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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076153
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230525BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230525BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189388
(22)【出願日】2021-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 央人
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB26
2H149BA02
2H149BA12
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA12
2H149DB02
2H149EA02
2H149EA06
2H149EA17
2H149FA02X
2H149FA03Z
2H149FA05X
2H149FA05Z
2H149FA08Z
2H149FA12Z
2H149FA24W
2H149FA24Y
2H149FA28W
2H149FA36Y
2H149FA37Y
2H149FA51Z
2H149FA52W
2H149FA58W
2H149FA58Y
2H149FA59Y
2H149FA68
2H149FB01
2H149FD33
2H149FD35
2H149FD47
2H149FD48
4F100AK01B
4F100AK02B
4F100AK25A
4F100AK25D
4F100AK42E
4F100AT00A
4F100AT00E
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100CB05D
4F100EJ08B
4F100EJ54
4F100GB41
4F100JK06
4F100JK07B
4F100JL14A
4F100JL14E
4F100JN01B
4F100JN10C
(57)【要約】
【課題】重合性液晶化合物を含む組成物の硬化層を含む直線偏光層及び位相差層を含む場合であっても、剥離フィルムを良好に剥離することができる光学積層体を提供する。
【解決手段】光学積層体は、表面保護フィルム、透明樹脂フィルム、円偏光板、第1粘着剤層、及び剥離フィルムをこの順に有する。表面保護フィルムは、透明樹脂フィルムに対して剥離可能である。円偏光板は、透明樹脂フィルム側から順に、重合性液晶化合物を含む第1組成物の第1硬化層を含む直線偏光層、及び、重合性液晶化合物を含む第2組成物の第2硬化層を含む第1位相差層を有する。剥離フィルムは、第1粘着剤層に対して剥離可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護フィルム、透明樹脂フィルム、円偏光板、第1粘着剤層、及び剥離フィルムをこの順に有し、
前記表面保護フィルムは、前記透明樹脂フィルムに対して剥離可能であり、
前記円偏光板は、前記透明樹脂フィルム側から順に、重合性液晶化合物を含む第1組成物の第1硬化層を含む直線偏光層、及び、重合性液晶化合物を含む第2組成物の第2硬化層を含む第1位相差層を有し、
前記剥離フィルムは、前記第1粘着剤層に対して剥離可能である、光学積層体。
【請求項2】
前記表面保護フィルムの前記透明樹脂フィルム側の表面から、前記第1粘着剤層の前記円偏光板側の表面までの距離Dは、20μm以上60μm以下であり、
前記透明樹脂フィルムの温度23℃における引張弾性率は、1500MPa以上8000MPa以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記表面保護フィルムは、前記透明樹脂フィルム側から順に、第2粘着剤層及び基材フィルムを有し、
前記基材フィルムの温度23℃における引張弾性率は、2500MPa以上6000MPa以下であり、
前記基材フィルムの厚みは、30μm以上120μm以下である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項4】
さらに、前記透明樹脂フィルムと前記円偏光板との間に第1貼合層を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項5】
さらに、前記透明樹脂フィルムと前記円偏光板との間に拡散防止層を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記拡散防止層の厚みは、5μm以下である、請求項5に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記円偏光板は、前記直線偏光層と前記第1位相差層とを貼合する第2貼合層を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記第1組成物に含まれる前記重合性液晶化合物は、スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物であり、
前記第1組成物は、さらに吸収異方性を有する色素を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記第2硬化層は、前記重合性液晶化合物が前記第1位相差層の面に対して水平方向に配向した状態で硬化している、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記円偏光板は、さらに、前記第1位相差層の前記直線偏光層側とは反対側に、重合性液晶化合物を含む第3組成物の第3硬化層を含む第2位相差層を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記第3硬化層は、前記重合性液晶化合物が前記第2位相差層の面に対して垂直方向に配向した状態で硬化している、請求項10に記載の光学積層体。
【請求項12】
前記表面保護フィルムと前記透明樹脂フィルムとの間の密着力F1と、前記第1粘着剤層と前記剥離フィルムとの間の密着力F2とは、下記式(1)の関係を満たす、請求項1~11のいずれか1項に記載の光学積層体。
|F1-F2|≧0.02[N/25mm] (1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置及び有機EL表示装置等の表示装置には、直線偏光層、位相差層、及びこれらを積層した積層体等の光学フィルムが用いられている。直線偏光層として、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素等の二色性色素が吸着配向されたPVA偏光膜のほか、重合性液晶化合物を含む組成物を基材に塗布することによって製造される液晶硬化層を用いることが知られている(例えば、特許文献1)。位相差層についても、樹脂フィルムを延伸した延伸フィルムである位相差フィルムのほか、重合性液晶化合物を含む組成物を基材に塗布することによって製造される液晶硬化層を用いることが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-83843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学フィルムは、表示装置に適用するための粘着剤層及びこの粘着剤層を被覆保護するための剥離フィルムを有することがある。このような光学フィルムでは、剥離フィルムを剥離して粘着剤層を露出させる必要がある。例えば、自動貼合装置等を用いて表示装置に適用する場合には、剥離フィルムの表面に剥離用の粘着テープ(以下、「剥離用テープ」ということがある。)を貼り付けた光学フィルムを吸引孔を有する吸引ステージ上に固定した状態で、剥離用テープを引き起こすことにより、剥離フィルムを剥離する。
【0005】
しかしながら、光学フィルムに含まれる直線偏光層及び位相差層が液晶硬化層である場合、上記のように剥離用テープを用いて剥離フィルムを剥離しようとすると、剥離フィルムだけではなく光学フィルム全体が持ち上がり、剥離フィルムを剥離できない場合があることが見出された。剥離フィルムを剥離するために、保持台の真空吸引力を大きくし、吸引ステージへの光学フィルムの保持力を高める方法も考えられるが、この場合、光学フィルムに吸引孔の痕が残ってしまうことがある。吸引孔の痕は、光学フィルムの検品作業の妨げとなったり、光学フィルムの光学性能等に悪影響を及ぼしたりする虞がある。
【0006】
本発明は、重合性液晶化合物を含む組成物の硬化層を含む直線偏光層及び位相差層を含む場合であっても、剥離フィルムを良好に剥離することができる光学積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の光学積層体を提供する。
〔1〕 表面保護フィルム、透明樹脂フィルム、円偏光板、第1粘着剤層、及び剥離フィルムをこの順に有し、
前記表面保護フィルムは、前記透明樹脂フィルムに対して剥離可能であり、
前記円偏光板は、前記透明樹脂フィルム側から順に、重合性液晶化合物を含む第1組成物の第1硬化層を含む直線偏光層、及び、重合性液晶化合物を含む第2組成物の第2硬化層を含む第1位相差層を有し、
前記剥離フィルムは、前記第1粘着剤層に対して剥離可能である、光学積層体。
〔2〕 前記表面保護フィルムの前記透明樹脂フィルム側の表面から、前記第1粘着剤層の前記円偏光板側の表面までの距離Dは、20μm以上60μm以下であり、
前記透明樹脂フィルムの温度23℃における引張弾性率は、1500MPa以上8000MPa以下である、〔1〕に記載の光学積層体。
〔3〕 前記表面保護フィルムは、前記透明樹脂フィルム側から順に、第2粘着剤層及び基材フィルムを有し、
前記基材フィルムの温度23℃における引張弾性率は、2500MPa以上6000MPa以下であり、
前記基材フィルムの厚みは、30μm以上120μm以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の光学積層体。
〔4〕 さらに、前記透明樹脂フィルムと前記円偏光板との間に第1貼合層を有する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔5〕 さらに、前記透明樹脂フィルムと前記円偏光板との間に拡散防止層を有する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔6〕 前記拡散防止層の厚みは、5μm以下である、〔5〕に記載の光学積層体。
〔7〕 前記円偏光板は、前記直線偏光層と前記第1位相差層とを貼合する第2貼合層を有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔8〕 前記第1組成物に含まれる前記重合性液晶化合物は、スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物であり、
前記第1組成物は、さらに吸収異方性を有する色素を含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔9〕 前記第2硬化層は、前記重合性液晶化合物が前記第1位相差層の面に対して水平方向に配向した状態で硬化している、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔10〕 前記円偏光板は、さらに、前記第1位相差層の前記直線偏光層側とは反対側に、重合性液晶化合物を含む第3組成物の第3硬化層を含む第2位相差層を有する、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔11〕 前記第3硬化層は、前記重合性液晶化合物が前記第2位相差層の面に対して垂直方向に配向した状態で硬化している、〔10〕に記載の光学積層体。
〔12〕 前記表面保護フィルムと前記透明樹脂フィルムとの間の密着力F1と、前記第1粘着剤層と前記剥離フィルムとの間の密着力F2とは、下記式(1)の関係を満たす、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の光学積層体。
|F1-F2|≧0.02[N/25mm] (1)
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学積層体によれば、剥離フィルムを良好に剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の他の一実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る光学積層体から剥離フィルムを剥離する方法の一例を説明するための上面図である。
図4】本発明の実施形態に係る光学積層体から剥離フィルムを剥離する方法の一例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して光学積層体の好ましい実施形態について説明する。
(光学積層体)
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。図3及び図4はそれぞれ、本発明の実施形態に係る光学積層体から剥離フィルムを剥離する方法の一例を説明するための上面図及び断面図である。
【0011】
図1及び図2に示す光学積層体1,2は、表面保護フィルム10、透明樹脂フィルム15、円偏光板30,40、第1粘着剤層21、及び剥離フィルム23をこの順に有する。図2に示すように、光学積層体2は、透明樹脂フィルム15と円偏光板40との間に第1拡散防止層35(拡散防止層)を有していてもよい。
【0012】
表面保護フィルム10は、透明樹脂フィルム15に対して剥離可能であり、透明樹脂フィルム15に接している。表面保護フィルム10は、自己粘着性のフィルムであってもよいが、図1及び図2に示すように、透明樹脂フィルム15側から順に、第2粘着剤層12及び第1基材フィルム11(基材フィルム)を有していてもよい。この場合、第2粘着剤層12が透明樹脂フィルム15に接している。
【0013】
透明樹脂フィルム15と円偏光板30,40とは、直接接していてもよいが、図1及び図2に示すように第1貼合層25(接着剤層又は粘着剤層)を介して積層されていてもよい。例えば図1に示すように、光学積層体1が透明樹脂フィルム15と円偏光板30との間に第1拡散防止層35を有しない場合、透明樹脂フィルム15及び円偏光板30は、直接接していてもよく、又は、それぞれが第1貼合層25に直接接していてもよい。例えば図2に示すように、光学積層体2が透明樹脂フィルム15と円偏光板40との間に第1拡散防止層35を有する場合、透明樹脂フィルム15と第1拡散防止層35は、直接接していてもよく、又は、それぞれが第1貼合層25に直接接していてもよい。第1拡散防止層35と円偏光板40とは、直接接していることが好ましいが、貼合層(接着剤層又は粘着剤層)を介して積層されていてもよい。
【0014】
円偏光板30,40は、透明樹脂フィルム15側から順に、直線偏光層31及び第1位相差層33をこの順に有する。円偏光板30,40の透明樹脂フィルム15側の最表面は直線偏光層31であってもよい。直線偏光層31と第1位相差層33とは直接接していてもよい。あるいは、図1及び図2に示すように、円偏光板30,40が、さらに直線偏光層31と第1位相差層33とを貼合する第2貼合層32(接着剤層又は粘着剤層)を有し、直線偏光層31及び第1位相差層33はそれぞれ第2貼合層32に直接接していてもよい。
【0015】
円偏光板40は、図2に示すように、さらに、直線偏光層31と第1位相差層33との間に第2拡散防止層36を有していてもよい。この場合、第2拡散防止層36と直線偏光層31とは、直接接していることが好ましいが、貼合層(接着剤層又は粘着剤層)を介して積層されていてもよい。第2拡散防止層36と第1位相差層33とは、直接接していてもよく、又は、貼合層(接着剤層又は粘着剤層)を介して積層されていてもよい。
【0016】
円偏光板40は、さらに、図2に示すように第1位相差層33の直線偏光層31側とは反対側に、第2位相差層38を有していてもよい。円偏光板40が第2位相差層38を有する場合、第1位相差層33と第2位相差層38とは直接接していてもよいが、図2に示すように、第1位相差層33と第2位相差層38とを貼合する第3貼合層37(接着剤層又は粘着剤層)を有していてもよい。この場合、第1位相差層33及び第2位相差層38はそれぞれ第3貼合層37に直接接していることが好ましい。
【0017】
円偏光板40は、第1位相差層33及び第2位相差層38に加えて、さらに1以上の第3位相差層を有していてもよい。第3位相差層の積層位置は特に限定されず、例えば、第2位相差層38の第1位相差層33側とは反対側に積層されていてもよく、第1位相差層33と第2位相差層38との間に積層されていてもよい。第3位相差層は、他の層に直接接していてもよく、貼合層(接着剤層又は粘着剤層)を介して積層されていてもよい。
【0018】
直線偏光層31は、重合性液晶化合物を含む第1組成物の第1硬化層を含む。第1位相差層33は、重合性液晶化合物を含む第2組成物の第2硬化層を含む。第2位相差層38は、重合性液晶化合物を含む第2組成物の第2硬化層を含むことが好ましい。第3位相差層は、重合性液晶化合物を含む第3組成物の第3硬化層を含むことが好ましい。
【0019】
円偏光板30,40と第1粘着剤層21とは直接接していることが好ましい。剥離フィルム23は、第1粘着剤層21に対して剥離可能であり、第1粘着剤層21に接している。
【0020】
光学積層体1,2は、剥離フィルム23を剥離して露出した第1粘着剤層21を、有機EL表示装置等の表示装置の表示素子等に貼合することにより、表示装置に適用される。光学積層体1,2から剥離フィルム23を剥離する場合には、まず、図3及び図4に示すように、剥離フィルム23の表面に剥離用の粘着テープ(以下、「剥離用テープ」ということがある。)45を取り付けた光学積層体1,2を、表面保護フィルム10側が吸引孔を有する吸引ステージ46側となるように、真空吸引等により固定する。その後、図3及び図4の(a)~(c)に示す矢印の方向に剥離用テープ45を引き起こすことによって、剥離フィルム23と第1粘着剤層21との間で光学積層体1,2が分離するように、剥離フィルム23を剥離する。
【0021】
光学積層体1,2は、円偏光板30,40に含まれる直線偏光層31及び第1位相差層33が重合性液晶化合物を含む組成物の硬化層によって構成され、その厚みが小さい。円偏光板30,40は、例えばポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、ヨウ素等の二色性色素が吸着配向されたPVA偏光膜、及び、樹脂フィルムを延伸した延伸フィルムである位相差フィルムを含む円偏光板に比較すると、剛性が小さくなっている。
【0022】
光学積層体1,2は、表面保護フィルム10と円偏光板30,40との間に透明樹脂フィルム15を有している。これにより、上記のように円偏光板30,40の剛性が小さい場合であっても、透明樹脂フィルム15により光学積層体1,2の剛性を向上することができる。そのため、図4の(a)~(c)に示すように行われる剥離用テープ45の引き起こしにより、光学積層体1,2から剥離フィルム23を好適に剥離することができる。
【0023】
これに対し、直線偏光層及び第1位相差層が上記した硬化層であって、透明樹脂フィルムを備えていない光学積層体は、十分な剛性を備えていない。そのため、剥離用テープを引き起こすと、剥離フィルムのみではなく光学積層体が吸引ステージから持ち上がり、剥離フィルムを剥離することが困難となる。吸引ステージからの光学積層体の持ち上がりを抑制するために、吸引ステージにおける光学積層体の吸引保持力を大きくすると、表面保護フィルム及び/又は円偏光板に、吸引孔の痕が残る虞がある。光学積層体に生じた吸引孔の痕は、検品作業の妨げとなる、光学積層体を表示装置に適用した場合の表示性能を低下させる等の原因となる可能性がある。一方、本実施形態の光学積層体1,2によれば、剥離フィルム23を良好に剥離することができなかったり、光学積層体1,2に吸引孔の痕が残ったりすることを抑制することができる。
【0024】
光学積層体1,2において、表面保護フィルム10の透明樹脂フィルム15側の表面から、第1粘着剤層21の円偏光板30,40側の表面までの距離Dは、20μm以上であることが好ましく、20μm超であってもよく、25μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、また、60μm以下であることが好ましく、55μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、40μm以下であってもよい。距離Dが上記した範囲内である場合、後述するように透明樹脂フィルム15の温度23℃における引張弾性率を1500MPa以上8000MPa以下の範囲内とすることにより、光学積層体1,2から剥離フィルム23をより一層良好に剥離することができる。
【0025】
光学積層体1,2において、表面保護フィルム10と透明樹脂フィルム15との間の密着力F1と、第1粘着剤層21と剥離フィルム23との間の密着力F2とは、式(1)の関係を満たすことが好ましい。
|F1-F2|≧0.02[N/25mm] (1)
【0026】
密着力F1は、光学積層体1,2から表面保護フィルム10を剥離するときの剥離力であり、光学積層体1,2において透明樹脂フィルム15から表面保護フィルム10を分離するときに要する力に相当する。密着力F2とは、光学積層体1,2から剥離フィルム23を剥離するときの剥離力であって、光学積層体1,2において第1粘着剤層21から剥離フィルム23を分離するときに要する力に相当する。
【0027】
|F1-F2|は、0.03N/25mm以上であってもよく、0.04N/25mm以上であってもよく、また、0.20N/25mm以下であってもよく、0.10N/25mm以下であってもよく、0.08N/25mm以下であってもよい。
【0028】
密着力F1及び密着力F2が上記式(1)の関係を満たすことにより、光学積層体1,2から表面保護フィルム10及び剥離フィルム23を剥離する際の剥離力に適度な強弱関係を生じさせることができる。これにより、表面保護フィルム10及び剥離フィルム23を所望する順に剥離することができる。例えば、光学積層体1,2から剥離フィルム23を先に剥離する場合には、密着力F2を密着力F1よりも小さくすればよく、光学積層体1,2から表面保護フィルム10を先に剥離する場合には、密着力F1を密着力F2よりも小さくすればよい。
【0029】
密着力F1は、例えば、0.04N/25mm以上であってもよく、0.06N/25mm以上であってもよく、0.08N/25mm以上であってもよく、また、0.30N/25mm以下であってもよく、0.25N/25mm以下であってもよく、0.20N/25mm以下であってもよく、0.15N/25mm以下であってもよい。密着力F1が上記の範囲内であることにより、光学積層体1,2から表面保護フィルム10を剥離しやすい。
【0030】
密着力F2は、例えば、0.01N/25mm以上であってもよく、0.02N/25mm以上であってもよく、0.03N/25mm以上であってもよく、0.05N/25mm以上であってもよく、また、0.30N/25mm以下であってもよく、0.25N/25mm以下であってもよく、0.20N/25mm以下であってもよく、0.15N/25mm以下であってもよい。密着力F2が上記の範囲内であることにより、光学積層体1,2から剥離フィルム23を剥離しやすい。
【0031】
密着力F1及び密着力F2は、表面保護フィルム10及び剥離フィルム23の種類及び厚みを調整する、表面保護フィルム10の透明樹脂フィルム15と接する側の表面、及び、剥離フィルム23の第1粘着剤層21と接する側の表面に対して改質処理を施す等により調整することができる。
【0032】
密着力F1及び密着力F2は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができ、JIS K 6854-1:1999に規定される90°剥離試験法に準じて測定することができる。
【0033】
以下、光学積層体を構成する各部材、光学積層体を製造するために用いる部材の詳細について説明する。
【0034】
(表面保護フィルム)
表面保護フィルム10は、光学積層体1,2の最表層に存在し、透明樹脂フィルム15に対して剥離可能に設けられる。表面保護フィルム10は、透明樹脂フィルムの表面を被覆保護するために用いられる。
【0035】
表面保護フィルム10の厚みは、例えば30μm以上であってもよく、40μm以上であってもよく、50μm以上であってもよく、また、150μm以下であってもよく、120μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、90μm以下であってもよい。
【0036】
上記したように、表面保護フィルム10は、第1基材フィルム11と第2粘着剤層12との多層構造を有していてもよく、第1基材フィルム11からなる単層構造の自己粘着性のフィルムであってもよい。表面保護フィルム10は、さらに、帯電防止特性及び/又は防汚特性等を有していてもよい。
【0037】
第1基材フィルム11の温度23℃における引張弾性率は、例えば2500MPa以上であってもよく、3000MPa以上であってもよく、3500MPa以上であってもよく、また、6000MPa以下であってもよく、5500MPa以下であってもよい。
【0038】
第1基材フィルム11の厚みは、例えば30μm以上であってもよく、35μm以上であってもよく、40μm以上であってもよく、50μm以上であってもよく、また、120μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、80μm以下であってもよい。
【0039】
第1基材フィルム11の引張弾性率が上記の範囲内であり、かつ、厚みが上記の範囲内であることにより、光学積層体1,2から剥離フィルム23を良好に剥離しやすく、剥離フィルム23を剥離した光学積層体1,2を表示装置に良好に貼合しやすくなる。第1基材フィルム11の引張弾性率は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0040】
第1基材フィルム11は、例えば、光学フィルムの分野において公知の樹脂を用いて製膜されたフィルム等を用いることができる。第1基材フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマー等の環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンオキシド等が挙げられる。中でも、平滑性や塗布基材としての品質の観点から、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステルから選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの樹脂は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記した樹脂を、溶媒キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜してフィルムとすることができる。「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルから選択される少なくとも一方を意味する。
【0041】
表面保護フィルム10が自己粘着性を有する場合、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂等を用いて形成することができる。
【0042】
表面保護フィルム10が帯電防止特性及び/又は防汚特性等を有する場合、第1基材フィルム11が帯電防止特性及び/又は防汚特性を有していてもよく、第1基材フィルム11の表面に帯電防止特性及び/又は防汚特性等を有する表面機能層を積層してもよい。表面機能層は、第1基材フィルム11に直接接していることが好ましく、表面保護フィルム10が第2粘着剤層12を有する場合、表面機能層は、第1基材フィルム11の第2粘着剤層12側とは反対側に設けられることが好ましい。
【0043】
第1基材フィルム11は、所望の離型性及び/又は密着性を付与するために、第1基材フィルム11に隣接する層の種類等に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の表面改質処理が施されていてもよい。
【0044】
(透明樹脂フィルム)
透明樹脂フィルム15は、光学積層体1,2に適度な剛性を付与するために設けられる。透明樹脂フィルムの温度23℃における引張弾性率は、1500MPa以上であることが好ましく、1800MPa以上であってもよく、2000MPa以上であってもよく、3000MPa以上であってもよく、また、8000MPa以下であってもよく、7000MPa以下であってもよく、6000MPa以下であってもよく、5000MPa以下であってもよい。透明樹脂フィルム15の引張弾性率は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0045】
透明樹脂フィルム15の引張弾性率が上記の範囲内であることにより、光学積層体1,2の上記した距離Dが20μm以上60μm以下という範囲内にある場合であっても、光学積層体1,2に適度な剛性を付与することができる。これにより、上記したように剥離用テープ45(図3図4)を用いて、光学積層体1,2に吸引孔の痕が残ることを抑制しつつ、好適に剥離フィルム23を剥離することができる。
【0046】
透明樹脂フィルム15の厚みは、例えば5m以上であってもよく、10μm以上であってもよく、12μm以上であってもよく、15μm以上であってもよく、また、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよい。
【0047】
透明樹脂フィルム15は、例えば、光学フィルムの分野において公知の樹脂を用いて製膜されたフィルム等を用いることができる。透明樹脂フィルム15を構成する樹脂としては、上記した第1基材フィルム11を構成する樹脂を挙げることができる。中でも、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステルから選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記した樹脂を、溶媒キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜してフィルムとすることができる。
【0048】
透明樹脂フィルム15は、所望の密着性を付与するために、透明樹脂フィルム15に隣接する層の種類等に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の表面改質処理が施されていてもよい。
【0049】
(円偏光板)
円偏光板30,40は、直線偏光層31側から入射した光を直線偏光に変換し、この直線偏光を円偏光に変換することができる。この変換された円偏光が反射して再び第1位相差層33側から円偏光板30,40に入射した場合に、円偏光板30,40は、円偏光を直線偏光に変換し、この直線偏光を直線偏光層が吸収することができる。
【0050】
直線偏光層31と第1位相差層33とは、直接、若しくは、第2拡散防止層36及び/又は第2貼合層32を介して積層されている。直線偏光層31と第1位相差層33との間の密着力は、通常2N/25mm以上である。直線偏光層31と第1位相差層33とは、両者の間で剥離が生じず、いわゆる材料破壊が生じるような大きさの密着力で積層されていてもよい。直線偏光層31と第1位相差層33との間の密着力は、後述する実施例に記載の密着力F1及び密着力F2の測定方法で説明するように、JIS K 6854-1:1999に規定される90°剥離試験法に準じて測定することができる。
【0051】
(直線偏光層)
直線偏光層31は、無偏光の光を入射させたとき、吸収軸に直交する振動面をもつ直線偏光を透過させる性質を有する。直線偏光層31は、重合性液晶化合物を含む第1組成物の第1硬化層を含み、重合性液晶化合物を配向させるための第1配向層を含んでいてもよい。
【0052】
第1組成物に含まれる重合性液晶化合物は、少なくとも1つの重合性基を含み、液晶性を示す化合物である。重合性液晶化合物は、吸収異方性を示す化合物であってもよく、重合性液晶化合物が吸収異方性を示す場合、第1組成物は吸収異方性を示す色素を含んでいなくてもよい。
【0053】
重合性基とは、重合開始剤から発生する活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基を意味し、光重合性基であることが好ましい。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性基が好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルオキシ基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基がさらに好ましい。
【0054】
第1組成物に含まれる重合性液晶化合物は、スメクチック液晶性を示す化合物であることが好ましい。スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物を用いることにより、配向秩序度の高い直線偏光層を形成することができる。より高い配向秩序度を実現し得る観点から、重合性液晶化合物の示す液晶状態は、高次スメクチック相(高次スメクチック液晶状態)であることがより好ましい。ここで、高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相及びスメクチックL相を意味し、これらの中でも、スメクチックB相、スメクチックF相及びスメクチックI相がより好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。また、重合性液晶化合物はモノマーであってもよいが、重合性基が重合したオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0055】
第1組成物は、重合性液晶化合物に加えて、吸収異方性を示す色素を含んでいてもよい。吸収異方性を有する色素は、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素を意味する。吸収異方性を示す色素は、上記性質を有するものであれば特に制限されず、染料であっても、顔料であってもよい。また、2種以上の染料又は顔料をそれぞれ組合せて用いてもよいし、染料と顔料とを組合せて用いてもよい。
【0056】
吸収異方性を有する色素としては、波長300nm~700nmの範囲に極大吸収波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような吸収異方性を有する色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素及びアントラキノン色素等が挙げられる。中でも、アゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、及びスチルベンアゾ色素等が挙げられ、ビスアゾ色素及びトリスアゾ色素が好ましい。吸収異方性を有する色素としては、例えば特開2013-101328号公報に例示されているものが挙げられる。
【0057】
第1組成物は、上記した重合性液晶化合物及び吸収異方性を有する色素に加えて、溶剤、光重合開始剤等の重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、酸化防止剤、離型剤、安定剤、着色剤、難燃剤、及び滑剤等を含むことができる。これらについては、公知のものを用いることができ、例えば、特開2017-102479号公報、特開2017-83843号公報に例示されているものを用いることができる。
【0058】
直線偏光層31は、第1配向層を含んでいてもよい。第1配向層は、第1硬化層の第1位相差層33側に設けられていてもよく、第1硬化層の透明樹脂フィルム15側に設けられていてもよい。
【0059】
第1配向層は、重合性液晶化合物を所望の方向に配向させる配向規制力を有する。第1配向層は、第1組成物の塗工等により溶解しない溶媒耐性を有し、溶媒の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理に対する耐熱性を有するものが好ましい。第1配向層としては、配向性ポリマーで形成された配向性ポリマー層、光配向ポリマーで形成された光配向性ポリマー層、層表面に凹凸パターンや複数のグルブ(溝)を有するグルブ配向層を挙げることができる。第1配向層は、配向角の精度及び品質等の観点から光配向ポリマー層であることが好ましい。第1配向層は、例えば特開2013-33249号公報に例示されているものが挙げられる。
【0060】
直線偏光層31は、特開2013-33249号公報等に記載の偏光層の製造方法により製造することができる。第1硬化層は、例えば、第1配向層上に第1組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を固化(硬化)させることによって形成することができる。あるいは、基材層上に第1組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を基材層とともに延伸することによって第1硬化層を形成してもよい。
【0061】
(第1位相差層、第2位相差層、第3位相差層)
第1位相差層33は、重合性液晶化合物を含む第2組成物の第2硬化層を含み、重合性液晶化合物を配向させるための第2配向層を含んでいてもよい。第2位相差層38は、重合性液晶化合物を含む第3組成物の第3硬化層を含み、重合性液晶化合物を配向させるための第3配向層を含んでいてもよい。第3位相差層は、重合性液晶化合物を含む第4組成物の第4硬化層を含み、重合性液晶化合物を配向させるための第4配向層を含んでいてもよい。第2配向層~4配向層はそれぞれ、第2硬化層~第4硬化層の直線偏光層31側に設けられていてもよく、第2硬化層~第4硬化層の第1粘着剤層21側に設けられていてもよい。
【0062】
図1に示すように、円偏光板30が直線偏光層31と第1位相差層33とを有する場合、第1位相差層33に含まれる第2硬化層は、重合性液晶化合物が第1位相差層33の面に対して水平方向に配向した状態で硬化していることが好ましい。
【0063】
第1位相差層33は、下記式(2)に示す関係を満たすλ/4位相差層であることが好ましい。
120nm≦Re(550)≦170nm (2)
[式(2)中、Re(550)は、波長550nmにおける第1位相差層の面内位相差値を表す。]
【0064】
式(2)において、面内位相差値Re(550)は、125nm以上であってもよく、130nm以上であってもよく、また、165nm以下であってもよく、160nm以下であってもよい。
【0065】
第1位相差層33は、上記式(2)を満たし、かつ下記式(3)及び(4)を満たす逆波長分散性のλ/4位相差層であることがより好ましい。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (3)
Re(650)/Re(550)≧1.00 (4)
[式(3)及び式(4)中、
Re(450)は、波長450nmにおける第1位相差層の面内位相差値を表し、
Re(550)は、波長550nmにおける第1位相差層の面内位相差値を表し、
Re(650)は、波長650nmにおける第1位相差層の面内位相差値を表す。]
【0066】
式(3)において、Re(450)/Re(550)は、0.70以上であってもよく、0.78以上であってもよく、また、0.92以下であってもよく、0.90以下であってもよく、0.87以下であってもよく、0.86以下であってもよく、0.85以下であってもよい。式(4)において、Re(650)/Re(550)は、1.01以上であってもよく、1.02以上であってもよい。
【0067】
図2に示すように、円偏光板40が直線偏光層31、第1位相差層33、及び第2位相差層38を有する場合、第1位相差層33及び第2位相差層38の組み合わせとしては、[i]λ/4位相差層とポジティブC層との組み合わせ、及び、[ii]λ/2位相差層とλ/4位相差層との組み合わせを挙げることができる。
【0068】
第1位相差層33がλ/4位相差層である場合、上記したように、重合性液晶化合物が第1位相差層33の面に対して水平方向に配向した状態で硬化していることが好ましい。第2位相差層38がλ/4位相差層である場合、第2位相差層38に含まれる第3硬化層は、重合性液晶化合物が第2位相差層38の面に対して水平方向に配向した状態で硬化していることが好ましい。さらに、第1位相差層33又は第2位相差層38がλ/4位相差層である場合、上記式(2)の関係を満たすことが好ましく、上記式(2)に加えて上記(3)及び(4)の関係を満たしていてもよい。
【0069】
上記[i]の場合であって、第1位相差層33がポジティブC層である場合、第1位相差層33に含まれる第2硬化層は、重合性液晶化合物が第1位相差層33の面に対して垂直方向に配向した状態で硬化していることが好ましい。上記[i]の場合であって、第2位相差層38がポジティブC層である場合、第2位相差層38に含まれる第3硬化層は、重合性液晶化合物が第2位相差層38の面に対して垂直方向に配向した状態で硬化していることが好ましい。
【0070】
ポジティブC層は、下記式(5)の関係を満たすことが好ましい。
-100nm≦Rth(550)≦-40nm (5)
[式(5)中、Rth(550)は、第1位相差層又は第2位相差層の波長550nmにおける厚み方向の位相差値を表す。]
【0071】
式(5)において、厚み方向の位相差値Rth(550)は、-90nm以上であってもよく、-80nm以上であってもよく、また、-50nm以下であってもよい。
【0072】
上記[ii]の場合であって、第1位相差層33がλ/2位相差層である場合、第1位相差層33に含まれる第2硬化層は、重合性液晶化合物が第1位相差層33の面に対して水平方向に配向した状態で硬化していることが好ましい。上記[ii]の場合であって、第2位相差層38がλ/2位相差層である場合、第2位相差層38に含まれる第3硬化層は、重合性液晶化合物が第2位相差層38の面に対して水平方向に配向した状態で硬化していることが好ましい。
【0073】
λ/2位相差層は、下記式(6)の関係を満たすことが好ましい。
200nm≦Re(550)≦300nm (6)
[式(6)中、Re(550)は、波長550nmにおける第1位相差層又は第2位相差層の面内位相差値を表す。]
【0074】
式(6)において、面内位相差値Re(550)は、220nm以上であってもよく、280nm以下であってもよい。
【0075】
面内位相差値Re(550)及びRe(450)、並びに、厚み方向の位相差値Rth(550)は、例えば位相差測定装置による測定によって決定することができる。
【0076】
第2硬化層、第3硬化層、及び第4硬化層を形成するための重合性液晶化合物としては、公知の重合性液晶化合物を用いることができる。重合性液晶化合物は、少なくとも1つの重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。
【0077】
重合性液晶化合物の種類は特に限定されず、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。重合性液晶化合物を重合することによって形成される硬化層は、重合性液晶化合物を適した方向に配向させた状態で硬化することにより位相差を発現する。棒状の重合性液晶化合物が、表示装置の平面方向に対して水平配向又は垂直配向した場合は、該重合性液晶化合物の光軸は、該重合性液晶化合物の長軸方向と一致する。円盤状の重合性液晶化合物が配向した場合は、該重合性液晶化合物の光軸は、該重合性液晶化合物の円盤面に対して直交する方向に存在する。棒状の重合性液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報(請求項1等)に記載のものを好適に用いることができる。円盤状の重合性液晶化合物としては、特開2007-108732号公報(段落[0020]~[0067]等)、特開2010-244038号公報(段落[0013]~[0108]等)に記載のものを好適に用いることができる。
【0078】
重合性液晶化合物が有する重合性基とは、上記したように重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。光重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基、スチリル基、アリル基等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶化合物が有する液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でもよく、サーモトロピック液晶を秩序度で分類すると、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。重合性液晶化合物の硬化層を形成するために重合性液晶化合物を2種類以上を併用する場合、少なくとも1種類が分子内に2以上の重合性基を有することが好ましい。「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルから選択される少なくとも一方を意味する。
【0079】
重合性液晶化合物が示す液晶性はサーモトロピック性液晶であってもよいし、リオトロピック性液晶であってもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。また、サーモトロピック性液晶における相秩序構造としてはネマチック液晶でもスメクチック液晶でもディスコチック液晶でもよい。重合性液晶化合物は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0080】
いわゆるT字型又はH型の分子構造を有する重合性液晶化合物は、重合して硬化させた際に逆波長分散性を発現しやすく、T字型の分子構造を有する重合性液晶化合物はより強い逆波長分散性を発現する傾向にある。
【0081】
第1位相差層33、第2位相差層38、及び第3位相差層はそれぞれ、第2配向層、第3配向層、及び第4配向層を含んでいてもよい。第2配向層~第4配向層は、重合性液晶化合物を所望の方向に配向させる配向規制力を有する。第2配向層~第4配向層は、それぞれ独立して、重合性液晶化合物の分子軸を表示装置の平面方向に対して垂直配向した垂直配向層であってもよく、重合性液晶化合物の分子軸を表示装置の平面方向に対して水平配向した水平配向層であってもよく、重合性液晶化合物の分子軸を表示装置の平面方向に対して傾斜配向させる傾斜配向層であってもよく、配向角の精度及び品質等の観点から光配向ポリマー層であることが好ましい。
【0082】
第2配向層~第4配向層は、重合性液晶化合物を含む第2組成物~第4組成物の塗工等により溶解しない溶媒耐性を有し、溶媒の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理に対する耐熱性を有するものが好ましい。第2配向層~第4配向層としては、それぞれ独立して、配向性ポリマーで形成された配向性ポリマー層、光配向ポリマーで形成された光配向性ポリマー層、層表面に凹凸パターンや複数のグルブ(溝)を有するグルブ配向層を挙げることができる。
【0083】
第2組成物~第4組成物は、それぞれ、重合性液晶化合物、溶剤、及び、必要に応じて各種添加剤を含む。第2硬化層~第4硬化層はそれぞれ、第2配向層~第4配向層上に、第2組成物~第4組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を固化(硬化)させることによって形成することができる。あるいは、基材層上に第2組成物~第4組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を基材層とともに延伸することによって第2硬化層~第4硬化層を形成してもよい。第2組成物~第4組成物に含まれる添加剤としては、重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤等が挙げられる。溶剤、重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤等は、公知のものを適宜用いることができる。
【0084】
基材層としては、樹脂を製膜したフィルムを用いることができ、例えば上記した第1基材フィルムを構成する樹脂を用いたフィルムを挙げることができる。基材層の厚みは特に限定されないが、一般には強度や取扱い性等の作業性の点から1~300μm以下であることが好ましく、20~200μmであることがより好ましく、30~120μmであることがさらに好ましい。基材層は、第1位相差層~第3位相差層とともに表示装置に組み込まれていてもよく、基材層を剥離して、第2硬化層~第4硬化層のみ、又は、第2硬化層及び第2配向層、第3硬化層及び第3配向層、若しくは第4硬化層及び第4配向層が表示装置に組み込まれていてもよい。基材層が表示装置に組み込まれる場合、基材層の厚みは30μm未満であってもよく、例えば25μm以下であってもよい。
【0085】
第1位相差層~第3位相差層の厚みは、それぞれ独立して、0.1μm以上であってもよく0.2μm以上であってもよく、また、3μm以下であってもよく、2μm以下であってもよい。
【0086】
(第1粘着剤層、第2粘着剤層)
第1粘着剤層21及び第2粘着剤層12は、粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層である。粘着剤組成物又は粘着剤組成物の反応生成物は、それ自体を表示装置の表示素子等の被着体に張り付けることで接着性を発現するものであり、いわゆる感圧型接着剤と称されるものである。また、後述する活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層は、活性エネルギー線を照射することにより、架橋度や接着力を調整することができる。
【0087】
粘着剤組成物としては、公知の光学的な透明性に優れる粘着剤を特に制限なく用いることができ、例えば、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、シリコーンポリマー、ポリビニルエーテル等のベースポリマーを含有する粘着剤組成物を用いることができる。また、粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、又は、熱硬化型粘着剤組成物等であってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、再剥離性(リワーク性)、耐候性、耐熱性等に優れるアクリル樹脂をベースポリマーとした粘着剤組成物が好適である。粘着剤層は、(メタ)アクリル樹脂、架橋剤、シラン化合物を含む粘着剤組成物の反応生成物から構成されることが好ましく、その他の成分を含んでいてもよい。
【0088】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、上記した粘着剤組成物に、多官能性アクリレート等の紫外線硬化性化合物を配合し、これを塗布して形成した層に紫外線を照射して硬化させることにより、より硬い粘着剤層を形成することができる。活性エネルギー線硬化型粘着剤は、紫外線や電子線等のエネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有している。活性エネルギー線硬化型粘着剤は、エネルギー線照射前においても粘着性を有しているため、被着体に密着し、エネルギー線の照射により硬化して密着力を調整することができる性質を有する。
【0089】
粘着剤組成物及び活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、溶媒等の添加剤を含有することができる。
【0090】
第1粘着剤層21及び第2粘着剤層12の厚みは特に限定されないが、それぞれ独立して、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、15μm以上であってもよく、20μm以上であってもよく、25μm以上であってもよく、また、300μm以下であってもよく、250μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。
【0091】
(第1拡散防止層、第2拡散防止層)
第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36は、直線偏光層31中の吸収異方性を有する色素又は吸収異方性を有する重合性液晶化合物(以下、両者をまとめて「吸収異方性色素」ということがある。)が他の層へ拡散することを抑制するために用いられる。
【0092】
第1拡散防止層35は、透明樹脂フィルム15と円偏光板40との間に設けられ、第2拡散防止層は、円偏光板40を構成し、直線偏光層31と第1位相差層33との間に設けられる。第1拡散防止層35及び/又は第2拡散防止層36を有する光学積層体2は、表示装置に組み入れたときに、吸収異方性色素の拡散に起因する経時的な光学特性の低下を抑制することができる。
【0093】
第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36は、吸収異方性色素の拡散を抑制することができる層であれば特に限定されない。第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36としては、それぞれ独立して、例えば、水溶性ポリマーを含む樹脂組成物から形成される層、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む硬化性組成物から形成される層等が挙げられる。
【0094】
水溶性ポリマーは吸収異方性色素と極性が大きく異なるため、水溶性ポリマー水溶性ポリマーを含む樹脂組成物から形成される第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36は、吸収異方性色素の拡散を抑制することができる。第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36を形成し得る水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリルアミド系ポリマー;ポリビニルアルコール、及びエチレン-ビニルアルコール共重合体、(メタ)アクリル酸又はその無水物-ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール系ポリマー;カルボキシビニル系ポリマー;ポリビニルピロリドン;デンプン類;アルギン酸ナトリウム;ポリエチレンオキシド系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36が水溶性ポリマーを含む樹脂組成物から形成される層である場合、該層における水溶性ポリマーの含有量は、好ましくは75質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは85質量%以上である。
【0096】
水溶性ポリマーを含む樹脂組成物は、第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36の緻密性を高めて吸収異方性色素の拡散を抑制する機能を向上させるための架橋構造を導入するために、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、例えば、グリオキシル酸塩等のイオン結合性架橋剤、エポキシ系架橋剤等の水溶性の架橋剤;イソシアネート系架橋剤、グリオキザール及びグリオキザール誘導体等の多価アルデヒド系架橋剤、塩化ジルコニウム系及びチタンラクテート系等の金属化合物系架橋剤等の疎水性の架橋剤等が挙げられる。水溶性ポリマーを含む樹脂組成物における架橋剤の含有量は、例えば、水溶性ポリマー100質量部に対して、0.1質量部以上であってもよく、1質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよく、また、100質量部以下であってもよく、50質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよい。
【0097】
水溶性ポリマーを含む樹脂組成物は、水溶性ポリマーを溶剤に溶解させた溶液として調製される。溶剤は、水溶性ポリマーの種類によって選択すればよいが、例えば水、アルコール、水とアルコールとの混合物等が挙げられ、水であることが好ましい。
【0098】
水溶性ポリマーを含む樹脂組成物の固形分濃度は、例えば1質量%以上であってもよく、2質量%以上であってもよく、また、50質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
【0099】
水溶性ポリマーを含む樹脂組成物は、水溶性ポリマー、架橋剤、及び溶剤に加えて、防腐剤、レベリング剤等の添加剤等を含んでいてもよい。水溶性ポリマーを含む樹脂組成物における添加剤の含有量は、当該樹脂組成物の固形分に対して、例えば10質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよい。
【0100】
水溶性ポリマーを含む樹脂組成物から形成される第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36は、第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36を形成する面(例えば、円偏光板30,40の直線偏光層31)に、当該樹脂組成物を塗布して乾燥させることによって形成することができる。乾燥処理は、例えば熱風を吹き付けること等によって行うことができる。乾燥温度は、例えば40℃以上であってもよく、60℃以下であってもよく、また、100℃以下であってもよく、乾燥時間は、例えば10秒以上600秒以下とすることができる。
【0101】
活性エネルギー線硬化性樹脂は高度に重合し得るため、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む硬化性組成物から形成される第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36は、吸収異方性色素の拡散を抑制することができる。硬化性組成物としては、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を含むカチオン重合型の硬化性組成物、硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合型の硬化性組成物、カチオン重合性化合物及びラジカル重合性化合物の双方を含むハイブリッド型の硬化性組成物等が挙げられる。カチオン重合性化合物の具体例としては、分子内に1個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、分子内に1個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。また、ラジカル重合性化合物の具体例としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物、ビニル化合物等が挙げられる。硬化性組成物は、カチオン重合性化合物を1種又は2種以上含むことができ、及び/又は、ラジカル重合性化合物を1種又は2種以上含むことができる。
【0102】
カチオン重合型の硬化性組成物の主成分であるカチオン重合性化合物は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射や加熱によりカチオン重合反応が進行し、硬化する化合物又はオリゴマーをいい、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニル化合物等を例示することができる。中でも、エポキシ化合物であることが好ましい。
【0103】
エポキシ化合物とは、分子内に1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、水素化エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等を挙げることができる。中でも、耐候性、硬化速度及び接着性の観点から、エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物及び/又は脂肪族エポキシ化合物を含むことが好ましい。
【0104】
硬化性組成物がカチオン重合性化合物としてエポキシ化合物を含む場合、エポキシ化合物の含有量は、硬化性組成物の固形分100質量部に対して、10質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよく、また、70質量部以下であってもよく、60質量部以下であってもよく、50質量部以下であってもよい。
【0105】
硬化性組成物に含まれる硬化性化合物の全量を100質量%とするとき、カチオン重合性化合物の含有量(2種以上のカチオン重合性化合物が含まれる場合にはそれらの合計含有量)は、50質量%以上であってもよく、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよい。また、硬化性組成物は、ポリマー成分(熱可塑性樹脂等)をさらに含んでいてもよい。
【0106】
硬化性組成物がカチオン重合性化合物を含む場合、光カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線等の活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン硬化性化合物の重合反応を開始させるものである。光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、光カチオン硬化性化合物に混合しても保存安定性や作業性に優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を生じる化合物としては、例えば、芳香族ヨードニウム塩及び芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、鉄-アレーン錯体等が挙げられる。
【0107】
光カチオン重合開始剤は、1種のみを単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。中でも、芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械的強度や接着強度を有する硬化物を与えることができるため好ましく用いられる。
【0108】
硬化性組成物における光カチオン重合開始剤の含有量は、硬化性化合物の固形分100質量部に対して、1質量部以上であってもよく、2質量部以上であってもよく、また、10質量部以下であってもよく、8質量部以下であってもよい。光カチオン重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、カチオン重合性化合物を十分に硬化させることができ、第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36に高い機械的強度や接着強度を付与し得る。
【0109】
カチオン重合性化合物を含む硬化性組成物に、さらにラジカル重合性化合物を含有させることによりハイブリッド型の硬化性組成物とすることもできる。ラジカル重合性化合物を併用することにより、第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36の硬度や機械的強度を高める効果が期待でき、さらには硬化性組成物の粘度や硬化速度等の調整がより行いやすくなる。
【0110】
ラジカル重合性化合物は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射や加熱によりラジカル重合反応が進行し、硬化する化合物又はオリゴマーをいい、具体的にはエチレン性不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物の他、スチレン、スチレンスルホン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニル-2-ピロリドン等のビニル化合物等が挙げられる。中でも、好ましいラジカル重合性化合物は(メタ)アクリル系化合物である。
【0111】
(メタ)アクリル系化合物は、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、モノマー、オリゴマー又はポリマーであってもよい。(メタ)アクリル化合物としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリレート化合物;多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物等のウレタン(メタ)アクリレート化合物;多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物等のエポキシ(メタ)アクリレート化合物;カルボキシル基変性エポキシ(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。(メタ)アクリル系化合物は、1種のみを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0112】
(メタ)アクリレート化合物としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0113】
多官能(メタ)アクリレート化合物を用いる場合、該化合物の架橋点間分子量及び架橋点数を制御することにより、第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36の架橋密度を調整できる。より詳細には、架橋点間分子量が小さくなるほど架橋密度が上がり、また架橋点数が多くなるほど架橋密度が密になり、第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36中の吸収異方性色素に対する遮蔽性を高めることができる。
【0114】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、一般に、イソシアネート化合物とポリオール化合物と(メタ)アクリレート化合物の反応物を意味し、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、架橋構造を形成できるため、第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36の吸収異方性色素の拡散を抑制する機能を向上する観点から有利であるとともに、適度な靱性を付与することができる。多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の官能基数は、好ましくは2以上5以下である。
【0115】
エポキシ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により得ることができ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ポリエステル(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、分子内にエステル結合と少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基(典型的には(メタ)アクリロイルオキシ基)とを有する化合物が挙げられる。
【0116】
硬化性組成物がラジカル重合性化合物を含有する場合、ラジカル重合性化合物として多官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。この場合、多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量は、硬化性組成物の固形分100質量部に対して、例えば50質量部以上であってもよく、60質量部以上であってもよく、70質量部以上であってもよく、また、100質量部以下であってもよく、95質量部以下であってもよく、90質量部以下であってもよい。
【0117】
硬化性組成物がラジカル重合性化合物を含有する場合、ラジカル重合性化合物として多官能(メタ)アクリレート化合物と多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物とを含むことが好ましい。この場合、多官能(メタ)アクリレート化合物とウレタン(メタ)アクリレート化合物との含有比率(多官能(メタ)アクリレート化合物:ウレタン(メタ)アクリレート化合物、質量比)は、95:5~50:50であってもよく、90:10~70:30であってもよい。
【0118】
硬化性組成物がラジカル重合性化合物を含有する場合、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。光ラジカル重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線等の活性エネルギー線の照射によって、ラジカル重合性化合物の重合反応を開始させるものである。光ラジカル重合開始剤は、1種のみを単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0119】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン及び4,4’-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン等のアルキルフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル及びベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル系開始剤;4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系開始剤;その他、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン等が挙げられる。
【0120】
硬化性組成物における光ラジカル重合開始剤の含有量は、重合性化合物の固形分100質量部に対して、1質量部以上であってもよく、2質量部以上であってもよく、また10質量部以下であってもよく、8質量部以下であってもよい。光ラジカル重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合開始能を十分に発現させ、硬化性を向上させながら、光ラジカル重合開始剤が残存しにくくなるため、可視光線透過率の低下等を抑制しやすくなる。
【0121】
硬化性組成物から形成される第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36は、第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36を形成する面(例えば、円偏光板30,40の直線偏光層31)に、当該硬化性組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して、当該硬化性組成物を硬化することによって形成することができる。硬化性組成物は、塗布方式に適した粘度に調製するために有機溶剤を含有してもよく、実質的に溶剤を含まない(無溶剤)であってもよい。実質的に含まないとは、溶剤が不可避的に混入する場合を排除しないことを意味する。
【0122】
溶剤としては、硬化性組成物を構成する成分を溶解し得るものであればよく、例えば、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0123】
硬化性組成物は、必要に応じて、カチオン重合促進剤、光増感剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0124】
硬化性組成物の硬化に用いる活性エネルギー線は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線等が挙げられるが、紫外線であることが好ましい。活性エネルギー線の光源としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0125】
紫外線の照射強度は、通常10mW/cm以上3000mW/cm以下である。紫外線照射強度は、光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度であることが好ましい。紫外線の照射時間は、通常0.1秒以上であり、1秒以上であってもよく、5秒以上であってもよく、10秒以上であってもよく、また10分以下であってもよく、5分以下であってもよく、3分以下であってもよく、1分以下であってもよい。紫外線の積算光量は、10mJ/cm以上であってもよく、50mJ/cm以上であってもよく、100mJ/cm以上であってもよく、また、3000mJ/cm以下であってもよく、2000mJ/cm以下としてもよく、1000mJ/cmであってもよい。
【0126】
第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36の厚みは、それぞれ独立して、5μm以下であることが好ましく、4μm以下であってもよく、3μm以下であってもよく、また、0.1μm以上であってもよく、0.3μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよい。第1拡散防止層35及び第2拡散防止層36の厚みが上記の範囲内であることにより、直線偏光層31中の吸収異方性色素が他の層へ拡散することを効果的に抑制することができる。
【0127】
(第1貼合層、第2貼合層、第3貼合層、貼合層)
第1貼合層25、第2貼合層32、第3貼合層37、及び貼合層は、粘着剤層又は接着剤層である。粘着剤層は、第1粘着剤層21及び第2粘着剤層12で説明した粘着剤組成物又は活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いて形成することができる。粘着剤層の厚みは、第1粘着剤層21及び第2粘着剤層12で説明した範囲とすることができる。
【0128】
接着剤層は、接着剤組成物中の硬化性成分を硬化させることによって形成することができる。接着剤層を形成するための接着剤組成物としては、感圧型接着剤(粘着剤)以外の接着剤であって、例えば、水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。
【0129】
水系接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂を水に溶解、又は分散させた接着剤が挙げられる。水系接着剤を用いた場合の乾燥方法については特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥機や赤外線乾燥機を用いて乾燥する方法が採用できる。
【0130】
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化性化合物を含む無溶剤型の活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。無溶剤型の活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることにより、層間の密着性を向上させることができる。
【0131】
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、良好な接着性を示すことから、カチオン重合性の硬化性化合物、ラジカル重合性の硬化性化合物のいずれか一方又は両方を含むことが好ましい。活性エネルギー線硬化型接着剤は、上記硬化性化合物の硬化反応を開始させるための光カチオン重合開始剤等のカチオン重合開始剤、又はラジカル重合開始剤をさらに含むことができる。
【0132】
カチオン重合性の硬化性化合物としては、例えば、脂環式環に結合したエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物、2個以上のエポキシ基を有し芳香環を有さない多官能脂肪族エポキシ化合物、エポキシ基を1つ有する単官能エポキシ基(但し、脂環式エポキシ化合物に含まれるものを除く)、2個以上のエポキシ基を有し芳香環を有する多官能芳香族エポキシ化合物等のエポキシ系化合物;分子内に1個又は2個以上のオキセタン環を有するオキセタン化合物;これらの組み合わせを挙げることができる。
【0133】
ラジカル重合性の硬化性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル化合物(分子内に1個又は2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物)、ラジカル重合性の二重結合を有するその他のビニル系化合物、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0134】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、必要に応じて、光増感助剤等の増感剤を含有することができる。増感剤を使用することにより、反応性が向上し、接着剤層の機械強度や接着強度をさらに向上させることができる。増感剤としては、公知のものを適宜適用することができる。増感剤を配合する場合、その配合量は、活性エネルギー線硬化型接着剤の総量100質量部に対し、0.1~20質量部の範囲とすることが好ましい。
【0135】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、必要に応じて、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤、溶媒等の添加剤を含有することができる。
【0136】
活性エネルギー線硬化型接着剤を用いた場合は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線を照射し、接着剤の塗布層を硬化させて接着剤層を形成することができる。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましく、この場合の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることができる。
【0137】
接着剤層の厚みは、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよく、また10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【実施例0138】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。実施例及び比較例中の「%」及び「部」は、特記しない限り、「質量%」及び「質量部」である。
【0139】
[表面保護フィルム(1)の作製]
(粘着剤組成物(1)の調製)
撹拌機、温度計、還流冷却及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に2-エチルヘキシルアクリレート93部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート5.5部、アクリル酸1.5部とともに溶剤(酢酸エチル)を60部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1部を2時間かけて滴下し、温度65℃で6時間反応を行って、アクリル樹脂溶液(1)を得た。アクリル樹脂溶液(1)に含まれるアクリル系ポリマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算値で約50万であった。
【0140】
アクリル樹脂溶液(1)に含まれるアクリル系ポリマー100部に対して、帯電防止剤としての1-オクチルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩2.0部を加え撹拌した後、コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体:東ソー株式会社製)1.5部を加えて撹拌混合して粘着剤組成物(1)を得た。
【0141】
(セパレートフィルム付き表面保護フィルム(1)の作製)
シリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる厚み15μmのセパレートフィルムの上に、粘着剤組成物(1)を塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、乾燥後の厚みが15μmである第2粘着剤層を形成した。その後、第1基材フィルムとして、一方の面に帯電防止処理及び防汚処理が施された厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、当該PETフィルムの帯電防止処理及び防汚処理が施された面とは反対側の面を、第2粘着剤層に積層して、セパレートフィルム付き表面保護フィルム(1)を得た。セパレートフィルム付き表面保護フィルム(1)の層構造は、表面保護フィルム(1)(第1基材フィルム/第2粘着剤層)/セパレートフィルムであった。
【0142】
[表面保護フィルム(2)の作製]
第1基材フィルムとして、一方の面に帯電防止処理及び防汚処理が施された厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いたこと以外は、セパレートフィルム付き表面保護フィルム(1)の作製と同様の手順で、セパレートフィルム付き表面保護フィルム(2)を得た。セパレートフィルム付き表面保護フィルム(2)の層構造は、表面保護フィルム(2)(第1基材フィルム/第2粘着剤層)/セパレートフィルムであった。
【0143】
[拡散防止層付き円偏光板の作製]
【0144】
(水溶性ポリマー水溶液の調製)
以下の合成スキームにしたがって、下記構造単位からなる水溶性ポリマーを得た。
【化1】
【0145】
ジメチルスルホキシド400g中に、分子量1000のポリビニルアルコール(和光純薬工業株式会社製)20gと、求核剤としてN,N-ジメチル-4-アミノピリジンを0.55mg、トリエチルアミン4.6gを溶解し、撹拌しながら60℃まで昇温した。その後、ジメチルスルホキシド50g中にメタクリル酸無水物10.5gを溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、温度60℃で14時間加熱撹拌することにより反応させた。得られた反応溶液を室温まで冷却後、反応溶液中にメタノール481gを加えて完全に混合するように撹拌することで、反応溶液とメタノールとの比率(質量)が1:1となるように調整した。この溶液中に1500mLのアセトンを徐々に加えることで、水溶性ポリマーを晶析法により結晶化させた。得られた白色結晶を含む溶液を濾過し、アセトンでよく洗浄した後に真空乾燥することで、水溶性ポリマーを20.2g得た。得られた水溶性ポリマーを水に溶解させ、3質量%の水溶性ポリマー水溶液を調製した。
【0146】
(光配向層形成用組成物の調製)
下記成分を混合し、得られた混合物を温度80℃で1時間撹拌することにより、光配向層形成用組成物を得た。
・光配向性ポリマー〔特開2013-33249号公報に記載の下記式で表されるポリマー(数平均分子量:約28200、Mw/Mn:1.82)〕:2部
【化2】

・溶剤〔o-キシレン〕:98部
【0147】
(第1組成物の調製)
以下の各成分を混合し、温度80℃で1時間撹拌することにより、第1組成物を得た。吸収異方性を有する色素には、特開2013-101328号公報の実施例に記載の下記式で表されるアゾ色素を用いた。
・下記式で表される重合性液晶化合物(A1):75部
【化3】

・下記式で表される重合性液晶化合物(A2):25部
【化4】

・下記式で表される吸収異方性を有する色素(アゾ色素1):2.5部
【化5】

・下記式で表される吸収異方性を有する色素(アゾ色素2):2.5部
【化6】

・下記式で表される吸収異方性を有する色素(アゾ色素3):2.5部
【化7】

・重合開始剤〔2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)〕:6部
・レベリング剤〔ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)〕:1.2部
・溶剤〔o-キシレン〕:250部
【0148】
(第2組成物の調製)
以下の各成分を混合し、温度80℃で1時間撹拌することで、第2組成物を得た。
・下記式で表される重合性液晶化合物(X1):100部
【化8】

・下記式で表される重合性液晶化合物(X2):33部
【化9】

・重合開始剤〔2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア(登録商標)369;BASFジャパン社製)〕:8部
・レベリング剤〔ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)〕:0.1部
・反応添加剤〔LALOMER LR9000;BASFジャパン社製〕:6.7部
・溶剤〔シクロペンタノン〕:546部
・溶剤〔N-メチルピロリドン〕:364部
【0149】
(配向層形成用組成物の調製)
市販の配向性ポリマーであるサンエバーSE-610(日産化学工業株式会社製)に、2-ブトキシエタノールを加えて配向層形成用組成物を調製した。配向層形成用組成物の全量に対する固形分の含有割合は1%であり、溶剤の含有割合は99%であった。配向性ポリマーの固形分量は、納品仕様書に記載された濃度から換算した。
【0150】
(第3組成物の調製)
以下の各成分を混合し、温度80°で1時間撹拌した後、室温まで冷却し、第3組成物を得た。以下に示す含有割合は、第3組成物の全量に対する各成分の含有割合である。
・下記式で表される重合性液晶化合物〔LC242;BASF社製〕:19.2%
【化10】

・重合開始剤〔イルガキュア907;BASFジャパン社製〕:0.5%
・レベリング剤〔ビックケミージャパン製;BYK361N〕:0.1%
・反応添加剤〔Laromer LR-9000;BASFジャパン社製〕:1.1%
・溶剤〔プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)〕:79.1%
【0151】
(拡散防止層付き直線偏光層の作製)
離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ユニチカ(株)製「FF-50」、片面離型処理PETフィルム、基材の厚み:50μm)の離型処理面に、上記で調製した3質量%の水溶性ポリマー水溶液をバーコーターで塗布し、温度100℃で2分間乾燥して水溶性ポリマーの膜からなる厚み2μmの第1拡散防止層を形成した。
【0152】
第1拡散防止層の表面にプラズマ処理を施した後、バーコーターを用いて上記で調製した光配向層形成用組成物を塗布して塗布膜を形成した。この塗布膜を温度100℃で2分間乾燥することにより溶剤を除去して乾燥被膜を形成した。該乾燥被膜に偏光紫外光を20mJ/cm(313nm基準)の強度となるように照射することで配向規制力を付与し、厚み50nmの第1配向層を形成した。
【0153】
第1配向層上に、バーコーターを用いて上記で調製した第1組成物を塗布し、塗布膜を形成した。さらに、温度110℃で2分間乾燥することにより溶剤を除去するとともに、重合性液晶化合物を液体相に相転移させた後、室温まで冷却して該重合性液晶化合物をスメクチック液晶状態に相転移させた。その後、得られた乾燥被膜に高圧水銀灯を用いて紫外光を1000mJ/cm(365nm基準)で照射して、該乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま重合させることで厚み3μmの第1硬化層を形成した。
【0154】
第1硬化層上にプラズマ処理を施した後、バーコーターを用いて上記で調製した3質量%の水溶性ポリマー水溶液をバーコーターで塗布し、温度100℃で2分間乾燥して水溶性ポリマーの膜からなる厚み2μmの第2拡散防止層を形成し、拡散防止層付き直線偏光層を得た。拡散防止層付き直線偏光層の層構造は、離型PETフィルム/第1拡散防止層/直線偏光層(第1配向層/第1硬化層)/第2拡散防止層であった。
【0155】
(基材層付き第1位相差層の作製)
離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ユニチカ(株)製「FF-50」、片面離型処理PETフィルム、基材の厚み:50μm)の離型処理面とは反対側の表面に、コロナ処理を施した。このコロナ処理面に、上記で調製した光配向層形成用組成物をバーコーターで塗布し、温度120℃で2分間乾燥させた後、室温まで冷却して乾燥被膜を形成した。該乾燥被膜に偏光紫外光を100mJ/cm(313nm基準)の強度となるように照射し、厚み100nmの第2配向層を形成した。
【0156】
第2配向層上に、バーコーターを用いて上記で調製した第2組成物を塗布し、塗布膜を形成した。さらに、温度120℃で2分間加熱乾燥した後、室温まで冷却して乾燥被膜を得た。その後、該乾燥被膜に、紫外線照射装置を用いて、露光量1000mJ/cm(365nm基準)の紫外線を照射することにより、重合性液晶化合物が第1位相差層の面に対して水平方向に配向した状態で硬化した厚み2μmの第2硬化層を形成し、基材層付き第1位相差層を得た。基材層付き第1位相差層の層構造は、離型PETフィルム/第1位相差層(第2配向層/第2硬化層)であった。
【0157】
(基材層付き第2位相差層の作製)
シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(ZF-14、日本ゼオン株式会社製)の表面を、コロナ処理装置を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、上記で調製した配向層形成用組成物をバーコーターを用いて塗布し、温度90℃で1分間乾燥して第3配向層を得た。第3配向層の膜厚をレーザー顕微鏡で測定したところ1μmであった。
【0158】
第3配向層上に、バーコーターを用いて上記で調製した第3組成物を塗布し、塗布膜を形成した、さらに、温度90℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm)することにより、重合性液晶化合物が第2位相差層の面に対して垂直方向に配向した状態で硬化した厚み500nmの第3硬化層を形成し、基材層付き第2位相差層を得た。基材層付き第2位相差層の層構造は、COPフィルム/第2位相差層(第3配向層/第3硬化層)であった。
【0159】
(接着剤組成物の調製)
以下に示す成分を混合した後、脱泡して、カチオン重合型の接着層組成物を調製した。カチオン重合開始剤は、50質量%プロピレンカーボネート溶液として配合し、その固形分量を示した。
・1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(EX-212L、ナガセケムテックス(株)製):25部
・4-ヒドロキシブチルビニルエーテル:10部
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC(株)製):65部
・カチオン重合開始剤(CPI-100P、サンアプロ(株)製、50質量%溶液):3部
【0160】
(拡散防止層付き円偏光板の作製)
上記で得た拡散防止層付き直線偏光層の第2拡散防止層側と、基材層付き第1位相差層の第1位相差層側とを、第2貼合層(リンテック社製、感圧式粘着剤5μm厚の粘着剤層)を介して、直線偏光層の吸収軸と第1位相差層の遅相軸とのなす角度が45°となるように貼合して、直線偏光層と第1位相差層との積層体を得た。この積層体の層構造は、離型PETフィルム/第1拡散防止層/直線偏光層(第1配向層/第1硬化層)/第2拡散防止層/第2貼合層(粘着剤層)/第1位相差層(第2硬化層/第2配向層)/離型PETフィルムであった。
【0161】
上記で得た基材層付き第2位相差層の第2位相差層の表面にコロナ処理を施した。上記で得た積層体(直線偏光層と第1位相差層との積層体)の第1位相差層側の離型PETフィルムを剥離して露出した面と、基材層付き第2位相差層のコロナ処理面とを、上記で調製した接着剤組成物を介して貼合し、紫外線照射装置(SPOT CURE SP-7、ウシオ電機株式会社製)を用いて露光量500mJ/cm(365nm基準)の紫外線を照射した。これにより、接着剤組成物から厚み2μmの接着剤層としての第3貼合層を形成し、拡散防止層付き円偏光板を得た。拡散防止層付き円偏光板の層構造は、離型PETフィルム/第1拡散防止層/直線偏光層(第1配向層/第1硬化層)/第2拡散防止層/第2貼合層(粘着剤層)/第1位相差層(第2硬化層/第2配向層)/第3貼合層(接着剤層)/第2位相差層(第3硬化層/第3配向層)/COPフィルムであった。拡散防止層付き円偏光板では、直線偏光層から第2位相差層までが円偏光板を構成する。
【0162】
[第1粘着剤層付き剥離フィルムの作製]
(粘着剤組成物(2)の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び撹拌機を備えた反応器に、アセトン81.8部、アクリル酸ブチル98.4部、アクリル酸0.6部、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル1.0部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら、内温を55℃に上げた。その後、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.14部をアセトン10部に溶かした溶液を全量添加した。重合開始剤を添加した1時間後に、単量体を除くアクリル樹脂の濃度が35%になるよう、添加速度17.3部/hrでアセトンを連続的に反応器に添加しながら、内温54~56℃で12時間保温し、最後に酢酸エチルを添加して、アクリル樹脂の濃度が20%となるように調節して、アクリル樹脂溶液(2)を得た。
【0163】
アクリル樹脂溶液(2)100部(不揮発分量)、イソシアネート系化合物(コロネートL、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75%)(東ソー株式会社製))0.5部、シラン系化合物(KBM-403、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製))0.5部を混合し、固形分濃度が10%になるように酢酸エチルを添加して、粘着剤組成物(2)を得た。
【0164】
(第1粘着剤層付き剥離フィルムの作製)
剥離フィルムとして、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm)を用い、その離型処理面に、アプリケータを利用して乾燥後の厚みが15μmになるように粘着剤組成物(2)を塗布した。塗布層を温度100℃で1分間乾燥して、第1粘着剤層付き剥離フィルムを得た。その後、第1粘着剤層上に、剥離フィルムとしての離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)を貼合し、温度23℃、相対湿度50%RHの条件で7日間養生させて、第1粘着剤層付き剥離フィルムを得た。第1粘着剤層付き剥離フィルムの層構造は、剥離フィルム/第1粘着剤層/剥離フィルムであった。
【0165】
〔実施例1〕
透明樹脂フィルムとしての厚み13μmのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(ZF-14、日本ゼオン株式会社製)、及び、上記で得た拡散防止層付き円偏光板の離型PETフィルムを剥離した露出面の各々にコロナ処理を施した。このコロナ処理面どうしを、上記で調製した接着剤組成物を介して貼合し、紫外線照射装置(SPOT CURE SP-7、ウシオ電機株式会社製)を用いて露光量500mJ/cm(365nm基準)の紫外線を照射した。これにより、接着剤組成物から厚み2μmの接着剤層としての第1貼合層を形成し、透明樹脂フィルムと円偏光板との積層体を得た。この積層体の層構造は、透明樹脂フィルム(COPフィルム)/第1貼合層(接着剤層)/第1拡散防止層/直線偏光層(第1配向層/第1硬化層)/第2拡散防止層/第2貼合層(粘着剤層)/第1位相差層(第2硬化層/第2配向層)/第3貼合層(接着剤層)/第2位相差層(第3硬化層/第3配向層)/COPフィルムであった。
【0166】
上記で得た積層体(透明樹脂フィルムと円偏光板との積層体)の第2位相差層側のCOPフィルムを剥離して露出した面と、上記で得た第1粘着剤層付き剥離フィルムから一方の剥離フィルムを剥離して露出した面とを貼合して、積層体(透明樹脂フィルム、円偏光板、第1粘着剤層、及び剥離フィルムの積層体)を得た。この積層体の透明樹脂フィルム面に、上記で得たセパレートフィルム付き表面保護フィルム(1)からセパレートフィルムを剥離して露出した面を貼合し、光学積層体(1)を得た。光学積層体(1)の層構造は、表面保護フィルム(1)(第1基材フィルム/第2粘着剤層)/透明樹脂フィルム(COPフィルム)/第1貼合層(接着剤層)/第1拡散防止層/直線偏光層(第1配向層/第1硬化層)/第2拡散防止層/第2貼合層(粘着剤層)/第1位相差層(第2硬化層/第2配向層)/第3貼合層(接着剤層)/第2位相差層(第3硬化層/第3配向層)/第1粘着剤層/剥離フィルムであった。
【0167】
〔実施例2〕
セパレートフィルム付き表面保護フィルム(1)に代えて、上記で得たセパレートフィルム付き表面保護フィルム(2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光学積層体(2)を得た。光学積層体(2)の層構造は、表面保護フィルム(2)(第1基材フィルム/第2粘着剤層)/透明樹脂フィルム(COPフィルム)/第1貼合層(接着剤層)/第1拡散防止層/直線偏光層(第1配向層/第1硬化層)/第2拡散防止層/第2貼合層(粘着剤層)/第1位相差層(第2硬化層/第2配向層)/第3貼合層(接着剤層)/第2位相差層(第3硬化層/第3配向層)/第1粘着剤層/剥離フィルムであった。
【0168】
〔実施例3〕
透明樹脂フィルムとしてのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムに代えて、厚み20μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(KC2CT、コニカミノルタ株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光学積層体(3)を得た。光学積層体(3)の層構造は、表面保護フィルム(1)(第1基材フィルム/第2粘着剤層)/透明樹脂フィルム(TACフィルム)/第1貼合層(接着剤層)/第1拡散防止層/直線偏光層(第1配向層/第1硬化層)/第2拡散防止層/第2貼合層(粘着剤層)/第1位相差層(第2硬化層/第2配向層)/第3貼合層(接着剤層)/第2位相差層(第3硬化層/第3配向層)/第1粘着剤層/剥離フィルムであった。
【0169】
〔実施例4〕
透明樹脂フィルムとしてのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムに代えて、厚み20μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(KC2CT、コニカミノルタ株式会社製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、光学積層体(4)を得た。光学積層体(4)の層構造は、表面保護フィルム(2)(第1基材フィルム/第2粘着剤層)/透明樹脂フィルム(TACフィルム)/第1貼合層(接着剤層)/第1拡散防止層/直線偏光層(第1配向層/第1硬化層)/第2拡散防止層/第2貼合層(粘着剤層)/第1位相差層(第2硬化層/第2配向層)/第3貼合層(接着剤層)/第2位相差層(第3硬化層/第3配向層)/第1粘着剤層/剥離フィルムであった。
【0170】
〔比較例1〕
上記で得た拡散防止層付き円偏光板の第2位相差層側のCOPフィルムを剥離して露出した面と、上記で得た第1粘着剤層付き剥離フィルムから一方の剥離フィルムを剥離して露出した面とを貼合して、積層体(円偏光板、第1粘着剤層、及び剥離フィルムの積層体)を得た。この積層体の円偏光板側の離型PETフィルムを剥離して露出した面と、上記で得たセパレートフィルム付き表面保護フィルム(2)からセパレートフィルムを剥離して露出した面を貼合し、光学積層体(5)を得た。光学積層体(5)の層構造は、表面保護フィルム(2)(第1基材フィルム/第2粘着剤層)/第1拡散防止層/直線偏光層(第1配向層/第1硬化層)/第2拡散防止層/第2貼合層(粘着剤層)/第1位相差層(第2硬化層/第2配向層)/第3貼合層(接着剤層)/第2位相差層(第3硬化層/第3配向層)/第1粘着剤層/剥離フィルムであった。
【0171】
〔比較例2〕
セパレートフィルム付き表面保護フィルム(2)に代えて、上記で得たセパレートフィルム付き表面保護フィルム(1)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、光学積層体(6)を得た。光学積層体(6)の層構造は、表面保護フィルム(1)(第1基材フィルム/第2粘着剤層)/第1拡散防止層/直線偏光層(第1配向層/第1硬化層)/第2拡散防止層/第2貼合層(粘着剤層)/第1位相差層(第2硬化層/第2配向層)/第3貼合層(接着剤層)/第2位相差層(第3硬化層/第3配向層)/第1粘着剤層/剥離フィルムであった。
【0172】
[評価]
(第1基材フィルムの引張弾性率の測定)
表面保護フィルム(1)及び(2)に用いた第1基材フィルムから、長さ100mm×幅25mmの長方形の試験片(1)を切り出した。引張試験機〔(株)島津製作所製 AUTOGRAPH AG-1S試験機〕の上下つかみ具で、つかみ具の間隔が5cmとなるように試験片(1)の長辺方向両端を挟み、温度23℃、相対湿度55%の環境下、引張速度1mm/分で試験片を長辺方向に引張り、得られる応力-ひずみ曲線における初期の直線の傾きから、23℃でのMDにおける引張弾性率[MPa]を算出した。結果を表1に示す。
【0173】
(透明樹脂フィルムの引張弾性率の測定)
実施例で用いた透明樹脂フィルムを用いたこと以外は、上記第1基材フィルムの引張弾性率の測定と同様の手順で透明樹脂フィルムの引張弾性率[MPa]を算出した。結果を表1に示す。
【0174】
(密着力の測定)
実施例及び比較例で得た光学積層体(1)~(6)から、幅25mm×長さ約150mmの試験片(2)を切り出した。引張試験機〔(株)島津製作所製 AUTOGRAPH AG-1S試験機〕を用いて、試験片(2)の長さ方向の一端をつかみ、温度23℃、相対湿度60%の環境下、クロスヘッドスピード(つかみ移動速度)200mm/分で、JIS K 6854-1:1999「接着剤-はく離接着強さ試験方法-第1部:90度はく離」に準拠した90°剥離試験を行い、試験片(2)から表面保護フィルムを剥離する際の剥離力、及び、試験片(2)から剥離フィルムを剥離する際の剥離力を測定した。表面保護フィルムを剥離する際の剥離力を、表面保護フィルムと透明樹脂フィルムとの間の密着力F1とし、剥離フィルムを剥離する際の剥離力を第1粘着剤層と剥離フィルムとの間の密着力F2とした。結果を表1に示す。
【0175】
(剥離フィルムの剥離試験)
実施例及び比較例で得た光学積層体(1)~(6)のそれぞれから、幅80mm×長さ約50mmの試験片(3)を切り出した。試験片(3)の表面保護フィルム側を、粘着剤層(感圧式粘着剤、5μm厚)を介してコーニングガラス(厚み0.4mm)に貼合した。コーニングガラスに貼合した試験片(3)の剥離フィルムに剥離用テープ(セロテープ(登録商標)CT-24;ニチバン株式会社製)を貼合した。剥離用テープは、幅24mm、長さ80mmの大きさを有し、試験片(3)の一辺を跨ぎ、剥離用テープの長さ方向の一方の端から30mmの長さの範囲を剥離フィルムの表面上に取り付けた(図3を参照。)。これを、高速剥離試験機((株)今田製作所製)の評価ステージにテープを用いて固定した。
【0176】
次に、剥離用テープのうちの試験片(3)に取り付けた端部とは反対側の端部を、高速剥離試験機の把持部で把持し、試験片(3)の面方向に対する角度(剥離角度)を180°、剥離速度を2.4m/minとして剥離する180°剥離試験を行った。この試験の結果を次の基準で評価した。
A:剥離フィルムの引き起こし力が2N以下であった。
B:剥離フィルムの引き起こし力が2N超であった。
【0177】
(貼合試験)
実施例及び比較例で得た光学積層体(1)~(6)のそれぞれから、160mm×80mmの試験片(4)を切り出した。高精度精密貼合機(ハルテックHAL650:三共社製)を用いて、試験片(4)の表面保護フィルム側を、高精度精密貼合機の上吸盤側に吸着させた状態で剥離フィルムを剥離し、露出した第1粘着剤層を、高精度精密貼合機のメッシュスクリーン側に配置した厚み75μmのポリイミドフィルム(ユーピレックス-S 75S;宇部興産製)に貼合した。貼合後の積層体を取り出し、吸引孔の痕の有無を確認し、次の基準で評価した。
a:試験片(4)に吸引孔の痕が見られなかった。
b:試験片(4)又は表面保護フィルムに吸引孔の痕が見られた。
【0178】
【表1】
【符号の説明】
【0179】
1,2 光学積層体、10 表面保護フィルム、11 第1基材フィルム(基材フィルム)、12 第2粘着剤層、15 透明樹脂フィルム、21 第1粘着剤層、23 剥離フィルム、25 第1貼合層、30,40 円偏光板、31 直線偏光層、32 第2貼合層、33 第1位相差層、35 第1拡散防止層(拡散防止層)、36 第2拡散防止層、37 第3貼合層、38 第2位相差層、45 剥離用テープ、46 吸引ステージ。
図1
図2
図3
図4