(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000780
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20221222BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221222BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H01L21/68 R
H01L21/302 101C
H01L21/302 101D
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101788
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】パク ギョンミン
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信峰
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BA04
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB29
5F004CA05
5F004CA06
5F045AA08
5F045DP03
5F045EF05
5F045EM02
5F045EM05
5F045EM09
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA33
5F131CA42
5F131EA03
5F131EA23
5F131EB11
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プラズマ処理に用いられるリングアセンブリを適切に昇降可能であるリフトピン機構を備えたプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置は、プラズマ処理チャンバと、プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持部11と、を備える。基板支持部は、導電性基台112と、基板支持面を有する静電チャック113と、基板支持面上の基板を囲むように配置されるエッジリング122と、エッジリングの下方に配置され複数の貫通孔を有するカバーリング121と、複数のリフトピン131と、複数のリフトピンのうち少なくとも1つに固定され、上側部分131aを囲むように下側部分131b上に配置され、カバーリングを支持する少なくとも1つのスペーサ133と、複数のリフトピンを縦方向に移動させる少なくとも1つのアクチュエータ132と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部と、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持部と、を備え、
前記基板支持部は、
基台と、
前記基台の上方に配置され、基板支持面を有する静電チャックと、
前記基板支持面上の基板を囲むように配置される第1環状部材と、
前記第1環状部材の下方に配置され、複数の貫通孔を有する第2環状部材と、
前記複数の貫通孔のそれぞれに対応して配置される複数のリフトピンであり、各リフトピンは、第1の幅を有する上側部分と、前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する下側部分とを有し、前記上側部分は、前記第2環状部材の対応する前記貫通孔を介して前記第1環状部材を支持するように構成される、複数のリフトピンと、
前記複数のリフトピンのうち少なくとも1つに固定される少なくとも1つのスペーサであり、前記スペーサは、前記上側部分を囲むように前記下側部分上に配置され、前記スペーサは、前記第2環状部材を支持するように構成される、少なくとも1つのスペーサと、
前記複数のリフトピンを縦方向に移動させるように構成される少なくとも1つのアクチュエータと、を含む、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記スペーサが絶縁材料により構成される、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記スペーサが導電性材料により構成される、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記スペーサは、複数の層を有する積層体により構成され、前記複数の層の各々は、絶縁材料又は導電性材料を有する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記絶縁材料はQz、SA、Y2O3、PTFE又はPCTFEを有する、請求項2又は4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記導電性材料はSi又はSiCを有する、請求項3又は4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記上側部分と前記スペーサとの間に配置され、FFKM系ゴム材料により構成される脱落防止部材を更に有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記スペーサは螺合内周面を有し、前記上側部分は螺合外周面を有し、前記螺合内周面及び前記螺合外周面は互いに螺合する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記スペーサは、前記第2環状部材を支持するための支持面を有し、前記支持面は、内側から外側に向けて下方に傾斜している、請求項1~8のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記支持面は、テーパ形状又はラウンド形状を有する、請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記基板支持部は、前記第1環状部材と前記第2環状部材の間に配置される第3環状部材をさらに含み、
前記第3環状部材は、前記第2環状部材の前記複数の貫通孔に対応して形成される複数の他の貫通孔を有し、
前記リフトピンの前記上側部分は、前記第2環状部材の対応する貫通孔及び前記第3環状部材の対応する他の貫通孔を介して前記第1環状部材を支持するように構成され、
前記スペーサは、第3の幅を有する下側スペーサ部分と、前記第3の幅よりも小さい第4の幅を有する上側スペーサ部分と、を有し、前記上側スペーサ部分は、前記第2環状部材の対応する貫通孔を介して前記第3環状部材を支持するように構成され、前記下側スペーサ部分は、前記第2環状部材を支持するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記基板支持部は、前記少なくとも1つのアクチュエータに固定される固定部材を更に含み、
前記リフトピンは、前記固定部材によって支持され、
前記スペーサは、
高比重部材と、
前記高比重部材の表面を覆うように形成されるコーティング層と、を有する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのアクチュエータは、前記複数のリフトピンを第1上昇位置、第2上昇位置及び下降位置の間で縦方向に移動させるように構成され、前記第1上昇位置において前記第1環状部材が第1の高さに配置され、前記第2上昇位置において前記第2環状部材が前記第1の高さに配置され、
前記スペーサは、前記第1上昇位置における前記下側部分と前記第2環状部材との間の距離に基づき決定される縦方向寸法を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リング載置面上に載置された第1リング及び第2リングを下方から支持して昇降するためのリフタピンを備える載置台が開示されている。第2リングにはリフタピンが挿通する貫通孔が形成されている。そして特許文献1の記載のリフタピンは、貫通孔よりも小径を有し貫通孔を挿通して第1リングを支持する第1保持部と、貫通孔よりも大径を有し第1保持部の外周から突出する突出部により第2リングを支持する第2保持部と、が軸方向に連接して構成される。
【0003】
また特許文献2には、基板処理システムにおいてトップリング及びミドルリングの置換時に使用されるリフトピン機構が開示されている。特許文献2に記載のリフトピン機構は、下部電極に形成された貫通孔を挿通してトップリングの下面に係合するように構成される上部部材と、前記貫通孔の下面に係合するように構成される下部部材とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-130603号公報
【特許文献2】国際公開第2020/231611号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示にかかる技術は、プラズマ処理に用いられるリングアセンブリを適切に昇降可能であるリフトピン機構を備えたプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、プラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバ内の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部と、前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持部と、を備え、前記基板支持部は、基台と、前記基台の上方に配置され、基板支持面を有する静電チャックと、前記基板支持面上の基板を囲むように配置される第1環状部材と、前記第1環状部材の下方に配置され、複数の貫通孔を有する第2環状部材と、前記複数の貫通孔のそれぞれに対応して配置される複数のリフトピンであり、各リフトピンは、第1の幅を有する上側部分と、前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する下側部分とを有し、前記上側部分は、前記第2環状部材の対応する前記貫通孔を介して前記第1環状部材を支持するように構成される、複数のリフトピンと、前記複数のリフトピンのうち少なくとも1つに固定される少なくとも1つのスペーサであり、前記スペーサは、前記上側部分を囲むように前記下側部分上に配置され、前記スペーサは、前記第2環状部材を支持するように構成される、少なくとも1つのスペーサと、前記複数のリフトピンを縦方向に移動させるように構成される少なくとも1つのアクチュエータと、を含む、プラズマ処理装置。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、プラズマ処理に用いられるリングアセンブリを適切に昇降可能であるリフトピン機構を備えたプラズマ処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態にかかるプラズマ処理システムの構成例を示す概略図である。
【
図2】実施形態にかかるプラズマ処理装置の構成例を示す縦断面図である。
【
図3】実施形態にかかる基板支持部の構成例を示す概略図である。
【
図4A】エッジリングのリフトアップ時の様子を示す説明図である。
【
図4B】カバーリングのリフトアップ時の様子を示す説明図である。
【
図6】スペーサの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図7A】スペーサの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図7B】スペーサの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図8A】スペーサの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図8B】第3環状部材のリフトアップ時の様子を示す説明図である。
【
図9】スペーサの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図10A】リフトピンの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図10B】リフトピンの可動部が上方に取り残された状態の説明図である。
【
図11】スペーサの他の構成例を示す縦断面図である。
【
図12A】スペーサの厚み決定の一連の流れを示す説明図である。
【
図12B】スペーサの厚み決定の一連の流れを示す説明図である。
【
図13】スペーサの厚み決定の一連の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
半導体デバイスの製造工程では、チャンバ中に供給された処理ガスを励起させてプラズマを生成することで、基板支持部に支持された半導体基板(以下、単に「基板」という。)に対して、エッチング処理、成膜処理、拡散処理などの各種プラズマ処理が行われる。当該プラズマ処理においては、基板支持部に支持された基板を取り囲むように、例えばエッジリングやカバーリング等の複数の環状部材(以下、複数の環状部材を総称して「リングアセンブリ」という。)が配置される。
【0010】
ところで、基板支持部に対するリングアセンブリの搬入出に際しては、軸方向に1段以上の段差部を有するリフトピンを用いて、複数の環状部材のそれぞれが、搬送アームとの間で受渡しが行われる規定高さまで昇降される。しかしながら、このように同一のリフトピンを用いて複数の環状部材の昇降を行う場合、一の環状部材の昇降位置にリフトピンの位置を調整すると、かかる調整量や積み上げ公差に起因して、他の環状部材を適切に規定高さまで昇降できなくなるおそれや、リングアセンブリの搬送効率が低下するおそれがある。
【0011】
それぞれの環状部材を適切に昇降させるためには、リフトピンが有する段差部の高さ(形成位置)を、複数の環状部材のそれぞれに対応させて個別に調整することが必要になる。しかしながら、このように段差部の高さを個別に調整することには困難性があり、この点、特許文献1や特許文献2には記載も示唆もされていない。
【0012】
本開示にかかる技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、プラズマ処理に用いられるリングアセンブリを適切に昇降可能であるリフトピン機構を備えたプラズマ処理装置を提供する。以下、本実施形態にかかるプラズマ処理装置を備えるプラズマ処理システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<プラズマ処理システム>
一実施形態において、プラズマ処理システムは、
図1に示すようにプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0014】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively
Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct
Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio
Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、200kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0015】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0016】
<プラズマ処理装置>
続いて、上述したプラズマ処理装置1の一例として、容量結合型のプラズマ処理装置1の構成例について説明する。
図2はプラズマ処理装置1の構成の概略を示す縦断面図である。
【0017】
プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10の内部には、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sが形成される。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10とは電気的に絶縁される。
【0018】
基板支持部11は、本体部110、リングアセンブリ120及びリフター130(
図3を参照)を含む。本体部110の上面は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域110a(基板支持面)と、リングアセンブリ120を支持するための環状領域110b(リング支持面)とを有する。環状領域110bは、平面視で中央領域110aを囲んでいる。基板Wは、中央領域110a上に配置され、リングアセンブリ120は、中央領域110a上の基板Wを囲むように環状領域110b上に配置される。リフター130は、後述するようにリングアセンブリ120を縦方向に移動させ、プラズマ処理装置1の外部に設けられた搬送アーム(図示せず)との間でリングアセンブリ120の受け渡しを行う。
【0019】
図3に示すように、一実施形態において本体部110は、金属プレート111、導電性基台112及び静電チャック113を含む。金属プレート111、導電性基台112及び静電チャック113は、プラズマ処理チャンバ10の床面側からこの順に積層して配置される。静電チャック113は、前述の基板支持面を有する。
【0020】
金属プレート111はプラズマ処理チャンバ10の床面に固定して配置され、導電性基台112及び静電チャック113の支持体として機能する。また金属プレート111には、厚み方向に貫通する複数、本実施形態においては3つの貫通孔111aが形成されている。貫通孔111aには、
図3に示すように後述するリフトピン131が挿通される。
【0021】
基台としての導電性基台112は、例えばAl合金等の非磁性の導電性部材により構成される。導電性基台112の導電性部材は下部電極として機能する。導電性基台112の上面における径方向内側には後述の静電チャック113が配置され、上面における静電チャック113の径方向外側は前述の環状領域110b(リング支持面)を構成する。換言すれば、リングアセンブリ120は静電チャック113を囲むように導電性基台112上に配置される。
【0022】
また導電性基台112には、厚み方向に貫通する複数、本実施形態においては3つの貫通孔112aが形成されている。貫通孔112aは金属プレート111に形成された貫通孔111aと対応する位置に形成され、
図3に示すように後述するリフトピン131が挿通される。なお貫通孔112aは、例えば貫通孔111aと同一径を有する。
【0023】
静電チャック113の上面は前述の中央領域110a(基板支持面)を構成する。静電チャック113の内部には、基板Wを中央領域110aに吸着保持するための吸着用電極(図示せず)が設けられている。静電チャック113は、例えばセラミックス等の非磁性の誘電体からなる一対の誘電膜の間に吸着用電極を挟んで構成される。
【0024】
また、静電チャック113の上面外周端部には切欠き部113aが形成されている。切欠き部113aには、
図3に示すようにエッジリング122の少なくとも一部が支持される。
【0025】
リングアセンブリ120は複数の環状部材を含む。
図3に一例として示すように、リングアセンブリ120は、複数の環状部材としてカバーリング121及びエッジリング122を含む。カバーリング121及びエッジリング122は、この順に積層して環状領域110b(リング支持面)に支持される。また、リングアセンブリ120は後述のリフター130の動作により環状領域110b(リング支持面)からリフトアップされ、これによりプラズマ処理装置1の外部に配置された搬送アーム(図示せず)との間での受け渡しが可能に構成されている。
【0026】
第2環状部材としてのカバーリング121は、例えば石英等の絶縁体により構成される。カバーリング121はその上部に段差が形成されており、外周部の上面が内周部の上面より高く形成されている。カバーリング121の内周部の上面は、エッジリング122の支持面を構成している。またカバーリング121の内周部には、厚み方向に貫通する複数、本実施形態においては例えば3つの貫通孔121aが形成されている。貫通孔121aは導電性基台112に形成された貫通孔112aと対応する位置に形成され、
図3に示すように後述するリフトピン131の第1ピン部分131aが挿通される。貫通孔121aは、少なくとも貫通孔112aよりも小径を有する。
【0027】
第1環状部材としてのエッジリング122はフォーカスリングと呼ばれる場合もあり、基板Wに対するプラズマ処理の面内均一性を向上させる。エッジリング122は、シリコン、炭化シリコン又は石英等から形成され得る。一実施形態において、第1環状部材122は、基板支持面上の基板を囲むように配置され、第2環状部材121は、第1環状部材122の下方に配置される。一実施形態において、第1環状部材122は、第2環状部材121により支持される。
【0028】
図3に示すように、一実施形態においてリフター130は、リフトピン131、アクチュエータ132及びスペーサ133(シム)を含む。リフトピン131は、カバーリング121に形成された貫通孔121aに対応して複数、本実施形態においては例えば3つ設けられる。またリフトピン131は、径が異なる複数のピン部分を含む。
図3に一例として示すように、リフトピン131は、複数のピン部分として第1ピン部分131a及び第2ピン部分131bを含む。第1ピン部分131a及び第2ピン部分131bは一体に構成されている。
【0029】
上側部分としての第1ピン部分131aは少なくともカバーリング121に形成された貫通孔121aよりも小径(
図3の第1の幅W1)を有する。第1ピン部分131aは後述の第2ピン部分131bの上面から軸方向に連接され、アクチュエータ132の動作により第2ピン部分131bと一体に縦方向(軸方向)に移動する。そして第1ピン部分131aは、貫通孔121aを介してカバーリング121の内周部の上面から突没自在に構成され、これにより
図4Aに示すようにカバーリング121の上面に支持されたエッジリング122の下面を支持して縦方向に移動(リフトアップ)させる。
【0030】
下側部分としての第2ピン部分131bは少なくともカバーリング121に形成された貫通孔121aよりも大径(
図3の第2の幅W2)を有する。すなわち第2ピン部分131bは、第1ピン部分131aの外周から径方向外側に突出する段差部Sを上面に有している。そして第2ピン部分131bは、貫通孔121aの下面(カバーリング121の下面)を段差部Sにより支持可能に構成され、これにより
図4Bに示すようにカバーリング121の下面を支持して縦方向に移動(リフトアップ)させる。一実施形態において、複数のリフトピン131は、第2環状部材121の複数の貫通孔121aのそれぞれに対応して配置される。各リフトピン131は、第1の幅W1を有する上側部分131aと、第1の幅W1よりも大きい第2の幅W2を有する下側部分131bとを有する。上側部分131aは、第2環状部材121の対応する貫通孔121aを介して第1環状部材122を支持するように構成される。従って、上側部分131aは、第1環状部材122の下面を支持するための頂部を有する。一実施形態において、複数のリフトピン131は、第1のリフトピン、第2のリフトピン及び第3のリフトピンを有する。複数の貫通孔121aは、第1の貫通孔、第2の貫通孔及び第3の貫通孔を有する。第1のリフトピンの上側部分は、第2環状部材121の第1の貫通孔を介して第1環状部材122を支持するように構成される。第2のリフトピンの上側部分は、第2環状部材121の第2の貫通孔を介して第1環状部材122を支持するように構成される。第3のリフトピンの上側部分は、第2環状部材121の第3の貫通孔を介して第1環状部材122を支持するように構成される。
【0031】
アクチュエータ132はリフトピン131を縦方向(軸方向)に沿って移動させ、導電性基台112上でリングアセンブリ120(カバーリング121及びエッジリング122)の昇降を行う。これによりリングアセンブリ120を前述の搬送アーム(図示せず)との間での受け渡しが行われる規定高さ(以下、単に「規定高さ」という。)に移動させる。アクチュエータの一例は、電気式アクチュエータやエアシリンダ、モータ等を含む。
【0032】
なお、リフター130に配置されるアクチュエータ132の数は特に限定されるものではない。すなわち、例えば複数のリフトピン131を1つのアクチュエータ132により一体に縦方向に移動させてもよい。また例えば、リフトピン131のそれぞれに対応して複数のアクチュエータ132を配置し、それぞれのリフトピン131を独立して縦方向に移動させてもよい。従って、少なくとも1つのアクチュエータ132は、複数のリフトピン131を縦方向に移動させるように構成される。一実施形態において、単一のアクチュエータ132は、複数のリフトピン131を縦方向に移動させるように構成される。一実施形態において、少なくとも1つのアクチュエータ132は、複数のリフトピン131にそれぞれ対応する複数のアクチュエータを有し、各アクチュエータが対応するリフトピン131を縦方向に移動させるように構成される。即ち、少なくとも1つのアクチュエータ132は、第1のアクチュエータ、第2のアクチュエータ及び第3のアクチュエータを有してもよい。第1のアクチュエータは、第1のリフトピンを縦方向に移動させるように構成される。第2のアクチュエータは、第2のリフトピンを縦方向に移動させるように構成される。第3のアクチュエータは、第3のリフトピンを縦方向に移動させるように構成される。
【0033】
スペーサ133は、第1ピン部分131aを囲むように第2ピン部分131bの上面に形成された段差部S上に固定される。スペーサ133は、
図4Aに示すように第1ピン部分131aによりエッジリング122を規定高さ(第1の高さH1)までリフトアップした際におけるカバーリング121の下面と段差部Sとの間の離隔距離Dと略一致する厚みHを有する。そしてスペーサ133は、このように第2ピン部分131bの上面(段差部S上)に配置されることで、第2ピン部分131bの上面に代わって貫通孔121aの下面(カバーリング121の下面)を支持し、これによりカバーリング121を縦方向に移動(リフトアップ)させる。
【0034】
なお、スペーサ133はリフター130が有する複数のリフトピン131の全てに固定される必要はなく、複数のリフトピン131のうちの少なくとも1つに設けられればよい。具体的には、エッジリング122のリフトアップ時においてカバーリング121の下面と段差部Sとの間に形成される隙間(離隔距離D)は、積み上げ公差や機差に起因して、複数のリフトピン131のそれぞれで異なる場合がある。このためスペーサ133は、少なくともこのようにカバーリング121の下面と段差部Sとの間に隙間(離隔距離D)が生じるリフトピン131のみに配置されればよい。従って、少なくとも1つのスペーサ133は、複数のリフトピン131のうち少なくとも1つに固定される。スペーサ133は、対応するリフトピン131の上側部分131aを囲むように,対応するリフトピン131の下側部分131b上又はその上方に配置される。スペーサ133は、第2環状部材121を支持するように構成される。従って、スペーサ133は、第2環状部材121を支持するための環状支持面を有する。一実施形態において、スペーサ133は、第3の幅W3(
図4A参照)を有してもよい。一実施形態において、第3の幅W3は、第2の幅W2と略同一である。なお、第3の幅W3は、第2環状部材121を支持可能な範囲で任意に設計可能である。一実施形態において、少なくとも1つのスペーサ133は、第1のリフトピンに固定される第1のスペーサを有する。一実施形態において、少なくとも1つのスペーサ133は、第1のスペーサ、第2のスペーサ及び第3のスペーサを有する。第1のスペーサは、第1のリフトピンに固定される。第2のスペーサは、第2のリフトピンに固定される。第3のスペーサは、第3のリフトピンに固定される。一実施形態において、第1のスペーサ、第2のスペーサ及び第3のスペーサは、同一の材質、厚さ及び/又は形状で構成される。一実施形態において、第1のスペーサ、第2のスペーサ及び第3のスペーサは、互いに異なる材質、厚さ及び/又は形状で構成される。
【0035】
また、スペーサ133を構成する材料も特に限定されるものではなく、Si又はSiC等の導電性材料、又は、PCTFE、PTFE、クオーツ(Qz)、SA又はY2O3等の絶縁材料から選択される少なくともいずれか1つの材料により構成できる。
但し、スペーサ133はリングアセンブリ120のリフトアップ時においてプラズマ雰囲気に暴露されるおそれがある。このため、スペーサ133は少なくとも耐ラジカル性を有する材料により構成されることが望ましい。
【0036】
また更に、リフトピン131に対するスペーサ133の固定方法も特に限定されるものではない。具体的には、例えばスペーサ133は、
図5Aに示すように第1ピン部分131aに対してスペーサ133をはめあいにより固定してもよい。この時、第1ピン部分131a及びスペーサ133の下部には、
図5Bに示すようにテーパが形成されていてもよい。例えば
図5Cに示すように第1ピン部分131a下部の外周面、及びスペーサ133の内周面にネジ部133aを形成し、第1ピン部分131aに対してスペーサ133を螺合して固定してもよい。一実施形態において、スペーサ133は螺合内周面を有し、リフトピン131の上側部分131aは螺合外周面を有し、螺合内周面及び螺合外周面は互いに螺合する。このようにネジ部を形成してスペーサ133を固定することで、当該スペーサ133が第1ピン部分131aから脱落することを適切に抑制できる。例えば
図5Dに示すように、スペーサ133の径方向内側に環状の脱落防止部材としての弾性部材133b(例えばFFKM系ゴム)を配置し、当該弾性部材133bにより第1ピン部分131aにスペーサ133を固定してもよい。このように弾性部材133bによりスペーサ133を固定することで、当該スペーサ133が第1ピン部分131aから脱落することを抑制できるとともに、リフトピン131とカバーリング121との間における異常放電の発生を抑制できる。
【0037】
なお、図示は省略するが、基板支持部11は、リングアセンブリ120、静電チャック113及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と静電チャック113の上面との間に伝熱ガス(バックサイドガス)を供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0038】
図2の説明に戻る。
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給部20からガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10sに導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる、1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0039】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0040】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材(下部電極)及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材(上部電極)に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0041】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して下部電極及び/又は上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、下部電極及び/又は上部電極に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0042】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、下部電極に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック113内の吸着用電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、上部電極に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0043】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10sの内部圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0044】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0045】
以上のように構成されたプラズマ処理装置1においては、リフター130に設けられたスペーサ133の厚みHが、第1ピン部分131aによりエッジリング122を規定高さ(第1の高さH1)までリフトアップした際におけるカバーリング121の下面と段差部Sとの間の離隔距離Dと略一致する厚みHに設定される。換言すれば、スペーサ133は、エッジリング122を適切に搬送するために設定されたリフトピン131の高さ位置の調整量やリフター130の構成部材の積み上げ公差に起因して発生する前述の離隔距離Dを補正できる厚みHで構成される。これにより本実施形態にかかる基板支持部11においては、第1ピン部分131aによるエッジリング122の搬送後、離隔距離Dを補正するためのリフトピン131の縦方向の移動を伴うことなく、効率的にカバーリング121のリフトアップを開始できる。
【0046】
また、このようにスペーサ133を配置してカバーリング121の下面と段差部Sとの間の離隔距離D(隙間)を最小化することで、残留電荷等に起因するリングアセンブリ120の搬送時の放電リスクを低減できる。
【0047】
ここで本発明者らは、このようにリフター130にスペーサ133を配置する場合、当該スペーサ133の形状や材質等を最適化することによって、上述の離隔距離D(積み上げ公差)の補正機能に加えて他の機能を付加できる可能性を見出した。そこで、以下、他の実施形態にかかるスペーサ133の構成について、図面を参照しながら説明する。
【0048】
<第2の実施形態にかかるスペーサ>
先ず、上記実施形態においてはスペーサ133を一の部材により構成したが、スペーサは複数の部材により構成されていてもよい。具体的には、
図6に示すように、スペーサ200は厚み方向(リフトピン131の軸方向)に積層して配置される複数の部材201(図示の例においては2つの部材201a、201b)を有していてもよい。この時、部材201a、201bはそれぞれ同一の材料により構成されていてもよいし、異なる材料により構成されていてもよい。この時、複数の部材201それぞれの構成材料は特に限定されるものではないが、最も上方(カバーリング121側)に配置される部材201(図示の例では部材201a)は、少なくとも耐ラジカル性を有する材料により構成されることが望ましい。一実施形態において、スペーサ200は、複数の層201a、201bを有する積層体により構成され、複数の層201a、201bの各々は、絶縁材料又は導電性材料を有する。
【0049】
なお、上述したようにリフター130に設けられる複数のリフトピン131のそれぞれにおいて、カバーリング121の下面と段差部Sとの間に形成される隙間(離隔距離D)の大きさが、積み上げ公差等に起因して異なるおそれがある。かかる場合、形成される隙間(離隔距離D)の大きさに合わせて、段差部S上に配置される部材201の数を調整してもよい。換言すれば、リフトピン131毎にスペーサ200を構成する部材201の数が異なっていてもよい。
【0050】
本実施形態によれば、このようにスペーサ200を複数の部材201により構成することで、カバーリング121の下面と段差部Sとの間に形成される隙間(離隔距離D)に合わせて適切に積み上げ公差を補正することができる。またこの時、厚みの小さい部材201を規格品として製造し、隙間(離隔距離D)の大きさに合わせてその積層数を調整することで、隙間(離隔距離D)の大きさに合わせて異なる厚みを有するスペーサを逐次製造する場合と比較してコストを大幅に低減できる。
【0051】
また、プラズマ処理装置1の内部に配置されるスペーサは、例えばプラズマ処理や経年劣化等の影響により消耗することが考えられる。本実施形態によれば、このようにスペーサ200を複数の部材201で構成することにより、このようにスペーサ200が消耗した場合であっても、スペーサ200の全体ではなく消耗した部材201のみを交換すればよい。かかる観点からも、プラズマ処理装置1にかかるコストを低減できる。
【0052】
<第3の実施形態にかかるスペーサ>
続いて、以上の実施形態においてはスペーサを断面視が単純矩形形状を有する環状部材により構成したが、スペーサの断面視形状はこれに限定されるものではない。具体的には、
図7A又は
図7Bに示すように、スペーサ210の厚みが径方向内側から外側に向けて小さくなるように、上面(先端形状)にテーパ加工やラウンド加工が施されていてもよい。従って、スペーサ210は、第2環状部材121を支持するための環状支持面を有する。環状支持面は、内周(内側)から外周(外側)に向けて下方に傾斜している。環状支持面、即ち、スペーサ210の上部は、テーパ形状又はラウンド形状を有する。
【0053】
本実施形態によれば、このようにスペーサ210の上面にテーパ加工やラウンド加工を施すことにより、カバーリング121に形成された貫通孔121aの下面を当該テーパ部(ラウンド部)に接触させることで、環状領域110b(リング支持面)上におけるカバーリング121の位置決めを行うことができ、プラズマ処理装置1における生産性を向上できる。また、このようにスペーサ210によりカバーリング121の位置決めを行うことができることで、リフトピン131に位置決め機能を付与する必要がない。すなわち、リフトピン131を単純形状で構成することができ、これによりプラズマ処理装置1の製造に係るコストを低減できる。
【0054】
なお、このようにスペーサ210にテーパ部(ラウンド部)を形成する場合、カバーリング121の下面(貫通孔121aの下部)を、当該テーパ部(ラウンド部)と嵌合する形状で形成してもよい。この場合、カバーリング121の位置決め効果を更に向上させることができる。
【0055】
なお、上述の第2の実施形態に示したようにスペーサを複数の部材により構成する場合においては、最も上方(カバーリング121側)に配置される部材にのみ、傾斜面(テーパ形状、ラウンド形状)を形成すればよい。
【0056】
<第4の実施形態にかかるスペーサ>
なお、上記第3の実施形態においてはスペーサの断面視形状をスペーサ210の厚みが径方向内側から外側に向けて低くなるように構成したが、
図8Aに示すスペーサ220のように、その上面に段差部S2を形成し、内周部の上面が外周部の上面より高く形成されてもよい。
【0057】
実施の形態にかかるプラズマ処理装置1においては、
図3に示したようにリフトピン131に段差部Sを形成することにより、エッジリング122及びカバーリング121をそれぞれ独立してリフトアップ可能に構成した。この時、例えばリングアセンブリ120がカバーリング121及びエッジリング122に加えて第3環状部材を備える場合においては、リフトピン131に新たな段差部を形成し、当該新たな段差部により第3環状部材のリフトアップを行う必要がある。すなわち、リフトピン131に設計変更を行う必要があり、当該設計変更や部材交換に際して時間やコストを要する。
【0058】
この点本実施形態によれば、このようにスペーサ220の上面に段差部S2を形成することにより、当該段差部S2を利用して、
図8Bに示すように第3環状部材123をリフトアップできる。すなわち、リングアセンブリ120に新たな環状部材を設ける必要が生じた場合であっても、リフトピン131の設計変更を伴うことなくスペーサ220の設置のみによって第3環状部材123をリフトアップできる。これにより、リフトピン131の設計変更を行う場合と比較して時間やコストを大幅に低減できる。一実施形態において、基板支持部11は、第1環状部材122と第2環状部材121の間に配置される第3環状部材123をさらに含む。第3環状部材123は、第2環状部材121の複数の貫通孔121aに対応して形成される複数の他の貫通孔123aを有する。リフトピン131の上側部分131aは、第2環状部材121の対応する貫通孔121a及び第3環状部材123の対応する他の貫通孔123aを介して第1環状部材122を支持するように構成される。スペーサ220は、第3の幅W3を有する下側スペーサ部分220aと、第3の幅W3よりも小さい第4の幅W4を有する上側スペーサ部分220bとを有する(
図8Aを参照)。上側スペーサ部分220bは、第2環状部材121の対応する貫通孔121aを介して第3環状部材123を支持するように構成される。従って、上側スペーサ部分220bは、第3環状部材123を支持するための環状支持面を有する。下側スペーサ部分220aは、第2環状部材121を支持するように構成される。従って、下側スペーサ部分220aは、第2環状部材121を支持するための環状支持面を有する。
【0059】
<第5の実施形態にかかるスペーサ>
以上の実施形態においては、スペーサを例えばPCTFE、PTFE、Qz又はSA等から選択される少なくともいずれかの材料により構成したが、
図9に示すように、スペーサ230と第1ピン部分131aの間には、脱落防止部材としての弾性部材231(例えばFFKM系ゴム等)を設けてもよい(
図5Dも参照)。
【0060】
本実施形態によれば、このように弾性部材231をスペーサ230と第1ピン部分131aとの間に配置することで、当該弾性部材231の弾性力により第1ピン部分131aに対してスペーサ230を固定して適切に脱落を抑制できる。また、例えばスペーサ230が絶縁性を有する場合においては、弾性部材231の設置に伴う耐圧向上により、第1ピン部分131aとカバーリング121の間における異常放電を抑制できる。また、例えばスペーサ230が導電性を有する場合においては、スペーサ230の設置により第1ピン部分131aに導電性が付与され、これにより第1ピン部分131aへの帯電を防止して異常放電を抑制できる。
【0061】
<第6の実施形態にかかるスペーサ>
図3でも示したように、基板支持部11は、複数の部材(図示の例においては金属プレート111、導電性基台112及び静電チャック113)を積層して構成する場合がある。この場合、各部材の温度差や熱膨張率の違い等により各部材に形成された貫通孔(図示の例では貫通孔111a、112a)の位置にズレが生じるおそれがある。この時、上述したようにリフトピン131の第1ピン部分131aと第2ピン部分131bが一体に構成されていると、貫通孔の位置ズレによりリングアセンブリ120を適切にリフトアップできなくなるおそれや、当該リフトピン131が損傷を被るおそれがある。このため、リフター130に設けられるリフトピン131は、
図10Aに示すように、アクチュエータ132に接続される固定部240と、貫通孔の位置にズレに追従して水平方向に移動する可動部241と、が独立して構成される分割ピン構造を有する場合がある。
【0062】
しかしながら、このようにリフトピン131が分割ピン構造を有する場合、リングアセンブリ120のリフトアップ後に固定部240のみが降下し、
図10Bに示すように可動部241が上方に取り残されてしまうことが懸念される。
【0063】
そこで第6の実施形態にかかるスペーサ250では、このようにリフトピン131が分割ピン構造を有する場合において可動部241が上方に残留してしまうことを抑制する。具体的には、
図11に示すようにスペーサ250を高比重部材251(例えばチタンやタングステン等)により構成し、さらに当該高比重部材251をラジカル等から保護するため、表面を覆うようにコーティング層252(例えばPCTFE、PTFE等)を形成する。
【0064】
なお、以上の説明においては、
図10A、
図10Bに示したように固定部240が分割ピン構造を有するリフトピン131の一部であるものとみなして説明を行ったが、固定部240は、アクチュエータ132に固定される基板支持部11とみなすことも可能である。かかる場合、
図10に示した可動部241、及びスペーサ250が本開示の技術に係るリフトピン131を構成し、固定部240は基板支持部11の一部を構成する。換言すれば、リフトピン131としての可動部241は、固定部材240によって下方から支持され、当該固定部材240を介してアクチュエータ132に接続される。一実施形態において、基板支持部11は、少なくとも1つのアクチュエータ132に固定される固定部材240を更に含み、リフトピン131は、固定部材240によって支持される。スペーサ250は、高比重部材251と、高比重部材251の表面を覆うように形成されるコーティング層252とを有する。
【0065】
これにより、可動部241の重量をスペーサ250により増加させ、リングアセンブリ120のリフトアップ後に可動部241が上方に残留してしまった場合であっても、可動部241を自重により待機位置まで降下させることができる。
【0066】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、スペーサに付与される付加される効果は上述した例示的実施形態に限定されることない。また、以上の第1~第6の実施形態のそれぞれの要素を組み合わせて他の実施形態を形成することも可能である。例えば、上述したようにスペーサを複数の部材により構成(第2の実施形態)し、更に、最も上方(カバーリング121側)に配置される部材に、テーパ部(ラウンド部)を形成(第3の実施形態)してもよい。また例えば、スペーサに段差部S2を形成(第4の実施形態)し、更に、当該スペーサの径方向内側に弾性部材を配置(第5の実施形態)してもよい。
【0067】
<スペーサの設計方法>
続いて、以上のように構成されたスペーサの設計方法、より具体的には、スペーサの厚みHの決定方法について図面を参照しながら説明する。なお、以下に示すスペーサの厚みHの決定手法は、プラズマ処理装置1のスタートアップ時やリングアセンブリ120の交換直後、すなわちリングアセンブリ120に対するリフター130の初期設定時に行われる。
【0068】
先ず、
図12A(a)に示すように、カバーリング121の上面にエッジリング122が支持されていない状態で、リフター130を待機位置(第1ピン部分131aの先端部がカバーリング121の内周部の上面から突出しない位置)に移動させる(
図13のステップP1)。次に、リフター130が待機位置に配置された状態において、リフトピン131の先端部とカバーリング121の内周部の上面との距離(深さ)D1(
図12A(a)を参照)を測定する(
図13のステップP2)。
【0069】
なお、ステップP2における距離(深さ)D1の測定方法は特に限定されるものではなく、例えばダイヤルゲージ等を用いて手動で測定されてもよいし、レーザ変位計等を用いて自動で測定されてもよい。
【0070】
続いて、ステップP2で測定された距離(深さ)D1をアクチュエータ132により補正し、
図12A(b)に示すようにリフトピン131の先端部の高さ位置とカバーリング121の内周部の上面の高さ位置とを略一致させる(
図13のステップP3)。なお、リフトピン131の先端部の位置が補正された後のリフター130の高さ位置は、エッジリング122と第1ピン部分131aの接触位置(第1の接触位置)として制御部2に出力される。
【0071】
続いて、リフター130の位置が第1の接触位置に維持された状態で、
図12A(c)に示すようにカバーリング121を導電性基台112の環状領域110b(リング支持面)上から取り外す(
図13のステップP4)。
【0072】
続いて
図12A(d)に示すように、リフター130を、エッジリング122と第1ピン部分131aの接触位置からエッジリング122の搬送位置(第1ピン部分131aの先端部に支持されたエッジリング122が規定高さに達する位置)に移動させる(
図13のステップP5)。次に、リフター130がエッジリング122の搬送位置に配置された状態において、リフトピン131の段差部S(第2ピン部分131bの上面)と導電性基台112の上面(カバーリング121の支持面)との距離(深さ)D2(
図12A(d)を参照)を測定する(
図13のステップP6)。
【0073】
なお、ステップP6における距離(深さ)D2の測定方法は特に限定されるものではなく、例えばダイヤルゲージ等を用いて手動で測定されてもよいし、レーザ変位計等を用いて自動で測定されてもよい。
【0074】
続いて、ステップP6で測定された距離(深さ)D2が最小となるようにスペーサ133の厚みHを決定(
図13のステップP7)する。次に、
図12B(a)に示すように、リフトピン131の段差部S(第2ピン部分131bの上面)にステップP7で決定された厚みHを有するスペーサ133を設置する(
図13のステップP8)。
【0075】
なお、リフトピン131の段差部Sに設置されるスペーサは上述のスペーサ133(第1の実施形態)に限定されるものではなく、第2~第6の実施形態にかかるスペーサ200、210、220、230、250を適宜選択できる。
【0076】
続いて、段差部Sにスペーサ133が設置された状態において、スペーサ133の上面と導電性基台112の上面(カバーリング121の支持面)との距離(深さ)D3(
図12B(a)を参照)を測定する(
図13のステップP9)。
【0077】
なお、ステップP9における距離(深さ)D3の測定方法は特に限定されるものではなく、例えばダイヤルゲージ等を用いて手動で測定されてもよいし、レーザ変位計等を用いて自動で測定されてもよい。
【0078】
続いて、ステップP9で測定された距離(深さ)D3をアクチュエータ132により補正し、
図12B(b)に示すようにスペーサ133の上面の高さ位置と導電性基台112の上面(カバーリング121の支持面)の高さ位置とを略一致させる(
図13のステップP10)。なお、スペーサ133の上面の位置が補正された後のリフター130の高さ位置は、カバーリング121とスペーサ133の接触位置(第2の接触位置)として制御部2に出力される。
【0079】
その後、
図12B(c)に示すようにリフター130を待機位置に移動させ(
図13のステップP11)、更に
図12B(d)に示すように環状領域110b(リング支持面)にカバーリング121及びエッジリング122を順次載置(
図13のステップP12)させると、一連のスペーサの厚みHの決定手法が終了する。
【0080】
本実施形態によれば、このようにスペーサの厚みHをリフトピン131の段差部Sと導電性基台112の上面)との距離(深さ)D2に基づいて適宜決定することにより、リフター130の各部材、ユニットの積み上げ公差を適切に緩和することができる。
【0081】
またこの時、上述した各種実施形態にかかるスペーサ200、210、220、230、250を適宜選択することにより、積み上げ公差の緩和の加えて、第2~第6の実施形態に示した各種機能をスペーサ(リフトピン131)に付加することができる。従って、少なくとも1つのアクチュエータ132は、複数のリフトピン131を第1上昇位置(
図4A参照)、第2上昇位置(
図4B参照)及び下降位置(
図3参照)の間で縦方向に移動させるように構成される。第1上昇位置、即ち第1環状部材122の搬送位置において第1環状部材122が第1の高さH1(
図4A参照)に配置される。第2上昇位置、即ち第2環状部材121の搬送位置において第2環状部材121が第1の高さH1(
図4B参照)に配置される。なお、プラズマ処理は、複数のリフトピン131が下降位置にあるとき、即ち、複数のリフトピン131が収納されているとき(
図3参照)に行われる。なお、
図8Bの例では、少なくとも1つのアクチュエータ132は、複数のリフトピン131を、第1上昇位置、第2上昇位置、第3上昇位置及び下降位置の間で縦方向に移動させるように構成される。第1上昇位置、第2上昇位置及び下降位置は上記と同様である。第3上昇位置は第1上昇位置と第2上昇位置との間の状態である。この場合、第3上昇位置、即ち第3環状部材123の搬送位置において第3環状部材123が第1の高さH1に配置される。そして、スペーサ133は、第1上昇位置における下側部分131bの上面(又は上部)と第2環状部材121の下面との間の距離に基づき決定される縦方向寸法Dを有する。
【0082】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 プラズマ処理装置
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
12 プラズマ生成部
112 導電性基台
113 静電チャック
120 リングアセンブリ
121 カバーリング
121a 貫通孔
122 エッジリング
130 リフター
131 リフトピン
131a 第1ピン部分
131b 第2ピン部分
132 アクチュエータ
133 スペーサ