(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075657
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】COL1A1 mRNA発現促進剤、MMP-1 mRNA発現抑制剤及びCYR61 mRNA発現抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20230524BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230524BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20230524BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230524BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/08
A61K36/185
A61P17/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188696
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 日向子
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC122
4C083CC02
4C083EE10
4C083EE12
4C083EE13
4C088AB13
4C088AC11
4C088BA08
4C088CA08
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC41
4C088ZC52
(57)【要約】
【課題】天然物の中からCOL1A1 mRNA発現促進作用、MMP-1 mRNA発現抑制作用及びCYR61 mRNA発現抑制作用を有する物質を見出し、それを有効成分として含有するCOL1A1 mRNA発現促進剤、MMP-1 mRNA発現抑制剤及びCYR61 mRNA発現抑制剤を提供する。
【解決手段】本発明のCOL1A1 mRNA発現促進剤、MMP-1 mRNA発現抑制剤及びCYR61 mRNA発現抑制剤に、ビロードアオイの抽出物を有効成分として含有せしめる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビロードアオイの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするCOL1A1 mRNA発現促進剤。
【請求項2】
ビロードアオイの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするMMP-1 mRNA発現抑制剤。
【請求項3】
ビロードアオイの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするCYR61 mRNA発現抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビロードアオイの抽出物を含有するCOL1A1 mRNA発現促進剤、MMP-1 mRNA発現抑制剤及びCYR61 mRNA発現抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、表皮、基底膜及び真皮から構成されている。真皮は、線維芽細胞と該細胞から分泌されるコラーゲン、エラスチン及びヒアルロン酸等の細胞外マトリックスにより構成されている。基底膜は、表皮と真皮との境界部に存在し、表皮と真皮とを繋ぎ止めるだけでなく、皮膚機能の維持に重要な役割を果たしている(非特許文献1参照)。
【0003】
若い皮膚においては、線維芽細胞の増殖が活発であり、線維芽細胞とコラーゲン等の皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことにより、また、基底膜の働きにより、表皮と真皮との相互作用が恒常性を保つことで、水分保持力、柔軟性、弾力性等が確保され、外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
【0004】
ところが、皮膚が紫外線、著しい空気の乾燥、過度の皮膚洗浄、ストレス、喫煙等の外的因子の影響を受けたり、加齢が進んだりすると、細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲンの分解や変質が生じたり、線維芽細胞の増殖が遅くなったりする。その結果、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、角質の異常剥離が起こり、皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワ、くすみ、きめの消失等が生じる。
【0005】
コラーゲンの中でもI型コラーゲンは、最も多く体内に含まれるコラーゲンであり、皮膚の真皮にも多く含まれ、皮膚の強さを生み出す役割を果たしていることが知られている。I型コラーゲンは、ペプチド鎖のα1鎖及びα2鎖から形成されており、各ペプチド鎖はそれぞれCOL1A1遺伝子、COL1A2遺伝子から転写されたmRNAを基に合成される。
【0006】
したがって、COL1A1のmRNAの発現を促進することは、I型コラーゲンの合成を高め、皮膚の老化を防止又は改善することができると考えられる。
【0007】
コラーゲン産生促進作用を有する物質を安全性の高い天然物から入手することが望まれており、これまで、コラーゲンの産生促進作用を有するものとしては、例えば、スターフルーツ葉抽出物(特許文献1)、クスノハガシワ抽出物(特許文献2)等が知られている。また、COL1A1のmRNAの発現を促進する物質としては、トレハンジェリン(特許文献3)、UVBによるCOL1A1 mRNA発現減少を抑制するリンゴポリフェノール(特許文献4)等が知られている。
【0008】
近年、真皮マトリックス成分の減少乃至変性を誘導する因子として、マトリックスメタロプロテアーゼ類(以下、「MMPs」と称することもある)と呼ばれるタンパク質分解酵素群の分解及び再構築がある。
前記MMPsは、その一次構造と基質特異性の違いから、(1)コラゲナーゼ群(MMP-1、MMP-8及びMMP-13)、(2)ゼラチナーゼ群(MMP-2及びMMP-9)、(3)ストロメライシン群(MMP-3及びMMP-10)、(4)膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼ群(MMP-14、MMP-15、MMP-16、及びMMP-17)、(5)その他(MMP-7、MMP-11、及びMMP-12)の5つのグループに分類されている(例えば、特許文献5参照)。
前記MMPsの中でも、MMP-1は、皮膚の真皮マトリックスの主な構成成分であるI型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲンを分解する酵素として知られている。また、その発現は紫外線の照射により大きく増加し、紫外線によるコラーゲンの減少乃至変性の一因となり、皮膚のシワ形成等の大きな要因であると考えられる。
【0009】
したがって、マトリックスメタロプロテアーゼ-1(MMP-1)のmRNA発現を抑制することは、MMP-1の産生を低くし、皮膚のしわの形成、弾力性低下等の皮膚の老化を防止又は改善することができると考えられる。
【0010】
これまで、MMP-1の活性阻害作用を有するものとしては、例えば、ギンコウボク抽出物(特許文献6)、ネムノキ抽出物(特許文献7)等が知られている。
【0011】
近年、コラーゲン産生の調節に関わる因子として見出されたシステインリッチプロテイン61(CYR61)は加齢や光老化により増加することが報告されている(非特許文献2参照)。また、線維芽細胞では、CYR61を高発現させることにより、I型コラーゲン前駆体が減少するとともに、コラーゲン分解酵素であるMMP-1が増加することが確認されており、CYR61はコラーゲン産生抑制因子及びコラーゲン分解促進因子としての機能を有すると考えられている。このため、CYR61は加齢や紫外線によるコラーゲンの減少乃至変性の一因となり、皮膚のシワ形成等の要因となると考えられる。
【0012】
したがって、CYR61のmRNA発現を抑制することは、CYR61の産生を低くし、皮膚のしわの形成、弾力性低下等の皮膚の老化を防止又は改善することができると考えられる。
【0013】
これまで、CYR61タンパク質の産生抑制作用を有するものとして、例えば、ランブータン抽出物(特許文献8)、UVBによるCYR61タンパク質の発現亢進を抑制するリンゴポリフェノール(特許文献4)等が知られている。
【0014】
ビロードアオイ(Althaea Officinalis)の抽出物は、エラスチン産生促進作用(特許文献9)、近赤外線によるMMP-1発現亢進を抑制する作用(特許文献10)、AGEs分解促進作用及び脱糖化酵素遺伝子産生促進作用(特許文献11)、ミトコンドリアトランスファー促進作用(特許文献12)等の抗老化作用を有することが知られているが、COL1A1 mRNA発現促進作用、外的刺激による発現誘導がなされていない状態でのMMP-1 mRNA発現抑制作用、CYR61 mRNA発現抑制作用を有することは知られていない。
【0015】
前述したように、COL1A1 mRNA発現促進作用、MMP-1 mRNA発現抑制作用及びCYR61 mRNA発現抑制作用を有する物質はいずれもコラーゲンの産生促進に寄与し、皮膚のしわの形成、弾力性低下等の予防に高い効果を有すると考えられる。これらの作用の少なくともいずれかを有し、安全性及び生産性が高く、安価で日常的に使用可能な天然物由来の製剤に対する要望は依然として強く、その速やかな開発が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2002-226323号公報
【特許文献2】特開2003-146837号公報
【特許文献3】特開2015-024985号公報
【特許文献4】特開2016-053007号公報
【特許文献5】特開2000-344672号公報
【特許文献6】特開2013-177439号公報
【特許文献7】特開2010-235548号公報
【特許文献8】特表2020-518593号公報
【特許文献9】特開2012-056933号公報
【特許文献10】特開2015-086183号公報
【特許文献11】特開2016-138148号公報
【特許文献12】特開2018-123130号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Marinkovich MP et al., J. Cell. Biol., 1992, Vol.199, p.695-703
【非特許文献2】Quan T et al., Am J Pathol., 2006, Aug; 169(2): 482-490
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明は、安全性及び生産性が高く、安価で日常的に使用可能でありながら、優れたCOL1A1 mRNA発現促進作用を有するCOL1A1 mRNA発現促進剤を提供することを目的とする。
本発明は、第2に、優れたMMP-1 mRNA発現抑制作用を有するMMP-1 mRNA発現抑制剤を提供することを目的とする。
本発明は、第3に、優れたCYR61 mRNA発現抑制作用を有するCYR61 mRNA発現抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、ビロードアオイの抽出物が、優れたCOL1A1 mRNA発現促進剤、MMP-1 mRNA発現抑制剤及びCYR61 mRNA発現抑制剤として有用であることを知見した。
【0020】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、ビロードアオイの抽出物を有効成分として含有することを特徴とするCOL1A1 mRNA発現促進剤、MMP-1 mRNA発現抑制剤及びCYR61 mRNA発現抑制剤を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、安全性及び生産性が高く、安価で日常的に使用可能でありながら、優れたCOL1A1 mRNA発現促進作用を有するCOL1A1 mRNA発現促進剤を提供することができる。
本発明によれば、第2に、優れたMMP-1 mRNA発現抑制作用を有するMMP-1 mRNA発現抑制剤を提供することができる。
本発明によれば、第3に、優れたCYR61 mRNA発現抑制作用を有するCYR61 mRNA発現抑制剤を提供することができる。
また、これらのCOL1A1 mRNA発現促進剤、MMP-1 mRNA発現抑制剤及びCYR61 mRNA発現抑制剤は、皮膚の老化、すなわち、シワやくすみ、きめの消失、弾力性の低下等を予防、治療又は改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のCOL1A1 mRNA発現促進剤、MMP-1 mRNA発現抑制剤及びCYR61 mRNA発現抑制剤は、ビロードアオイの抽出物を有効成分として含有する。
【0023】
ここで、本発明において「抽出物」には、ビロードアオイを抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0024】
前記ビロードアオイ(学名:Althaea Officinalis)は、ノルウェーからスペインにかけてのヨーロッパの湿地、西アジア、北アジアの温暖な地域、小アジア、オーストラリア、北アメリカ東部等に自生する多年生草本であり、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得る部位としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば葉部、茎部、花部、根部又はこれらの混合物が挙げられるが、これらの中でも根部が好ましい。
【0025】
ビロードアオイの抽出物に含まれるCOL1A1 mRNA発現促進作用、MMP-1 mRNA発現抑制作用及びCYR61 mRNA発現抑制作用を有する物質の詳細は不明であるが、天然物の抽出に一般に用いられている抽出方法によって、ビロードアオイからCOL1A1 mRNA発現促進作用、MMP-1 mRNA発現抑制作用及びCYR61 mRNA発現抑制作用を有する抽出物を得ることができる。
【0026】
例えば、上記抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより、COL1A1 mRNA発現促進作用、MMP-1 mRNA発現抑制作用及びCYR61 mRNA発現抑制作用を有する抽出物を得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0027】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0028】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0029】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0030】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して低級脂肪族アルコール1~90質量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して低級脂肪族ケトン1~40質量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して多価アルコール1~90質量部を混合することが好ましい。
【0031】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5~15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を溶出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0032】
精製は、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等により行うことができる。得られた抽出液はそのままでもCOL1A1 mRNA発現促進作用、MMP-1 mRNA発現抑制作用及びCYR61 mRNA発現抑制作用の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としたものの方が使用しやすい。
【0033】
上記抽出物は、特有の匂いと味とを有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、皮膚化粧料等に配合する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。
【0034】
以上のようにして得られるビロードアオイの抽出物は、COL1A1 mRNA発現促進作用、MMP-1 mRNA発現抑制作用及びCYR61 mRNA発現抑制作用を有しているため、その作用を利用してCOL1A1 mRNA発現促進剤、MMP-1 mRNA発現抑制剤及びCYR61 mRNA発現抑制剤の有効成分として使用することができる。
【0035】
本発明のCOL1A1 mRNA発現促進剤、MMP-1 mRNA発現抑制剤及びCYR61 mRNA発現抑制剤は、ビロードアオイの抽出物のみからなるものでもよいし、ビロードアオイの抽出物を製剤化したものでもよい。
【0036】
ビロードアオイの抽出物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化して提供することができ、他の組成物(例えば、皮膚化粧料等)に配合して使用できるほか軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。
【0037】
なお、本発明のCOL1A1 mRNA発現促進剤、MMP-1 mRNA発現抑制剤及びCYR61 mRNA発現抑制剤は、必要に応じてCOL1A1 mRNA発現促進作用、MMP-1 mRNA発現抑制作用及びCYR61 mRNA発現抑制作用を有する他の天然抽出物等を、ビロードアオイの抽出物とともに配合して有効成分として用いることができる。
【0038】
本発明のCOL1A1 mRNA発現促進剤は、ビロードアオイの抽出物が有するCOL1A1 mRNA発現促進作用を通じて、コラーゲンの産生を促進することができ、これにより皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等を予防又は改善することができる。ただし、本発明のCOL1A1 mRNA発現促進剤は、これらの用途以外にもCOL1A1 mRNA発現促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0039】
本発明のMMP-1 mRNA発現抑制剤は、ビロードアオイの抽出物が有するMMP-1 mRNA発現抑制作用を通じて、コラーゲンの分解を抑制することができ、これにより皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等を予防又は改善することができる。ただし、本発明のMMP-1 mRNA発現抑制剤は、これらの用途以外にもMMP-1 mRNA発現抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0040】
本発明のCYR61 mRNA発現抑制剤は、ビロードアオイの抽出物が有するCYR61 mRNA発現抑制作用を通じて、コラーゲンの産生促進及びコラーゲンの分解抑制に寄与することができ、これにより皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等を予防又は改善することができる。ただし、本発明のCYR61 mRNA発現抑制剤は、これらの用途以外にもCYR61 mRNA発現抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0041】
なお、本発明のCOL1A1 mRNA発現促進剤、MMP-1 mRNA発現抑制剤及びCYR61 mRNA発現抑制剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例0042】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0043】
〔製造例1〕ビロードアオイの根の抽出物の製造
ビロードアオイの根の粗粉砕物100gを抽出溶媒1500mLに投入し、穏やかに攪拌しながら還流抽出器を用いて約2時間、80~90度に保った。30%1,3-ブチレングリコール、50%1,3-ブチレングリコール又は80%1,3-ブチレングリコールの3種類の抽出溶媒を用いて上記抽出処理を行った後、ろ過し、乾燥機で乾燥させ抽出物を得た。抽出溶媒として30%1,3-ブチレングリコール、50%1,3-ブチレングリコール又は80%1,3-ブチレングリコールを用いたときの各抽出率を表1に示す。なお、抽出溶媒が混合物の場合、その混合比は容量基準によるものである。
【0044】
【0045】
〔試験例1〕COL1A1 mRNA発現促進作用試験
製造例1の各抽出物を試料として用い、以下のようにしてCOL1A1 mRNA発現促進作用を試験した。
【0046】
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を10% FBS含有α-MEMを用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を上記培地で希釈し、35 mmシャーレ1枚あたり35×104 cells/2 mLになるように播種し、24時間培養した。
【0047】
培養後、培養液を捨て、無血清α-MEM 2 mLに置き換え、24時間培養した。
【0048】
培養後、無血清α-MEMで必要濃度に溶解した試料溶液を各シャーレに2 mLずつ添加し、24時間培養した。
【0049】
培養後、培養液を捨て、ISOGEN(NIPPON GENE社製)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。 このtotal RNAを鋳型とし、COL1A1及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(R) Real Time SystemIII (タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScript(TM) RT Master Mix (Perfect Real Time)及びTB Green(R) Fast qPCR Mix (タカラバイオ社製)による2ステップリアルタイムRT-PCR反応により行った。COL1A1のmRNA発現量は、GAPDH mRNAの発現量で補正し算出した。
得られた結果から、下記式によりCOL1A1 mRNA発現促進率を算出した。結果を表2に示す。
COL1A1 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
上記式中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A : 試料溶液添加時の補正値
B : 試料溶液無添加時の補正値
【0050】
【0051】
表2に示すように、ビロードアオイの根の各抽出物は、優れたCOL1A1 mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【0052】
〔試験例2〕MMP-1 mRNA発現抑制作用試験
製造例1の各抽出物を試料として用い、以下のようにしてMMP-1 mRNA発現抑制作用を試験した。
【0053】
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を10% FBS含有α-MEMを用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を上記培地で希釈し、35 mmシャーレ1枚あたり35×104 cells/2 mLになるように播種し、24時間培養した。
【0054】
培養後、培養液を捨て、無血清α-MEM 2 mLに置き換え、24時間培養した。
【0055】
培養後、無血清α-MEMで必要濃度に溶解した試料溶液を各シャーレに2 mLずつ添加し、24時間培養した。
【0056】
培養後、培養液を捨て、ISOGEN(NIPPON GENE社製)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。 このtotal RNAを鋳型とし、MMP-1及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(R) Real Time SystemIII (タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScript(TM) RT Master Mix (Perfect Real Time)及びTB Green(R) Fast qPCR Mix (タカラバイオ社製)による2ステップリアルタイムRT-PCR反応により行った。MMP-1のmRNA発現量は、GAPDH mRNAの発現量で補正し算出した。
得られた結果から、下記式によりMMP-1 mRNA発現抑制率を算出した。結果を表3に示す。
MMP-1 mRNA発現抑制率(%)=(1-A/B)×100
上記式中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A : 試料溶液添加時の補正値
B : 試料溶液無添加時の補正値
【0057】
【0058】
表3に示すように、ビロードアオイの根の各抽出物は、優れたMMP-1 mRNA発現抑制作用を有することが確認された。
〔試験例3〕CYR61 mRNA発現抑制作用試験
製造例1の各抽出物を試料として用い、以下のようにしてCYR61 mRNA発現抑制作用を試験した。
【0059】
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を10% FBS含有α-MEMを用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を上記培地で希釈し、35 mmシャーレ1枚あたり35×104 cells/2 mLになるように播種し、24時間培養した。
【0060】
培養後、培養液を捨て、無血清α-MEM 2 mLに置き換え、24時間培養した。
【0061】
培養後、無血清α-MEMで必要濃度に溶解した試料溶液を各シャーレに2 mLずつ添加し、24時間培養した。
【0062】
培養後、培養液を捨て、ISOGEN(NIPPON GENE社製)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。 このtotal RNAを鋳型とし、MMP-1及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Thermal Cycler Dice(R) Real Time SystemIII (タカラバイオ社製)を用いて、PrimeScript(TM) RT Master Mix (Perfect Real Time)及びTB Green(R) Fast qPCR Mix (タカラバイオ社製)による2ステップリアルタイムRT-PCR反応により行った。CYR61のmRNA発現量は、GAPDH mRNAの発現量で補正し算出した。
得られた結果から、下記式によりCYR61 mRNA発現抑制率を算出した。結果を表4に示す。
CYR61 mRNA発現抑制率(%)=(1-A/B)×100
上記式中のA~Bは、それぞれ以下を表す。
A : 試料溶液添加時の補正値
B : 試料溶液無添加時の補正値
【0063】
【0064】
表4に示すように、ビロードアオイの根の各抽出物は、優れたCYR61 mRNA発現抑制作用を有することが確認された。
本発明のCOL1A1 mRNA発現促進剤、MMP-1 mRNA発現抑制剤及びCYR61 mRNA発現抑制剤は、皮膚の老化に伴う変化、すなわち、シワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等の予防又は改善に大きく貢献できる。