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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023075911
(43)【公開日】2023-05-31
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物及び硬化膜
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20230524BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20230524BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230524BHJP
   C08F 267/06 20060101ALI20230524BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20230524BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230524BHJP
【FI】
C08F2/50
C08F20/00 510
C08F2/44 C
C08F267/06
G03F7/031
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022165162
(22)【出願日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2021188821
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 湧己
(72)【発明者】
【氏名】河西 裕
(72)【発明者】
【氏名】井上 勝治
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
2H197CA05
2H197CE01
2H197HA04
2H197HA05
2H197HA08
2H197JA21
2H225AC36
2H225AC44
2H225AC45
2H225AC49
2H225AC74
2H225AD06
2H225AM86P
2H225AN14P
2H225AN39P
2H225CA24
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
2H225CD05
4J011AA05
4J011AC04
4J011BA04
4J011PA13
4J011PA69
4J011PB22
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA23
4J011RA03
4J011SA65
4J011TA06
4J011TA07
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J026AA47
4J026BA28
4J026DB06
4J026DB11
4J026DB30
4J026DB36
4J026FA05
4J026FA09
4J026GA06
(57)【要約】
【課題】有機エレクトロルミネッセンス(EL)等の画像表示装置における外光反射によるムラの問題を解決するために、光拡散性を有する硬化膜であって、低温硬化性及び耐溶剤性に優れた硬化膜を形成することができる硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂(A)、重合性化合物(B)、重合性開始剤(C)、及び散乱粒子(D)を含有し、前記樹脂(A)は、α,β-不飽和カルボニル基を有する構成単位(Aa)、活性メチレン基又は活性メチン基を有する構成単位(Ab)及び酸基を有する構成単位(Ac)を有し、前記重合性開始剤(C)は、オキシム系化合物を含み、前記散乱粒子(D)は、平均粒径が100nm以上5000nm以下である、硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)、重合性化合物(B)、重合性開始剤(C)、及び散乱粒子(D)を含有し、
前記樹脂(A)は、α,β-不飽和カルボニル基を有する構成単位(Aa)、活性メチレン基又は活性メチン基を有する構成単位(Ab)及び酸基を有する構成単位(Ac)を有し、
前記重合性開始剤(C)は、オキシム系化合物を含み、
前記散乱粒子(D)は、平均粒径が100nm以上5000nm以下である、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
【請求項3】
請求項2に記載の硬化膜を含む表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の硬化性樹脂組成物を基板の上に塗布する工程、
硬化性組成物を乾燥することにより硬化性組成物層を形成する工程、
硬化性組成物層を露光する工程、及び、
露光された硬化性組成物層を加熱する工程
を含む、硬化膜の製造方法。
【請求項5】
露光された硬化性組成物層を70℃以上200℃以下で加熱する請求項4に記載の硬化膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂、当該樹脂を用いた硬化性樹脂組成物、及び当該硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置において、カラーフィルタにおける着色パターン及びオーバーコート等の硬化膜として、耐溶剤性に優れた硬化膜が所望されている。
【0003】
特許文献1(特開2018-165351号公報)には、耐溶剤性に優れる硬化膜を形成しうる樹脂として、α,β-不飽和カルボニル基を有する構成単位と、活性メチレン基又は活性メチン基を有する構成単位及び酸基を有する構成単位を有する樹脂が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-165351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)等の画像表示装置における外光反射によるムラの問題を解決するために、光拡散性を有する硬化膜であって、低温硬化性及び耐溶剤性に優れた硬化膜を形成することができる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下を含む。
〔1〕 樹脂(A)、重合性化合物(B)、重合性開始剤(C)、及び散乱粒子(D)を含有し、
前記樹脂(A)は、α,β-不飽和カルボニル基を有する構成単位(Aa)、活性メチレン基又は活性メチン基を有する構成単位(Ab)及び酸基を有する構成単位(Ac)を有し、
前記重合性開始剤(C)は、オキシム系化合物を含み、
前記散乱粒子(D)は、平均粒径が100nm以上5000nm以下である、硬化性樹脂組成物。
〔2〕 〔1〕に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
〔3〕 〔2〕に記載の硬化膜を含む表示装置。
〔4〕 〔1〕記載の硬化性樹脂組成物を基板の上に塗布する工程、
硬化性組成物を乾燥することにより硬化性組成物層を形成する工程、
硬化性組成物層を露光する工程、及び、
露光された硬化性組成物層を加熱する工程
を含む、硬化膜の製造方法。
〔5〕 露光された硬化性組成物層を70℃以上200℃以下で加熱する〔4〕に記載の硬化膜の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の硬化性樹脂組成物によると、光拡散性を有する硬化膜であって、低温硬化性及び耐溶剤性に優れた硬化膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、樹脂、重合性化合物、重合性開始剤、及び散乱粒子を含有する。以下、本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる各成分について、樹脂を樹脂(A)と称し、重合性化合物を重合性化合物(B)と称し、重合性開始剤を重合性開始剤(C)と称し、散乱粒子を散乱粒子(D)と称する。
【0009】
〔1〕 樹脂(A)
樹脂(A)は、α,β-不飽和カルボニル基を有する構成単位(Aa)、活性メチレン基又は活性メチン基を有する構成単位(Ab)及び酸基を有する構成単位(Ac)を有する樹脂である。
【0010】
樹脂(A)は、より詳細には以下のとおりである。
樹脂(A)は、α,β-不飽和カルボニル基を有する構成単位(以下、該構成単位を「構成単位(Aa)」と称する。)と、活性メチレン基又は活性メチン基を有する構成単位(Ab)(以下、該構成単位を「構成単位(Ab)」と称する。)と、酸基を有する構成単位(Ac)(以下、該構成単位を「構成単位(Ac)」と称する。)とを含む。本発明の硬化性樹脂組成物は、樹脂(A)を含むので、低温硬化性及び耐溶剤性に優れた硬化膜を形成することができる。
樹脂(A)は、さらに他の繰り返し単位(Ad)を含んでいてもよい。また、該樹脂は、構成単位(Aa)、構成単位(Ab)、及び構成単位(Ac)を、それぞれ2種以上含んでいてもよい。
樹脂(A)は、硬化性樹脂組成物のバインダー樹脂として使用される観点から、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。アルカリ可溶性とは、アルカリ化合物の水溶液である現像液に溶解する性質のことをいう。
樹脂(A)は、構成単位(Ac)を含む重合体を含むため、アルカリ可溶性を付与しやすい。「(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来する構成単位」を「(メタ)アクリル系構成単位」ともいう。なお、「(メタ)アクリル酸」は、「メタクリル酸及び/又はアクリル酸」を意味するものとする。以下、各構成単位について詳細に説明する。
【0011】
構成単位(Aa)は、典型的には、共重合体のカルボキシ基を有する構成単位(以下、該構成単位を「構成単位(Aa’)」と称する。)に、α,β-不飽和カルボニル基を有する化合物を付加させることにより得られるか、または、共重合体のエポキシ基を有する構成単位に、(メタ)アクリル酸を反応させることにより得られる。なお、構成単位(Aa’)は、後述の構成単位(Ac)の1種である。α,β-不飽和カルボニル基を有する化合物は、構成単位(Aa’)が有するカルボン酸と反応可能であれば、特に限定されない。α,β-不飽和カルボニル基を有する化合物としては、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(Aa’’)が挙げられる。
【0012】
エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(Aa’’)は、脂環式エポキシ基及び脂肪族エポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する。脂環式エポキシ基とは、脂環式不飽和炭化水素がエポキシ化された基であり、脂肪族エポキシ基とは、直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族不飽和炭化水素がエポキシ化された基をいう。
脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、
3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、
5,6-エポキシ-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル(メタ)アクリレート、
5,6-エポキシ-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルオキシメチル(メタ)アクリレート、
2,3-エポキシシクロペンチルメチル(メタ)アクリレート、
2-ヒドロキシ-3-(2,3-エポキシシクロペンチルオキシ)シクロペンチルメチル(メタ)アクリレート、
3-(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルオキシカルボニル)-6-ヒドロキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、
5,6-エポキシ-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル(メタ)アクリレート、
5,6-エポキシ-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルオキシメチル(メタ)アクリレート、
2,3-エポキシシクロペンチルメチル(メタ)アクリレート、
2-ヒドロキシ-3-(2,3-エポキシシクロペンチルオキシ)シクロペンチルメチル(メタ)アクリレート、
3-(3,4-エポキシシクロヘキシルメチルオキシカルボニル)-6-ヒドロキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、
2-ヒドロキシ-5-(3,4-エポキシシクロヘキシルカルボニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、
3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-9-ヒドロキシ-1,5-ジオキサスピロ[5,5]ウンデカン-8-イル(メタ)アクリレート、
3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-9-ヒドロキシ-2,4-ジオキサスピロ[5,5]ウンデカン-8-イル(メタ)アクリレート、
などが挙げられる。これらは単独で用いることも可能であり、また2種以上を併用することも可能である。これらの中でも、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0013】
3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートを、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系構成単位に反応させることによって構成単位(Aa)を得る場合、得られた構成単位(Aa)は、式(Aa-1)で表される。
【0014】
【化1】

[式中、R及びRは、互いに独立に、水素原子又はメチル基を表す。]
脂肪族エポキシ基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、エポキシメチル(メタ)アクリレート、イタコン酸グリシジルエステル類等が挙げられる。これらの中でも、エポキシメチル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0015】
グリシジルメタクリレートを、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系構成単位に反応させることによって構成単位(Aa)を得る場合、得られた構成単位(Aa)は、式(Aa-2)で表される。
【0016】
【化2】

[式中、R及びRは、互いに独立に、水素原子又はメチル基を表す。]
構成単位(Aa’)を含む共重合体としては、例えば、不飽和カルボン酸を構成単位とする共重合体、不飽和酸無水物を構成単位とする共重合体の酸無水物基にアルコールやアミンを反応させてカルボキシ基を導入した共重合体、不飽和ヒドロキシル化合物を構成単位とする共重合体のヒドロキシル基に酸無水物を反応させてカルボキシ基を導入した共重合体が挙げられる。
【0017】
後述する構成単位(Ac)がカルボキシ基を有する場合は、構成単位(Ac)を構成単位(Aa’)として、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(Aa’’)と反応させて構成単位(Aa)を得ることができる。
【0018】
構成単位(Ab)は、活性メチレン基又は活性メチン基を有する不飽和化合物から導かれる構成単位である。
該構成単位は、活性メチレン基又は活性メチン基を有する不飽和化合物を単量体として用いて共重合体を得ることによって得ることができる。あるいは、他の構成単位(Ab’)に、活性メチレン基又は活性メチン基を有する化合物(Ab’’)を反応させることによっても得ることもできる。
【0019】
活性メチレン基を有する不飽和化合物として、式(I)で表される化合物があげられる。活性メチン基を有する不飽和化合物として、式(II)で表される化合物があげられる。
【0020】
【化3】

[式(I)及び式(II)中、R11は、互いに独立に、水素原子又はヘテロ原子を含有してもよい炭素数1~24の炭化水素基を表す。
12は、単結合又は炭素数1~20の二価の炭化水素基を表す。
13は、式(1-1)~式(1-3)のいずれかで表される二価の基を表す。
14は、式(1-4)~式(1-7)のいずれかで表される基を表す。
【0021】
【化4】

(R15は、ヘテロ原子を含有してもよい炭素数1~24の炭化水素基である。)Xは、式(1-8)~式(1-10)のいずれかで表される二価の基を表す。]
【0022】
【化5】
【0023】
11は、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ヘキソキシ基、シクロヘキソキシ基又は式(1-11)~式(1-13)で表される基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基である。
15は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ヘキソキシ基、シクロヘキソキシ基又は式(1-11)~式(1-13)で表される基であり、より好ましくはメチル基である。
【0024】
【化6】

12は、好ましくは単結合、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、プロピレン基、へキシレン基、シクロへキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基であり、より好ましくは単結合、メチレン基、エチレン基である。
【0025】
式(I)で表される化合物として、具体的には、以下の化合物などが挙げられる。
【化7】
【0026】
式(II)で表される化合物として、具体的には、以下の化合物などが挙げられる。
【化8】

式(I-1)~(I-7)、(I-16)、(II-1)、(II-2)及び(II-5)は、CH-CH=CH-を有する化合物であるが、これらの式においてCH-CH=CH-がH-CH=CH-に置き換わった化合物も挙げることができる。
【0027】
構成単位(Ab)は、式(Ab-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【化9】

[式(Ab-1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。]
式(Ab-1)で表される構成単位を導く化合物としては、例えば、2-(メタクリロイルオキシ)エチルアセトアセテート〔式(I-1)で表される化合物〕が挙げられる。
【0028】
構成単位(Ac)は、酸基を有する不飽和化合物から導かれる構成単位である。
酸基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸等が挙げられる。該カルボキシル基は無水物化されていてもよい。
【0029】
該構成単位は、酸基を有する不飽和化合物を単量体として用いて共重合体を得ることによって得ることができる。また、他の構成単位(Ac’)に、酸基を有する化合物(Ac’’)を反応させることによっても得ることができる。
酸基を有する不飽和化合物は、好ましくは、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物である。不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物の具体例としては、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;
マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸;
前記の不飽和ジカルボン酸の無水物;
コハク酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、フタル酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕などの2価以上の多価カルボン酸の不飽和モノ〔(メタ)アクリロイロキシアルキル〕エステル;
α-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリル酸のような、同一分子中にヒドロキシ基及びカルボキシル基を含有する不飽和アクリレートなどが挙げられる。
これらのうち、(メタ)アクリル酸及び無水マレイン酸などが、共重合反応性及びアルカリ水溶液に対する溶解性から好ましく用いられる。これらは、単独又は組合せて用いられる。
【0030】
樹脂(A)は、構成単位(Aa),構成単位(Ab)及び構成単位(Ac)以外の構成単位(以下、該構成単位を「構成単位(Ad)」と称する。)を有していてよい。
構成単位(Ad)は、構成単位(Aa),構成単位(Ab)及び構成単位(Ac)とは異なる構成単位である。構成単位(Ad)は、他の構成単位(例えば、構成単位(Aa),構成単位(Ab)及び構成単位(Ac))を導く単量体と重合可能な単量体から導かれる。
このような単量体の具体例としては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
メチルアクリレート、イソプロピルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル(メタ)アクリレート(当該技術分野では、慣用名として、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートといわれている。)、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル(メタ)アクリレート(当該技術分野で慣用名としてジシクロペンタニル(メタ)アクリレートといわれている。)、ジシクロペンタオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル;
フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸アリールエステル;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどのジカルボン酸ジエステル;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキルエステル;
ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2’-ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジ(2’-ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジエトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシ-5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシ-5-エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-カルボキシ-5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-カルボキシ-5-エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシメチル-5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-カルボキシ-6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-カルボキシ-6-エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン無水物(ハイミック酸無水物)、5-tert-ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジ(tert-ブトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジ(シクロヘキシルオキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンなどのビシクロ不飽和化合物;
N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-スクシンイミジル-3-マレイミドベンゾエート、N-スクシンイミジル-4-マレイミドブチレート、N-スクシンイミジル-6-マレイミドカプロエート、N-スクシンイミジル-3-マレイミドプロピオネート、N-(9-アクリジニル)マレイミドなどのジカルボニルイミド誘導体;
スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-メトキシスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン;
などが挙げられる。
【0031】
これらのうち、スチレン、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンなどが共重合における反応性及びアルカリ水溶液に対する溶解性の点から好ましい。
【0032】
樹脂(A)は、構成単位(Ad)を2種以上有していてもよい。
【0033】
樹脂(A)は、構成単位(Aa)、構成単位(Ab)、構成単位(Ac)を含有し、さらに構成単位(Ad)を含有してもよい共重合体を含み、各構成単位の比率が、該共重合体を構成する構成単位の合計モル数に対してモル分率で、以下の範囲にあることが好ましい。
構成単位(Aa):5~50モル%、
構成単位(Ab):5~50モル%、
構成単位(Ac):5~50モル%、
構成単位(Ad):0~70モル%。
【0034】
また、構成単位の比率が以下の範囲であると、耐溶剤性がさらに良好になる傾向があるので、より好ましい。
構成単位(Aa):10~40モル%、
構成単位(Ab):10~40モル%、
構成単位(Ac):10~40モル%、構成単位(Ad):0~60モル%。
【0035】
各構成単位を含む共重合体は、例えば、文献「高分子合成の実験法」(大津隆行著 発行所(株)化学同人 第1版第1刷 1972年3月1日発行)に記載された方法及び当該文献に記載された引用文献に準拠して製造することができる。
【0036】
樹脂(A)は、例えば二段階の工程を経て製造することができる。具体的には、構成単位(Ab)及び構成単位(Ac)を導く各化合物、並びに構成単位(Aa’)を導く化合物の所定量、重合開始剤及び溶剤を反応容器中に仕込んで、窒素により酸素を置換することにより、酸素不存在下で、攪拌、加熱(例えば50~140℃)、保温(例えば1~10時間)することにより、構成単位(Aa’),構成単位(Ab)及び構成単位(Ac)を有する共重合体が得られる。その後、反応容器内の窒素を酸素に置換し、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(Aa’’)、反応触媒及び重合禁止剤等を反応容器内に入れ、攪拌、加熱(例えば60~130℃)、保温(例えば1~10時間)することにより、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(Aa’’)を構成単位(Aa’)に反応させることにより構成単位(Aa)が導かれ、構成単位(Aa),構成単位(Ab)及び構成単位(Ac)を有する共重合体が得られる。
得られた共重合体は、反応後の溶液をそのまま使用してもよいし、濃縮あるいは希釈した溶液を使用してもよいし、再沈殿などの方法で固体として取り出したものを再度溶剤に溶解して使用してもよい。
【0037】
構成単位(Ad)を更に有する樹脂(A)を製造する場合、上記工程において、構成単位(Ab)及び構成単位(Ac)を導く各化合物並びに構成単位(Aa’)を導く化合物とともに、構成単位(Ad)を仕込めばよい。
【0038】
上記において、構成単位(Ac)がカルボキシ基を有する場合、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(Aa’’)と該構成単位(Ac)とを反応させることによって構成単位(Aa)を得ることができる。
樹脂(A)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは3,000~100,000、より好ましくは5,000~50,000、更に好ましくは10,000~50,000である。
重量平均分子量が前記の範囲内にある樹脂(A)を含む硬化性樹脂組成物は、塗布する際の塗布性が良好となる傾向があり、また現像時に膜減りが生じにくく、さらに現像時に未硬化部分の抜け性が良好である傾向にある。
【0039】
樹脂(A)の分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、好ましくは1.1~6.0であり、より好ましくは1.2~4.0である。分散度が、前記の範囲にあると、これをバインダー樹脂として含む硬化性樹脂組成物について、現像性に優れる傾向があるので好ましい。
樹脂(A)の酸価(固形分換算値)は、好ましくは70~150mg-KOH/gであり、より好ましくは75~135mg-KOH/gである。
本明細書において、酸価は、JIS K 2501-2003により測定した値である。
【0040】
樹脂(A)を含む硬化性樹脂組成物から形成される硬化膜は、硬化膜を作製する際に露光後の加熱工程(いわゆる、ポストベーク工程)の温度が200℃以下、150℃以下であっても、優れた耐溶剤性を示すことができる。ポストベーク工程の温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。
本発明の硬化性樹脂組成物において、樹脂(A)の含有量は、硬化性樹脂組成物中の固形分に対して質量分率で、好ましくは5~90質量%、より好ましくは10~70質量%である。
樹脂(A)の含有量が、前記の範囲にあると、現像液への溶解性が十分であり、現像残渣が発生しにくく、また現像時に露光され硬化した部分の膜減りが生じにくく、露光されず未硬化である部分の抜け性が良好な傾向にあり、好ましい。
ここで、固形分は、硬化性樹脂組成物の総量から溶剤の含有量を除いた量のことをいう。固形分の総量及びこれに対する各成分の含有量は、液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段で測定することができる。
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、通常この分野で用いられる、アクリル系のバインダー樹脂を併用してもよい。
【0041】
〔2〕 重合性化合物(B)
重合性化合物(B)は、光照射等により重合開始剤(C)から発生する活性ラジカル等によって重合し得る化合物であれば、特に限定されない。重合性化合物(B)としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有する官能基を1つ有する単官能モノマー、該官能基を2つ有する2官能モノマー、その他、該官能基を3つ以上有する多官能モノマーが挙げられる。
上記単官能モノマーの具体例としては、ノニルフェニルカルビトール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドンなどが挙げられる。
上記2官能モノマーの具体例としては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル、3-メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記多官能モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物などが挙げられる。
なかでも、2官能モノマーや多官能モノマーが好ましく用いられる。
これらの重合性化合物(B)は、単独でも二種以上併用してもよい。
重合性化合物(B)の含有量は、樹脂(A)及び重合性化合物(B)の合計量に対して、質量分率で、好ましくは1~70質量%、より好ましくは5~60質量%である。重合性化合物(B)の含有量が、前記の範囲にあると、硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜の強度や平滑性及び耐溶剤性が良好になる傾向があり、好ましい。
【0042】
〔3〕 重合開始剤(C)
重合開始剤(C)は、オキシム系化合物を含む。本発明の硬化性樹脂組成物は、樹脂(A)とともにこのような重合性開始剤(C)を含有することにより、低温硬化性及び耐溶剤性に優れた硬化膜を形成することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物から形成される硬化膜は、硬化膜を作製する際に露光後の加熱工程(いわゆる、ポストベーク工程)の温度が200℃以下、または150℃以下であっても、優れた耐溶剤性を示すことができる。ポストベーク工程の温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。
重合開始剤(C)は、オキシム系化合物以外に、光や熱の作用により活性ラジカル、酸等を発生し、重合を開始し得る化合物を含むことができる。オキシム系化合物以外の化合物としては、アセトフェノン系、ビイミダゾール系、トリアジン系や、アシルフォスフィンオキサイド系の化合物、有機ホウ素塩である化合物が好ましい。
これらの重合開始剤(C)に、重合開始助剤を併用することで、得られる硬化性樹脂組成物は更に高感度となるので、これを用いてパターンを形成すると、パターンの生産性が向上するので、好ましい。
【0043】
重合開始剤(C)に含まれるオキシム系化合物は、例えばO-アシルオキシム化合物である。O-アシルオキシム化合物は、下記式(d)で表される構造を有する化合物である。以下、*は結合手を表す。
【0044】
【化10】
【0045】
O-アシルオキシム化合物は、例えば、式(d1)で表される化合物(以下、「化合物(d1)」ということがある。)、式(d2)で表される化合物(以下、「化合物(d2)」ということがある。)、及び式(d3)で表される化合物(以下、「化合物(d3)」ということがある。)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0046】
【化11】
【0047】
[式(d1)~(d3)中、
d1は、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3~36の複素環基、置換基を有していてもよい炭素数1~15のアルキル基、又は芳香族炭化水素基と該アルキル基から導かれるアルカンジイル基とを組み合わせた、置換基を有していてもよい基を表し、上記アルキル基に含まれるメチレン基(-CH2-)は、-O-、-CO-、-S-、-SO2-又は-NRd5-に置き換わっていてもよい。
d2は、炭素数6~18の芳香族炭化水素基、炭素数3~36の複素環基又は炭素数1~10のアルキル基を表す。
d3は、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数3~36の複素環基を表す。
d4は、置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数1~15の脂肪族炭化水素基を表し、上記脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH2-)は、-O-、-CO-又は-S-に置き換わっていてもよく、上記脂肪族炭化水素基に含まれるメチン基(-CH<)は、-PO3<に置き換わっていてもよく、上記脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子はOH基で置換されていてもよい。
d5は、炭素数1~10のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれるメチレン基(-CH2-)は、-O-又は-CO-に置き換わっていてもよい。]
【0048】
d1で表される芳香族炭化水素基の炭素数は、6~15であることが好ましく、より好ましくは6~12、さらに好ましくは6~10である。該芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0049】
d1で表される芳香族炭化水素基は、1又は2以上の置換基を有していてもよい。置換基は、芳香族炭化水素基のα位やγ位に置換していることが好ましく、γ位に置換していることがより好ましい。該置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等の炭素数1~15のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
【0050】
上記置換基としてのアルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~7であることがより好ましい。該置換基としてのアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、鎖状の基と環状の基を組み合わせた基であってもよい。該置換基としてのアルキル基に含まれるメチレン基(-CH2-)は、-O-又は-S-に置き換わっていてもよい。該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよく、フッ素原子で置換されていることが好ましい。
【0051】
d1で表される芳香族炭化水素基に関し、その置換基としてのアルキル基としては、下記式で表される基等が挙げられる。式中、*は結合手を表す。
【0052】
【化12】
【0053】
【化13】
【0054】
d1で表される基について、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、下記式で表される基等が挙げられる。式中、*は結合手を表す。
【0055】
【化14】
【0056】
【化15】
【0057】
d1で表される基について、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、下記式で表される基が好ましい。
【0058】
【化16】
【0059】
(式中、Rd6は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基を表し、Rd6に含まれる水素原子はハロゲン原子に置換されていてもよい。m2は、1~5の整数を表す。)
【0060】
d6で表されるアルキル基としては、Rd1で表される芳香族炭化水素基に関して置換基として例示したアルキル基と同様の基が挙げられる。Rd6の炭素数は、2~7であることが好ましく、2~5であることがより好ましい。Rd6で表されるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、鎖状であることが好ましい。
【0061】
d6に含まれる水素原子を置換していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子が挙げられ、フッ素が特に好ましい。Rd6に含まれる水素原子の2個以上、10個以下がハロゲン原子で置換されていることが好ましく、3個以上、6個以下がハロゲン原子で置換されていることがより好ましい。Rd6O-基の置換位置は、オルト位、パラ位が好ましく、パラ位が特に好ましい。m2は、1~2であることが好ましく、1であることが特に好ましい。
【0062】
d1で表される複素環基の炭素数は、3~20であることが好ましく、より好ましくは3~10であり、さらに好ましくは3~5である。該複素環基としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、インドリル基、ベンゾフリル基及びカルバゾリル基等が挙げられる。
【0063】
d1で表される複素環基は、1又は2以上の置換基を有していてもよい。該置換基としては、Rd1で表される芳香族炭化水素基に関して置換基として例示した基が挙げられる。
【0064】
d1で表されるアルキル基の炭素数は、1~12であることが好ましい。Rd1で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基及びペンタデシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、鎖状の基と環状の基を組み合わせた基であってもよい。Rd1で表されるアルキル基において、メチレン基(-CH2-)は、-O-、-CO-、-S-、-SO2-又は-NRd5-に置き換わっていてもよく、水素原子は、OH基又はSH基で置換されていてもよい。
【0065】
d5は、炭素数1~10のアルキル基を表し、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましい。該アルキル基は、鎖状(直鎖状又は分岐鎖状)であっても、環状であってもよく、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、鎖状の基と環状の基を組み合わせた基であってもよい。また、Rd5のアルキル基において、メチレン基(-CH2-)は、-O-又は-CO-に置き換わっていてもよい。
【0066】
d1で表される置換基を有していてもよいアルキル基としては、具体的には、下記式で表される基等が挙げられる。*は結合手を表す。
【0067】
【化17】
【0068】
d1で表される、芳香族炭化水素基と上記アルキル基から導かれるアルカンジイル基とを組み合わせた基の炭素数は、7~33であることが好ましく、より好ましくは7~18であり、さらに好ましくは7~12である。該組み合わせた基は、1又は2以上の置換基を有していてもよく、該置換基としては、芳香族炭化水素基やアルキル基が有していてもよい置換基と同様の基が挙げられる。該Rd1で表される、芳香族炭化水素基と上記アルキル基から導かれるアルカンジイル基とを組み合わせた基としては、アラルキル基が挙げられ、具体的には、下記式で表される基を挙げることができる。式中、*は結合手を表す。
【0069】
【化18】
【0070】
中でも、Rd1としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよいアルキル基が好ましく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基がより好ましい。
【0071】
d2で表される芳香族炭化水素基の炭素数は、6~15であることが好ましく、より好ましくは6~12、さらに好ましくは6~10である。該芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基及びターフェニル基等が挙げられる。
【0072】
d2で表される複素環基の炭素数は、3~20であることが好ましく、より好ましくは3~10であり、さらに好ましくは3~5である。該複素環基としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、インドリル基、ベンゾフリル基及びカルバゾリル基等が挙げられる。
【0073】
d2で表されるアルキル基の炭素数は、1~7であることが好ましく、より好ましくは1~5であり、さらに好ましくは1~3である。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基及びデシル基等が挙げられる。該アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、鎖状の基と環状の基を組み合わせた基であってもよい。
【0074】
d2としては、鎖状アルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1~5の鎖状アルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1~3の鎖状アルキル基であり、メチル基であることが特に好ましい。
【0075】
d3で表される芳香族炭化水素基の炭素数は、6~15であることが好ましく、より好ましくは6~12、さらに好ましくは6~10である。該芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基及びターフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0076】
d3で表される芳香族炭化水素基は、1又は2以上の置換基を有していてもよい。置換基は、芳香族炭化水素基のα位やγ位に置換していることが好ましい。該置換基としては、炭素数1~15の脂肪族炭化水素基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基及びデシル基等の炭素数1~15のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、ノネニル基及びデセニル基等の炭素数1~15のアルケニル基;等が挙げられる。
【0077】
d3で表される芳香族炭化水素基が有していてもよい脂肪族炭化水素基の炭素数は1~7であることがより好ましく、該脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、鎖状の基と環状の基を組み合わせた基であってもよい。該脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH2-)は、-O-、-CO-又は-S-に置き換わっていてもよく、メチン基(-CH<)は、-N<に置き換わっていてもよい。
【0078】
d3で表される芳香族炭化水素基が有していてもよい脂肪族炭化水素基としては、下記式で表される基等が挙げられる。式中、*は結合手を表す。
【0079】
【化19】
【0080】
d3に関して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基としては、下記式で表される基等が挙げられる。式中、*は結合手を表す。
【0081】
【化20】
【0082】
d3で表される複素環基の炭素数は、3~20であることが好ましく、より好ましくは3~10であり、さらに好ましくは3~5である。該複素環基としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、インドリル基、ベンゾフリル基及びカルバゾリル基等が挙げられる。Rd3で表される複素環基は、1又は2以上の置換基を有していてもよく、該置換基としては、Rd1における芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の基が挙げられる。
【0083】
d3は、置換基を有する芳香族炭化水素基であることが好ましく、該置換基としては、炭素数1~7(より好ましくは炭素数1~3)の鎖状アルキル基が好ましく、置換基の個数は、2個以上、5個以下であることが好ましい。
【0084】
d4で表される芳香族炭化水素基の炭素数は、6~15であることが好ましく、より好ましくは6~12、さらに好ましくは6~10である。該芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基及びターフェニル基等が挙げられ、フェニル基及びナフチル基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。Rd4で表される芳香族炭化水素基は、1又は2以上の置換基を有していてもよい。該置換基としては、Rd1の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の基が挙げられる。
【0085】
d4で表される脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~13であることが好ましく、より好ましくは2~10であり、さらに好ましくは4~9である。Rd4で表される脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基及びペンタデシル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、ブタデセニル基及びペンタデセニル基等のアルケニル基;等が挙げられる。これらの脂肪族炭化水素基は、鎖状(直鎖状又は分岐鎖状)であっても、環状であってもよく、鎖状の基と環状の基を組み合わせた基であってもよい。Rd4の脂肪族炭化水素基において、メチレン基(-CH2-)は、
-O-、-CO-又は-S-に置き換わっていてもよく、メチン基(-CH<)は、-PO3<に置き換わっていてもよく、上記脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子はOH基で置換されていてもよい。
【0086】
d4で表される置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基としては、下記式で表される基等が挙げられる。式中、*は結合手を表す。
【0087】
【化21】
【0088】
d4は、置換基を有していてもよい鎖状脂肪族炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは置換基を有しない鎖状アルキル基であり、さらに好ましくは置換基を有しない分岐鎖状アルキル基である。
【0089】
化合物(d1)としては、式(d1)で表される化合物、具体的には式(d1-1)~(d1-67)の各々に記載の置換基の組み合わせを有する式(d1)の化合物が挙げられる。表1~7中、*は結合手を表す。
【0090】
【化22】
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【0096】
【表6】
【0097】
【表7】
【0098】
中でも、式(d1-3)に記載の置換基を有する化合物~式(d1-6)に記載の置換基を有する化合物、式(d1-18)に記載の置換基を有する化合物~式(d1-52)に記載の置換基を有する化合物、式(d1-55)に記載の置換基を有する化合物、式(d1-56)に記載の置換基を有する化合物、式(d1-60)に記載の置換基を有する化合物、式(d1-61)に記載の置換基を有する化合物が好ましく、
より好ましくは式(d1-3)に記載の置換基を有する化合物~式(d1-6)に記載の置換基を有する化合物、式(d1-18)に記載の置換基を有する化合物~式(d1-41)に記載の置換基を有する化合物であり、
さらに好ましくは式(d1-24)に記載の置換基を有する化合物、式(d1-36)に記載の置換基を有する化合物~式(d1-40)に記載の置換基を有する化合物であり、
特に好ましくは式(d1-24)に記載の置換基を有する化合物である。
【0099】
化合物(d1)は、例えば特表2014-500852号公報に記載の製造方法により製造することができる。
【0100】
化合物(d2)は、
d1が置換基を有していてもよい炭素数1~15のアルキル基、
d2が炭素数1~10のアルキル基、
d3が置換基を有していてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基、
d4が置換基を有していてもよい炭素数1~15の脂肪族炭化水素基である化合物が好ましく、
より好ましくは、
d1がメチル基、エチル基又はプロピル基を表し、
d2がメチル基、エチル基又はプロピル基を表し、
d3がメチル基で置換されたフェニル基を表し、
d4がメチル基、エチル基又はプロピル基である化合物であり、
さらに好ましくは、
d1及びRd2がメチル基、Rd3がo-トリル基及びRd4がエチル基である化合物である。
【0101】
化合物(d3)は、
d1が置換基を有していてもよい炭素数1~15のアルキル基、
d2が炭素数6~18の芳香族炭化水素基である化合物が好ましく、
より好ましくは、
d1がヘキシル基及びRd2がフェニル基である化合物である。
【0102】
このようなO-アシルオキシム化合物としては、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-3-シクロペンチルプロパン-1-オン-2-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(3,3-ジメチル-2,4-ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチルプロパン-1-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチルプロパン-1-オン-2-イミン等が挙げられる。イルガキュアOXE01、OXE02、OXE03(以上、BASF(株)製)、N-1919((株)ADEKA製)等の市販品を用いてもよい。これらのO-アシルオキシム化合物であると、低温硬化性及び耐溶剤性に優れた硬化膜が得られる傾向にある。
【0103】
前記のアセトフェノン系化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-(2-メチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(3-メチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(4-メチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(2-エチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(2-プロピルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(2-ブチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(2,3-ジメチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(2、4-ジメチルベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(2-クロロベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(2-ブロモベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(3-クロロベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(4-クロロベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(3-ブロモベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(4-ブロモベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(2-メトキシベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(3-メトキシベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(4-メトキシベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(2-メチル-4-メトキシベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(2-メチル-4-ブロモベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-(2-ブロモ-4-メトキシベンジル)-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーなどが挙げられる。
【0104】
前記のビイミダゾール化合物としては、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール(特開平6-75372号公報、特開平6-75373号公報など参照。)、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(アルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(ジアルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール(特公昭48-38403号公報、特開昭62-174204号公報など参照。)、4,4’,5,5’-位のフェニル基がカルボアルコキシ基により置換されているイミダゾール化合物(特開平7-10913号公報など参照。)などが挙げられ、好ましくは2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾールが挙げられる。
【0105】
前記のトリアジン系化合物としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0106】
前記のアシルフォスフィンオキサイド系開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0107】
前記の有機ホウ素塩開始剤としては、テトラメチルアンモニウムn-ブチルトリフェニルボレート、テトラエチルアンモニウムイソブチルトリフェニルボレート、テトラn-ブチルアンモニウムn-ブチルトリ(4-tert-ブチルフェニル)ボレート、テトラn-ブチルアンモニウムn-ブチルトリナフチルボレート、テトラn-ブチルアンモニウムメチルトリ(4-メチルナフチル)ボレート、トリフェニルスルホニウムn-ブチルトリフェニルボレート、トリフェニルオキソスルホニウムn-ブチルトリフェニルボレート、トリフェニルオキソニウムn-ブチルトリフェニルボレート、N-メチルピリジウムn-ブチルトリフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムn-ブチルトリフェニルボレート、ジフェニルヨードニウムn-ブチルトリフェニルボレートなどが挙げられる。
【0108】
重合開始剤(C)としては、この分野で通常用いられている重合開始剤などをさらに含むことができ、当該重合開始剤としては、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アントラセン系化合物などが挙げられる。より具体的には、以下の化合物を挙げることができる。
【0109】
前記のベンゾイン系化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0110】
前記のベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0111】
前記のチオキサントン系化合物としては、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0112】
前記のアントラセン系化合物としては、9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセンなどが挙げられる。
【0113】
重合開始剤(C)としては、その他にも、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアントラキノン、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物などを含むことができる。
【0114】
重合開始剤(C)としては、連鎖移動を起こしうる基を有する重合開始剤として、特表2002-544205号公報に記載されている重合開始剤を含むことができる。前記の連鎖移動を起こしうる基を有する重合開始剤としては、例えば、式(P5)~(P10)で表される重合開始剤が挙げられる。
【化23】
【0115】
前記の連鎖移動を起こしうる基を有する重合開始剤は、前記の樹脂(A)の構成成分(Ad)としても使用することができる。そして、得られた樹脂(A)を、本発明の硬化性樹脂組成物のバインダー樹脂として使用できる。
【0116】
重合開始剤に重合開始助剤を組合せて用いることもできる。重合開始助剤としては、アミン化合物及び下記のカルボン酸化合物が好ましく、アミン化合物は芳香族アミン化合物がより好ましい。
【0117】
重合開始助剤の具体例としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの脂肪族アミン化合物、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのような芳香族アミン化合物が挙げられる。
【0118】
前記のカルボン酸化合物としては、フェニルチオ酢酸、メチルフェニルチオ酢酸、エチルフェニルチオ酢酸、メチルエチルフェニルチオ酢酸、ジメチルフェニルチオ酢酸、メトキシフェニルチオ酢酸、ジメトキシフェニルチオ酢酸、クロロフェニルチオ酢酸、ジクロロフェニルチオ酢酸、N-フェニルグリシン、フェノキシ酢酸、ナフチルチオ酢酸、N-ナフチルグリシン、ナフトキシ酢酸などの芳香族ヘテロ酢酸が挙げられる。
【0119】
重合開始剤(C)の含有量は、樹脂(A)及び重合性化合物(B)の合計量に対して質量分率で、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは1~30質量%である。
重合開始助剤の含有量は、樹脂(A)及び重合性化合物(B)の合計量に対して質量分率で、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.1~40質量%である。
重合開始剤(C)の合計量が前記の範囲にあると、硬化性樹脂組成物が高感度となり、前記の硬化性樹脂組成物を用いて形成した硬化膜の強度や、前記の硬化膜の表面における平滑性が良好になる傾向があり、好ましい。前記に加えて、重合開始助剤の量が前記の範囲にあると、得られる硬化性樹脂組成物の感度がさらに高くなり、前記の硬化性樹脂組成物を用いて形成するパターン基板の生産性が向上する傾向にあり、好ましい。
【0120】
〔4〕 散乱粒子(D)
本発明の硬化性樹脂組成物は、散乱粒子(D)を含む。散乱粒子(D)は、平均粒径が100nm以上5000nm以下であり、好ましくは200nm以上5000nm以下であり、より好ましくは300nm以上5000nm以下である。本発明の硬化性樹脂組成物は、このような散乱粒子(D)を含有することにより、光拡散性を有するものとなっている。散乱粒子(D)の平均粒径が100nm以上であることにより、硬化膜に所望の光拡散性を付与することができ、平均粒径が5000nm以下であることにより、硬化膜の作製に際して、異物が無く、均一な塗膜形成が可能である。
【0121】
散乱粒子(D)としては、無機化合物からなる粒子や有機化合物からなる粒子を用いることができる。
【0122】
無機化合物からなる粒子としては、金属酸化物が例示される。金属酸化物は、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Mo、Cs、Ba、La、Hf、W、Tl、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Ti、Sb、Sn、Zr、Nb、Ce、Ta、Inおよびこれらの組合せよりなる群から選ばれる1以上の酸化物を含むことができる。
【0123】
金属酸化物は、Al、SiO、ZnO、ZrO、BaTiO、TiO、Ta、Ti、ITO、IZO、ATO、ZnO-Al、Nb、SnO、MgOおよびこれらの組合せよりなる群から選ばれる1以上を含むことができ、必要に応じてアクリレートのような不飽和結合を有する化合物で表面処理された材質も使用可能である。
【0124】
有機化合物からなる粒子としては、多環状構造もしくは炭素数4以上24以下のアルキル鎖を持つ(メタ)アクリレートと、共重合可能な他のモノマーを重合してなるものが挙げられる。共重合に供されるモノマー100質量%中、多環状構造もしくは炭素数4以上24以下のアルキル鎖を持つ(メタ)アクリレートは合計で1~50質量%とすることが好ましく、より好ましくは3~25質量%であり、さらに好ましくは5~15質量%である。多環状構造もしくは炭素数4以上24以下のアルキル鎖を持つ(メタ)アクリレートの量を上記範囲とすることで分散効果をより効果的に発揮するため好ましい。
【0125】
有機化合物からなる粒子は、種々の方法で得ることができ、分散体の状態で得ることができる。例えば乳化重合(この中の一態様にソープフリー乳化重合がある)、分散重合、懸濁重合、シード重合などが挙げられる。中でも、乳化重合、分散重合は粒度分布が比較的狭いものとなり、本発明における波長依存性の低減に寄与するため好ましい。また、種々の(メタ)アクリレートを含有させた重合体とすることで、立体反発による分散性を付与することができる。
【0126】
本明細書で、「平均粒径」とは、数平均粒径であってもよく、例えば電界放出走査電子顕微鏡(FE-SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)により観察した像から求めることができる。具体的に、FE-SEMまたはTEMの観察画像から複数のサンプルを抽出し、これらのサンプルの直径を測定して算術平均した値で得ることができる。
【0127】
硬化性樹脂組成物において、散乱粒子(D)は、硬化性樹脂組成物の全体100質量部に対して0.5質量部以上80質量部以下で含まれ得、好ましくは1質量部以上50質量部以下で含まれ得、より好ましくは1.5質量部以上40質量部以下で含まれ得る。かかる範囲で散乱粒子(D)が含まれることにより、硬化膜に所望の光散乱性を付与することができ、一方、硬化膜を作製する際の塗膜性の低下を抑制することができる。
【0128】
〔5〕 溶剤(E)
本発明の硬化性樹脂組成物は、好ましくは、溶剤(E)を含む。前記の溶剤(E)は、硬化性樹脂組成物の分野で用いられている各種の有機溶剤であることができる。その具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル及びエチレングリコールモノブチルエーテルのようなエチレングリコールモノアルキルエーテル;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテルのようなジエチレングリコールモノアルキルエーテル;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル及びジエチレングリコールジブチルエーテルのようなジエチレングリコールジアルキルエーテル;
メチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテートのようなエチレングリコールアルキルエーテルアセテート;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート及びメトキシペンチルアセテートのようなアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート;
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル及びジプロピレングリコールモノプロピルエーテルのようなジプロピレングリコールモノアルキルエーテル;
ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート及びジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートのようなジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;
ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレンのような芳香族炭化水素;
メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンのようなケトン;
エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール及びグリセリンのようなアルコール;
3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシプロピオン酸メチルのようなエステル;
γ-ブチロラクトンのような環状エステルなどが挙げられる。
【0129】
上記の溶剤のうち、塗布性、乾燥性の点から、好ましくは前記溶剤の中で沸点が100~200℃である有機溶剤が挙げられ、より好ましくはアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、ケトン、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシプロピオン酸メチル等のエステルが挙げられ、さらに好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシプロピオン酸メチルが挙げられる。
【0130】
溶剤(E)は、単独又は2種類以上を混合して用いることができる。溶剤(E)の含有率は、硬化性樹脂組成物に対して質量分率で、好ましくは60~90質量%、より好ましくは70~85質量%である。溶剤(E)の含有量が、前記の範囲にあると、スピンコーター、スリット&スピンコーター、スリットコーター(ダイコーター、カーテンフローコーターとも呼ばれることがある。)、インクジェットなどの塗布装置で塗布したときに塗布性が良好になる見込みがあり、好ましい。
【0131】
〔6〕 添加剤(F)
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤、他の高分子化合物、顔料分散剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、連鎖移動剤、酸発生剤、塩基発生剤などの添加剤(F)を併用することもできる。
【0132】
充填剤は、硬化膜強度の調整のために添加されてもよい。本発明における充填剤は、透明性が高い点で、一次粒子径が100nmより小さく、50nm以下であることが好ましい。充填剤の一次粒子径は、通常0.10nm以上である。
【0133】
他の高分子化合物は、硬化膜強度の調整のために添加されてもよい。他の高分子化合物として具体的には、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂などの硬化性樹脂やポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリフルオロアルキルアクリレート、ポリエステル、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0134】
密着促進剤は、基板や基材との密着性向上のために添加されてもよい。前記の密着促進剤として具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0135】
酸化防止剤は、硬化膜の酸化による劣化防止のために添加されてもよい。前記の酸化防止剤として具体的には、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールなどが挙げられる。
【0136】
紫外線吸収剤は、硬化膜の紫外線による劣化防止のために添加されてもよい。前記の紫外線吸収剤として具体的には、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0137】
連鎖移動剤は、硬化反応における分子量制御のために添加されてもよい。前記の連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。
【0138】
酸発生剤は、硬化反応触媒として添加されてもよい。前記の酸発生剤としては、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホキソニウム塩、ピリジニウム塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、スルホン酸エステル類、鉄アレーン錯体などが挙げられる。
【0139】
塩基発生剤は、硬化反応触媒として添加されてもよい。前記の塩基発生剤としては、1-メチル-1-(4-ビフェニルイル)エチルカルバメート、1,1-ジメチル-2-シアノエチルカルバメートなどのカルバメート誘導体、尿素やN,N-ジメチル-N’-メチル尿素などの尿素誘導体、1,4-ジヒドロニコチンアミドなどのジヒドロピリジン誘導体、有機シランや有機ボランの四級化アンモニウム塩、ジシアンジアミドなど、特開平4-162040号に記載のベンゾイルシクロヘキシルカルバメ-トやトリフェニルメタノ-ルなどの化合物、特開平5-158242号に記載されている化合物などが挙げられる。
【0140】
〔7〕 硬化膜
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜もまた、本発明の1つである。本発明の硬化膜は、ヘイズが、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上である。このようなヘイズを有することにより、画像表示装置に用いた場合に外光反射によるムラを抑制することができる。本発明の硬化膜は、ヘイズが、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下である。このようなヘイズを有することにより、画像表示装置における表示画像の明るさの低下を抑制することができる。本発明の硬化膜は、散乱粒子(D)を含む硬化性樹脂組成物を用いて作製することにより、上述の範囲のヘイズを有するものとすることができる。
【0141】
本明細書においてヘイズとは、硬化膜に光を照射して透過した光線の全量を表す全光線透過率(Tt)と、硬化膜により拡散されて透過した拡散光線透過率(Td)との比から下記式(1):
ヘイズ(%)=(Td/Tt)×100 (1)
により求められる。
【0142】
全光線透過率(Tt)は、入射光と同軸のまま透過した平行光線透過率(Tp)と拡散光線透過率(Td)の和である。全光線透過率(Tt)及び拡散光線透過率(Td)は、JIS K 7361に準拠して測定される値である。
【0143】
本発明の硬化膜は、該硬化性樹脂組成物を基板の上に塗布する工程、硬化性樹脂組成物を乾燥することにより硬化性樹脂組成物層を形成する工程、硬化性樹脂組成物層を露光する工程、露光された硬化性樹脂組成物層をポストベークする工程を含む製造方法により得ることができる。
【0144】
本発明の硬化膜を作製する方法として、例えば、硬化性樹脂組成物を基板の上に塗布し、塗布した硬化性樹脂組成物を乾燥して硬化性樹脂組成物層を形成し、必要に応じてフォトマスクを介する等して、硬化性樹脂組成物層を露光して現像する方法や、インクジェット機器を用いて硬化性樹脂組成物を塗装すること等によりパターンを有する硬化膜(以下「パターン」という場合がある。)を製造する方法が挙げられる。
ここで、基板としては、透明なガラス板、シリコンウエハ、ポリカーボネート基板、ポリエステル基板、芳香族ポリアミド基板、ポリアミドイミド基板、ポリイミド基板などの樹脂基板などが挙げられる。
前記基板上には、ブラックマトリクス、着色パターン、別の硬化膜、膜厚調整用の透明パターン、TFTなどが形成されていてもよい。この場合の硬化膜の膜厚は、特に限定されず、用いる材料、用途等によって適宜調整することができ、例えば、0.1~30μm程度、好ましくは1~20μm程度、より好ましくは1~6μm程度が例示される。
【0145】
硬化性樹脂組成物の塗布方法は、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法、ダイコーティング法などが挙げられる。また、ディップコーター、バーコーター、スピンコーター、スリット&スピンコーター、スリットコーター(ダイコーター、カーテンフローコーター、スピンレスコーターとも呼ばれることがある)、ローラーなどのコーターを用いて塗布してもよい。なかでも、スピンコーターを用いて塗布することが好ましい。
【0146】
硬化性樹脂組成物を乾燥する方法としては、自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥などが挙げられる。具体的な加熱温度としては、30~120℃程度が適しており、60~100℃程度が好ましい。加熱時間としては、10秒間~60分間程度が適しており、30秒間~30分間程度が好ましい。減圧乾燥は、50~150Pa程度の圧力下、20~25℃程度の温度範囲で行うことが例示される。本発明の硬化性樹脂組成物が溶媒(D)を含む場合、上述の乾燥により、溶媒(D)を除去することができる。
【0147】
得られた硬化性樹脂組成物層に、フォトマスクを介して放射線を照射してもよい。
フォトマスクとして、目的とするパターンに応じて遮光部が形成されたマスクを用いる。放射線としては、g線、i線などの光線が用いられる。放射線の照射は、例えば、マスクアライナー、ステッパーなどの装置を使用するのが好ましい。放射線の照射後、硬化性樹脂組成物層を現像する。現像は、露光後の硬化性樹脂組成物層を、パドル法、浸漬法、スプレー法又はシャワー法などによって行うことができる。なお、フォトマスクを介さずに、硬化性樹脂組成物層に放射線を照射する場合、現像は不要である。
【0148】
現像液としては、通常、アルカリ水溶液が用いられる。アルカリ水溶液としては、アルカリ性化合物の水溶液が用いられ、アルカリ性化合物は無機アルカリ性化合物であっても、有機アルカリ性化合物であってもよい。アルカリ現像液には、界面活性剤が含有されていてもよい。
アルカリ性化合物は、無機及び有機のアルカリ性化合物のいずれでもよい。無機アルカリ性化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、燐酸水素二ナトリウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸水素二アンモニウム、燐酸二水素アンモニウム、燐酸二水素カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニアなどが挙げられる。
有機アルカリ性化合物の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミンなどが挙げられる。これらの無機及び有機アルカリ性化合物は、それぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。アルカリ現像液中のアルカリ性化合物の濃度は、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.03~5質量%である。
【0149】
アルカリ現像液中の界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤又はカチオン系界面活性剤のいずれでもよい。ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、その他のポリオキシエチレン誘導体、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。
アニオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウムやオレイルアルコール硫酸エステルナトリウム等の高級アルコール硫酸エステル塩、ラウリル硫酸ナトリウムやラウリル硫酸アンモニウムのようなアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムやドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルアリールスルホン酸塩などが挙げられる。
カチオン系界面活性剤の具体例としては、ステアリルアミン塩酸塩やラウリルトリメチルアンモニウムクロライドのようなアミン塩又は第四級アンモニウム塩などが挙げられる。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で用いることも、また2種以上組合せて用いることもできる。
アルカリ現像液中の界面活性剤の濃度は、好ましくは0.01~10質量%の範囲、より好ましくは0.05~8質量%、更に好ましくは0.1~5質量%である。
【0150】
本発明においては、ポストベーク時の温度は、70℃以上であることが好ましい。
また、硬化膜を形成する基板のガラス転移温度(Tg)より低いことが好ましく、また200℃を超える温度で劣化する成分を含む場合はその成分の劣化が始まる温度より低いことが好ましい。
したがって、ポストベーク時の温度は、硬化膜を形成する基板の種類、硬化性樹脂組成物に含まれる成分等に応じて適宜決定すればよく、例えば、70℃以上200℃以下であることが好ましく、80℃以上180℃以下であることがより好ましい。ポストベーク時の温度が70℃以上であることにより、優れた耐溶剤性を有する硬化膜を得ることができる。また、本発明に係る硬化性樹脂組成物を用いた場合、基板等の特性を低下させることなく、優れた耐溶剤性を有する硬化膜を得ることができる。
【0151】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いることにより、耐溶剤性を上げるために、従来、通常行われていた200℃を超える温度でのポストベーク工程が必須ではなくなるので、優れた耐溶剤性を有し、かつ基板等の特性の低下がない硬化膜を得ることができる。
【0152】
本発明の硬化性樹脂組成物より、以上のような各工程を経て、基板上に、硬化膜を形成することができる。この硬化膜は、有機EL表示装置や液晶表示装置に使用されるフォトスペーサ、層間絶縁膜、着色パターンの膜厚を調整するためのコート層等として有用である。
上記硬化膜の製造において硬化性樹脂組成物層へのパターニング露光の際にホール形成用フォトマスクを使用すれば、ホールを有する層間絶縁膜を得ることができる。
上記硬化膜の製造において硬化性樹脂組成物層への露光の際に、フォトマスクを使用せず全面露光及び加熱硬化、あるいは加熱硬化のみで硬化膜を形成することができ、この硬化膜は、オーバーコートとして有用である。
上記のようにして得られる硬化膜を組み込むことにより、有機EL表示装置や液晶表示装置などの表示装置を構成することができる。このような表示装置は、表示品質に優れている。
【実施例0153】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
以下の合成例において、化合物は、質量分析(LC;Agilent製1200型、MASS;Agilent製LC/MSD型)又は元素分析(VARIO-EL;エレメンタール(株)製)で同定した。
【0154】
<合成例1>
下記構成単位からなる樹脂(A-1)を合成した。
攪拌翼、還流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル224部を仕込み、90℃に加温した。ビニルトルエン170.3部、2-(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート87.4部、メタクリル酸74.9部、アゾビス(イソブチロニトリル)16.0部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル96.0部を混合した溶液を滴下ロートにてフラスコ内に連続滴下を開始した。混合溶液滴下中のフラスコ内温度を90±1℃に保ち、3時間で滴下を終了した。滴下終了後、フラスコ内温度を90±1℃にして6時間保持した。反応後、反応液を40℃以下になるまで冷却し、4-メトキシフェノール0.4部、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート53.4部、トリフェニルホスフィン15.0部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル262.5部を投入し、フラスコ内温度を110℃まで昇温させた後、フラスコ内温度110±1℃にて付加反応を行うことにより樹脂(A-1)を得た。得られた樹脂(A-1)の重量平均分子量(Mw)は14,500、酸価(固形分換算値)は89(mg-KOH/g)、固形分は38.6質量%であった。樹脂(A-1)は、以下の構造単位を有する。
【0155】
【化24】
【0156】
<分散例1>
酸化チタン(平均粒径300nm)を15.0部、酸性樹脂型顔料分散剤を2.0部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート83部を混合し、0.4mmのジルコニアビーズ300部を加え、ペイントコンディショナー(LAU社製)を使用して1時間振盪した。その後、ジルコニアビーズをろ過により除去して散乱剤D-1を得た。
【0157】
〔実施例1~4、比較例1〕
〔硬化性樹脂組成物の調製〕
表1に示す成分を混合して、各々の硬化性樹脂組成物を得た。
【0158】
【表8】
【0159】
散乱剤(D―1):分散例1記載の散乱剤
散乱剤(D-2):20%ジエチレングルコール溶剤分散シリカ粒子(平均粒径1500nm)((株)日本触媒製「シーホスター(登録商標)KE-E150」)
散乱剤(D-3):シロキサン粒子(平均粒径500nm)((株)日本触媒製「シーホスター(登録商標)KE-P50」)
散乱剤(D-4):アクリル粒子(平均粒径2400nm)((株)日本触媒「エポスター(登録商標)MV-1002」)
樹脂(A-1):合成例1記載の樹脂(A-1)溶液
重合性化合物(B-1):ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学工業(株)製「A9550」)
重合開始剤(C-1):N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミン(イルガキュア(登録商標)OXE 01;BASF社製)
溶剤(E-1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0160】
<パターン(硬化膜)の形成;条件1>
5cm角のガラス基板(イーグル2000;コーニング社製)上に、上記各例で調製した硬化性樹脂組成物をスピンコート法で塗布したのち、60℃で1分間プリベークして硬化性樹脂組成物層を形成した。放冷後、硬化性樹脂組成物層が形成された基板を露光機(TME-150RSK;トプコン(株)製)を用いて、大気雰囲気下、100mJ/cmの露光量(365nm基準)で光照射した。フォトマスクとしては、100μmラインアンドスペースパターンが形成されたものを使用した。光照射後の硬化性樹脂組成物層を、テトラアンモニウムヒロドキサイド2.38%を含む水系現像液に23℃で60秒間浸漬現像し、水洗後、オーブン中、85℃で30分間ポストベークを行い、硬化膜を得た。得られた硬化膜について、膜厚測定装置(DEKTAK3;(株)アルバック製)を用いて膜厚を測定したところ、3.0μmであることを確認した。
【0161】
<ヘイズ>
得られた硬化膜について、Hazeメータ(ヘーズメーターHZ-2;スガ試験機(株)製)を用いてヘイズを測定した。結果を表9に示す。
【0162】
<耐溶剤性>
得られたパターンを、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に温度23℃で10分間浸漬し、浸漬後のパターンについて、膜厚測定装置(DEKTAK3;(株)アルバック製)を用いて膜厚を測定し、浸漬前の膜厚(3.0μm)との比を算出した。結果を表9に示す。
【0163】
<透過率>
得られた硬化膜について、紫外可視分光光度計(V-650;日本分光(株)製)に積分球(ISV-922;日本分光(株)製)を付け、450nmの波長の透過率を測定した。結果を表9に示す。
【0164】
【表9】
【0165】
比較例1について、ヘイズは0%であった。なお、比較例1について、耐溶剤性は100%、450nmの波長の透過率は92%であった。
【0166】
〔実施例5~8、比較例2~5〕
実施例1~4の各々について、重合開始剤として、重合開始剤(C-1)(N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミン(イルガキュア(登録商標)OXE 01;BASF社製))に代えて下記式で表される重合開始剤(C-2)(アデカアークルズ(登録商標)NCI-930;ADEKA社製)を用いた(実施例5~8)。
【0167】
【化25】
【0168】
<パターン(硬化膜)の形成;条件2>
5cm角のガラス基板(イーグル2000;コーニング社製)上に、上記各例で調製した硬化性樹脂組成物をスピンコート法で塗布したのち、85℃で2分間プリベークして硬化性樹脂組成物層を形成した。放冷後、硬化性樹脂組成物層が形成された基板を露光機(TME-150RSK;トプコン(株)製)を用いて、大気雰囲気下、100mJ/cm2の露光量(365nm基準)で光照射した。フォトマスクとしては、100μmラインアンドスペースパターンが形成されたものを使用した。光照射後の硬化性樹脂組成物層を、テトラアンモニウムヒロドキサイド2.38%を含む水系現像液に23℃で60秒間浸漬現像し、水洗後、オーブン中、85℃で30分間ポストベークを行い、硬化膜を得た。得られた硬化膜について、膜厚測定装置(DEKTAK3;(株)アルバック製)を用いて膜厚を測定したところ、3.0μmであることを確認した。
【0169】
<耐溶剤性>
条件2で得られたパターンを、PGMEAまたはPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)に温度23℃で10分間浸漬し、浸漬後のパターンについて、膜厚測定装置(DEKTAK3;(株)アルバック製)を用いて膜厚を測定し、浸漬前の膜厚(3.0μm)との比を算出した。結果を表10に示す。
【0170】
【表10】
【0171】
また、実施例5~8の各々について、重合開始剤として、重合開始剤(C-2)に代えて重合開始剤(C-3)(イルガキュア(登録商標)907)を用いた(比較例2~5)場合、パターン(硬化膜)の形成(条件2)が形成できなかった。