(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075566
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】伸縮性を有する半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/14 20060101AFI20230524BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230524BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230524BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20230524BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230524BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
H01L23/14 R
H01L29/78 626C
H01L23/12 Z
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188543
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100171446
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 尚幸
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100171930
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 郁一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮川 幹司
(72)【発明者】
【氏名】中田 充
(72)【発明者】
【氏名】辻 博史
【テーマコード(参考)】
3K107
5F110
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
3K107CC31
3K107CC45
3K107DD17
3K107FF15
3K107GG00
5F110AA21
5F110AA26
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5F110EE02
5F110EE03
5F110EE04
5F110EE06
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5F110FF02
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5F110GG01
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5F110GG29
5F110GG58
5F110HK02
5F110HK03
5F110HK04
5F110HK06
5F110HK21
5F110NN04
5F110NN27
5F110NN28
5F110QQ16
(57)【要約】
【課題】伸縮による半導体素子への影響を軽減し、半導体素子の特性の安定化を図ることを可能とした伸縮性を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】粘着性を有するアクリル系粘着組成物を含む伸縮性樹脂基板2と、伸縮性樹脂基板2の面内に並んで配置された複数の非伸縮性樹脂基板3と、複数の非伸縮性樹脂基板3の各々の面上に配置された複数の半導体素子4とを備え、伸縮性樹脂基板2は、複数の非伸縮性樹脂基板3の隣り合うもの同士の間で伸縮自在とされている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性を有するアクリル系粘着組成物を含む伸縮性樹脂基板と、
前記伸縮性樹脂基板の上に配置された非伸縮性樹脂基板と、
前記非伸縮性樹脂基板の上に配置された半導体素子とを備える伸縮性を有する半導体装置。
【請求項2】
前記非伸縮性樹脂基板は、前記伸縮性樹脂基板の面内に複数並んで配置され、
前記半導体素子は、前記複数の非伸縮性樹脂基板の各々の面上に配置され、
前記伸縮性樹脂基板は、前記複数の非伸縮性樹脂基板の隣り合うもの同士の間で伸縮自在とされていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性を有する半導体装置。
【請求項3】
前記非伸縮性樹脂基板は、前記伸縮性樹脂基板に密着層を介して貼着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮性を有する半導体装置。
【請求項4】
前記非伸縮性樹脂基板の上に、前記半導体素子の少なくとも一部を覆う保護層が設けられていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の伸縮性を有する半導体装置。
【請求項5】
第1の支持基板の上に非伸縮性樹脂基材を形成する工程と、
前記非伸縮性樹脂基材の上に複数の半導体素子を形成する工程と、
前記複数の半導体素子の上に接着層を介して第2の支持基板を貼着する工程と、
前記第1の支持基板を剥離する工程と、
前記非伸縮性樹脂基材を前記半導体素子毎にその周囲を囲む複数の非伸縮性樹脂基板に切断する工程と、
前記非伸縮性樹脂基材のうち前記複数の非伸縮性樹脂基板以外の余白部分を除去する工程と、
前記複数の非伸縮性樹脂基板の上に伸縮性樹脂基板を貼着する工程と、
前記第2の支持基板を剥離する工程とを含む伸縮性を有する半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記複数の非伸縮性樹脂基板に切断された前記非伸縮性樹脂基材の上に密着層を形成する工程と、
前記密着層が形成された前記非伸縮性樹脂基材のうち前記複数の非伸縮性樹脂基板以外の余白部分をその上の前記密着層と共に除去する工程と、
前記複数の非伸縮性樹脂基板の上に前記密着層を介して前記伸縮性樹脂基板を貼着する工程とを含むことを特徴とする請求項5に記載の伸縮性を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、伸縮性を有する半導体装置がある(例えば、下記特許文献1,2を参照。)。このような伸縮性を有する半導体装置は、球面や自由曲面などの3次元形状に変形可能な有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイや、感圧センサなどの電子デバイスの駆動に必要である。
【0003】
具体的に、下記特許文献1には、支持表面を有するフレキシブル基板と、曲面状内表面を有する半導体構造とを備え、曲面状内表面の少なくとも一部がフレキシブル基板の支持表面に結合されている伸縮性半導体素子が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、樹脂基板上に1つ又は複数の半導体素子を形成し、半導体素子を内側封止層で覆って構成した半導体搭載基材が、エラストマーからなる伸縮性樹脂フィルムに1つ又は複数埋設され、伸縮性樹脂フィルムに半導体素子に接続される導電回路が形成され、半導体搭載基材の周囲が外側封止層で覆われた伸縮性デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-281406号公報
【特許文献2】特開2015-149364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した伸縮性を有する半導体装置では、伸縮性を有する基板の上に薄膜トランジスタ(TFT)などの半導体素子を形成している。しかしながら、従来の半導体装置では、基板を伸縮させた際に、伸縮部となる基板と、非伸縮部となる半導体素子との間で剥離が生じ易く、半導体素子の特性が不安定となることがあった。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、伸縮による半導体素子への影響を軽減し、半導体素子の特性の安定化を図ることを可能とした伸縮性を有する半導体装置、並びにそのような半導体装置を製造するのに好適な伸縮性を有する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 粘着性を有するアクリル系粘着組成物を含む伸縮性樹脂基板と、
前記伸縮性樹脂基板の上に配置された非伸縮性樹脂基板と、
前記非伸縮性樹脂基板の上に配置された半導体素子とを備える伸縮性を有する半導体装置。
〔2〕 前記非伸縮性樹脂基板は、前記伸縮性樹脂基板の面内に複数並んで配置され、
前記半導体素子は、前記複数の非伸縮性樹脂基板の各々の面上に配置され、
前記伸縮性樹脂基板は、前記複数の非伸縮性樹脂基板の隣り合うもの同士の間で伸縮自在とされていることを特徴とする前記〔1〕に記載の伸縮性を有する半導体装置。
〔3〕 前記非伸縮性樹脂基板は、前記伸縮性樹脂基板に密着層を介して貼着されていることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の伸縮性を有する半導体装置。
〔4〕 前記非伸縮性樹脂基板の上に、前記半導体素子の少なくとも一部を覆う保護層が設けられていることを特徴とする前記〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の伸縮性を有する半導体装置。
〔5〕 第1の支持基板の上に非伸縮性樹脂基材を形成する工程と、
前記非伸縮性樹脂基材の上に複数の半導体素子を形成する工程と、
前記複数の半導体素子の上に接着層を介して第2の支持基板を貼着する工程と、
前記第1の支持基板を剥離する工程と、
前記非伸縮性樹脂基材を前記半導体素子毎にその周囲を囲む複数の非伸縮性樹脂基板に切断する工程と、
前記非伸縮性樹脂基材のうち前記複数の非伸縮性樹脂基板以外の余白部分を除去する工程と、
前記複数の非伸縮性樹脂基板の上に前記伸縮性樹脂基板を貼着する工程と、
前記第2の支持基板を剥離する工程とを含む伸縮性を有する半導体装置の製造方法。
〔6〕 前記複数の非伸縮性樹脂基板に切断された前記非伸縮性樹脂基材の上に密着層を形成する工程と、
前記密着層が形成された前記非伸縮性樹脂基材のうち前記複数の非伸縮性樹脂基板以外の余白部分をその面上の前記密着層と共に除去する工程と、
前記複数の非伸縮性樹脂基板の上に前記密着層を介して前記伸縮性樹脂基板を貼着する工程とを含むことを特徴とする前記〔5〕に記載の伸縮性を有する半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、伸縮による半導体素子への影響を軽減し、半導体素子の特性の安定化を図ることを可能とした伸縮性を有する半導体装置、並びにそのような半導体装置を製造するのに好適な伸縮性を有する半導体装置の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1中に示す線分A-Aによる半導体装置の要部を拡大した断面図である。
【
図3】
図2に示す半導体装置の保護層が設けられた構成を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
【
図5】
図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
【
図6】
図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
【
図7】
図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
【
図8】
図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
【
図9】
図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
【
図10】
図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
【
図11】
図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
【
図12】
図1に示す半導体装置の製造工程を順に説明するための断面図である。
【
図13】実施例において導体装置の特性を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
(半導体装置)
先ず、本発明の一実施形態として、例えば
図1~
図3に示す伸縮性を有する半導体装置1ついて説明する。
なお、
図1は、半導体装置1の構成を示す斜視図である。
図2は、
図1中に示す線分A-Aによる半導体装置1の要部を拡大した断面図である。
図3は、半導体装置1の保護層が設けられた構成を示す断面図である。
【0013】
本実施形態の半導体装置1は、
図1及び
図2に示すように、伸縮性樹脂基板2と、伸縮性樹脂基板2の面内に並んで配置された複数の非伸縮性樹脂基板3と、非伸縮性樹脂基板3の各々の面上に配置された複数の半導体素子4とを備えている。
【0014】
本実施形態の半導体装置1では、半導体素子4として、薄膜トランジスタ(以下、「TFT4」という。)を伸縮性樹脂基板2の面内にマトリックス状に並べて配置した構成を例示している。
【0015】
本実施形態の半導体装置1は、例えば液晶表示パネルや有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示パネルなどのディスプレイの駆動用TFTに好適に用いられる。これにより、伸縮自在なストレッチャブルディスプレイを実現し、球面や自由曲面などの3次元形状に変形可能なディスプレイを形成することが可能である。
【0016】
伸縮性樹脂基板2は、粘着性を有するアクリル系粘着組成物を含むフィルム基板であり、その中でも、透明性や耐候性、耐熱性に優れ、凹凸面に対する追従性や曲面接着力及び保持力に優れたアクリル系樹脂を用いることが好ましい。
【0017】
伸縮性樹脂基板2には、例えば、粘着性を有するアクリル系粘着組成物として、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有するモノマーを50質量%以上の割合で含む粘着性を有するアクリル系ポリマーを用いることができる。また、伸縮性樹脂基板2は、粘着付与樹脂として、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂などを含む構成としてもよい。また、伸縮性樹脂基板2は、フィルム基板を構成する樹脂材料として、引張伸び率が100%以上の樹脂であり、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレンブタジエン樹脂などを用いることができる。また、伸縮性樹脂基板2の厚さは、0.005~1.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.05~1mmである。
【0018】
伸縮性樹脂基板2の粘着力は、「JIS Z 0237」に基づいて測定される180°引き剥がし粘着力において、例えば、5N/2mm以上であることが好ましく、より好ましくは7N/20mm以上である。伸縮性樹脂基板2の粘着力の高さは、非伸縮性樹脂基板3との剥離を抑制し、一体化するために必要な要素であり、粘着力の上限については特に制限されるものではない。
【0019】
伸縮性樹脂基板2は、長寿命化及び耐久性の向上を図るため、伸縮させた後に元の形状への復元性があることが好ましい。具体的には、100%伸長させた後の復元率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。復元率が低いと耐久性が得られにくくなる。復元率の調整は、アクリル系ポリマーの架橋度や平均分子量により調整することが知られており、この手法により調整が可能である。
【0020】
複数の非伸縮性樹脂基板3は、可撓性を有する樹脂(プラスチック)製のフィルム基板であり、伸縮性樹脂基板2の面内にマトリックス状に並んで配置されている。また、各非伸縮性樹脂基板3は、伸縮性樹脂基板2の一方の面(表面)側に、伸縮性樹脂基板2の粘着力により貼着されている。
【0021】
非伸縮性樹脂基板3には、例えば、ポリイミド(PI)やポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ナノセルロースなどを用いることができる。その中でも、TFT4の形成時に必要や熱焼成や薬液処理などに対する耐熱性や耐薬品性に優れたPIを用いることが好ましい。また、非伸縮性樹脂基板3の厚さは、0.1~100μmであることが好ましく、より好ましくは1~10μmである。
【0022】
また、非伸縮性樹脂基板3は、伸縮性樹脂基板2に密着層5を介して貼着されていることが好ましい。密着層5は、伸縮部となる伸縮性樹脂基板と、非伸縮部となる非伸縮性樹脂基板3との間の密着性を向上させるための層であり、非伸縮性樹脂基板3の伸縮性樹脂基板2と対向する面上に形成されている。
【0023】
密着層5には、例えば、酸化シリコン(SiO2)膜や窒化シリコン(SiNx)膜などの無機酸化膜、又はこれらの積層膜を用いることができる。また、密着層5の厚さは、10~20nmであることが好ましく、より好ましくは5~200nmである。
【0024】
TFT4は、非伸縮性樹脂基板3の上に、半導体層6と、半導体層6と交差するように配置されたゲート電極7と、半導体層6とゲート電極7との間に配置された絶縁層8と、半導体層6のゲート電極7を挟んだ両側に配置されたソース電極9及びドレイン電極10とを有している。
【0025】
また、本実施形態のTFT4は、ゲート電極7を覆う絶縁層8の上に半導体層6が設けられたボトムゲート構造を有している。一方、TFT4については、半導体層6を覆う絶縁層8の上にゲート電極7が設けられたトップゲート構造を有していてもよい。
【0026】
半導体層6は、ゲート電極7と平面視で重なる絶縁層8の上に配置されて、チャネルが形成される活性層を形成している。半導体層6には、例えば、少なくとも主成分にインジウム、スズ、亜鉛及び酸素(In-Sn-Zn-O)を含む酸化物半導体や、少なくともインジウム、ガリウム、亜鉛及び酸素(In-Ga-Zn-O)を含む酸化物半導体などを用いることができる。
【0027】
ゲート電極7は、非伸縮性樹脂基板3の上に配置されている。ゲート電極7には、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などの金属又はそれらの合金、若しくはそれらの金属を2種類以上積層した導電膜を用いることができる。
【0028】
絶縁層8は、半導体層6とゲート電極7との間を絶縁し、半導体層6にゲート電極7を介して電圧を印加するために設けられている。絶縁層8には、例えば、窒化シリコン(SiNx)膜や酸化シリコン(SiO2)などの無機酸化膜、又はこれらの積層膜を用いることができる。
【0029】
ソース電極9及びドレイン電極10は、それぞれ半導体層6及び絶縁層8の上に連続して配置されている。ソース電極9及びドレイン電極10には、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などの金属又はそれらの合金、若しくはそれらの金属を2種類以上積層した導電膜を用いることができる。
【0030】
また、TFT4は、非伸縮性樹脂基板3との密着性の改善や、非伸縮性樹脂基板3のバリア性を高めるために、非伸縮性樹脂基板3の上に下地層(図示せず。)を介して配置された構成であってもよい。下地層には、上述した絶縁層8で例示したものと同じものを用いることができる。
【0031】
伸縮性樹脂基板2の面上には、伸縮性を有する配線層11が設けられている。配線層11は、ゲート電極7、ソース電極9及びドレイン電極10の各々に対応して設けられて、TFT4と電気的に接続されている。
【0032】
配線層11には、例えば、弾性のあるエラストマーにカーボンナノチューブや金属ナノワイヤなどを分散させて導電性を持たせたものや、金などの金属配線を蛇腹状に湾曲形状をさせたものなどの伸縮性を有する導電層を用いることができる。
【0033】
本実施形態の半導体装置1は、
図3に示すように、非伸縮性樹脂基板3の上に、TFT4の少なくとも一部を覆う保護層12が設けられた構成であってもよい。保護層12は、非伸縮性樹脂基板3の上に形成されるTFT4の歪みを抑制し、TFT4の特性を安定化させる効果を有している。
【0034】
保護層12には、例えばエポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂などの有機膜を用いることができる。その中でも、1μm以上の厚膜化が可能であり、光によるパターン形成が可能な光反応性のエポキシ系樹脂を用いることが好ましい。具体的には、ネガ型のフォトレジスト材料であるSU-8などを用いることができる。また、保護層12の厚みは、0.1~5μmであることが好ましく、より好ましくは1~2μmである。
【0035】
以上のような構成を有する本実施形態の半導体装置1では、複数の非伸縮性樹脂基板3の隣り合うもの同士の間で伸縮性樹脂基板2が伸縮自在とされている。本実施形態の半導体装置1では、上述した伸縮性樹脂基板2の粘着力により各非伸縮性樹脂基板3が伸縮性樹脂基板2と強固に貼着されている。
【0036】
これにより、本実施形態の半導体装置1では、伸縮性樹脂基板2を伸縮させた際に、伸縮部となる伸縮性樹脂基板2と、非伸縮部となる非伸縮性樹脂基板3との間で剥離することを防止すること可能である。また、TFT4は、非伸縮部となる非伸縮性樹脂基板3の上に設けられているため、伸縮性樹脂基板2による伸縮の影響を軽減することが可能である。
【0037】
したがって、本実施形態の半導体装置1では、伸縮性樹脂基板2の伸縮によるTFT4への影響を軽減し、TFT4の特性の安定化を図ることが可能である。
【0038】
(半導体装置の製造方法)
次に、上記半導体装置1の製造方法について、
図4~
図12を参照しながら説明する。
なお、
図4~
図12は、半導体装置1の製造工程を順に説明するための断面図である。
【0039】
上記半導体装置1を製造する際は、先ず、
図4に示すように、第1の支持基板21の上に、複数の非伸縮性樹脂基板3となる非伸縮性樹脂基材30を形成する。具体的には、第1の支持基板21にガラス基板を用い、この第1の支持基板21の上に、上述した非伸縮性樹脂基板3となるPIを含む塗液をスピンコートにより塗布して塗膜を形成した後に、この塗膜を乾燥させることによって、PIフィルムからなる非伸縮性樹脂基材30を形成する。
【0040】
次に、
図5に示すように、非伸縮性樹脂基材30の上に、複数の半導体素子TFT4を形成する。具体的には、非伸縮性樹脂基材30の上に、通常の半導体製造プロセスを用いて、ゲート電極7と、絶縁層8と、半導体層6と、ソース電極9及びドレイン電極10とを順に形成する。
【0041】
また、必要に応じて保護層12を形成する。具体的では、ネガ型のフォトレジスト材料であるSU-8を用いて、このTFT4の上にスピンコートにより塗布した後に、フォトマスクを通して露光、現像を行うことによって、保護層12を形成する。この保護層12は、1μm以上の厚膜化が可能であり、化学的安定性に優れ、ヤング率が2GPa以上であるため、TFT4の歪み抑制に効果的である。
【0042】
次に、
図6に示すように、複数のTFT4の上に接着層Sを介して第2の支持基板22を貼着する。具体的には、第2の支持基板22にガラス基板を用い、接着層Sにフィックスフィルムを用いて、複数のTFT4の上に接着層Sを介して第2の支持基板22を貼り付ける。
【0043】
次に、
図7に示すように、第1の支持基板21を剥離する。具体的には、レーザーリフトオフを用いて、第1の支持基板21側からレーザー光を照射し、非伸縮性樹脂基材30と第1の支持基板21との界面をアブレーションすることによって、非伸縮性樹脂基材30から剥離した第1の支持基板21を除去する。
【0044】
次に、
図8に示すように、非伸縮性樹脂基材30をTFT4毎にその周囲を囲む複数の非伸縮性樹脂基板3に切断する。具体的には、非伸縮性樹脂基材30にレーザー光を照射し、非伸縮性樹脂基材30の非伸縮性樹脂基板3となる部分の周囲をレーザー加工により切断する。
【0045】
次に、
図9に示すように、複数の非伸縮性樹脂基板3に切断された非伸縮性樹脂基材30の上に、密着層5を形成する。具体的には、スパッタリング法を用いて、非伸縮性樹脂基材30の上に、SiO
2膜からなる密着層5を形成する。なお、SiO
2膜の形成には、シランカップリング剤などの塗布により形成することも可能である。
【0046】
次に、
図10に示すように、密着層5が形成された非伸縮性樹脂基材30のうち、複数の非伸縮性樹脂基板3以外の余白部分を除去する。
【0047】
ここで、非伸縮性樹脂基材30のうち、複数の非伸縮性樹脂基板3となる部分の周囲は、予め切断されているため、これら複数の非伸縮性樹脂基板3を残して、複数の非伸縮性樹脂基板3以外の余白部分をその面上の密着層5と共に型抜きするように除去することが可能である。
【0048】
次に、
図11に示すように、複数の非伸縮性樹脂基板3の上に密着層5を介して伸縮性樹脂基板2を貼着する。具体的には、複数の非伸縮性樹脂基板3の上にある密着層5に対して、アクリル系粘着フィルムからなる伸縮性樹脂基板2を加熱圧着することによって、このアクリル系粘着フィルムの粘着力により伸縮性樹脂基板2を貼り付ける。
【0049】
次に、
図12に示すように、第2の支持基板22を剥離する。具体的には、複数のTFT4の上から接着層Sと共に剥離した第2の支持基板22を除去する。以上の工程を経ることによって、上記半導体装置1を作製することが可能である。
【0050】
本実施形態の半導体装置1の製造方法では、上述した伸縮性樹脂基板2の粘着力により複数の非伸縮性樹脂基板3と強固に貼着されるため、伸縮性樹脂基板2を伸縮させた際に、伸縮部となる伸縮性樹脂基板2と、非伸縮部となる非伸縮性樹脂基板3との間で剥離することを防止しながら、この半導体装置1の特性の安定化を図ることが可能である。
【0051】
また、本実施形態の半導体装置1の製造方法では、このような伸縮性を有する半導体装置1を歩留まり良く製造することが可能である。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記半導体装置1では、半導体素子としてTFT4を備えた構成となっているが、本発明が適用される半導体装置については、このような構成に必ずしも限定されるものではなく、例えば受光素子や歪みセンサ、圧力センサなどの半導体素子を備えた電子デバイスとすることが可能である。
【実施例0053】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0054】
本実施例では、先ず、第1の支持基板となるガラス基板の上に、非伸縮性基材となるPIフィルムを形成する。PIフィルムフィルムの形成には、ポリイミドワニス(宇部興産社製)をスピンコートにより成膜した後、窒素雰囲気中において400℃、1時間の熱処理を行った。これにより、約15μmの厚みを有するPIフィルムを形成した。
【0055】
次に、PIフィルムの上に、30個×30個のTFTをマトリックス状に並べて形成する。具体的には、スパッタ装置により、モリブデン合金膜からなるゲート電極を形成し、その上に、Siの熱酸化により厚さ200nmのSiO2膜からなる絶縁層を形成した。また、絶縁層の上に、スパッタ装置により、In-Sn-Zn-O(ITZO)のターゲットを用い、チャンバー内にアルゴンと酸素との混合ガスを流しながら、厚さ20nmのITZO膜からなる半導体層を形成した。その後、ホットプレートを用いて、大気雰囲気中で300℃、1時間の熱処理を行った。また、半導体層の上に、スパッタ装置により、モリブデン合金膜からなるソース電極及びドレイン電極を形成した。これにより、ボトムゲート-トップコンタクト構造を有するTFTを形成した。なお、このTFTのチャンル長は100μmであり、チャネル幅は500μmである。
【0056】
次に、ガラス基板の上に、ネガ型のレジスト材料であるSU-8(マイクロケム社製)をスピンコート法により塗布した後、フォトマスクを通して露光、現像を行うことによって、TFTの形状に対応した保護層を形成する。
【0057】
次に、複数のTFTの上に、接着層となるフィックスフィルムを介して第2の支持基板となるガラス基板を貼り付けた後、レーザー光を照射し、PIフィルムから剥離したガラス基板を除去する。
【0058】
次に、PIフィルムにレーザー光を照射し、非伸縮性樹脂基板となる部分の周囲をレーザー加工により切断する。
【0059】
次に、スパッタリング法を用いて、PIフィルムの上に、SiO2膜からなる密着層を形成する。
【0060】
次に、PIフィルムのうち、複数の非伸縮性樹脂基板を残して、複数の非伸縮性樹脂基板以外の余白部分をその面上のSiO2膜と共に型抜きするように除去する。
【0061】
次に、複数の非伸縮性樹脂基板の上にある密着層に対して、アクリル系粘着フィルムからなる伸縮性樹脂基板を加熱圧着することによって、このアクリル系粘着フィルムの粘着力により伸縮性樹脂基板を貼り付ける。
【0062】
次に、複数のTFTの上から接着層と共に剥離したガラス基板を除去する。以上の工程を経ることによって、伸縮性を有する半導体装置を作製した。
【0063】
この伸縮性を有する半導体装置について、伸縮性樹脂基板を伸縮したときの伸縮性樹脂基板の伸張率(%)に対するTFTの特性(ゲート電圧-ドレイン電流特性)の変化を測定した。その測定結果を
図13に示す。
【0064】
なお、本測定では、伸縮性樹脂基板の両端を互いに離間する方向に伸張したときの伸張率を0~50%の範囲で10%毎に変化させ、各伸張率での測定を行い、伸張後についても測定を行った。
【0065】
図13に示すように、各測定において、ゲート電圧はほぼ0の状態から立ち上がっている。また、ヒステリシスもほとんど見られないので、良好な特性を示していることがわかる。
【0066】
また、
図13には示されていないが、同様の測定を繰り返しても、ばらつきが極めて小さく、何れも良好な特性が得られたため、再現性に優れていることも確認した。
【0067】
さらに、伸縮したときのTFTの特性の安定化についても、伸張率が0%の場合と伸張率が50%の場合との比較において同じ良好な特性を確認した。
【0068】
また、本実施例の半導体装置において、移動度は30.0cm2/Vsであり、Ion/Ioffの比は107以上であり、良好な結果が得られた。
【0069】
本実施例の半導体装置では、上述した伸縮性樹脂基板の粘着力により複数の伸縮性樹脂基板が伸縮性樹脂基板と強固に貼着されるため、伸縮性樹脂基板を伸縮させた際に、伸縮部となる伸縮性樹脂基板と、非伸縮部となる非伸縮性樹脂基板との間で剥離することを防止しながら、この半導体装置1の特性の安定化を図ることが可能である。
1…半導体装置 2…伸縮性樹脂基板 3…非伸縮性樹脂基板 4…半導体素子(TFT) 5…密着層 6…半導体層 7…ゲート電極 8…絶縁層 9…ソース電極 10…ドレイン電極 11…配線層 12…保護層 21…第1の支持基板 22…第2の支持基板 30…非伸縮性樹脂基材 S…接着層