(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076347
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】異常検出装置および異常検出方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20230525BHJP
【FI】
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189725
(22)【出願日】2021-11-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2020年11月23日~26日にオンライン開催した第23回情報論的学習理論ワークショップ(IBIS2020)において、動画を用いて発表した。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構事業の研究領域「計測技術と高度情報処理の融合によるインテリジェント計測・解析手法の開発と応用」における研究題目「学習型動態モーフィングによる神経間シグナル伝達特性の解明」に係る委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149711
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 耕市
(72)【発明者】
【氏名】徳永 旭将
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA03
5L096DA01
5L096EA33
5L096FA59
5L096FA69
5L096GA08
5L096GA51
5L096HA08
5L096HA11
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】小さな傷も含めて画像から異常を自動検出する技術を提供する。
【解決手段】ニューラルネットワークを用いて、検査対象を撮影した検査用画像2に基づき検査対象の異常を検出する異常検出装置1であって、検査用画像2から欠損領域を有する欠損付与画像を複数生成する欠損付与画像生成部5と、欠損付与画像を入力すると欠損領域が補間された補間画像を出力するように学習された学習済みモデル7を用いた補間画像生成部8と、欠損付与画像生成部5が生成した複数の欠損付与画像を補間画像生成部8に入力することで当該補間画像生成部8から出力された複数の補間画像を合成して再構成画像を生成する再構成画像生成部10と、再構成画像と検査用画像との差分に基づき検査用画像中の異常領域を検出して検査対象の異常判定を行う異常判定部12とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューラルネットワークを用いて、検査対象を撮影した検査用画像に基づき前記検査対象の異常を検出する異常検出装置であって、
前記検査用画像から欠損領域を有する欠損付与画像を複数生成する欠損付与画像生成部と、
前記欠損付与画像を入力すると前記欠損領域が補間された補間画像を出力するように学習された学習済みモデルを用いた補間画像生成部と、
前記欠損付与画像生成部が生成した複数の欠損付与画像を前記補間画像生成部に入力することで当該補間画像生成部から出力された複数の補間画像を合成して再構成画像を生成する再構成画像生成部と、
前記再構成画像と前記検査用画像との差分に基づき前記検査用画像中の異常領域を検出して前記検査対象の異常判定を行う異常判定部と、
を備えることを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
前記欠損付与画像生成部が生成する複数の欠損付与画像は欠損領域の位置が異なっていることを特徴とする請求項1記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記学習済みモデルは敵対的生成ネットワークにより構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記敵対的生成ネットワークは補間ネットワークと大域識別ネットワーク及び局所識別ネットワークとを備えていることを特徴する請求項3記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記異常判定部は、
前記再構成画像と前記検査用画像との差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記差分画像中の異常領域の広さが所定の閾値を超えた場合に前記検査対象に異常があると判定する領域広さ判定部と、
を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の異常検出装置。
【請求項6】
ニューラルネットワークを用いて、検査対象を撮影した検査用画像に基づき前記検査対象の異常を検出する異常検出方法であって、
前記検査用画像から欠損領域を有する欠損付与画像を複数生成する欠損付与画像生成ステップと、
前記欠損付与画像を入力すると前記欠損領域が補間された補間画像を出力するように学習された学習済みモデルを用いて、複数の補間画像を生成する補間画像生成ステップと、
複数の前記補間画像を合成して再構成画像を生成する再構成画像生成ステップと、
前記再構成画像と前記検査用画像との差分に基づき前記検査用画像中の異常領域を検出して前記検査対象の異常判定を行う異常判定ステップと、
を備えることを特徴とする異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像に基づいて検査対象の異常を検出する異常検出装置および異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディープラーニング技術を活用し画像に含まれる異常を検出するには、教師あり学習のための大量の訓練画像が必要である。しかし、異常を含む画像はあまり積極的に収集されることがない。一方、社会的には正常の検出よりも異常の検出がより重要であり、少ない異常データ例、あるいは極端には異常に関する教師データなしで、異常を検出する方法が必要とされている。近年、敵対的生成ネットワーク(GAN)を用いた画像変換が盛んに研究されており、画像の欠損領域を補間する問題に対してもGLCICと呼ばれる技術が極めて自然な補間を実現し注目されている。このGLCIC用い、異常を含まない画像に対して意図的に与えた欠損を補間する過程を学習させれば、異常が含まれる領域では補間精度が有意に低下するため、異常画像例を用いずに異常領域の特定が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Globally and Locally Consistent Image Completion [Iizuka et al., 2017]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
精密機器の製造ラインにおける品質管理では、目視ですぐにわかる異常だけでなく、小さな傷も含めて高い精度で検出しなくてはならない。ところが、小さな傷まで考慮すると、考えられる異常の外観は非常に多様である。一方、製造ラインにおいて意図的に様々な異常を生み出すことは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、異常に関する先見的な知識を用いずに、小さな傷も含めて画像から異常を自動検出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するため、本発明の異常検出装置は、ニューラルネットワークを用いて、検査対象を撮影した検査用画像に基づき検査対象の異常を検出するものであって、検査用画像から欠損領域を有する欠損付与画像を複数生成する欠損付与画像生成部と、欠損付与画像を入力すると欠損領域が補間された補間画像を出力するように学習された学習済みモデルを用いた補間画像生成部と、欠損付与画像生成部が生成した複数の欠損付与画像を補間画像生成部に入力することで当該補間画像生成部から出力された複数の補間画像を合成して再構成画像を生成する再構成画像生成部と、再構成画像と検査用画像との差分に基づき検査用画像中の異常領域を検出して検査対象の異常判定を行う異常判定部と、を備えている。
【0007】
また、本発明の異常検出装置は、欠損付与画像生成部が生成する複数の欠損付与画像は欠損領域の位置が異なっている。
また、本発明の異常検出装置は、学習済みモデルが敵対的生成ネットワークにより構成されていても良い。
また、本発明の異常検出装置は、敵対的生成ネットワークが補間ネットワークと大域識別ネットワーク及び局所識別ネットワークとを備えてもの(GLCIC)であっても良い。
また、本発明の異常検出装置は、異常判定部が、再構成画像と検査用画像との差分画像を生成する差分画像生成部と、差分画像中の異常領域の広さが所定の閾値を超えた場合に検査対象に異常があると判定する領域広さ判定部と、を備えていても良い。
【0008】
さらに、本発明の異常検出方法は、ニューラルネットワークを用いて、検査対象を撮影した検査用画像に基づき検査対象の異常を検出するものであって、検査用画像から欠損領域を有する欠損付与画像を複数生成する欠損付与画像生成ステップと、欠損付与画像を入力すると欠損領域が補間された補間画像を出力するように学習された学習済みモデルを用いて、複数の補間画像を生成する補間画像生成ステップと、複数の補間画像を合成して再構成画像を生成する再構成画像生成ステップと、再構成画像と検査用画像との差分に基づき検査用画像中の異常領域を検出して検査対象の異常判定を行う異常判定ステップと、を備えるものである。
【0009】
すなわち、GLCICを用いて意図的に正常画像に与えた欠損を補間させることで、異常を含まない画像に対しては非常に高い精度で元画像を再構成することができる。一方、何らかの異常を含む領域では、再構成の精度に有意な差が生じるため、異常の存在を知ることができる。GLCICは従来のディープラーニングよりも微細な構造まで再個性できるため、異常を含む訓練画像がなくても、何らかの異常があれば小さな傷も含めて検出することができる。
異常を含まない画像データに対しGLCIC手法を用いることで、異常を含む画像例を準備することなく小さな傷を含めて自動検出できるようになる。データ収集のコストを低減しつつ、より小さな傷を見つける異常検知が可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検査対象を撮影した画像に基づく検査対象の異常検出の精度を向上させることができる。また、学習済みモデルの作成に異常データを不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の異常検出装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の学習済みモデルの作成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の異常検出装置による異常検出の流れを示す概念図である。
【
図4】画像の処理を説明するための図で、(A)は検査対象に異常がない場合の検査用画像を示す図、(B)は検査対象に異常がない場合の欠損領域を示す図、(C)は検査対象に異常がない場合の補間画像を示す図、(D)は検査対象に異常がない場合の補間画像の欠損領域に対応する部分の拡大図、(E)は検査対象に異常がない場合の検査用画像の欠損領域に対応する部分の拡大図、(F)は検査対象に異常がある場合の検査用画像を示す図、(G)は検査対象に異常がある場合の欠損領域を示す図、(H)は検査対象に異常がある場合の補間画像を示す図、(I)は検査対象に異常がある場合の補間画像の欠損領域に対応する部分の拡大図、(J)は検査対象に異常がある場合の検査用画像の欠損領域に対応する部分の拡大図である。
【
図5】画像の処理を説明するための図で、(A)は検査対象に異常がない場合の検査用画像を示す図、(B)は検査対象に異常がない場合の再構成画像を示す図、(C)は検査対象に異常がない場合の差分画像を示す図、(D)は検査対象に異常がある場合の検査用画像を示す図、(E)は検査対象に異常がある場合の再構成画像を示す図、(F)は検査対象に異常がある場合の差分画像を示す図である。
【
図6】本発明の異常検出方法の処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る異常検出装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。
図1~
図5に、本発明に係る異常検出装置を示す。異常検出装置1は、ニューラルネットワークを用いて、検査対象を撮影した検査用画像2に基づき検査対象の異常を検出するもので、検査用画像2から欠損領域3を有する欠損付与画像4を複数生成する欠損付与画像生成部5と、欠損付与画像4を入力すると欠損領域3が補間された補間画像6を出力するように学習された学習済みモデル7を用いた補間画像生成部8と、欠損付与画像生成部5が生成した複数の欠損付与画像4を補間画像生成部8に入力することで当該補間画像生成部8から出力された複数の補間画像6を合成して再構成画像9を生成する再構成画像生成部10と、再構成画像9と検査用画像2との差分に基づき検査用画像2中の異常領域11を検出して検査対象の異常判定を行う異常判定部12とを備えている。本実施形態では、検査用画像2と再構成画像生成部10によって生成された再構成画像9とに平滑化処理を行う平滑化処理部13を備えている。
【0013】
検査用画像2は、図示しない検査対象を撮影した画像であり、本実施形態では、予め撮影されたものがデータベース17に記憶されている。データベース17には多数の検査用画像2が記憶されており、その中から1枚ずつ順番に選択されて異常検出装置1に入力される。異常検出装置1に入力された検査用画像2は欠損付与画像生成部5と差分画像生成部15に供給される。データベース17に記憶されている検査用画像2は検査前のものであり、異常のないものの中に異常のあるものが含まれる可能性がある。
【0014】
欠損付与画像生成部は、検査用画像2をもとにして欠損付与画像4を複数枚生成する。各欠損付与画像4の欠損領域3の位置は異なっている。本実施形態では、各欠損付与画像4の欠損領域3の位置をラスタースキャンのように画像の例えば左上から右下まで縦横に少しずつ、例えば1ピクセルずつずらしている。ただし、ずらす量は1ピクセルに限るものではない。各欠損付与画像4の欠損領域3の位置を一部重複させても良いし、重複しないように欠損領域3を設けても良い。また、各欠損付与画像4の欠損領域3の位置を規則的にずらしても良いし、ランダムにずらしても良い。
【0015】
欠損領域3の大きさや形状は、検査用画像2の大きさ、異常の検出精度、要求される処理スピード等に応じて適宜決定される。また、1枚の検査用画像2に対して生成する欠損付与画像4の枚数:nも検査用画像2の大きさ、異常の検出精度、要求される処理スピード等に応じて適宜決定される。
【0016】
補間画像生成部8は、ニューラルネットワークを用いた学習済みモデル7により構成されている。好ましくは、学習済みモデル7は敵対的生成ネットワーク(GAN、Generative Adversarial Networks)により構成される。敵対的生成ネットワークを用いることで、欠損領域3の補間を精度よく行うことが可能になる。本実施形態では、敵対的生成ネットワークとして、GLCIC(Globally and Locally Consistent Image Completion)が採用され、欠損領域3の補間をより一層精度よく行うことが可能になる。
【0017】
図2に示すように、学習済みモデル7は多数の訓練用画像18を用いて教師なし学習を行うことで作成される。訓練用画像18は検査対象の正常画像(良品画像)であり、例えばデータベース19に記憶されている。
【0018】
GLCICを用いた学習済みモデル7は、3つのネットワーク、すなわち画像の補間を行う補間ネットワーク(ジェネレータ、Generator)と、入力された画像が本物か偽物かを評価する大域識別ネットワーク(グローバルディスクリミネータ、Global Discriminator)及び局所識別ネットワーク(ローカルディスクリミネータ、Local Discriminator)を備えている。
【0019】
補間ネットワークには欠損付与画像生成部20が生成した欠損付与画像と訓練用画像18とが入力され、欠損付与画像の欠損領域を補間した補間画像21を出力するように機械学習される。一方、大域識別ネットワーク及び局所識別ネットワークには補間ネットワークが補間した識別画像21又は訓練用画像18が入力され、入力された画像の識別結果を出力するように機械学習される。補間ネットワークと大域識別ネットワーク及び局所識別ネットワークとを競わせることで、シーン全体で整合性が取れており、かつ局所的にも自然な補間画像21の出力が可能になる。
【0020】
このように、学習済みモデル7は正常データ(正常画像)のみを用いて画像の欠損補間を行うように学習されており、正常データの生成は可能であるが、異常データ(画像の中の異常領域)を良好に生成することはできない。異常検出装置1は、これを利用して検査用画像2中の異常領域3を検出する。
【0021】
欠損付与画像生成部5及び補間画像生成部8は画像を1枚ずつ処理する。すなわち、欠損付与画像生成部5によって欠損付与画像4が1枚生成されると、補間画像生成部8が補間画像6を生成する。生成された補間画像6は図示しないメモリに一旦記憶される。その後、欠損付与画像生成部5が次の欠損付与画像4を生成し、以降、同様の処理が繰り返される。予め決定されている所定枚数:n枚の補間画像6が生成されるまで、欠損付与画像4の生成と補間画像6の生成が繰り返される。
【0022】
再構成画像生成部10は、補間画像6を全てメモリから読み出して合成し、1枚の再構成画像9を生成する。
【0023】
平滑化処理部13は、再構成画像生成部10が生成した再構成画像9の平滑化を行う。本実施形態では、平滑化にガウシアンフィルタを使用するが、これに限るものではない。例えば、平均値フィルタ、重み付き平均値フィルタメディアンフィルタ等の使用も可能である。
また、平滑化処理部13は、差分画像生成部15に供給される検査用画像2の平滑化も行う。本実施形態では、平滑化にガウシアンフィルタを使用するが、これに限るものではない。例えば、平均値フィルタ、重み付き平均値フィルタメディアンフィルタ等の使用も可能である。
【0024】
異常判定部12は、再構成画像9と検査用画像2との差分画像14を生成する差分画像生成部15と、差分画像14中の異常領域11の広さが所定の閾値T1を超えた場合に検査対象に異常があると判定する異常領域広さ判定部16を備えている。
【0025】
差分画像生成部15は、平滑化処理部13によって平滑化された再構成画像9と検査用画像2との差分画像14を生成する。差分画像生成部15は、平滑化された再構成画像9と検査用画像2とを同座標の画素毎に比較して差dを求め、その差dを差分画像14として表現する。そして、異常領域広さ判定部16は、その差dが予め決定しておいた閾値T2よりも大きな画素が集合している領域を異常領域11とし、異常領域11の広さ、換言すると異常領域11に含まれる画素(差dが閾値T2よりも大きな画素)の数が予め決定しておいた閾値T1を超えた場合に検査対象に異常があると判定する。
【0026】
なお、閾値T1,T2は、検査用画像2の状態や異常検出に要求される精度等に応じて適宜設定される。
【0027】
図4(A)~(E)に、検査用画像2に異常領域11が写っていない場合、すなわち、検査対象に異常がない場合の画像を示す。同図(A)は検査用画像2、同図(B)は欠損領域3が付与された欠損付与画像4、同図(C)は補間画像6、同図(D)は補間画像6の欠損領域3に対応する部分の拡大図、同図(E)は検査用画像2の欠損領域3に対応する部分の拡大図である。学習済みモデル7は正常データ(正常画像)のみを用いて画像の欠損補間を行うように学習されているので、正常データ(異常領域11が写っていない検査用画像2)については欠損領域3に対応する領域をうまく生成することができる(同図(D))。
【0028】
また、
図4(F)~(J)に、検査用画像2に異常領域11が写っている場合、すなわち、検査対象に異常がある場合の画像を示す。同図(F)は検査用画像2、同図(G)は異常領域11に対応する位置に欠損領域3が付与された欠損付与画像4、同図(H)は補間画像6、同図(I)は補間画像6の欠損領域3に対応する部分の拡大図、同図(J)は検査用画像2の欠損領域3に対応する部分(即ち、異常領域11に対応する領域)の拡大図である。学習済みモデル7は正常データ(正常画像)のみを用いて画像の欠損補間を行うように学習されているので、検査用画像2の欠損領域3をうまく再現することができない(同図(I))。
【0029】
図5(A)~(C)に、検査用画像2に異常領域11が写っていない場合、すなわち、検査対象に異常がない場合の差分画像14を示す。同図(A)は検査用画像2、同図(B)は再構成画像9、同図(C)は差分画像14である。また、
図5(D)~(F)に、検査用画像2に異常領域11が写っている場合、すなわち、検査対象に異常がある場合の差分画像14を示す。同図(D)は検査用画像2、同図(E)は再構成画像9、同図(F)は差分画像14である。
【0030】
学習済みモデル7は正常データ(正常画像)のみを用いて画像の欠損補間を行うように学習されているので、正常データ(異常領域11が写っていない検査用画像2)についての再構成画像9の生成は可能であるが(同図(B))、異常データ(異常領域11が写っている検査用画像2)をうまく生成することはできない(同図(E))。そのため、同図(B)の再構成画像9は検査用画像2と近いものとなり、差分画像14はいずれの画素も閾値T2を超えることはない(同図(C))。一方、同図(E)の再構成画像9には異常領域11が再現されておらず、異常領域11についての画素は検査用画像2の画素と遠くなる。したがって、同図(F)の差分画像14の異常領域11に対応する画素は閾値T2よりも大きくなり、異常領域11の検出が可能になる。
【0031】
欠損付与画像生成部5、補間画像生成部8、平滑化処理部13、再構成画像生成部10、異常判定部12は、コンピュータに所定のプログラムを実行させることで実現される。
【0032】
次に、本発明の異常検出方法について説明する。
図6に、異常検出方法を示す。異常検出方法は、ニューラルネットワークを用いて、検査対象を撮影した検査用画像2に基づき検査対象の異常を検出するもので、検査用画像2から欠損領域3を有する欠損付与画像4を複数生成する欠損付与画像生成ステップS51と、欠損付与画像4を入力すると欠損領域3が補間された補間画像6を出力するように学習された学習済みモデル7を用いて、複数の補間画像6を生成する補間画像生成ステップS52と、複数の補間画像6を合成して再構成画像9を生成する再構成画像生成ステップS55と、再構成画像9と検査用画像2との差分に基づき検査用画像2中の異常領域11を検出して検査対象の異常判定を行う異常判定ステップS56とを有している。本実施形態では、再構成画像9と検査用画像2に平滑化処理を行う平滑化処理ステップS53を有している。
【0033】
また、異常判定ステップS56は、再構成画像9と検査用画像2との差分画像14を生成する差分画像生成ステップS57と、差分画像14中の異常領域11の広さが所定の閾値T1を超えた場合に検査対象に異常があると判定する異常領域広さ判定ステップS58を有している。
【0034】
本発明の異常判定方法では、検査用画像2に基づく異常判定を行うための準備として、まず、学習済みモデル7が作成される。学習済みモデル7は訓練用画像18を使用した教師なし学習によって作成される。この学習済みモデル7は補間画像生成部8として異常検出装置1に組み込まれる。
【0035】
また、検査対象を撮像した画像(検査用画像2)が予めデータベース17に記憶されている。
【0036】
そして、データベース17の検査用画像2が異常検出装置1に入力されると、異常検出が開始される。検査用画像2は欠損付与画像生成部5と差分画像生成部15に供給される。
欠損付与画像生成部5では、検査用画像2から欠損付与画像4が生成される(ステップS51)。まず最初に、例えば画像の左上に欠損領域3が付与された欠損付与画像4が生成される。この1枚目の欠損付与画像4は補間画像生成部8に入力される。
【0037】
補間画像生成部8では欠損領域3を補間した補間画像6が生成され、図示しないメモリに保存される。
【0038】
その後、ステップS51に戻り(ステップS54:No)、2枚目の欠損付与画像4が生成される(ステップS51)。そして、ステップS52の処理が実行され、2枚目の補間画像6が生成されてメモリに保存される。これらの処理は、n枚の欠損付与画像4について行われる。
【0039】
そして、n枚の欠損付与画像4について処理が終了すると(ステップS54:Yes)、ステップS54からステップS55に進み、再構成画像生成部10によって再構成画像9が生成される。再構成画像生成部10はメモリからn枚の補間画像6を読み込み、合成し、1枚の再構成画像9を生成する。
【0040】
再構成画像9は平滑化処理部13に出力される。平滑化処理部13では再構成画像9と検査用画像2に平滑化処理が施される(ステップS53)。平滑化処理が行われた
再構成画像9と検査用画像2は異常判定部12の差分画像生成部15に供給され(ステップS56)、差分画像生成部15によって差分画像14が生成される(ステップS57)。そして、異常領域広さ判定部16によって差分画像14中の異常領域11が閾値T1と比較され、異常領域11の広さが閾値T1を超えた場合(異常領域11の広さ>閾値T1)には、検査対象に異常があると判定される(ステップS58)。一方、異常領域11の広さが閾値T1以下の場合(異常領域11の広さ≦閾値T1)には、検査対象に異常はないと判定される(ステップS58)。判定結果は、例えば、図示しない表示装置に供給されて表示される。
【0041】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
例えば、上述の説明では、検査用画像2を予めデータベース17に記憶しておき、その中から1枚ずつ選択されて異常検出装置1に入力されていたが、必ずしもこの構成に限るものではなく、例えば、カメラ等の撮影装置から直接入力させるようにしても良い。
【0042】
本発明の画像認識装置1及び画像認識方法は、特に産業用ロボット、家庭用ロボット等の画像認識等に好適であるが、これらに限るものではない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
例えば、自動車、構造物、医療等の産業で、視覚にて判断していた異常検知を必要とする分野に適用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 異常検出装置
2 検査用画像
3 欠損領域
4 欠損付与画像
5 欠損付与画像生成部
6 補間画像
7 学習済みモデル
8 補間画像生成部
9 再構成画像
10 再構成画像生成部
11 異常領域
12 異常判定部
13 平滑化処理部
14 差分画像
15 差分画像生成部
16 異常領域広さ判定部
17 データベース
18 訓練用画像
19 データベース
20 欠損付与画像生成部
21 補間画像