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特開2023-76450アクリルゴム、アクリルゴム組成物、アクリルゴム架橋物、シール材、及びホース材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076450
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】アクリルゴム、アクリルゴム組成物、アクリルゴム架橋物、シール材、及びホース材
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20230525BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20230525BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230525BHJP
   F16L 9/127 20060101ALI20230525BHJP
【FI】
C08F220/18
C08L33/04
C09K3/10 E
F16L9/127
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033060
(22)【出願日】2023-03-03
(62)【分割の表示】P 2020510711の分割
【原出願日】2019-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018057873
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】坂東 文明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 奨
(57)【要約】
【課題】耐熱老化性、耐油性、耐寒性、耐劣化エンジンオイル性に優れたアクリルゴム架橋物が得られるアクリルゴムを提供すること。
【解決手段】メタクリル酸エステル単量体単位5~75重量%と、架橋性単量体単位0.5~5重量%とを含有し、前記メタクリル酸エステル単量体単位が、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位、メタクリル酸ポリアルキレングリコールエステル単量体単位、及びメタクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル単量体単位から選択される少なくとも1種であり、前記架橋性単量体単位を構成する架橋性単量体は、カルボキシル基、ハロゲン基、およびハロゲン原子を少なくとも1つ有する単量体である、アクリルゴム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸エステル単量体単位5~75重量%と、
架橋性単量体単位0.5~5重量%とを含有し、
前記メタクリル酸エステル単量体単位が、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位、メタクリル酸ポリアルキレングリコールエステル単量体単位、及びメタクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル単量体単位から選択される少なくとも1種であり、
前記架橋性単量体単位を構成する架橋性単量体は、カルボキシル基、ハロゲン基、およびハロゲン原子を少なくとも1つ有する単量体である、アクリルゴム。
【請求項2】
さらに、前記メタクリル酸エステル単量体単位および前記架橋性単量体単位を除く(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を20~94.5重量%含有する、請求項1に記載のアクリルゴム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクリルゴムを含有するアクリルゴム組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のアクリルゴム組成物が架橋されてなる、アクリルゴム架橋物。
【請求項5】
請求項4に記載のアクリルゴム架橋物を有する、シール材。
【請求項6】
請求項4に記載のアクリルゴム架橋物を有する、ホース材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴム、アクリルゴム組成物、アクリルゴム架橋物、シール材、及びホース材に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルゴムは、耐熱老化性、耐油性、耐寒性に優れたゴム架橋物が得られるゴム材料として、自動車用途を中心とした各種シール材、ホース材等の機能部品等に広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アクリル酸アルキルエステル100質量部に対して、メタクリル酸アルキルエステル単位10~100質量部と、架橋性モノマー0.5~4質量部を共重合させて得られるアクリルゴムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/099113号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、内燃機関の高出力化や排気ガス対策などにより内燃機関周囲の熱的環境条件が過酷化したこと、及びエンジンオイルが高温条件下で長期間交換されることなく使用され、熱、空気、水分、排気ガス等との接触により劣化が進行すること等により、ゴム部品への影響が懸念される。そのため、アクリルゴムのゴム架橋物は、エンジンオイル等と接触する自動車用シール部材やホース部材に用いられる場合、劣化したエンジンオイル(以下、「劣化エンジンオイル」という)に対する耐性を有することが求められる。
【0006】
本発明の課題は、耐熱老化性、耐油性、耐劣化エンジンオイル性に優れたアクリルゴム架橋物が得られるアクリルゴムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、メタクリル酸エステル単量体単位5~75重量%と、架橋性単量体単位0.5~5重量%とを含有し、前記メタクリル酸エステル単量体単位が、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位、メタクリル酸ポリアルキレングリコールエステル単量体単位、及びメタクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル単量体単位から選択される少なくとも1種であり、前記架橋性単量体単位を構成する架橋性単量体は、カルボキシル基、ハロゲン基、およびハロゲン原子を少なくとも1つ有する単量体である、アクリルゴムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、耐熱老化性、耐油性、耐劣化エンジンオイル性に優れるアクリルゴム架橋物が得られるアクリルゴムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0010】
<アクリルゴム>
本発明の実施形態に係るアクリルゴムは、メタクリル酸エステル単量体単位5~75重量%と、架橋性単量体単位0.5~5重量%とを含有し、メタクリル酸エステル単量体単位が、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位、メタクリル酸ポリアルキレングリコールエステル単量体単位、及びメタクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル単量体単位から選択される少なくとも1種である、アクリルゴムである。
【0011】
本実施形態のアクリルゴムに含まれるメタクリル酸エステル単量体単位を構成するメタクリル酸エステル単量体は、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体、メタクリル酸ポリアルキレングリコールエステル単量体、及びメタクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル単量体から選択される少なくとも1種である。
【0012】
メタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数2~8のアルコキシアルキルアルコールとメタクリル酸とのエステルが好ましく、炭素数3~6のアルコキシアルキルアルコールとメタクリル酸とのエステルがより好ましく、炭素数3~4のアルコキシアルキルアルコールとメタクリル酸とのエステルさらに好ましい。具体的には、例えば、メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸1-メトキシエチル、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸1-エトキシエチル、メタクリル酸2-エトキシエチル、メタクリル酸1-プロポキシエチル、メタクリル酸2-プロポキシエチル、メタクリル酸1-ブトキシエチル、メタクリル酸2-ブトキシエチル、メタクリル酸1-メトキシプロピル、メタクリル酸2-メトキシプロピル、メタクリル酸3-メトキシプロピル、メタクリル酸1-メトキシブチル、メタクリル酸2-メトキシブチル、メタクリル酸3-メトキシブチル、メタクリル酸4-メトキシブチル、メタクリル酸1-メチル-2-メトキシエチル、メタクリル酸1-エチル-2-メトキシエチル、及びメタクリル酸テトラヒドロフルフリルなどが挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸2-エトキシエチル、メタクリル酸1-メチル-2-メトキシエチル、メタクリル酸1-ブトキシエチル、及びメタクリル酸4-メトキシブチルが好ましい。これらは、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0013】
メタクリル酸ポリアルキレングリコールエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数2~30のポリアルキレングリコールとメタクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、例えば、メタクリル酸エチレングリコール、メタクリル酸ジエチレングリコール、メタクリル酸トリエチレングリコール、メタクリル酸テトラエチレングリコール、メタクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸プロピレングリコール、メタクリル酸ジプロピレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸ジエチレングリコール、及びメタクリル酸トリエチレングリコールが好ましい。これらは、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0014】
メタクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数5~32のアルコキシポリアルキレングリコールとメタクリル酸とのエステルが好ましく、炭素数5~11のアルコキシポリアルキレングリコールとメタクリル酸とのエステルがより好ましく、炭素数5~7のアルコキシポリアルキレングリコールとメタクリル酸とのエステルがさらに好ましい。具体的には、例えば、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシトリエチレングリコール、メタクリル酸エトキシジエチレングリコール、メタクリル酸エトキシトリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシジプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシトリプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸エトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、メタクリル酸エトキシポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシトリエチレングリコールが好ましい。これらは、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0015】
これらの中でも、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体、またはメタクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル単量体が好ましく、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体がより好ましい。具体的には、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸2-エトキシエチル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシトリエチレングリコールがより好ましく、メタクリル酸2-メトキシエチル、メタクリル酸2-エトキシエチルがさらに好ましい。これらのメタクリル酸エステルは、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0016】
上述のメタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、アクリルゴムを構成する全単量体単位の合計100重量%に対して、5.0重量%以上、好ましくは6.0重量%以上、より好ましくは8.0重量%以上、特に好ましくは10.0重量%以上であり、また、75.0重量%以下、好ましくは70.0重量%以下、より好ましくは65.0重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐油性、耐劣化エンジンオイル性、耐熱老化性が十分に得られず、多すぎると、得られるゴム架橋物の耐寒性が低下するおそれがある。
【0017】
本実施形態に係るアクリルゴムに含まれる架橋性単量体単位を構成する架橋性単量体としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、エポキシ基、ハロゲン基(またはハロゲン原子)、ジエン単量体等が挙げられる。なお、架橋性単量体単位は、側鎖に架橋性基を有する架橋性単量体に由来する構成単位である。
【0018】
カルボキシル基を有する単量体としては、特に限定されないが、例えば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体などが挙げられる。
【0019】
α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、特に限定されないが、例えば、炭素数3~12のα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸、炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸、および炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1~8のアルカノールとのモノエステルなどが挙げられる。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体を用いることにより、アクリルゴムを、カルボキシル基を架橋点として持つカルボキシル基含有アクリルゴムとすることができ、これにより、ゴム架橋物とした場合における、耐圧縮永久歪み性をより高めることができる。
【0020】
炭素数3~12のα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸、およびケイ皮酸などが挙げられる。
【0021】
炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸の具体例としては、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸;イタコン酸;シトラコン酸;クロロマレイン酸;などが挙げられる。
【0022】
炭素数4~12のα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1~8のアルカノールとのモノエステルの具体例としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn-ブチルなどのブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキセニルなどの脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn-ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノエステル;などが挙げられる。
【0023】
これらの中でも、ブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル、または脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルが好ましく、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノn-ブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘキシルがより好ましく、マレイン酸モノn-ブチル、フマル酸モノn-ブチルがさらに好ましい。これらのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。なお、上記単量体のうち、ジカルボン酸には、無水物として存在しているものも含まれる。
【0024】
エポキシ基を有する単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;p-ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有スチレン;アリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ペンテン、3,4-エポキシ-1-ブテン、4,5-エポキシ-2-ペンテン、4-ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ビニルシクロヘキセンおよびアリルフェニルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有エーテル;などが挙げられる。
【0025】
ハロゲン基を有する単量体としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステル、(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステル、ハロゲン含有不飽和エーテル、ハロゲン含有不飽和ケトン、ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物、ハロゲン含有不飽和アミド、およびハロアセチル基含有不飽和単量体などが挙げられる。
【0026】
ハロゲン含有飽和カルボン酸の不飽和アルコールエステルの具体例としては、クロロ酢酸ビニル、2-クロロプロピオン酸ビニル、およびクロロ酢酸アリルなどが挙げられる。
【0027】
(メタ)アクリル酸ハロアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸1-クロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、(メタ)アクリル酸1,2-ジクロロエチル、(メタ)アクリル酸2-クロロプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロプロピル、および(メタ)アクリル酸2,3-ジクロロプロピルなどが挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリル酸ハロアシロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-(クロロアセトキシ)プロピル、および(メタ)アクリル酸3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルなどが挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリル酸(ハロアセチルカルバモイルオキシ)アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)エチル、および(メタ)アクリル酸3-(クロロアセチルカルバモイルオキシ)プロピルなどが挙げられる。
【0030】
ハロゲン含有不飽和エーテルの具体例としては、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、3-クロロプロピルビニルエーテル、2-クロロエチルアリルエーテル、および3-クロロプロピルアリルエーテルなどが挙げられる。
【0031】
ハロゲン含有不飽和ケトンの具体例としては、2-クロロエチルビニルケトン、3-クロロプロピルビニルケトン、および2-クロロエチルアリルケトンなどが挙げられる。
【0032】
ハロメチル基含有芳香族ビニル化合物の具体例としては、p-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、o-クロロメチルスチレン、およびp-クロロメチル-α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0033】
ハロゲン含有不飽和アミドの具体例としては、N-クロロメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0034】
ハロアセチル基含有不飽和単量体の具体例としては、3-(ヒドロキシクロロアセトキシ)プロピルアリルエーテル、p-ビニルベンジルクロロ酢酸エステルなどが挙げられる。
【0035】
ジエン単量体としては、特に限定されないが、例えば、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体が挙げられる。なお、ジエン単量体は、上記の多官能性単量体を含有する場合は、上記の多官能性単量体に含まれる成分の単量体以外のジエン単量体である。
【0036】
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、およびピペリレンなどを挙げることができる。
【0037】
非共役ジエン単量体の具体例としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、および(メタ)アクリル酸2-ジシクロペンタジエニルエチルなどを挙げることができる。
【0038】
上記架橋性単量体の中でも、カルボキシル基、エポキシ基、ハロゲン基を有する単量体単位であることが好ましく、カルボキシル基を有する単量体単位であることがより好ましい。さらに、カルボキシル基を有する単量体単位の中でも、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体が特に好ましい。α,β-エチレン性不飽和カルボン酸単量体を用いた場合には、上述のようにアクリルゴムをカルボキシル基含有アクリルゴムとすることができる。アクリルゴムを、カルボキシル基含有アクリルゴムとすることにより、耐劣化エンジンオイル性を良好なものとしながら、耐熱老化性、耐圧縮永久歪み性を向上させることができる。
【0039】
架橋性単量体単位の含有量は、アクリルゴムを構成する全単量体単位の合計100重量%に対して、0.5重量%以上、好ましくは0.6重量%以上、より好ましくは0.7重量%以上であり、また、5重量%以下、好ましくは4.0重量%以下、より好ましくは3.0重量%以下である。なお、架橋性単量体単位が0.5重量%未満では、アクリルゴムの架橋が十分に進行せず、十分な機械的強度が得られない。また、5重量%を超えると、アクリルゴムが過度に架橋され、架橋物の伸びが低下する。
【0040】
本実施形態のアクリルゴムは、さらに、上述のメタクリル酸エステル単量体単位および架橋性単量体単位を除く(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を20~94.5重量%含有していてもよい。ここで、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両者を意味する。したがって、例えば、後述する(メタ)アクリル酸メチルは、アクリル酸メチル及び/またはメタクリル酸メチルを示す。
【0041】
本実施形態のアクリルゴムに含まれる(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、例えば、上述のメタクリル酸エステル単量体および架橋性単量体を除いた、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、及びアクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体などが挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数1~8のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、および(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、および(メタ)アクリル酸n-オクチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、および(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、アクリル酸エチル、およびアクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチルが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0043】
アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数2~8のアルコキシアルキルアルコールとアクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸1-メトキシエチル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸1-エトキシエチル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸1-プロポキシエチル、アクリル酸2-プロポキシエチル、アクリル酸1-ブトキシエチル、アクリル酸2-ブトキシエチル、アクリル酸1-メトキシプロピル、アクリル酸2-メトキシプロピル、アクリル酸3-メトキシプロピル、アクリル酸3-エトキシプロピル、アクリル酸1-メトキシブチル、アクリル酸2-メトキシブチル、アクリル酸3-メトキシブチル、アクリル酸4-メトキシブチル、およびアクリル酸4-エトキシブチルなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸2-エトキシエチル、およびアクリル酸2-メトキシエチルが好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0044】
上述のメタクリル酸エステル単量体単位および架橋性単量体単位を除く(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体がアクリル酸エステル単量体単位の場合、該アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、アクリルゴムを構成する全単量体単位の合計100重量%に対して、好ましくは20.0重量%以上、より好ましくは25.0重量%以上、さらに好ましくは30.0重量%以上、特に好ましくは40.0重量%以上であり、また、好ましくは94.5重量%以下、より好ましくは85.0重量%以下、さらに好ましくは80.0重量%以下、特に好ましくは75.0重量%以下である。アクリル酸エステル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐寒性および耐油性が低下するおそれがあり、一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の耐劣化エンジンオイル性が低下するおそれがある。
【0045】
また、上述のメタクリル酸エステル単量体単位および架橋性単量体単位を除く(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体がメタクリル酸エステル単量体単位の場合、該メタクリル酸アルキルエステル単量体単位の含有量は、アクリルゴムを構成する全単量体単位の合計100重量%に対して、好ましくは0重量%以上55.0重量%以下、より好ましくは0重量%以上40.0重量%以下、さらに好ましくは0重量%以上30.0重量%以下、特に好ましく0重量%以上25重量%以下である。メタクリル酸アルキルエステル単量体単位の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物の耐油性および耐寒性が低下するおそれがある。
【0046】
本実施形態において、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位は、上述のメタクリル酸エステル単量体単位と併用しても良い。その場合のメタクリル酸アルキルエステル単量体単位と上述のメタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、それらの合計100重量%に対して、メタクリル酸アルキルエステル単量体単位の含有量が、好ましくは0重量%以上90重量%以下であり、より好ましくは0重量%以上85重量%以下であり、メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が、好ましくは10重量%以上100重量%以下であり、より好ましくは15重量%以上100重量%以下である。
【0047】
なお、本実施形態において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を30重量%以上100重量%以下とし、アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位を0重量%以上70重量%以下とすることが好ましい。
【0048】
本実施形態に係るアクリルゴムは、アクリルゴムの特性を維持する限り、上述の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、架橋性単量体単位に加えて、共重合可能なその他の単量体の単位を有していてもよい。
【0049】
共重合可能なその他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、オレフィン系単量体、芳香族ビニル単量体、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、ハロゲン化ビニル化合物、ビニルエーテル化合物、およびビニルエステル化合物などが挙げられる。
【0050】
オレフィン系単量体としては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられる。これらの中でも、エチレンが好ましい。
【0051】
芳香族ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-ジメチルアミノスチレン、ジビニルベンゼン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等が挙げられる。
【0052】
α、β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル単量体としては、特に限定されないが、例えば、炭素数4~12のα、β-エチレン性不飽和ジカルボン酸と炭素数1~8のアルコールとのジエステルが挙げられる。ジエステルの2つの有機基は同一であっても、異なっていてもよい。α、β-エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルの具体例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジn-ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジシクロペンチル、マレイン酸ジシクロヘキシル、マレイン酸ジベンジル、マレイン酸ジフェニル等のマレイン酸ジエステル;フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジn-ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシル、フマル酸ジベンジル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸ジエステル;シトラコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、シトラコン酸ジプロピル、シトラコン酸ジn-ブチル、シトラコン酸ジベンジル、シトラコン酸ジフェニル等のシトラコン酸ジエステル;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジn-ブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジシクロヘキシル、イタコン酸ジベンジル、イタコン酸ジフェニル等のイタコン酸ジエステル;メサコン酸ジメチル、メサコン酸ジエチル、メサコン酸ジプロピル、メサコン酸ジn-ブチル、メサコン酸ジベンジル、メサコン酸ジフェニル等のメサコン酸ジエステル;2-ペンテン二酸ジメチル、2-ペンテン二酸ジエチル、2-ペンテン二酸ジプロピル、2-ペンテン二酸ジn-ブチル、2-ペンテン二酸ジベンジル、2-ペンテン二酸ジフェニル等の2-ペンテン二酸ジエステル;アセチレンジカルボン酸ジシクロヘキシル等が挙げられる。
【0053】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。
【0054】
ハロゲン化ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル等が挙げられる。
【0055】
ビニルエーテル化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、およびn-ブチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0056】
ビニルエステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニルおよび桂皮酸ビニル等が挙げられる。
【0057】
また、これら以外にも、エチレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル、プロピレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する単量体(多官能アクリル単量体);ジアリルフタレート、ジアリルフマレートなどのジアリル化合物;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルなどの多官能(メタ)アクリル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド単量体;ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N-エチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチルなどの窒素基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、フェニルマレイミド、ビニルイミダゾールおよびN-ビニルピロリドン等の任意の化合物等が挙げられる。
【0058】
これらの中でも、エチレン、スチレン、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジn-ブチル、マレイン酸ジイソブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジn-ブチル、フマル酸ジイソブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジプロピル、イタコン酸ジn-ブチル、イタコン酸ジイソブチル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、およびプロピオン酸ビニルが好ましく、エチレン、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジn-ブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジn-ブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジn-ブチル、アクリロニトリル、および酢酸ビニルがより好ましい。これらは、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0059】
本実施形態でアクリルゴム中における、その他の単量体の単位の含有量は、40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。また、共重合可能なその他の単量体がオレフィン系単量体単位の場合は、オレフィン系単量体単位の含有量は、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは5.0重量%以上、さらに好ましくは10.0重量%以上であり、また、好ましくは30.0重量%以下、より好ましくは25.0重量%以下、さらに好ましくは20.0重量%以下である。
【0060】
本実施形態に係るアクリルゴムの製造方法は、特に限定されず、公知の重合方法に従って所定の単量体を共重合して製造すればよい。具体的には、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合などの公知の方法を採用して製造することができる。中でも、重合反応の制御の容易性等から、常圧下での乳化重合法を好ましく採用することができる。
【0061】
上記の単量体は必ずしも反応の当初から全種、全量が反応の場に供給されていなくても良く、共重合反応性比、反応転化率などを考慮して反応時間の全体にわたって連続的または断続的に添加され、または、途中ないし後半に一括もしくは分割で導入されても良い。また、重合反応における上記各単量体の仕込み割合は、各単量体の反応性によって調整する必要があるが、ほぼ定量的に重合反応が進行するため、取得したいアクリルゴムの単量体単位組成に合わせればよい。
【0062】
このようにして製造されるアクリルゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃))は、特に限定されるものではないが、加工性の観点から、10以上100以下であることが好ましく、より好ましくは15以上90以下、特に好ましくは、20以上80以下である。ムーニー粘度が小さすぎると、アクリルゴム組成物の形状保持性が低下することによって成形加工性が低下したり、架橋物の機械的強度が低下したりするおそれがある。一方、ムーニー粘度が大きすぎると、流動性が低下することによって成形加工性が低下する可能性がある。
【0063】
このようにして得られた本実施形態に係るアクリルゴムは、架橋することにより耐熱老化性、耐油性、耐劣化エンジンオイル性に優れるアクリルゴム架橋物を得られる。
【0064】
<アクリルゴム組成物>
本実施形態に係るアクリルゴム組成物は、アクリルゴムと架橋剤とを含有する。
【0065】
本実施形態のアクリルゴム組成物に含まれるアクリルゴムは、上述のアクリルゴムを用いることができる。
【0066】
本実施形態で用いる架橋剤としては、アクリルゴム中の架橋点として作用する架橋性単量体由来の構造単位と反応して架橋構造を構成するものであれば限定されない。
【0067】
架橋剤としては、例えばジアミン化合物などの多価アミン化合物及びその炭酸塩;多価ヒドラジド化合物;硫黄;硫黄共与体;トリアジンチオール化合物;多価エポキシ化合物;有機カルボン酸アンモニウム塩;ジチオカルバミン酸金属塩;多価カルボン酸;四級オニウム塩;イミダゾール化合物;イソシアヌル酸化合物;有機過酸化物;などの従来公知の架橋剤を用いることができる。これらの架橋剤は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。架橋剤としては、架橋性単量体単位の種類に応じて適宜選択することが好ましい。
【0068】
なお、アクリルゴムの架橋性単量体単位を構成する架橋性単量体がカルボキシル基を含む架橋性単量体の場合、架橋剤は、多価アミン化合物及びその炭酸塩、グアニジン化合物、多価ヒドラジド化合物が好ましく、多価アミン化合物及びその炭酸塩がより好ましい。
【0069】
多価アミン化合物及びその炭酸塩としては、特に限定されないが、炭素数4~30の多価アミン化合物及びその炭酸塩が好ましい。このような多価アミン化合物及びその炭酸塩の例としては、脂肪族多価アミン化合物及びその炭酸塩、ならびに芳香族多価アミン化合物及びその炭酸塩などが挙げられる。
【0070】
これらのうち、脂肪族多価アミン化合物及びその炭酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、およびN,N'-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、並びにこれらの炭酸塩などが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンカーバメートが好ましい。
【0071】
また、芳香族多価アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、4,4'-メチレンジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4'-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2'-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4'-ジアミノベンズアニリド、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、および1,3,5-ベンゼントリアミンなどが挙げられる。これらの中でも、2,2'-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンが好ましい。
【0072】
また、架橋性単量体単位を構成する架橋性単量体がエポキシ基を含む架橋性単量体の場合、架橋剤は、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメ-ト、脂肪族多価アミン化合物及びその炭酸塩;4,4'-メチレンジアニリンなどの芳香族多価アミン化合物;安息香酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウムなどのカルボン酸アンモニウム塩;ジメチルジチオカルバミン酸、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸化合物;テトラデカンニ酸などの多価カルボン酸;セチルトリメチルアンモニウムブロマイドなどの四級オニウム塩;2-メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物;イソシアヌル酸、イソシアヌル酸アンモニウムなどのイソシアヌル酸化合物;等を使用することができる。これらの中でも、安息香酸アンモニウム、ジメチルジチオカルバミン酸、およびイソシアヌル酸が好ましい。
【0073】
また、架橋性単量体単位を構成する架橋性単量体がハロゲン基を含む架橋性単量体の場合、架橋剤は、トリチオシアヌル酸、1,3,5-トリアジントリチオール、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン等のトリアジンチオール誘導体、アンモニウムアジペートなどの有機カルボン酸アンモニウム塩や金属石けんと硫黄との混合物、ジペンタメチレンチウラムヘキササルファイド、トリエチルチウラムジサルファイドなどを使用することができる。これらの中でも、1,3,5-トリアジントリチオール、金属石けんと硫黄との混合物が好ましい。
【0074】
本実施形態のアクリルゴム組成物における架橋剤の含有量は、アクリルゴム組成物中のアクリルゴム100重量部に対して、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは0.2重量部以上であり、また、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。架橋剤の含有量が少なすぎると架橋が不十分となり、アクリルゴム架橋物の形状維持が困難になるおそれがある。一方、多すぎるとアクリルゴム架橋物が硬くなりすぎ、弾性が損なわれる可能性がある。
【0075】
本実施形態のアクリルゴム組成物では、架橋剤の他に架橋促進剤を含有することができる。架橋促進剤は、架橋剤との組み合わせで架橋を促進するものであれば、特に限定されない。
【0076】
このような架橋促進剤としては、例えば、脂肪族1価2級アミン化合物、脂肪族1価3級アミン化合物、1,3-ジ-o-トリルグアニジン等グアニジン化合物、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩、ジエチルチオ尿素等のチオ尿素化合物、イミダゾール化合物、第4級オニウム塩、第3級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩、およびジアザビシクロアルケン化合物等が用いられる。これらの架橋促進剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0077】
架橋促進剤の使用量は、アクリルゴム組成物中のアクリルゴム100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、さらに好ましくは0.5重量部以上であり、また、好ましくは10重量部以下、より好ましくは7.5重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下である。架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物表面ヘの架橋促進剤のブルームが生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりするおそれがある。架橋促進剤が少なすぎると、架橋速度が遅くなりすぎたり、架橋物の引張強度が著しく低下する可能性がある。
【0078】
また、本実施形態に係るアクリルゴム組成物には、上記成分以外に、アクリルゴムの分野において一般的に使用される配合剤として、架橋活性化剤、充填剤、滑材、老化防止剤、スコーチ防止剤、プロセス油、可塑剤等の配合剤をそれぞれ必要量配合することができる。
【0079】
充填剤としては、特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)等の炭素系材料を用いることができる。中でもカーボンブラックを用いるのが好ましい。カーボンブラックの具体例は、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。これらの中でも、ファーネスブラックを用いることが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF-HS、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF、HAF-HS、HAF-LS、MAF、FEF等が挙げられ、特にFEF、MAF、HAF-HSが好ましい。黒鉛の具体例は、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛等の天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。なお、上述した炭素系材料は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。充填剤の添加量は、アクリルゴム組成物中のアクリルゴム100重量部に対し、40~90重量部が好ましい。
【0080】
炭素系材料以外の充填剤としては、例えば、アルミニウム粉末等の金属粉;ハードクレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機粉末;デンプンやポリスチレン粉末等の有機粉末等の粉体;ガラス繊維(ミルドファイバー)、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカー等の短繊維;シリカ、マイカ;等が挙げられる。これらの充填剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0081】
滑材としては、例えば、炭化水素系ワックス、脂肪酸系ワックス、脂肪酸アミド系ワックス;脂肪酸エステルワックス、脂肪アルコール系ワックス、脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル系ワックス、シリコーンオイル、ポリオルガノシロキサン、ジステアリルエポキシヘキソヒドロキシフタレート、ナトリウムアルキルサルフェート、長鎖脂肪族化合物、非イオンエステル系活性剤、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック共重合体、四フッ化エチレン樹脂粉末などが挙げられる。これらの滑材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
老化防止剤としては、フェノール系、アミン系、リン酸系、イオウ系などの老化防止剤を使用することができる。フェノール系の代表例としては、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)などがあり、アミン系の代表例としては、4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどが挙げられる。これらの老化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
スコーチ防止剤としては、特に限定されないが、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、りんご酸などの有機酸系スコーチ防止剤;N-ニトロソジフェニルアミンなどのニトロソ化合物系スコーチ防止剤;N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミドなどのチオフタルイミド系スコーチ防止剤;スルホンアミド誘導体;2-メルカプトベンズイミダゾール;トリクロルメラミン;ステアリルアミンなどが挙げられる。スコーチ防止剤は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を併せて使用してもよい。
【0084】
また、本実施形態のアクリルゴム組成物には、必要に応じて、本実施形態のアクリルゴム以外のゴム、エラストマー、樹脂などの重合体を配合してもよい。なお、アクリルゴム以外のゴム、エラストマー、樹脂などの重合体の含有量は、アクリルゴム組成物中のアクリルゴム100重量部に対して、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下である。
【0085】
アクリルゴム以外のゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、溶液重合SBR(溶液重合スチレンブタジエンゴム)、乳化重合SBR(乳化重合スチレンブタジエンゴム)、低シスBR(ブタジエンゴム)、高シスBR、高トランスBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70~95%)、スチレン-イソプレン共重合ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、乳化重合スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、ポリイソプレン-SBRブロック共重合ゴム、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体、上述したアクリルゴム以外のアクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレン-プロピレンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
【0086】
エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリシロキサン系エラストマーなどが挙げられる。
【0087】
樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0088】
本実施形態のアクリルゴム組成物を調製する方法としては、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの混合方法が適宜採用できる。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解を起こしにくい成分を充分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分(例えば、架橋剤、架橋促進剤など)を、反応や分解が起こらない温度にて短時間で混合すればよい。
【0089】
このようにして得られた本実施形態に係るアクリルゴム組成物は、架橋することにより耐熱老化性、耐油性、耐劣化エンジンオイル性に優れるアクリルゴム架橋物が得られる。
【0090】
<アクリルゴム架橋物>
本実施形態に係るアクリルゴム架橋物は、上述のアクリルゴム組成物を架橋して得られる。
【0091】
架橋は、アクリルゴム組成物を加熱することにより行われる。架橋条件は、架橋温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上で、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下である。架橋時間は、好ましくは30秒間以上、より好ましくは1分間以上で、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下である。この第1段階の架橋を一次架橋ということもある。
【0092】
所望の形状のアクリルゴム架橋物を得るための成形方法としては、押出成形、射出成形、トランスファー成形、圧縮成形などの従来公知の成形法を採用できる。また、成形と同時に加熱し、架橋することもできる。
【0093】
押出成形には、一般的なゴムの加工手順を採用することができる。例えば、ロール混合などによって調製したゴム組成物を、押出機のフィード口に供給し、スクリューでヘッド部に送る過程でバレルからの加熱により軟化させ、ヘッド部に設けた所定形状のダイスに通すことにより、目的の断面形状を有する長尺の押出成形品(板、棒、パイプ、ホース、異形品など)を得ることができる。
【0094】
なお、その押出成形品の製造方法自体は、特に限定されず、公知の製造方法に従えばよい。また、押出成形品の構造は、特に限定されず、例えば、繊維被覆、糸心入り、他のゴムまたは樹脂との積層品などが挙げられる。所望の形状に成形された押出成形品は、架橋される。押出成形品の架橋は、所定の形に成形した後スチーム缶内で一次架橋することで得られる。また必要に応じて、オーブン中熱空気下での二次架橋を行ってもよい。
【0095】
射出成形、トランスファー成形及び圧縮成形では、製品1個分の又は数個分の形状を有する金型のキャビティに本実施形態のアクリルゴム組成物を充填して賦形することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。
【0096】
成形温度は、通常10℃以上、好ましくは25℃以上で、通常200℃以下、好ましくは120℃以下である。架橋温度は、通常、130℃以上、好ましくは150℃以上で、通常220℃以下、好ましくは190℃以下である。架橋時間は、通常2分以上、好ましくは3分以上であり、また、通常10時間以下、好ましくは5時間以下である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、および熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。
【0097】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、本実施形態のゴム架橋物は、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1~48時間行う。加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
【0098】
本実施形態のゴム架橋物は、引張強度、伸び、硬さなどのゴムとしての基本特性を維持しながら、優れた耐熱老化性、耐油性、耐寒性、耐劣化エンジンオイル性に優れたものである。そのため本実施形態のゴム架橋物は、このような特性を活かして、例えば、自動車等の輸送機械、一般機器、電気機器等の幅広い分野において、O-リング、パッキン、オイルシール、ベアリングシール、ヘッドカバーガスケット、プラグチューブガスケット、カムジャーナルオリフィスガスケット、シリンダーヘッドプラグガスケット、エンジンヘッドカバーガスケット、スプールバルブガスケット、オイルプレッシャーセンサーガスケット、カムシャフトスラストガスケット、オイルフィルターガスケット、オイルクーラーガスケット、オイルパンガスケット、オイルフィルターカートリッジガスケット、オイルパスオリフィスガスケット、オイルフィルターベースガスケット、オイルレベルパイプガスケット、オイルポンプガスケット、チェーンケースガスケット、トランスミッションシールガスケット、クランクシャフトシールガスケット、カムシャフトシールガスケット、バルブステムシールガスケット、バッフルプレートガスケット、バルブタイミングコントロールバルブガスケット、ギャラリーキャップボルトガスケット、ロアーブロックオリフィスガスケット、パワーステアリングシールベルトカバーシール、ポジティブクランクケースベンチレーションバルブガスケットおよびCVJ及びR&Pブーツ材等のシール材;緩衝材、防振材;電線被覆材;工業用ベルト類;トランスミッションオイルクーラーホース、エンジンオイルクーラーホース、ターボインタークーラーホース、ターボエアーダクトホース、パワーステアリングホース、ホットエアホース、ラジエーターホース、パワーステアリングホース、ディーゼルターボチャージャーホースその他の産業機械、建設機械の高圧系を含むオイル系ホース、燃料系ホース及びドレーン系ホース等のチューブ・ホース類;シート類;等に好適に用いられる。これらの中でも、シール材、ホース材の用途に適用することができる。
【実施例0099】
以下に、実施例を示して、本実施形態をさらに具体的に説明する。以下において「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。ただし、本実施形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。各特性の測定、評価は以下のようにして行った。
【0100】
<ムーニー粘度>
JIS K6300に準拠した未架橋ゴム物理試験法のムーニー粘度試験に従って、測定温度100℃におけるアクリルゴムのムーニー粘度ML1+4(ポリマームーニー粘度(ML1+4,100℃))を測定した。
【0101】
<常態物性(引張強度、伸び、硬さ)>
実施例及び比較例で得られたアクリルゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら、170℃で20分間プレスすることによりシート状のアクリルゴム架橋物を得た。得られたシート状のアクリルゴム架橋物を、ギヤー式オーブンに入れ、170℃で4時間熱処理を行った。次いで、シート状のアクリルゴム架橋物をダンベル型3号形で打ち抜いて試験片を作製した。この試験片を用いて、JIS K6251に従い、引張強度(MPa)および伸び(%)を測定した。また、この試験片について、JIS K6253に従い、デュロメーター硬さ試験機(タイプA)を用いて硬さを測定した。
【0102】
<耐熱老化試験>
上記常態物性の評価に用いた試験片と同様にして作製した試験片を、ギヤー式オーブン中で、温度175℃の環境下に168時間置いた後、伸びを測定し、得られた結果と、上記方法にしたがって測定した常態物性とを対比することにより、耐熱老化性の評価を行った。伸びは、JIS K6251に従って測定し、得られた測定結果から、伸び変化率ΔE(%)を計算した。伸び変化率ΔE(%)は、加熱環境に置かれる前の試験片の伸び(常態物性の測定値)に対する加熱環境に置かれた後の試験片の伸びの測定値(耐熱老化試験後の測定値)の変化率(%)である。伸び変化率ΔE(%)の絶対値が小さい方が、耐熱老化性に優れる。
【0103】
<耐寒性試験>
耐寒性試験は、JIS K6261に準じて低温ねじり試験(ゲーマンねじり試験)を行った。試験片については、上記常態物性の評価に用いた試験片と同様にして作製した試験片を、得られたシート状のアクリルゴム架橋物から打ち抜いて、長さ40.0±2.5mm、幅3.0±0.2mm、厚さ2.0±0.2mmの試験片を作製した。試験は、ゲーマンステフネステスタ(東洋精機製作所製)を用いて行い、比モジュラスが10になる温度(以下、ゲーマンT10という)を求めた。ゲーマンT10の値が低い方が、耐寒性に優れる。
【0104】
<耐油性試験>
耐油性試験は、JIS K6258に準じて行った。上記常態物性の評価に用いた試験片と同様にして作製した試験片を、得られたシート状のアクリルゴム架橋物から打ち抜いて、縦30mm、横20mm、厚さ2.0±0.2mmの試験片を作製した。この試験片を内容積250ccのガラス製のチューブに入れ、そこに、試験用液体を200cc入れて、試験片が全て液中に浸漬されるように設置した。ガラス製のチューブを加熱槽に入れ、150℃で、72時間、加熱を行った。試験用液体としては、JIS K6258に記載の試験用潤滑油No.3油(商品名「IRM903」、日本サン石油社製)を用いた。加熱後、試験片を取出し、試験用液体を拭き取った後、試験片の体積を測定し、得られた測定結果から、体積変化率ΔV(%)を計算した。体積変化率ΔV(%)は、試験用潤滑油に浸漬される前の試験片の体積の測定値(常態物性の測定値)に対する浸漬後の試験片の体積の測定値(耐油性試験後の測定値)の変化率(%)である。体積変化率ΔV(%)の絶対値が小さい方が、耐油性に優れる。
【0105】
<耐劣化エンジンオイル浸漬試験>
上記常態物性の評価に用いた試験片と同様にして作製した試験片を、内容積250ccのガラス製のチューブに入れ、そこに、試験用液体を200cc入れて、試験片が全て液中に浸漬されるように設置した。ガラス製のチューブをオートクレーブに入れて、加熱槽に入れ、160℃で、168時間、加熱を行った。試験用液体(劣化エンジンオイル)としては、エンジンオイル(商品名「Mobil10W-40SM/CF」、エクソンモービル社製、「Mobil」は登録商標)197.7gに対して、純度95%の硫酸0.1g、純度50%の硝酸1.2g、純度99.7%の酢酸1.0gおよび純度98%のギ酸0.04gの割合で混合して作製した。なお、試験用液体中の酸濃度は、それぞれ、硫酸500ppm、硝酸3,000ppm、酢酸5,000ppmおよびギ酸200ppmである。加熱後、容器から試験片を取り出し、付着した試験用液体をよく拭き取ってから、室温条件で放冷した後、硬さを測定し、得られた結果と、上記方法にしたがって測定した常態物性とを対比することにより、劣化エンジンオイル試験の評価を行った。硬さは、JIS K6253に従って測定し、得られた測定結果から、硬さ変化を求めた。硬さ変化は、エンジンオイルに浸漬させていない試験片の硬さの測定値(常態物性の測定値)に対する浸漬後の試験片の硬さの測定値の差である。硬さ変化(硬さの測定値の差)が小さい程、劣化が進行しにくく、耐劣化エンジンオイル性に優れる。
【0106】
[製造例1:アクリルゴムA]
温度計、攪拌装置を備えた重合反応器に、水200部、ラウリル硫酸ナトリウム3部、アクリル酸n-ブチル88.5部、メタクリル酸2-メトキシエチル10部、及びマレイン酸モノn-ブチル1.5部を仕込み、減圧脱気及び窒素置換を2度行って酸素を十分に除去した。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.005部およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.002部を加えて常圧下、温度30℃で乳化重合を開始し、重合転化率95%に達するまで反応させた。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムAを得た。
【0107】
[製造例2:アクリルゴムB]
アクリル酸n-ブチル78.5部、メタクリル酸2-メトキシエチル20部にした以外は、製造例1と同様にしてアクリルゴムBを得た。
【0108】
[製造例3:アクリルゴムC]
アクリル酸n-ブチル68.5部、メタクリル酸2-メトキシエチル30部にした以外は、製造例1と同様にしてアクリルゴムCを得た。
【0109】
[製造例4:アクリルゴムD]
アクリル酸n-ブチル58.5部、メタクリル酸2-メトキシエチル40部にした以外は、製造例1と同様にしてアクリルゴムDを得た。
【0110】
[製造例5:アクリルゴムE]
アクリル酸n-ブチル68.5部、メタクリル酸2-メトキシエチル20部にして、メタクリル酸メチル10部を加えた以外は、製造例1と同様にしてアクリルゴムEを得た。
【0111】
[製造例6:アクリルゴムF]
アクリル酸n-ブチル58.5部、メタクリル酸2-メトキシエチル20部にして、メタクリル酸n-ブチル20部を加えた以外は、製造例1と同様にしてアクリルゴムFを得た。
【0112】
[製造例7:アクリルゴムG]
アクリル酸n-ブチル68.5部、メタクリル酸2-メトキシエチル20部にして、メタクリル酸エチル10部を加えた以外は、製造例1と同様にしてアクリルゴムGを得た。
【0113】
[製造例8:アクリルゴムH]
アクリル酸n-ブチル43.5部にして、メタクリル酸2-メトキシエチルの代わりにメタクリル酸2-エトキシエチル55部を加えた以外は、製造例1と同様にしてアクリルゴムHを得た。
【0114】
[製造例9:アクリルゴムI]
アクリル酸n-ブチル28.5部にして、メタクリル酸2-メトキシエチルの代わりにメタクリル酸2-エトキシエチル70部を加えた以外は、製造例1と同様にしてアクリルゴムIを得た。
【0115】
[製造例10:アクリルゴムJ]
アクリル酸n-ブチル78.5部にして、メタクリル酸2-メトキシエチルの代わりにメタクリル酸メトキシジエチレングリコール20部を加えた以外は、製造例1と同様にしてアクリルゴムJを得た。
【0116】
[製造例11:アクリルゴムK]
アクリル酸n-ブチル78.5部にして、メタクリル酸2-メトキシエチルの代わりにメタクリル酸メトキシトリエチレングリコール20部を加えた以外は、製造例1と同様にしてアクリルゴムKを得た。
【0117】
[製造例12:アクリルゴムL]
温度計、攪拌装置を備えた耐圧重合反応器に、水200部、ラウリル硫酸ナトリウム3部、アクリル酸n-ブチル68.5部、メタクリル酸2-メトキシエチル20部、及びマレイン酸モノn-ブチル1.5部を仕込み、減圧脱気及び窒素置換を2度行って酸素を十分に除去した。次いでエチレンを反応器内に圧入し、圧力を35kg/cmに調整した。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.005部およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.002部を加えて、温度60℃で乳化重合を開始し、重合転化率95%に達するまで反応させた。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムLを得た。
【0118】
[製造例13:アクリルゴムM]
アクリル酸n-ブチル48.5部、メタクリル酸2-メトキシエチル40部にして、アクリル酸2-メトキシエチル5部、アクリル酸エチル5部を加えた以外は、製造例1と同様にしてアクリルゴムMを得た。
【0119】
[製造例14:アクリルゴムN]
マレイン酸モノn-ブチルの代わりにクロロ酢酸ビニル1.5部を加えた以外は、製造例4と同様にしてアクリルゴムNを得た。
【0120】
[製造例15:アクリルゴムO]
マレイン酸モノn-ブチルの代わりにアリルグリシジルエーテル1.5部を加えた以外は、製造例4と同様にしてアクリルゴムOを得た。
【0121】
[製造例16:アクリルゴムP]
温度計、攪拌装置を備えた重合反応器に、水200部、ラウリル硫酸ナトリウム3部、アクリル酸n-ブチル65部、メタクリル酸メチル10部、アクリル酸2-メトキシエチル19部、アクリル酸エチル4.5部、及びマレイン酸モノn-ブチル1.5部を仕込み、減圧脱気及び窒素置換を2度行って酸素を十分に除去した。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.005部およびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.002部を加えて常圧下、温度30℃で乳化重合を開始し、重合転化率95%に達するまで反応させた。得られた乳化重合液を塩化カルシウム水溶液で凝固させ、水洗、乾燥してアクリルゴムPを得た。
【0122】
[製造例17:アクリルゴムQ]
メタクリル酸メチル18部、アクリル酸2-メトキシエチル11部にした以外は、製造例16と同様にしてアクリルゴムQを得た。
【0123】
[製造例18:アクリルゴムR]
アクリル酸n-ブチル77部、アクリル酸2-メトキシエチル17部にして、メタクリル酸メチルを用いなかった以外は、製造例16と同様にしてアクリルゴムRを得た。
【0124】
[製造例19:アクリルゴムS]
アクリル酸n-ブチル98.5部にして、メタクリル酸メチル、アクリル酸2-メトキシエチル、及びアクリル酸エチルを用いなかった以外は、製造例16と同様にしてアクリルゴムSを得た。
【0125】
[製造例20:アクリルゴムT]
アクリル酸n-ブチル59部、メタクリル酸メチル20部、アクリル酸エチル20部にして、マレイン酸モノn-ブチルの代わりにアリルグリシジルエーテル1.1部を加え、アクリル酸2-メトキシエチルを用いなかった以外は、製造例16と同様にしてアクリルゴムTを得た。
【0126】
[製造例21:アクリルゴムU]
アクリル酸n-ブチル71部にして、メタクリル酸メチルの代わりにメタクリル酸エチル28部、マレイン酸モノn-ブチルの代わりにアリルグリシジルエーテル1.1部を加え、アクリル酸2-メトキシエチル及びアクリル酸エチルを用いなかった以外は、製造例16と同様にしてアクリルゴムUを得た。
【0127】
[製造例22:アクリルゴムV]
アクリル酸n-ブチル57.3部にして、メタクリル酸メチルの代わりにメタクリル酸n-ブチル41.5部、マレイン酸モノn-ブチルの代わりにアリルグリシジルエーテル1.1部を加え、アクリル酸2-メトキシエチル及びアクリル酸エチルを用いなかった以外は、製造例16と同様にしてアクリルゴムVを得た。
【0128】
[製造例23:アクリルゴムW]
アクリル酸n-ブチル98.5部にして、マレインモノn-ブチルの代わりにクロロ酢酸ビニル1.5部を加え、メタクリル酸メチル、アクリル酸2-メトキシエチル、及びアクリル酸エチルを用いなかった以外は、製造例16と同様にしてアクリルゴムWを得た。
【0129】
[製造例24:アクリルゴムX]
アクリル酸n-ブチル98.5部にして、マレイン酸モノn-ブチルの代わりにアリルグリシジルエーテル1.5部を加え、メタクリル酸メチル、アクリル酸2-メトキシエチル、及びアクリル酸エチルを用いなかった以外は、製造例16と同様にしてアクリルゴムXを得た。
【0130】
<アクリルゴム組成物の調製>
[実施例1]
バンバリーミキサーを用いて、製造例1で得られたアクリルゴムA100部に、HAFカーボンブラック(商品名「シースト3」、東海カーボン社製、充填剤、「シースト」は登録商標)60部、ステアリン酸(商品名「ステアリン酸さくら」、日油株式会社製、滑材)1部、エステル系ワックス(商品名「グレッグG-8205」、大日本インキ化学工業社製、滑剤)1部、4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラックCD」、大内新興化学工業社製、老化防止剤、「ノクラック」は登録商標)2部を添加して、50℃で5分間混合した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、ヘキサメチレンジアミンカーバメート(商品名「Diak#1」、デュポンエラストマー社製、架橋剤)0.5部、および1,3-ジ-o-トリルグアニジン(商品名「ノクセラーDT」、大内新興化学工業社製、架橋促進剤、「ノクセラー」は登録商標)2部を配合して、混練することにより、アクリルゴム組成物を得た。得られたアクリルゴム組成物を用いて上述した方法によりアクリルゴム架橋物の試験片を得て、ムーニー粘度、常態物性(引張強度、伸び、硬さ)、耐熱老化試験、耐油性試験、耐寒性試験、および耐劣化エンジンオイル浸漬試験の各評価を行った。その結果を表1に示す。
【0131】
[実施例2]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例2で得られたアクリルゴムB100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0132】
[実施例3]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例3で得られたアクリルゴムC100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0133】
[実施例4]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例4で得られたアクリルゴムD100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0134】
[実施例5]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例5で得られたアクリルゴムE100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0135】
[実施例6]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例6で得られたアクリルゴムF100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0136】
[実施例7]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例7で得られたアクリルゴムG100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0137】
[実施例8]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例8で得られたアクリルゴムH100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0138】
[実施例9]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例9で得られたアクリルゴムI100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0139】
[実施例10]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例10で得られたアクリルゴムJ100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0140】
[実施例11]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例11で得られたアクリルゴムK100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0141】
[実施例12]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例12で得られたアクリルゴムL100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0142】
[実施例13]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例13で得られたアクリルゴムM100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0143】
[実施例14]
バンバリーミキサーを用いて、製造例14で得られたアクリルゴムN100部に、HAFカーボンブラック(商品名「シースト3」、東海カーボン社製、充填剤)60部、ステアリン酸(商品名「ステアリン酸さくら」、日油株式会社製、滑材)1部、エステル系ワックス(商品名「グレッグG-8205」、大日本インキ化学工業社製、滑剤)1部、4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラックCD」、大内新興化学工業社製、老化防止剤)2部を添加して、50℃で5分間混合した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、1,3,5-トリアジントリチオール(商品名「ZISNET-F」、三洋化成社製、架橋剤、「ZISNET」は登録商標)0.5部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(商品名「ノクセラーBZ」、大内新興化学工業社製、架橋促進剤)1.5部、ジエチルチオ尿素(商品名「ノクセラーEUR」、大内新興化学工業社製、架橋促進剤)0.3部、およびN-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(商品名「リターダーCTP」、大内新興化学工業社製、スコーチ防止剤)0.2部を配合して、混練することにより、アクリルゴム組成物を得た。得られたアクリルゴム組成物を用いて上述した方法によりアクリルゴム架橋物の試験片を得て、ムーニー粘度、常態物性(引張強度、伸び、硬さ)、耐熱老化試験、耐油性試験、耐寒性試験、および耐劣化エンジンオイル浸漬試験の各評価を行った。その結果を表4に示す。
【0144】
[実施例15]
バンバリーミキサーを用いて、製造例15で得られたアクリルゴムO100部に、HAFカーボンブラック(商品名「シースト3」、東海カーボン社製、充填剤)60部、ステアリン酸(商品名「ステアリン酸さくら」、日油株式会社製、滑材)1部、4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラックCD」、大内新興化学工業社製、老化防止剤)2部を添加して、50℃で5分間混合した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、安息香酸アンモニウム(商品名「バルノックAB-S」、大内新興化学工業社製、架橋剤、「バルノック」は登録商標)1.1部を配合して、混練することにより、アクリルゴム組成物を得た。得られたアクリルゴム組成物を用いて上述した方法によりアクリルゴム架橋物の試験片を得て、ムーニー粘度、常態物性(引張強度、伸び、硬さ)、耐熱老化試験、耐油性試験、耐寒性試験、および耐劣化エンジンオイル浸漬試験の各評価を行った。その結果を表4に示す。
【0145】
[比較例1]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例16で得られたアクリルゴムP100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0146】
[比較例2]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例17で得られたアクリルゴムQ100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0147】
[比較例3]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例18で得られたアクリルゴムR100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0148】
[比較例4]
製造例1で得られたアクリルゴムAの代わりに、製造例19で得られたアクリルゴムS100部を使用した以外は実施例1と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0149】
[比較例5]
製造例15で得られたアクリルゴムOの代わりに、製造例20で得られたアクリルゴムT100部を使用した以外は実施例15と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0150】
[比較例6]
製造例15で得られたアクリルゴムOの代わりに、製造例21で得られたアクリルゴムU100部を使用した以外は実施例15と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0151】
[比較例7]
製造例15で得られたアクリルゴムOの代わりに、製造例22で得られたアクリルゴムV100部を使用した以外は実施例15と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0152】
[比較例8]
製造例14で得られたアクリルゴムNの代わりに、製造例23で得られたアクリルゴムW100部を使用した以外は実施例14と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0153】
[比較例9]
製造例15で得られたアクリルゴムOの代わりに、製造例24で得られたアクリルゴムX100部を使用した以外は実施例15と同様にして、アクリルゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表4に示す。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】
表1~表3に示すように、実施例1~15では、いずれも、耐熱老化試験における伸び変化率ΔE(%)の絶対値が40%以内であり、耐油性試験における体積変化率ΔV(%)の絶対値が63%以内であり、耐劣化エンジンオイル浸漬試験における硬さ変化が22以下であった。
【0159】
これに対して、比較例1~5では、耐劣化エンジンオイル浸漬試験における硬さ変化が22を超えた。また、比較例4、6、7、8、9では、耐油性試験における体積変化率ΔVの絶対値が63(%)を超えた。さらに、比較例5、6、9では、耐熱老化試験における伸び変化率ΔE(%)の絶対値が40%を超えた。
【0160】
これらの結果から、メタクリル酸エステル単量体単位5~75重量%と、架橋性単量体単位0.5~5重量%とを含有し、メタクリル酸エステル単量体単位が、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位、メタクリル酸ポリアルキレングリコールエステル単量体単位、及びメタクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル単量体単位から選択される少なくとも1種である、本実施形態のアクリルゴムは、ムーニー粘度(ポリマームーニー粘度(ML1+4,100℃))、常態物性(引張強度、伸び、硬さ)のゴムとしての基本特性および耐寒性を維持しながら、耐熱老化性、耐油性、耐劣化エンジンオイル性に優れるアクリルゴム架橋物が得られることが判った(実施例1~15)。
【0161】
また、表4に示すように、本実施形態に係るアクリルゴムは、架橋性単量体としてエポキシ基、およびハロゲン基を用いた場合でも、耐熱老化性、耐油性、耐寒性、耐劣化エンジンオイル性に優れるアクリルゴム架橋物が得られることが判った(実施例14、15)。
【0162】
以下、本発明の好ましい態様を付記する。
【0163】
本発明に係る第1の態様は、メタクリル酸エステル単量体単位5~75重量%と、架橋性単量体単位0.5~5重量%とを含有し、前記メタクリル酸エステル単量体単位が、メタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位、メタクリル酸ポリアルキレングリコールエステル単量体単位、及びメタクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル単量体単位から選択される少なくとも1種である、アクリルゴムである。
【0164】
本発明に係る第2の態様は、さらに、前記メタクリル酸エステル単量体単位および前記架橋性単量体単位を除く(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を20~94.5重量%含有する。
【0165】
本発明に係る第3の態様は、上記架橋性単量体単位が、カルボキシル基、エポキシ基、およびハロゲン基を少なくとも1つ有する単量体単位である。
【0166】
本発明に係る第4の態様は、上記アクリルゴムを含有するアクリルゴム組成物である。
【0167】
本発明に係る第5の態様は、上記アクリルゴム組成物が架橋されてなる、アクリルゴム架橋物である。
【0168】
本発明に係る第6の態様は、上記アクリルゴム架橋物を有する、シール材である。
【0169】
本発明に係る第7の態様は、上記アクリルゴム架橋物を有する、ホース材である。
【0170】
以上、本実施形態の実施形態について実施例を挙げて説明したが、本実施形態は特定の実施形態、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0171】
本国際出願は、2018年3月26日に出願された日本国特許出願2018-057873号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容をここに援用する。