IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 栗田工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-排水の処理装置 図1
  • 特開-排水の処理装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075535
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】排水の処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/52 20230101AFI20230524BHJP
【FI】
C02F1/52 J
C02F1/52 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188498
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 優
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA23
4D015BA25
4D015CA17
4D015CA18
4D015DB01
4D015EA01
4D015EA15
4D015EA18
4D015EA32
4D015FA28
(57)【要約】
【課題】改質槽から反応槽に流入するアルカリ剤添加返送汚泥のpHを迅速に制御することができ、処理水質や排出汚泥性状を常に良好にすることができ、また改質槽の汚泥閉塞が防止される排水の処理方法及び装置を提供することを課題とする。
【解決手段】原水を反応槽2に導入し、改質槽8からの消石灰添加返送汚泥と混合した後、凝集槽3で高分子凝集剤を添加して凝集処理する。凝集処理液を沈殿槽4に導入して汚泥を分離する。汚泥の一部を汚泥返送ライン7で改質槽8に導入する。改質槽8の汚泥滞留時間を1~5分とする。改質槽8を反応槽2の上方に配置し、改質槽8の汚泥流出口21に連なる汚泥流出配管23を鉛直下方に延在させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽にて排水にアルカリ剤添加返送汚泥を添加して反応させ、次いで凝集処理した後、固液分離処理して汚泥を処理水から分離し、
分離した汚泥の一部を返送汚泥とし、この返送汚泥を改質槽に導入して前記アルカリ剤を添加して前記排水に添加し、
汚泥の残部を引き抜き汚泥として排出し、
前記反応槽内のpHが所定範囲となるように改質槽へのアルカリ添加量を制御する排水の処理方法において、
前記改質槽の汚泥の滞留時間を1~5分とすることを特徴とする排水の処理方法。
【請求項2】
前記アルカリ剤は消石灰である、請求項1の排水の処理方法。
【請求項3】
排水に改質槽からのアルカリ剤添加返送汚泥を添加する反応槽と、
該反応槽からの液に高分子凝集剤を添加する凝集槽と、
該凝集剤が添加された凝集処理液を固液分離する固液分離手段と、
該固液分離手段で分離された汚泥の一部にアルカリ剤を添加して前記アルカリ剤添加返送汚泥とする改質槽と
を備えてなる排水の処理装置において、
該改質槽の汚泥滞留時間が1~5分となるように該改質槽の容積が設定されていることを特徴とする排水の処理装置。
【請求項4】
前記改質槽は前記反応槽の上方に配置されている、請求項3の排水の処理装置。
【請求項5】
前記改質槽は、槽側壁面の上部に汚泥流出口が設けられており、
該汚泥流出口に連なる汚泥流出配管が鉛直下方に延在しており、該汚泥流出配管からの汚泥が前記反応槽に導入される、請求項4の排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水を凝集及び固液分離処理する排水の処理方法及び装置に係り、特に凝集汚泥の一部を反応槽に返送すると共に、この返送汚泥に消石灰等のアルカリ剤を添加するようにした排水の処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水を凝集及び固液分離処理して、濃縮性に富み、脱水性に優れた高濃度汚泥を得る方法として、アルカリ汚泥法等の高密度汚泥法(HDS法:High Density Sludge)が知られている。アルカリ汚泥法では、凝集処理の後段の固液分離処理で分離されて返送される汚泥の一部に消石灰(Ca(OH))等のアルカリを添加する。
【0003】
図2は、従来の高密度凝集汚泥処理法の代表的な装置を示す系統図であり、原水は原水槽1にてpH調整剤が添加されてpH2.5~3.0程度に調整された後、反応槽2に導入され、後述の改質槽8から導入される改質汚泥と混合され、反応する。この反応液は、次いで凝集槽3に送給され、高分子凝集剤添加手段3aにより高分子凝集剤が添加されて凝集処理された後、沈殿槽4で固液分離される。沈殿槽4の上澄水は処理水として系外へ排出される。沈殿槽4からポンプ5により引き抜かれた分離汚泥の一部は汚泥返送ライン7により改質槽8に返送され、残部は排出ライン6により系外へ排出される。
【0004】
改質槽8では、アルカリ剤添加手段としての消石灰添加手段9により供給される消石灰の溶解/分散液(消石灰の一部は溶解し、残部は分散している液)と返送汚泥とが混合される。この混合液(改質汚泥)は反応槽2に供給される。この反応槽2における反応は所定のpH範囲(例えば6~11、特に6~8)で行うのが好ましく、このようなpH範囲となるように、反応槽2に設けられたpH計2aの検出pHに基づいて改質槽8に供給される消石灰の量が調節される。
【0005】
汚泥排出ライン6及び汚泥返送ライン7にはそれぞれバルブ11,12が設けられている。バルブ11,12を制御手段(図示略)によって制御することにより、改質槽8への汚泥返送量が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-7879号公報
【特許文献2】特開2003-71469号公報
【特許文献3】特開2013-208599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記排水の処理方法及び装置においては、前述のとおり、反応槽2における反応は所定のpH範囲(例えば6~11、特に6~8)で行うのが好ましく、反応槽2のpHがかかる適正範囲となるように改質槽8から改質汚泥が導入されることが重要である。そのためには、改質槽8への消石灰の添加制御に追随して改質槽8内のpHが迅速に変化することが望ましい。また、改質槽8内の汚泥滞留時間は、添加された消石灰が十分に水に溶解し、汚泥と反応するように滞留時間が設定されていることが望ましい。
【0008】
従来の排水の処理方法及び装置では、改質槽8の汚泥滞留が約10分に設定されているが、滞留時間が長すぎるために、改質槽8のpH制御に迅速性が不足し、反応槽2の反応が不十分となり、処理水質が悪化したり、排出ライン6からの排出汚泥の含水率が高くなったりするおそれがあった。また、改質槽8内の汚泥滞留時間が長すぎ、汚泥閉塞のおそれがあった。
【0009】
本発明は、改質槽から反応槽に流入するアルカリ剤添加返送汚泥のpHを迅速に制御することができ、処理水質や排出汚泥性状を常に良好にすることができ、また改質槽の汚泥閉塞が防止される排水の処理方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の排水の処理方法及び装置は次を要旨とする。
【0011】
[1] 反応槽にて排水にアルカリ剤添加返送汚泥を添加して反応させ、次いで凝集処理した後、固液分離処理して汚泥を処理水から分離し、
分離した汚泥の一部を返送汚泥とし、この返送汚泥を改質槽に導入して前記アルカリ剤を添加して前記排水に添加し、
汚泥の残部を引き抜き汚泥として排出し、
前記反応槽内のpHが所定範囲となるように改質槽へのアルカリ添加量を制御する排水の処理方法において、
前記改質槽の汚泥の滞留時間を1~5分とすることを特徴とする排水の処理方法。
【0012】
[2] 前記アルカリ剤は消石灰である、[1]の排水の処理方法。
【0013】
[3] 排水に改質槽からのアルカリ剤添加返送汚泥を添加する反応槽と、
該反応槽からの液に高分子凝集剤を添加する凝集槽と、
該凝集剤が添加された凝集処理液を固液分離する固液分離手段と、
該固液分離手段で分離された汚泥の一部にアルカリ剤を添加して前記アルカリ剤添加返送汚泥とする改質槽と
を備えてなる排水の処理装置において、
該改質槽の汚泥滞留時間が1~5分となるように該改質槽の容積が設定されていることを特徴とする排水の処理装置。
【0014】
[4] 前記改質槽は前記反応槽の上方に配置されている、[3]の排水の処理装置。
【0015】
[5] 前記改質槽は、槽側壁面の上部に汚泥流出口が設けられており、
該汚泥流出口に連なる汚泥流出配管が鉛直下方に延在しており、該汚泥流出配管からの汚泥が前記反応槽に導入される、[4]の排水処理装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の排水の処理方法及び装置によると、改質槽におけるpH制御が迅速に行われるようになるので、反応槽のpHが常に適正範囲となり、処理水質が良好になると共に、汚泥含水率も低いものとなる。また、改質槽の汚泥閉塞が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る排水の処理方法及び装置に用いられる改質槽の縦断面図である。
図2】従来例に係る排水の処理方法及び装置を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0019】
この実施の形態においても、排水処理のフローの全体構成は図2と同一である。即ち、図2と同様に、原水は原水槽1にてpH調整剤が添加されてpH2.5~3.0程度に調整された後、反応槽2に導入され、改質槽8から導入される改質汚泥と混合され、反応する。この反応液は、次いで凝集槽3に送給され、高分子凝集剤添加手段3aにより高分子凝集剤が添加されて凝集処理された後、沈殿槽4で固液分離される。沈殿槽4の上澄水は処理水として系外へ排出される。沈殿槽4からポンプ5により引き抜かれた分離汚泥の一部は汚泥返送ライン7により改質槽8に返送され、残部は排出ライン6により系外へ排出される。
【0020】
改質槽8では、アルカリ剤添加手段としての消石灰添加手段9により供給される消石灰の溶解/分散液と返送汚泥とが混合される。この混合液(改質汚泥)は反応槽2に供給される。この反応槽2における反応は所定のpH範囲(例えば6~11、特に6~8)で行うのが好ましく、このようなpH範囲となるように、反応槽2に設けられたpH計2aの検出pHに基づいて消石灰添加手段9によって改質槽8に供給される消石灰の量が調節される。
【0021】
図1は、この実施の形態で用いられている改質槽8の縦断面図である。改質槽8は、撹拌機20を備えている。改質槽8の槽側壁の上部に流出口21が設けられている。流出口21に対峙するように、縦方向の板よりなるバッフル22が設けられている。流出口21に汚泥流出配管23が接続されている。この汚泥流出配管23は鉛直下方に向かって延在している。
【0022】
改質槽8は、反応槽2の上方に配置されており、汚泥流出配管23からの改質汚泥は鉛直下方に落下して反応槽2に導入される。この改質槽8は、返送汚泥の平均的な滞留時間が1~5分、好ましくは2~4分、特に好ましくは約3分となるように槽容積が設定されている。
【0023】
このように改質槽8の返送汚泥滞留時間を1~5分とするように比較的小容積の改質槽容積としたことにより、消石灰添加手段9からの消石灰添加量を変化させたときに改質槽8内のpHが迅速に変化するので、改質槽8から反応槽2に供給される改質汚泥のpHも迅速に変化する。このため、反応槽2内のpHが常に所定範囲(好ましくは6~11、特に好ましくは6~8)に保たれ、凝集反応が十分に行われ、処理水質が良好になると共に、排出ライン6から排出される凝集汚泥の水分含有率が低いものとなる。
【0024】
また、改質槽8における汚泥の滞留時間が比較的短いので、改質槽8における汚泥閉塞トラブルが防止される。また、改質槽8の容積が小さいので、反応槽2と、該反応槽2の上方に配置された改質槽8とを合わせた全体の高さが小さくなり、装置がコンパクトなものとなる。そのため、改質槽を新設したり、既存の装置を改造したりする場合に改質槽の配置設計が容易となる。
【0025】
本発明で処理対象とする原水としては、フッ素含有排水、リン含有排水、鉄、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、鉛、アルミなどの重金属含有排水などが例示されるが、これらに限定されない。
【0026】
上記実施の形態では、改質槽8にアルカリ剤として消石灰を添加しているが、これに限定されるものではなく、重金属含有排水の場合、苛性ソーダなどであってもよい。
【0027】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の態様とされてもよい。
【符号の説明】
【0028】
2 反応槽
3 凝集反応槽
4 沈殿槽
8 改質槽
9 消石灰添加手段
20 撹拌機
23 汚泥流出配管
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水に改質槽からのアルカリ剤添加返送汚泥を添加する反応槽と、
該反応槽からの液に高分子凝集剤を添加する凝集槽と、
該凝集剤が添加された凝集処理液を固液分離する固液分離手段と、
該固液分離手段で分離された汚泥の一部にアルカリ剤を添加して前記アルカリ剤添加返送汚泥とする改質槽と
を備えてなる排水の処理装置において、
前記改質槽は前記反応槽の上方に配置されており、
該改質槽の汚泥滞留時間が1~5分となるように該改質槽の容積が設定されていることを特徴とする排水の処理装置。
【請求項2】
前記改質槽は、槽側壁面の上部に汚泥流出口が設けられており、
該汚泥流出口に連なる汚泥流出配管が鉛直下方に延在しており、該汚泥流出配管からの汚泥が前記反応槽に導入される、請求項の排水処理装置。