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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023076861
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】双極型蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/12 20060101AFI20230529BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
H01M10/12 K
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189847
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平 芳延
(72)【発明者】
【氏名】廣田 憲治
【テーマコード(参考)】
5H017
5H028
【Fターム(参考)】
5H017AA01
5H017EE02
5H028CC19
(57)【要約】
【課題】電解液に含有される硫酸による腐食が生じ当該腐食によるガスが発生することによってセルの膨張が発生しても、当該膨張に耐えうる剛性を備えるとともに、セル内部の気密性や機械的強度をも確保することを可能とする。
【解決手段】双極型蓄電池は、正極用集電板111aと正極用活物質層111bを有する正極111、負極用集電板112aと負極用活物質層112bを有する負極112、および正極111と負極112との間に介在する電解質層113を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材110と、複数のセル部材110を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材110の正極111の側および負極112の側の少なくとも一方を覆う基板121と、セル部材110の側面を囲う枠体122と、を含む空間形成部材120と、を有し、基板121を構成する辺のうち、互いに対向する2辺には、補強用部材124が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、
複数の前記セル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、前記セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、
を有し、
前記基板を構成する辺のうち、互いに対向する2辺には、補強用部材が設けられていることを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項2】
互いに対向する前記2辺は、前記セル部材が水平方向に積層される場合において天地方向を結ぶ2辺であることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項3】
前記基板を構成する辺のうち、互いに対向する前記2辺以外の辺についても前記補強用部材が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の双極型蓄電池。
【請求項4】
隣接する前記補強用部材の互いの間隔は、前記補強用部材が設けられる辺において、前記辺の両端部から辺の中央部に向けて次第に狭くなるように配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項5】
前記補強用部材が設けられる辺において、設けられる前記補強用部材のX方向、Y方向、或いは、Z方向の突出量は、当該辺の両端部に設けられる前記補強用部材からその中央部に設けられる前記補強用部材に向けて大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項6】
前記正極用集電体及び前記負極用集電体は、鉛又は鉛合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の双極型蓄電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、双極型蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用した発電設備が増えている。このような発電設備においては、発電量を制御することができないことから、蓄電池を利用して電力負荷の平準化を図るようにしている。すなわち、発電量が消費量よりも多いときには差分を蓄電池に充電する一方、発電量が消費量よりも小さいときには差分を蓄電池から放電するようにしている。上述した蓄電池としては、経済性や安全性等の観点から、鉛蓄電池が多用されている。このような従来の鉛蓄電池としては、例えば、下記特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載された鉛蓄電池では、額縁形をなす樹脂からなるフレーム(リム)の内側に、樹脂からなる基板(バイポーラプレート)が取り付けられている。基板の一方面及び他方面には、正極用鉛層及び負極用鉛層が設けられている。正極用鉛層には、正極用活物質層が隣接している。負極用鉛層には、負極用活物質層が隣接している。また、額縁形をなす樹脂からなるスペーサの内側には、電解液を含有するガラスマット(電解層)が配設されている。そして、フレームとスペーサとが交互に複数積層されて組み付けられている。
【0004】
さらに正極用鉛層と負極用鉛層とは、基板に複数形成された穿孔の内部で直接的に接合されている。すなわち、特許文献1に記載の鉛蓄電池は、一方面側と他方面側とを連通させる穿孔(連通孔)を有する基板とセル部材とが交互に複数積層された双極(バイポーラ)型鉛蓄電池である。セル部材は、正極用鉛層に正極用活物質層を設けた正極と、負極用鉛層に負極用活物質層を設けた負極と、正極と負極との間に介在する電解層と、を有し、一方のセル部材の正極用鉛層と他方のセル部材の負極用鉛層とが基板の穿孔の内部に没入して接合されることにより、セル部材同士が直列に接続されたものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6124894号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、上記のようなバイポーラ型鉛蓄電池においては、電解液に含有される硫酸によって正極用鉛層が腐食して正極用鉛層の表面に腐食生成物(二酸化鉛や硫酸鉛)の被膜が生成されることがある。この際にガスが発生するが、この発生したガスによってセル部材が収容される空間であるセルにおける圧力が高まり、セルが膨張する可能性がある。
【0007】
バイポーラ型鉛蓄電池の設置の仕方としては、セル部材同士が天地方向に積層されるような場合と、90度傾けた水平方向に積層されるような場合と、に大別される。いずれの場合も、電池の劣化等によりセルが膨張してしまうと、セルを構成する基板に非常に大きな力が掛かることになる。そして、基板が当該力に耐えられなくなってしまうと、基板の損傷を招く可能性がある。
【0008】
このように基板が損傷すると、セル部材を保持しておくことができなくなるため、正極用活物質層の脱落だけではなく、セル部材を構成する各部が移動することによる正極側と負極側との短絡等が生ずる可能性があり、正常な電圧を維持することができず電池の性能低下、信頼性の低下を招来しかねない。
【0009】
本発明は、例えば電解液に含有される硫酸による腐食が生じ当該腐食によるガスが発生することによってセルの膨張が発生しても、このような膨張に耐えうる剛性を備えるとともに、セル内部の気密性や機械的強度をも確保することを可能とする双極型蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電板と正極用活物質層を有する正極、負極用集電板と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極の側および負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、を有し、基板を構成する辺のうち、互いに対向する2辺には、補強用部材が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電板と正極用活物質層を有する正極、負極用集電板と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極の側および負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、を有し、基板を構成する辺のうち、互いに対向する2辺には、補強用部材が設けられている。このような構成を採用することによって、例えば電解液に含有される硫酸による腐食が生じ当該腐食によるガスが発生することによってセルの膨張が発生しても、このような膨張に耐えうる剛性を備えるとともに、セル内部の気密性や機械的強度をも確保することを可能とする双極型蓄電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池の構造を示す断面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る双極型蓄電池におけるバイポーラプレートの構造を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る双極型蓄電池におけるバイポーラプレートの別の構造を示す斜視図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る双極型蓄電池におけるバイポーラプレートの別の構造を示す斜視図である。
図5図4に斜視図で示されるバイポーラプレートを平面で示した平面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態に係る双極型蓄電池におけるバイポーラプレートの別の構造を示す斜視図である。
図7図6に斜視図で示されるバイポーラプレートをM-M線で切断して示す拡大断面図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る双極型蓄電池におけるバイポーラプレートの構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施の形態は、本発明の一例を示したものである。また、これらの各実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。これらの各実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。なお、以下においては、様々な蓄電池の中から鉛蓄電池を例に挙げて説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
〔全体構成〕
まず、本発明の第1の実施の形態における双極型鉛蓄電池の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の構造を示す断面図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態の双極型鉛蓄電池100は、複数のセル部材110と、複数枚のバイポーラプレート(空間形成部材)120と、第1のエンドプレート(空間形成部材)130と、第2のエンドプレート(空間形成部材)140と、カバープレート170とを有する。
【0016】
ここで、図1ではセル部材110が3個積層された双極型鉛蓄電池100を示しているが、セル部材110の数は電池設計により決定される。また、バイポーラプレート120の数はセル部材110の数に応じて決まる。
【0017】
なお、以下においては、図1に示すように、セル部材110の積層方向をZ方向(図1でいえば上下方向)とし、Z方向に垂直な方向で且つ互いに垂直な方向をX方向およびY方向とする。
【0018】
セル部材110は、正極111、負極112、およびセパレータ(電解質層)113を備えている。正極111は、正極用集電体である正極用鉛箔111aと正極用活物質層111bとを有する。負極112は負極用集電体である負極用鉛箔112aと負極用活物質層112bとを有する。
【0019】
セパレータ113には電解液が含浸されている。セパレータ113は、正極111と負極112との間に介在している。セル部材110において、正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、セパレータ113、負極用活物質層112b、および負極用鉛箔112aは、この順に積層されている。
【0020】
正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法は、正極用活物質層111bのX方向およびY方向の寸法より大きい。同様に、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法は、負極用活物質層112bのX方向およびY方向の寸法より大きい。また、Z方向の寸法(厚さ)は、正極用鉛箔111aの方が負極用鉛箔112aより大きく(厚く)、正極用活物質層111bの方が負極用活物質層112bより大きい(厚い)。
【0021】
複数のセル部材110は、Z方向に間隔を開けて積層配置され、この間隔の部分にバイポーラプレート120の基板121が配置されている。すなわち、複数のセル部材110は、バイポーラプレート120の基板121を間に挟まれた状態で積層されている。
【0022】
このように、複数枚のバイポーラプレート120と第1のエンドプレート130と第2のエンドプレート140は、複数のセル部材110を個別に収容する複数の空間(セル)Cを形成するための空間形成部材である。
【0023】
すなわち、バイポーラプレート120は、セル部材110の正極側および負極側の両方を覆い、平面形状が長方形の基板121と、セル部材110の側面を囲うとともに基板121の4つの端面を覆うに枠体122と、を含む空間形成部材である。
【0024】
また、図1に示すように、バイポーラプレート120は、さらに基板121の両面から垂直に突出する柱部123を備える。当該基板121の各面から突出する柱部123の数は一つであってもよいし、複数であってもよい。
【0025】
Z方向において、枠体122の寸法は基板121の寸法(厚さ)より大きく、柱部123の突出端面間の寸法は枠体122の寸法と同じである。そして、複数のバイポーラプレート120が枠体122および柱部123同士を接触させて積層されることにより、基板121と基板121との間に空間Cが形成され、互いに接触する柱部123同士により、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0026】
正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部123を貫通させる貫通穴111c,111d,112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0027】
バイポーラプレート120の基板121は、板面を貫通する複数の貫通穴121aを有する。基板121の一方の面に第1の凹部121bが、他方の面に第2の凹部121cが形成されている。第1の凹部121bのZ方向の深さは第2の凹部121cのZ方向の深さより深い。第1の凹部121bおよび第2の凹部121cのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0028】
バイポーラプレート120の基板121は、Z方向で、隣り合うセル部材110の間に配置されている。そして、バイポーラプレート120の基板121の第1の凹部121bに、鉛又は鉛合金からなる正極用集電体である正極用鉛箔111aが配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121の第2の凹部121cに、鉛又は鉛合金からなる負極用集電体である負極用鉛箔112aが配置されている。
【0029】
具体的には、正極用鉛箔111aは、基板121の第1の凹部121bと正極用鉛箔111aの間に設けられる接着剤150を介して基板121の第1の凹部121bに接合されている。また、負極用鉛箔112aは、基板121の第2の凹部121cと負極用鉛箔112aの間に設けられる接着剤150を介して基板121の第2の凹部121cに接合されている。
【0030】
そして、バイポーラプレート120の基板121の貫通穴121aに導通体160が配置され、導通体160の両端面は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aと接触し、結合されている。すなわち、導通体160により正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとが電気的に接続されている。その結果、複数のセル部材110の全てが電気的に直列に接続されている。
【0031】
なお、正極及び負極をつなぎセル部材110同士を接続する方法として、上述した導通体160を用いる他、例えば、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aとを、基板121に複数形成された貫通穴121aの内部で直接的に接合される方法を採用することもできる。
【0032】
正極用鉛箔111aの外縁部には、当該外縁部を覆うためのカバープレート170が設けられている。このカバープレート170は、薄板状の枠体で、長方形の内形線および外形線を有する。そして、カバープレート170の内縁部が正極用鉛箔111aの外縁部と重なり、カバープレート170の外縁部が基板121の一面の第1の凹部121bの周縁部と重なっている。
【0033】
すなわち、カバープレート170の内形線をなす長方形は、正極用活物質層111bの外形線をなす長方形より小さく、カバープレート170の外形線をなす長方形は、第1の凹部121bの開口面をなす長方形より大きい。
【0034】
接着剤層150は、正極用鉛箔111aの端面から第1の凹部121bの開口側の周縁部まで回り込んで、カバープレート170の内縁部と正極用鉛箔111aの外縁部との間に配置される。また接着剤層150は、カバープレート170の外縁部と基板121の一面との間にも配置されている。
【0035】
すなわち、カバープレート170は接着剤層150により、基板121の一面の第1の凹部121bの周縁部と正極用鉛箔111aの外縁部とに亘って固定されている。これにより、正極用鉛箔111aの外縁部は、第1の凹部121bの周縁部との境界部においてもカバープレート170で覆われている。
【0036】
また、バイポーラプレート120の基板121の第2の凹部121cに、セル部材110の負極用鉛箔112aが接着剤層150を介して配置されている。なお、図1では示していないが、負極用鉛箔112aの外縁部も正極用鉛箔111aの外縁部を覆っているカバープレート170と同様のカバープレートで覆われていても良い。
【0037】
次に、本発明の実施の形態におけるバイポーラプレート120について、さらに説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池100におけるバイポーラプレート120の構造を示す斜視図である。本発明の実施の形態におけるバイポーラプレート120には、補強用部材124が設けられている。
【0038】
なお、図2のバイポーラプレート120の斜視図において手前側に見えているのが、基板121の正極側である一方の面である。一方、負極側の他方の面については図2においては見えていない。従って、以下においては補強用部材124が基板121の正極側に設けられた例を挙げて説明する。また、図2に示すバイポーラプレート120においては、基板121に設けられている貫通穴121aの描画を省略している。
【0039】
さらに、図2に示すバイポーラプレート120の向きは、セル部材110同士が水平方向に積層されるような場合の向きを示している。そこでこの向きにおいてX方向が天地方向に該当するため、以下の説明の便宜上、図2に示す斜視図のバイポーラプレート120を構成する4辺のうち上部の辺を上辺、下部の辺を下辺と表す。そして、バイポーラプレート120の基板121に向かって左側の辺を左辺、右側の辺を右辺と表す。
【0040】
図2に示すバイポーラプレート120には、上述したような基板121、枠体122、及び、柱部123が設けられている。また、柱部123を囲むように描かれている線の内側はその外側より低くなっており、この領域が正極用鉛箔111aが設けられる第1の凹部121bである。そしてさらに、本発明の実施の形態におけるバイポーラプレート120には補強用部材124が設けられている。
【0041】
補強用部材124は、基板121を構成する4辺のうち、互いに対向する2辺に設けられている。図2に示されているバイポーラプレート120では、Y方向において互いに対向する2辺である左辺及び右辺に、それぞれX方向に補強用部材124が設けられている。
【0042】
当該補強用部材124のX方向における配置位置は、最も上辺に近い補強用部材124と最も下辺に近い補強用部材124が、それぞれ第1の凹部121bをY方向に画する位置と概ね同じ位置に配置されている。そして、これらの間において複数の補強用部材124が概ね等間隔に設けられている。
【0043】
補強用部材124は、図2に示されているように、概ね直方体に形成されている。このうち、まず、補強用部材124のY方向の突出量は、枠体122から第1の凹部121bの周縁部近傍までとなる。
【0044】
具体的には、補強用部材124の一端は枠体122に接している。そして他端は、第1の凹部121bの周縁部近傍であって、カバープレート170が設けられた際に、当該カバープレート170の外形線が当該補強用部材124の他端に近接する位置である。
【0045】
補強用部材124のY方向の突出量について、このように設定することによって、カバープレート170をその機能を損なわず、しかも補強用部材124に接触することなく設けることができる。
【0046】
次に、補強用部材124のZ方向の突出量であるが、本発明の実施の形態における補強用部材124においては、図1に示されているように、正極用鉛箔111aと正極用活物質層111bとの接触面から正極用活物質層111bとセパレータ113との接触面までの距離が当該突出量となる。
【0047】
なお、本発明の実施の形態における補強用部材124のY方向及びZ方向の突出量については上述した通りであるが、突出量としては、これらの値に限定されるものではなく、X方向、Y方向、Z方向の突出量をそれぞれ設定することができる。
【0048】
まずX方向への突出量について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態に係る双極型蓄電池100におけるバイポーラプレート120の別の構造を示す斜視図である。ここでのバイポーラプレート120Aにおける補強用部材124Aは、図3に示すように個々の補強用部材124AのX方向の突出量が異なるように設定されている。
【0049】
図3に示すバイポーラプレート120Aでは、図2に示すバイポーラプレート120と同様、左辺及び右辺において上辺から下辺にわたり、X方向に複数の補強用部材124Aが設けられている。ここで左辺と右辺それぞれに設けられている補強用部材124Aの配置位置、突出量についてはいずれも同じであるので、左辺を例に挙げて説明する。
【0050】
図3に示すバイポーラプレート120Aでは、左辺に設けられている全ての補強用部材124Aの中で中央部に設けられている補強用部材124Aの3つがX方向への最も大きな突出量を備えている。そして、その両側、すなわち、最も上辺側に設けられる当該補強用部材124Aに隣接する3つの補強用部材124A、及び、最も下辺側に設けられる当該補強用部材124Aに隣接する3つの補強用部材124Aは、いずれもX方向への突出量は同じである一方、上述した中央部に設けられている補強用部材124AのX方向の突出量よりは小さな突出量とされている。
【0051】
さらにその外側、すなわち、上述した9つの補強用部材124Aから見て上辺寄りの3つの補強用部材124A、下辺寄りの3つの補強用部材124Aについては、X方向の突出量はさらに小さくなるように形成されている。そして最も上辺、或いは、下辺に近い1つの補強用部材124Aは、左辺に設けられている補強用部材124Aの中で最もX方向への突出量が小さくなるように形成されている。
【0052】
すなわち、図3に示すバイポーラプレート120Aの左辺及び右辺に設けられている補強用部材124Aは、中央部から上辺、或いは、下辺に向かうにつれてX方向への突出量が小さくなるように形成されている。このように補強用部材124Aを形成、配置することによって、左辺及び右辺の中央部におけるバイポーラプレート120Aの強度を高めることができる。
【0053】
次にY方向への突出量について図2で説明した補強用部材124とは異なる補強用部材124Bについて、図4及び図5を用いて説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態に係る双極型蓄電池100におけるバイポーラプレート120の別の構造を示す斜視図である。また、図5は、図4に斜視図で示されるバイポーラプレート120Bを平面で示した平面図である。
【0054】
バイポーラプレート120Bの左辺、或いは、右辺に設けられる補強用部材124Bは、隣接する補強用部材124BにおいてY方向への突出量が異なる。この点について、図5に示すバイポーラプレート120Bを例に挙げて説明する。
【0055】
図5では、バイポーラプレート120Bの一方の面、すなわち、正極用鉛箔111aが設けられる面が正面に見えている。そのため、中央に柱部123、その周囲に正極用鉛箔111aが設けられる第1の凹部121bが形成されている。そしてその左辺及び右辺にそれぞれ補強用部材124Bが設けられている。
【0056】
ここでバイポーラプレート120Bの左辺及び右辺に設けられる補強用部材124BのY方向への突出量は、図5に示されているように、左辺、或いは、右辺のいずれの辺においても同じように形成されている。そこで右辺を例に挙げると、右辺に設けられている補強用部材124BのY方向への突出量は、図5に一点鎖線R1で示すように、右辺の中央部から上辺、或いは、下辺に向けて円弧を描くように変化している。
【0057】
すなわち、右辺における中央部に設けられる補強用部材124BのY方向の突出量が最も大きく、中央部から上辺、或いは、下辺に近づくに従って、補強用部材124BのY方向への突出量は次第に小さくなる。一方、補強用部材124BのZ方向の突出量はいずれも同じである。
【0058】
このように、左辺、或いは、右辺に設けられる補強用部材124Bの形状は、いずれの補強用部材124BのZ方向の突出量は同じであるものの、Y方向への突出量が中央部から上辺、或いは、下辺に近づくに従って小さくなるように形成されている。そのため、左辺及び右辺の中央部におけるバイポーラプレート120Bの強度を高めることができる。
【0059】
なお、このようにバイポーラプレート120Bの一方の面の左辺及び右辺には、上述したように補強用部材124Bが設けられている。そして当該バイポーラプレート120Bにおいては、他方の面にも補強用部材124Bが設けられている。図5の平面図においては、左辺及び右辺に設けられる一方の面における補強用部材124Bの間に入るように、他方の面に設けられる補強用部材124Bが破線で示されている。
【0060】
さらにZ方向への突出量について図2で説明した補強用部材124とは異なる補強用部材124Cについて、図6及び図7を用いて説明する。図6は、本発明の第1の実施の形態に係る双極型蓄電池100におけるバイポーラプレート120の別の構造を示す斜視図である。また、図7は、図6に斜視図で示されるバイポーラプレート120CをM-M線で切断して示す拡大断面図である。
【0061】
図6に示すように、バイポーラプレート120Cの左辺及び右辺には、上辺から下辺の間に補強用部材124Cが設けられている。これらの補強用部材124Cは、いずれもX方向及びY方向における突出量は同じとなるように形成されている。一方Z方向の突出量については、異なるように形成されている。
【0062】
図7に示すバイポーラプレート120BをM-M線で切断して示す拡大断面図を見ると、このことが明らかである。なお、図7の拡大断面図において、上側が上辺、下側が下辺である。
【0063】
すなわち、補強用部材124Cは、バイポーラプレート120CのX方向中央部においてZ方向の突出量が最大になり、当該中央部から上辺、或いは、下辺に向かうにつれてその突出量は小さくなるように形成されている。この状態が一点鎖線R2によって示されている。
【0064】
このようにバイポーラプレート120Cの中央部においてZ方向の突出量が最大となるようにそれぞれの補強用部材124Cの形状を定めて設けることによって、左辺及び右辺の中央部におけるバイポーラプレート120Cの強度を高めることができる。
【0065】
なお、図7からも明らかなように、補強用部材124Cは、正極用鉛箔111aが設けられる一方の面(第1の凹部121b)側のみならず、負極用鉛箔112aが設けられる他方の面(第2の凹部121c)側にも設けられている。また、その配置位置は、一方の面に設けられる補強用部材124Cと他方の面に設けられる補強用部材124Cとが基板121を挟んで重複しないように、互い違いとなるように設けられている。
【0066】
なお、ここまで図2ないし図7を用いて様々な形状、配置の補強用部材124ないし124Cについて説明してきた。いずれも左辺及び右辺に設けられる形状、配置は同じであるとしたが、左辺と右辺とで形状等が異なる補強用部材124を選択しても良い。
【0067】
さらに、上辺及び下辺に設けられる補強用部材124については、これまで図2ないし図7に示す通り、いずれも同じ形状、同じ位置に配置されている。但し、このような形状等に限定されるわけではなく、それぞれの図面を用いて説明した、左辺、或いは、右辺と同様の形状等もって設けられていても良い。
【0068】
さらに例えば、Y方向の突出量について、補強用部材124の他端が必ずしもカバープレート170の外形線に近接する位置に配置されなくても良い。また図2に示すバイポーラプレート120では、全ての補強用部材124についてのY方向の突出量が一様であるが、このような形態に拘わらず、例えば、設けられる補強用部材124ごとに長さを変化させることも可能である。
【0069】
さらにZ方向の突出量についても、正極用鉛箔111aと正極用活物質層111bとの接触面から正極用活物質層111bとセパレータ113との接触面を超えて概ねセパレータ113のZ方向中程までの距離とすることも可能である。
【0070】
また、当該Z方向の突出量については、正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとの厚みの差を考慮して、基板121の一方の面に設けられる補強用部材124と他方の面に設けられる補強用部材124とで異なるように設定することもできる。
【0071】
すなわち例えば、負極側の他方の面に設けられる補強用部材124のZ方向の突出量よりも正極側の一方の面に設けられる補強用部材124のZ方向の突出量の方が大きくなるように、それぞれの補強用部材124を形成することができる。このことによって、上述したような、硫酸によって正極用鉛箔111aの表面に腐食生成物の被膜が生成される際に生ずるガスによって基板121が変形する可能性を低減させることができる。
【0072】
また、バイポーラプレート120同士の接合が行われる場合を考えると、例えば後述する振動溶着が採用される場合、実施に当たって固定されるバイポーラプレート120と振動されるバイポーラプレート120とでは、固定されるバイポーラプレート120に設けられる補強用部材124のZ方向の突出量の方が、振動されるバイポーラプレート120のZ方向の突出量よりも大きくなるように形成することができる。
【0073】
このように、基板121の一方の面と他方の面とで、補強用部材124の形状、大きさ、配置位置等について、異ならせることが可能である。
【0074】
さらに、補強用部材124の形状についても、直方体ではなく、例えば、補強用部材124の他端から枠体122に接する一端に向けてZ方向の突出量が多くなるように傾斜が付けられているような形状を採用することも可能である。
【0075】
さらに、X方向に複数設けられる補強用部材124において、隣接する補強用部材124の間隔についても任意に設定することができる。また、X方向に配置される補強用部材124の上端の位置、下端の位置についても任意に設定することができる。
【0076】
図2に示すように、本発明の実施の形態におけるバイポーラプレート120においては、左辺と右辺において多数の補強用部材124が設けられている。一方上辺と下辺においては、それぞれ2つ、3つと、左辺及び右辺に比べて少ない数しか設けられていない。これはバイポーラプレート120の左辺、右辺における剛性を確保するためであるが、この点については、上述した双極型鉛蓄電池100の設置方向とも関係する。
【0077】
すなわち、例えば、双極型鉛蓄電池100が設置される場合、バイポーラプレート120が図2に示すような向きとなるように設置される場合を例に挙げる。この場合、バイポーラプレート120の下辺は天地方向の地に位置し、地面等に接する接地面となる。
【0078】
また、双極型鉛蓄電池100の上部には、突出する端子をつなぐための機器等、当該双極型鉛蓄電池100に設けられる様々な機器が配置される。従って、バイポーラプレート120の上辺近傍においては機器が設置されるために剛性が確保されやすい。
【0079】
さらに、後述するような電解液の注入穴を設ける必要があるが、この注入穴を設けるに当たって上辺に補強用部材124が設けられていると設置が困難になるとともに、当該注入穴をもって剛性を確保することも考えられる。
【0080】
一方、バイポーラプレート120における左辺及び右辺においてはこのような剛性確保の機会が考えにくいため、上辺や下辺に比べて強度的に低くなってしまう可能性がある。そのため、上述したようなセルが膨張し、基板に非常に大きな力が掛かってしまった場合に、左辺、或いは、右辺近傍においてバイポーラプレート120が損傷してしまいかねない。そこで、特に左辺及び右辺における剛性を確保するべく、図2に示されるように、補強用部材124は、主にバイポーラプレート120の左辺、右辺に設けられる。
【0081】
なおこのことは、上辺、或いは、下辺に補強用部材124を設けない、ということではなく、図2のバイポーラプレート120に示されているように、上辺及び下辺においても補強用部材124を設けることができる。
【0082】
すなわち、上辺及び下辺に設けられる補強用部材124の数、隣接する補強用部材124の間隔については、左辺、或いは、右辺に設けられる補強用部材124の数よりも少なく、隣接する補強用部材124の間隔についても広くなるように配置されている。
【0083】
バイポーラプレート120を構成する基板121、枠体122、柱部123及び補強用部材124は、一体に、例えば、熱可塑性樹脂で形成されている。バイポーラプレート120を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリプロピレンが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、成形性に優れているとともに耐硫酸性にも優れている。よって、バイポーラプレート120に電解液が接触したとしても、バイポーラプレート120に分解、劣化、腐食等が生じにくい。
【0084】
図1に戻り、第1のエンドプレート130は、セル部材110の正極側を覆う基板131と、セル部材110の側面を囲う枠体132と、を含む空間形成部材である。また、基板131の一面(最も正極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部133を備える。
【0085】
基板131の平面形状は長方形であり、基板131の4つの端面が枠体132で覆われ、基板131と枠体132と柱部133が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板131の一面から突出する柱部133の数は1つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部133と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0086】
Z方向において、枠体132の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、柱部133の突出端面間の寸法は枠体132の寸法と同じである。そして、第1のエンドプレート130は、最も外側(正極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体132および柱部133を接触させて積層される。
【0087】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第1のエンドプレート130の基板131との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第1のエンドプレート130の柱部133とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0088】
最も外側(正極側)に配置されるセル部材110の正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、およびセパレータ113には、柱部133を貫通させる貫通穴111c,111d,113aがそれぞれ形成されている。
【0089】
第1のエンドプレート130の基板131の一面に凹部131bが形成されている。凹部131bのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0090】
第1のエンドプレート130の基板131の凹部131bに、セル部材110の正極用鉛箔111aが接着剤層150を介して配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121と同様に、カバープレート170が接着剤層150により基板131の一面側に固定され、正極用鉛箔111aの外縁部が、凹部131bの周縁部との境界部においてもカバープレート170で覆われている。
【0091】
また、第1のエンドプレート130は、凹部131b内の正極用鉛箔111aと電気的に接続された、図1では図示されていない正極端子を備えている。
【0092】
第2のエンドプレート140は、セル部材110の負極側を覆う基板141と、セル部材110の側面を囲う枠体142と、を含む空間形成部材である。また、基板141の一面(最も負極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部143を備える。
【0093】
基板141の平面形状は長方形であり、基板141の4つの端面が枠体142で覆われ、基板141と枠体142と柱部143が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板141の一面から突出する柱部143の数は一つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部143と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0094】
Z方向において、枠体142の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、二つの柱部143の突出端面間の寸法は枠体142の寸法と同じである。そして、第2のエンドプレート140は、最も外側(負極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体142および柱部143を接触させて積層される。
【0095】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第2のエンドプレート140の基板141との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第2のエンドプレート140の柱部143とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0096】
最も外側(負極側)に配置されるセル部材110の負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部143を貫通させる貫通穴112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0097】
第2のエンドプレート140の基板141の一面に凹部141bが形成されている。凹部141bのX方向およびY方向の寸法は、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0098】
第2のエンドプレート140の基板141の凹部141bに、セル部材110の負極用鉛箔112aが接着剤層150を介して配置されている。また、第2のエンドプレート140は、凹部141b内の負極用鉛箔112aと電気的に接続された、図1では図示されていない負極端子を備えている。
【0099】
第1のエンドプレート130及び第2のエンドプレート140の構造については以上の通りであるが、第1のエンドプレート130及び第2のエンドプレート140においても、上述した補強用部材が設けられていても良い。図1に示すように、本発明の実施の形態における第1のエンドプレート130には補強用部材134が、第2のエンドプレート140には補強用部材144が設けられている。
【0100】
ここで、隣接するバイポーラプレート120同士、第1のエンドプレート130と隣接するバイポーラプレート120、或いは、第2のエンドプレート140と隣接するバイポーラプレート120との接合の際には、例えば、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着といった、各種溶着の方法を採用することができる。このうち振動溶着は、接合の際に接合の対象となる面を加圧しながら振動させることで溶着するものであり、溶着のサイクルが早く、再現性も良い。そのためより好適には、振動溶着が用いられる。
【0101】
なお、溶着の対象としては、互いに隣接するバイポーラプレート120、第1のエンドプレート130、第2のエンドプレート140において対向する位置に配置される枠体のみならず、各柱部も含まれる。
【0102】
また、図面には示されていないが、枠体が有する四つの端面のうちの一つの端面には、空間Cに電解液を入れるための注入穴を形成する切り欠き部が形成されている。この切り欠き部は、例えば図面右側に存在する枠体の側面に形成されている場合、枠体をX方向に貫通し、枠体のZ方向の両端面から半円弧状に凹む形状を有する。そして、この切り欠き部は上述の接合構造に関与せず、振動溶接により上述の接合構造が形成される際に、対向する切り欠き部によって円形の注入穴が形成される。
【0103】
〔製造方法〕
この実施の形態の双極型鉛蓄電池100は、例えば、以下に説明する各工程を有する方法で製造することができる。なお、ここで用いられるバイポーラプレート120、第1のエンドプレート130及び第2のエンドプレート140には、上述したように補強用部材124,134,144が設けられている。
【0104】
<正負極用鉛箔付きバイポーラプレートの作製工程>
先ず、バイポーラプレート120の基板121を、第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置き、第1の凹部121bに接着剤150を塗布し、第1の凹部121b内に正極用鉛箔111aを入れる。その際に、正極用鉛箔111aの貫通穴111cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。この接着剤150を硬化させて、基板121の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける。
【0105】
次に、基板121の第2の凹部121c側を上に向けて作業台に置き、貫通穴121aに導通体160を挿入する。そして、第2の凹部121cに接着剤150を塗布し、第2の凹部121c内に負極用鉛箔112aを入れる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。この接着剤150を硬化させて、基板121の他面に負極用鉛箔112aを貼り付ける。
【0106】
次に、基板121の第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置き、正極用鉛箔111aの外縁部の上および第1の凹部121bの縁部となる基板121の上面に接着剤150を塗布し、その上にカバープレート170を載せて接着剤150を硬化させる。これにより、カバープレート170を、正極用鉛箔111aの外縁部の上とその外側に連続する基板121の部分(第1の凹部121bの周縁部)の上に亘って固定する。
【0107】
このとき、カバープレート170の外縁部は、バイポーラプレート120に設けられた補強用部材124に近接した位置に配置されることになるものの、補強用部材124によってカバープレート170の正極用鉛箔111aの外縁部等への固定が妨げられるわけではない。
【0108】
次に、抵抗溶接を行って、導通体160と正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとを接続する。これにより、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を得る。この正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を必要枚数だけ用意する。
【0109】
<正極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
第1のエンドプレート130の基板131を、凹部131b側を上に向けて作業台に置き、凹部131bに接着剤150を塗布し、凹部131b内に正極用鉛箔111aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、正極用鉛箔111aの貫通穴111cにエンドプレート130の柱部133を通す。この接着剤150を硬化させて、基板131の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける。
【0110】
次に、正極用鉛箔111aの外縁部の上および凹部131bの縁部となる基板131の上面に接着剤150を塗布し、その上にカバープレート170を載せて接着剤150を硬化させる。これにより、カバープレート170を、正極用鉛箔111aの外縁部の上とその外側に連続する基板131の部分の上に亘って固定する。これにより、正極用鉛箔付きエンドプレートを得る。
【0111】
なお、第1のエンドプレート130においても補強用部材134が設けられているが、カバープレート170の固定が当該補強用部材134によって妨げられるわけではない点は、バイポーラプレート120の作製工程において説明した通りである。
【0112】
<負極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
第2のエンドプレート140の基板141を、凹部141b側を上に向けて作業台に置き、凹部141bに接着剤150を塗布し、凹部141b内に負極用鉛箔112aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cに第2のエンドプレート140の柱部143を通す。この接着剤150を硬化させて、基板141の一面に負極用鉛箔112aが貼り付けられた第2のエンドプレート140を得る。
【0113】
第2のエンドプレート140にも補強用部材144が設けられているが、図1に示す双極型鉛蓄電池100においては、負極側にはカバープレート170は設けられない。従って、第2のエンドプレート140への負極用鉛箔112a等の積層において補強用部材144が障害となることはない。
【0114】
<プレート同士を積層して接合する工程>
先ず、正極用鉛箔111aおよびカバープレート170が固定された第1のエンドプレート130を、正極用鉛箔111aを上に向けて作業台に置き、カバープレート170の中に正極用活物質層111bを入れて正極用鉛箔111aの上に置く。その際に、正極用活物質層111bの貫通穴111dに第1のエンドプレート130の柱部133を通す。次に、正極用活物質層111bの上に、セパレータ113、負極用活物質層112bを置く。
【0115】
次に、この状態の第1のエンドプレート130の上に、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120の負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。その際に、バイポーラプレート120の柱部123を、セパレータ113の貫通穴113aおよび負極用活物質層112bの貫通穴112dに通して、第1のエンドプレート130の柱部133の上に載せるとともに、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122を載せる。
【0116】
この状態で、第1のエンドプレート130を固定し、バイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122が接合され、第1のエンドプレート130の柱部133の上にバイポーラプレート120の柱部123が接合される。
【0117】
その結果、第1のエンドプレート130の上にバイポーラプレート120が接合され、第1のエンドプレート130とバイポーラプレート120とで形成される空間Cにセル部材110が配置され、バイポーラプレート120の上面に正極用鉛箔111aが露出した状態となる。
【0118】
次に、このようにして得られた、第1のエンドプレート130の上にバイポーラプレート120が接合されている結合体の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せた後、さらに、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。
【0119】
この状態で、この結合体を固定し、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。この振動溶接工程を、必要な枚数のバイポーラプレート120が第1のエンドプレート130の上に接合されるまで続けて行う。
【0120】
最後に、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せた後、さらに、第2のエンドプレート140を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。
【0121】
この状態で、この結合体を固定し、第2のエンドプレート140を基板141の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、第2のエンドプレート140が接合される。
【0122】
<注液および化成工程>
上述の各プレート同士の積層、接合工程において、枠体の対向面同士の振動溶接による接合構造が形成され、対向する枠体の切り欠き部によって、双極型鉛蓄電池100の例えばX方向の一端面の各空間Cの位置に、円形の注入穴が形成されている。この注入穴から各空間Cの内部に電解液を所定量注液し、セパレータ113に電解液を含浸させる。その上で所定の条件で化成することで、双極型鉛蓄電池100を作製できる。
【0123】
なお、注入穴は、上述のように、予め枠体に切り欠き部を設けることで形成してもよいし、枠体の接合後にドリル等を用いて開けてもよい。
【0124】
以上説明したような補強用部材124が設けられたバイポーラプレート120を採用することによって、例えば電解液に含有される硫酸による腐食が生じ当該腐食によるガスが発生することによってセルの膨張が発生しても、このような膨張に耐えうる剛性を備えるとともに、セル内部の気密性や機械的強度をも確保することを可能とする双極型蓄電池を提供することができる。
【0125】
また、第1のエンドプレート130及び第2のエンドプレート140にもそれぞれ補強用部材134,144が設けられることによって、ガスの発生によるセルの膨張に耐えられるとともに、セル内部の気密性や双極型蓄電池全体の機械的強度もこれまで以上に確保することができる。
【0126】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0127】
第2の実施の形態におけるバイポーラプレート120Dには、第1の実施の形態において説明したように、補強用部材124Dが設けられている。但し、1辺における互いに隣接する補強用部材124D同士の間隔が第1の実施の形態における補強用部材124と異なる。
【0128】
すなわち、まず、図2に示す第1の実施の形態における補強用部材124は、左辺、或いは、右辺においてX方向に設けられているが、各辺において隣接する補強用部材124同士の間隔は概ね等しくなるように配置されている。
【0129】
これに対して、第2の実施の形態においてX方向に設けられる隣接する補強用部材124D同士の間隔は、その全てが概ね等間隔ではない点で異なる。すなわち、隣接する補強用部材124Dの互いの間隔は、補強用部材124Dが設けられる辺において、辺の両端部から辺の中央部に向けて次第に狭くなるように配置されている。
【0130】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る双極型蓄電池100におけるバイポーラプレート120Dの構造を示す斜視図である。図8に示されているように、1辺に設けられる補強用部材124Dについては、隣接する互いの補強用部材124D同士の間隔が、辺の両端部から辺の中央部に向けて次第に狭くなるように配置されている。
【0131】
具体的にバイポーラプレート120Dの下辺を例に挙げると、Y方向において、下辺の両端部である左辺、或いは、右辺からその中央部に向けて隣接する補強用部材124Dの配置間隔が次第に狭くなっている。従って、下辺中央部の補強用部材124D同士は密となるように配置されているが、下辺両端部近傍に設けられる補強用部材124Dは、中央部に比べて両端部にいくに従ってその間隔が広く、疎となるように配置されている。
【0132】
補強用部材124Dをこのように配置するのは、上述したように、例えば、バイポーラプレート120D同士を接合するに当たっては、例えば、振動溶着が用いられる。振動溶着が実施される場合、例えば、一方のバイポーラプレート120(以下、適宜「一方のプレート」と表す)を保持し、当該一方のプレートと接合される他方のバイポーラプレート120(以下、適宜「他方のプレート」と表す)を振動させる。
【0133】
この場合、例えば、図1におけるX方向にプレートが移動するように振動を加えると、他方のプレートがX方向に移動し、当該他方のプレートの枠体と接している一方のプレートの枠体との間でその接触面が溶融する。このように接触面が振動により溶融するため両プレートが接合されることになるが、移動しない一方のプレートの枠体の部分は他方のプレートの振動により揺さぶられることになる。
【0134】
特に、図1に示すように、隣接する2つのバイポーラプレート120,120におけるそれぞれの枠体122をみると、Z方向下側に配置されるバイポーラプレート120(上述した「一方のプレート」に該当)の枠体122のX方向の幅と当該バイポーラプレート120のZ方向上側に積層されるバイポーラプレート120(上述した「他方のプレート」に該当)の枠体122のX方向の幅とでは、後者の方が前者よりも長い。
【0135】
このような場合に、Z方向下側に配置される一方のプレートに該当するバイポーラプレート120を固定し、その上に配置される他方のプレートに該当するバイポーラプレート120を振動させると、一方のプレートの枠体の方が他方のプレートの枠体よりもその幅が狭いため、揺れやすくなる。
【0136】
上述したように、例えばX方向に振動が加えられた場合、一方のプレートにおいて最も揺れる(振動する)領域は、1つの辺の中央部である。図8に示すバイポーラプレート120Dの場合、上辺、及び、下辺におけるY方向中央部である。そして、当該中央部からY方向に離れるに従って、すなわち、左辺、或いは、右辺に近づくに従ってその揺れは小さくなる。
【0137】
そして、当該中央部のように、強い振動が掛かる領域においては、他方のプレートが揺れてしまうことで溶着に必要な圧力が掛からず力が逃げてしまう現象が生ずる可能性がある。このような現象が生ずると、一方のプレートと他方のプレートとが接合されたとしても、当該中央部の溶着の強度は、他の領域に比べて弱くなってしまう。
【0138】
そこで、図8のバイポーラプレート120Dに示すように、隣接する補強用部材124Dの互いの間隔は、補強用部材124Dが設けられる辺において、辺の両端部から辺の中央部に向けて次第に狭くなるように配置されている。
【0139】
従って、各辺においてこのような配置位置となるように補強用部材124Dを配置することによって、バイポーラプレート120の剛性を確保することができる。
【0140】
なお、このようにX方向に振動を加えた際、X方向に延びる辺、すなわち、左辺、及び、右辺においては、振動する他方のプレートによる固定されている一方のプレートに対する影響は小さく、振動の際の一方のプレートにおける剛性の確保にはあまり寄与しないものと思われる。
【0141】
しかしながら、そもそも例えば電解液に含有される硫酸による腐食が生じ当該腐食によるガスが発生することによってセルの膨張が発生しても、このような膨張に耐えうる剛性を確保する必要性からすれば、全ての辺において同様の配置間隔をもって補強用部材124Dを設ける必要がある。
【0142】
そして、図8に示すように全ての辺に補強用部材124Dを設けることによって、たとえセルが膨張したとしても、その応力をバイポーラプレート120D全体に均等に分散させることができ、バイポーラプレート120D全体の剛性を確保することに寄与することになる。
【0143】
また、振動溶着における振動方向を、X方向に振動する例を挙げて説明したが、もちろんY方向に振動させる場合も考えられ、この点からもバイポーラプレート120Dの全ての辺において、隣接する補強用部材124Dの互いの間隔が、補強用部材124Dが設けられる辺において、辺の両端部から辺の中央部に向けて次第に狭くなるように配置されている。
【0144】
以上説明したような補強用部材124Dが設けられたバイポーラプレート120Dを採用することによって、腐食によるガスが発生することによってセルの膨張が発生しても、このような膨張に耐えうる剛性を備えるとともに、セル内部の気密性や機械的強度をも確保することを可能とする双極型蓄電池を提供することができる。
【0145】
特に、複数のプレートを振動溶着によって接合する観点から、隣接する補強用部材124Dの互いの間隔が補強用部材124Dの設けられる辺において、辺の両端部から辺の中央部に向けて次第に狭くなるように補強用部材124Dを配置することによって、より必要な剛性を確保することができる。
【0146】
なお、図8に示すようにこれまで補強用部材124Dが配置されるバイポーラプレート120Dを例に挙げて説明してきたが、補強用部材124Dは、第1のエンドプレート130や第2のエンドプレート140に設けられていても良い。
【0147】
また、これまでは図8のバイポーラプレート120Dに示されている通り、隣接する補強用部材124Dの互いの間隔が補強用部材124Dの設けられる辺において、辺の両端部から辺の中央部に向けて次第に狭くなるように、補強用部材124Dが配置される例を挙げて説明した。
【0148】
但し、1辺において互いに隣接する補強用部材124Dが密に配置される領域と疎に配置される領域とを設けることも可能である。そして、1辺の中央部においては密となるように補強用部材124Dを等間隔に配置し、当該中央部以外の領域においては疎となるように補強用部材124Dを等間隔に配置することもできる。
【0149】
さらに上述したように、本発明の実施の形態においては双極型鉛蓄電池を例に挙げて説明した。但し、集電板に鉛ではなく他の金属を用いるような他の蓄電池においても上記説明内容が当てはまる場合には、当然その適用を排除するものではない。
【0150】
また、これまでは、例えば図2図8に示すように、バイポーラプレートが四角形であることを前提に説明を行ったが、バイポーラプレートの形状については、適宜任意の形状を採用することができ、採用された形状に応じて補強用部材が設けられる。
【符号の説明】
【0151】
100・・・双極型鉛蓄電池
110・・・セル部材
111・・・正極
112・・・負極
111a・・・正極用鉛箔
112a・・・負極用鉛箔
111b・・・正極用活物質層
112b・・・負極用活物質層
113・・・セパレータ
113A・・・第1のセパレータ
113B・・・第2のセパレータ
120,120D・・・バイポーラプレート
121・・・バイポーラプレートの基板
121a・・・基板の貫通穴
122・・・バイポーラプレートの枠体
123・・・柱部
124,124D・・・補強用部材
130・・・第1のエンドプレート
131・・・第1のエンドプレートの基板
132・・・第1のエンドプレートの枠体
140・・・第2のエンドプレート
141・・・第2のエンドプレートの基板
142・・・第2のエンドプレートの枠体
150・・・接着剤
160・・・導通体
170・・・カバープレート
C・・・セル(セル部材を収容する空間)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8