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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075820
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】再加熱調理用麺類製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20230524BHJP
   A23L 7/113 20160101ALI20230524BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188966
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154597
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】川村 悠貴
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA01
4B046LA05
4B046LA06
4B046LB06
4B046LB09
4B046LB10
4B046LC01
4B046LE15
4B046LE18
4B046LG16
4B046LG20
4B046LG29
4B046LG44
4B046LP38
4B046LP41
4B046LP51
4B046LP64
4B046LQ02
(57)【要約】
【課題】再加熱調理して喫食する際、茹で立ての麺類のような中心に硬さがある食感及び/又は粘弾性のある食感を有する麺類が得られる再加熱調理用麺類製品を、容易に提供する。
【解決手段】再加熱調理して喫食するための半調理麺類を含む再加熱調理用麺類製品を製造する方法であって、前記半調理麺類の水分量(A)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(A+B)が、前記半調理麺類の質量(H)と前記再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(H+B)に基づいて、50~75質量%になり、前記半調理麺類の水分量(A)と前記再加熱調理時に添加する水分量(B)の比率(A:B)が、1:0.6~2の範囲になるように設計する工程、及び前記水分量(A)の規定を満たすように前記半調理麺類を調製する工程であり、未調理の麺類を半調理した後、20分以内に10℃以下に冷却することを含む工程を含むことを特徴とする再加熱調理用麺類製品の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再加熱調理して喫食するための半調理麺類を含む再加熱調理用麺類製品を製造する方法であって、
前記半調理麺類の水分量(A)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(A+B)が、前記半調理麺類の質量(H)と前記再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(H+B)に基づいて、50~75質量%になり、
前記半調理麺類の水分量(A)と前記再加熱調理時に添加する水分量(B)の比率(A:B)が、1:0.6~2の範囲になるように設計する工程、及び
前記水分量(A)の規定を満たすように前記半調理麺類を調製する工程であり、未調理の麺類を半調理した後、20分以内に10℃以下に冷却することを含む工程
を含むことを特徴とする再加熱調理用麺類製品の製造方法。
【請求項2】
前記未調理の麺類を、真空条件下で混捏した麺類用生地から調製する請求項1に記載の再加熱調理用麺類製品の製造方法。
【請求項3】
前記未調理の麺類が、生麺類である請求項1又は2に記載の再加熱調理用麺類製品の製造方法。
【請求項4】
前記未調理の麺類を、穀粉100質量部に対し、1~20質量部の澱粉を含む麺類用生地から調製する請求項1~3のいずれか1項に記載の再加熱調理用麺類製品の製造方法。
【請求項5】
前記再加熱調理時に添加する水分量(B)を含有する組成物を前記半調理麺類と共に収容する工程を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の再加熱調理用麺類製品の製造方法。
【請求項6】
前記再加熱調理用麺類製品が、冷蔵・チルド帯で流通される請求項1~5のいずれか1項に記載の再加熱調理用麺類製品の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された再加熱調理用麺類製品を用いる麺類の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ等により再加熱調理して喫食する再加熱調理用麺類製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パスタ、うどん、そば、中華麺等の茹で立ての麺類は、喫食時に中心に硬さがある食感又は粘弾性のある食感が好まれる。従来から、加熱調理後、必要に応じて具材やスープと共にパッケージされて冷凍、又は冷蔵・チルド帯で流通され、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗で販売されるか、又は直接消費者の自宅にデリバリーされた後、店舗又は家庭内の電子レンジ等で再加熱調理して喫食される麺類が開発されている(本発明において、「再加熱調理用麺類製品」と称する)。これらの麺類の場合も、喫食時に中心に硬さがある食感又は粘弾性のある食感が好ましいが、茹で立ての麺類のような食感を得ることは、特に冷蔵、チルド帯で流通される場合、困難であった。
【0003】
このような再加熱調理用麺類製品に関連する技術としては、例えば、特許文献1では、容器入りのまま電子レンジで加熱調理しても、電子レンジ加熱後の麺の食感が良好な電子レンジ調理用容器入り麺類を提供することを目的とし、電子レンジ調理用容器に、該容器内の底部から、ゲル化剤により固形化された調味液、ゲル化剤により固形化された水、麺類、の順に載置してなることを特徴とする電子レンジ調理用容器入り麺類が開示されている。また、特許文献2では、物性及び食味の改善された麺類の製造方法及び麺類改質用の酵素製剤を提供することであり、特に穀粉等を混練して作られる麺類の電子レンジ加熱後の食感を向上させる方法を提供することを目的とし、ポリグルタミン酸又はポリグルタミン酸塩と、トランスグルタミナーゼ及び/又はグルコースオキシダーゼを原料穀粉に添加することを特徴とする電子レンジ加熱麺類の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-212073号公報
【特許文献2】特開2013-208109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1の技術を用いても、再加熱調理後の麺類の食感は十分ではない場合があった。また、特許文献2の技術では、特定の添加剤が必要であり、コストアップになる場合があった。
【0006】
本発明の目的は、再加熱調理して喫食する際、茹で立ての麺類のような中心に硬さがある食感及び/又は粘弾性のある食感を有し、且つ表面のみずみずしさを有する麺類が得られる再加熱調理用麺類製品を、容易に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、再加熱調理して喫食するための半調理麺類を含む再加熱調理用麺類製品を製造する方法であって、前記半調理麺類の水分量(A)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(A+B)が、前記半調理麺類の質量(H)と前記再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(H+B)に基づいて、50~75質量%になり、前記半調理麺類の水分量(A)と前記再加熱調理時に添加する水分量(B)の比率(A:B)が、1:0.6~2の範囲になるように設計する工程、及び前記水分量(A)の規定を満たすように前記半調理麺類を調製する工程であり、未調理の麺類を半調理した後、20分以内に10℃以下に冷却することを含む工程を含むことを特徴とする再加熱調理用麺類製品の製造方法によって達成される。本発明において、「再加熱調理用麺類製品」は、少なくとも部分的に加熱調理された麺類と、必要に応じて具材やスープと共にパッケージされて流通され、再加熱調理、好ましくは電子レンジ調理によって喫食できるように設計された麺類製品のことを称する。また、「半調理麺類」は、上記の再加熱徴用麺類製品に用いられる部分的に加熱調理された麺類のことを称する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、再加熱調理して喫食する際、茹で立ての麺類のような中心に硬さがある食感及び/又は粘弾性のある食感を有し、且つ表面のみずみずしさを有する麺類が得られる再加熱調理用麺類製品を、容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製造方法は、再加熱調理して喫食するための半調理麺類を含む再加熱調理用麺類製品を製造する方法であって、前記半調理麺類の水分量(A)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(A+B)が、前記半調理麺類の質量(H)と前記再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(H+B)に基づいて、50~75質量%になり、前記半調理麺類の水分量(A)と前記再加熱調理時に添加する水分量(B)の比率(A:B)が、1:0.6~2の範囲になるように設計する工程、及び前記水分量(A)の規定を満たすように前記半調理麺類を調製する工程であり、未調理の麺類を半調理した後、20分以内に10℃以下に冷却することを含む工程を含むことを特徴とする。本発明者は、再加熱調理用麺類製品において、半調理麺類を再加熱調理する際に存在する水分量の合計量(A+B)と、前記半調理麺類の水分(A)と再加熱調理に添加する水分(B)の比率(A:B)、及び半調理麺類の冷却条件に着目し、前記水分量の合計量(A+B)、及び比率(A:B)が上記範囲であり、半調理麺の冷却条件が上記規定を満たしていれば、再加熱調理して喫食する際、茹で立ての麺類のような中心に硬さがある食感及び/又は粘弾性のある食感を有し、且つ表面のみずみずしさを有する麺類が得られることを見出した。後述する実施例に示す通り、前記水分量の比率(A:B)が上記範囲を満たさない場合や、冷却条件が上記規定を満たさない場合は、再加熱調理して喫食する際、中心に硬さがある食感又は粘弾性のある食感を有する麺類が得られない。
【0010】
本発明において、前記半調理麺類の水分量(A)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(A+B)は、前記半調理麺類の質量(H)と前記再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(H+B)に基づいて、50~75質量%であり、好ましくは60~75質量%、より好ましくは63~75質量%である。これにより、再加熱調理して喫食する際、さらに麺類の中心に硬さがある食感及び/又は粘弾性のある食感を有し、且つ表面のみずみずしさを有する麺類が得られる。また、前記半調理麺類の水分量(A)と前記再加熱調理時に添加する水分量(B)の比率(A:B)は、1:0.6~2であり、好ましくは1:0.7~1.2、より好ましくは1:0.8~1.1である。これにより、茹で調理や蒸し調理により得られた半調理麺類を用いる場合、再加熱調理して喫食する際、さらに麺類の中心に硬さがある食感及び/又は粘弾性のある食感を有し、且つ表面のみずみずしさを有する麺類が得られる。
【0011】
本発明において、前記半調理麺類は、未調理の麺類を半調理した後、20分以内に10℃以下に冷却することを含む工程によって、前記水分量(A)の規定を満たすように調製される。麺類の種類は、特に限定されず、例えば、スパゲッティ、マカロニ等のパスタ、うどん、そば、中華そば、そうめん等が挙げられる。前記未調理の麺類は、生麺類であっても、乾麺類であってもよく、特に限定されないが、再加熱調理して喫食する際、さらに麺類の中心に硬さがある食感及び/又は粘弾性のある食感を有する麺類が得られるため、生麺類であることが好ましい。本発明において、生麺類とは、常法(押出し製法、ロール製法、手延べ製法等)により、例えば、各麺類に一般に用いられる穀粉等の粉粒状材料に水等の液状材料を加えて混捏して得られる麺類用生地を所望の形状に成形したものである。また、乾麺類とは、生麺類を乾燥させたものである。本発明においては、前記未調理の麺類を、真空条件下で混捏した麺類用生地から調製することが好ましい。例えば、真空ミキサーを用いて-700mmHgの条件下で混捏し麺類用生地から調製する。これにより、再加熱調理して喫食する際、さらに麺類の中心に硬さがある食感及び/又は粘弾性のある食感を有し、且つ表面のみずみずしさを有する麺類が得られる。真空条件下で混捏する方法は、例えば、横型真空ピンミキサーや真空押出機等の装置を用いて行うことができる。
【0012】
本発明において、前記未調理の麺類の麺類用生地の粉粒状材料及び液状材料は特に制限はない。例えば、小麦粉(強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉等)、そば粉、米粉、ソルガム粉、トウモロコシ粉、大麦粉、大豆粉等の穀粉;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉等の澱粉、及びそれらの澱粉を原料として、物理的又は化学的に加工を施した加工澱粉(本発明においては、加工澱粉も澱粉に含む);卵白、卵黄、カゼイン、粉末グルテン等のたん白質;食用油脂;糖類;色素;グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム等の増粘剤;アラニン、グリシン、リジン等のアミノ酸;グルタミン酸ナトリウム、塩等の調味料;香料;かんすい;アルコール製剤等が挙げられる。本発明において、粉粒状材料は、小麦粉の占める割合がその他の材料がそれぞれ占める割合より高いことが好ましく、粉粒状材料100質量部に対し、小麦粉を50質量部以上含むことがより好ましく、80質量部以上含むことがさらに好ましい。また、粉粒状材料は、澱粉を含むことが好ましく、粉粒状材料100質量部に対し、澱粉を1~20質量部含むことがより好ましく、1~10質量部含むことがより好ましく、3~5質量部含むことがさらに好ましい。なお、麺類用生地を調製する際に、液状材料に溶解または分散させてから添加する材料(例えば、実施例における塩など)は液状体材料に含むものとする。これにより、再加熱調理して喫食する際、さらに麺類の中心に硬さがある食感及び/又は粘弾性のある食感を有し、且つ表面のみずみずしさを有する麺類が得られる。
【0013】
本発明において、前記水分量(A)の規定を満たすように前記半調理麺類を調製する工程は、未調理の麺類を半調理した後、20分以内に10℃以下に冷却することを含んでいれば、どのように実施してもよい。例えば、未調理の麺類を沸騰水中で、通常の茹で時間より短い時間茹でて半調理した後、冷水中に投入し、10℃以下に冷却した後、水切りする工程等が挙げられる。半調理は、茹で調理や蒸し調理、蒸し調理後に炒め調理等の調理方法で行ってよく、未調理の麺類を水や水蒸気とともに加熱する調理方法を含めばよい。また、冷却方法は、半調理後の麺類を冷水や冷風等によって冷却すればよい。10℃以下への冷却時間は短い方が好ましく、10分以内が好ましく、5分以内がさらに好ましい。本発明においては、設計工程で設定した水分量(A)の規定を満たすように半調理麺を調製するため、各未調理の麺類に応じて、種々の半調理条件、冷却条件で半調理麺類を試作し、水分量を測定して、条件設定することができる。なお、半調理麺類の水分量(A)は、乾燥重量法によって求めることができる。具体的には、半調理麺類を一定重量秤量し、乾熱乾燥させた後、計量し、減量分を水分とすることで求めることができる。
【0014】
本発明において、再加熱調理時に添加する前記水分量(B)は、前記半調理麺類の水分量(A)と前記半調理麺類の質量(H)に応じて上述の規定を満たすように設定することができる。前記水分量(B)は、どのように添加してもよい。再加熱調理用麺類製品の容器に、再加熱調理時に必要な水分量(B)を記載し、喫食者が再加熱調理時に別途水を添加するような製品としてもよく、再加熱調理用麺類製品の容器内に、水分量(B)を含有する組成物を添付した製品としてもよい。喫食者の利便性の点で、水分量(B)を含有する組成物を前記半調理麺類と共に収容した製品が好ましい。したがって、本発明の再加熱調理用麺類製品の製造方法は、前記再加熱調理時に添加する水分量(B)を含有する組成物を前記半調理麺類と共に収容する工程を含むことが好ましい。前記水分量(B)を含有する組成物は、どのような形態で前記再加熱調理用麺類製品に収容されていてもよい。例えば、前記水分量(B)を含有する調味液、スープ、ソース等の液状組成物を充填封入した小袋等の容器を添付してもよく、液状組成物をゼラチン、寒天、カラギーナン、グアガム等の食用の固化剤の添加や凍結によって固形化した組成物を、前記半調理麺類と共に容器に収容してもよい。この場合、前記半調理麺類の水分量(A)に影響を与えないように、仕切り等で前記水分量(B)を含有する組成物と前記半調理麺類を分離しておくことが好ましい。
【0015】
本発明において、前記再加熱調理用麺類製品は、一般に、冷凍、又は冷蔵・チルド帯で流通されて、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗で販売されるか、又は直接消費者の自宅にデリバリーされた後、店舗又は家庭内の電子レンジ等で再加熱調理して喫食される。電子レンジを用いた再加熱調理の条件は、ワット数(W)×時間(秒)=105,000~165,000となるように設定することが好ましく、例えば、1500Wで70~110秒間再加熱調理することが好ましい。また、前記再加熱調理用麺類製品は、本発明の効果が得られ易い点で冷蔵・チルド帯(0~10℃)で流通される製品であることが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法によって製造された再加熱調理用麺類製品は、好ましくは電子レンジ調理で再加熱調理することによって、喫食時に茹で立ての麺類のような中心に硬さがある食感及び/又は粘弾性のある食感を有する麺類を容易に製造することができる。したがって、本発明は、本発明の製造方法によって製造された再加熱調理用麺類製品を用いる麺類の製造方法にも関連する。
【実施例0017】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.再加熱調理用混ぜそば製品の製造及び評価
再加熱調理用麺類製品として再加熱調理用混ぜそば製品を選定し、以下のように製造した。
(1)表1~3に示した配合の麺類生地用粉粒状材料100質量部に、塩1質量部、かんすい1質量部、水36質量部の割合で、横型真空ピンミキサーを用いて、真空条件下、又は常圧条件下で15分間混捏し、生地を調製した。調製した生地を、ロール式製麺機にて圧延してから切り出し(切り刃:角12番)、麺線の厚みが2.3mmの生麺を製造した。製造した生麺を沸騰水中で茹でて半調理し、冷水に浸漬するか、又は風冷して5~20分以内に10℃以下に冷却後、水切りし、表1~3に示した各実施例及び比較例の所定の水分量(A)を含有する半調理中華麺を得た。比較例2及び3では、製造した生麺を沸騰水中で茹で、水切りし、30分間放冷して所定の水分量(A)を含有する半調理中華麺を得た。なお、半調理中華麺の温度は、半調理終了後から5、10、20、30分後にそれぞれ測定した。
(2)(1)で調製した半調理中華麺200gを容器に入れ、その上に表1~3に示した各実施例及び比較例の所定量の水分量(B)を含有し、ゼラチンで固めたスープ、調味液を静置し、蓋をして10℃以下で保存し、再加熱調理用混ぜそば製品を製造した。
(3)(2)で得られた製品を10℃以下で24時間保存した後、電子レンジを用いて1500Wで表1~3に示した時間加熱し、混ぜそばを調理した。得られた混ぜそばについて、以下の評価基準で評価した。なお、参考例1として、(1)と同様に調製した生麺を、通常の茹で時間で茹で上げ、混ぜそばを調理して評価した。評価は専門パネル10名で行い、平均値を評価結果とした。評価結果を表1~3に示す。
(i)粘弾性
5:粘弾性が強く、非常に良好
4:粘弾性がやや強く、良好
3:粘弾性がわずかに強く、やや良好
2:粘弾性がやや弱い
1:粘弾性が弱い
(ii)中心の硬さ
5:中心が硬く、非常に良好
4:中心がやや硬く、良好
3:中心がわずかに硬く、やや良好
2:中心がやや軟らかい
1:中心が軟らかい
(iii)表面のみずみずしさ
5:表面がみずみずしく、非常に良好
4:表面がややみずみずしく、良好
3:表面がわずかにみずみずしく、やや良好
2:表面がやや乾いている
1:表面が乾いている
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
表1~3に示した通り、未調理の麺類を半調理した後、20分以内に10℃以下に冷却することを含む工程で、半調理麺類を調製し、半調理麺類の水分量(A)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(A+B)が、半調理麺類の質量(H)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(H+B)に基づいて、50~75質量%であり、半調理麺類の水分量(A)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の比率(A:B)が、1:0.6~2の範囲になるように設計した実施例1~11の再加熱調理用混ぜそば製品は、電子レンジ調理により再加熱して喫食すると、参考例1の茹で立ての麺類のような中心に硬さがある食感、及び粘弾性のある食感を有し、表面がみずみずしい麺類が得られた。一方、半調理麺類の水分量(A)が多く、再加熱調理時に添加する水分量(B)が少ない、比率(A:B)が1:0.46の比較例1の製品は、粘弾性、中心の硬さ、及び表面のみずみずしさの評価が低かった。また、再加熱調理時に添加する水分量(B)が少ない、比率(A:B)が1:0.51の比較例4の製品は、中心の硬さの評価は高かったが、粘弾性、表面のみずみずしさの評価が低かった。さらに、再加熱調理時に添加する水分量(B)が多い、比率(A:B)が1:2.35の比較例5の製品は、表面のみずみずしさの評価は高かったが、粘弾性、中心の硬さの評価が低かった。比率(A:B)が1:0.6~2の範囲内ではあるが、未調理の麺類を半調理した後、10℃以下に冷却する時間が遅かった比較例2及び比較例3の製品では、粘弾性、表面のみずみずしさの評価は高かったが、中心の硬さの評価が低かった。
【0022】
2.再加熱調理用パスタ製品の製造及び評価
再加熱調理用麺類製品として再加熱調理用パスタ製品を選定し、以下のように製造した。
(1)デュラムセモリナ粉(昭和産業製)100質量部に、水29質量部の割合で、横型真空ピンミキサーを用いて、真空条件下で混捏し、生地を調製した。調製した生地は真空押出機にて押出し、麺線の厚みが1.6mmの生麺を製造後、高温条件下で乾燥させ、乾燥パスタを得た。乾燥パスタを沸騰水(塩1質量%添加)中で茹でて半調理し、冷水に浸漬して5分以内に10℃以下に冷却後、水切りし、表4に示した各実施例及び比較例の所定の水分量(A)を含有する半調理スパゲッティを得た。なお、半調理中スパゲッティの温度は、半調理終了後から5分後に測定した。
(2)(1)で調製した半調理スパゲッティを表4に示した質量で容器に入れ、その上に表4に示した各実施例及び比較例の所定量の水分量(B)を含有し、ゼラチンで固めたパスタソース、調味液を静置し、蓋をして10℃以下で保存し、再加熱調理用パスタ製品を製造した。
(3)(2)で得られた製品を10℃以下で24時間保存した後、電子レンジを用いて1500Wで表4に示した時間加熱し、スパゲッティを調理した。得られたスパゲッティについて、1.(3)と同様に評価した。なお、参考例2として、(1)と同様の乾燥パスタを、増重率220%程度まで茹で上げ、スパゲッティを調理して評価した。評価結果を表4に示す。
【0023】
【表4】
【0024】
表4に示した通り、未調理の麺類を半調理した後、20分以内に10℃以下に冷却することを含む工程で、半調理麺類を調製し、半調理麺類の水分量(A)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(A+B)が、半調理麺類の質量(H)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(H+B)に基づいて、50~75質量%であり、半調理麺類の水分量(A)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の比率(A:B)が、1:0.6~2の範囲になるように設計した実施例12の再加熱調理用パスタ製品は、電子レンジ調理により再加熱して喫食すると、参考例2の茹で立ての麺類のような中心に硬さがある食感、及び粘弾性のある食感を有し、表面がみずみずしい麺類が得られた。一方、半調理麺類の水分量(A)が多く、再加熱調理時に添加する水分量(B)が少ない、比率(A:B)が1:0.34の比較例6の製品では、粘弾性、中心の硬さ、及び表面のみずみずしさの評価が低かった。
【0025】
3.再加熱調理用焼きそば製品の製造及び評価
再加熱調理用麺類製品として再加熱調理用焼きそば製品を選定し、以下のように製造した。
(1)表5に示した配合の麺類生地用粉粒状材料100質量部に、塩1質量部、かんすい0.5質量部、水37質量部の割合で、横型真空ピンミキサーを用いて、真空条件下で混捏し、生地を調製した。調製した生地を、ロール式製麺機にて圧延してから切り出し(切り刃:丸20番)、麺径が1.65mmの生麺を製造した。製造した生麺を蒸し、冷水に浸漬して5分以内に10℃以下に冷却後、水切りし、表5に示した各実施例及び比較例の所定量のソースとあわせて炒めて半調理し、冷水に浸漬して5分以内に10℃以下に冷却後、所定の水分量(A)を含有する半調理焼きそばを得た。なお、半調理焼きそばの温度は、半調理終了後から5分後に測定した。
(2)(1)で調製した半調理焼きそば200gを容器に入れ、その上に表5に示した各実施例及び比較例の所定量の水分量(B)を含有し、ゼラチンで固めた調味液を静置し、蓋をして10℃以下で保存し、再加熱調理用焼きそば製品を製造した。
(3)(2)で得られた製品を10℃以下で24時間保存した後、電子レンジを用いて1500Wで表4に示した時間加熱し、焼きそばを調理した。得られた焼きそばについて、1.(3)と同様に評価した。なお、参考例3として、(1)と同様に調製した生麺を、通常通りに蒸し調理後に炒めて焼きそばを得て、評価した。評価結果を表5に示す。
【0026】
【表5】
【0027】
表5に示した通り、未調理の麺類を半調理した後、20分以内に10℃以下に冷却することを含む工程で、半調理麺類を調製し、半調理麺類の水分量(A)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(A+B)が、半調理麺類の質量(H)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の合計量(H+B)に基づいて、50~75質量%であり、半調理麺類の水分量(A)と再加熱調理時に添加する水分量(B)の比率(A:B)が、1:0.6~2の範囲になるように設計した実施例13の再加熱調理用焼きそば製品は、電子レンジ調理により再加熱して喫食すると、参考例3の調理し立ての麺類のような中心に硬さがある食感、及び粘弾性のある食感を有し、表面がみずみずしい麺類が得られた。一方、半調理麺類の水分量(A)が多く、再加熱調理時に添加する水分量(B)が少ない、比率(A:B)が1:0.3の比較例7の製品では、粘弾性の評価は高かったが、中心の硬さ、表面のみずみずしさの評価が低かった。
【0028】
以上により、本発明の製造方法によって、再加熱調理して喫食する際、茹で立ての麺類のような中心に硬さがある食感及び/又は粘弾性のある食感を有する麺類が得られる再加熱調理用麺類製品が得られることが示唆された。
【0029】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、再加熱調理して喫食する際、茹で立ての麺類のような中心に硬さがある食感及び/又は粘弾性のある食感を有する麺類が得られる再加熱調理用麺類製品を、容易に製造することができる。