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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077604
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20230530BHJP
   H01L 23/08 20060101ALI20230530BHJP
   H01L 23/10 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
H01L23/02 K
H01L23/08 C
H01L23/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190940
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】白井 直哉
(72)【発明者】
【氏名】三原 芳和
(72)【発明者】
【氏名】小阪田 明義
(57)【要約】
【課題】パッケージの製造時または使用時の温度変化下でのパッケージの熱応力集中を低減することができるパッケージを提供する。
【解決手段】パッケージ51は、蓋体80によって封止されることになるキャビティCVを有している。パッケージ51は、25℃と200℃との間の温度範囲において第1の線膨張係数を有する第1の金属材料からなるヒートシンク10と、ヒートシンク10上に設けられ、平面視においてキャビティCVを囲む枠体20と、を含む。枠体20は、温度範囲において第1の線膨張係数よりも小さい第2の線膨張係数を有するセラミック材料からなるセラミック部21と、セラミック部21とヒートシンク10との間に配置され、温度範囲において第1の線膨張係数よりも小さく第2の線膨張係数よりも大きい第3の線膨張係数を有する緩衝材料からなる緩衝部22と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋体によって封止されることになるキャビティを有するパッケージであって、
25℃と200℃との間の温度範囲において第1の線膨張係数を有する第1の金属材料からなるヒートシンクと、
前記ヒートシンク上に設けられ、平面視において前記キャビティを囲む枠体と、
を備え、
前記枠体は、
前記温度範囲において前記第1の線膨張係数よりも小さい第2の線膨張係数を有するセラミック材料からなるセラミック部と、
前記セラミック部と前記ヒートシンクとの間に配置され、前記温度範囲において前記第1の線膨張係数よりも小さく前記第2の線膨張係数よりも大きい第3の線膨張係数を有する緩衝材料からなる緩衝部と、を含む、
パッケージ。
【請求項2】
前記緩衝材料は、前記第1の金属材料と異なる第2の金属材料を含む、
請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記緩衝材料はステンレス鋼を含む、
請求項1または2に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記ステンレス鋼はクロム原子を、11.5質量パーセント以上、18質量パーセント以下で含有している、
請求項3に記載のパッケージ。
【請求項5】
前記セラミック材料の前記第2の線膨張係数は9ppm/K以上である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項6】
前記セラミック材料はジルコニアを含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項7】
前記第1の金属材料は、300W/m・Kより大きな熱伝導率を有している、
請求項1から6のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項8】
前記第1の金属材料は、純度95.0重量パーセント以上で銅を含有している、
請求項1から7のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項9】
前記第1の金属材料は非複合材料である、
請求項1から8のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項10】
前記緩衝部は前記ヒートシンクおよび前記セラミック部の各々へ接合材を用いて接合されている、
請求項1から9のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項11】
前記接合材は樹脂またはナノ金属粒子を含む、
請求項10に記載のパッケージ。
【請求項12】
前記セラミック部は、前記ヒートシンクの方に面するセラミック面を有しており、前記セラミック面は、前記キャビティを囲む内縁を有しており、前記内縁は屈曲部分を含み、前記屈曲部分は平面視において前記緩衝部から外れている、
請求項1から11のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項13】
前記セラミック部の前記セラミック面は、前記内縁を囲む外縁を有しており、前記外縁の少なくとも一部は平面視において前記緩衝部に重なり合っている、
請求項12に記載のパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージに関し、特に、蓋体によって封止されることになるキャビティを有するパッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体素子などの電子部品を収納するために、キャビティを有するパッケージがしばしば用いられる。パッケージのキャビティ中へ電子部品が搭載された後、パッケージに蓋体が接合されることによって、キャビティが気密に封止される。これにより、外部環境から保護された電子部品を有する電子装置が得られる。ヒートシンクの底面(電子部品が搭載された面と反対の面)は、通常、それを支持する支持部材へ取り付けられることになる。支持部材は、例えば、実装ボードまたは放熱部材である。支持部材は、ヒートシンクの底面へ熱的に接触させられる。ヒートシンクを介することによって電子部品からの熱が効率的にパッケージの外部へ(典型的には支持部材へ)と排出される。これにより、電子部品の温度上昇が、例えば150℃程度までに抑えられる。一方で、電子装置が置かれた外部環境によっては、パッケージの温度は氷点下温度にまで低下する。よって電子装置は、これら温度差に起因したヒートサイクルに耐える必要がある。
【0003】
特開2003-282751号公報(特許文献1)に開示された技術によれば、ヒートシンクとしてCuまたはCu系金属板が用いられる。Cuは、安価でありながら、300W/m・Kを超える高い熱伝導率を有している。よって、ヒートシンクの材料コストを抑えつつ、ヒートシンクの放熱性能を高めることができる。この技術によれば、まず、ヒートシンク上に半導体素子が、ろう付けによって実装される。次に、予め外部接続端子が接合されている枠体がヒートシンク上に、半導体素子を囲むように接合される。この接合に低融点接合材を用いることによって、半導体素子のろう付け温度未満の温度で枠体が接合される。次に、枠体の上面側に蓋体が接合されることによって、キャビティが封止される。これにより電子装置が得られる。
【0004】
特開2005-243819号公報(特許文献2)によれば、ヒートシンクにCPC(登録商標)が広く用いられていることが開示されている。CPCは、Cu-Mo合金層と、その上下に設けられたCu層と、を有する複合金属板(複合材料)である。CPCの線膨張係数は、Cuの線膨張係数に比して低い。よって、ヒートシンク材料として、Cuに代わってCPCを用いることによって、ヒートシンクの線膨張係数をセラミックの線膨張係数に近づけることができる。
【0005】
特開2015-204426号公報(特許文献3)は、電子部品収納用パッケージを開示している。パッケージは、電子部品から発生する熱を放散させるためのヒートシンク板と、ヒートシンク板にろう付け接合された額縁状のセラミック枠体とを有している。セラミック枠体は上層シートと下層シートとの接合体からなり、額縁状である。セラミック枠体は、内周側において、下層シートが上層シートよりも後退していることによって段差部を有している。上面視で、ヒートシンク板の上面は、上層シートの内周よりも内側へは、ろう付け接合におけるろう流れを有していない。ヒートシンク板は、セラミックと熱膨張係数が近似する材料からなる。
【0006】
韓国特許第10-1175613号明細書(特許文献4)は、作動時に熱を放出する素子が実装されるパッケージを開示している。パッケージは、第1ベースと、第1ベースに接合され枠型に形成された第2ベースと、第2ベースに接合された絶縁体と、絶縁体に接合されたリードフレームと、を含む。第1ベースおよび第2ベースは金属材料からなってよく、第2ベースの線膨張係数は第1ベースの線膨張係数よりも小さくてよい。第1ベースの金属材料は、銅(Cu)またはCu合金であってよく、第2ベースの金属材料は、コバール(登録商標)、鉄(Fe)-ニッケル(Ni)合金、モリブデン(Mo)、Mo合金、タングステン(W)およびW合金のうちいずれか1つまたはその合金であってよい。第1ベースと第2ベースとは、レーザ溶接またはシーム溶接によって接合されていてよい。絶縁体は、セラミック材料からなっていてよく、第2ベースに、ろう付けによって接合されていてよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-282751号公報
【特許文献2】特開2005-243819号公報
【特許文献3】特開2015-204426号公報
【特許文献4】韓国特許第10-1175613号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ヒートシンクの熱伝導率向上またはコスト低減を十分に実現しようとすると、ヒートシンクの熱膨張係数をセラミックの熱膨張係数に十分に整合させることが困難となりやすい。熱膨張係数の差異が大きいと、パッケージの製造時または使用時の温度変化下で、パッケージにおいて熱応力集中が問題となりやすい。
【0009】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、パッケージの製造時または使用時の温度変化下でのパッケージの熱応力集中を低減することができるパッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施の形態のパッケージは、蓋体によって封止されることになるキャビティを有している。パッケージは、25℃と200℃との間の温度範囲において第1の線膨張係数を有する第1の金属材料からなるヒートシンクと、ヒートシンク上に設けられ、平面視においてキャビティを囲む枠体と、を含む。枠体は、上記温度範囲において第1の線膨張係数よりも小さい第2の線膨張係数を有するセラミック材料からなるセラミック部と、セラミック部とヒートシンクとの間に配置され、上記温度範囲において第1の線膨張係数よりも小さく第2の線膨張係数よりも大きい第3の線膨張係数を有する緩衝材料からなる緩衝部と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態のパッケージによれば、緩衝部が有する第3の線膨張係数が、ヒートシンクが有する第1の線膨張係数より小さく、セラミック部が有する第2の線膨張係数よりも大きい。これにより、ヒートシンクとセラミック部との間の熱膨張差が、緩衝部によって緩衝される。よって、パッケージの製造時または使用時の温度変化下でのパッケージの熱応力集中を低減することができる。
【0012】
緩衝材料は、第1の金属材料と異なる第2の金属材料を含んでよい。その場合、緩衝材料が何ら金属材料を含まない場合に比して、熱応力下での緩衝部の脆性破壊を防止することができる。
【0013】
緩衝材料はステンレス鋼を含んでよい。その場合、緩衝材料が何ら金属材料を含まない場合に比して、熱応力下での緩衝部の脆性破壊を防止することができる。ステンレス鋼が用いられる場合、その組成制御によって、緩衝材料が有する第3の線膨張係数を、ヒートシンクが有する第1の線膨張係数よりも小さく、かつセラミック部が有する第2の線膨張係数よりも大きい値へ、容易に調整することができる。ステンレス鋼はクロム原子を、11.5質量パーセント以上、18質量パーセント以下で含有していてよい。その場合、緩衝材料が有する第3の線膨張係数を約11ppm/℃とし得る。これにより、セラミック部をなすセラミック材料の第2の線膨張係数が緩衝材料の第3の線膨張係数よりも小さいという条件を満たしつつも、セラミック材料の第2の線膨張係数が11ppm/℃に近い大きな値であることが許容される。より大きな第2の線膨張係数を有するセラミック材料を選択することによって、当該セラミック材料からなるセラミック部と、ヒートシンクとの間の熱膨張差を抑制することができる。
【0014】
セラミック材料の第2の線膨張係数は9ppm/K以上であってよい。その場合、当該セラミック材料からなるセラミック部と、比較的高い第1の線膨張係数を有するヒートシンクとの間の熱膨張差を抑制することができる。
【0015】
セラミック材料はジルコニアを含んでよい。その場合、セラミック材料が有する第2の線膨張係数を9ppm/K以上にすることができる。これにより、当該セラミック材料からなるセラミック部と、ヒートシンクとの間の熱膨張差を抑制することができる。
【0016】
第1の金属材料は、300W/m・Kより大きな熱伝導率を有していてよい。その場合、第1の金属材料からなるヒートシンクの放熱性能を高めることができる。
【0017】
第1の金属材料は、純度95.0重量パーセント以上で銅を含有していてよい。その場合、約300W/m・Kより大きな熱伝導率を得ることができる。これにより、第1の金属材料からなるヒートシンクの放熱性能を高めることができる。
【0018】
第1の金属材料は非複合材料であってよい。その場合、第1の金属材料が有する第1の線膨張係数を複合材料の材料設計によって抑制することができない。その結果としてヒートシンクとセラミック部との間の熱膨張差が大きくなりやすいところ、そのような場合であっても、前述した理由によって、パッケージの製造時または使用時の温度変化下での、パッケージにおける応力集中を、低減することができる。
【0019】
緩衝部はヒートシンクおよびセラミック部の各々へ接合材を用いて接合されていてよい。この接合工程は、通常、加熱およびその後の冷却を必要とするところ、その際の熱応力集中を、前述した理由で低減することができる。接合材は樹脂またはナノ金属粒子を含んでいてよい。その場合、接合材が典型的なろう材である場合に比して、接合工程に要する最高温度が低くなる。これにより、接合工程において生じる熱応力を低減することができる。
【0020】
セラミック部は、ヒートシンクの方に面するセラミック面を有しており、セラミック面は、キャビティを囲む内縁を有しており、内縁は屈曲部分を含む。屈曲部分は、平面視において、緩衝部から外れていてよい。その場合、屈曲部分への熱応力集中を抑制することができる。セラミック部のセラミック面は、内縁を囲む外縁を有している。外縁の少なくとも一部は、平面視において、緩衝部に重なり合っていてよい。その場合、セラミック面の内縁の屈曲部分が平面視において緩衝部から外れるように緩衝部を設計しつつも、緩衝部の剛性を十分に確保しやすくなる。
【0021】
この発明の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態1に係る電子装置の構成を、キャビティ内部が見えるようにその一部の図示を省略して示す概略斜視図である。
図2図1の電子装置の線II-IIに沿う概略断面図である。
図3図2の電子装置の部品としてのパッケージの構成を示す概略断面図である。
図4】銅(Cu)とアルミナ(Al)と複合材料(CPC)との各々の熱膨張係数(CTE)の温度依存性を例示するグラフ図である。
図5】パッケージの製造における接合工程に起因した熱応力のシミュレーション条件に用いられる構成の寸法を示す平面図である。
図6】パッケージの製造における接合工程に起因した枠体のセラミック部の熱応力の最大値のシミュレーション結果を示すグラフ図である。
図7図6のシミュレーション結果における、枠体のセラミック部の熱応力の分布の傾向を示すグラフ図である。
図8】実施の形態2に係るパッケージの構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお本明細書において、金属は、特段の記載がない限り、純金属および合金のいずれをも意味し得る。また平面視は、厚み方向に垂直な平面への射影を意味する。熱膨張係数(CTE)は、特段の記載がない限り、線膨張係数によって表される。無視できない異方性を線膨張係数が有する場合は、面内方向における線膨張係数が採用される。面内方向は、厚み方向に垂直な方向である。
【0024】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る電子装置90の構成を示す概略斜視図である。図2は、図1の電子装置90の線II-IIに沿う概略断面図である。電子装置90は、パッケージ51と、蓋体80と、電子部品8とを有している。また電子装置90は接着層70を有していてよい。また電子装置90は、ワイヤ9(配線部材)を有していてよい。なお図1においては、パッケージ51が有するキャビティCVの内部が部分的に見えるように、蓋体80および接着層70の図示が部分的に省略されている。電子部品8はパワー半導体素子であってよく、この場合、電子装置90はパワーモジュールである。パワー半導体素子は高周波(RF:Radio Frequency)用であってよく、この場合、電子装置90はRFパワーモジュールである。なお、図1および図2においては1つの電子部品8が図示されているが、パッケージ51へは複数の電子部品8が搭載されていてよい。
【0025】
図3は、電子装置90(図2)の部品としてのパッケージ51の構成を示す概略断面図である。電子装置90の製造のためにパッケージ51が準備された時点では、図3に示されているように、電子部品8は未だ実装されていない。パッケージ51は、蓋体80によって封止されることになるキャビティCVを有している。パッケージ51は、ヒートシンク10と、枠体20と、リードフレーム30(金属端子)とを含む。
【0026】
ヒートシンク10は、底面BTと、厚み方向において底面BTと反対の実装面MTと、を有している。ヒートシンク10は第1の金属材料(以下において、ヒートシンク材料とも称する)からなる。ヒートシンク材料は、25℃と200℃との間の温度範囲において第1の線膨張係数(以下において、CTEとも称する)を有する。言い換えれば、ヒートシンク10が、25℃のときに寸法L25を有し、200℃のときに寸法L200を有する場合、CTEは、
CTE={(L200-L25)/(200-25)}/L25
によって定義される。他の部材に関連して後述されるCTEおよびCTEの定義も、これと同様である。
【0027】
ヒートシンク材料は、ヒートシンク10の放熱性能を高める観点では、大きな熱伝導率を有していることが好ましく、具体的には、300W/m・Kより大きな熱伝導率を有していることが好ましい。このように高い熱伝導率は、ヒートシンク材料が高比率でCuを含有することによって容易に得られる。熱伝導率を高める観点では、ヒートシンク材料はCuを、好ましくは純度95.0重量パーセント(wt%)以上で含有し、より好ましくは純度99.8wt%以上で含有する。ヒートシンク材料は、非複合材料であってよい。非複合材料は、純金属材料または合金材料であり、CPCが有するような積層構造を有していない。
【0028】
枠体20は、ヒートシンク10の実装面MTの外周部上に設けられており、平面視においてキャビティCVを囲んでいる。枠体20の外縁は、図1に示されているように矩形形状を有していてよく、その各辺の大きさは、例えば、10mm以上、40mm以下である。枠体20の厚みは、例えば、0.25mm以上、1.25mm以下である。枠体20の厚みが0.25mm未満であると、キャビティCVの高さが不足する可能性が高い。枠体20の厚みが1.25mmより大きいと、枠体20上のリードフレーム30への接続が必要なワイヤ9(図2)の長さも大きくなり、その結果、ワイヤ9のインダクタンスも大きくなる。ワイヤ9のインダクタンスの増大は、電気特性上、通常は望まれないことである。
【0029】
枠体20は、セラミック部21と、緩衝部22とを含む。緩衝部22は、セラミック部21とヒートシンク10との間に配置されている。言い換えれば、緩衝部22を介してセラミック部21がヒートシンク10上に配置されている。緩衝部22はヒートシンク10およびセラミック部21の各々へ接合材(図示せず)を用いて接合されていてよい。接合材は、樹脂を含んでいてよく、具体的には、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂またはシリコン樹脂)とAg粒子との混合物であってよい。あるいは、接合材は、低温焼結材料であってよく、具体的には、Ag粒子およびCu粒子の少なくともいずれかを含む焼結材料であってよい。これら粒子はナノ金属粒子であってよい。ナノ金属粒子は、100nm以下の直径を有する金属粒子である。接合材の厚み(図3における縦方向の寸法)は、セラミック部21、緩衝部22およびヒートシンク10の各々の厚みよりも十分に小さくてよく、その場合、パッケージ51の熱応力の検討において接合材の影響は実質的に無視することができる。接合材の厚みは、例えば、0.01mm以上、0.2mm以下である。
【0030】
セラミック部21は、CTEよりも小さいCTE(第2の線膨張係数)を有するセラミック材料からなる。CTEは、9ppm/K以上であることが好ましい。セラミック材料は、ジルコニア(ZrO)を含んでいてよく、実質的にジルコニアであってよい。セラミック部21の厚みは、0.2mm以上、1.0mm以下であってよい。厚みが0.2mm以上であることによって、セラミック部21を、グリーンシートの焼成によって容易に形成することができる。
【0031】
緩衝部22は、CTEよりも小さくCTEよりも大きいCTE(第3の線膨張係数)を有する緩衝材料からなる。緩衝材料は、前述した第1の金属材料と異なる第2の金属材料を含むことが好ましく、実質的に第2の金属材料であってよい。第2の金属材料は、ステンレス鋼であることが好ましく、Fe-Cr(クロム)合金であることが、より好ましい。Fe-Cr合金は、主成分としてFe原子を含有しており、かつ11.5wt%以上、18wt%以下のCr原子を含有していることが好ましい。Fe-Cr合金は、さらに他の微量元素を含んでいてよいが、その総量は、通常、3wt%未満である。このような組成を有するFe-Cr合金としては、一般に、18Crステンレス(例えば、SUS430と称される材料)および13Crステンレス(例えば、SUS410またはSUS403と称される材料)が広く用いられている。SUS430のCr原子の含有量は、16wt%以上18wt%以下である。SUS410およびSUS403のCr原子の含有量は、11.5wt%以上13wt%以下である。これら3つの例のうちでは、SUS430が、通常、最も安価な材料である。緩衝部22の厚みは、0.05mm以上、0.5mm以下であってよい。厚みが0.05mm以上であることによって、緩衝部22による効果を、より十分に得ることができる。
【0032】
リードフレーム30は、キャビティCVの内部と外部とをつなぐ電気的経路を構成している。リードフレーム30の材料は、例えば、Fe-Ni合金、Cu、またはCu合金である。Fe-Ni合金は、例えば、42アロイである。42アロイは、主成分としてFe原子を含有しており、かつ約42wt%のNi原子を含有している。リードフレーム30は枠体20のセラミック部21上に設けられている。リードフレーム30とセラミック部21との間には両者を互いに接合するための接合材(図示せず)が設けられていてよい。この接合材は、前述した接合材と同様の材料からなっていてよい。
【0033】
セラミック部21は、ヒートシンク10の方に面するセラミック面SC(図3)を有している。セラミック面SCは、キャビティCVを囲む内縁PIと、内縁を囲む外縁PEとを有している。内縁PIは屈曲部分BDを含む。屈曲部分BDは、矩形形状が有する4つの角部であってよい。本実施の形態においては、平面視において、セラミック部21と、緩衝部22とが、互いに実質的に重なり合っていてよい。言い換えれば、セラミック面SCの内縁PIおよび外縁PEのそれぞれが、緩衝部22の上面(セラミック面SCに面する面)の内縁および外縁と実質的に一致していてよい。
【0034】
次に、電子装置90の製造方法の例について、以下に説明する。
【0035】
パッケージ51(図3)が準備される。パッケージ51のヒートシンク10の実装面MT上に電子部品8が搭載される。この搭載は、はんだ付けによって行われてよい。言い換えれば、電子部品8の搭載のための実装材として、はんだ材が用いられてよい。次に、電子部品8がリードフレーム30に、ワイヤ9によって電気的に接続される。ワイヤ9はワイヤボンディングによって形成されてよい。
【0036】
蓋体80(図1および図2)が準備される。蓋体80は、セラミック材料からなっていてよく、このセラミック材料は主成分としてアルミナを含んでいてよく、例えば、実質的にアルミナである。あるいは、蓋体80は樹脂を含んでいてよい。樹脂は、例えば、液晶ポリマーである。なお当該樹脂中に無機フィラーが分散されていてもよく、無機材フィラーは、例えばシリカ粒である。樹脂中に無機フィラーが分散されていることによって、蓋体80の強度および耐久性を高めることができる。
【0037】
次に、リードフレーム30が設けられた枠体20上に、蓋体80が接着層70を介して載置される。接着層70は、本例においては熱硬化性樹脂を含み、当該載置の時点では半硬化状態にある。接着層70は、枠体20上にキャビティCVを囲むように設けられる。接着層70は、図2に示されているように、枠体20上にリードフレーム30を介して設けられる部分を有していてよい。接着層70の、蓋体80とパッケージ51との間での厚みは、例えば、100μm以上、360μm以下である。蓋体80は、キャビティCV(図1)に面する内面81iと、その反対の外面81oとを有していてよく、また典型的には、内面81i上には、セラミック枠体61の枠形状におおよそ対応した枠形状を有する突起である枠部81pが設けられている。この場合、接着層70は枠部81pに接する。
【0038】
次に、蓋体80が枠体20へ所定の荷重で押し付けられる。適切な荷重は、パッケージ51の寸法設計に依存するが、例えば500g以上、1kg以下程度である。荷重での押し付けが行われながら、接着層70が加熱される。加熱された接着層70は、まず軟化状態へと変化する。これにより接着層70の粘度が低下する。その結果、接着層70が濡れ広がる。その後、加熱による硬化反応の進行にともなって、接着層70は硬化状態へと変化し、その結果、接着層70は蓋体80と枠体20とを互いに接着する。
【0039】
接着層70は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシリコーン(silicone)樹脂の少なくともいずれかを主成分として含んでいてよい。特にエポキシ樹脂は、耐熱性、機械的強度および耐薬品性をバランス良く備えている点で好ましい。これら特性を好適に有するためには、主成分としてのエポキシ樹脂の含有量が20~40wt%であることが好ましく、残部は硬化剤などの副成分からなってよい。具体的には、この副成分は、例えば、1~10wt%の硬化剤と、50~70wt%の無機フィラーと、0.5~2wt%のカップリング剤と、0.5~2wt%の触媒と、0.1~5wt%の低応力剤とであってよい。硬化剤としてはフェノキシ樹脂化合物が用いられてよい。無機フィラーとしてはシリカが用いられてよい。触媒としては有機リンまたはホウ素塩が用いられてよい。低応力剤としてはシリコーンが用いられてよい。接着層70は、蓋体80の曲げ弾性率よりも小さな曲げ弾性率を有していてよい。
【0040】
以上により、図1および図2に示されているように、蓋体80がキャビティCVを封止する構成が得られる。言い換えれば、電子装置90(図1および図2)が得られる。電子装置90のヒートシンク10の底面BT(図2)は、支持部材(図示せず)に取り付けられることになる。支持部材は、例えば、実装ボードまたは放熱部材である。ヒートシンク10は、支持部材への取り付けのための固定具(例えば、ねじ)が通る貫通部(図示せず)を有していてもよい。
【0041】
図4は、CuとAlとCPCとの各々のCTEの温度依存性を例示するグラフ図である。AlのCTEに比して、Cuは顕著に大きなCTEを有しているが、CPCは同程度のCTEを有している。よって、パッケージにキャビティを設けるための枠体がAlからなる場合、ヒートシンクがCuではなくCPCからなれば、枠体とヒートシンクとの間での熱膨張の差異を、かなり抑制することができる。しかしながら、ヒートシンクの放熱性能を高めるために、ヒートシンク材料として、CPCの熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料、典型的には実質的に純粋なCu、を用いることが求められる場合がある。また、CPCは比較的高価な複合材料であることから、より安価な非複合材料、典型的には実質的に純粋なCu、を用いることが求められる場合がある。しかしながら、CuからなるヒートシンクにAlからなる枠体が接合材によって単純に接合される構成の場合、これらのCTEの差異が大きいので、パッケージの製造時または使用時の温度変化下で、パッケージにおいて熱応力集中が問題となりやすい。
【0042】
本実施の形態によれば、緩衝部22のCTEは、ヒートシンク10のCTEより小さく、セラミック部21のCTEよりも大きい。これにより、ヒートシンク10とセラミック部21との間の熱膨張差が、緩衝部22によって緩衝される。よって、パッケージ51の製造時または使用時の温度変化下でのパッケージ51の熱応力集中を低減することができる。
【0043】
緩衝材料が金属材料(例えばステンレス鋼)を含むことによって、緩衝材料が何ら金属材料を含まない場合(典型的には緩衝材料がセラミック材料である場合)に比して、熱応力下での緩衝部22の脆性破壊を防止することができる。ステンレス鋼が用いられる場合、その組成制御によって、緩衝材料のCTEを、ヒートシンク10のCTEよりも小さく、かつセラミック部21のCTEよりも大きい値へ、容易に調整することができる。緩衝材料が含むステンレス鋼がCr原子を、11.5wt%以上、18wt%以下で含有していることによって、緩衝材料が有するCTEを約11ppm/℃とし得る。これにより、セラミック部21をなすセラミック材料のCTEが緩衝材料のCTEよりも小さいという条件を満たしつつも、セラミック材料のCTEが11ppm/℃に近い大きな値であることが許容される。より大きなCTEを有するセラミック材料を選択することによって、当該セラミック材料からなるセラミック部21と、ヒートシンク10との間の熱膨張差を抑制することができる。
【0044】
セラミック材料のCTEが9ppm/K以上であることによって、当該セラミック材料からなるセラミック部21と、比較的高いCTEを有するヒートシンク10との間の熱膨張差を抑制することができる。セラミック材料がジルコニアを含むことによって、セラミック材料のCTEを9ppm/K以上にすることができる。
【0045】
ヒートシンク材料は、300W/m・Kより大きな熱伝導率を有している。これによりヒートシンク10の放熱性能を高めることができる。ヒートシンク材料が純度95.0wt%以上でCuを含有していることによって、約300W/m・Kより大きな熱伝導率を容易に得ることができる。ヒートシンク材料が非複合材料である場合、ヒートシンク材料のCTEを複合材料の材料設計によって抑制することができない。その結果としてヒートシンク10とセラミック部21との間の熱膨張差が大きくなりやすいところ、そのような場合であっても、前述した理由によって、パッケージ51の製造時または使用時の温度変化下での、パッケージ51における応力集中を、低減することができる。
【0046】
緩衝部22はヒートシンク10およびセラミック部21の各々へ接合材を用いて接合されている。この接合工程は、通常、加熱およびその後の冷却を必要とするところ、その際の熱応力集中を、前述した理由で低減することができる。接合材は樹脂またはナノ金属粒子を含んでよい。その場合、接合材が典型的なろう材である場合に比して、接合工程に要する最高温度が低くなる。これにより、接合工程において生じる熱応力を低減することができる。
【0047】
なお、線膨張係数は、温度を25℃から上昇させた際の変位を、光干渉法(optical interferometric method)または押し棒式膨張計(push-rod dilatometer)で測定することで得られる。熱伝導率はフラッシュ法により測定される。材料の成分はICP(Inductively Coupled Plasma)分析法により測定される。上述した様々な物性値を測定するための試料は、電子装置90またはパッケージ51を個々の部品へと分解することによって得られたものであってよい。
【0048】
次に、パッケージの製造における接合工程に起因した熱応力についてのシミュレーションについて、以下に説明する。なお図5は、シミュレーション条件に用いられる構成の寸法を示す平面図である。また、シミュレーションにおいて想定されている材料の物性値を、下記の表1に示す。アルミナおよびジルコニアは、枠体20のセラミック部21をなすセラミック材料である。42アロイは、リードフレーム30をなす材料である。Cuは、ヒートシンク10をなす材料である。SUS430は、緩衝部22をなす材料である。なお表1において、CTEは、25℃を基準として、200℃の場合と、800℃の場合との2種類が示されている。言い換えれば、25℃と200℃との間のCTEと、25℃と800℃との間のCTEとが示されている。
【0049】
【表1】
【0050】
シミュレーションは、以下の表2に示すNo.1~No.5の各々について行われている。なお接合温度は、部材間の接合のための接合材が適用される際の温度である。接合温度に関して、200℃は、接合材として樹脂またはナノ金属粒子を含有するものを想定した温度であり、800℃は、接合材として典型的なろう材を想定した接合温度である。
【0051】
【表2】
【0052】
図6は、枠体のセラミック部の熱応力の最大値のシミュレーション結果を示すグラフ図である。なおグラフ中の値は、No.1の結果で規格化されている。本結果から、緩衝部22が適用されることによって、熱応力の最大値が低減されることがわかる。また、接合温度が低減されることによって、熱応力の最大値が低減されることがわかる。
【0053】
図7は、上記シミュレーション結果における、枠体20のセラミック部21の熱応力の分布の傾向を示すグラフ図である。図中、より濃い黒色が、より大きな熱応力を示している。本結果から、セラミック部21において、屈曲部分BDに熱応力が集中しやすいことがわかる。
【0054】
<実施の形態2>
図8は、実施の形態2に係るパッケージ52の構成を示す概略断面図である。本実施の形態においては、セラミック面SCの内縁PIの少なくとも一部が、平面視において、緩衝部22から外れている。特に、内縁PIの屈曲部分BD(図1参照)は、平面視において、緩衝部22から外れている。
【0055】
セラミック面の外縁PEの少なくとも一部は、平面視において、緩衝部22に重なり合っていてよい。なお、図8の構成においては、セラミック面SCの外縁PEが、緩衝部22の上面(セラミック面SCに面する面)の外縁と実質的に一致しており、この構成も、外縁PEが平面視において緩衝部22に重なり合っている構成の一種とみなす。
【0056】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。電子装置90(図1および図2)のために、パッケージ51(図3:実施の形態1)に代わってパッケージ52(図8:実施の形態2)が用いられてよい。
【0057】
本実施の形態によれば、セラミック部21のセラミック面SCの内縁PIの屈曲部分BDは、平面視において、緩衝部22から外れている。これにより、屈曲部分BDへの熱応力集中(図7参照)を抑制することができる。
【0058】
セラミック部21のセラミック面SCの外縁PEの少なくとも一部は、平面視において緩衝部22に重なり合っていてよい。これにより、セラミック面SCの内縁PIの屈曲部分BDが平面視において緩衝部22から外れるように緩衝部22を設計しつつも、緩衝部22の幅寸法が過小となることを避けることによって、緩衝部22の剛性を十分に確保しやすくなる。
【0059】
枠体20の外側面は、ヒートシンク10の側面よりも外側へ突き出していないことが好ましい。言い換えれば、平面視において、枠体20は、ヒートシンク10が配置されている範囲内にのみ配置されていることが好ましい。これにより、電子装置90(図2参照)をその支持部材(図示せず)へ取り付ける際に、支持部材上に設けられている何らかの構成(例えば、プリント基板)に枠体20が接触する恐れを低減することができる。なおこのことは、本実施の形態2だけでなく、前述した実施の形態1においても同様である。
【0060】
なお、前述したように内縁PIが平面視において緩衝部22から外れていることによって、寸法LAおよび寸法LBに関して、以下の式
0.1≦LB/LA≦0.6
が満たされていることが好ましい。ここで、寸法LAはセラミック部21のセラミック面SCの幅寸法(厚み方向に垂直な寸法)である。また寸法LBは、セラミック面SCの内縁PIが緩衝部22から突出している寸法である。なお寸法LAおよび寸法LBは、面内方向に垂直な断面における寸法である。特に、当該断面が屈曲部分BD(図1参照)を通る場合は、上式が満たされていることが好ましい。0.1≦LB/LAが満たされていることによって、熱応力集中の緩和効果が、より十分なものとなる。LB/LA≦0.6が満たされていることによって、緩衝部22の剛性を十分に確保しやすくなる。
【符号の説明】
【0061】
8 :電子部品
9 :ワイヤ(配線部材)
10 :ヒートシンク
20 :枠体
21 :セラミック部
22 :緩衝部
30 :リードフレーム(金属端子)
51,52 :パッケージ
70 :接着層
80 :蓋体
90 :電子装置
BD :屈曲部分
CV :キャビティ
PE :外縁
PI :内縁
SC :セラミック面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8