(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075652
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】基板支持体及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230524BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188686
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小岩 真悟
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
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5F004CA06
5F131AA02
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5F131EB12
5F131EB13
5F131EB16
5F131EB18
5F131EB22
5F131EB79
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】基台に形成された流路を通流する伝熱媒体により、適切に基板の温度を調節できる基板支持体を提供する。
【解決手段】基板を支持する基板支持体であって、前記基板の温調用流体が流れる流路が内部に形成された導電性の基台部と、前記基台部の上面に配置され、前記基板の支持面を上面に備える静電吸着部と、前記基台部と前記静電吸着部とを相互に接合する金属接合部と、を有し、前記基台部は、前記流路の側面の少なくとも一部、及び前記流路の底面を形成する本体部材と、前記流路の天面を形成し、前記温調用流体と前記静電吸着部との間で熱伝達を行う伝熱部材と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持する基板支持体であって、
前記基板の温調用流体が流れる流路が内部に形成された導電性の基台部と、
前記基台部の上面に配置され、前記基板の支持面を上面に備える静電吸着部と、
前記基台部と前記静電吸着部とを相互に接合する金属接合部と、を有し、
前記基台部は、
前記流路の側面の少なくとも一部、及び前記流路の底面を形成する本体部材と、
前記流路の天面を形成し、前記温調用流体と前記静電吸着部との間で熱伝達を行う伝熱部材と、を備える、基板支持体。
【請求項2】
前記伝熱部材は、前記静電吸着部との線膨張係数差が3e-6以下の部材により構成される、請求項1に記載の基板支持体。
【請求項3】
前記伝熱部材は、AlとSiの複合材、AlとSiCの複合材又はTi合金の少なくともいずれかにより構成される、請求項2に記載の基板支持体。
【請求項4】
前記本体部材が、前記伝熱部材と同一の部材により構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板支持体。
【請求項5】
前記本体部材が、Al合金により構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板支持体。
【請求項6】
前記金属接合部は、接合温度が700℃以下の金属ロウである、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板支持体。
【請求項7】
前記金属ロウは、Alロウ又はArロウの少なくともいずれかである、請求項6に記載の基板支持体。
【請求項8】
前記本体部材と前記伝熱部材とを電気的に接続するコンタクトバンドを更に備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板支持体。
【請求項9】
前記本体部材と前記伝熱部材とが、樹脂材料からなる接着剤により相互に接合される、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板支持体。
【請求項10】
前記流路の内部には、内部を通流する温調用流体の、前記樹脂材料に対する接触流速を低減する堰が形成される、請求項9に記載の基板支持体。
【請求項11】
前記温調用流体と前記樹脂材料とを間を遮断する封止部材を備える、請求項9又は10に記載の基板支持体。
【請求項12】
基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板の処理空間を画成する処理チャンバと、
前記処理空間の内部に配置される請求項1~11のいずれか一項に記載の基板支持体と、
前記処理空間に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記処理ガスにより前記処理空間にプラズマを生成するプラズマ生成部と、を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板支持体及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入口及び出口まで延在する冷媒用の流路がその内部に設けられた基台、及び、基台の上面に接着剤を介して設けられ、その内部又は下面にヒータが設けられた静電チャックを有する載置台、を備える基板処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基台に形成された流路を通流する伝熱媒体により、適切に基板の温度を調節できる基板支持体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板を支持する基板支持体であって、前記基板の温調用流体が流れる流路が内部に形成された導電性の基台部と、前記基台部の上面に配置され、前記基板の支持面を上面に備える静電吸着部と、前記基台部と前記静電吸着部とを相互に接合する金属接合部と、を有し、前記基台部は、前記流路の側面の少なくとも一部、及び前記流路の底面を形成する本体部材と、前記流路の天面を形成し、前記温調用流体と前記静電吸着部との間で熱伝達を行う伝熱部材と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基台に形成された流路を通流する伝熱流体により、適切に基板温度を調節できる基板支持体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態にかかるプラズマ処理システムの構成例を示す縦断面図である。
【
図2】第1の実施形態にかかる基板支持体の構成例を示す縦断面図である。
【
図3】従来の基板支持体の構成例を示す縦断面図である。
【
図4】本実施形態にかかる基板支持体の構成部材の組み合わせを示す表である。
【
図5】第2実施形態にかかる基板支持体の構成例を示す縦断面図である。
【
図6】第3実施形態にかかる基板支持体の構成例を示す縦断面図である。
【
図7】基板支持体の他の構成例を示す縦断面図である。
【
図8】基板支持体の他の構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程では、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の表面に積層して形成されたエッチング対象層(例えばシリコン含有膜)に対して、予めパターンが形成されたマスク層(例えばレジスト膜)をマスクとしたエッチング処理が行われている。このエッチング処理は、一般的に静電力を利用して基板を吸着保持する基板支持体を備えるプラズマ処理装置において行われる。
【0009】
特許文献1には、かかる基板支持体(載置台)を備える基板処理装置が開示されている。特許文献1に記載の基板支持体は、冷媒用の流路が形成された基台と、基板の加熱用のヒータが設けられた静電チャックと、が接着剤を介して接合されることにより形成されている。
【0010】
ところで近年のプラズマ処理装置においては、前述のエッチング処理として、積層して形成された基板に対して孔を深掘り形成する、3DのNAND HARC(High Aspect Ratio Contact)工程(以下、単に「HARC工程」という。)が行われる場合がある。しかしながら、かかるHARC工程においては、RF(Radio Frequency)電力をハイパワー化することで適切に孔を深掘り形成する要求がある一方、RF電力のハイパワー化に起因する基板の高温化により孔を適切に形成できなくなるおそれがある。例えば、基板の高温化により基板上に形成された孔が閉塞される場合があり、これにより適切に孔を深掘りできなくなるおそれがある。
【0011】
ここで、孔の閉塞を抑制してHARC工程を適切に行うための対策方法としては、例えば処理対象の基板を所望の温度以下に保つこと、すなわち基板の冷却を適切に行うことが考えられる。
【0012】
基板支持体に支持された基板の冷却は、特許文献1にも開示されるように、一般的に基板支持体の基台内部に形成された流路を通流する冷媒により行われる。しかしながら、特許文献1に開示される基板支持体(載置台)のように、流路が形成された基台と基板を支持する静電チャックとが接着剤を介して接合される場合、基板の冷却が適切に行われない場合がある。具体的には、基台と静電チャックとを接合する接着剤としては、熱抵抗の大きな樹脂材料からなる接着剤(以下、「樹脂製接着剤」という。)が用いられる場合が多く、当該樹脂製接着剤により冷媒から基板への熱伝達が阻害されることで、適切に基板を冷却できないおそれがある。
【0013】
そこで本発明者らが鋭意検討を行ったところ、流路が形成された基台と基板を支持する静電チャックを、上記した樹脂製接着剤による接着に代えて、熱抵抗の小さい金属ロウを用いて接合することで、熱伝導を促進して基板を適切に冷却できる可能性を見出した。しかしながら、この一方で、一般的に基台と静電チャックとは線膨張係数の異なる部材でそれぞれ構成されるため、当該金属接合時に生じる熱応力に起因してこれら基台や静電チャックに破損が生じることが懸念される。
【0014】
本開示にかかる技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基台に形成された流路を通流する伝熱流体により、適切に基板冷却ができる基板支持体を提供する。以下、本実施形態にかかる基板処理装置としてのプラズマ処理システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<プラズマ処理装置>
先ず、本実施形態にかかるプラズマ処理システムについて説明する。
図1は本実施形態にかかるプラズマ処理システムの構成の概略を示す縦断面図である。
【0016】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持体11及びガス導入部を含む。基板支持体11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。シャワーヘッド13は、基板支持体11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10の内部には、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持体11により規定されたプラズマ処理空間10sが形成される。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持体11は、プラズマ処理チャンバ10とは電気的に絶縁される。
【0017】
基板支持体11は、本体部材111及びリングアセンブリ112を含む。本体部材111の上面は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域111a(基板支持面)と、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111b(リング支持面)とを有する。環状領域111bは、平面視で中央領域111aを囲んでいる。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含み、1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。
【0018】
図2に示すように、一実施形態において本体部材111は、基台113及び静電チャック114を含む。基台113と静電チャック114は、金属接合層115を介して積層して接合されている。
【0019】
一実施形態において基台113は、本体部材113a及び伝熱部材113bを含む。本体部材113aと伝熱部材113bは、接着部材113cを介して積層して接合される。
【0020】
本体部材113aは、例えばAl合金等の導電性部材により構成される。本体部材113aの導電性部材は下部電極として機能する。伝熱部材113bが接合される側の面である本体部材113aの上面には、流路Cが形成される。換言すれば、本体部材113aは、断面視において流路Cが形成された凹凸形状を有する。流路Cにはチラーユニット(図示せず)からの伝熱媒体(温調用流体)が循環供給される。そして流路Cに伝熱媒体を循環させることにより、リングアセンブリ112、後述の静電チャック114、及び基板Wを所望の温度に調整する。なお、伝熱媒体としては、一例として、冷却水等の冷媒を用いることができる。
【0021】
なお、
図2においては流路Cが本体部材113aにおける中央領域111a(基板W)の下部に形成される場合を例に図示を行っているが、流路Cは、リングアセンブリ112に対応して環状領域111bの下部に更に形成されてもよい。
【0022】
伝熱部材113bは、例えばAlとSiの複合材やAlとSiCの複合材(以下、これらを併せて「Al系複合材」という場合がある。)等の導電性部材、より具体的には、後述の静電チャック114と同程度の線膨張係数を有する導電性部材により構成される。伝熱部材113bは、例えば本体部材113aと略同一径の円板形状で成形され、本体部材113aに形成された流路Cを上面から閉塞するように、当該本体部材113aの上面に接合される。換言すれば、伝熱部材113bは、本体部材113aに形成された流路Cの天面として機能し得る。
【0023】
接着部材113cは本体部材113aと伝熱部材113bとを接合する。接着部材113cの材料は特に限定されないが、例えば上述の樹脂製接着剤のように、熱抵抗の大きな接着剤が用いられ得る。
【0024】
また、一実施形態において基台113には、本体部材113aと伝熱部材113bとを電気的に接続する金属製のコンタクトバンド113dが設けられている。コンタクトバンド113dは、例えばTiとAlの複合材、ステンレス又はBeCuの少なくともいずれかにより構成することができる。
【0025】
静電チャック114は、基台113(より具体的には伝熱部材113b)の上面に、後述の金属接合層115を介して接合される。静電チャック114の上面は前述の中央領域111a及び環状領域111bを有する。静電チャック114の内部には、基板Wを吸着保持するための第1の電極114aと、リングアセンブリ112を吸着保持するための第2の電極114bとが設けられている。静電チャック114は、例えばセラミックス等の誘電体からなる一対の誘電膜の間に第1の電極114a及び第2の電極114bを挟んで構成される。
【0026】
なお、
図2においては、静電チャック114における、基板Wを上面に保持する中央領域111aとリングアセンブリ112を上面に保持する環状領域111bとが一体に構成される場合を例に図示を行った。しかしながら、静電チャック114の構成はこれに限られず、静電チャック114の中央領域111aと環状領域111bとは、独立して構成されてもよい。このように中央領域111aと環状領域111bとを独立して構成することにより、基板Wの温度調整とリングアセンブリ112の温度調整とを熱的に分離して独立して行うことができる。
【0027】
金属接合層115は、基台113の伝熱部材113bと静電チャック114とを接合する。金属接合層115としては、伝熱部材113bと静電チャック114との間での熱伝達が適切に行われるように、熱抵抗の小さい(熱伝導率の大きい)材料、例えばAlロウやAgロウ等の金属ロウが選択され得る。
【0028】
なお、図示は省略するが、基板支持体11は、リングアセンブリ112、静電チャック114及び基板Wのうち少なくとも1つを加熱するヒータ等の加熱モジュールが更に設けられてもよい。加熱モジュールとしてのヒータは、例えば静電チャック114の内部において、第1の電極114a及び/又は第2の電極114bの下部に設けられ得る。また、基板支持体11は、基板Wの裏面と静電チャック114の上面との間に伝熱ガス(バックサイドガス)を供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0029】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給部20からガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10sに導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる、1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0030】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0031】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持体11の導電性部材(下部電極)及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材(上部電極)に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0032】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して下部電極及び/又は上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、下部電極及び/又は上部電極に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0033】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、下部電極に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック114内の吸着用電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、上部電極に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0034】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10sの内部圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0035】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0036】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0037】
<プラズマ処理装置による基板の処理方法>
次に、以上のように構成されたプラズマ処理装置1における基板Wの処理方法の一例について説明する。なお、プラズマ処理装置1においては、基板Wに対してエッチング処理(例えばHARC工程)が行われる。
【0038】
先ず、プラズマ処理チャンバ10の内部に基板Wが搬入され、基板支持体11の静電チャック114上に基板Wが載置される。次に、静電チャック114の吸着用電極に電圧が印加され、これにより、静電力によって基板Wが静電チャック114に吸着保持される。
【0039】
静電チャック114に基板Wが吸着保持されると、次に、プラズマ処理チャンバ10の内部が所定の真空度まで減圧される。次に、ガス供給部20からシャワーヘッド13を介してプラズマ処理空間10sに処理ガスが供給される。また、第1のRF生成部31aからプラズマ生成用のソースRF電力が下部電極に供給され、これにより、処理ガスを励起させて、プラズマを生成する。この際、第2のRF生成部31bからバイアスRF電力が供給されてもよい。そして、プラズマ処理空間10sにおいて、生成されたプラズマの作用によって、基板Wにエッチング処理が施される。
【0040】
エッチング処理を終了する際には、第1のRF生成部31aからのソースRF電力の供給及びガス供給部20からの処理ガスの供給が停止される。エッチング処理中にバイアスRF電力を供給していた場合には、当該バイアスRF電力の供給も停止される。
【0041】
次いで、静電チャック114による基板Wの吸着保持が停止され、エッチング処理後の基板W、及び静電チャック114の除電が行われる。その後、基板Wを静電チャック114から脱着し、プラズマ処理装置1から基板Wを搬出する。こうして一連のエッチング処理が終了する。
【0042】
<基板支持体に支持された基板の冷却方法>
図3は、例えば特許文献1に開示される基板処理装置等に設けられる、従来の基板支持体200の構成の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明において、本開示の技術にかかる基板支持体11と同様の構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0043】
図3に示すように、従来の基板支持体200は、静電チャック114及び基台201を含む。静電チャック114と基台201は、接着剤202を介して積層して接合されている。
【0044】
静電チャック114は、
図2に示した本実施形態に係る基板支持体11に用いられる静電チャック114と同様の構成を有している。すなわち、例えばセラミック等の絶縁材料からなる絶縁材の間に第1の電極114a及び第2の電極114bを挟んで構成されている。また、静電チャック114の上面には基板W及びリングアセンブリ112が吸着保持される。
【0045】
基台201は、例えばAl合金等の導電性部材により構成される。基台201の導電性部材は、下部電極として機能する。基台201内には流路Cが形成される。
【0046】
接着剤202は、静電チャック114と基台201とを接合する。上述したように、接着剤202としては、一般的に、熱抵抗が大きい(熱伝導率の小さい)樹脂製接着剤が用いられる。
【0047】
ここで、このように構成された従来の基板支持体200により基板Wを支持して、エッチング処理としてのHARC工程を行った場合、適切に基板Wに対して孔を深掘り形成できないおそれがある。具体的には、上述したように、下部電極にRFをハイパワーで印加すると、これに起因して静電チャック114に吸着保持された基板Wが高温になり、これにより、形成された孔が閉塞してエッチングが進行しなくなるおそれがある。
【0048】
かかる孔の閉塞を抑制するための手法としては、基台201に形成された流路Cを通流する冷媒からの熱伝達により、静電チャック114に保持された基板Wを冷却することが考えられる。しかしながら、従来の基板支持体200のように、流路Cが形成された基台201と、基板Wを吸着保持する静電チャック114とが熱抵抗が大きい樹脂製接着剤(熱伝導率:0.2~0.3W/mK)である接着剤202により接合されていると、当該樹脂製接着剤により冷媒から基板Wへの熱伝達が阻害され、適切に基板Wを冷却できないおそれがある。
【0049】
そこで本実施形態にかかる基板支持体11においては、
図2に示したように、流路Cが形成された基台113と静電チャック114とを、熱抵抗の小さな金属接合層115、例えばAlロウやAgロウ等の金属ロウ(熱伝導率:100~160W/mK)により接合する。更に本実施形態に係る基板支持体11では、流路Cが形成された基台113を、流路Cの底面及び側面の少なくとも一部を形成し、導電性部材により構成される本体部材113aと、流路Cの天面を形成し、静電チャック114と同程度の線膨張係数を有する導電性部材により構成される伝熱部材113bと、に分割して構成する。本体部材113aと伝熱部材113bは、一例において熱抵抗の小さい樹脂製接着剤により接着する。
【0050】
本実施形態のように基台113と静電チャック114とを金属ロウ(金属接合層115)により接合する場合、溶融した金属ロウにより基台113と静電チャック114とが加熱されることとなる。この際、基台113と静電チャック114の熱膨張係数差が大きいと、接合時に生じる熱応力によってもたらされる残留応力により、基台113又は静電チャック114が破損する可能性がある。
【0051】
例えば、
図3に示した従来の基板支持体200のように、アルミニウム合金(線膨張係数:約23e-6/℃)製の基台201と、セラミックス(線膨張係数:約7~8e-6/℃)製の静電チャック114とを金属ロウにより接合した場合、静電チャック114と比べて基台201の線膨張量が大きいため、金属接合層(金属ロウ)が残留応力を十分に緩和することができないと、静電チャック114が破損してしまう。
【0052】
そこで本実施形態においては、上述したように、少なくとも静電チャック114と直接的に接合される基台113の伝熱部材113bを、静電チャック114(セラミックス)と同程度の線膨張係数を有する導電性部材、例えばAl系複合材(線膨張係数:約7~9e-6/℃)により形成する。このように、金属接合層115を介して接合される静電チャック114と伝熱部材113bの線膨張係数差を小さくすることにより、静電チャック114と基台113との接合時に生じる熱応力を小さくすることができる。すなわち、静電チャック114と伝熱部材113bとの間で発生する残留応力を小さくすることができ、これにより線膨張係数差に起因する基台113や静電チャック114の破損を適切に抑制することができる。
【0053】
本実施形態によれば、このように基台113を本体部材113aと伝熱部材113bに分割して構成し、静電チャック114と直接的に接合される伝熱部材113bと、接合対象の当該静電チャック114の線膨張係数差を小さくすることで、適切に基台113と静電チャック114とを金属ロウを用いて接合し、本実施形態に係る基板支持体11を形成できる。
【0054】
そして本実施形態によれば、このように基台113と静電チャック114とを金属ロウ(金属接合層115)により接合することで、従来と比較して流路Cを通流する冷媒から静電チャック114(基板W)への熱伝達が促進され、金属接合層115を介して適切に基板Wを冷却することができる。すなわち、下部電極に印加するRFのハイパワー化と、基板Wの低温化の両立が可能になる。
【0055】
またこの時、伝熱部材113bは、流路Cの天面として機能することで直接的に冷媒と接触することに加え、熱容量の大きな本体部材113aとは熱抵抗の小さい樹脂製接着剤により接合されている。これにより、冷媒から伝熱部材113bに対する熱伝達が直接的に行われるとともに、当該伝熱部材113bから本体部材113aに対する熱伝達が抑制されるため、冷媒から静電チャック114(基板W)への熱伝達を更に適切に行うことができる。
【0056】
なお、伝熱部材113bを構成する導電性部材は、本実施形態に示したようなAl系複合材に限定されるものではなく、静電チャック114(セラミックス)との線膨張係数差が小さい導電性部材であれば任意に選択することが可能である。具体的には、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、例えば静電チャック114(セラミックス)との線膨張係数差が3e-6/℃以下である導電性部材で伝熱部材113bを構成することで、適切に線膨張係数差に起因する破損を抑制することができる。
なお、セラミックスとの線膨張係数差が3e-6/℃以下となる他の導電性部材としては、例えばTi合金(線膨張係数差:2e-6/℃)等が挙げられる。
【0057】
ここで、上述のように伝熱部材113bを静電チャック114との線膨張係数差が小さい導電性部材で形成する場合であっても、伝熱部材113bと静電チャック114との接合温度が高い金属ロウを選択して接合を行った場合、接合時に発生する熱応力により静電チャック114に損傷を与えるおそれがある。具体的には、伝熱部材113bと静電チャック114との線膨張係数差が小さい場合であっても、接合温度が高い場合には当該接合時における伸縮変形量の差が大きくなり、これにより静電チャック114に破損が生じるおそれがある。
【0058】
そこで本実施形態においては、かかる接合時に発生する熱応力に起因する静電チャック114の損傷を抑制するため、金属接合層115として使用する金属ロウとしては、接合温度が例えば700℃以下の金属ロウを選択することが望ましい。このように接合温度が所望の温度以下の金属ロウを選択することにより、接合時において発生する伸縮変形量の差を小さくすることができ、すなわち静電チャック114の破損を抑制して基台113(伝熱部材113b)と静電チャック114とを適切に接合できる。
【0059】
図4は、以上の基台113と静電チャック114との関係、具体的には線膨張係数差と金属ロウの接合温度との対応を示す表である。
【0060】
上述したように、本実施形態にかかる基板支持体11においては、流路Cが形成される基台113を静電チャック114との線膨張係数差が3e-6/℃以下の導電性部材で形成し、かつ、当該基台113を静電チャック114と熱伝導率の高く接合温度が700℃以下の金属ロウにより接合することが望ましい。
かかる場合、例えば
図4に示すように、少なくとも基台113の伝熱部材113bをAl系複合材(線膨張係数差:1e-6/℃)で形成し、かつ、金属接合層115としてAlロウやAgロウ(接合温度:500~700℃)を用いることが望ましい。
【0061】
<本開示にかかる基板支持体の作用効果>
以上、本実施形態にかかる基板支持体11によれば、流路Cが形成される基台113と、基板Wを吸着保持する静電チャック114とを、熱抵抗の小さな金属接合層115により接合する。
この時、静電チャック114と接合される基台113の上面側(実施の形態における伝熱部材113b)を、静電チャック114と線膨張係数差が小さい、好ましくは3e-6/℃以下である導電性部材を用いて構成することで、金属接合時の熱応力に起因する基台113や静電チャック114の破損を適切に抑制できる。
【0062】
そして、このように基台113と静電チャック114を金属接合すること、すなわち熱抵抗の小さな金属接合層115で接合することで、冷媒から基板Wに対して熱伝達が適切に行われるため、基板Wの冷却を適切に行うことができる。
またこの時、静電チャック114と直接的に接合される伝熱部材113bを流路Cの天面として機能させ、かつ、伝熱部材113bと本体部材113aとは熱抵抗の大きな樹脂製接着剤により接合するため、冷媒から基板Wへの熱伝達を更に適切に行うことができる。
【0063】
また、このように本実施形態においては冷媒と基板Wとの間での熱伝達を適切に行うことができるため、例えばエッチング処理としてのHARC工程を行う場合であっても、適切に基板Wの冷却を行うことができる。換言すれば、本実施形態にかかる基板支持体11においてはRFのハイパワー化と基板Wの低温化を両立することが可能であり、適切に基板Wに対して孔を深掘り形成することができる。
【0064】
またHARC工程に際してRFをハイパワーで印加し、伝熱部材113b及び静電チャック114が高温化した場合であっても、伝熱部材113bと静電チャック114との間における伸縮変形量の差、すなわち発生する残留応力を小さくできる。そして、このように発生する残留応力が小さくなることで、HARC工程に際しての基台113と静電チャック114との線膨張係数差に起因して破損が生じることが適切に抑制される。換言すれば、金属接合時のみならず、HARC工程に際しても基台113や静電チャック114の破損を抑制できる。
【0065】
更に本実施形態によれば、基台113と静電チャック114とを接合する金属接合層115として、接合温度が700℃以下の金属ロウ(例えばAlロウやAgロウ)を選択する。
これにより、基台113と静電チャック114との接合時において発生する熱応力を小さくすることができ、すなわち、熱応力に起因して静電チャック114に破損が生じることを適切に抑制し、基台113と静電チャック114とを適切に接合できる。
【0066】
また本実施形態にかかる基板支持体11によれば、このように基台113と静電チャック114とを金属接合層115により相互に接合することで、エッチング処理に際しての基板支持体11、及び基板Wの熱応答性が向上する。すなわち、例えばエッチング処理に際してRFをハイパワーとローパワーで交互に印加するハイブリッド運転に際しての熱追従性を向上させることができるため、かかるRFのパワー切替をより短時間で繰り返し行うことが可能になる。
【0067】
なお、以上の実施形態においては、基台113を断面視において凹凸形状を有する本体部材113aと、略平板形状を有する伝熱部材113bと、を接合することにより構成したが、基台113の構成はこれに限定されるものではない。
【0068】
図5は、第2の実施形態にかかる基板支持体の構成の概略を示す縦断面図である。
【0069】
図5に示すように、第2の実施形態にかかる基板支持体211においては、基台213と静電チャック114とが、金属接合層115を介して相互に接合されている。また基台213においては、例えば断面視において上方に向けて凹凸形状を有する本体部材213aと、断面視において下方に向けて凹凸形状を有する伝熱部材213bとが、接着部材213cを介して相互に接続されている。
【0070】
本体部材213aは、例えばAl合金等の導電性部材により構成され、下部電極として機能する。また、上述したように、本体部材213aは断面視において上方に向けて凹凸形状を有する。当該凹凸形状は、後述の伝熱部材213bに形成された凹凸形状と対向して配置されることで、流路Cを形成する。換言すれば、本体部材213aに形成された凹凸形状は、流路Cの底面と、流路Cの側面の少なくとも一部を画成する。
【0071】
伝熱部材213bは、例えば静電チャック114と同程度の線膨張係数を有する導電性部材(例えばAl系複合材)により構成される。また、上述したように、伝熱部材213bは断面視において下方に向けて凹凸形状を有する。当該凹凸形状は、本体部材213aに形成された凹凸形状と対向して配置されることで、流路Cを形成する。換言すれば、伝熱部材213bに形成された凹凸形状は、流路Cの天面と、流路Cの側面の少なくとも一部を画成する。
【0072】
接着部材213cは本体部材213aと伝熱部材213bとを接合する。接着部材213cとしては、例えば熱抵抗の大きな樹脂製接着剤を用いることができる。
【0073】
第2の実施形態にかかる基板支持体211によれば、静電チャック114と金属接合層115を介して接続される伝熱部材213bを断面視において凹凸形状を有するように形成することで、当該伝熱部材213bと流路Cとの接触面積を大きくできる。
これにより、冷媒から伝熱部材213bへの熱伝達量、換言すれば伝熱部材213bによる静電チャック114(基板W)の冷却能力を向上させることができ、基板Wの冷却をより適切に行うことができる。
【0074】
また本実施形態においては、第1の実施形態にかかる基板支持体11と同様に、本体部材213aと伝熱部材213bとが熱抵抗の大きな樹脂製接着剤により接着される。これにより、伝熱部材213bと熱容量の大きな本体部材213aとの間における熱伝達を抑制することができ、すなわち、より適切に基板Wの冷却を行うことができる。
【0075】
続いて
図6は、第3の実施形態にかかる基板支持体の構成の概略を示す縦断面図である。
【0076】
図6に示すように、第3の実施形態にかかる基板支持体311においては、基台313と静電チャック114とが、金属接合層115を介して相互に接合されている。また基台313においては、例えば断面視において上方に向けて凹凸形状を有する本体部材313aと、略円板形状を有する伝熱部材313bとが、接着部材313cを介して接合されている。
【0077】
本体部材313aは、例えば静電チャック114と同程度の線膨張係数を有する導電性部材(例えばAl系複合材)により構成され、下部電極として機能する。また、上述したように、本体部材313aは断面視において上方に向けて凹凸形状を有する。当該凹凸形状は、後述の伝熱部材313bにより閉塞されることで、流路Cを形成する。換言すれば、本体部材313aに形成された凹凸形状は、流路Cの底面と、流路Cの側面を画成する。
【0078】
伝熱部材313bは、例えば静電チャック114と同程度の線膨張係数を有する導電性部材(例えばAl系複合材)により構成される。伝熱部材313bは、本体部材313aに形成された凹凸形状を閉塞するように、当該本体部材313aと積層して配置される。換言すれば、伝熱部材313bは、流路Cの天面を画成する。
【0079】
接着部材313cは本体部材313aと伝熱部材313bとを接合する。接着部材313cとしては、例えば熱抵抗の大きな樹脂製接着剤を用いることができる。
【0080】
第3の実施形態にかかる基板支持体311によれば、上述のように基台313を形成する本体部材313aと伝熱部材313bとを、それぞれ同一の導電性材料で構成する。
これにより。例えばHARC工程においてRFをハイパワーで印加することで本体部材313aと伝熱部材313bとがそれぞれ高温化した場合であっても、当該本体部材313aと伝熱部材313bとの間において伸縮変形量に差が生じることが抑制される。すなわち、HARC工程に際して基台313に破損が生じることが抑制され、基板支持体311による基板Wの吸着保持をより安定的に行うことができる。
【0081】
以上、第1~第3の実施形態に示したように、少なくとも静電チャック114と金属接合層115を介して接合される伝熱部材を、静電チャック114と同程度の線膨張係数を有する導電性部材で構成することにより、静電チャック114と伝熱部材との線膨張係数差に起因して発生する残留応力による基板支持体の損傷を抑制できる。
【0082】
一方、第1~第3の実施形態に示したように、伝熱部材の下方に配置される本体部材は、静電チャック114と同程度の線膨張係数を有するAl系複合材や、従来基板支持体に用いられるAl合金等、任意の部材により構成することができる。
例えば本体部材を静電チャック114と同程度の線膨張係数を有するAl系複合材で構成することにより、HARC工程における高温化に起因する基台の損傷を抑制することができる。
また例えば、従来基板支持体に用いられるAl合金等は、Al系複合材と比較して安価で加工が容易な部材である。すなわち、本体部材をAl合金等で構成することにより、当該本体部材に対して流路Cを容易に形成できるとともに、基板支持体の形成にかかるコストを低減することができる。
【0083】
なお、以上の第1~第3の実施形態に示したように、基台を構成する本体部材と伝熱部材とは、例えば熱抵抗の大きな樹脂製接着剤により接合を行った。しかしながら、当該樹脂製接着剤は、流路Cを通流する冷媒の種類によっては、当該冷媒に対して可溶性を有する場合がある。かかる場合、
図2や
図5、
図6に示したように樹脂製接着剤が流路Cに面して設けられることで、当該樹脂製接着剤が冷媒と接触すると、冷媒を通流させた際に樹脂製接着剤が損傷し、本体部材と伝熱部材とが剥離してしまうおそれがある。
【0084】
そこで、このように冷媒による樹脂製接着剤の損傷を抑制するため、例えば
図7に示すように、接着部材113c(樹脂製接着剤)と流路Cとの接触面には、冷媒と接着部材113cとの接触を防止するための封止部材113e(例えばOリング等)が設けられてもよい。
このように封止部材113eを設けて冷媒と接着部材113cとの接触を防止することで、適切に接着部材113cの損傷を抑制することができる。
【0085】
また例えば
図8に示すように、冷媒による樹脂製接着剤の損傷を抑制するため、接着部材113cと流路Cとの接触面の近傍には、流路Cを通流する冷媒の流速を低下させるための堰113fが形成されていてもよい。堰113fの形状や配置は特に限定されるものではないが、例えば接着部材113cに対して流路Cにおける冷媒の通流方向上流側に設けられ、接着部材113cに接触する冷媒の流速を低下させる。
これにより、単位時間当たり/単位流量当たりの冷媒に対する接着部材113cの溶解量を減少させることができ、すなわち、接着部材113cの損傷を抑制できる。
【0086】
なお、
図7に示した封止部材113eと、
図8に示した堰113fは、いずれか一方のみが設けられていてもよいし、その両方が設けられていてもよい。具体的には、一の基板支持体に形成された流量Cには、
図7、
図8に示したようにいずれか一方のみが設けられていてもよいし、図示は省略するが封止部材113eと堰113fの両方が設けられていてもよい。
【0087】
なお、以上の実施形態においては基台と静電チャックとを、AlロウやAgロウ等の金属ロウである金属接合層を介して接合する場合を例に説明を行ったが、基台と静電チャックとの接合部材はこのような金属ロウに限定されるものではない。
具体的には、少なくとも従来の基板支持体において基台と静電チャックとを接合していた樹脂製接着剤(熱伝導率:0.2~0.3W/mK)と比較して熱伝導率の高い接合部材を用いて基台と静電チャックとの接合を行うことができればよい。
これにより、少なくとも従来の基板支持体と比較して冷媒から基板Wに対する熱伝達量を増加させることができ、すなわち、少なくとも基板Wの冷却を適切に行うことができる。
【0088】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0089】
11 基板支持体
113 基台
113a 本体部材
113b 伝熱部材
114 静電チャック
115 金属接合層
C 流路
W 基板