(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077714
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】流体制御バルブ及び流体制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20230530BHJP
F16K 1/34 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
F16K1/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191109
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】赤土 和也
(72)【発明者】
【氏名】河合 祐弥
【テーマコード(参考)】
3H052
5H307
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA35
3H052CA04
3H052CB01
3H052DA01
3H052DA06
3H052EA01
5H307BB01
5H307BB06
5H307DD03
5H307EE07
5H307FF12
5H307HH04
5H307HH12
(57)【要約】
【課題】大流量化しつつ応答性を向上する。
【解決手段】弁座面31sを有するオリフィス31であって、弁座面31s及び弁座面31sに対向する対向面31tに開口する縦流路部VR(VR1)と、弁座面31s及び対向面31tの間の外側周面31oに開口し、縦流路部VR(VR1)と交差する横流路部HRとを有し、縦流路部VR(VR1)は、横流路部HRとの交差部Xから対向面31t側が間隔を空けて分岐している。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座面を有するオリフィスと、
前記弁座面に着座する着座面を有する弁体と、
前記弁体を駆動する駆動部と、
前記オリフィス及び前記弁体を収容する収容凹部が形成された流路ブロックとを備え、
前記オリフィスは、
前記弁座面及び前記弁座面に対向する対向面に開口する縦流路部と、
前記弁座面及び前記対向面の間の外側周面に開口し、前記縦流路部と交差する横流路部とを有し、
前記縦流路部は、前記横流路部との交差部から前記対向面側が間隔を空けて分岐している、流体制御バルブ。
【請求項2】
前記縦流路部は、前記交差部よりも前記対向面側に2つの分岐流路を有しており、
前記2つの分岐流路の中心軸は、前記横流路部の中心軸に対してずれている、請求項1に記載の流体制御バルブ。
【請求項3】
前記縦流路部における前記交差部よりも前記弁座面側の開口幅は、前記横流路部の流路径よりも大きい、請求項1又は2に記載の流体制御バルブ。
【請求項4】
前記縦流路部を複数有しており、
前記横流路部が複数有している、請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体制御バルブ。
【請求項5】
複数の前記縦流路部の少なくとも1つは、前記横流路部とは交差しないものである、請求項4に記載の流体制御バルブ。
【請求項6】
前記対向面には、前記縦流路部の開口から径方向外側に向かって切り欠かれた切り欠き部が形成されている、請求項1乃至5の何れか一項に記載の流体制御バルブ。
【請求項7】
複数の前記縦流路部が円周上に形成されており、前記円周の中央部に前記弁座面及び前記対向面に開口する中央流路部が形成されており、
前記中央流路部は、前記弁座面側から前記対向面に向かうに連れて流路が連続的に拡径するものである、請求項1乃至6の何れか一項に記載の流体制御バルブ。
【請求項8】
前記収容凹部の底面には、上流側流路が接続されており、前記収容凹部の内側周面には、下流側流路が接続されており、
前記収容凹部の内側周面には、前記横流路部の開口に対応して環状凹部が形成されている、請求項1乃至7の何れか一項に記載の流体制御バルブ。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の流体制御バルブと、
流路の流量を測定する流量計測部と、
前記流量計測部で測定される測定値に基づいて、前記流体制御バルブを制御する制御部とを備える、流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御バルブ及び流体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流体制御バルブとしては、特許文献1に示すように、例えばマスフローコントローラに用いられる制御弁がある。この制御弁は、流入口及び流出口を有する弁キャビティと、この弁キャビティ内に配置され、複数の鉛直流路を有しており、その底面が流入口に対向しているポペット(弁体)と、弁キャビティ内でポペット及び流出口の間に配置されるオリフィスとを備えている。ここで、弁キャビティの底面に流入口が形成されており、弁キャビティの内側周面に流出口が形成されている。
【0003】
ここで、オリフィスは、大流量化を可能にするために、底面(弁座面)から上面まで延在する複数の鉛直流路と、オリフィスの外側周面に開口する複数の水平流路とが形成されており、水平流路の夫々は、オリフィスの鉛直流路の少なくとも1つと交差している。そして、ポペットがオリフィスの底面(弁座面)から離れることによって、ガスがオリフィスの底面から鉛直流路を通って上昇し、その後、水平流路を通って、又は、オリフィスの上面に形成された表面流路に沿って水平方向に進み、流出口に流れる。
【0004】
しかしながら、上記の構成では、鉛直流路を上昇したガスは水平流路に流入し難く、そのまま水平流路を横断してオリフィスの上面に流れ易くなってしまい、流量の応答性が悪くなる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述したような問題に鑑みてなされたものであり、大流量化しつつ流量の応答性を向上することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る流体制御バルブは、弁座面を有するオリフィスと、前記弁座面に着座する着座面を有する弁体と、前記弁体を駆動する駆動部と、前記オリフィス及び前記弁体を収容する収容凹部が形成された流路ブロックとを備え、前記オリフィスは、前記弁座面及び前記弁座面に対向する対向面に開口する縦流路部と、前記弁座面及び前記対向面の間の外側周面に開口し、前記縦流路部と交差する横流路部とを有し、前記縦流路部は、前記横流路部との交差部から前記対向面側が間隔を空けて分岐していることを特徴とする。
【0008】
このような流体制御バルブであれば、横流路部及び縦流路部が互いに交差する構成であるので、縦穴だけの場合に比べて大流量化が可能となる。また、縦流路部が横流路部との交差部から対向面側において間隔を空けて分岐しているので、それら分岐流路の間に横流路部の内壁面が存在することになる。その結果、縦流路部を上昇した流体は、分岐流路の間にある横流路部の内壁面に当たり、横流路部に流入しやすくなり、流量の応答性を向上させることができる。したがって、本発明によれば、大流量化しつつ流量応答性を向上することができる。その他、縦流路部が横流路部との交差部から分岐しているので、対向面から流出する流体の分布を均一化することができる。
【0009】
縦流路部の具体的な実施の態様としては、前記縦流路部は、前記交差部よりも前記対向面側に2つの分岐流路を有しており、前記2つの分岐流路の中心軸は、前記横流路部の中心軸に対してずれていることが望ましい。具体的には、平面視において、横流路部の中心軸に直交する方向に2つの分岐流路が配置された構成となる。
【0010】
縦流路部に流入する流量を大きくして横流路部に流入しやすくするためには、前記縦流路部における前記交差部よりも前記弁座面側の開口幅は、前記横流路部の流路径よりも大きいことが望ましい。
【0011】
本発明の流体制御バルブを用いてより一層の大流量化を図るためには、前記縦流路部を複数有しており、前記横流路部が複数有していることが望ましい。
【0012】
すべての縦流路部を横流路部に交差させる構成では、横流路部の本数により縦流路部の本数が制約されていまい、より一層の大流量化を実現することができない。この問題を好適に解決して大流量化を図るためには、複数の前記縦流路部の少なくとも1つは、前記横流路部とは交差しないものであることが望ましい。
【0013】
縦流路部を流れて対向面から流出した流体を、横流路部を流れて外側周面から流出した流体に合流させるためには、前記対向面には、前記縦流路部の開口から径方向外側に向かって切り欠かれた切り欠き部が形成されていることが望ましい。
【0014】
本発明の流体制御バルブでは、オリフィスの中央部に弁体を駆動する駆動部のプランジャが挿し込まれる構成となる。この構成における具体的な実施の態様としては、複数の前記縦流路部が円周上に形成されており、前記円周の中央部に前記弁座面及び前記対向面に開口する中央流路部が形成されていることが考えられる。ここで、中央流路部にプランジャが挿し込まれる構成となる。
この構成において、前記中央流路部は、前記弁座面側から前記対向面に向かうに連れて流路が連続的に拡径するものであることが望ましい。この構成であれば、中央流路部を流れる流体の圧損を低減することができ、更なる大流量化が可能となる。
【0015】
前記収容凹部の底面には、上流側流路が接続されており、前記収容凹部の内側周面には、下流側流路が接続されており、前記収容凹部の内側周面には、前記横流路部の開口に対応して環状凹部が形成されていることが望ましい。
この構成であれば、収容凹部の内側周面に形成された環状凹部により横流路部から流出した流体の流路を大きくすることができ、圧損を低減して大流量化が可能となる。
【0016】
上記の流体制御バルブを備えた流体制御装置も本発明の一態様である。具体的にこの流体制御装置は、上記の流体制御バルブと、流路の流量を測定する流量計測部と、前記流量計測部で測定される測定値に基づいて、前記流体制御バルブを制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上に述べた本発明によれば、縦流路部が横流路部との交差部から対向面側において間隔を空けて分岐しているので、大流量化しつつ応答性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る流体制御装置の構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態の流体制御バルブのオリフィス及び弁体を示す部分拡大断面図である。
【
図6】同実施形態のオリフィスの平面図、及び、A-A線断面図である。
【
図7】同実施形態のオリフィスの平面図、及び、B-B線断面図である。
【
図8】同実施形態のオリフィスの平面図、及び、C-C線断面図である。
【
図9】同実施形態のオリフィスの平面図、及び、D-D線断面図である。
【
図10】変形実施形態に係る流体制御装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態に係る流体制御装置について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0020】
<装置構成>
本実施形態の流体制御装置100は、いわゆるマスフローコントローラであって、例えば半導体製造プロセスを行うチャンバに供給されるガスの流量を制御するために用いられるものである。なお、流体制御装置100はガスだけでなく、液体を制御するものであってもよい。
【0021】
具体的に流体制御装置100は、
図1に示すように、内部に流路Rが形成された流路ブロック2と、流路Rのガスを制御するための流体制御バルブ3と、流路Rの流量を測定する流量計測部4と、流量計測部4で測定される測定値に基づいて、流体制御バルブ3を制御する制御部5とを備えている。
【0022】
流路ブロック2は、流体制御バルブ3が取り付けられる収容凹部21が形成されている。この収容凹部21は、流路ブロック2の一面(
図1では上面)に形成されている。また、収容凹部21の底面には、上流側流路R1が接続されており、収容凹部21の内側周面には、下流側流路R2が接続されている。つまり、流路ブロック2に形成された流路Rは、収容凹部21によって、上流側流路R1及び下流側流路R2に分断されている。
【0023】
なお、上流側流路R1の上流端には、ガスの導入ポート(不図示)が設けられており、下流側流路R2の下流端には、ガスの導出ポート(不図示)が設けられている。
【0024】
流体制御バルブ3は、いわゆるノーマルクローズのピエゾバルブであり、印加される電圧によってその開度が制御される。なお、流体制御バルブ3は、いわゆるノーマルオーブンのものであっても良い。
【0025】
具体的に流体制御バルブ3は、
図1及び
図2に示すように、弁座面31sを有するオリフィス(弁座部材)31と、弁座面31sに着座する着座面32sを有する弁体32と、弁体32を駆動する駆動部33とを備えている。
【0026】
オリフィス31は、収容凹部21に収容されるものである。ここで、オリフィス31は、弁座面31sが収容凹部21の底面を向くように収容凹部21に収容される。このオリフィス31には、弁座面31sに流入口が形成されるとともに、当該流入口に連通する内部流路31Rが形成されている。なお、オリフィス31の詳細は、後述する。
【0027】
弁体32は、収容凹部21の内部において移動可能に設けられている。この弁体32は、収容凹部21の内部において、オリフィス31の弁座面31sと収容凹部21の底面との間に設けられている。
【0028】
具体的に弁体32は、上面に着座面32sを有しており、着座面32sには流出口が形成されるとともに、当該流出口に連通する内部流路32Rが形成されている。なお、着座面32sの流出口と弁座面31sの流入口とは、弁座面31sに着座面32sが着座した状態で、互いに重ならない位置に形成されている。
【0029】
また、弁体32は、収容凹部21の内部において支持部材34により移動可能に支持されている。この支持部材34は、収容凹部21に収容される円環状の支持ベース341と、当該支持ベース341の内部に設けられ、弁体32を支持する板バネ等の弾性体342とを有している。これにより、弁体32は、弾性体342によって支持ベース341の内部に支持されることになる。なお、支持ベース341及び弾性体342は何れもガスが流通可能に構成されている。また、支持ベース341の円環状の上面には、オリフィス31の下面が密着して、弁体32を収容するとともに上流側流路R1に連通する弁室S1が形成される。
【0030】
駆動部33は、例えば、ピエゾ素子を複数枚積層して形成されるピエゾスタック331と、当該ピエゾスタック331の伸長により変位するプランジャ機構332とを備えている。
【0031】
ピエゾスタック331は、ケーシング333内に収容されており、その先端部がプランジャ機構332に接続してある。本実施形態のプランジャ機構332は、ダイアフラム部材332aと、当該ダイアフラム部材332aを介して弁体32の上面を押圧する押圧部材332bとを有している。このプランジャ機構332は、オリフィス31の中央流路部CRに挿し通されて弁体32の上面に接触する。
【0032】
そして、ピエゾスタック331に所定の電圧が印加されるとピエゾスタック331が伸長し、プランジャ機構332が弁体32を開弁方向に付勢して、印加された電圧に応じた距離だけ弁座面31sが着座面32sから離間して開状態となる。そして、この隙間を通じて上流側流路R1と下流側流路R2とが連通する。一方、ピエゾスタック331に電圧を印加しないノーマル状態においては、支持部材34の弾性体342の弾性力によって、弁体32が閉状態となる。
【0033】
流量計測部4は、圧力式のものであり、流路Rに設けられた層流素子41と、層流素子41の上流側の圧力を測定できるように設けられた第1圧力センサ42と、層流素子42の下流側の圧力を測定できるように設けられた第2圧力センサ43と、第1圧力センサ42と第2圧力センサ43で測定された第1圧力、第2圧力に基づいて流路Rを流れる流体の流量を算出する流量算出部44とを有している。この流量計測部4は、流路Rにおいて、流体制御バルブ3の上流側又は下流側に設けられる。なお、流体抵抗41として層流素子の代わりに音速ノズル等を用いても構わない。
【0034】
制御部5は、流量計測部4で測定される測定流量に基づいて、流体制御バルブ3を制御するものである。この制御部5は、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、各種入出力手段を備えたコンピュータであり、メモリに格納されている流体制御プログラムが実行され、CPU及び周辺機器が協働することによって、流体制御バルブ3を制御する。
【0035】
制御部5は、外部から入力される指令流量と、流量計測部4で測定される測定流量とに基づいて流体制御バルブ3の開度を制御する。具体的に制御部5は、指令流量と測定流量の偏差が小さくなるように流体制御バルブ3の開度を制御する。本実施形態の制御部5は、指令流量と測定流量の偏差に対してPID演算を行い、その結果に応じた指令電圧を駆動部33の駆動回路に対して出力する。駆動回路は入力された指令電圧に対応する電圧をピエゾスタック331に対して印加する。
【0036】
<オリフィス31の具体的構成>
そして、本実施形態のオリフィス31は、大流量化を可能にするとともに流量の応答性を向上するための構成を有している。
【0037】
具体的にオリフィス31は、
図2~
図9に示すように、概略円盤状をなすものであり、内部流路31Rとして、弁座面31s及び弁座面31sに対向する対向面31tに開口する複数の縦流路部VR(VR1、VR2)と、弁座面31s及び対向面31tの間の外側周面31oに開口し、縦流路部VRと交差する複数の横流路部HRとを有している。
【0038】
本実施形態のオリフィス31には、複数の縦流路部VR(VR1、VR2)が円周上に形成されており(
図3及び
図4参照)、当該円周の中央部に弁座面31s及び対向面31tに開口する中央流路部CRが形成されている(
図6~
図8等参照)。この中央流路部CRは、駆動部33を構成するプランジャ機構332が挿し通される流路である(
図2参照)。この中央流路部CRは、弁座面31s側から対向面31tに向かうに連れて流路が連続的に拡径するものである。この構成により、中央流路部CRを流れるガスの圧損を低減することができ、大流量化を可能としている。
【0039】
複数の横流路部HRは、
図3、
図6~
図8に示すように、オリフィス31の外側周面31oに開口するとともに、中央流路部CRを形成する内側周面31iにも開口している。本実施形態では、4本の横流路部HRが放射状に形成されている(
図4、
図5参照)。各横流路部HRは、直線状をなすものであり、流路断面が円形状をなすものである(
図6等参照)。
【0040】
そして、複数の縦流路部VRは、
図3~
図5等に示すように、横流路部HRと交差して連通する第1縦流路部VR1と、横流路部HRとは交差しない第2縦流路部VR2とを有している。なお、第2縦流路部VR2は、互いに隣接する横流路部HRの間に形成されており、分岐しない流路である(
図8参照)。
【0041】
具体的に第1縦流路部VR1は、
図9に示すように、横流路部HRとの交差部Xから対向面31t側が間隔を空けて2本の分岐流路VR11、VR12に分岐している。つまり、第1縦流路部VR1は、横流路部HRとの交差部Xから弁座面31s側は1本の流路であり、横流路部HRとの交差部Xから対向面31t側は2本の流路である。
【0042】
ここで、2つの分岐流路VR11、VR12の中心軸C11、C12は、横流路部HRの中心軸C2に対してずれている。つまり、平面視において、横流路部HRの中心軸C2に直交する方向に2つの分岐流路VR11、VR12が並んで配置された構成となる。なお、2つの分岐流路VR11、VR12の中心軸C11、C12は互いに平行である。この構成により、2つの分岐流路VR11、VR12の間には、横流路部HRを構成する内壁面31kが存在することになり、当該内壁面31kにより2つの分岐流路VR11、VR12が仕切られる構成となる。また、縦流路部VR1を分岐させることによって、オリフィス31の機械的強度を保つことができる。
【0043】
また、第1縦流路部VR1における交差部Xよりも弁座面31s側の開口幅(流路幅)は、横流路部HRの流路径よりも大きい構成としてある(
図9参照)。この構成により、第1縦流路部VR1に流入するガスの流量を大きくして、ガスが横流路部HRに流入しやすくしている。なお、上記の弁座面31s側の開口幅(流路幅)は、2つの分岐流路VR11、VR12の内壁面において最も離れた位置の距離である。
【0044】
本実施形態では、
図5に示すように、オリフィス31の弁座面31sに、円周上に配置された複数の縦流路部VR(VR1、VR2)に沿って形成された環状溝31Mが形成されている。この環状溝31Mによって、複数の縦流路部VR(VR1、VR2)が互いに連通する構成としてあり、この環状溝31Mによって縦流路部VR(VR1、VR2)の一部が構成される。つまり、環状溝31Mの弁座面31s側の開口が弁座面31sに形成された流入口となる。この構成により、弁座面31sに形成される内部流路31Rの流入口が大きくなり、大流量化が可能となる。
【0045】
また、オリフィス31の対向面31tには、
図3及び
図4等に示すように、縦流路部VRの開口から径方向外側に向かって切り欠かれた切り欠き部31Kが形成されている。本実施形態では、横流路部HRとは交差しない第2の縦流路部VR2の開口に対応して形成されている。縦流路部VR及び中央流路部CRを流れて対向面31tから流出したガスは、切り欠き部31Kを介して、オリフィス31の外側周面31o側に流入し、収容凹部21の内側周面に接続された下流側流路R2に流入する。この切り欠き部31Kにより、第1、第2縦流路部VR1、VR2を流れて対向面31tから流出したガスを、横流路部HRを流れて外側周面31oから流出したガスに合流しやすくなる。
【0046】
ここで、収容凹部21の内側周面には、
図2に示すように、横流路部HRの開口に対応して環状凹部21Mが形成されている。この構成であれば、収容凹部21の内側周面に形成された環状凹部21Mにより横流路部HRから流出したガスの流路を大きくすることができ、圧損を低減して大流量化が可能となる。その他、
図3等に示すように、オリフィス31の外側周面31oにも、全周に渡って凹部31Nが形成されている。凹部31Nには、切り欠き部31Kが連通している。この凹部31Nの底面は、横流路部HRが開口している。この凹部31Nにより、収容凹部21の環状凹部21Mとの間の流路がさらに大きくなり、圧損を低減して大流量化が可能となる。
【0047】
次に、オリフィス31の製造方法の一例を説明する。
【0048】
まず、円盤状をなす母材の中央部に中央流路部CRを切削加工などの機械加工により形成する。また、母材の外側周面31o及び中央流路部CRの内側周面31iに開口するように複数の横流路部HRを切削加工などの機械加工により形成する。
【0049】
次に、母材の弁座面31sとなる面に環状溝31Mを切削加工などの機械加工により形成する。ここで、環状溝31Mの深さは、横流路部HRに連通する深さである。この環状溝31Mにより、第1縦流路部VR1及び第2縦流路部VR2の一部が構成される。
【0050】
また、母材の対向面31tとなる面から、横流路部HRの中心軸C2を挟んだ両側から第1縦流路部VR1の2つの分岐流路VR11、VR12を切削加工などの機械加工により形成する。この分岐流路VR11、VR12は、横流路部HRに連通するように形成される。
【0051】
さらに、母材の対向面31tとなる面から、横流路部HRと交差しない位置に第2縦流路部VR2を切削加工などの機械加工により形成する。この第2縦流路部VR2は、環状溝31Mに連通するように形成される。その他、上述したオリフィス31のその他の構成も切削加工などの機械加工により形成する。これにより、オリフィス31が製造される。
【0052】
<本実施形態の効果>
このように構成した流体制御装置100であれば、横流路部HR及び第1縦流路部VR1が互いに交差する構成であるので、大流量化が可能となる。また、縦流路部VRが横流路部HRとの交差部Xから対向面31t側において間隔を空けて分岐しているので、それら分岐流路VR11、VR12の間に横流路部HRを形成する内壁面31kが存在することになる。その結果、第1縦流路部VR1を上昇したガスは、分岐流路VR11、VR12の間にある横流路部HRを形成する内壁面31kに当たり、横流路部HRに流入しやすくなり、流量の応答性を向上させることができる。また、第1縦流路部VR1の流入口を大きくすることにより、大流量化も可能となる。したがって、本実施形態であれば、大流量化しつつ流量応答性を向上することができる。その他、縦流路部VRが横流路部HRとの交差部Xから分岐しているので、対向面31tから流出するガスの分布を均一化することができる。特に本実施形態では、第1縦流路部VR1の2つ分岐流路VR11、VR12の流出口と、第2縦流路部VR2の流出口とが円周上に形成されているので、対向面31tから流出するガスの分布をより一層均一化することができる。
【0053】
<その他の実施形態>
例えば、前記実施形態では、縦流路部VRにおいて横流路部HRに交差しないものがあったが、すべての縦流路部VRが横流路部HRと交差する構成としても良い。
【0054】
また、前記実施形態では、横流路部HRに交差した縦流路部VRの全てが交差部Xから分岐する構成であったが、横流路部HRに交差した縦流路部VRの一部は交差部Xから分岐しない構成としても良い。
【0055】
さらに、横流路部HRの本数は、前記実施形態に限られず、1~3本であっても良いし、5本以上であっても良い。
【0056】
その上、前記実施形態のオリフィス31は、流入口が1つの円周上に形成された例であったが、流入口が同心円状に配置された複数の円周上に形成されたものであっても良い。
【0057】
前記実施形態の流量計測部4は圧力式のものであったが、熱式のものであっても良い。具体的に熱式の流量計測部4は、
図10に示すように、流路Rに設けられた分流素子(抵抗素子)45と、分流素子45の上流側から分岐し、当該分流素子45の下流側に合流する細管46と、細管46に巻回され、それぞれ一定温度に保たれるように電圧が印加される2つの電熱コイル47と、各電熱コイル47に印加される電圧差を検出して流路Rを流れるガスの流量を算出する流量算出部48とを有している。この流量計測部4は、流路Rにおいて、流体制御バルブ3の上流側又は下流側に設けられる。なお、流量計測部における流量計測原理は、上記に限られずどのような方式であっても良い。
【0058】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0059】
100 ・・・流体制御装置
2 ・・・流路ブロック
21 ・・・収容凹部
R1 ・・・上流側流路
R2 ・・・下流側流路
21M ・・・環状凹部
3 ・・・流体制御バルブ
31 ・・・オリフィス
31s ・・・弁座面
31t ・・・対向面
CR ・・・中央流路部
VR ・・・縦流路部
VR1 ・・・第1縦流路部
VR2 ・・・第2縦流路部
HR ・・・横流路部
X ・・・交差部
VR11・・・分岐流路
VR12・・・分岐流路
C11 ・・・分岐流路の中心軸
C12 ・・・分岐流路の中心軸
C2 ・・・横流路部の中心軸
31K ・・・切り欠き部
32s ・・・着座面
32 ・・・弁体
33 ・・・駆動部