(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077712
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド位置調整機構、液体吐出ユニット及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191106
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】クー エル シン
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056HA07
2C056HA08
2C056HA36
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドの位置調整を簡単に行う。
【解決手段】取付部材20に対するヘッド保持部材30の位置を調整する調整機構40は、ヘッド保持部材30の一対の長辺30a,30bのうちの一方の長辺30aの長手方向位置を調整する第一の調整部材41と、ヘッド保持部材30の一対の長辺30a,30bのうちの他方の長辺30bの長手方向位置を調整する第二の調整部材42と、第一の調整部材41及び第二の調整部材42のうちの一方の調整部材41又は両方の調整部材41,42を選択的に操作可能な操作部材43と、を有し、操作部材43は、一方の調整部材41を動かす第一の状態と、両方の調整部材41,42を動かす第二の状態とに切換可能である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドを保持するヘッド保持部材と、
前記ヘッド保持部材が取り付けられる取付部材と、
前記取付部材に対する前記ヘッド保持部材の位置を調整する調整機構と、
を備え、
前記調整機構は、
前記ヘッド保持部材の一対の長辺のうちの一方の長辺の長手方向位置を調整する第一の調整部材と、
前記ヘッド保持部材の一対の長辺のうちの他方の長辺の長手方向位置を調整する第二の調整部材と、
前記第一の調整部材及び前記第二の調整部材のうちの一方の調整部材又は両方の調整部材を選択的に操作可能な操作部材と、
を有し、
前記操作部材は、前記一方の調整部材を動かす第一の状態と、前記両方の調整部材を動かす第二の状態とに切換可能であることを特徴とする液体吐出ヘッド位置調整機構。
【請求項2】
前記操作部材は、前記一方の調整部材を動かして前記ヘッド保持部材を前記取付部材に対して回転させる第一の状態と、前記両方の調整部材を動かして前記ヘッド保持部材を前記取付部材に対して前記ヘッド保持部材の長手方向に移動させる第二の状態とに切換可能である請求項1に記載の液体吐出ヘッド位置調整機構。
【請求項3】
前記操作部材は、前記取付部材に対する前記ヘッド保持部材の移動量及び回転量のうちの少なくとも一方を視認可能な目盛を有する請求項2に記載の液体吐出ヘッド位置調整機構。
【請求項4】
前記液体吐出ヘッドを複数有し、
前記複数の液体吐出ヘッドを個別に保持する前記ヘッド保持部材を複数有し、
前記複数のヘッド保持部材は、前記取付部材に取り付けられる請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド位置調整機構。
【請求項5】
前記第一の調整部材は、前記ヘッド保持部材の一対の長辺の間の中心線よりも一方の長辺側において前記ヘッド保持部材の長手方向に並ぶように前記ヘッド保持部材に設けられた複数の歯を有する第一の歯列部材と、前記第一の歯列部材に噛み合う第一の調整歯車と、を含み、
前記第二の調整部材は、前記ヘッド保持部材の一対の長辺の間の中心線よりも他方の長辺側において前記ヘッド保持部材の長手方向に並ぶように前記ヘッド保持部材に設けられた複数の歯を有する第二の歯列部材と、前記第二の歯列部材に噛み合う第二の歯車歯車と、を含み、
前記操作部材は、前記第一の調整歯車と噛み合う第一の操作歯車と、前記第二の調整歯車と噛み合う第二の操作歯車と、前記第一の操作歯車及び前記第二の操作歯車のうちの一方又は両方の操作歯車を選択的に回転操作可能な操作軸と、を含む請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド位置調整機構。
【請求項6】
前記操作軸は、前記一方の操作歯車に対して回転操作可能に係合する第一の状態と、前記両方の操作歯車に対して回転操作可能に係合する第二の状態とに切換可能である請求項5に記載の液体吐出ヘッド位置調整機構。
【請求項7】
前記操作軸は、軸方向に移動することにより前記第一の状態と前記第二の状態とに切り換えられる請求項6に記載の液体吐出ヘッド位置調整機構。
【請求項8】
前記ヘッド保持部材をその長手方向に付勢する付勢部材を備える請求項1から7の液体吐出ヘッド位置調整機構。
【請求項9】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
請求項1から8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド位置調整機構と、
を備えることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載の液体吐出ユニットを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド位置調整機構、液体吐出ユニット及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出装置の一例として、紙などのシートにインクを吐出して画像を形成するインクジェット式の画像形成装置が知られている。
【0003】
斯かる画像形成装置においては、良好な画像形成を行うために、インクを吐出する液体吐出ヘッドの位置決めを高精度に行う必要がある。
【0004】
そのため、例えば、特許文献1(特許第4943271号公報)においては、走査方向(記録媒体移動方向)と直交する方向のヘッド位置調整を行う第一位置調整手段と、走査方向のヘッド位置調整を行う第二位置調整手段と、回転方向のヘッド位置調整を行う第三位置調整手段と、を備える位置調整機構が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成においては、液体吐出ヘッドの位置調整を行うために、複数のボルト(固定ボルト、調整ボルト、連結ボルト)を回転操作する必要がある。このため、操作が複雑で、調整作業に手間がかかるといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、液体吐出ヘッドを保持するヘッド保持部材と、前記ヘッド保持部材が取り付けられる取付部材と、前記取付部材に対する前記ヘッド保持部材の位置を調整する調整機構と、を備え、前記調整機構は、前記ヘッド保持部材の一対の長辺のうちの一方の長辺の長手方向位置を調整する第一の調整部材と、前記ヘッド保持部材の一対の長辺のうちの他方の長辺の長手方向位置を調整する第二の調整部材と、前記第一の調整部材及び前記第二の調整部材のうちの一方の調整部材又は両方の調整部材を選択的に操作可能な操作部材と、を有し、前記操作部材は、前記一方の調整部材を動かす第一の状態と、前記両方の調整部材を動かす第二の状態とに切換可能であることを特徴とする液体吐出ヘッド位置調整機構であることを特徴とする
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体吐出ヘッドの位置調整を簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る液体吐出装置の実施の一形態であるインクジェット記録装置を前面側から見た斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るインクジェット記録装置を背面側から見た斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る液体吐出ヘッドの平面図である。
【
図4】本実施形態に係る液体吐出ヘッドの取付構造を示す平面図である。
【
図5】本実施形態に係る液体吐出ヘッドの取付構造を示す断面側面図である。
【
図6】本実施形態に係る液体吐出ヘッド位置調整機構の斜視図である。
【
図7】本実施形態に係る液体吐出ヘッド位置調整機構の平面図である。
【
図8】本実施形態に係る液体吐出ヘッド位置調整機構の断面正面図である
【
図10】各係合突起の操作方法を説明するための概略断面図である。
【
図11】各係合突起の操作方法を説明するための概略断面図である。
【
図12】各係合突起の操作方法を説明するための概略断面図である。
【
図13】各係合突起の操作方法を説明するための概略断面図である。
【
図14】液体吐出ヘッドの位置調整方法を説明するための断面正面図である。
【
図15】液体吐出ヘッドの位置調整方法を説明するための平面図である。
【
図16】液体吐出ヘッドの位置調整方法を説明するための断面正面図である。
【
図17】液体吐出ヘッドの位置調整方法を説明するための平面図である。
【
図18】左ラック及び右ラックの他の配置例を示す平面図である。
【
図19】操作軸に目盛が設けられた例を示す平面図である。
【
図20】平歯車を用いた液体吐出ヘッド位置調整機構を示す断面正面図である。
【
図21】平歯車を用いた液体吐出ヘッド位置調整機構を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明に係る液体吐出装置の実施の一形態であるインクジェット記録装置を前面側から見た斜視図、
図2は、本実施形態に係るインクジェット記録装置を背面側から見た斜視図である。
【0011】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、記録媒体としての用紙が載置されるステージ2と、ステージ2上の用紙にインクを吐出して画像を形成する液体吐出ユニット3と、紫外線を照射する光源を有する照射部4と、液体吐出ユニット3及び照射部4を保持するキャリッジ5と、を備えている。
【0012】
キャリッジ5は、インクジェット記録装置1の左右方向(
図1におけるY方向)に渡って設けられた第一のガイド部であるガイドロッド6に沿って移動可能に構成されている。また、キャリッジ5、ガイドロッド6、及びガイドロッド6の両端を支持する一対の側板7は、ステージ2の下方に設けられた第二のガイド部であるガイドレール8に沿って前後方向(
図1におけるX方向)に一体に移動可能に構成されている。さらに、キャリッジ5は、上下方向(
図1におけるZ方向)にも移動可能に構成されている。このように、キャリッジ5は、左右方向である主走査方向、前後方向である副走査方向(ステージ2と平行な面上において主走査方向に直交する方向)、及び上下方向のそれぞれに往復移動可能に構成されている。
【0013】
画像形成を行う場合は、キャリッジ5が上下方向に移動することにより、ステージ2上の用紙と液体吐出ユニット3のノズル面との間の距離が所定の距離となるように調整される。次に、キャリッジ5がガイドロッド6に沿って主走査方向に移動しながら、液体吐出ユニット3から用紙上にインクが吐出されることにより、用紙に対して1列分の画像が形成される。本実施形態においては、液体吐出ユニット3から吐出される液体として、紫外線硬化性を有するインクが用いられているため、キャリッジ5の移動に伴って用紙上のインクに対して照射部4から紫外線が照射される。これにより、インクの硬化が促進される。なお、液体吐出ユニット3から吐出される液体は、紫外線硬化性を有するインク以外の液体であってもよい。そして、キャリッジ5がガイドレール8に沿って副走査方向へ所定距離移動し、再び、キャリッジ5が主走査方向へ移動しながら液体吐出ユニット3からのインクの吐出と照射部4からの紫外線の照射が行われることにより、用紙に対して次の列の画像が形成される。その後、同じように、キャリッジ5の移動と、液体吐出ユニット3からのインクの吐出と、照射部4からの紫外線の照射が繰り返し行われることにより、用紙に画像が形成される。
【0014】
図3は、本実施形態に係る液体吐出ユニットの平面図である。
【0015】
図3に示されるように、液体吐出ユニット3は、インクを吐出するノズルが設けられた複数の液体吐出ヘッド10と、複数の液体吐出ヘッド10が取り付けられるヘッドプレート20と、を有している。
図3に示される例においては、各液体吐出ヘッド10が、主走査方向(
図3におけるY方向)から見た場合に端同士が重なるように互い違いに配置されている。このように、各液体吐出ヘッド10の端が重なるように配置されていることにより、液体吐出ヘッド10同士の間において画像が形成されない領域が生じないようにしている。なお、液体吐出ヘッド10の配置及び数は、
図3に示される例に限らない。複数の液体吐出ヘッド10が直線状に並ぶように配置されてもよい。また、液体吐出ヘッド10の数は1つであってもよい。
【0016】
図4は、本実施形態に係る液体吐出ヘッドの取付構造を示す平面図、
図5は、その取付構造の断面側面図である。なお、
図4及び
図5は、液体吐出ヘッドの取付構造に着目して作成された図であり、後述の液体吐出ヘッド位置調整機構など、一部の構成は省略されている。
【0017】
図4及び
図5に示されるように、液体吐出ヘッド10は、ヘッド保持部材としてのブラケット30に保持される。また、ブラケット30は、取付部材としての上記ヘッドプレート20(
図5参照)に取り付けられる。具体的には、
図5に示されるように、液体吐出ヘッド10は、ブラケット30のねじ孔32に締結されるねじ9よって固定され、ブラケット30は、ヘッドプレート20のねじ孔22に締結されるねじ15によって固定される。
【0018】
ブラケット30は、液体吐出ヘッド10と同じように、平面視された状態において長方形に形成されており(
図4参照)、中央部には液体吐出ヘッド10を挿通させるヘッド挿通孔31が設けられている。液体吐出ヘッド10がヘッド挿通孔31に挿通された状態においては、液体吐出ヘッド10のノズルが配置されたノズル面10aが、ブラケット30よりも下方(ステージ2側)へ突出するように配置される(
図5参照)。
【0019】
液体吐出ヘッド10は、ノズル面10aを有するヘッド本体11と、ヘッド本体11の上部に設けられたカバー部材12と、を有している。ヘッド本体11は、ノズルにインクを供給する供給液室と、ノズルから液体を吐出する圧力を発生させる圧力発生素子と、供給液室及び圧力発生素子などが収容されるフレーム部材によって構成される。また、ヘッド本体11のフレーム部材には、共通液室にインクを供給するための供給口(供給ポート)13と、共通液室からインクを排出するための排出口(排出ポート)14が設けられている。カバー部材12は、圧力発生素子の駆動制御を行う駆動IC、圧力発生素子に駆動信号を伝えるフレキシブル配線板などを覆って保護する部材である。
【0020】
ヘッド本体11(フレーム部材)は、ブラケット30のヘッド挿通孔31よりも大きく形成されたフランジ部11aを有している。このため、液体吐出ヘッド10をヘッド挿通孔31に挿通させると、フランジ部11aがヘッド挿通孔31周辺の上面に接触する。これにより、液体吐出ヘッド10は、ブラケット30に対して落下しないように保持される。
【0021】
また、
図5に示されるように、ヘッドプレート20にも、ブラケット30と同じように、液体吐出ヘッド10を挿通させるヘッド挿通孔21が設けられている。液体吐出ヘッド10がブラケット30に保持され、さらに、ブラケット30がヘッドプレート20に取り付けられた状態においては、液体吐出ヘッド10のノズル面10aが、ヘッドプレート20のヘッド挿通孔21を通して下方(ステージ2側)へ臨むように配置される。
【0022】
ところで、上記のような液体吐出ユニットにおいては、液体吐出ヘッド10がブラケット30に取り付けられ、さらに、ブラケット30がヘッドプレート20に取り付けられると、各部品の寸法公差などにより液体吐出ヘッド10の位置が所定の位置からずれることがある。液体吐出ヘッド10の位置が所定の位置からずれると、正確な液体吐出が行えなくなるため、液体吐出ヘッド10の位置調整が必要である。そこで、本実施形態においては、下記のようにして液体吐出ヘッド10の位置調整を行えるようにしている。以下、本実施形態における液体吐出ヘッド10の位置調整機構について説明する。
【0023】
図6は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド位置調整機構の斜視図、
図7は、その平面図、
図8は、その断面正面図である。
【0024】
図6に示されるように、本実施形態に係る液体吐出ヘッド位置調整機構は、ヘッドプレート20に対するブラケット30の位置を調整する調整機構40と、ブラケット30をその長手方向(
図6における矢印A方向)に付勢する付勢部材としての板ばね45と、を備えている。
【0025】
具体的に、調整機構40は、ブラケット30の
図6における左側の長辺30aの長手方向位置を調整する第一の調整部材41と、ブラケット30の
図6における右側の長辺30bの長手方向位置を調整する第二の調整部材42と、第一の調整部材41及び第二の調整部材42の一方又は両方の調整部材を選択的に操作する操作部材43と、を備えている。なお、ここでいうブラケット30の左側の長辺30a及び右側の長辺30bとは、液体吐出ヘッドのノズル面と直交する方向から見た状態において、ブラケット30の長方形状の外郭を形成する4辺のうち、ブラケット30の長手方向Xに伸びる一対の辺を意味する。
【0026】
第一の調整部材41は、ブラケット30の左側の長辺30a(以下、「左辺」という。)に設けられた第一の歯列部材としての左ラック46と、左ラック46と噛み合う第一の調整歯車としての左調整歯車47と、を含む。左ラック46は、ブラケット30の左辺30a上及びその長手方向Xの延長線上に並ぶ複数の歯を有している。左調整歯車47は、大径歯部47aと、大径歯部47aよりも小径の小径歯部47bと、を有する二段歯車であり、小径歯部47bが左ラック46の一部の歯と噛み合っている(
図7参照)。
【0027】
第二の調整部材42は、ブラケット30の右側の長辺30a(以下、「右辺」という。)に設けられた第二の歯列部材としての右ラック48と、右ラック48と噛み合う第二の調整歯車としての右調整歯車49と、を含む。右ラック48は、ブラケット30の右辺30b上及びその長手方向Xの延長線上に並ぶ複数の歯を有している。右調整歯車49は、大径歯部49aと、大径歯部49aよりも小径の小径歯部49bと、を有する二段歯車であり、小径歯部49bが右ラック48の一部の歯と噛み合っている(
図7参照)。
【0028】
操作部材43は、左調整歯車47の大径歯部47aと噛み合う第一の操作歯車51と、右調整歯車49の大径歯部49aと噛み合う第二の操作歯車52と、第一の操作歯車51及び第二の操作歯車52のうちの一方又は両方の操作歯車を選択的に回転操作可能な操作軸50と、を含む。操作軸50は、その上端に、ユーザー又はサービスマンなどの操作者が操作軸50を手動で操作するために把持する把持部50aを有している。把持部50aの下方には、第一の操作歯車51及び第二の操作歯車52が、操作軸50と同軸上に配置されている。
【0029】
図8に示されるように、操作軸50は、各操作歯車51,52を貫通するように設けられている。操作軸50の外周面には、第一の操作歯車51の内周面に設けられた第一の係合溝55Aに対して係合可能な第一の係合突起54Aと、第二の操作歯車52の内周面に設けられた第二の係合溝55Bに対して係合可能な第二の係合突起54Bが設けられている。なお、各操作歯車51,52と操作軸50に設けられる係合部の凹凸関係は、本実施形態と逆でもよい。すなわち、各操作歯車51,52に係合突起が設けられ、操作軸50に各係合突起に係合可能な係合溝が設けられてもよい。
【0030】
図9は、操作軸50の内部構造を示す概略断面図である。
【0031】
図9に示されるように、操作軸50は、操作部(摘み部)50aが一体に設けられた外筒60と、外筒60内に配置される第一の内筒61及び第二の内筒62を有している。外筒60及び各内筒61,62は、それぞれ円筒状に形成されると共に、軸方向(
図9における上下方向)に移動可能に構成されている。
図9に示される状態は、外筒60及び各内筒61,62が図の上方へ移動する前の初期位置に配置された状態である。この状態において、第一の内筒61内には、第一の係合突起54Aが収容され、第二の内筒62内には、第二の係合突起54Bが収容されている。すなわち、各係合突起54A,54Bは、操作軸50の外側に突出しておらず、上記各係合溝55A,55B(
図8参照)に対して係合しない状態で保持されている。
【0032】
第一の係合突起54Aは、第一の内筒61内に収容されている突起保持部材63によって保持されている。また、第一の係合突起54Aは、突起保持部材63に設けられた付勢部材としてのばね65によって、外側へ突出する方向(
図9における右方向)へ付勢されている。
図9に示される状態においては、第一の係合突起54Aの先端が、第一の内筒61の内周面に突き当ることにより外側へ突出しないように保持されている。
【0033】
また、第一の内筒61内には、ばね65の付勢力に抗して第一の係合突起54Aの位置を保持する第一のストッパ部材67が設けられている。第一のストッパ部材67は、第一の内筒62内において軸方向(
図9における上下方向)へ移動可能に構成されている。また、外筒60の把持部50aには、第一のストッパ部材67を押し動かすための第一の操作部69と、第一の操作部69を元の位置(所定位置)に戻すように付勢する付勢部材としての復帰ばね70が設けられている。第一の操作部69は、外筒60の把持部50aに設けられた押下操作部80と、第一の内筒61内に配置された押圧部81と、押下操作部80と押圧部81とを連結し軸方向に伸縮可能な連結部82によって構成されている。
【0034】
第二の内筒62内においては、第二の係合突起54Bを保持する突起保持部材64と、第二の係合突起54Bを外側へ突出させるように付勢する付勢部材としてのばね66と、ばね66の付勢力に抗して第二の係合突起54Bの位置を保持する第二のストッパ部材68が設けられている。また、外筒60の把持部50aには、第二のストッパ部材68を軸方向(
図9における上下方向)に移動操作するための第二の操作部71と、第二の操作部71を軸方向の一方(
図9における上方)へ付勢する付勢部材としての操作ばね72と、操作ばね72の付勢力に抗して第二の操作部71を所定の位置に保持する位置保持部材としての保持ねじ73が設けられている。第二の操作部71は、外筒60の把持部50aに設けられた押下操作部83と、第二の内筒62内に配置され第二のストッパ部材68を保持する保持部84と、押下操作部83と保持部84とを連結し軸方向に伸縮可能な連結部85によって構成されている。
【0035】
第二の係合突起54Bを保持する突起保持部材64は、第二の係合突起54Bの突出方向(
図9における右方向)及びその反対方向へ移動可能に構成されている。また、第二の内筒62内には、突起保持部材64を第二の係合突起54Aの突出方向とは反対方向に付勢する付勢部材としての復帰ばね76が設けられている。
【0036】
続いて、
図9~
図13を参照しつつ、各係合突起54A,54Bの操作方法について説明する。
【0037】
まず、
図9に示される状態は、第一の係合突起54A及び第二の係合突起54Bのいずれも外側へ突出していない状態である。すなわち、第一の係合突起54Aは、第一のストッパ部材67及び第一の内筒61の内周面によって突出しないように保持され、第二の係合突起54Bは、第二のストッパ部材68によって突出しないように保持されている状態である。この状態においては、各係合突起54A,54Bが第一の操作歯車51及び第二の操作歯車52の各係合溝55A,55Bに対して係合しない。このため、操作軸50を回転させても、各操作歯車51,52は回転しない。
【0038】
次に、
図10に示される状態は、第一の係合突起54Aのみを外側へ突出させた状態である。
図10に示されるように、操作者が把持部50aを把持して外筒60を図の上方へ引き上げると、外筒60と一緒に第一の内筒61も上方へ移動する。これにより、外筒60が第一の係合突起54Aと対向する位置(突出方向の位置)から上方へ退避するため、第一の係合突起54Aは、ばね65によって押され、外側へ突出する。また、このとき、第一のストッパ部材67は、突出する第一の係合突起54Aによって図の上方へ押し上げられるが、第一のストッパ部材67が押し上げられると、第一のストッパ部材67に設けられた爪部74が第一の係合突起54Aの筐体部に引っ掛かる。これにより、第一のストッパ部材67の押し上げが規制され、これに伴い第一の係合突起54Aの突出方向への移動も規制される。その結果、第一の係合突起54Aは、所定の突出状態で保持される。
【0039】
このように、第一の係合突起54Aが外側へ突出した状態においては、第一の係合突起54Aが第一の係合溝55A内に進入するため、第一の係合突起54Aは第一の係合溝55Aに対して係合可能な状態となる。従って、この状態において、操作軸50を回転操作すると、第一の係合突起54Aが第一の係合溝55Aに係合し、第一の操作歯車51のみを回転させることができる。
【0040】
続いて、
図11に示される状態は、第一の係合突起54A及び第二の係合突起54Bの両方を外側へ突出させた状態である。両方の係合突起54A,54Bを突出させるには、上記
図10に示される状態から、
図11に示されるように、外筒60をさらに図の上方へ引き上げる。これにより、外筒60が第二の係合突起54Bと対向する位置(突出方向の位置)から上方へ退避する。また、操作軸50と一緒に第一の操作部69が上方へ引き上げられる。これにより、第二の係合突起54Bを保持する突起保持部材64が、上方へ移動する第一の操作部69の凸部86によって図の右側(突出方向)へ押し動かされる。次いで、保持ねじ73を緩め、第二の操作部71を図の上方へ移動可能な状態にする。これにより、第二の操作部71が操作ばね72によって図の上方へ押し上げられ、これに伴い第二のストッパ部材68が上方へ移動する。その結果、第二のストッパ部材68による規制が解除されるので、第二の係合突起54Bがばね66の付勢力を受けて図の右側へ移動し、外側へ突出する。なお、このとき、第二のストッパ部材68は、上記第一のストッパ部材67と同じように、第二の係合突起54Bによって上方へ押し上げられる力を受けるが、第二のストッパ部材68に設けられた爪部75が第二の係合突起54Bの筐体部に引っ掛かることにより、第二のストッパ部材68の押し上げが規制され、これに伴い第二の係合突起54Bの突出方向の移動も規制される。これにより、第二の係合突起54Bは、所定の突出状態で保持される。
【0041】
このように、両方の係合突起54A,54Bが外側へ突出した状態においては、各係合突起54A,54Bが、対応する係合溝55A,55B内に進入し、各係合溝55A,55Bに対して係合可能な状態となる。従って、この状態において、操作軸50を回転操作すると、各係合突起54A,54Bが対応する係合溝55A,55Bに係合し、第一の操作歯車51と第二の操作歯車52の両方を回転させることができる。
【0042】
さらに、両方の係合突起54A,54Bが突出する状態(
図11に示される状態)から、第一の係合突起54Aのみが突出する状態(
図10に示される状態)に戻すには、上記操作と逆の操作を行えばよい。すなわち、
図11に示される状態において、第二の操作部71の押下操作部83を押し下げて、第二のストッパ部材68を下方へ押し動かす。これにより、第二の係合突起54Bがばね66の付勢力に抗して図の左側(突出方向とは反対方向)に押し動かされる。また、この状態において、保持ねじ73を締め付けることにより、第二の操作部71及び第二のストッパ部材68の位置が戻らないように保持する。さらに、外筒60を図の下方へ移動させ、第一の操作部69(凸部86)による突起保持部材64の規制を解除する。すなわち、外筒60を下方へ移動させると、第一の操作部69も下方へ移動するので、突起保持部材64に対する第一の操作部69(凸部86)の接触が解除され、突起保持部材64が図の左側へ移動可能な状態となる。これにより、突起保持部材64が復帰ばね76の付勢力を受けて、図の左側へ移動する。その結果、突起保持部材64によって保持される第二の係合突起54Bも、図の右側へ移動し、第二の係合突起54Bは外側へ突出しない収納状態で保持される。
【0043】
さらに、第一の係合突起54Aのみが突出する状態(
図10に示される状態)から、第一の係合突起54A及び第二の係合突起54Bの両方が突出しない状態(
図9に示される状態)に戻すには、
図12に示されるように、第一の操作部69の押下操作部80を押し下げて、第一のストッパ部材67を図の下方へ押し動かす。これにより、第一の係合突起54Aがばね65の付勢力に抗して図の左側(突出方向とは反対方向)に押し動かされる。次に、この状態を保持しながら、
図13に示されるように、外筒60を図の下方へ移動させ、第一の内筒61を第一の係合突起54Aに対向する位置へ移動させる。これにより、第一の係合突起54Aは外側へ突出しない収納状態で保持される。なお、この状態において、押下操作部80の押し下げを解除すると、第一の操作部69は、復帰ばね70の付勢力によって元の位置(図の上方)へ戻される。
【0044】
続いて、液体吐出ヘッドの位置調整方法について説明する。
【0045】
まず、液体吐出ヘッドの長手方向位置を調整したい場合は、
図14に示されるように、第一の係合突起54Aと第二の係合突起54Bの両方を外側へ突出させる。この状態において、操作軸50を回転させると、第一の係合突起54Aが第一の係合溝55Aに係合し、第二の係合突起54Bが第二の係合溝55Bに係合するため、第一の操作歯車51と第二の操作歯車52の両方が回転する。
【0046】
このため、
図15に示されるように、左調整歯車47と右調整歯車49の両方が回転し、各調整歯車47,49(各小径歯部47b,49b)と噛み合う左ラック46及び右ラック48が、ブラケット30の長手方向Xうちの一方向(
図15に示される例においては図の上方向)へ移動する。
【0047】
ここで、
図15において、左調整歯車47と右調整歯車49は、いずれも右回り(時計回り)に回転しているが、本実施形態においては、各調整歯車47,49によって移動させられる各ラック46,48の移動方向は同じ方向となる。例えば、各調歯車47,49として、平歯車を用いた場合、左調整歯車47と右調整歯車49が
図15に示されるように同じ方向に回転すると、各ラック46,48が互いに反対方向へ移動するため、ブラケット30の長手方向Xへの移動ができない。これに対して、本実施形態においては、各調整歯車47,49として、はすば歯車(ヘリカルギヤ)を用いている(
図6参照)。特に、左調整歯車47には、大径歯部47aと小径歯部47bの各歯の向きが異なるはすば歯車が用いられていることにより、各調整歯車47,49が同じ方向に回転しても、各ラック46,48を同じ長手方向へ移動させることができるようにしている。すなわち、本実施形態においては、右調整歯車49として、大径歯部49aと小径歯部49bの各歯の向きが同じであるはすば歯車を用い、左調整歯車47として、大径歯部47aと小径歯部47bの各歯の向きが異なるはすば歯車を用いることにより、回転方向を調整するための中間歯車を用いることなく、ブラケット30の長手方向Xへの移動を実現している。
【0048】
このように、回転する2つの調整歯車47,49によって、ブラケット30がその長手方向Xのうちの一方向へ移動するため、ヘッドプレート20に対するブラケット30の長手方向Xの位置が調整される。その結果、ブラケット30に保持される液体吐出ヘッド10の長手方向Xの位置も調整される。
図15に示される例においては、操作軸50を左回り(反時計回り)に回転させることにより、ブラケット30を図の上側へ移動させているが(
図15中の二点鎖線参照)、これとは反対に、操作軸50を右回り(時計回り)に回転させた場合は、ブラケット30を図の下側へ移動させることが可能である。
【0049】
次に、液体吐出ヘッドの傾きを調整したい場合は、
図16に示されるように、第一の係合突起54Aのみを突出させた状態にする。この状態において、操作軸50を回転させると、第一の係合突起54Aが第一の係合溝55Aに係合するため、第一の操作歯車51のみが回転する。一方、第二の操作歯車52は、第二の係合突起54Bが突出していないため、回転軸50を回転させても回転しない。
【0050】
このため、
図17に示されるように、左調整歯車47のみが回転し、左調整歯車47(小径歯部47b)と噛み合う左ラック46が、ブラケット30の長手方向Xのうちの一方向(
図17に示される例においては図の上方向)へ移動する。
【0051】
一方、右調整歯車49は回転しないため、右ラック48は移動しない。このように、右ラック48は移動しないように拘束され、左ラック46のみが長手方向Xの一方向へ移動するので、ブラケット30は、右調整歯車49と右ラック48との噛み合い位置を基準に回転する。これにより、ヘッドプレート20に対するブラケット30の回転方向の位置が調整され、その結果、ブラケット30に保持される液体吐出ヘッド10の回転方向の位置(傾き)も調整される。
図17に示される例においては、操作軸50を左回り(反時計回り)に回転させることにより、ブラケット30を右方向へ回転させているが(
図17中の二点鎖線参照)、これとは反対に、操作軸50を右回り(時計回り)に回転させた場合は、ブラケット30を左方向へ回転させることが可能である。
【0052】
上記のような液体吐出ヘッドの長手方向及び傾き(回転方向)の位置調整は、必要に応じていずれか一方のみを行ってもよいし、両方行ってもよい。また、長手方向と傾きの両方の位置調整を行う場合は、先に長手方向の位置調整を行ってから傾きの位置調整を行ってもよいし、反対に、傾きの位置調整を行ってから長手方向の位置調整を行ってもよい。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る位置調整機構によれば、操作軸50を軸方向に操作することにより、第一の係合突起54Aと第二の係合突起54Bのうち、必要な係合突起を突出させ、操作軸50を回転させることにより、液体吐出ヘッドの長手方向位置又は傾きを簡単に調整することが可能である。すなわち、本実施形態の場合、液体吐出ヘッドの位置調整を行うために、上記特許文献1のような複数のボルトを回転操作する必要がないので、調整作業を簡便にすることができ、調整作業に要する労力を軽減できると共に作業時間も短縮できるようになる。
【0054】
また、本実施形態においては、ブラケット30をその長手方向に付勢する付勢部材としての板ばね45(
図6参照)が設けられていることにより、位置調整を行った際のブラケット30の姿勢を安定させることができる。
【0055】
上述の実施形態においては、ブラケット30が液体吐出ヘッド10と別体である構成を例に説明したが、ブラケット30は液体吐出ヘッド10と一体に構成されていてもよい。このような構成の液体吐出ヘッド10においても、ブラケット30の位置を調整することにより、液体吐出ヘッド10の位置調整が可能である。
【0056】
また、上述の実施形態においては、左調整歯車47と右調整歯車49のうち、左調整歯車47のみを回転させることによりブラケット30及び液体吐出ヘッド10の傾きを調整しているが、傾きを調整するために回転させる調整歯車は、左調整歯車47でもよいし、右調整歯車49でもよい。従って、右調整歯車49のみを回転させて、ブラケット30及び液体吐出ヘッド10の傾きを調整できるようにしてもよい。
【0057】
また、
図18に示される例のように、左ラック46及び右ラック48の各歯は、ブラケット30の一対の長辺30a,30bの上又はその長手方向Xの延長線上以外の位置に配置されてもよい。すなわち、左ラック46は、ブラケット30の左辺30aと右辺30bとの間の中心線Mよりも左側(左辺30a側)に設けられていればよく、右ラック48は、前記中心線Mよりも右側(右辺30b側)に設けられていればよい。
【0058】
また、
図19に示される例のように、操作軸50(把持部50a)に、ブラケット30の長手方向Xの移動量及び傾き量(回転量)のうち、少なくとも一方を視認可能な目盛90を設けてもよい。これにより、ブラケット30及び液体吐出ヘッド10の位置調整がより一層行いやすくなる。特に、
図3に示されるように、1つのヘッドプレート20に対して複数の液体吐出ヘッド10が設けられている構成においては、上記のような目盛90を設けることにより、各目盛90同士の差分から液体吐出ヘッド10同士の相対的位置を把握できるため、位置調整が行いやすくなる。なお、位置調整機構は、液体吐出ヘッド10ごと(ブラケット30ごと)に個別に設けられている場合に限らず、複数の液体吐出ヘッド(複数のブラケット30)の位置を1つの位置調整機構により調整可能にしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態においては、左調整歯車47及び右調整歯車49として、回転軸に対して歯が傾斜するはすば歯車を用いた場合を例に説明したが、はすば歯車に代えて、平歯車を用いてもよい。平歯車を用いた例としては、例えば、
図20及び
図21に示されるような構成を採用できる。
【0060】
図20及び
図21に示される例においては、左調整歯車47及び右調整歯車49を含む全ての歯車が平歯車により構成されているため、左調整歯車47と第一の操作歯車51との間に中間歯車59が設けられている。この場合、中間歯車59は、左調整歯車47の小径歯部47b及び第一の操作歯車51に噛み合うように配置され、左調整歯車47の大径歯部47aは左ラック46と噛み合っている。それ以外は、基本的に上述の実施形態と同じ構成である。
【0061】
この例においては、
図21に示されるように、操作軸50を回転させて、第一の操作歯車51と第二の操作歯車52の両方を回転させると、中間歯車59が設けられていることにより、左調整歯車47と右調整歯車49が互いに反対方向に回転する。このため、各調整歯車47,49に噛み合う左ラック46及び右ラック48は、いずれも長手方向Xの同じ方向(
図21における上方又は下方)へ移動し、ブラケット30(液体吐出ヘッド10)の長手方向位置を変更できる。このように、各歯車に平歯車を用いた構成においては、左調整歯車47と第一の操作歯車51との間に中間歯車59を設けることにより、上述の実施形態と同じように、操作軸50を回転操作してブラケット30(液体吐出ヘッド10)の位置調整を行うことが可能である。なお、中間歯車59は、左調整歯車47と第一の操作歯車51との間に配置される以外に、右調整歯車49と第二の操作歯車52との間に配置されてもよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限らず、発明の内容を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能である。
【0063】
本発明において、「液体吐出装置」とは、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。この「液体吐出装置」には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0064】
また、「液体吐出装置」には、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含まれる。
【0065】
例えば、「液体吐出装置」としては、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0066】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形などの有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターンなどを形成するもの、三次元像を造形するものも、「液体吐出装置」として含まれる。
【0067】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0068】
また、上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0069】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒などの溶媒、染料や顔料などの着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤などの機能性付与材料、DNA、アミノ酸又はたんぱく質、カルシウムなどの生体適合材料、天然色素などの可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子又は発光素子の構成要素、あるいは電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液などの用途で用いることができる。
【0070】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0071】
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【符号の説明】
【0072】
1 インクジェット記録装置(液体吐出装置)
10 液体吐出ヘッド
20 ヘッドプレート(取付部材)
30 ブラケット(ヘッド保持部材)
40 調整機構
41 第一の調整部材
42 第二の調整部材
43 操作部材
45 板ばね(付勢部材)
46 左ラック(第一の歯列部材)
47 左調整歯車(第一の調整歯車)
48 右ラック(第二の歯列部材)
49 右調整歯車(第二の調整歯車)
50 操作軸
50a 把持部
51 第一の操作歯車
52 第二の操作歯車
90 目盛
X 長手方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】