンテナンスの必要な箇所が特定される。
【0095】
S75において、プロセッサ5はメンテナンスの開始を外部装置6に通知する。
S82において、メンテナンスが行われる。EUV集光ミラー23a又は平面ミラー43の交換を伴うメンテナンスは、EUV光の生成を停止して行われる。EUV集光ミラー23a又は平面ミラー43の位置調整のように、交換を伴わないメンテナンスは、EUV光の生成を停止せずに行うことができる。
【0096】
メンテナンスの終了後、S84において、プロセッサ5は、ミラーの交換をしたか否かを判定する。ここでいうミラーとは、EUV集光ミラー23a及び平面ミラー43のいずれかである。
ミラーの交換をした場合(S84:YES)、プロセッサ5は、
図21のS10に処理を戻す。これにより、EUV集光ミラー23a及び平面ミラー43のアライメント調整が行われる。
ミラーの交換をしなかった場合(S84:NO)、例えば、EUV集光ミラー23a又は平面ミラー43の位置調整、あるいはEUV光検出センサ41を交換した場合、プロセッサ5は、S85に処理を進める。
【0097】
S85の処理は
図13に示されるものと同様であり、プロセッサ5は、EUV光の伝送を外部装置6から要求されるまで待機する。EUV光の伝送を外部装置6から要求された場合(S85:YES)、プロセッサ5は、
図21のS35に処理を戻す。
【0098】
5.2 作用
(15)第3の実施形態によれば、プロセッサ5は、第1のEUV計測部60bによる計測結果が第2の条件を満たさない場合に、ターゲット供給部26の位置調整を行う。プロセッサ5は、位置調整を行っても第1のEUV計測部60bによる計測結果が第2の条件を満たさない場合に、EUV光生成システム11bのメンテナンスのためにEUV光252aの生成を停止する。これによれば、EUV光生成システム11bにアライメント以外の問題がある場合に、外部装置6を切り離さなくても問題を解消し得るので、ダウンタイムを低減し得る。
【0099】
(16)第3の実施形態によれば、EUV光生成システム11bのメンテナンスをする場合、プロセッサ5は、メンテナンスをすることを外部装置6に通知する。これによれば、問題の解消に時間がかかることを外部装置6に通知することができ、外部装置6における資源の消費を低減し得る。
【0100】
(17)第3の実施形態によれば、メンテナンスは、EUV集光ミラー23a及び平面ミラー43のいずれかの交換を含む。これによれば、ミラーの交換によって問題が解消する場合に、外部装置6を切り離さなくても問題を解消し得るので、ダウンタイムを低減し得る。
【0101】
(18)第3の実施形態によれば、接続部29aは、外部装置6の代わりに第2のEUV計測部60aに接続可能に構成される。EUV集光ミラー23a及び平面ミラー43のいずれかを交換した場合に、EUV光252aを第2の点292aに向けて第2のEUV計測部60aにより計測した結果に基づいて、EUV集光ミラー23a及び平面ミラー43のいずれかのアライメント調整が行われる。これによれば、ミラーの交換によってアライメント調整が必要となった場合に、外部装置6を切り離さなくても作業を行い得る。
【0102】
その他の点については、第3の実施形態は第1の実施形態と同様である。あるいは、第3の実施形態において、第2の実施形態と同様に平面ミラー43がEUV光252aを非対称の方向に反射してもよい。
【0103】
6.その他
図23は、EUV光生成システム11bに接続された露光装置6aの構成を概略的に示す。
図23において、外部装置6(
図1参照)としての露光装置6aは、マスク照射部608とワークピース照射部609とを含む。マスク照射部608は、EUV光生成システム11bから入射したEUV光によって、反射光学系を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部609は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光を、反射光学系を介してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置6aは、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスを製造できる。
【0104】
図24は、EUV光生成システム11bに接続された検査装置6bの構成を概略的に示す。
図24において、外部装置6(
図1参照)としての検査装置6bは、照明光学系603と検出光学系606とを含む。照明光学系603は、EUV光生成システム11bから入射したEUV光を反射して、マスクステージ604に配置されたマスク605を照射する。ここでいうマスク605はパターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系606は、照明されたマスク605からのEUV光を反射して検出器607の受光面に結像させる。EUV光を受光した検出器607はマスク605の画像を取得する。検出器607は例えばTDI(time delay integration)センサやCCDカメラである。以上のような工程によって取得したマスク605の画像により、マスク605の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置6aを用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造できる。
【0105】
図23及び
図24において、EUV光生成システム11bの代わりに、EUV光生成システム11cが用いられてもよい。
【0106】
上述の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0107】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。