(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076733
(43)【公開日】2023-06-01
(54)【発明の名称】タングステンスパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
C23C14/34 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023062892
(22)【出願日】2023-04-07
(62)【分割の表示】P 2017217737の分割
【原出願日】2017-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】曽川 慎治
(72)【発明者】
【氏名】太齋 貴文
(72)【発明者】
【氏名】中住 征治
(57)【要約】
【課題】タングステンスパッタリングターゲットを使用してタングステン膜を形成する場合において、比抵抗の低いタングステン膜を形成することが可能なタングステンスパッタリングターゲットを提供すること。
【解決手段】タングステンスパッタリングターゲット(モリブデン(Mo)を添加したものを除く)であって、タングステンの純度が5N(99.999wt%)以上であり、タングステンに含有する不純物の炭素及び酸素がそれぞれ50wtppm以下であり、かつタングステン結晶の平均粒径が347μm以上であることを特徴とするタングステンスパッタリングターゲット。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステンスパッタリングターゲット(モリブデン(Mo)を添加したものを除く)であって、タングステンの純度が5N(99.999wt%)以上であり、タングステンに含有する不純物の炭素及び酸素がそれぞれ50wtppm以下であり、かつタングステン結晶の平均粒径が347μm以上であることを特徴とするタングステンスパッタリングターゲット。
【請求項2】
相対密度が99.3%以上であることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項3】
上記炭素及び酸素がそれぞれ10wtppm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC、LSI等のゲート電極あるいは配線材料等を、スパッタリング法によって形成する際に用いられるタングステンスパッタリングターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超LSIの高集積化に伴い、電気抵抗率のより低い材料を電極材や配線材料として使用する検討が行われているが、このような中で抵抗率が低く、熱及び化学的に安定である高純度タングステンが電極材や配線材料として使用されている。
この超LSI用の電極材や配線材料は、一般にスパッタリング法とCVD法で製造されているが、スパッタリング法は装置の構造及び操作が比較的単純で、容易に成膜でき、また低コストであることからCVD法よりも広く使用されている。
【0003】
タングステンスパッタリングターゲットについては、高純度、高密度が要求されるが、近年、超LSI用の電極材や配線材を、タングステンスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングにより成膜した膜については、さらに電気抵抗率が低い材料が求められている。
【0004】
これに対し、特許文献1には、タングステン焼結体スパッタリングターゲットであって、タングステンの純度が5N(99.999wt%)以上であり、タングステンに含有する不純物の炭素が5wtppm以下であることを特徴とするタングステン焼結体スパッタリングターゲットが開示されている。このようなタングステン焼結体スパッタリングターゲットを使用して成膜することにより、タングステン膜において、安定した電気抵抗率の低減化が可能であるという優れた効果を有する。
【0005】
このように、特許文献1は、タングステンスパッタリングターゲットの高純度化を図ることにより、スパッタリングにより形成されたタングステン膜の比抵抗を低減することに成功している。
【0006】
ところが、高純度化によるタングステン膜の低抵抗化は限界を迎えつつあり、更なる低抵抗化を図るには他の方策を講じることが必要となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、タングステンスパッタリングターゲットを使用してタングステン膜を形成する場合において、比抵抗の低いタングステン膜を形成することが可能なタングステンスパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
タングステンスパッタリングターゲットに対してスパッタリングを行うにあたり、ArやKrで代表される希ガスを高速度で衝突せしめ、はじき出されたタングステン元素をシリコン(Si)ウェハーなどの基板表面に蒸着させて所定厚さのタングステン膜を形成するという成膜方法が考えられる。ところが、成膜途中にAr等の希ガスはタングステン元素とともに基板表面に定着し、結果としてAr等が取り込まれたタングステン膜が生成されることがある。このようなタングステン膜は、Arが取り込まれていないタングステン膜と比較して、比抵抗が高くなる傾向がある。
【0010】
そこで、希ガス原子の取り込み量を減少させるために、原子半径が大きいKrガスを使用する方法も考えられるが、KrガスがArガスに比べて高価であるため、生産コストの増加につながる。そのため、タングステンスパッタリングターゲット自体の改良が強く望まれる。
【0011】
本願発明は、以上の知見に基づき、成膜途中にArやKr等の希ガスがタングステン膜に取り込まれにくいタングステンスパッタリングターゲットを提供することで、従来のタングステンスパッタリングターゲットを使用して成膜する場合と比較してAr等の取り込み量が少ないタングステン膜を形成することを可能とし、比抵抗の低いタングステン膜を形成することを可能とするものである。
【0012】
そして、本発明者らは、タングステンスパッタリングターゲットの平均粒径100μmを超える範囲に制御することにより、比抵抗の低いタングステン膜を形成することを可能としたものである。
【0013】
そこで、本発明は、以下のように特定される。
(1)タングステンスパッタリングターゲットであって、タングステンの純度が5N(99.999wt%)以上であり、タングステンに含有する不純物の炭素及び酸素がそれぞれ50wtppm以下であり、かつタングステン結晶の平均粒径が100μmを超えることを特徴とするタングステンスパッタリングターゲット。
(2)相対密度が99.3%以上であることを特徴とする(1)に記載のスパッタリングターゲット。
(3)上記炭素及び酸素がそれぞれ10wtppm以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のスパッタリングターゲット。
(4)タングステン粉末をホットプレス法(HP)により成形後、熱間等方圧加圧法(HIP)により高密度化を行うタングステンスパッタリングターゲットの製造方法であって、
前記熱間等方圧加圧法における温度が1800℃以上であり、焼結時間が5.5時間以上であることを特徴とするタングステンスパッタリングターゲットの製造方法。
(5)タングステン粉末をホットプレス法(HP)により成形後、圧延法により高密度化を行うタングステンスパッタリングターゲットの製造方法であって、
前記圧延法における温度が1200℃以上1700℃以下であり、総圧下率が15%以上25%以下とすることを特徴とするタングステンスパッタリングターゲットの製造方法。
(6)前記圧延法において、1回当たりの圧延での圧下率が3~12%であることを特徴とする(5)に記載のタングステンスパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、タングステンスパッタリングターゲットを使用してタングステン膜を形成する場合において、比抵抗の低いタングステン膜を形成することが可能なタングステンスパッタリングターゲットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】タングステン膜に取り込まれるAr原子の量とタングステン膜の比抵抗の相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のタングステンスパッタリングターゲットは、タングステンの純度が5N(99.999wt%)以上であり、タングステンに含有する不純物の炭素及び酸素がそれぞれ20wtppm以下であり、かつタングステン結晶の平均粒径が100μmを超えるものである。
【0017】
(純度)
比抵抗の低いタングステン膜を形成するには、タングステン膜に含まれる不純物を抑える必要があり、そのためタングステンスパッタリングターゲットの高純度化が不可欠である。具体的には99.999wt%(5N)以上の純度を有することが必要である。
【0018】
(不純物)
また、ターゲット中に含有される炭素及び酸素などの不純物は、成膜時にタングステン膜に取り込まれるため、炭素量が多くなるにつれ、スパッタリング成膜後のタングステン膜の比抵抗が増加する傾向にある。そのため、タングステンに含有する不純物の炭素及び酸素がそれぞれ50wtppm以下とする必要がある。そして、同様の観点から、タングステンに含有する不純物の炭素及び酸素がそれぞれ30wtppm以下であることが好ましく、20wtppm以下であることがさらに好ましい。そして、炭素及び酸素がそれぞれ10wtppm以下になれば、タングステン膜の比抵抗に対する影響がほとんどなくなる。
炭素の低減化のためには、タングステン粉末をグラファイト製のダイスに充填してホットプレスする際、グラファイト製のダイスとの直接接触がないように、隔離させるのが良い。
【0019】
(タングステン結晶の平均粒径)
本発明のタングステンスパッタリングターゲットは、そのタングステン結晶の平均粒径が100μmを超えるものである。従来では、タングステン結晶の平均粒径がタングステンスパッタリングターゲットの密度と関係することが知られているが、タングステン結晶の平均粒径と、成膜時にAr原子がタングステン膜に取り込まれる量との関係について着目することはなかった。本発明において、タングステン結晶の平均粒径が100μmを超えるので、成膜時にAr原子がタングステン膜に取り込まれにくくなり、結果としてArの取り込み量が少ないタングステン膜を得ることができる。すなわち、タングステンスパッタリングターゲットの純度、密度などが同一の物でも、タングステン結晶の平均粒径を100μmを超えるもののほうが、タングステン結晶の平均粒径が100μm以下のものより、比抵抗の低いタングステン膜を得ることができる。そのため、本発明におけるタングステン結晶の平均粒径は、好ましくは120μm以上であり、より好ましくは150μm以上であり、さらにより好ましくは200μm以上である。
【0020】
タングステン結晶の平均粒径は、JIS G 0551:2013の切断法で評価される結晶粒内を横切る評価試験線の結晶粒当たりの平均線分長に準じた値により求めることができる。具体的には、光学顕微鏡によって組織観察を実施する。観察・保存した組織写真で、粒子数N=200になるまで写真上に直線を引き、直線上に存在する粒子数(N≧200)と直線の総長さ(L)を用い、L/Nでその観察部位の平均粒径を算出する。
【0021】
(相対密度)
タングステンスパッタリングターゲットの相対密度は、99.3%以上とすることが好ましい。ターゲットの相対密度が99.5%以上であれば、ターゲット中に含まれるガス成分が少ないため、膜を形成した際に、膜の比抵抗を抑えることができる。また、異常放電によるダスト発生も抑制される。上記観点から、ターゲットの相対密度は、99.7%以上がより好ましく、99.9%以上がさらにより好ましい。
【0022】
(製造方法)
本発明のタングステンスパッタリングターゲットは、上述した各特性を有しているものであれば、製造方法は特に限定されるものではないが、このような特性を有するタングステンスパッタリングターゲットを得る手段として、ホットプレス法(HP)と熱間等方圧加圧法(HIP)を組み合わせた粉末冶金法を用いることができる。そして、HP後におけるHIPの適切な条件を以下のように制御することで、上述した本願発明のタングステンスパッタリングターゲットの特性を得ることができる。また、上記HP法とHIP法を組み合わせた粉末冶金法以外に、HP法の後に適切な条件で圧延処理を行うことでも、上述した本願発明のタングステンスパッタリングターゲットの特性を得ることができる。
【0023】
まずHP工程は、所定の型に原料となるタングステン粉末を充填し、これに荷重を加えて熱処理するものである。ここで用いるタングステン粉末としては、粒径が5μm以下であるものが好ましい。HP工程では、適切な昇温速度で温度を上昇させつつ、温度領域毎に適した荷重を加えてHP温度まで温度を上昇させ、HP温度で所定の時間保持する。この際、昇温速度は2~10℃/分程度であることが好ましい。このHP工程では、600~1200℃の温度領域と、1200℃以上の温度領域とで加える荷重を適切に調整して変更することが好ましい。HP工程では昇温の初期において脱ガスが生じるため、この過程で高い荷重を加えてしまうと十分な脱ガスが行われないまま焼結が進行してしまい、焼結体が高密度化せず、内部に酸素等の残留ガス成分を多く含むものとなってしまう。そこで、HP工程では、低温領域では荷重を低く加え、高温領域ではより高い荷重を加えることで焼結体を高密度化し、酸素残留量の少ない焼結体とすることができる。具体的には、600~1200℃の温度領域での荷重圧は80~150kg/cm2程度、1200℃以上の温度領域での荷重圧は200~350kg/cm2程度とすることが好ましい。また、昇温工程中に、一定時間一定温度で保持する工程を数回導入することが高密度でランダム配向の焼結体を得る上で有効である。この際のHP温度は、1600~1900℃程度であることが好ましい。HP温度が低いと密度が十分に上がらず、高過ぎてもタングステン表面の炭化層の形成が進行してしまうため好ましくない。昇温速度が速すぎる場合、HP中の脱ガスが十分に進行しないため好ましくない。昇温速度が遅すぎても生産性の低下を招いて好ましくないことは明らかである。本工程の保持時間は30~240分程度であり、温度等の条件を考慮の上で適宜調整できる。HP温度での保持時間も同様に設定、調整することができる。
【0024】
HP処理した成形体について、タングステン結晶の平均粒径を増大させ、成形体を高密度化するためには、HP成形体をHIP処理することが有効である。本発明において、HIP処理時における温度が1800℃以上、処理時間が5.5時間以上であることが肝要である。HIP処理の条件を上記条件とすることで、タングステン結晶の平均粒径が100μmを超えるタングステンスパッタリングターゲットを得ることができる。HIP処理の圧力は1600~1900kg/cm2を目安として調整できる。HIP処理時における温度の上限は特に制限はないが、コストの面から2200℃以下であることが好ましい。HIP処理の時間の上限は特に制限はないが、コストの面から8時間以下であることが好ましい。
【0025】
なお、HP処理した成形体について、HIPでなく圧延処理によって塑性加工を施すこともできる。この熱間圧延の条件を調整することで、本発明のタングステンスパッタリングターゲットのタングステン結晶の平均粒径を制御することができる。具体的には、圧延温度は1200℃以上1700℃以下であることが必要であり、総圧下率としては15~25%程度であることが肝要である。ここで、本発明における総圧下率とは、1回当たりの圧下率と圧延処理する工程のパス回数を乗じた数値である。1回当たりの圧下率は、以下の式で表される。一回の圧延での圧下率は3~12%程度が好ましい。なお、パス回数は、4~6回であることが望ましい。
1回当たりの圧下率=(hn-1-hn)/h0
式中、h0は初期の成形体厚みであり、hn-1は当該パスによる圧延前の成形体厚みであり、hnは当該パスによる圧延後の成形体厚みである。
【実施例0026】
以下、本発明を実施例、比較例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例、比較例の記載は、あくまで本発明の技術的内容の理解を容易とするための具体例であり、本発明の技術的範囲はこれらの具体例によって制限されるものでない。
【0027】
(実施例1~3)
カーボンダイスに純度5N(99.999wt%)、平均粒径1μmのタングステン粉末を充填し、真空チャンバー内で、最高温度1600℃の条件にてHPを行った。その際に加えるHP荷重を240kgf/cm2とした。これによって得られたHP成形体について、さらに、表1に示す条件でHIP処理を行った。HIP処理を行った焼結体について形状加工を行い、直径400mm、厚さ6mmのスパッタリングターゲットとした。
【0028】
(実施例4)
カーボンダイスに純度5N(99.999wt%)、平均粒径1μmのタングステン粉末を充填し、真空チャンバー内で、最高温度1600℃の条件にてHPを行った。その際に加えるHP荷重を240kgf/cm2とした。これによって得られたHP成形体について、さらに、1400℃で、圧延回数6回、一回の圧延当たりの圧下率は4.2%とし、総圧下率を25%として圧延処理を行なった。
【0029】
(実施例5)
カーボンダイスに純度5N(99.999wt%)、平均粒径1μmのタングステン粉末を充填し、真空チャンバー内で、最高温度1600℃の条件にてHPを行った。その際に加えるHP荷重を240kgf/cm2とした。これによって得られたHP成形体について、さらに、1400℃で、圧延回数5回、一回の圧延当たりの圧下率は5.0%とし、総圧下率を25%として圧延処理を行なった。
【0030】
(実施例6)
カーボンダイスに純度5N(99.999wt%)、平均粒径1μmのタングステン粉末を充填し、真空チャンバー内で、最高温度1600℃の条件にてHPを行った。その際に加えるHP荷重を240kgf/cm2とした。これによって得られたHP成形体について、さらに、1700℃で、圧延回数4回、一回の圧延当たりの圧下率は3.8%とし、総圧下率を15%として圧延処理を行なった。
【0031】
(比較例1~3)
カーボンダイスに純度5N(99.999wt%)、平均粒径1μmのタングステン粉末を充填し、真空チャンバー内で、表1に示す最高温度条件にてHPを行った。その際に加えるHP荷重を240kgf/cm2とした。これによって得られたHP成形体について、さらに、表1に示す条件でHIP処理を行った。HIP処理を行った焼結体について形状加工を行い、直径400mm、厚さ6mmのスパッタリングターゲットとした。
【0032】
(比較例4)
カーボンダイスに純度5N(99.999wt%)、平均粒径1μmのタングステン粉末を充填し、真空チャンバー内で、最高温度1200℃の条件にてHPを行った。その際に加えるHP荷重を240kgf/cm2とした。これによって得られたHP成形体について、さらに、1400℃で、圧延回数8回、一回の圧延当たりの圧下率は11.3%とし、総圧下率を90%として圧延処理を行なった。
【0033】
得られたタングステンスパッタリングターゲットについて以下のように測定した。
(不純物濃度)
炭素濃度は、各タングステンスパッタリングターゲットを粉砕したのち、試料を炭素分析装置[LECO社製、CSLS600]を用いて、不活性ガス溶融法により測定した。
酸素濃度は、上記試料を酸素・窒素同時分析装置[LECO社製、TC-600]を用いて、不活性ガス溶融法により測定した。
(タングステン結晶の平均粒径)
光学顕微鏡によって組織観察を実施した。観察・保存した組織写真で、粒子数N=200になるまで写真上に直線を引き、直線上に存在する粒子数(N≧200)と直線の総長さ(L)を用い、L/Nでその観察部位の平均粒径を算出した。
(相対密度)
本明細書で言及する相対密度は、実測密度と理論密度との比を指す。実測密度については、純水を溶媒として用いたアルキメデス法にて測定を行った値を指す。理論密度については、タングステン含有量100%のときの理論密度を用いる。
【0034】
さらに、実施例1~6及び比較例1~4で作製したタングステン焼結体ターゲットを用いて、シリコン基板上にArガスを使用してスパッタリングによりタングステン膜を形成し、以下のように膜の炭素濃度、酸素濃度、Ar濃度及び比抵抗を測定した。
(炭素濃度、酸素濃度、Ar濃度)
二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定した。測定装置はアルバック・ファイ社製のPHI ADEPT1010を用いた。尚、表1中の検出不能とは、SIMS法の検出限界値未満であることを意味する。
(比抵抗の測定方法)
KLA-Tencor社製、OMNIMAP RS75を用いて、ウエハ上の7点のシート抵抗を測定し、XRR(X線反射率測定)により測定した膜厚を乗じ、その平均値を膜の比抵抗とした。
【0035】
【0036】
実施例1~6において、タングステン結晶の平均粒径が100μmを超えるので、成膜時に膜中に取り込まれるAr原子が少なく、膜の比抵抗が低かった。
一方、比較例1~4のタングステン結晶の平均粒径が100μm以下であるため、成膜時に膜中に取り込まれるAr原子が多く、膜の比抵抗が高かった。