(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075656
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230524BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20230524BHJP
H01L 21/3065 20060101ALN20230524BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188695
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小岩 真悟
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004BA04
5F004BB22
5F004BB26
5F004BD03
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA02
5F131CA06
5F131EA03
5F131EB13
5F131EB14
5F131EB15
5F131EB16
5F131EB24
5F131EB26
5F131EB27
5F131EB28
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】高温に制御された静電チャックに対して安定した基板の吸脱着を行う。
【解決手段】基板をチャックする静電チャックであり、誘電体と、前記誘電体の内部に前記基板を吸着するための吸着電極と、を有している静電チャックと、前記基板を加熱するためのヒータ電極と、前記吸着電極に、前記基板を吸着するための吸着電圧を印加するための吸着用電源と、前記ヒータ電極に、前記基板を加熱するためのヒータ電圧を印加するためのヒータ用電源と、を備え、前記吸着用電源は、前記ヒータ電圧の大きさに基づいて前記吸着電極に印加する前記吸着電圧の大きさを制御する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を吸着する静電チャックであり、誘電体と、前記誘電体の内部に基板を吸着するための吸着電極と、を含む静電チャックと、
前記基板を加熱するためのヒータ電極と、
前記吸着電極に、前記基板を吸着するための吸着電圧を印加するための吸着用電源と、
前記ヒータ電極に、前記基板を加熱するためのヒータ電圧を印加するためのヒータ用電源と、を備え、
前記吸着用電源は、前記ヒータ電圧の大きさに基づいて前記吸着電極に印加する前記吸着電圧の大きさを制御する、基板支持体。
【請求項2】
前記静電チャックは複数の温調領域を有し、
前記静電チャックは、複数の前記温調領域ごとに、前記吸着電極及び前記ヒータ電極を備える、請求項1に記載の基板支持体。
【請求項3】
前記吸着用電源は、複数の前記温調領域ごとに、前記ヒータ電圧の大きさに基づいて前記吸着電極に印加する前記吸着電圧の大きさをそれぞれ制御する、請求項2に記載の基板支持体。
【請求項4】
前記吸着用電源は、複数の前記温調領域において、前記基板と前記吸着電極との間における電荷の移動量が、前記静電チャックに対して前記基板が残留吸着するリスクのある閾値よりも低くなるように、前記吸着電極に印加する前記吸着電圧の大きさをそれぞれ制御する、請求項2又は3に記載の基板支持体。
【請求項5】
前記吸着用電源は、複数の前記温調領域において、前記電荷の移動量が一定となるように、前記吸着電極に印加する前記吸着電圧の大きさをそれぞれ制御する、請求項4に記載の基板支持体。
【請求項6】
前記静電チャックは、基台の上に接合されており、
前記ヒータ電極は、前記誘電体の内部であって、前記吸着電極よりも基台側に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板支持体。
【請求項7】
前記吸着電極は、第1の吸着電極及び第2の吸着電極を含み、
前記吸着用電源が、前記第1の吸着電極及び前記第2の吸着電極のそれぞれに印加する吸着電圧の大きさは、それぞれ周期的に変化し、かつ、前記第1の吸着電極に印加する吸着電圧の位相は、前記第2の吸着電極に印加する吸着電圧の位相と異なる、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板支持体。
【請求項8】
前記第1の吸着電極と前記第2の吸着電極に印加する吸着電圧の位相差は、0°を超え、180°未満である、請求項7に記載の基板支持体。
【請求項9】
前記第1の吸着電極と前記第2の吸着電極に印加する吸着電圧の位相差は、30°以上150°以下である、請求項7又は8に記載の基板支持体。
【請求項10】
前記静電チャックは、複数の吸着電極を含み、
前記吸着用電源が複数の前記吸着電極に印加する吸着電圧の大きさは、それぞれ周期的に変化し、かつ、複数の前記吸着電極のそれぞれに印加する吸着電圧の位相はそれぞれ異なる、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板支持体。
【請求項11】
複数の前記吸着電極に印加する吸着電圧のうち、いずれか2つの吸着電圧の位相差は、0°を超え、180°未満である、請求項10に記載の基板支持体。
【請求項12】
前記吸着電圧の波形は、正弦波又は矩形波である、請求項7~11のいずれか一項に記載の基板支持体。
【請求項13】
チャンバと、
前記チャンバ内に配置される請求項1~12のいずれか一項に記載の基板支持体と、
制御部と、
を含む、基板処理装置。
【請求項14】
基板を吸着する静電チャックであり、誘電体と、前記誘電体の内部に前記基板を吸着するための吸着電極と、を含む静電チャックと、
前記基板を加熱するためのヒータ電極と、
前記吸着電極に、前記基板を吸着するための吸着電圧を印加するための吸着用電源と、
前記ヒータ電極に、前記基板を加熱するためのヒータ電圧を印加するためのヒータ用電源と、
を備える基板支持体を含む基板処理装置を用いた基板処理方法であって、
前記基板を前記静電チャック上に提供する工程と、
前記ヒータ電極に前記ヒータ電圧を印加して前記基板を加熱する工程と、
前記基板を加熱した状態で、前記基板を処理する工程と、
前記基板の処理中に、前記ヒータ電圧の大きさに基づいて、前記吸着電極に印加する前記吸着電圧の大きさを制御する工程と、
を含む、基板処理方法。
【請求項15】
前記静電チャックは複数の温調領域を有し、
前記静電チャックは、複数の前記温調領域ごとに、前記吸着電極及び前記ヒータ電極を備え、
前記吸着電圧の大きさを制御する工程においては、複数の前記温調領域ごとに、前記ヒータ電圧の大きさに基づいて前記吸着電極に印加する前記吸着電圧の大きさをそれぞれ制御する、請求項14に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記吸着電圧の大きさを制御する工程は、複数の前記温調領域において、前記基板と前記吸着電極との間における電荷の移動量が、前記静電チャックに対して前記基板が残留吸着するリスクのある閾値よりも低くなるように、前記吸着電極に印加する前記吸着電圧の大きさをそれぞれ制御する、請求項15に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記吸着電圧の大きさを制御する工程は、複数の前記温調領域において、前記電荷の移動量が一定となるように、前記吸着電極に印加する前記吸着電圧の大きさをそれぞれ制御する、請求項16に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記静電チャックは、複数の吸着電極を含み、
前記吸着電圧の大きさを制御する工程は、前記吸着用電源が複数の前記吸着電極に印加する吸着電圧の大きさを、それぞれ周期的に変化させ、かつ、複数の前記吸着電極のそれぞれに異なる位相の吸着電圧を印加する、請求項14~17のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項19】
複数の前記吸着電極に印加する吸着電圧のうち、いずれか2つの吸着電圧の位相差は、0°を超え、180°未満である、請求項18に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被処理基板を吸着する誘電体層と断熱プレートとが積層されてなり、前記断熱プレートの前記誘電体層側上面と側面とが帯電電荷逃避用導体膜で覆われてなる静電チャックが開示されている。特許文献1に開示の静電チャックによれば、前記誘電体層は、静電力を利用して前記被処理基板を吸着させるためのアルミナセラミック等からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、高温に制御された静電チャックに対して安定した基板の吸脱着を行う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板を吸着する静電チャックであり、誘電体と、前記誘電体の内部に前記基板を吸着するための吸着電極と、を有している静電チャックと、前記基板を加熱するためのヒータ電極と、前記吸着電極に、前記基板を吸着するための吸着電圧を印加するための吸着用電源と、前記ヒータ電極に、前記基板を加熱するためのヒータ電圧を印加するためのヒータ用電源と、を備え、前記吸着用電源は、前記ヒータ電圧の大きさに基づいて前記吸着電極に印加する前記吸着電圧の大きさを制御する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、高温に制御された静電チャックに対して安定した基板の吸脱着を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】静電チャックを常温に制御した場合における、基板の吸着時間と電荷移動量の関係を説明するグラフである。
【
図1B】静電チャックを高温に制御した場合における、基板の吸着時間と電荷移動量の関係を説明するグラフである。
【
図2】本開示にかかるプラズマ処理システムの構成例を示す縦断面図である。
【
図3A】第1の実施形態にかかる基板支持体の構成の概略を示す縦断面図である。
【
図3B】第1の実施形態にかかる基板支持体の構成の概略を示す横断面図である。
【
図4A】静電チャックの径方向において、吸着電圧を一定にした場合の静電チャックの温度と電荷の移動量との関係を説明するグラフである。
【
図4B】静電チャックの径方向において、吸着電圧を変化させた場合の静電チャックの温度と電荷の移動量との関係を説明するグラフである。
【
図5】他の実施形態にかかるプラズマ処理システムの構成例を示す説明図である。
【
図6A】第2の実施形態にかかる基板支持体の構成の概略を示す縦断面図である。
【
図6B】第2の実施形態にかかる基板支持体の構成の概略を示す横断面図である。
【
図6C】静電チャックの吸着電極に直流電圧を印加した場合と、交流電圧を印加した場合における吸着時間と電荷の移動量との関係を示す説明図である。
【
図7A】第2の実施形態の基板支持体において、各吸着電極に印加する吸着電圧の位相差が0°である場合の時間と吸着電圧との関係を示すグラフである。
【
図7B】第2の実施形態の基板支持体において、各吸着電極に印加する吸着電圧の位相差が30°である場合の時間と吸着電圧との関係を示すグラフである。
【
図7C】第2の実施形態の基板支持体において、各吸着電極に印加する吸着電圧の位相差が60°である場合の時間と吸着電圧との関係を示すグラフである。
【
図7D】第2の実施形態の基板支持体において、各吸着電極に印加する吸着電圧の位相差が90°である場合の時間と吸着電圧との関係を示すグラフである。
【
図7E】第2の実施形態の基板支持体において、各吸着電極に印加する吸着電圧の位相差が180°である場合の時間と吸着電圧との関係を示すグラフである。
【
図8】第2の実施形態にかかるプラズマ処理システムの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程では、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の表面に積層して形成されたエッチング対象層(例えばシリコン含有膜)に対して、予めパターンが形成されたマスク層(例えばレジスト膜)をマスクとしたエッチング処理が行われている。このエッチング処理は、一般的に静電力を利用して基板を吸着保持する静電チャックを備えるプラズマ処理装置において行われる。
【0009】
前述の静電チャックとしては、特許文献1にも開示されるように、クーロンタイプの静電チャックが用いられる場合がある。通常、クーロンタイプの静電チャックには直流電圧が印加され、安定的な基板の吸脱着を実現するため、当該静電チャックの体積抵抗率を所望の値以上、例えば1e+15cmΩ以上に維持することが求められる。
【0010】
近年、マスク層の材料変更により、静電チャックを高温に制御して基板処理を行う要求が高まっている。ここで、
図1Aに示すように、常温時においては静電チャックの体積抵抗率が高いため、吸着時間に対する電荷の移動量が緩やかになり、基板と静電チャックとの分極が適切に維持される。これに対して、
図1Bに示すように、高温時においては静電チャックの体積抵抗率が下がるため、吸着時間に対する電荷の移動量が急峻になる。この結果、基板と静電チャックとの間での分極を適切に維持できず、残留電荷の影響により安定した吸脱着が困難となる場合がある。このような残留電荷の影響は、一例として静電チャックの温度が200℃付近になると現れはじめ、250℃を超えると顕著になる。
【0011】
高温対応が可能な静電チャックとしては、JR(Johnson-Rahbek)タイプの静電チャックがあるが、JRタイプの静電チャックは残留吸着の制御が困難であり、また、体積抵抗率が温度により大きく変化するため、常温処理と高温処理とを連続して行うことができない。すなわち、従来の静電チャックには改善の余地があり、高温下においても安定的に基板の吸脱着を可能に静電チャックの制御を行うことが求められる。
【0012】
本開示にかかる技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高温に制御された静電チャックにおいて安定した基板の吸脱着を行う。以下、本開示にかかるプラズマ処理システム及びプラズマ処理方法ついて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<プラズマ処理装置>
先ず、本開示にかかるプラズマ処理システムについて説明する。
図2は本開示にかかるプラズマ処理システムの一例を示すの概略断面図である。
【0014】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持体11及びガス導入部を含む。基板支持体11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。シャワーヘッド13は、基板支持体11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10の内部には、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持体11により規定されたプラズマ処理空間10sが形成される。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aを含め、プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持体11は、プラズマ処理チャンバ10とは電気的に絶縁される。
【0015】
基板支持体11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための基板支持面111aと、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面111bとを有する。本体部111のリング支持面111bは、平面視で本体部111の基板支持面111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の基板支持面111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の基板支持面111a上の基板Wを囲むように本体部111のリング支持面111b上に配置される。本体部111は、基台113及び静電チャック114を含む。基台113は、導電性部材を含む。基台113の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャック114は、セラミックス等の誘電体と、誘電体内に配置された吸着電極とを含む。静電チャック114は、基台113の上に配置される。静電チャック114の上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持体11は、静電チャック114、リングアセンブリ112及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含む。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体及び流路を含む。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持体11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0016】
なお、実施の形態に係る基板支持体11の詳細な構成については後述する。
【0017】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給部20からガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる、1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0018】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0019】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持体11の導電性部材(下部電極)及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材(上部電極)に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0020】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して下部電極及び/又は上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、下部電極及び/又は上部電極に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0021】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、下部電極に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、上部電極に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0022】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10sの内部圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0023】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0024】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0025】
<第1の実施形態にかかる基板支持体>
以下、第1の実施形態にかかる基板支持体の構成について説明する。
図3Aは、第1の実施形態にかかる基板支持体11の構成を示す縦断面図である。また、
図3Bは、
図3AにおけるA-A断面を示す横断面図である。
【0026】
静電チャック114の内部には、少なくとも静電チャック114をターゲット温度に調節するように構成される中央ヒータ電極115a及び周縁ヒータ電極115bが設けられている。また、静電チャック114の内部には、基板Wを基板支持面111aに吸着保持するための中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bが、中央ヒータ電極115a及び周縁ヒータ電極115bよりも上面側(基板W側)に設けられている。静電チャック114は、誘電体の間に中央ヒータ電極115a、周縁ヒータ電極115b、中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116b、を挟んだ、クーロンタイプの静電チャックとして構成される。
【0027】
図3Bに示すように、平面視において静電チャック114の基板支持面111aは、径方向内側に形成された第1の温調領域Z1と、第1の温調領域Z1を囲むように形成された第2の温調領域Z2を含む。
【0028】
中央ヒータ電極115aは、中央吸着電極116a(A-A断面)の下方(基台113側)であって、第1の温調領域Z1に対応した位置に設けられている。また、周縁ヒータ電極115bは、周縁吸着電極116b(A-A断面)の下方であって、第2の温調領域Z2に対応した位置に設けられている。すなわち、第1の実施形態の静電チャック114は、複数の温調領域Zごと(
図3Aに示す例では2つの温調領域Zごと)に独立して基板Wの温度調節を可能に構成されている。
【0029】
一例では、中央ヒータ電極115a及び周縁ヒータ電極115bには、ヒータ用電源(図示せず)がそれぞれ接続され、各ヒータ電源から各ヒータ電極にヒータ電圧がそれぞれ印加される。他の例では、中央ヒータ電極115a及び周縁ヒータ電極115bには、単一のヒータ用電源が接続され、当該ヒータ電源から各ヒータ電極にヒータ電圧がそれぞれ印加される。いずれの場合も、ヒータ用電源から中央ヒータ電極115a及び周縁ヒータ電極115bに印加するヒータ電圧は、それぞれ独立して制御可能に構成される。そして、ヒータ用電源からのヒータ電圧の印加により中央ヒータ電極115a及び周縁ヒータ電極115bが加熱され、これにより静電チャック114、及び基板支持面111aに保持された基板Wを加熱する。
【0030】
中央吸着電極116aは、第1の温調領域Z1と対応して設けられている。また、周縁吸着電極116bは、第2の温調領域Z2と対応して設けられている。すなわち、第1の実施形態の静電チャック114は、複数の温調領域Zごと(
図3A及び
図3Bに示す例では2つの温調領域Zごと)に独立して基板Wの吸着電圧を印加可能に構成されている。
【0031】
一例では、中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bには、吸着用電源117がそれぞれ接続され、各吸着用電源から各吸着電極に吸着電圧がそれぞれ印加される。他の例では、中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bには、単一の吸着用電源117が接続され、当該吸着用電源117から各吸着電極に吸着電圧がそれぞれ印加される。いずれの場合も、吸着用電源117から中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bに印加する吸着電圧は、それぞれ独立して制御可能に構成される。そして、吸着用電源117からの吸着電圧の印加により生じる静電気力により、基板支持面111aに基板Wが吸着保持される。
【0032】
<プラズマ処理装置による基板の処理方法>
次に、以上のように構成されたプラズマ処理装置1における基板Wの処理方法の一例について説明する。なお、プラズマ処理装置1においては、基板Wに対して、例えば予めパターンが形成されたマスク層をマスクとしたエッチング処理が行われる。なお、本実施形態においては、静電チャック114の温度が、基板Wの載置前、又は載置後にターゲット温度(例えば200℃以上)まで昇温される。
【0033】
先ず、プラズマ処理チャンバ10の内部に基板Wが搬入され、基板支持体11の静電チャック114上に基板Wが載置される。次に、静電チャック114の中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bに交流電圧が印加され、これにより生じる静電力によって基板Wが静電チャック114に吸着保持される。なお、静電チャック114による基板Wの保持方法の詳細は後述する。
【0034】
静電チャック114に基板Wが吸着保持されると、プラズマ処理チャンバ10の内部が所定の真空度まで減圧される。次に、ガス供給部20からシャワーヘッド13を介してプラズマ処理空間10sに処理ガスが供給される。また、第1のRF生成部31aからプラズマ生成用のソースRF電力が基板支持体11の導電性部材に供給され、これにより、処理ガスを励起させて、プラズマを生成する。この際、第2のRF生成部31bからバイアスRF電力が供給されてもよい。そして、プラズマ処理空間10sにおいて、生成されたプラズマの作用によって、基板Wにエッチング処理が施される。
【0035】
プラズマ処理を終了する際には、第1のRF生成部31aからのソースRF電力の供給及びガス供給部20からの処理ガスの供給が停止される。プラズマ処理中にバイアスRF電力を供給していた場合には、当該バイアスRF電力の供給も停止される。
【0036】
次いで、静電チャック114による基板Wの吸着保持が停止され、プラズマ処理後の基板W、及び静電チャック114の除電が行われる。その後、基板Wを静電チャック114から脱着し、プラズマ処理装置1から基板Wを搬出する。こうして一連のプラズマ処理が終了する。
【0037】
<第1の実施形態の基板支持体による基板の保持方法>
プラズマ処理装置1においては、以上のようにして基板Wにプラズマ処理が行われる。次に、上述の静電チャック114による基板Wの保持方法の詳細について説明する。
【0038】
本実施形態にかかる基板支持体11では、上述のように静電チャック114の2つの温調領域Z1、Z2の温度をそれぞれ独立して制御する。この際、静電チャック114の温度を高温にすると、上述したように当該静電チャック114の体積抵抗率が低下する。このため、
図4Aに示すように、静電チャック114の温度の高い領域(図示の例においては基板Wの周縁部)における電荷の移動量が、温度の低い領域(図示の例においては基板Wの中央部)における電荷の移動量と比較して増加する。この結果、安定した基板Wの吸脱着ができなくなる場合がある。
【0039】
このような問題に対して、本実施形態では、静電チャック114の温度に応じて中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bに印加する吸着電圧を調節することで、静電チャック114における電荷の移動量を制御する。例えば、
図4Bに示すように、静電チャック114の温度が高い第2の温調領域Z2における周縁吸着電極116bに印加する吸着電圧を、中央吸着電極116aに印加する吸着電圧と比較して下げることで、電荷の移動量を略一定に保ち、残留吸着の発生を抑制する。
なお、上述したように静電チャック114の温度は、ヒータ用電源から中央ヒータ電極115a及び周縁ヒータ電極115bに印加するヒータ電圧によって制御される。このため、静電チャック114の温度に代えて、中央ヒータ電極115a及び周縁ヒータ電極115bに印加する電圧に応じて中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bに印加する電圧を調整してもよい。
【0040】
また、静電チャック114の温度と中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bに印加する吸着電圧との相関関係を予め取得し、その相関関係に基づいて、中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bに印加する吸着電圧を制御するように構成してもよい。また例えば、プラズマ処理中に静電チャック114の温度を経時的に測定し、その測定温度に応じて、中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bに印加する吸着電圧をフィードバック制御してもよい。
【0041】
<第1の実施形態にかかる技術の作用効果>
以上の第1の実施形態にかかるプラズマ処理装置1においては、基板支持体11における静電チャック114の温度に応じて吸着用電源117から中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bに印加する吸着電圧を制御する。これにより、静電チャック114の温度の上昇に起因して電荷の移動量が増加することを抑制し、当該電荷の移動量を残留吸着の発生リスクのある閾値よりも下げる。
この際、基板Wと中央吸着電極116a又は周縁吸着電極116bとの間における電荷の移動量が、静電チャック114(基板W)の面内全体で残留吸着の発生リスクのある閾値よりも低く、且つ均一(一定)になるように制御を行うことで、基板Wの吸脱着をより安定して行うことができる。なお、残留吸着の発生リスクのある閾値は、予め実験的に求めてよく、シミュレーション等により求めてもよい。
【0042】
また本実施形態によれば、
図3に示したように、中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bのそれぞれに対して、独立して吸着電圧を印加することができる。これにより、静電チャック114の温調領域の各々の温度に応じて吸着電圧を印加することができ、残留吸着の発生リスクを下げて基板Wの吸脱着をより安定して行うことができる。
【0043】
なお、以上の実施形態においては平面視において静電チャック114を2つの温調領域Zに分割する場合を例に説明を行ったが、温調領域Zの分割数はこれに限定されるものではなく、3つ以上の温調領域に分割されていてもよい。この場合、吸着電極は温調領域Zごとに配置されてよい。
【0044】
なお、以上の実施形態においては、吸着用電源117から中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bに交流電圧を印加する場合を例に説明したが、これに代えて、
図5に示すように、DC電源32から中央吸着電極116a及び周縁吸着電極116bに直流電圧を印加してもよい。
【0045】
<第2の実施形態にかかる基板支持体>
続いて、第2の実施形態にかかる基板支持体の構成について図面を参照しながら説明する。なお、第2の実施形態にかかる基板支持体において、
図3A、
図3Bに示した基板支持体11と実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより説明を簡略ないしは省略する。
【0046】
図6Aは、第2の実施形態にかかる基板支持体200の構成を示す縦断面図である。基板支持体200は、本体部211及びリングアセンブリ112を含む。本体部211の上面は、基板Wを支持するための基板支持面211aと、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面211bとを有する。リング支持面211bは、平面視で基板支持面211aを囲んでいる。本体部211は、基台113及び静電チャック214を含む。静電チャック214は、基台113の上に配置される。静電チャック214の上面は基板支持面211a及びリング支持面211bを有する。静電チャック214の内部には、少なくとも当該静電チャック214をターゲット温度に調節するように構成される中央ヒータ電極115a及び周縁ヒータ電極115bが設けられている。また、静電チャック114の内部には、基板Wを基板支持面211aに吸着保持するための中央吸着電極216a、及びリングアセンブリ112をリング支持面211bに吸着保持するための周縁吸着電極216bが設けられている。
【0047】
図6Bは、
図6AにおけるB-B断面を示す横断面図である。一例では、中央吸着電極216aは、第1の温調領域Z1において互い違いに配置される第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2を有している。また、周縁吸着電極216bは、第2の温調領域Z2において互い違いに配置される第1の周縁吸着電極216b1及び第2の周縁吸着電極216b2を有している。すなわち、第2の実施形態における静電チャック214は、平面視において複数、
図6A及び
図6Bの例においては2つの温調領域Z毎に独立して基板Wを吸着可能に構成されたクーロンタイプの双極型静電チャックとして構成される。
【0048】
第1の中央吸着電極216a1、第2の中央吸着電極216a2、第1の周縁吸着電極216b1及び第2の周縁吸着電極216b2には、基板Wの吸着用電源217a、217bから吸着電圧がそれぞれ印加される。一例では、吸着用電源217a、217bは交流電源である。吸着用電源217a、217bから第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に印加される電圧の波形は、正弦波又は矩形波であってよく、これら以外の波形であってもよい。吸着用電源217aから第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に印加する吸着電圧は、それぞれ独立して制御可能に構成されている。また、吸着用電源217bから第1の周縁吸着電極216b1及び第2の周縁吸着電極216b2に印加する吸着電圧は、それぞれ独立して制御可能に構成されている。そして静電チャック214においては、吸着用電源217からの吸着電圧の印加により生じる静電力によって、基板支持面211aに基板Wが吸着保持される。
【0049】
なお、本実施形態においては、上述のように第1の中央吸着電極216a1、第2の中央吸着電極216a2、第1の周縁吸着電極216b1及び第2の周縁吸着電極216b2のそれぞれに対して吸着用電源217a、217bを接続し、それぞれの電極に対して吸着電圧を独立制御して印加したが、プラズマ処理装置1に設けられる吸着用電源217の数はこれに限定されるものではない。例えば、第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2をそれぞれ同一の吸着用電源217aに接続してもよく、また第1の周縁吸着電極216b1及び第2の周縁吸着電極216b2をそれぞれ同一の吸着用電源217bにそれぞれ接続してもよい。また例えば、第1の中央吸着電極216a1、第2の中央吸着電極216a2、第1の周縁吸着電極216b1及び第2の周縁吸着電極216b2をそれぞれ同一の吸着用電源に接続してもよい。
【0050】
本実施形態にかかる基板支持体200では、吸着用電源217aから第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に印加する吸着電圧の大きさは、それぞれ周期的に変化し、かつ、第1の中央吸着電極216a1に印加する吸着電圧の位相は、第2の中央吸着電極216a2に印加する吸着電圧の位相と異なる。また、吸着用電源217bから第1の周縁吸着電極216b1及び第2の周縁吸着電極216b2に印加する吸着電圧の大きさは、それぞれ周期的に変化し、かつ、第1の周縁吸着電極216b1に印加する吸着電圧の位相は、第2の周縁吸着電極216b2に印加する吸着電圧の位相と異なる。吸着用電源217a、217bからの吸着電圧の印加は、制御部2により制御される。なお、以下の説明においては、第1の中央吸着電極216a1及び第1の周縁吸着電極216b1が本開示の技術にかかる「第1の吸着電極」、第2の中央吸着電極216a2及び第2の周縁吸着電極216b2が本開示の技術にかかる「第2の吸着電極」にそれぞれ相当する。
【0051】
また、以下の説明においては吸着用電源217aから第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に対して交流電圧を印加する場合を例に説明するが、吸着用電源217bから第1の周縁吸着電極216b1及び第2の周縁吸着電極216b2に対して交流電圧を印加する場合も同様に行うことができる。
【0052】
図6Cは、静電チャック214を高温に制御した場合における、吸着時間(横軸)と電荷の移動量(縦軸)との関係を示すグラフである。
図6C中、実線は、静電チャック214の第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に交流電圧を印加した場合における吸着時間と電荷の移動量との関係を示す。また、
図6C中、点線は、静電チャック214の第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に直流電圧を印加した場合における吸着時間と電荷の移動量との関係を示す。
【0053】
上述したように、静電チャック214を高温制御した場合、静電チャック214の体積抵抗率は低下する。このため、静電チャック214の第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に直流電圧を印加すると、経時的に電荷の移動量が増加し、基板Wの吸着保持ができなくなる場合がある。これに対して、静電チャック214の第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に交流電圧を印加すると、吸着電圧の極性が周期的に変化するため、その都度、電荷の移動量がリセットされる。この結果、電荷の移動量の増加に起因して基板Wの吸着保持が不安定になることを抑制できる。
【0054】
ここで、
図7Aに示すように、第1の中央吸着電極216a1に印加する交流電圧Aが、第2の中央吸着電極216a2に印加する交流電圧Bと同位相(位相差0°)である場合、2つの吸着電極に印加される合計電圧が0Vになるタイミングがあり、このタイミングで基板Wが静電チャック214から脱離するおそれがある。このため、第2の実施形態では、第1の中央吸着電極216a1に、第2の中央吸着電極216a2に印加する交流電圧Bの位相と異なる位相を有する交流電圧Aを印加することで、静電チャック214からの基板Wの脱離を抑制する。
【0055】
図7B~
図7Eは、第1の中央吸着電極216a1に、第2の中央吸着電極216a2に印加する交流電圧Bとの位相差が30°、60°、90°又は180°である交流電圧Aを印加した場合における時間(横軸)と電圧(縦軸)との関係をそれぞれ示すグラフである。
【0056】
図7B~
図7Dに示すように、第1の中央吸着電極216a1に、第2の中央吸着電極216a2に印加する交流電圧Bの位相と異なる位相を有する交流電圧Aを印加した場合、2つの吸着電極から基板Wに印加される合計電圧が0Vになるタイミングがない。このため、基板Wが静電チャック214から脱離することを抑制できる。
【0057】
特に、
図7Dに示すように、第1の中央吸着電極216a1に、第2の中央吸着電極216a2に印加する交流電圧Bとの位相差が90°である交流電圧Aを印加した場合、基板Wにかかる合計電圧の平均値が最も高くなり、また合計電圧の変動幅を最も小さくすることができる。
【0058】
一方、
図7Eに示すように、第1の中央吸着電極216a1に、第2の中央吸着電極216a2に印加する交流電圧Bとの位相差が180°である交流電圧Aを印加した場合、
図7Aに示した場合と同様に、2つの吸着電極に印加される合計電圧が0Vになるタイミングがある。
【0059】
以上より、第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2のそれぞれに印加する交流電圧の位相差は、0°を超え180°未満とすることが好ましく、30°~150°とすることがより好ましい。また、この位相差を90°又はその近傍、例えば70°~110°又は80°~100°とすることで、静電チャック214による基板Wの保持をより安定させることができる。
【0060】
<第2の実施形態にかかる技術の作用効果>
第2の実施形態にかかる基板支持体200においては、吸着用電源217aから第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に対して、それぞれ位相が異なる交流電圧が印加される。
【0061】
第2の実施形態によれば、吸着電圧の極性が周期的に変化するため、極性の変化時に電荷の移動量がリセットされる。したがって、静電チャック214を高温(例えば200℃以上)に制御し、その体積抵抗率が低下した場合であっても、電荷の移動量の増加が抑制され、残留電荷等の影響で基板Wの吸着保持が不安定になることを抑制できる。
【0062】
また第2の実施形態によれば、第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に対して、それぞれ位相が異なる交流電圧が印加されることにより、2つの吸着電極に印加される合計電圧が0Vになることがなく、プラズマ処理に際して基板Wが静電チャック214から脱離することを抑制できる。
【0063】
具体的には、上述のように、第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2のそれぞれに印加される交流電圧の位相差を、0°を超え180°未満、又は30°~150°とすることで、静電チャック214からの基板Wの脱離を抑制できる。
【0064】
また本実施形態によれば、第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に、それぞれ位相が異なる交流電圧を印加すること加え、第1の実施形態に示したように静電チャック214の温度に応じて吸着用電源217aから第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に印加する交流電圧の大きさを制御することで、静電チャック214の高温制御時における基板Wの吸脱着をより安定して行うことができる。
【0065】
なお、以上の実施形態においては吸着用電源217aから第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に対して交流電圧を印加する場合を例に説明したが、上述したように、吸着用電源217bから第1の周縁吸着電極216b1及び第2の周縁吸着電極216b2に対する交流電圧の印加も同様に行うことができる。
【0066】
また、以上の実施形態においては、吸着用電源217から第1の中央吸着電極216a1、第2の中央吸着電極216a2、第1の周縁吸着電極216b1及び第2の周縁吸着電極216b2に交流電圧を印加する場合を例に説明をしたが、これらの吸着電極に印加する電圧は交流電圧に限定されるものではない。
【0067】
例えば、各吸着電極に印加される吸着電圧は、大きさが周期的に変化する直流電圧であってもよい。具体的には、
図8に示すように、吸着用電源217a、217bとしてスイッチング式の直流電源を用いて、各吸着電極に印加される電圧の大きさが、第1の電圧値と、第1の電圧値と極性の異なる第2の電圧値との間で周期的に入れ替わるように構成してもよい。この場合、各吸着電極に印加される吸着電圧の極性が周期的に入れ替わる度に、電荷の移動量をリセットすることができる。したがって、静電チャック214を高温に制御して体積抵抗率が低下した場合であっても、基板Wの吸脱着を安定して行うことができる。
【0068】
この場合、第1の中央吸着電極216a1に印加する吸着電圧Aの位相は、第2の中央吸着電極216a2に印加する吸着電圧Bの位相と異なってもよい。また、第1の周縁吸着電極216b1に印加する吸着電圧A´の位相は、第2の周縁吸着電極216b2に印加する吸着電圧B´の位相と異なってもよい。これにより、第1の中央吸着電極216a1及び第2の中央吸着電極216a2に印加される合計電圧、又は第1の周縁吸着電極216b1及び第2の周縁吸着電極216b2に印加される合計電圧が0Vになることが抑制されるため、プラズマ処理中に基板Wが静電チャック214から脱離することを抑制できる。
【0069】
なお、以上の実施形態においては基板支持体200がクーロンタイプの双極型静電チャック214を備える場合を例に説明を行ったが、基板支持体200は、静電チャック214の温調領域Zごとに3つ以上の吸着電極を備えてもよい。この場合であっても、各吸着電極に対して、周期的に大きさが変化する吸着電圧を印加することにより、静電チャック214に対する基板Wの吸脱着を安定化させることができる。また、各吸着電極に対して、異なる位相の吸着電圧を印加するにことで、プラズマ処理中に基板Wが静電チャック214から脱離することを抑制できる。
【0070】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 プラズマ処理装置
114 静電チャック
115a 中央ヒータ電極
115b 周縁ヒータ電極
116a 中央吸着電極
116b 周縁吸着電極
117 吸着用電源
W 基板