(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077147
(43)【公開日】2023-06-05
(54)【発明の名称】高圧印加装置、現像装置、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20230529BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20230529BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20230529BHJP
B41J 29/46 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G21/14
B41J29/38 301
B41J29/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190322
(22)【出願日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】丸山 弘明
【テーマコード(参考)】
2C061
2H270
【Fターム(参考)】
2C061AP04
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AS02
2C061HJ07
2C061HK11
2C061HK19
2C061HN15
2C061HV01
2C061HV44
2H270KA04
2H270KA32
2H270KA46
2H270LA01
2H270LA24
2H270LA28
2H270LA70
2H270LA75
2H270LA99
2H270LD05
2H270LD08
2H270NC01
2H270NC07
2H270RA10
2H270RA11
2H270RA12
2H270RA14
2H270RA27
2H270RB04
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC05
2H270ZC06
(57)【要約】
【課題】リーク間隔時間に因らず、適切な時間幅で異常として認識可能とする。
【解決手段】高圧印加装置30は、高圧電源HVPと、高圧電源HVPから負荷50への出力のリークLを検知する異常検知部38と、高圧電源HVPに接続される負荷50の状態に基づき出力の立ち上がり時間T3を計算し、立ち上がり時間T3に基づきリークLの発生間隔に係るリーク予測時間T4を算出する立ち上がり計算部34と、異常検知部38によりリークLが検知されたことを示すリーク検知信号Sと、立ち上がり計算部34により算出されたリーク予測時間T4に基づき、リークLの発生時間を累計する再検知を許容し、再検知が許容された場合の累計時間Tdが所定のしきい値時間Ttを超えたときにリークLが発生している異常と判断する判断部33と、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧電源と、
前記高圧電源から負荷への出力のリークを検知する異常検知部と、
前記高圧電源に接続される前記負荷の状態に基づき前記出力の立ち上がり時間を計算し、前記立ち上がり時間に基づき前記リークの発生間隔に係るリーク予測時間を算出する立ち上がり計算部と、
前記異常検知部により前記リークが検知されたことを示すリーク検知信号と、前記立ち上がり計算部により算出された前記リーク予測時間に基づき、前記リークが発生している異常と判断する判断部と、を有し、
前記判断部は、第1のリークが検知された後の所定期間内に第2のリークが発生した場合に、前記第1のリークと前記第2のリークとを連続リークと判定するリーク発生の再検知を許容し、前記再検知が許容された場合には、前記第1のリークに係る前記リーク検知信号の発生時間と、前記第2のリークに係る前記リーク検知信号の発生時間と累計して累計時間として算出し、前記第2のリークの検知後も前記所定期間内に次のリークが発生し、前記再検知が許容されている間は前記累計時間の算出を繰り返し、前記累計時間が所定のしきい値時間を超えたときに、前記リークが発生している異常と判断する、
高圧印加装置。
【請求項2】
前記高圧電源は、直流高圧電源であり、直流出力に併せて交流電圧を重畳出力可能である、または交流高圧電源に接続されている、請求項1に記載の高圧印加装置。
【請求項3】
前記立ち上がり計算部は、前記高圧電源に接続される負荷の抵抗・容量および前記高圧電源の出力電流値から、前記出力の立ち上がり時間を計算し、前記立ち上がり時間をリーク間隔時間とし、前記リーク間隔時間を中心として任意の幅の再検知領域を設定し、
前記判断部は、前記リーク検知信号が立ち上がり状態から一度立ち下がった後に、前記再検知領域において再度立ち上がったときに、前記再検知を許容する、
請求項1または2に記載の高圧印加装置。
【請求項4】
前記高圧電源は、出力電圧を検出してアナログ値としてモニタ可能な出力モニタ部を有し、
前記立ち上がり計算部は、前記高圧電源の制御信号を入力してから、前記出力モニタ部の電圧を読み取り、前記電圧の値が狙いの電圧となるまでの時間を前記立ち上がり時間として算出し、前記立ち上がり時間をリーク間隔時間とし、前記リーク間隔時間を中心として任意の幅の再検知領域を設定し、
前記判断部は、前記リーク検知信号が立ち上がり状態から一度立ち下がった後に、前記再検知領域において再度立ち上がったときに、前記再検知を許容する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の高圧印加装置。
【請求項5】
前記判断部は、前記高圧電源の前記出力を調整できる制御機能を有し、前記異常と判断した際に、前記制御機能により前記高圧電源の出力を下げる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の高圧印加装置。
【請求項6】
当該高圧印加装置の設置された環境温度及び環境湿度を検知する温湿度検知部を有し、
前記立ち上がり算出部は、前記温湿度検知部により検知された前記環境温度と前記環境湿度に基づき補正係数を決定し、前記算出した立ち上がり時間に前記補正係数を掛けて、前記立ち上がり時間を補正し、前記補正した立ち上がり時間に基づき前記リーク予測時間を算出する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の高圧印加装置。
【請求項7】
前記補正係数は、前記環境温度が低いほど高く設定され、前記環境湿度が高いほど低く設定される、
請求項6に記載の高圧印加装置。
【請求項8】
前記立ち上がり算出部は、前記高圧電源から出力が供給される負荷の経時度合いに基づき補正係数を決定し、前記算出した立ち上がり時間に前記補正係数を掛けて、前記立ち上がり時間を補正し、前記補正した立ち上がり時間に基づき前記リーク予測時間を算出する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の高圧印加装置。
【請求項9】
前記高圧電源に接続される負荷が複数ある場合、
前記補正係数は、前記複数の負荷のそれぞれに応じて個別に設定される、
請求項6~8のいずれか一項に記載の高圧印加装置。
【請求項10】
前記高圧電源に接続される負荷は、当該高圧印加装置が搭載される画像形成装置の帯電ローラ、現像ローラ、一次転写ローラ、斥力ローラ、クリーニングブラシローラのいずれかを含む、
請求項1~9のいずれか一項に記載の高圧印加装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の高圧印加装置と、
前記高圧電源に接続される負荷としての現像ローラと
を備える現像装置。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の高圧印加装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧印加装置、現像装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧電源装置を取り扱う場合、その高圧出力のリーク放電は、特に懸念すべき安全性の問題である。このリーク放電によって、紙粉や難燃性の低い部品が燃えたりする場合があるためである。このリークへの対策として、高圧電源の出力リークを検出した場合に異常を検知する手法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、リーク検知信号をCPUで記録・計時し、所定の時間Xを超えた場合に異常だと判断する技術が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の先行技術では、一発のリーク時間または異常時間を計時し、その計測時間によって、異常と判断するため、短い時間で計測できるものの、あくまで単発のリークや異常を計時している。そのため、複数リークでの検知をしたい場合や誤検知を防ぐために検知までの時間を冗長にしたい場合、対応できない問題があった。
【0005】
本発明は、リーク間隔時間に因らず、適切な時間幅で異常として認識可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一観点に係る高圧印加装置は、高圧電源と、前記高圧電源から負荷への出力のリークを検知する異常検知部と、前記高圧電源に接続される前記負荷の状態に基づき前記出力の立ち上がり時間を計算し、前記立ち上がり時間に基づき前記リークの発生間隔に係るリーク予測時間を算出する立ち上がり計算部と、前記異常検知部により前記リークが検知されたことを示すリーク検知信号と、前記立ち上がり計算部により算出された前記リーク予測時間に基づき、前記リークが発生している異常と判断する判断部と、を有し、前記判断部は、第1のリークが検知された後の所定期間内に第2のリークが発生した場合に、前記第1のリークと前記第2のリークとを連続リークと判定するリーク発生の再検知を許容し、前記再検知が許容された場合には、前記第1のリークに係る前記リーク検知信号の発生時間と、前記第2のリークに係る前記リーク検知信号の発生時間と累計して累計時間として算出し、前記第2のリークの検知後も前記所定期間内に次のリークが発生し、前記再検知が許容されている間は前記累計時間の算出を繰り返し、前記累計時間が所定のしきい値時間を超えたときに、前記リークが発生している異常と判断する。
【発明の効果】
【0007】
リーク間隔時間に因らず、適切な時間幅で異常として認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図1中の感光体周りの作像プロセス部分を拡大視した図
【
図5】従来のリーク検知手法の失敗例と対応策を示す図
【
図6】リーク間隔と立ち上がり時間との関係を示す図
【
図8】本実施形態におけるリーク検知処理の一例のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
[画像形成装置及び高圧印加装置の概略構成]
本実施形態に係る高圧印加装置30が適用される画像形成装置の一例として、電子写真方式の複写機16を例示して説明する。
図1は、実施形態に係る複写機16の概略構成図である。
【0011】
以下、複写機16の高圧電源HVPを印加することによる機能について説明する。
【0012】
図1に示す複写機16において、高圧電源HVPが印加される部品(負荷)は、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)用の帯電ローラ1Y、1M、1C、1K、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)用の現像ローラ3Y、3M、3C、3K、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)用の1次転写ローラ4Y、4M、4C、4K、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)用の感光体2Y、2M、2C、2Kをクリーニングする静電クリーニングブラシローラ5Y、5M、5C、5K、2次転写を行う斥力ローラ7、中間転写ベルト6をクリーニングするドラムクリーニングブラシローラ12、ブラシローラのトナーを回収する回収ローラ13、を含む。
【0013】
以下の説明では、これらの高圧電源が印加される複写機16の構成要素を纏めて「負荷50」とも表現する。
【0014】
感光体2Y、2M、2C、2Kは、それぞれ、所定の回転方向(
図1の例では反時計周り方向)に回転(走行)している。
【0015】
まず、高圧電源を帯電ローラ1Y、1M、1C、1Kに印加することで、それぞれ対向する感光体2Y、2M、2C、2Kは一様に帯電される。こうして感光体2Y、2M、2C、2K上には、帯電電位(-900V程度)が形成される。(帯電工程)
【0016】
この後、露光工程を通すことで、静電潜像が形成される。
【0017】
高圧電源を現像ローラ3Y、3M、3C、3Kに印加することで、露光工程によってできた静電潜像が現像されてトナー像が形成される。(現像工程)
【0018】
なお、本実施形態では、現像ローラ3Y、3M、3C、3Kを含む現像工程に係る要素を纏めて「現像装置」とも表現する。そして、現像装置では、例えば現像ローラ3Y、3M、3C、3Kが、高圧印加装置30によって高圧電圧が供給される負荷50となる。
【0019】
現像工程後、感光体2Y、2M、2C、2Kは、中間転写ベルト6との対向位置(1次転写ニップ)に達する。ここで、それぞれの対向位置には、中間転写ベルト6の内周面に当接するように1次転写ローラ4Y、4M、4C、4Kが設置されている。
【0020】
そして、高圧電源を1次転写ローラ4Y、4M、4C、4Kに印加することで、中間転写ベルト6上に、感光体2Y、2M、2C、2K上に形成された各色のトナー像が、順次重ねて転写される(1次転写工程)。
【0021】
そして、1次転写工程後の感光体ドラム2Y、2M、2C、2Kの表面は、それぞれ、クリーニング装置との対向位置に達する。そして、この位置で、高圧電源を静電クリーニングブラシローラ5Y、5M、5C、5Kに印加することで、感光体2Y、2M、2C、2K上に残存する未転写トナーが静電的に除去される。またその後、クリーニングブレードによっても感光体2Y、2M、2C、2K上に残存する未転写トナーが機械的に除去されて、除去された未転写トナーがクリーニング装置内に回収される(静電ハイブリッドクリーニング工程)。
【0022】
その後、感光体2Y、2M、2C、2Kの表面は、潤滑剤供給装置、除電装置の位置を順次通過して、感光体2Y、2M、2C、2Kにおける一連の作像プロセスが終了する。
【0023】
他方、感光体2Y、2M、2C、2K上の各色のトナーが重ねて転写(担持)された中間転写ベルト6は、
図1の例では時計周り方向に走行して、2次転写ローラ8との対向位置(2次転写ニップ)に達する。そして、2次転写ローラ8との対向位置で、中間転写ベルト6の内周面に当接するように設置されている斥力ローラ7に高圧電源を印加することで、シート(用紙)9上に中間転写ベルト6上に担持されたカラーのトナー像が転写される(2次転写工程)。
【0024】
その後、中間転写ベルト6の表面は、ドラムクリーニングブラシローラ12の位置に達する。 そして、この位置で、高圧電源をドラムクリーニングブラシローラ12に印加することで、中間転写ベルト6上に付着した未転写トナーがドラムクリーニングブラシローラ12上に吸着される。さらにドラムクリーニングブラシローラ12に対向するドラムクリーニング回収ローラ13に高圧電源を印加することで、ドラムクリーニングブラシローラ12上の吸着トナーが回収されて、中間転写ベルト6における一連の転写プロセスが終了する。
【0025】
ここで、中間転写ベルト6と2次転写ローラ8との間(2次転写ニップ)に搬送されるシート9は、給紙装置10から搬送されるものである。
図1には、給紙装置10からシート9が搬送される搬送経路14が示されている。
【0026】
フルカラー画像が転写されたシート9は、搬送ベルトによって定着装置11に導かれる。定着装置11では、定着ベルトと加圧ローラとのニップにて、カラー画像(トナー)がシート上に定着される。
【0027】
そして、定着工程後のシート9は、排紙ローラによって、複写機16の外部に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセス(画像形成動作)が完了する。
【0028】
図1に示すように、複写機16は、さらに電装ボックス15と、温湿度センサ17と、操作部18を備える。
【0029】
電装ボックス15は、CPU32を搭載した制御基板31を搭載する。制御基板31は、複写機16の内部に設置される高圧電源HVP(
図2、
図3など参照)に接続される。
【0030】
温湿度センサ17は、複写機16の内部の温度(環境温度)と湿度(環境湿度)を計測する。
【0031】
操作部18は、複写機16の動作に関する操作指令を受け付ける。操作部18としては、例えば
図1に示すようなタッチパネルを適用できる。ユーザは、操作部18のタッチパネルの画面を介して、設定や動作開始・終了の各種操作や、複写機16の状況確認などを行うことができる。
【0032】
そして、本実施形態では、画像形成装置としての複写機16の内部の負荷50への高圧電源の印加を制御するための高圧印加装置30を備える。
図2は、複写機16中の高圧印加装置30の機能ブロック図である。
図2に示すように、高圧印加装置30に係る要素として、上述の操作部18と、制御基板31と、温湿度センサ17に加えて、高圧電源HVPを備える。
【0033】
制御基板31と、この制御基板31に搭載されるCPU32とは、操作部18や高圧電源HVPの各種制御を行う制御部として機能する。CPU32は、本実施形態に係る高圧印加装置30の機能として、判断部33と、立ち上がり計算部34と、異常計時部35と、再検知計時部36と、を有する。
【0034】
判断部33は、高圧電源HVPの高圧制御部37に制御信号を送り、高圧電源HVPの出力や波形を制御する。また、異常計時部35や再検知計時部36での計時結果を、しきい値と比較し、異常の判断を実施する。また異常と判断した場合には、操作部18を通じて、ユーザに異常であることを伝える。本実施形態において検知される高圧電源からの出力の異常状態とは、火花放電に起因するリークL(
図4など参照)の発生である。
【0035】
立ち上がり計算部34は、高圧電源HVPの出力モニタ部39からのモニタ値を用いて、現在の負荷50における立ち上がり時間T3(
図6参照)を計算する。あるいは、事前に定格負荷による立ち上がり時間を記録しており、マシン内の温湿度センサ17の状況から補正テーブルに合わせた補正係数を掛け、立ち上がり時間T3を計算する。立ち上がり計算部34は、計算した立ち上がり時間T3に基づき、連続リークの間隔を示す「リーク予測時間T4」と、リーク予測時間T4の後の所定区間に亘ってリーク検知信号Sの再検知を許容する「再検知領域T5」とを算出する(
図7参照)。
【0036】
異常計時部35は、異常信号を受け取った際、その異常時間を計測する。その異常時間によって、瞬発的な異常かを判断し、しきい値(以下では「異常しきい値時間Tt」ともいう)よりも短い場合は異常と判断しない。しきい値を超えた場合、有効と扱う。以下では、「異常信号」を「リーク検知信号S」とも表記し、「異常時間」を「検知時間Td」とも表記する場合がある。
【0037】
再検知計時部36は、異常信号(リーク検知信号S)が立ち上がった場合に、計時を開始する。異常信号が立ち下がったとしても、立ち上がり計算部34で算出された再検知領域T5に計時時間T6(
図7参照)が入った場合、再度異常判定を行う。
【0038】
高圧電源HVPは、例えば直流高圧電源である。直流高圧電源は、直流出力に併せて交流電圧を重畳出力可能である。また、高圧電源HVPは、直流高圧電源が交流高圧電源に接続される構成でもよい。高圧電源HVPの制御系は、本実施形態に係る高圧印加装置30の機能として、には、高圧制御部37と、高圧発生部40と、異常検知部38と、出力モニタ部39と、を有する。
【0039】
高圧制御部37は、判断部33からの制御信号によって高圧出力をON/OFFあるいは大きさや波形の形を制御する。
【0040】
高圧発生部40は、高圧制御部37に従い、高圧出力を発生させる。
【0041】
異常検知部38は、高圧発生部40から負荷50への出力が異常状態になると、それを検知し、判断部33に異常信号を出力する。高圧電源からの出力の異常状態とは、火花放電に起因するリークL(
図4など参照)の発生である。
【0042】
出力モニタ部39は、高圧発生部40から負荷50への出力をモニタ(監視)し、その出力値や立ち上がり時間T3(
図6参照)を立ち上がり計算部34に出力する。
【0043】
制御基板31や高圧電源HVPの制御系は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)や、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶装置、入力デバイス、出力デバイス、通信デバイスなどを含むコンピュータシステムや回路基板として構成することができる。
【0044】
図2を参照して説明した制御基板31や高圧電源HVPの制御系の各機能は、CPU、RAM等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもとで通信デバイス、入力デバイス、出力デバイスなどを動作させるとともに、記憶装置におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0045】
次に、
図3を参照して、複写機16において高圧電源HVPの接続される負荷50の一部である、感光体2周りの1次転写工程までの作像プロセス部分についてさらに説明する。
図3は、
図1中の感光体2周りの1次転写工程までの作像プロセス部分を拡大視した図である。いずれの色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の感光体2Y、2M、2C、2K周りも同様の構成であるので、
図3ではこれらの感光体2Y、2M、2C、2Kを纏めて「感光体2」として図示している。同様に、
図1において文字Y、M、C、Kが付された符号1~5は、
図3では文字を除いて纏めて図示されている。
【0046】
また、
図3では、
図2に示した高圧電源HVPの一例として、帯電高圧電源1HVP、現像高圧電源3HVP、1次転写高圧電源4HVP、静電ハイブリッド高圧電源5HVPの4種類の高圧電源が例示されている。
【0047】
帯電高圧電源1HVPに、帯電ローラ1が負荷50として接続されている。帯電高圧電源1HVPには、
図1の電装ボックス15内の制御基板31と接続されており、CPU32によって制御されている。CPU32の命令に従い、帯電ローラ1に高圧を印加し、感光体2を帯電させる。
【0048】
ここで感光体2上に、接地された金属素管が剥き出しとなるような傷22があると、そこに過電流が流れ、リークLを起こす。そうなった場合、帯電高圧電源1HVPは異常検知信号を、CPU32に対して出力する。
【0049】
現像高圧電源3HVPに、現像ローラ3が負荷として接続されている。現像高圧電源3HVPには、
図1の電装ボックス15内の制御基板31と接続されており、CPU32によって制御されている。CPU32の命令に従い、現像ローラ3に高圧を印加し、レーザ19で書き込まれた静電潜像を現像させる。
【0050】
ここで現像ローラ3と、接地された現像ケース20との間に導電性異物21があると、そこに過電流が流れ、リークLを起こす。そうなった場合、現像高圧電源3HVPは異常検知信号を、CPU32に対して出力する。
【0051】
1次転写高圧電源4HVPに、1次転写ローラ4が負荷50として接続されている。1次転写高圧電源4HVPもまた、
図1の電装ボックス15内の制御基板31と接続されており、CPU32によって制御されている。
【0052】
ここで中間転写ベルト6上に穴が空いており、その穴が1次転写ローラ4と感光体2との間の位置に来た場合、過電流が感光体に流れ、リークLを起こす。この場合、1次転写高圧電源4HVPが異常検知信号をCPU32に対して出力する。
【0053】
静電ハイブリッド高圧電源5HVPに、静電クリーニングブラシローラ5が負荷50として接続されている。静電ハイブリッド高圧電源5HVPもまた、
図1の電装ボックス15内の制御基板31と接続されており、CPU32によって制御されている。
【0054】
ここで静電クリーニングブラシローラ5のブラシ毛が長時間の稼働などにより毛羽立ちが生じると、抵抗値が変動し、想定以上の過電流が感光体2に流れ、リークLを起こす。この場合、静電ハイブリッド高圧電源5HVPが異常検知信号をCPU32に対して出力する。
【0055】
図3では、高圧電源HVPが接続される負荷50の一例として、感光体2周りを拡大したが、同様に
図1に示した斥力ローラ7や、ドラムクリーニングブラシローラ12に対向するドラムクリーニング回収ローラ13でも、導電性異物21や中間転写ベルト6の傷22、導電性シートなどによって、複写機16の筐体(グランドGND)への経路ができると、リークLが発生する。
【0056】
本実施形態に係る高圧印加装置30は、このようなリークLの発生時に適切に異常を検知可能とするものである。
【0057】
[高圧印加装置の異常検知の仕組み]
図4~
図7を参照して、本実施形態に係る高圧印加装置30の異常(リーク)検知手法について説明する。
【0058】
図4は、従来のリーク検知手法の成功例を示す図である。
図4の(A)の縦軸は高圧電源HVPから負荷50への出力電圧、(B)の縦軸はリーク検知信号Sを示し、横軸は時間を示す。
図4の(C)はリーク検知信号Sの発生が継続する時間を示す「検知時間Td」の時間推移を示す。
【0059】
図4は、保持時間T2がリーク間隔時間T1より長く、適切に検知できている場合の一例を示す。ここで「保持時間T2」とは、リークLの発生後にリーク検知信号Sをオン状態に維持する時間をいい、この保持時間T2の間に次のリークLが発生した場合にリセットされ、再度リーク検知信号Sのオン状態が保持時間T2だけ継続される。
【0060】
図4では、(-)極性に出力されている。高圧電源HVPが使用される用途としては、コロナ放電による静電気を利用することが多い。本実施形態において検知される高圧電源HVPの異常とはリークである。本実施形態内のリークはコロナ放電ではなく、火花放電のことを指し、想定とは異なる経路へ電流が流れることを意味する。
【0061】
リーク開始電圧を超えると、リークLが生じる。リーク開始電圧は、パッシェンの法則によれば、距離と気圧によって決まる。通常は大気圧下を想定し、通常の使用では出得ない電圧となる距離が確保されており、通常リークLが起こることはない。しかし、
図3に例示したように異物や破損等によって、想定より近い距離に経路ができてしまうと、経路を通じてリークLが発生する。そして、一度発生するとその状況が改善されない限り、
図4(A)に示すように出力電圧が立ち上がっては、リーク開始電圧を上回り、リークすることを繰り返す(連続リーク)。経路距離が変わらなければリーク開始電圧も変わらないため、リーク間隔T1はほとんど一定である。連続リーク時には、リーク検知信号Sの保持時間T2中に再度リークLが発生すると継続して保持し続ける。そのため、
図4(B)に示すようにリーク検知信号Sも出力し続ける。リーク検知信号Sが連続していることで、
図4(C)に示すように所定時間(異常しきい値時間Tt)を越え、異常を認識することができる。
【0062】
図5は、従来のリーク検知手法の失敗例と対応策を示す図である。
図5の(A)、(B)、(C)の各図の概要は、
図4と同様である。
【0063】
図5(A)に示すように、保持時間T2を超える時間間隔のリークLが連続で発生した場合(すなわち、リーク間隔時間T1が保持時間T2より長くなる場合)には、
図5(B)に示すように保持時間T2の区間内に次のリークLが発生せずにリーク検知信号Sが立ち下がってしまう。このため
図5(C)に示すように検知時間Tdも所定時間(異常しきい値時間Tt)を下回り、異常と認識できない。
【0064】
このような問題を解決するために、
図5(B´)に示すように保持時間T2´を単純に伸ばす対応が考えられる。しかしこの例の場合、
図5(C´)に示すように保持時間T2´が完了するまで異常と判定できないため、異常と判定できるまでの検知時間Tdも長くなってしまい、異常検出のタイミングが遅れ、実際に検知したい時間で検知ができない。
【0065】
図6は、リーク間隔T1と立ち上がり時間T3との関係を示す図である。
図6の(A)はリークLが発生した場合の高圧電源HVPから負荷50への出力電圧の時間推移を示し、(B)はリークLが発生しない場合の出力電圧の時間推移を示す。
図6(B)において、出力電圧が負側に立ち上がり安定化するまでの区間を「立ち上がり時間T3」として示す。
図6(A)において、出力電圧の立ち上がり開始後にリークLが発生するまでの区間を「リーク間隔T1」として示す。
【0066】
リーク間隔時間T1の変動がなぜ発生するかというと、
図6(A)、(B)に示すように、このリーク間隔時間T1が、高圧電源HVPから負荷50への出力電圧の立ち上がり時間T3に強く関係するからである。
図6(A)に示すように、高圧電源出力中に発生するリークLは、その出力の立ち上がり時間T3に沿って上がり、リーク開始電圧を超えることで、リーク放電し、出力が急峻に0Vに立ち下がる。そして再度、その出力の立ち上がり時間T3に沿って上がり、リーク開始電圧を超えることで、リーク放電をする。これを繰り返している。つまり、リーク間隔時間T1は、出力の立ち上がり時間T3に強く関係していると言える。
【0067】
図6(B)に示す出力の立ち上がり時間T3は、その高圧電源HVPの出力に接続されている負荷50の抵抗・容量、出力電流によって決まる。大きくは容量成分に依存する。そのため、リーク間隔時間T1が、時々によって変動してしまう。特にAC出力を持つ電源では、容量の大きいバイパスコンデンサを持つ場合があり、立ち上がり時間T3が遅くなる傾向にある。
【0068】
図7は、本実施形態におけるリーク検知手法を示す図である。
図7の(A)、(B)、(C)の各図の概要は、
図5と同様であり、リーク間隔時間T1が保持時間T2より長くなる場合の従来例を示す。
図7の(B´)、(C´)は本実施形態のリーク検知手法を示す。
【0069】
本実施形態のリーク検知手法では、高圧電源HVPから負荷50への出力電圧の立ち上がり時間T3を事前に把握しておく、あるいは負荷・電流設定から算出する、あるいは出力検出部(
図2の出力モニタ部39)を設け立ち上がり時間を実測するなどの手段で立ち上がり時間T3を算出し、それをもとにリーク間隔時間T1を予測して、「リーク予測時間T4」として適切に設定する。また、リーク予測時間T4の後に所定区間に亘る「再検知領域T5」を設定する。
【0070】
本実施形態では、
図7(B´)に示すように、タイミングt2→t3、t4→t5でリーク検知信号Sが保持時間T2を経過して立ち下がっても、
図7(C´)に示すように、保持時間T2より長いリーク予測時間T4を設定し、リーク予測時間T4後に再検知領域T5を設け、
図7(A)に示すようにタイミングt3→t4、t5→t6で再検知領域T5においてリークLが発生した場合に、再検知を許可する。すなわちリークL発生の検知時間Td1、Td2、Td3をタイミングt2から累積する。これにより、
図7の例では、タイミングt2~t6の区間でリークL発生の検知時間Td1、Td2、Td3が累積されるので、リーク間隔時間T1の変動に因らず、適切な時間幅で異常として認識することを可能とする。
【0071】
図7に示す処理は、以下のようにも表現できる。高圧印加装置30の判断部33は、任意の第1のリーク(
図7(A)では左から一番目のリークL)が検知された後の所定期間(
図7ではリーク予測時間T4+再検知領域T5)内に、第2のリーク(
図7(A)では左から2番目のリークL)が発生した場合に、第1のリークと第2のリークとを連続リークと判定する「リーク発生の再検知」を許容する。判断部33は、この再検知が許容された場合には、第1のリークに係記リーク検知信号Sの発生時間(
図7では検知時間Td1)と、第2のリークに係るリーク検知信号Sの発生時間(
図7では検知時間Td2)と累計して累計時間Td1+Td2として算出する。第2のリークの検知後も、所定期間内に次のリーク(
図7(A)では左から三番目のリークL)が発生し、再検知が許容されている間は累計時間の算出を繰り返す。そして、累計時間が所定のしきい値時間を超えたときに、リークLが発生している異常と判断する。
【0072】
なお、高圧電源HVP自体の保持時間T2はほどよく短い方が望ましい。検知時間Tdを可変にできるためである。
【0073】
[リーク検知処理]
図8を参照して、
図7を参照して説明した本実施形態のリーク検知手法の具体的な処理の一例について説明する。
【0074】
図8は、本実施形態におけるリーク検知処理の一例のフローチャートである。
図8では、
図7(A)に示した出力リーク波形Lと
図7(B´)に示したリーク検知信号Sを例に流れを追っていく。保持時間T2は40ミリ秒とする。
【0075】
まず、判断部33が、異常だと判定するかのしきい値となる、異常しきい値時間Ttを設定する(ステップ101:以下、ステップをSと記す)。異常しきい値時間Ttは、再検知を許容した状態での累積時間で設定する。異常しきい値時間Ttは例えば100ミリ秒とする。そのまま、今回使用するタイマーのうち2つを初期値0にリセットする。高圧電源HVPの異常出力時間(検知時間Td)を計時する「異常出力計時タイマー」と、高圧電源HVPの立ち上がり時間T3を計測する「立ち上がり時間計測タイマー」である。
【0076】
次に、高圧制御部37が、高圧電源HVPの出力(高圧出力)をONにする命令を出す(S102)。これにより高圧発生部40から負荷50への出力の供給が開始される。このとき同時に、立ち上がり計算部34が、立ち上がり計測タイマーをONにする。これにより高圧電源HVPの出力の立ち上がり時間T3の計測が開始される。
【0077】
次に、立ち上がり計算部34が、温湿度センサ17から複写機16の内部の環境温度及び環境湿度の情報を読み取る(S119)。
【0078】
続いて、立ち上がり計算部34が、高圧出力のONから出力が立ち上がるまでの時間を、出力モニタ部39でのモニタ電圧と立ち上がり計測タイマーから、立ち上がり時間T3として算出する(S103)。例えば、ステップS102の計測開始時点から、出力モニタ部39で監視する出力の電圧値が所定値に安定するまで時点までの立ち上がり計測タイマーの計測値を立ち上がり時間T3とする。
図7の例では、立ち上がり時間T3は例えば90ミリ秒とする。
【0079】
なお、立ち上がり計算部34は、高圧電源HVPに接続される負荷の抵抗・容量および高圧電源HVPの出力電流値などの情報から、出力の立ち上がり時間T3を計算する構成でもよい。
【0080】
また、立ち上がり計算部34が、算出された立ち上がり時間T3から再検知領域T5を設定する。再検知領域T5は、算出された立ち上がり時間T3を中心に、その立ち上がり時間T3の90%~110%などで設定される。この再検知領域T5の幅は、立ち上がり時間T3のバラツキを除くために設けられているため、調整可能である。再検知領域T5の値の小さい方を「再検知領域下限」に、値の大きい方を「再検知領域上限」に設定する。例えば、再検知領域下限を81ミリ秒、再検知領域上限を99ミリ秒に設定する。
【0081】
ここからは、判断部33が、高圧電源HVPの出力中、高圧電源HVPからCPU32に異常検知信号が異常として出力されていないか、または再検知によって再検知フラグが立っていないかを確認する(S104)。正常(すなわちリーク検知信号SがOFF)であり、かつ再検知フラグも立っていない場合(S104のNO)には、S104の確認処理を繰り返す。
図7の例では、タイミングt1の区間に対応する。
【0082】
一方、異常信号が異常になる(すなわちリーク検知信号SがON)、または再検知フラグが立っている場合(S104のYES)には、判断部33は、再度、再検知フラグを確認する(S105)。
図7の例では、タイミングt2の区間に入る。このとき、異常検知部38から判断部33に高圧電源の出力の異常発生の旨の情報が送信され、判断部33はこの情報の受信に応じてリーク検知信号をONにする。
【0083】
再検知フラグを持っていない場合は(S105のNO)、判断部33は、異常出力計時タイマーを初期値0にリセットする(S107)。
図7の例では、タイミングt2で再検知フラグを持っていないため、異常出力計時タイマーを初期値0にリセットする。
【0084】
その後、判断部33は、異常出力計時タイマーをONにし、再検知タイマーを初期値0にリセット後、再検知タイマーをONにする(S108)。「異常出力計時タイマー」は、
図7に示す「検知時間Td」に対応し、
図7の例ではタイミングt1からt2への遷移時に計測が開始されている。これにより異常計時部35により検知時間Td1の計測が開始され、再検知計時部36により計時時間T6の計測が開始される。
【0085】
判断部33は、異常出力計時タイマー(検知時間Td1)が、S101で設定した異常しきい値時間Ttを上回っているかを確認し(S109)、上回っていなければ(S109のNO)、異常信号が正常か(リーク検知信号SがOFFに切り替わったか)を確認する(S110)。
【0086】
異常信号がまだ異常が継続している(リーク検知信号SがON状態を維持している)場合には(S110のNO)、判断部33は、異常しきい値時間Ttと再度比較する(S109)。一方、異常信号が正常となった場合(S110のYES)、判断部33は、異常出力計時タイマーを停止(ストップ)する(S114)。正常へ復帰した際には、異常時間として計測しないためである。
図7の例では、タイミングt2からt3に遷移する部分で、異常しきい値時間100ミリ秒に対し、保持時間T2が40ミリ秒で立ち下がってしまい、異常出力計時タイマーによる検知時間Td1も40ミリ秒で異常しきい値時間より短いため、まだ異常と判断されない。そのため、異常出力計時タイマーによる計測を一時的に停止させ、計測値を保持しておく。
【0087】
次に、判断部33は、再検知タイマーによる計時時間T6が再検知領域下限を上回るまで待機(S115のYES)する。
図7の例では、タイミングt3のうち再検知領域T5までの区間に対応する。
【0088】
再検知タイマー(計時時間T6)が再検知領域下限を上回り(S115のNO)、かつ再検知領域上限を下回る場合(S116のYES)のみ、判断部33は異常検知部38からの情報に基づき高圧電源出力の異常の再検知を行う(S117)。
図7の例では、タイミングt3の再検知領域T5の区間に対応する。
【0089】
リーク検知信号SがOFFのままであり、異常信号が異常でない場合(S117のNO)、判断部33は再検知領域T5内であることを再度確認し(S116)、繰り返し異常信号が異常かを確認する(S117)。ここで異常となった場合(すなわちリーク検知信号SがONに切り替わった場合)(S117のYES)、再検知に引っかかったということなので、判断部33は再検知フラグをセットする(S118)。
図7の例では、タイミングt3からt4に遷移する時点に対応する。
【0090】
再検知フラグを立てたあとは、S104まで戻り、再検知としてフローを進む(S104のYES)。
【0091】
再検知フラグを持っている場合は(S105のYES)、判断部33は再検知フラグを下ろす(S106)。
図7の例では、タイミングt4では再検知のため、このフローを通る。
【0092】
その後、判断部33は、異常出力計時タイマーをONにし 、再検知タイマーを初期値0にリセット後、再検知タイマーをONにする(S108)。
図7の例ではタイミングt3からt4への遷移時に検知時間Td2の計測が再開されている。また、同じタイミングで、再検知タイマーが再度0から開始され、計時時間T6の計測が開始される。
【0093】
判断部33は、異常出力計時タイマー(検知時間Td1+Td2)が、S101で設定した異常しきい値時間Ttを上回っているかを確認し(S109)、上回っていなければ(S109のNO)、異常信号が正常か(リーク検知信号SがOFFに切り替わったか)を確認する(S110)。
【0094】
異常信号がまだ異常が継続している(リーク検知信号SがON状態を維持している)場合には(S110のNO)、判断部33は、異常しきい値時間Ttと再度比較する(S109)。
【0095】
図7の例では、保持時間T2が40ミリ秒のため、タイミングt2の検知時間Td1と、タイミングt4の検知時間Td2とを累計しても80ミリ秒にしかならない。そのため異常しきい値時間Ttである100ミリ秒に届かないため、リーク検知信号Sが正常に戻った(OFFに切り替わった)時点で(S110のYES)、判断部33は異常出力計時タイマーによる計測を一時的に停止させ(S114)、計測値を保持しておく。判断部33は、再び、再検知領域下限まで待機(S115のYES、
図7のタイミングt5)し、再検知領域T5に入っている間(S116)、異常になるまで待機する(S117)。
図7の例では、ここで判断部33は再度、異常検知し、タイミングt5からt6へ遷移する。
【0096】
S117にて異常となったので、判断部33は再検知フラグをセットし(S118)、S104に戻り、再検知フラグを持っているので(S104のYES、S105のYES)、再検知フラグをリセット(S106)し、異常計時を開始する(S108)。再検知タイマーもリセットされ、再検知タイマーがONになる。
図7の例ではタイミングt5からt6への遷移時に検知時間Td3の計測が再開されている。また、同じタイミングで、再検知タイマーが再度0から開始され、計時時間T6の計測が開始される。
【0097】
ここでついに異常計時タイマー(検知時間Td1+Td2+Td3)が累計で異常しきい値時間Tt(100ミリ秒)が経過した時点で(S109のYES)、判断部33は異常フラグをセットする(S111)。これはマシン全体で、異常であることを確認する際に、参照するためのフラグである。
【0098】
異常フラグがセットされると、CPU32は操作部18上の操作表示パネルへ「高圧異常発生」のメッセージを表示して、操作者に警告を促し(S112)、高圧電源HVPの出力を停止するなどマシンの安全停止動作に入る(S113)。
【0099】
ここでの安全停止は、出力を完全に停止することを指すが、出力を下げることで再度リーク検知フローを実施し、異常を回避するまで出力を下げる手段もある。この手段は、リスクを把握した上で、使用者の稼働停止時間を少なくする思想で用いられることもある。S113の処理が完了すると本制御フローを終了する。
【0100】
他方でS116にて再検知領域の上限を上回った場合、判断部33は再検知領域T5内で異常を検知できなかったとして、再度、S104から異常検知を開始する。
【0101】
次に
図8に示すフローチャートの第1の変形例を説明する。
図8のフローチャートでは、ステップ103において高圧電源HVPの出力の立ち上がり時間T3を計算する構成を例示したが、この代わりに、事前に高圧電源HVPの立ち上がり時間T3を測定などで評価・把握しておく構成としてもよい。この場合、ステップS103では、事前に把握している立ち上がり時間T3から、再検知領域下限・再検知領域上限を設定する。
【0102】
第1の変形例では、ステップS103において「立ち上がり時間T3を算出」の処理が不要となり、高圧出力の初めに立ち上がり時間T3を計測するフェーズが不要となる。このため、立ち上がり時間算出のために必要だった、ステップ102の「立ち上がり計時タイマーON」の処理が不要となり、また、高圧電源HVP内の出力モニタ部39が不要となる。これにより、高圧印加装置30の構成や、リーク判定処理の手順を簡略化できるメリットがある。また、高圧電源HVPの出力開始時に立ち上がり時間T3を取得しないため、たとえ出力開始直後から異常が発生していても、立ち上がり時間T3を設定可能である。
【0103】
次に
図8に示すフローチャートの第2の変形例を説明する。ステップS103の高圧電源HVPの出力の立ち上がり時間T3を算出する処理では、ステップ119の温湿度センサ17の読み取り値に応じた「補正係数」を設定し、補正係数を掛けて立ち上がり時間T3を算出する構成でもよい。
【0104】
補正係数の掛け方としては、例えば下記の表1に示すように、ステップS119で読み取った温湿度に応じて、立ち上がり時間T3を増減させることができる。表1は、温湿度に応じた補正係数の一例を示す。
【表1】
【0105】
表1では、温度が0~14℃、15~28℃、28~50℃の三段階、湿度が10~25%、25~60%、60~90%の三段階に区分され、各温度と各湿度の組み合わせの合計9種類の補正係数が例示されている。また、補正係数は%単位で示され、例えば「100%」は1倍を意味し、100%より大きい数字は1倍より大きく、100%より小さい数字は1倍より小さい。表1に示すように、補正係数は、環境温度が低いほど高く設定され、環境湿度が高いほど低く設定されるのが好ましい。なお、温度及び湿度の区分数や各条件における補正係数の設置値は、表1の例に限られない。
【0106】
この場合、ステップS103では、まず
図8の処理と同様に立ち上がり時間を算出する。次にステップS119で読み取った温湿度の情報に基づき、表1に例示するような補正係数のテーブルを参照して、温湿度に応じた補正係数を決定する。そして、算出した立ち上がり時間に、決定した補正係数をさらに乗じて、これにより立ち上がり時間T3を増加、減少、または維持させる。
【0107】
この温湿度による立ち上がり時間T3の変化は、温湿度によって、高圧電源HVPの立ち上がり時間T3が直接、増減することを意味するものではない。温湿度の変化によって、高圧電源HVPが接続される負荷50側の抵抗値・容量値に変化が起き、立ち上がり時間T3が間接的に変わる。高圧電源HVPの負荷50は、通常の電気回路と異なり、ゴム素材であったり、シリコン素材であったり、プラスチック素材などに印加されるため、それらの素材は温湿度の影響を受けやすい。第2の変形例では、この事象に基づき、上述のように温湿度に応じて立ち上がり時間T3を増減させる処理を行う。
【0108】
なお、表1に例示するような補正係数のテーブルは、上述のように負荷50の種類によって温湿度の影響が異なるので、高圧電源HVPに接続される負荷50ごとに個別に設定されるのが好ましい。
【0109】
また、補正係数の掛け方としては、例えば下記の表2に示すように、高圧電源HVPに接続される負荷50の経時度合いを示す指標(走行距離や印刷枚数)に応じて、立ち上がり時間T3を増減させることもできる。表2は走行距離に応じた補正係数の一例を示す。
【表2】
【0110】
表2では、走行距離が1km未満、1k~100k、100k~150k、150k以上、の4段階に区分され、各段階の補正係数が例示されている。走行距離の単位はメートルである。ここでは一次転写ローラ4の補正テーブルを例として示す。一次転写ローラ4は通常、ゴム素材の材質が用いられるため、その抵抗値は経時によって上昇する。そのため、表2の例では、補正係数は走行距離が長くなるほど高くなる。このように、補正係数は、負荷50の経時度合いが増えるほど高く設定されるのが好ましい。なお、負荷50の経時度合いを示す指標であれば、例えば印刷枚数など走行距離以外の他の指標に基づき補正係数を設定してもよい。
【0111】
この場合、ステップS103では、まず
図8の処理と同様に立ち上がり時間を算出する。次に、複写機16の制御部などに記録されている負荷50の走行距離の情報を取得する。次に、取得した走行距離の情報に基づき、表2に例示するような補正係数のテーブルを参照して、走行距離に応じた補正係数を決定する。そして、算出した立ち上がり時間に、決定した補正係数をさらに乗じて、これにより立ち上がり時間T3を増加、減少、または維持させる。
【0112】
なお、高圧電源HVPに接続される負荷50の材質によって経時の度合いや特性が異なるため、表2に例示するような負荷経時による補正係数のテーブルも、接続される負荷50ごとに個別に設定されるのが好ましい。
【0113】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0114】
3 現像ローラ
16 複写機(画像形成装置)
17 温湿度センサ
30 高圧印加装置
33 判断部
34 立ち上がり計算部
38 異常検知部
39 出力モニタ部
50 負荷
HVP、1HVP、3HVP、4HVP、5HVP 高圧電源
L リーク
S リーク検知信号
T1 リーク間隔時間
T2 保持時間
T3 立ち上がり時間
T4 リーク予測時間
T5 再検知領域
Tt 異常しきい値時間
Td 検知時間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0115】