(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075736
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】記録方法及び記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20230524BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230524BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20230524BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 129
B41J2/01 501
B41J2/205
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188825
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】小林 広紀
(72)【発明者】
【氏名】小島 智之
(72)【発明者】
【氏名】山口 竜輝
(72)【発明者】
【氏名】藤田 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊介
(72)【発明者】
【氏名】石井 煕
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
2H186
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056HA44
2C057AM21
2C057AM22
2C057CA01
2H186AB11
2H186FB04
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB34
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB55
(57)【要約】
【課題】高生産性と画像品質を両立した記録方法を提供する。
【解決手段】圧力発生手段を有する吐出手段により組成物を記録媒体に吐出し、活性エネルギー線を照射する。吐出手段と記録媒体の相対的な速度が1.5m/s以上である。1ドットを形成する際の駆動信号は時系列に沿って第一~第三の引き込みパルスと押し込みパルスを有する。大中小滴のいずれにも使用される第三の引き込みパルスのみを用いて1ドットを形成した際に滴速度が最も速くなるときのパルスのパルス幅をP1とし、該P1のパルス幅を100%としたとき、3つの引き込みパルスのパルス幅はP1のパルス幅に対して30%~120%である。押し込みパルスの波高値は中間電位に対し100%より大きい。組成物は、吐出時の粘度が7mPa・s~12mPa・s、25℃における粘度が12.5mPa・s~18.5mPa・s、静的表面張力が20mN/m~40mN/mである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力発生手段を有する吐出手段により活性エネルギー線硬化型組成物を記録媒体に吐出する吐出工程と、
吐出された前記活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含む記録方法であって、
前記吐出手段は、シリアル方式又はライン方式であり、シリアル方式の場合は、当該吐出手段の走査方向を主走査方向としたとき、吐出する際の該主走査方向における前記記録媒体に対する相対的な速度が1.5m/s以上であり、ライン方式の場合は、吐出する際の前記記録媒体の搬送速度が1.5m/s以上であり、
1ドットを形成する際に前記圧力発生手段を駆動させる駆動信号は、時系列に沿ってそれぞれ第一の引き込みパルス、第二の引き込みパルス、第三の引き込みパルスからなる3つの引き込みパルスと、前記第三の引き込みパルスの後の押し込みパルスとを少なくとも有し、
前記第三の引き込みパルスは、下記に定義される大滴、中滴、小滴のいずれを吐出する際にも使用されるものであり、
前記第三の引き込みパルスのみを用いて1ドットを形成した際に液滴吐出速度が最も速くなるときの前記第三の引き込みパルスのパルス幅をP1とし、該P1を100%としたとき、前記3つの引き込みパルスのパルス幅は、前記P1に対して30%以上120%以下であり、
前記駆動信号における中間電位の大きさを100%としたとき、前記押し込みパルスの波高値は、前記中間電位に対し100%より大きく、
前記吐出手段の駆動周波数が20kHz以上であり、
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、吐出時の粘度が7mPa・s以上12mPa・s以下であり、25℃における粘度が12.5mPa・s以上18.5mPa・s未満であり、静的表面張力が20mN/m以上40mN/m以下であることを特徴とする記録方法。
[滴の定義]
大滴は3つ以上の引き込みパルスを用いて吐出される液滴であり、中滴は2つの引き込みパルスを用いて吐出される液滴であり、小滴は1つの引き込みパルスを用いて吐出される液滴である。
【請求項2】
前記吐出手段は、シリアル方式の場合は、吐出する際の前記主走査方向における前記記録媒体に対する相対的な速度が1.8m/s以上であり、ライン方式の場合は、吐出する際の前記記録媒体の搬送速度が1.8m/s以上であることを特徴とする請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記吐出手段の駆動周波数が25kHz以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録方法。
【請求項4】
前記押し込みパルスの波高値が前記中間電位に対し120%以上150%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の記録方法。
【請求項5】
前記第一の引き込みパルスのパルス幅が前記P1に対して30%以上70%未満であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の記録方法。
【請求項6】
前記第二の引き込みパルスのパルス幅が前記P1に対して60%以上100%未満であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の記録方法。
【請求項7】
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、吐出時の粘度が7mPa・s以上10mPa・s以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の記録方法。
【請求項8】
活性エネルギー線硬化型組成物と、
圧力発生手段を有し、前記活性エネルギー線硬化型組成物を記録媒体に吐出する吐出手段と、
吐出された前記活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射する照射手段と、
前記圧力発生手段に駆動信号を印加する制御部と、を備える記録装置であって、
前記吐出手段は、シリアル方式又はライン方式であり、シリアル方式の場合は、当該吐出手段の走査方向を主走査方向としたとき、吐出する際の該主走査方向における前記記録媒体に対する相対的な速度が1.5m/s以上であり、ライン方式の場合は、吐出する際の前記記録媒体の搬送速度が1.5m/s以上であり、
1ドットを形成する際に前記圧力発生手段を駆動させる前記駆動信号は、3つの引き込みパルスと、前記3つの引き込みパルスの後の押し込みパルスとを少なくとも有し、
前記第三の引き込みパルスは、下記に定義される大滴、中滴、小滴のいずれを吐出する際にも使用されるものであり、
前記第三の引き込みパルスのみを用いて1ドットを形成した際に液滴吐出速度が最も速くなるときの前記第三の引き込みパルスのパルス幅をP1とし、該P1を100%としたとき、前記3つの引き込みパルスのパルス幅は、前記P1に対して30%以上120%以下であり、
前記駆動信号における中間電位の大きさを100%としたとき、前記押し込みパルスの波高値は、前記中間電位に対し100%より大きく、
前記吐出手段の駆動周波数が20kHz以上であり、
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、吐出時の粘度が7mPa・s以上12mPa・s以下であり、25℃における粘度が12.5mPa・s以上18.5mPa・s未満であり、静的表面張力が20mN/m以上40mN/m以下であることを特徴とする記録装置。
[滴の定義]
大滴は3つ以上の引き込みパルスを用いて吐出される液滴であり、中滴は2つの引き込みパルスを用いて吐出される液滴であり、小滴は1つの引き込みパルスを用いて吐出される液滴である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録方法及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録方法の一つとしてのインクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を吐出し、前記インク液滴を記録媒体上に付着させて、文字や画像を形成する記録方式である。この方式は、他の記録方式に比べてフルカラー化が容易であり、簡易な構成の装置であっても高解像度の画像が得られる利点があるため、近年広く用いられている。
【0003】
このようなインクジェット記録方式に用いられるインクには、様々な特性が要求される。特に、インクをヘッドから吐出する際の吐出安定性は画像品質を左右し、重要なものとなっている。
【0004】
インクジェット記録方式の中でも、含有するモノマーが光重合(硬化)する活性エネルギー線硬化型組成物を用いたインクジェット記録方式は、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れている。そのため、光硬化性のインクを用いた技術が種々提案されており、例えば、光硬化性のインクを用いるとともに着弾精度を向上させるために、駆動信号を検討することが提案されている。
【0005】
特許文献1では、一記録周期中に複数回の吐出を行うための複数の吐出用パルスを含む駆動信号を用い、最終パルスによって吐出させた液滴が先行滴に追いつくようにし、終端側波高変化部の波高変化時間と、始端から終端側波高変化部の始端までの時間で表されるパルス幅が、共振周期Tcに対して所定の関係を満たすようにしている。特許文献1によれば、吐出効率や着弾精度を犠牲にすることなくサテライトの発生を抑制し、好ましいドット形状を実現できるとしている。
【0006】
特許文献2では、3つの駆動パルスを一印刷周期内に連続的に印加する駆動信号を用い、最初に印加される第1パルス、中間パルス及び最後に印加される最終パルスの待機時間が所定の関係を満たすようにし、膨張パルスの電圧及び収縮パルスの電圧が所定の関係を満たすようにしている。特許文献2によれば、着弾位置ずれを抑えて安定吐出が可能になるとしている。
【0007】
特許文献3では、第1駆動信号と第2駆動信号の2つの駆動信号を1画素周期内に印加し、第1駆動信号と第2駆動信号が有する膨張パルス、収縮パルス、休止時間等の順番が所定の関係になるようにしている。特許文献3によれば、大液滴を連続して吐出させる場合の液滴の着弾位置のばらつきを防止することにより、着弾位置精度を向上させることができるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、光硬化性のインクの乾燥性を利用しつつ生産性を高めることが強く望まれている。高い生産性を達成しようとすると、必然的に印刷速度を上げることなるため、ヘッドの駆動周波数を上げる必要がある。この高速度下の条件では、インクの着弾精度を維持するために、インクの吐出速度を上げることが要求されるが、その副作用として、インクのリガメント長が長くなることがある。リガメントが長くなると、サテライトによるミストが発生してしまい、非画像部に着弾して画像汚染につながるという高生産性とのトレードオフの問題があった。なお、特許文献1では、サテライトの発生を抑制できるとしているが、画像品質と高生産性をともに向上させることについては更なる向上が求められている。
【0009】
そこで本発明は、高生産性と画像品質を両立した記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の記録方法は、
圧力発生手段を有する吐出手段により活性エネルギー線硬化型組成物を記録媒体に吐出する吐出工程と、
吐出された前記活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含む記録方法であって、
前記吐出手段は、シリアル方式又はライン方式であり、シリアル方式の場合は、当該吐出手段の走査方向を主走査方向としたとき、吐出する際の該主走査方向における前記記録媒体に対する相対的な速度が1.5m/s以上であり、ライン方式の場合は、吐出する際の前記記録媒体の搬送速度が1.5m/s以上であり、
1ドットを形成する際に前記圧力発生手段を駆動させる駆動信号は、時系列に沿ってそれぞれ第一の引き込みパルス、第二の引き込みパルス、第三の引き込みパルスからなる3つの引き込みパルスと、前記第三の引き込みパルスの後の押し込みパルスとを少なくとも有し、
前記第三の引き込みパルスは、下記に定義される大滴、中滴、小滴のいずれを吐出する際にも使用されるものであり、
前記第三の引き込みパルスのみを用いて1ドットを形成した際に液滴吐出速度が最も速くなるときの前記第三の引き込みパルスのパルス幅をP1とし、該P1を100%としたとき、前記3つの引き込みパルスのパルス幅は、前記P1に対して30%以上120%以下であり、
前記駆動信号における中間電位の大きさを100%としたとき、前記押し込みパルスの波高値は、前記中間電位に対し100%より大きく、
前記吐出手段の駆動周波数が20kHz以上であり、
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、吐出時の粘度が7mPa・s以上12mPa・s以下であり、25℃における粘度が12.5mPa・s以上18.5mPa・s未満であり、静的表面張力が20mN/m以上40mN/m以下であることを特徴とする。
[滴の定義]
大滴は3つ以上の引き込みパルスを用いて吐出される液滴であり、中滴は2つの引き込みパルスを用いて吐出される液滴であり、小滴は1つの引き込みパルスを用いて吐出される液滴である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高生産性と画像品質を両立した記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】引き込みパルスの一例を示す図(A)及び押し込みパルスの一例を示す図(B)である。
【
図2】1ドットを形成する際に圧力発生手段を駆動させる駆動信号の一例を示す図である。
【
図3】1ドットを形成する際に吐出される液滴を模式的に説明するための図である。
【
図4】パルス幅特性の一例を説明するための図である。
【
図5】押し込みパルスの波高値及び中間電位との関係を説明するための図である。
【
図6】本発明における像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図7】本発明における別の像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図8】本発明におけるさらに別の像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る記録方法及び記録装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0014】
(記録方法及び記録装置)
本発明の記録方法は、圧力発生手段を有する吐出手段により活性エネルギー線硬化型組成物を記録媒体に吐出する吐出工程と、
吐出された前記活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、を含む記録方法であって、
前記吐出手段は、シリアル方式又はライン方式であり、シリアル方式の場合は、当該吐出手段の走査方向を主走査方向としたとき、吐出する際の該主走査方向における前記記録媒体に対する相対的な速度が1.5m/s以上であり、ライン方式の場合は、吐出する際の前記記録媒体の搬送速度が1.5m/s以上であり、
1ドットを形成する際に前記圧力発生手段を駆動させる駆動信号は、時系列に沿ってそれぞれ第一の引き込みパルス、第二の引き込みパルス、第三の引き込みパルスからなる3つの引き込みパルスと、前記第三の引き込みパルスの後の押し込みパルスとを少なくとも有し、
前記第三の引き込みパルスは、下記に定義される大滴、中滴、小滴のいずれを吐出する際にも使用されるものであり、
前記第三の引き込みパルスのみを用いて1ドットを形成した際に液滴吐出速度が最も速くなるときの前記第三の引き込みパルスのパルス幅をP1とし、該P1を100%としたとき、前記3つの引き込みパルスのパルス幅は、前記P1に対して30%以上120%以下であり、
前記駆動信号における中間電位の大きさを100%としたとき、前記押し込みパルスの波高値は、前記中間電位に対し100%より大きく、
前記吐出手段の駆動周波数が20kHz以上であり、
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、吐出時の粘度が7mPa・s以上12mPa・s以下であり、25℃における粘度が12.5mPa・s以上18.5mPa・s未満であり、静的表面張力が20mN/m以上40mN/m以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明の記録装置は、活性エネルギー線硬化型組成物と、
圧力発生手段を有し、前記活性エネルギー線硬化型組成物を記録媒体に吐出する吐出手段と、
吐出された前記活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射する照射手段と、
前記圧力発生手段に駆動信号を印加する制御部と、を備える記録装置であって、
前記吐出手段は、シリアル方式又はライン方式であり、シリアル方式の場合は、当該吐出手段の走査方向を主走査方向としたとき、吐出する際の該主走査方向における前記記録媒体に対する相対的な速度が1.5m/s以上であり、ライン方式の場合は、吐出する際の前記記録媒体の搬送速度が1.5m/s以上であり、
1ドットを形成する際に前記圧力発生手段を駆動させる前記駆動信号は、3つの引き込みパルスと、前記3つの引き込みパルスの後の押し込みパルスとを少なくとも有し、
前記第三の引き込みパルスは、下記に定義される大滴、中滴、小滴のいずれを吐出する際にも使用されるものであり、
前記第三の引き込みパルスのみを用いて1ドットを形成した際に液滴吐出速度が最も速くなるときの前記第三の引き込みパルスのパルス幅をP1とし、該P1を100%としたとき、前記3つの引き込みパルスのパルス幅は、前記P1に対して30%以上120%以下であり、
前記駆動信号における中間電位の大きさを100%としたとき、前記押し込みパルスの波高値は、前記中間電位に対し100%より大きく、
前記吐出手段の駆動周波数が20kHz以上であり、
前記活性エネルギー線硬化型組成物は、吐出時の粘度が7mPa・s以上12mPa・s以下であり、25℃における粘度が12.5mPa・s以上18.5mPa・s未満であり、静的表面張力が20mN/m以上40mN/m以下であることを特徴とする。
【0016】
[滴の定義]
大滴は3つ以上の引き込みパルスを用いて吐出される液滴であり、中滴は2つの引き込みパルスを用いて吐出される液滴であり、小滴は1つの引き込みパルスを用いて吐出される液滴である。
【0017】
本実施形態における吐出手段としては、例えば、液体吐出ヘッド、インクジェットヘッド、記録ヘッドを用いることができる。吐出手段としては、シリアル方式であってもよいし、ライン方式であってもよい。
【0018】
本実施形態における吐出手段は、圧力発生手段を有しており、その他にも例えば、ノズル板、液室等を有している。ノズル板は、活性エネルギー線硬化型組成物(例えばインク)の液滴を吐出するノズルを有している。また、液室はノズルが連通しており、圧力発生手段は液室内に圧力を発生させ、インクの液滴を吐出する。
【0019】
吐出手段が有する圧力発生手段としては、例えば、電気機械変換素子、圧電素子、ピエゾ、アクチュエータ等を用いることができる。圧力発生手段は、駆動信号が印加されることにより駆動する。
【0020】
駆動信号は、例えば引き込みパルスと押し込みパルスを有する。
引き込みパルスの一例を
図1(A)に示す。図示されるように、時系列に沿って基準電位(中間電位とも称する)から所定のホールド電位まで立ち下がっており、このように立ち下がることで吐出手段の液室が膨張する。このような波形要素は膨張波形要素とも称される。
【0021】
次いで、図示されるように、立ち下がった電位(ホールド電位)を所定の時間保持する。このような波形要素は保持要素とも称される。
【0022】
次いで、図示されるように、時系列に沿ってホールド電位から基準電位まで立ち上がっており、このように立ち上がることで吐出手段の液室が収縮する。このような波形要素は収縮波形要素とも称される。
【0023】
引き込みパルスはこのような波形要素で構成されており、この引き込みパルスにより吐出手段の液室から1滴のインクが吐出される。
【0024】
次に、押し込みパルスの一例を
図1(B)に示す。図示されるように、時系列に沿って基準電位から所定のホールド電位まで立ち上がり、所定の時間、ホールド電位を保持し、ホールド電位から基準電位まで立ち下がる。押し込みパルスはこのような波形要素で構成されており、押し込みパルスは、吐出されたインク滴の末端の形状を制御する。また液室へのインク供給は、経路内の圧力と毛細管力により行われる。
【0025】
このような引き込みパルス及び押し込みパルスは、駆動パルスの一つである。
このような引き込みパルス及び押し込みパルスのパルス幅を
図1中、矢印で示している。
図1(A)に示すように、本実施形態における引き込みパルスでは、基準電位(中間電位)から立ち下がって立ち下がった電位が保持されている時間の幅をパルス幅Pw(Pulse width)としている。押し込みパルスのパルス幅は、
図1(B)に示すように、基準電位(中間電位)から立ち上がって立ち上がった電位が保持されている時間の幅としている。
【0026】
本実施形態では、第三の引き込みパルスのみを用いて1ドットを形成した際に液滴吐出速度が最も速くなるときの第三の引き込みパルスのパルス幅をP1としている。パルス幅は液滴吐出速度に影響し、P1に対して引き込みパルスのパルス幅が小さくても大きくても液滴吐出速度は小さくなる。後述の
図4にあるように、液滴吐出速度はパルス幅に対してピークを有しており、P1よりもパルス幅を大きくしても液滴吐出速度は小さくなる。
また、引き込みパルスにおいて、基準電位からホールド電位までの絶対値が大きい場合、換言すると、谷の深さが大きい場合、液滴吐出速度が大きくなる。
【0027】
本実施形態の記録装置は、制御部(印刷制御部などとも称する)を有しており、制御部はインク液滴の大きさに応じた駆動信号(吐出パルスとも称する)を発生させる。吐出パルスは、1以上の駆動パルスを時系列で有している。
【0028】
なお、本実施形態において「駆動パルス」とは、駆動波形を構成する要素としてのパルスを示す用語として用いている。また、本実施形態において「吐出パルス」とは、圧力発生手段を有する吐出手段に印加されてインク液滴を吐出させるパルスを示す用語として用いている。
【0029】
インク液滴の大きさに応じて、1以上の駆動パルスを時系列で含む駆動波形から駆動パルスを選択して吐出パルスが生成される。ここで、「駆動波形から駆動パルスを選択して」とあるのは、特に制限されるものではないが、より具体的には例えば、制御部が駆動波形生成部とヘッドドライバを有する構成が挙げられる。駆動波形生成部が駆動パルスを含む駆動波形を生成し、ヘッドドライバが駆動波形から駆動パルスを選択して吐出パルスを生成し、アクチュエータ(圧力発生手段)に印加する。
【0030】
例えば、大滴、中滴、小滴の3種類のサイズの液滴を吐出させる駆動波形を選択することができる。例を挙げて説明すると、大滴の液滴を吐出する場合、例えば1ドットを形成する際に吐出される液滴の数を増やす方法が挙げられ、この場合、吐出パルス中の引き込みパルスの数を増やす方法が挙げられる。このような駆動波形の吐出パルスを選択し、圧力発生手段に印加することで、大滴の液滴を吐出することができる。
【0031】
1ドットを形成する際には、複数の液滴を記録媒体(基材、被記録媒体などとも称する)の同一もしくは略同一の箇所に着弾させる。本実施形態において、1ドットを形成する際に圧力発生手段を駆動させる駆動信号は、3つの引き込みパルスと、3つの引き込みパルスの後の押し込みパルスとを少なくとも有する。
【0032】
このような駆動信号(吐出パルス)の一例を
図2に示す。図示されるように、3つの引き込みパルスの後に、押し込みパルスが印加される。図示する例における3つの引き込みパルスでは、時系列に沿って第一の引き込みパルス、第二の引き込みパルス、第三の引き込みパルスとしている。ただし、本実施形態では、これに限られず、1ドットを形成する際の吐出パルスには、更にその他の駆動パルスがあってもよい。
【0033】
第三の引き込みパルスは、大滴、中滴、小滴のいずれを吐出する際にも使用されるという点で第一の引き込みパルス及び第二の引き込みパルスとの違いを有している。第三の引き込みパルスは、大滴、中滴、小滴のいずれを吐出する際にも使用されるため、メインパルスなどと称してもよい。パルスの電圧(パルス形状の高さ)が極端に小さい場合は滴が吐出されないため、1パルスにつき1滴が吐出される引き込みパルスをメインパルスと表現してもよい。
【0034】
3つの引き込みパルスについて補足説明する。
第三の引き込みパルスは、下記に定義される大滴、中滴、小滴のいずれを吐出する際にも使用されるものである。
大滴は3つ以上の引き込みパルスを用いて吐出される液滴であり、中滴は2つの引き込みパルスを用いて吐出される液滴であり、小滴は1つの引き込みパルスを用いて吐出される液滴である。
【0035】
駆動波形としては、3つの引き込みパルスすべてを含んだ波形形状として生成される。
・小滴を吐出する際は第三の引き込みパルスのみ使用
・中滴を吐出する際は第一の引き込みパルス及び第三の引き込みパルスを使用、又は、第二の引き込みパルス及び第三の引き込みパルスを使用
・大滴を吐出する際は第一、第二、第三の引き込みパルスを使用
といった具合にパルスを使い分けている。ただし、例えば、小滴を吐出する際にも第一の引き込みパルス及び第二の引き込みパルスは波形形状としては存在している。例えば、印刷装置のソフト上で第一の引き込みパルス及び第二の引き込みパルスの波形をマスク(無効化)することで、第三の引き込みパルスのみが実際に駆動することになる。駆動波形としては、第一、第二、第三の引き込みパルスを含んだ一つの形状のみが生成されており、印刷時の大滴、中滴、小滴の使い分けは、ソフト上の処理で第一の引き込みパルスや第二の引き込みパルスを無効化することで達成される。
なお、各ヘッド固有の上限のパルス高さが決まっている場合、パルスの形状や高さは滴量には大きく関与しないため、滴の大きさはパルスの数で分類できる。
【0036】
図2に示す例の駆動信号を圧力発生手段に印加し、液滴を吐出した場合の模式図を
図3に示す。
図3は、1ドットを形成する場合の例を説明するものであり、時間の流れに沿って
図3(A)~(C)としている。なお、1ドットを1印字とも称することがあり、1ドットを形成する際の動作の単位を1印字単位周期とも称することがある。
【0037】
まず、
図3(A)に示すように、吐出手段の一例である液体吐出ヘッド51から3つの液滴である液滴50a~50cが吐出される。駆動信号における引き込みパルスが3つであるため、3つの液滴が吐出される。図中の黒矢印は液滴の吐出方向を示している。次いで、
図3(B)に示すように、3つの液滴50a~50cが空中で一体化する。一体化した液滴を液滴50として図示している。また、図中の黒矢印は液滴の吐出方向を示している。次いで、
図3(C)に示すように、液滴50が記録媒体22に着弾し、1ドットが形成される。
【0038】
ただし、本実施形態では、3つの液滴に限られず、1ドットを形成する際に吐出する液滴の数を増やしてもよい。また、本実施形態では、空中で一体化する場合に限られず、液滴50a~50cが空中で一体化せずに、順次、記録媒体に着弾してもよい。記録媒体上に液滴が着弾した際に、インクの形状が円形に近い、記録媒体上にインクが着弾する位置にずれが生じないなどの理由により、空中で一体化することが好ましい。
【0039】
1ドットを形成する際に圧力発生手段を駆動させる駆動信号が、3つの引き込みパルスを有していない場合、例えば1つ又は2つの引き込みパルスである場合、1ドットの大きさの選択肢が少なくなる、例えば1つの引き込みパルスのみである場合、大滴と中滴が吐出できず小滴しか吐出できないという不具合がある。
また、1ドットを形成する際に圧力発生手段を駆動させる駆動信号が、3つの引き込みパルスの後に押し込みパルスを有することで、リガメント長を短くすることができる。一方、1ドットを形成する際に圧力発生手段を駆動させる駆動信号が、3つの引き込みパルスの後に押し込みパルスを有していない場合、リガメント長が長くなり、吐出によるミストの飛散やリガメントが印刷基材に着弾することによる画像汚染が生じてしまう。
【0040】
また本実施形態において、前記P1を100%としたとき、前記3つの引き込みパルスのパルス幅は、前記P1に対して30%以上120%以下であることを要する。前記3つの引き込みパルスのパルス幅が前記P1に対して30%以上120%以下であることにより、インク吐出時のリガメント長を比較的短くすることができ、サテライトによるミスト由来の画像汚染を改善することができる。
【0041】
前記3つの引き込みパルスのうち、少なくとも一つのパルスのパルス幅が前記P1に対して30%未満である場合、または、120%より大きい場合、液滴吐出速度が顕著に低下するため、インク滴の着弾位置の精度が低下する。
【0042】
本実施形態では、第一の引き込みパルスのパルス幅がP1に対して30%以上70%未満であることが好ましい。この場合、1印字周期単位が短くなることにより吐出周波数が向上し、リガメント長が短縮されるため、生産性と画像品質が向上する。
【0043】
本実施形態では、第二の引き込みパルスのパルス幅がP1に対して60%以上100%未満であることが好ましい。この場合、1印字周期単位が短くなることにより吐出周波数が向上し、リガメント長が短縮されるため、生産性と画像品質が向上する。
【0044】
また本実施形態において、前記3つの引き込みパルスのうち液滴吐出速度が最も速くなるパルスを見出すには、例えば、
図4に示すように、パルス幅特性を考慮する。
図4は、横軸を第三の引き込みパルスのパルス幅[μs]とし、縦軸を液滴吐出速度[m/s]として両者の関係をプロットしたパルス幅特性の一例である。図示するように、パルス幅を変えていくと、液滴吐出速度が変化する領域があり、例えば、第1ピークと第2ピークを有する領域がある。
【0045】
なお、このようなパルス幅特性は、駆動信号を生成する前にあらかじめ作製しておき、パルス幅と液滴吐出速度の関係を把握しておくことが好ましい。例えば、このようなパルス幅特性を考慮して、1ドットを形成する際に圧力発生手段を駆動させる駆動信号における引き込みパルスのうち、どのパルスの液滴吐出速度が最も速くなるかを判別できる。
【0046】
適宜変更することが可能であるが、
図3を考慮すると、第三の引き込みパルスの液滴吐出速度が最も速いことが好ましい。この場合、吐出手段から吐出された複数の液滴が空中で一体化しやすくなり、着弾精度が向上する。また、1ドットを形成する際に圧力発生手段を駆動させる駆動信号における引き込みパルスのうち、液滴吐出速度が最も速くなるパルスが複数であってもよい。換言すると、全ての引き込みパルスの液滴吐出速度が同じでないことが好ましい。
【0047】
また本実施形態において、吐出手段はシリアル方式であってもよいし、ライン方式であってもよい。吐出手段は、シリアル方式の場合、当該吐出手段の走査方向を主走査方向としたとき、吐出する際の該主走査方向における前記記録媒体に対する相対的な速度が1.5m/s以上であることを要する。また吐出手段は、ライン方式の場合、吐出する際の前記記録媒体の搬送速度が1.5m/s以上であることを要する。これを満たさない場合、生産性が低下する。
【0048】
吐出手段は、シリアル方式の場合、吐出する際の前記主走査方向における前記記録媒体に対する相対的な速度が1.8m/s以上であることが好ましい。また吐出手段は、ライン方式の場合、吐出する際の前記記録媒体の搬送速度が1.8m/s以上であることが好ましい。この場合、生産性が向上する。
【0049】
特に制限されるものではないが、吐出手段は、シリアル方式の場合、上記の相対的な速度が2.5m/s以下であることが好ましく、ライン方式の場合、記録媒体の搬送速度が2.5m/s以下であることが好ましい。
【0050】
また、本実施形態の記録装置は、吐出手段と記録媒体とを相対移動させる相対移動手段を備える。例えば、シリアル方式である場合、相対移動手段は吐出手段を走査させる。また、ライン方式である場合、相対移動手段は記録媒体を搬送させる。
【0051】
本実施形態において、吐出手段の駆動周波数は20kHz以上であることを要する。駆動周波数が20kHz以上であれば、前記の1.5m/s以上での速度で吐出手段が走査する場合、もしくは記録媒体が搬送される場合でも高解像度の画像を高生産性で形成することができる。駆動周波数が20kHz未満であると良好な生産性が得られない。
【0052】
吐出手段の駆動周波数は25kHz以上であることが好ましい。この場合、前記の1.5m/s以上での速度で吐出手段が走査する場合、もしくは記録媒体が搬送される場合でも高解像度の画像を高生産性で形成することができる。
【0053】
特に制限されるものではないが、吐出手段の駆動周波数は50kHz以下であることが好ましい。
【0054】
本実施形態では、前記駆動信号における中間電位の大きさを100%としたとき、前記押し込みパルスの波高値は、前記中間電位に対し100%より大きいことを要する。100%以下である場合、リガメントが長くなるため、良好な画像品質が得られない。
【0055】
押し込みパルスの波高値は、中間電位と押し込みパルスの最大電位との差により求められる。また、中間電位とは、吐出パルスの基準となる電位を意味し、基準電位などと称することもできる。中間電位は、具体的には、吐出パルスの初期及び終期における電位である。
【0056】
押し込みパルスの波高値及び中間電位との関係を説明するための図を
図5に示す。図示する例では、吐出パルスの初期及び終期における電位を中間電位として示しており、0地点(任意に選択できる)から中間電位までの大きさ(絶対値)を図中の「中間電位の大きさ(a)」として示している。また、押し込みパルスの波高値は、中間電位と押し込みパルスの最大電位との差としており、図中の「押し込みパルスの波高値(b)」として示している。押し込みパルスの波高値と中間電位の大きさ(絶対値)が同じである場合、すなわちa=bである場合、押し込みパルスの波高値が中間電位に対し100%であるということになる。a>bである場合、押し込みパルスの波高値が中間電位に対し100%よりも大きいということになる。
【0057】
押し込みパルスの波高値は、中間電位に対し110%以上であることが好ましく、中間電位に対し120%以上150%以下であることがより好ましい。好ましい範囲を満たす場合、リガメントが短くなるため、生産性と画像品質が向上する。
【0058】
照射手段は、吐出された活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射する。照射手段の一実施形態は後述するが、吐出手段とともに走査されてもよいし、記録媒体の搬送方向における吐出手段よりも下流側に配置されてもよい。
【0059】
(活性エネルギー線硬化型組成物)
本発明における活性エネルギー線硬化型組成物は、重合性化合物を含み、また必要に応じて、重合開始剤、色材、有機溶媒、その他の成分等を含む。本発明における活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線硬化型インクとして用いてもよく、この場合、単にインクなどと称してもよい。
【0060】
<重合性化合物>
前記重合性化合物としては、単官能モノマーおよび多官能モノマーが好ましい。これらは従来公知のものを使用できるが、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
このような重合性化合物としては、例えば、単官能モノマーとして、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボロニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジキシルエチルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、N-ビニルホルムアミド、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソデシルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチル/デシルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシ化(4)ノニルフェノールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(350)モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(550)モノアクリレート、等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
前記多官能モノマーとしては、例えばペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルをいい、(メタ)アクリレート等についても同様の意味である。
【0063】
<活性エネルギー線>
本発明における活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0064】
<重合開始剤>
本発明における活性エネルギー線硬化型組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。
重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0065】
また、重合開始剤は、十分な硬化速度を得るために、組成物の総質量(100質量%)に対し、5~20質量%含まれることが好ましい。
【0066】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
【0067】
また、上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。
重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミンおよび4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましい。その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0068】
<色材>
本発明における活性エネルギー線硬化型組成物は、色材を含有していてもよい。
色材としては、本発明における組成物の目的や要求特性に応じて、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色、などを付与する種々の顔料や染料を用いることができる。
【0069】
色材の含有量は、所望の色濃度や組成物中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。
【0070】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、色材を含まず無色透明であってもよく、その場合には、例えば、画像を保護するためのオーバーコート層として好適である。
【0071】
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
【0073】
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0074】
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
【0075】
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
<有機溶媒>
本発明における活性エネルギー線硬化型組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0077】
<その他の成分>
本発明における活性エネルギー線硬化型組成物は、必要に応じてその他の公知の成分を含んでもよい。その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、界面活性剤、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
【0078】
<活性エネルギー線硬化型組成物の調製>
本発明における活性エネルギー線硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されない。例えば、重合性モノマー、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液にさらに重合性モノマー、開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0079】
<粘度>
本発明における活性エネルギー線硬化型組成物の粘度は、25℃において12.5mPa・s以上18.5mPa・s未満であることを要する。当該組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、吐出時の粘度が7mPa・s以上12mPa・s以下であることを要する。また当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。上記の粘度範囲を満たすことにより、良好な画像品質が得られる。
【0080】
活性エネルギー線硬化型組成物の吐出時の粘度が上記の範囲を満たすようにするためには、例えばヘッド内部のヒーターを用いてヘッド内部のインクを加温する方法等が挙げられる。吐出時の粘度が上記の範囲を満たす場合、リガメント長が短くなる、ないしは液滴吐出速度ばらつきが小さくなるため、画像品質が良好になる。
活性エネルギー線硬化型組成物の吐出時の粘度は、7mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましい。この場合、画像品質が向上する。
【0081】
なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34'×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
本実施形態における吐出時粘度は、任意の温度の恒温循環水を循環させた粘度計のカップにインクを110μL滴下し、50rpmで3分間コーンロータを回転させた際の粘度値の平均とする。
【0082】
<静的表面張力>
活性エネルギー線硬化型組成物の静的表面張力は20mN/m以上40mN/m以下である。この範囲から外れると良好な画像品質が得られない。
活性エネルギー線硬化型組成物の静的表面張力が上記の範囲になるようにするには、
例えば活性エネルギー線硬化型組成物の組成を適宜変更する。
【0083】
活性エネルギー線硬化型組成物の静的表面張力は、例えば、自動表面張力計(DY-300、協和界面化学株式会社製)を用い、プレート法により白金プレートを用い、25℃にて測定する。
【0084】
<用途>
本発明における活性エネルギー線硬化型組成物の用途は、一般に活性エネルギー線硬化型材料が用いられている分野であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形用樹脂、塗料、接着剤、絶縁材、離型剤、コーティング材、シーリング材、各種レジスト、各種光学材料などが挙げられる。
【0085】
さらに、本発明における活性エネルギー線硬化型組成物は、インクとして用いて2次元の文字や画像、各種基材への意匠塗膜を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。この立体造形用材料は、例えば、粉体層の硬化と積層を繰り返して立体造形を行う粉体積層法において用いる粉体粒子同士のバインダーとして用いてもよい。
【0086】
また、
図7や
図8に示すような積層造形法(光造形法)において用いる立体構成材料(モデル材)や支持部材(サポート材)として用いてもよい。
図7は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を所定領域に吐出し、活性エネルギー線を照射して硬化させたものを順次積層して立体造形を行う方法である。
図8は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物5の貯留プール(収容部)1に活性エネルギー線4を照射して所定形状の硬化層6を可動ステージ3上に形成し、これを順次積層して立体造形を行う方法である。
【0087】
まず、
図8(A)では、本発明における活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物5の貯留プール(収容部)1に活性エネルギー線4を照射している。続いて、
図8(B)では、活性エネルギー線4の照射により所定形状の硬化層6を可動ステージ3上に形成している。続いて、
図8(C)では、可動ステージ3を下げている。続いて、
図8(D)では、活性エネルギー線4の照射により、得られた硬化層6の上にさらに硬化層6を形成している。
【0088】
本発明における活性エネルギー線硬化型組成物を用いて立体造形物を造形するための立体造形装置としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、該組成物の収容手段、供給手段、吐出手段や活性エネルギー線照射手段等を備えるものが挙げられる。
【0089】
また、本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させて得られた硬化物や当該硬化物が基材上に形成された構造体を加工してなる成形加工品も含む。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された硬化物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形することが必要な用途に好適に使用される。
【0090】
上記基材としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又はこれらの複合材料などが挙げられ、加工性の観点からはプラスチック基材が好ましい。
【0091】
(記録方法及び記録装置の一実施形態)
本発明の記録方法及び記録装置の一実施形態について説明する。
本発明の記録方法は、インクジェット記録方法、画像形成方法、2次元又は3次元の像形成方法などとして用いることができる。
本発明の記録装置は、インクジェット記録装置、画像形成装置、2次元又は3次元の像形成装置などとして用いることができる。
【0092】
本発明の記録装置は、活性エネルギー線硬化型組成物と、圧力発生手段を有し、前記活性エネルギー線硬化型組成物を記録媒体に吐出する吐出手段と、吐出された前記活性エネルギー線硬化型組成物に活性エネルギー線を照射する照射手段と、前記圧力発生手段に駆動信号を印加する制御部と、を備える。
【0093】
活性エネルギー線硬化型組成物を収容するための収容部を備えていてもよく、該収容部には、本発明の組成物収容容器を用いてもよい。
活性エネルギー線硬化型組成物を吐出させる方法としては、例えば、オンデマンド型のピエゾ方式が用いられる。
【0094】
本発明の記録装置の一例について、
図6を用いて説明する。
図6は、インクジェット吐出手段を備えた像形成装置の一例である。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色活性エネルギー線硬化型インクのインクカートリッジと吐出ヘッドを備える各色印刷ユニット23a、23b、23c、23dにより、供給ロール21から供給された被記録媒体22にインクが吐出される。その後、インクを硬化させるための光源24a、24b、24c、24dから、活性エネルギー線を照射して硬化させ、カラー画像を形成する。その後、被記録媒体22は、加工ユニット25、印刷物巻取りロール26へと搬送される。
【0095】
各印刷ユニット23a、23b、23c、23dには、インク吐出部でインクが液状化するように、加温機構を設けてもよい。また必要に応じて、接触又は非接触により記録媒体を室温程度まで冷却する機構を設けてもよい。
【0096】
また、インクジェット記録方式としては、吐出ヘッド幅に応じて間欠的に移動する記録媒体に対し、ヘッドを移動させて記録媒体上にインクを吐出するシリアル方式や、連続的に記録媒体を移動させ、一定の位置に保持されたヘッドから記録媒体上にインクを吐出するライン方式のいずれであっても適用することができる。
【0097】
被記録媒体22は、特に限定されないが、紙、フィルム、セラミックスやガラス、金属、これらの複合材料等が挙げられ、シート状であってもよい。また片面印刷のみを可能とする構成であっても、両面印刷も可能とする構成であってもよい。一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、ダンボール、壁紙や床材等の建材、コンクリート、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。
【0098】
更に、光源24a、24b、24cからの活性エネルギー線照射を微弱にするか又は省略し、複数色を印刷した後に、光源24dから活性エネルギー線を照射してもよい。これにより、省エネ、低コスト化を図ることができる。
【0099】
本発明のインクにより記録される記録物としては、通常の紙や樹脂フィルムなどの平滑面に印刷されたものだけでなく、凹凸を有する被印刷面に印刷されたものや、金属やセラミックなどの種々の材料からなる被印刷面に印刷されたものも含む。また、2次元の画像を積層することで、一部に立体感のある画像(2次元と3次元からなる像)や立体物を形成することもできる。
【0100】
図7は、本発明に係る別の像形成装置(3次元立体像の形成装置)の一例を示す概略図である。
図7の像形成装置39は、インクジェットヘッドを配列したヘッドユニット(AB方向に可動)を用いて、造形物用吐出ヘッドユニット30から第一の活性エネルギー線硬化型組成物を吐出し、支持体用吐出ヘッドユニット31、32から第二の活性エネルギー線硬化型組成物を吐出する。第二の活性エネルギー線硬化型組成物は第一の活性エネルギー線硬化型組成物とは組成が異なる。これらの組成物を吐出し、ヘッドユニットに隣接した紫外線照射手段33、34でこれら各組成物を硬化しながら積層するものである。
【0101】
より具体的には、例えば以下である。造形物支持基板37上に、第二の活性エネルギー線硬化型組成物を支持体用吐出ヘッドユニット31、32から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて溜部を有する第一の支持体層を形成する。次いで、当該溜部に第一の活性エネルギー線硬化型組成物を造形物用吐出ヘッドユニット30から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて第一の造形物層を形成する。これらの工程を、積層回数に合わせて、上下方向に可動なステージ38を下げながら複数回繰り返す。これにより、支持体層と造形物層を積層して立体造形物35を製作する。その後、必要に応じて支持体積層部36は除去される。なお、
図7では、造形物用吐出ヘッドユニット30は1つしか設けていないが、2つ以上設けることもできる。
【0102】
本発明における吐出手段は、上述したように、例えば、インクを収容する液室と液室に連通するノズルを有するノズル板と、圧電素子の圧電効果によって前記ノズルからインク滴を吐出させるように液室内のインクに圧力を付与するアクチュエータ(圧力発生手段)とを有する。このような吐出手段としては、上述したように、記録ヘッド、液体吐出ヘッド、インクジェットヘッド等を用いることができる。
【0103】
また、本発明の記録装置は、圧力発生手段に駆動信号を印加する制御部を備えており、この制御部は、印刷制御部などと称されてもよい。制御部の構成としては、適宜選択することができる。例えば、制御部は、駆動波形生成部とヘッドドライバを有していてもよい。駆動波形生成部は、駆動パルスを含む駆動波形を生成する。ヘッドドライバは、駆動波形から駆動パルスを選択して吐出パルスを生成し、アクチュエータ(圧力発生手段)に印加する。
【0104】
また、本発明の記録装置は、吐出手段と記録媒体とを相対移動させる相対移動手段を備える。例えば、シリアル方式である場合、相対移動手段は吐出手段を走査させる。なお、シリアル方式においては、記録媒体も搬送させてもよいし、記録媒体を搬送しなくてもよい。また、ライン方式である場合、相対移動手段は記録媒体を搬送させる。
【0105】
図7に示すように、前記相対移動手段によりインクジェットヘッドと記録媒体とが相対移動されているときに、制御部はアクチュエータに対して吐出パルス(駆動信号)を印加する。1ドットを形成する際に圧力発生手段に印加する駆動信号(1印字単位周期)中に複数の駆動パルスが存在するように吐出パルスを生成する。このような吐出パルスを圧力発生手段に印加し、ノズルから複数のインク滴を吐出させる(
図3参照)。このようにして吐出された複数のインク滴は、例えば
図3に示すように、記録媒体上に1つのインクドットを形成する。このようなドットが記録媒体上に複数個整列することにより、記録媒体上に所定の画像が形成される。そして、例えば1印字単位周期中に吐出するインク滴の数を調整することにより、ドットの濃淡や大きさが調整され、いわゆる多階調印刷が可能となる。
【0106】
本発明においては、例えば以下の(1)~(3)のいずれの構成も可能である。
(1)前記1印字単位周期に含まれる液滴を空中で一体化させた後、記録媒体に付着させる構成
(2)前記1印字単位周期に含まれる液滴を吐出順に記録媒体上に付着させる構成
(3)単一の液滴のみを付着させる構成
【0107】
特に制限されるものではないが、これらの中では(1)の構成が好ましい。(1)の構成である場合、記録媒体上にインクが着弾した際に、インクの形状が円形に近い、記録媒体上にインクが着弾する位置にずれが生じないなどの利点が得られる。
【0108】
上述したように、本発明では良好な結果が得られるようにするため、1ドット(1印字)を形成する際の駆動信号に工夫を行っている。例えば、3つの引き込みパルスと、3つの引き込みパルスの後の押し込みパルスとを有するようにし、引き込みパルスのパルス幅が所定の関係を満たすようにしている。
【0109】
(硬化物)
本発明により得られる硬化物としては、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物、活性エネルギー線硬化型インク組成物、及び活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の少なくともいずれかに活性エネルギー線を照射することにより硬化させて形成される。
活性エネルギー線硬化型組成物としては、前記活性エネルギー線硬化型組成物と同様のものを用いることができ、活性エネルギー線硬化型インク組成物としては、前記活性エネルギー線硬化型インク組成物と同様のものを用いることができ、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物としては、前記活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物と同様のものを用いることができる。
【0110】
(加飾体)
本発明により得られる加飾体としては、基材上に、硬化物からなる表面加飾が施されてなり、前記硬化物と同様のものを用いることができる。
【実施例0111】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0112】
(活性エネルギー線硬化型組成物の作製)
以下のようにして各実施例及び比較例の活性エネルギー線硬化型組成物を調製した。
【0113】
<顔料分散体の調合>
顔料を分散体全量に対し15質量%、分散媒としてPEAを80質量%、分散剤としてBYK9151を5質量%配合し、ジルコニアビーズとビーズミル分散機を用いて顔料分散体を調合した。
【0114】
<インクの調合>
下記表1に記載の配合にて、各原材料を混合し、スリーワンモータを用いてインク混合物を得た。その後、絶対ろ過精度1.0μmのカプセルフィルタを用いてインクのろ過行い、クリーンボトルに充填し、インクを得た。
【0115】
なお、表1中、例えば以下を表す。
ACMO:アクリロイルモルホリン
IBXA:イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
PEA:フェノキシエチルアクリレート(ビスコート#192、大阪有機化学工業社製)
CTFA:環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート(SR508、サートマー社製)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(SR351S、サートマー社製)
重合開始剤としてTPO(製品名:Omnirad TPO、IGM社製)、重合禁止剤としてMEHQ(製品名:メトキノン、精工化学社製)を使用した。
また、表1中、静的表面張力は25℃での値である。
【0116】
【0117】
(実施例1~20及び比較例1~16)
上記得られた活性エネルギー線硬化型組成物(活性エネルギー線硬化型インク)を用いて、以下のようにして印刷物を作製した。
【0118】
<印刷物の作製>
各実施例及び比較例の活性エネルギー線硬化型組成物について、表1~表4に示す印刷条件によって印刷物を得た。また、装置としては、インクジェットヘッドを有するキャリッジを走査させるシリアル方式の装置を用いた。キャリッジは照射手段を有しており、走査しながら組成物の吐出と活性エネルギー線の照射を行った。
【0119】
1ドットを形成する際に圧力発生手段を駆動させる駆動信号は、
図2に示すような駆動信号とし、各実施例及び各比較例において表2~表4の印刷条件のように変更した。
なお、表2~表4の印刷条件において、パルス幅Pwについて、P1を100%とし、P1に対する増減幅をパーセンテージで示す。P1は、第三の引き込みパルスのみを用いて1ドットを形成した際に液滴吐出速度が最も速くなるときの第三の引き込みパルスのパルス幅であり、インクとヘッドの組み合わせで一意に決まるので、吐出パルスのPw≠P1であってもかまわない。
また、インク吐出時の粘度は、ヘッド内部のヒーターを用いてヘッド内部のインクを加温することにより調整した。
【0120】
(評価)
各実施例及び比較例について以下の評価を行った。
【0121】
<生産性>
印刷時の記録媒体に対しての相対速度(キャリッジ速度)で、下記基準により評価した。
キャリッジ速度(又は記録媒体の搬送速度)はある範囲で任意に設定できるが、キャリッジ速度を大きくすると画質(画像汚染、着弾精度)の不具合が発生する。一方、キャリッジ速度を遅くすれば画質(画像汚染、着弾精度)の品質は良くなるが、単位時間あたりの印刷枚数は少なくなる。これらの観点から、許容できる画質が得られる範囲で、キャリッジが速い場合、生産性が高いといえる。
なお、本実施形態における生産性は、例えば、
生産性(単位時間あたりの印刷枚数)=キャリッジ速度×主走査方向の印刷幅/キャリッジのパス回数
と考えることができる。
生産性の評価では、インクジェットヘッドを有するキャリッジを走査させるシリアル方式の装置を用い、画質が許容レベルとなる所定の画像を形成するときの、1走査における加減速領域を除いた平均速度の制御入力値より評価した。
【0122】
〔評価基準〕
◎:キャリッジ速度≧1.8m/s
〇:1.8m/s>キャリッジ速度≧1.5m/s
×:1.5m/s>キャリッジ速度
【0123】
<画像品質(画像汚染)>
表1~表4に示す印字条件で得られた印刷物の画質(画像汚染)を下記基準により、評価した。
【0124】
〔評価基準〕
〇:非印字部への飛び散り発生なし
△:ベタエッジから約35μm以内への飛び散り着弾あり、かつ、非印字部への飛び散りの量が著しくない
×:ベタエッジから約35μm超への飛び散り着弾あり、または、非印字部への飛び散りの量が著しい
【0125】
<画像品質(着弾精度)>
表2~表5に示す印字条件で得られた印刷物の画質(着弾精度)を下記基準により、評価した。
【0126】
〔評価基準〕
〇:着弾位置が狙いに対し、±0.5ドット以内の位置である。
△:着弾位置が狙いに対し、±0.5ドット超、±1.0ドット以内の位置である。
×:着弾位置が狙いに対し、±1.0ドット超の位置である
【0127】
<画像品質(解像度)>
表2~表5に示す印字条件で得られた印刷物の画質の精細さを下記基準により、評価した。
【0128】
〔評価基準〕
〇:画像の解像度が720dpi以上
△:画像の解像度が600dpi以上720dpi未満
×:画像の解像度が600dpi未満
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】