(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076088
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】シャワーヘッド電極組立体及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230525BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20230525BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189273
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 良輔
(72)【発明者】
【氏名】花岡 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】有吉 文彬
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084BB07
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC09
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD21
2G084DD23
2G084DD24
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF15
2G084FF32
5F004AA16
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004CA04
5F004CA06
(57)【要約】
【課題】シャワーヘッド電極組立体の内部で発生する異常放電を防止する。
【解決手段】プラズマ処理装置のシャワーヘッド電極組立体であって、複数の第1ガス流路を有する電極であり、プラズマに露出される表面を有する前記電極と、前記電極に取り付けられ、複数の前記第1ガス流路と連通する複数の第2ガス流路を有する裏当て部材と、を備え、複数の前記第2ガス流路のそれぞれは、スリット形状の長穴であり、前記シャワーヘッド電極組立体の中心軸に対して前記長穴の径方向の長さが前記長穴の円周方向の長さよりも長くなるように構成されるシャワーヘッド電極組立体が提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置のシャワーヘッド電極組立体であって、
複数の第1ガス流路を有する電極であり、プラズマに露出される表面を有する前記電極と、
前記電極に取り付けられ、複数の前記第1ガス流路と連通する複数の第2ガス流路を有する裏当て部材と、を備え、
複数の前記第2ガス流路のそれぞれは、スリット形状の長穴であり、前記シャワーヘッド電極組立体の中心軸に対して前記長穴の径方向の長さが前記長穴の円周方向の長さよりも長くなるように構成される、
シャワーヘッド電極組立体。
【請求項2】
複数の前記第2ガス流路のそれぞれは、前記長穴の長手方向に並んで配置された2つ及至7つの前記第1ガス流路と連通するように構成される、
請求項1に記載のシャワーヘッド電極組立体。
【請求項3】
前記長穴は、前記電極の裏面と接する前記裏当て部材の支持面において面取りされている、
請求項1又は2に記載のシャワーヘッド電極組立体。
【請求項4】
前記長穴は、前記裏当て部材の前記支持面の反対面の開口において面取りされている、
請求項3に記載のシャワーヘッド電極組立体。
【請求項5】
前記長穴の径方向の面取り量と円周方向の面取り量とは同じである、
請求項3又は4に記載のシャワーヘッド電極組立体。
【請求項6】
複数の前記第2ガス流路のそれぞれに沿った全圧の低下量と複数の前記第1ガス流路のそれぞれに沿った全圧の低下量との比は、0.6:1.0及至1.2:1.0である、
請求項1から5のいずれか一項に記載のシャワーヘッド電極組立体。
【請求項7】
複数の前記第2ガス流路のそれぞれに沿った全圧の低下量と複数の前記第1ガス流路のそれぞれに沿った全圧の低下量との比は、0.8:1.0及至1.1:1.0である、
請求項6に記載のシャワーヘッド電極組立体。
【請求項8】
複数の前記第2ガス流路のそれぞれに沿った全圧の低下量と複数の前記第1ガス流路のそれぞれに沿った全圧の低下量との比は、0.9:1.0及至1.0:1.0である、
請求項6又は7に記載のシャワーヘッド電極組立体。
【請求項9】
複数の前記第1ガス流路のそれぞれは、前記第2ガス流路との接続部分に絞り部を有する、
請求項1から8のいずれか一項に記載のシャワーヘッド電極組立体。
【請求項10】
複数の前記第2ガス流路のそれぞれは、前記長穴の面取りされている部分の内縁の径方向の長さが5.0mm以上15mm以下である、
請求項1から9のいずれか一項に記載のシャワーヘッド電極組立体。
【請求項11】
複数の前記第2ガス流路のそれぞれは、前記長穴の面取りされている部分の外縁が平面視で楕円形状を有する、
請求項1から10のいずれか一項に記載のシャワーヘッド電極組立体。
【請求項12】
複数の前記第1ガス流路のそれぞれは、少なくとも一部が平面視で前記第2ガス流路から見通せる位置に配置されている、
請求項1から11のいずれか一項に記載のシャワーヘッド電極組立体。
【請求項13】
前記裏当て部材は、アルミニウムで形成され、表面にアルマイト処理が施されている、
請求項1から12のいずれか一項に記載のシャワーヘッド電極組立体。
【請求項14】
前記電極は、シリコンで形成されている、
請求項1から13のいずれか一項に記載のシャワーヘッド電極組立体。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のシャワーヘッド電極組立体を備える、
プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シャワーヘッド電極組立体及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置において、複数のガス流路から処理ガスを処理室内に供給するシャワーヘッドが用いられる。例えば、特許文献1は、第2の部材に取り付けられる第1の部材を含み、第1及び第2の部材は、流体連通する第1及び第2のガス流路を有するシャワーヘッドを開示している。かかるシャワーヘッドにおいて処理ガスがガス流路を通って流れる場合、第1及び第2のガス流路に沿って全圧の低下が発生し、第2のガス流路に沿った全圧の低下の割合は、第1のガス流路に沿った全圧の低下の割合よりも大きいことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、シャワーヘッドの内部で発生する異常放電を防止する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、プラズマ処理装置のシャワーヘッド電極組立体であって、複数の第1ガス流路を有する電極であり、プラズマに露出される表面を有する前記電極と、前記電極に取り付けられ、複数の前記第1ガス流路と連通する複数の第2ガス流路を有する裏当て部材と、を備え、複数の前記第2ガス流路のそれぞれは、スリット形状の長穴であり、前記シャワーヘッド電極組立体の中心軸に対して前記長穴の径方向の長さが前記長穴の円周方向の長さよりも長くなるように構成されるシャワーヘッド電極組立体が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、シャワーヘッドの内部で発生する異常放電を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るプラズマ処理システムの構成例を示す図。
【
図2】参考例に係るシャワーヘッドの一部を拡大した縦断面図。
【
図3】実施形態に係るシャワーヘッドの一部を拡大した縦断面図。
【
図4】実施形態に係るガス流路の一部を拡大した縦断面図。
【
図5】実施形態に係る裏当て部材の支持面の一部を示す図。
【
図6】実施形態に係る第1ガス流路及び第2ガス流路の構成の変形例を示す図。
【
図7】実施形態に係る処理ガスの圧力の低下量についてシミュレーション結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
本明細書において平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直、円には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直、略円が含まれてもよい。
【0010】
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。
図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0011】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11とプラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0012】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0013】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0014】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0015】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0016】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス流路を有する。
【0017】
シャワーヘッド13は、プラズマに露出される表面を有する上部電極13B、及び上部電極13Bに上部電極13Bの裏面側から取り付けられる裏当て部材13Aを有する。上部電極13B及び裏当て部材13Aは円盤形状である。上部電極13Bは、複数の第1ガス流路13Bh1、13Bh2を有する。裏当て部材13Aは、複数の第2ガス流路13Ahを有する。具体的には、1つの第2ガス流路13Ahに2つの第1ガス流路13Bh1、13Bh2が連通する。第1ガス流路13Bh1、13Bh2を総称して第1ガス流路13Bhともいう。裏当て部材13Aには、例えば、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる流路が形成され、シャワーヘッド13を冷却する機能を有してもよい。裏当て部材13Aはクーリングプレートとも呼ばれる。
【0018】
ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数の第2ガス流路13Ah及び複数の第1ガス流路13Bhを通り、プラズマ処理空間10s内に導入される。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0019】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0020】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0021】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0022】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0023】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0024】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0025】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0026】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0027】
[シャワーヘッド]
次に、本実施形態に係るシャワーヘッド(シャワーヘッド電極組立体)13の構成について、参考例に係るシャワーヘッド113と比較しながら説明する。
図2(a)は参考例に係るシャワーヘッド113の一部を拡大した縦断面図であり、
図2(b)は
図2(a)のA-A面から上部電極113Bの裏面の一部を平面視した図である。
図3(a)は、実施形態に係るシャワーヘッド13の一部を拡大した縦断面図であり、
図3(b)は
図3(a)のB-B面から上部電極13Bの裏面の一部を平面視した図である。
【0028】
(参考例)
図2に示す参考例に係るシャワーヘッド113は、表面113BS2及びその反対面である裏面113BS1を有する上部電極113B、及び支持面113ASを有し、上部電極113Bに取り付けられる裏当て部材113Aを有する。支持面113ASは裏当て部材113Aの下面であり、上部電極113Bの裏面(上面)113BS1と接触する。表面113BS2は上部電極113Bの下面であり、プラズマに露出される。
【0029】
シャワーヘッド113には、複数の第1ガス流路113Bh及び複数の第2ガス流路113Ahが垂直方向に連通し、複数の同心円上に設けられる。
図2(a)のA-A面から平面視した
図2(b)は、支持面113ASと裏面113BS1との境界から裏面113BS1側を見たときのガス流路であり、複数の同心円上に設けられたガス流路の一部を示す。以下では、例として
図2(b)に示す中心CTに対して同心円上(同一円周上)に設けられる4つの第1ガス流路113Bh及び4つの第2ガス流路113Ahについて説明する。中心CTは、シャワーヘッド113の中心軸が通る点であり、円盤形状の上部電極113B及び裏当て部材113Aの中心軸は、シャワーヘッド113の中心軸と共通である。
【0030】
裏当て部材113Aは、例えば、アルミニウムで形成され、表面にアルマイト処理が施され、これによりプラズマ耐性を有する。裏当て部材113Aは、ガス拡散室113bから支持面113ASへガスを供給するための複数の第2ガス流路113Ahを有する。ガス拡散室113bに導入された処理ガスは、複数の第2ガス流路113Ahを通って上部電極113B側に排出される。すなわち、処理ガスは、複数の第2ガス流路113Ahを流通する。複数の第2ガス流路113Ahのそれぞれは丸穴である。
【0031】
上部電極113Bは、プラズマ処理空間10sに高周波電力(RF電力)を供給する電極である。上部電極113Bは、例えば、シリコンで形成される。上部電極113Bの表面113BS2は、プラズマ処理空間10sに接し、プラズマに露出される。上部電極113Bは、表面113BS2及び裏面113BS1を貫通する複数の第1ガス流路113Bhを有する。複数の第1ガス流路113Bhのそれぞれは丸穴である。
【0032】
図2(b)に示すように、4つの第1ガス流路113Bh及び4つの第2ガス流路113Ahは、中心CTに対して同心円上(同一円周上)に、互いに離隔して等間隔に設けられる。4つの第2ガス流路113Ahのそれぞれは、4つの第1ガス流路113Bhのそれぞれに一対一に接続される。
【0033】
シャワーヘッド113は、ガス拡散室113bに供給された処理ガスを、複数の第2ガス流路113Ahから複数の第1ガス流路113Bhに通してプラズマ処理空間10sへ導入する構造になっている。
【0034】
係る構造のシャワーヘッド113では、上部電極113Bと裏当て部材113Aとの境界近傍にて異常放電が発生する場合がある。つまり、上部電極113Bの裏面113BS1に形成された第1ガス流路113Bh内及び/又は裏当て部材113Aの支持面113ASに形成された第2ガス流路113Ah内のコンダクタンスの低下により処理ガスの圧力が充分に低下していないことがある。このとき、シャワーヘッド113の内部、すなわち、第2ガス流路113Ah及び/又は第1ガス流路113Bhの内部にて異常放電が発生する。これにより、上部電極113B及び/又は裏当て部材113Aに破損や消耗が生じたり、処理ガスの供給に不具合が生じたりする。
【0035】
(実施形態)
これに対して、本実施形態に係るシャワーヘッド13は、上部電極13Bと裏当て部材13Aとの境界にて第1ガス流路13Bh及び第2ガス流路13Ah内のコンダクタンスを増加させて処理ガスの圧力を充分に低下させる。これにより、シャワーヘッド13の内部、すなわち、第1ガス流路13Bh及び第2ガス流路13Ahの内部にて異常放電が発生することを防止する。本実施形態に係るシャワーヘッド13の構成例について、
図3を参照して説明する。
【0036】
本実施形態に係るシャワーヘッド13は、表面13BS2及びその反対面である裏面13BS1を有する上部電極13B、及び支持面13ASを有し、上部電極13Bに取り付けられる裏当て部材13Aを有する。支持面13ASは裏当て部材13Aの下面であり、上部電極13Bの裏面(上面)13BS1と接触する。表面13BS2は上部電極13Bの下面であり、プラズマに露出される。
【0037】
シャワーヘッド13では、複数の第1ガス流路13Bh1、13Bh2及び複数の第2ガス流路13Ahが垂直方向に連通し、複数の同心円上に設けられる。
図3(a)のB-B面から平面視した
図3(b)は、支持面13ASと裏面13BS1との境界から裏面13BS1側を見たときのガス流路であり、複数の同心円上に設けられたガス流路の一部を示す。以下では、例として
図3(b)に示す中心CTに対して同心円上に設けられる8つの第1ガス流路13Bh1、13Bh2及び4つの第2ガス流路13Ahについて説明する。中心CTは、シャワーヘッド13の中心軸が通る点であり、円盤形状の上部電極13B及び裏当て部材13Aの中心軸は、シャワーヘッド13の中心軸と共通である。
【0038】
裏当て部材13Aは、例えば、アルミニウムで形成され、表面にアルマイト処理が施され、これによりプラズマ耐性を有する。裏当て部材13Aは、ガス拡散室13bから支持面13ASへガスを供給するための複数の第2ガス流路13Ahを有する。ガス拡散室13bに導入された処理ガスは、複数の第2ガス流路13Ahを通って上部電極13B側に排出される。すなわち、処理ガスは、複数の第2ガス流路13Ahを流通する。複数の第2ガス流路13Ahのそれぞれは、中心CTに対して径方向に延びる長穴である。換言すれば、複数の第2ガス流路13Ahのそれぞれは、中心CTに対して径方向の長さが円周方向の長さよりも長くなるように構成される。
【0039】
上部電極13Bは、プラズマ処理空間10sに高周波電力(RF電力)を供給する電極である。上部電極13Bは、例えば、シリコンで形成される。上部電極13Bの裏面13BS1は、裏当て部材13Aに接触する。上部電極13Bの表面13BS2は、プラズマ処理空間10sに接する。すなわち、上部電極13Bの表面13BS2は、プラズマ処理空間10sの内面を形成し、プラズマに露出される。上部電極13Bは、表面13BS2及び裏面13BS1を貫通する複数の第1ガス流路13Bh1、13Bh2を有する。複数の第1ガス流路13Bh1、13Bh2のそれぞれは丸穴である。
【0040】
図3(b)に示すように、4つの第1ガス流路13Bh1及び4つの第1ガス流路13Bh2は、それぞれが中心CTに対して同心円上に、互いに離隔して等間隔に設けられる。4つの第2ガス流路13Ahのそれぞれは、8つの第1ガス流路13Bh1、13Bh2のそれぞれに一対二に接続される。すなわち、1つの第2ガス流路13Ahには2つの第1ガス流路13Bh1、13Bh2が接続される。これにより、1つの第2ガス流路13Ah及び2つの第1ガス流路13Bh1、13Bh2を1組として、4組(4つの第2ガス流路13Ah及び8つの第1ガス流路13Bh1、13Bh2)が互いに離隔して設けられる。
【0041】
図4(a)及び(b)は、
図3(a)のガス拡散室13b下のガス流路を更に拡大して示した縦断面図である。
図4(b)は、
図4(a)に示すガス流路の寸法を示す。なお、
図4(a)及び(b)は、後述する
図5のC-C断面である。
【0042】
上部電極13Bの第1ガス流路13Bh1、13Bh2は、裏面13BS1及び表面13BS2を貫通し、第2ガス流路13Ahの底部に連通する。第1ガス流路13Bh1、13Bh2のそれぞれは、第2ガス流路13Ahとの接続部分(底部下側)に絞り部13Bh12、13Bh22を有する。絞り部13Bh12、13Bh22によって、上部電極13Bの表面13BS2がプラズマに暴露されて消耗した場合にも、第1ガス流路13Bh1、13Bh2の出口側(表面13BS2側)の圧力をほぼ一定にすることができる。
【0043】
第1ガス流路13Bh1、13Bh2は、第2ガス流路13Ahの長穴の長手方向に並んで配置されている。第1ガス流路13Bh1、13Bh2は、それぞれ第2ガス流路13Ahの長手方向の側面13Ah3に沿って垂直方向に延在した位置に設けられる。
【0044】
図5(a)は、実施形態に係る裏当て部材13Aの支持面13ASの一部を平面視した図であり、
図5(b)は
図5(a)に示す第2ガス流路13Ahの1つを拡大して示した図である。
図5(a)に示すように、複数の第2ガス流路13Ahのそれぞれは、スリット形状の長穴であり、シャワーヘッド13の中心軸に対して長穴の径方向の長さが円周方向の長さよりも長くなるように構成されている。
図5(a)は、円周方向に1周目、2周目、3周目、4周目・・・に配置された第2ガス流路13Ahを示す。すべての第2ガス流路13Ahの長穴の長手方向の両端を通る仮想線は中心CTを通る(
図3(b)参照)。同じ周の長穴同士の間隔は等しく、異なる周の長穴同士の間隔は、中心CTから遠ざかるほど狭くなっている。
【0045】
図4及び
図5に示すように、第2ガス流路13Ahは、裏当て部材13Aのガス拡散室13bとの境界面13AR(支持面13ASの反対面)の開口及び支持面13ASにおいて面取りされている。面取りされている部分は、第2ガス流路13Ahの側面13Ah3に対して外側に傾斜する傾斜面13Ah1、13Ah2である。面取りされている部分は、全周に亘って形成されている。第2ガス流路13Ahは、長穴の外縁、すなわち面取りした傾斜面13Ah1、13Ah2の外周が略楕円形状を有する。また、第2ガス流路13Ahのそれぞれは、平面視で長穴の内縁、すなわち第2ガス流路13Ahの側面13Ah3で囲まれた部分が細長いスリット形状を有する。
【0046】
図4では、面取り部を平らな傾斜面13Ah1、13Ah2として示したが、傾斜面13Ah1、13Ah2は外側に湾曲した曲面を有してもよい。これにより、第2ガス流路13Ahの長穴の開口部において角部を無くし、緩やかな面とすることで第2ガス流路13Ahにおいて異常放電の発生をより抑制できる。なお、副次的効果として、角部をなくすことで裏当て部材13Aのアルマイト処理(表面処理)を容易にすることができる。
【0047】
図4(b)に示すように、第1ガス流路13Bh1、13Bh2の直径(φ1)は、例えば0.8mmであり、絞り部13Bh12、13Bh22の直径(φ2)は、例えば0.5mmである。
【0048】
裏当て部材13Aの厚さH1は7.0mmであり、上部電極13Bの厚さH2は20mmである。絞り部13Bh12、13Bh22の長さは、絞り部13Bh12、13Bh22を含む第1ガス流路13Bh1、13Bh2の全体の長さ20mmの1/10程度である。
【0049】
図4(b)及び
図5(b)に示すように、第2ガス流路13Ahの長穴の内縁の長手方向の幅W1は5.0mmであり、長穴の外縁の長手方向の幅W2は8.0mmである。第2ガス流路13Ahの長穴の内縁の短手方向の幅D1は0.2mmであり、長穴の外縁の短手方向の幅D3は3.2mmである。面取り部の幅D2は平面視で1.5mmである。長穴の径方向の面取り量と円周方向の面取り量とは同じであり、平面視で1.5mmである。長穴の径方向の面取り量と円周方向の面取り量とを同じにすることで面取りの加工を容易にできる。ただし、長穴の径方向の面取り量と円周方向の面取り量とは異なっていてもよい。なお、本実施形態では、全周に亘って面取り量は等しい。
【0050】
第1ガス流路13Bh1、13Bh2のそれぞれは、少なくとも一部が平面視で第2ガス流路13Ahから見通せる位置に配置されている。第1ガス流路13Bh1、13Bh2は、第2ガス流路13Ahの長穴の両端に配置されることに限らず、長穴の長手方向に並んで配置されることができる。
【0051】
(変形例)
図6は、実施形態に係る第2ガス流路13Ah及び第1ガス流路13Bhの構成の変形例を示す図である。
図6(a)~(c)では、第2ガス流路13Ahの内縁の長手方向の幅W1は15mmであり、外縁の長手方向の幅W2は18mmである。その他の寸法は
図5(b)に示す寸法と同じである。よって、第2ガス流路13Ahの内縁の長手方向の幅W1は、5.0mm以上15mm以下であってよい。また、第2ガス流路13Ahの外縁の長手方向の幅W2は、8.0mm以上18mm以下であってよい。
【0052】
第2ガス流路13Ahの長手方向の長さを長くすることで、第2ガス流路13Ahのそれぞれに連通させる第1ガス流路13Bhの数を増やすことができる。
図6(a)の場合、1つの第2ガス流路13Ahに2つの第1ガス流路13Bh1、13Bh2を連通させている。
図6(b)の場合、1つの第2ガス流路13Ahに4つの第1ガス流路13Bh1~13Bh4を連通させている。
図6(c)の場合、1つの第2ガス流路13Ahに7つの第1ガス流路13Bh1~13Bh7を連通させている。第1ガス流路13Bh1~13Bh7の直径φは0.5mmである。
【0053】
以上に説明したシャワーヘッド13では、ガス拡散室13bに供給された処理ガスを、第2ガス流路13Ahに通す。処理ガスは、第2ガス流路13Ahの底面で連通する2つ以上の第1ガス流路13Bhに分岐して流れる。これにより、裏当て部材13Aと上部電極13Bとの境界にて第1ガス流路13Bh及び第2ガス流路13Ah内のコンダクタンスを増加させ、これにより、処理ガスの圧力を充分に低下させることができる。この結果、シャワーヘッド13の内部、すなわち、第1ガス流路13Bh及び第2ガス流路13Ahの内部にて異常放電が発生することを防止できる。
【0054】
[シミュレーション結果]
第1ガス流路13Bh及び第2ガス流路13Ahにおける処理ガスの圧力の低下量についてシミュレーションを行った。
図7は、実施形態に係る処理ガスの圧力の低下量についてシミュレーションを行った結果を参考例と比較して示す図である。
【0055】
図7(a)は、参考例における処理ガスの圧力の低下量のシミュレーション結果を示す。参考例では、第2ガス流路113Ahが裏当て部材113Aを貫通し、垂直方向に接続された第1ガス流路113Bh1、113Bh2が上部電極113Bを貫通する。
【0056】
第1ガス流路113Bh1の直径は第2ガス流路113Ahの直径よりも大きく、第1ガス流路113Bh2の直径は第1ガス流路113Bh1の直径よりも大きい。つまり、第1ガス流路113Bh2は第1ガス流路113Bh1から拡径し、プラズマ処理空間10sに開口している。
【0057】
図7(b)は、
図3及び
図4を示して説明した本実施形態に係る第2ガス流路13Ahの底面で2つの第1ガス流路13Bh1、13Bh2に分岐する構成における、ガス流路内の処理ガスの圧力の低下量のシミュレーション結果を示す。
【0058】
図7(a)及び
図7(b)のいずれも、プラズマ処理チャンバ10内の圧力を17mTorr(2.27Pa)に設定した。供給するガスの総流量は約600sccm、ガス流路(ガス穴)の個数は1000個とした。本実施形態では、第2ガス流路13Ahが約1000個、第1ガス流路13Bh1、13Bh2がそれぞれ1000個設けられている設定とした。本実施形態ではプラズマ処理空間10sに2000個の穴が開口している。一方、参考例では、垂直に連通する第2ガス流路113Ah、第1ガス流路113Bh1、113Bh2からなる丸穴が約1000個設けられている設定とした。参考例ではプラズマ処理空間10sに1000個の穴が開口している。
【0059】
処理ガスの圧力P1~P4のシミュレーション結果を
図7(a)及び(b)の表に示す。参考例では、第1ガス流路113Bh2の出口の処理ガスの圧力P1、第1ガス流路113Bh2の入口の圧力P2、裏当て部材113Aと上部電極113Bとの境界の第1ガス流路113Bh1の圧力P3、第2ガス流路113Ahの入口の圧力P4を算出した。圧力P1以外の圧力P2~P4については各ガス流路のセンター、ミドル、エッジの圧力を算出した。
【0060】
本実施形態では、第1ガス流路13Bh1、13Bh2の出口の処理ガスの圧力P1、絞り部の出口の圧力P2、裏当て部材13Aと上部電極13Bとの境界の第1ガス流路13Bh1、13Bh2の圧力P3、第2ガス流路13Ahの入口の圧力P4を算出した。圧力P1以外の圧力P2~P4については各ガス流路のセンター、ミドル、エッジの圧力を算出した。
【0061】
この結果、参考例では、第2ガス流路113Ahの入口の圧力を100%(全圧)として、第2ガス流路113Ahに沿った全圧の低下量は26%であり、第1ガス流路113Bh(第1ガス流路113Bh1、113Bh2)に沿った全圧の低下量は74%である。センター、ミドル、エッジのいずれについても概ね同じ低下量となっている。つまり、第2ガス流路113Ahに沿った全圧の低下量と第1ガス流路113Bhに沿った全圧の低下量との比は、26%:74%=0.4:1.0である。
【0062】
これに対して、本実施形態では、第2ガス流路13Ahの入口の圧力を100%(全圧)として、第2ガス流路13Ahに沿った全圧の低下量は47%であり、第1ガス流路13Bh(第1ガス流路13Bh1、13Bh2)に沿った全圧の低下量は53%である。センター、ミドル、エッジのいずれについても概ね同じ低下量となっている。つまり、第2ガス流路13Ahに沿った全圧の低下量と第1ガス流路13Bhに沿った全圧の低下量との比は、47%:53%=0.9:1.0である。
【0063】
よって、本実施形態に係るシャワーヘッド13は、参考例と比較して、裏当て部材13Aと上部電極13Bとの境界において処理ガスの圧力を充分に下げることができる。処理ガスの圧力を下げることによって、裏当て部材13Aと上部電極13Bとの境界において、異常放電の発生を防止できる。
【0064】
なお、本実施形態に係るシャワーヘッド13では、第2ガス流路13Ahに沿った全圧の低下量と第1ガス流路13Bhに沿った全圧の低下量との比は、0.6:1.0及至1.2:1.0であってもよい。これによれば、裏当て部材13Aと上部電極13Bとの境界において処理ガスの圧力を下げることができ、異常放電の発生を防止できる。
【0065】
ただし、第2ガス流路13Ahに沿った全圧の低下量と第1ガス流路13Bhに沿った全圧の低下量との比は、0.8:1.0及至1.1:1.0であればより好ましく、0.9:1.0及至1.0:1.0であれば更に好ましい。これによれば、裏当て部材13Aと上部電極13Bとの境界において処理ガスの圧力を下げることができ、異常放電の発生をより確実に防止できる。
【0066】
以上に説明したように、本実施形態のシャワーヘッド13及びプラズマ処理装置1によれば、シャワーヘッド13の内部で発生する異常放電を防止することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
10 プラズマ処理チャンバ
10s プラズマ処理空間
11 基板支持部
13 シャワーヘッド
13A 裏当て部材
13Ah 第2ガス流路
13B 上部電極
13Bh 第1ガス流路
21 ガスソース
20 ガス供給部
30 電源
31 RF電源
31a 第1のRF生成部
31b 第2のRF生成部
32a 第1のDC生成部
32b 第2のDC生成部
40 排気システム
111 本体部
112 リングアセンブリ