IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078079
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】媒体処理装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 37/04 20060101AFI20230530BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
B65H37/04 Z
G03G15/00 432
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175720
(22)【出願日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2021191068
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022155336
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 圭
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 一貴
(72)【発明者】
【氏名】杉山 恵介
【テーマコード(参考)】
2H072
3F108
【Fターム(参考)】
2H072GA07
3F108GA01
3F108GB01
3F108HA02
3F108HA11
3F108HA43
3F108HA54
(57)【要約】
【課題】綴じ姿勢を切り替えて圧着綴じが可能な綴じ処理部を備える媒体処理装置において、必要な範囲に限定して液体付与する技術を提供する。
【解決手段】媒体処理装置は、媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、搬送部から搬送された少なくとも1枚の媒体に、液体を含む液体付与部材(44)を接触させて液体を付与する液体付与手段(31)と、液体付与手段(31)で液体が付与された複数の媒体を、一対の綴じ歯(32b、32c)で挟持して綴じる圧着手段(32)と、一対の綴じ歯(32b、32c)及び液体付与部材(44)を、媒体の厚み方向に延びる回動軸周りに回動させる回動機構(52)とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された少なくとも1枚の前記媒体に液体を付与する液体付与手段と、
前記液体付与手段で液体が付与された複数の前記媒体を加圧変形させて綴じる圧着手段と、
前記液体付与手段を回動させる液体付与手段回動機構と、
前記圧着手段を回動させる圧着手段回動機構と、を備え、
前記液体付与手段回動機構及び前記圧着手段回動機構は、それぞれ前記媒体の厚み方向に延びる回動軸周りに前記液体付与手段及び前記圧着手段を回動させることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記液体付与手段回動機構及び前記圧着手段回動機構は、前記液体付与手段及び前記圧着手段それぞれの先端部の長手方向を、前記媒体の幅方向に沿う第1綴じ姿勢と、前記媒体の幅方向に対して傾斜させた第2綴じ姿勢とに、回動させることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記液体付与手段及び前記圧着手段は、前記第1綴じ姿勢及び前記第2綴じ姿勢それぞれにおいて、前記搬送方向の同じ位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記第2綴じ姿勢の前記圧着手段及び前記液体付与手段は、前記媒体の幅方向に対して同じ角度傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記第2綴じ姿勢の前記圧着手段及び前記液体付与手段は、前記媒体の幅方向に対して同じ角度傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記液体付与手段回動機構及び前記圧着手段回動機構は、前記液体付与手段及び前記圧着手段それぞれの先端部の長手方向を、前記媒体の幅方向に一致させる第1綴じ姿勢と、前記媒体の幅方向に直交させる第3綴じ姿勢との間で、任意の角度に回動させることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記液体付与手段及び前記圧着手段は、前記媒体に対して前記媒体の幅方向に外れた待機位置と、前記媒体に対面する綴じ位置との間を、前記媒体の幅方向に延びる案内軸に沿ってスライド可能に構成され、
前記液体付与手段は、前記綴じ位置側において、前記圧着手段に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の媒体処理装置。
【請求項8】
前記液体付与手段回動機構及び前記圧着手段回動機構は、前記液体付与手段及び前記圧着手段を、同一の駆動源によって連動して回動させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の媒体処理装置。
【請求項9】
前記液体付与手段回動機構及び前記圧着手段回動機構は、それぞれ回動駆動するための駆動源を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の媒体処理装置。
【請求項10】
前記液体付与手段は、前記媒体に液体を付与する液体付与部材を備え、
前記液体付与手段回動機構は、前記液体付与部材と前記液体付与手段を一体で回動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の媒体処理装置。
【請求項11】
前記液体付与手段は、前記媒体に液体を付与する液体付与部材を備え、
前記液体付与手段回動機構は、前記液体付与部材のみを回動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の媒体処理装置。
【請求項12】
前記圧着手段および前記液体付与手段を前記搬送方向に直交する主走査方向に同時に移動させる主走査移動手段をさらに備え、
前記液体付与手段回動機構は、前記液体付与手段の前記主走査方向の移動に伴い、前記液体付与手段の姿勢を切り替える姿勢切替機構を備える請求項2又は3に記載の媒体処理装置。
【請求項13】
前記姿勢切替機構は、前記液体付与手段と一体的に回転する姿勢切替部材と、
前記液体付与手段の前記主走査方向の移動の際に、前記姿勢切替部材に当接し、前記姿勢切替部材の姿勢を切り替える姿勢切替手段を備えた請求項12に記載の媒体処理装置。
【請求項14】
前記姿勢切替手段は、
前記姿勢切替部材が前記姿勢切替手段を前記主走査方向の一方端側から通過するときには前記液体付与手段を前記第1綴じ姿勢から前記第2綴じ姿勢へと回動させ、
前記主走査方向の他方端側から通過するときに前記液体付与手段を前記第2綴じ姿勢から前記第1綴じ姿勢へと回動させることを特徴とする請求項13に記載の媒体処理装置。
【請求項15】
前記第1綴じ姿勢から前記第2綴じ姿勢に回動する際には、前記圧着手段が先に前記第2綴じ姿勢に回動し、その後に前記液体付与手段が前記第2綴じ姿勢に回動することを特徴とする請求項2又は3に記載の媒体処理装置。
【請求項16】
前記第2綴じ姿勢から前記第1綴じ姿勢に回動する際には、前記液体付与手段が先に前記第1綴じ姿勢に回動し、その後に前記圧着手段が前記第1綴じ姿勢に回動することを特徴とする請求項2又は3に記載の媒体処理装置。
【請求項17】
前記液体付与手段及び前記圧着手段は、前記媒体の中央に対して、前記媒体の幅方向の一方側及び他方側それぞれに配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の媒体処理装置。
【請求項18】
前記媒体に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置によって画像が形成された複数の前記媒体を圧着綴じする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の媒体処理装置と、を備えることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置によって画像が形成されたシート状の媒体を束にして綴じる処理を行う媒体処理装置が知られている。なお、シート状の媒体の例として用紙が広く知られているので、本明細書では、シート状の媒体の束に関しては複数の用紙を積層した「用紙束」を例に用いることとする。また、媒体処理装置には、省資源化や環境負荷の低減を鑑みる観点から、金属製の綴じ針(ステープル針)を用いずに、凹凸状の綴じ歯で用紙束を挟持して加圧変形させる所謂「圧着綴じ」が可能な圧着処理部を備えるものがある。
【0003】
圧着綴じには、用紙束を構成する用紙の枚数が多いほど用紙束に綴じ歯が食い込みにくくなって、綴じた用紙が剥がれ落ちるなど、綴じ状態を適切に維持することに困難さがあるという課題がある。そこで、圧着綴じを行う媒体処理装置には、綴じ強度を上げる目的で、用紙上において綴じ歯が接触する位置(以下、「綴じ位置」と表記する。)に予め加水して、綴じ歯が用紙束に食い込み易くするための加水処理部を備えるものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の媒体処理装置は、綴じ歯の長手方向を、用紙の幅方向に平行にして綴じる「平行綴じ」、用紙の幅方向に対して傾斜させて綴じる「斜め綴じ」等が可能である。しかしながら、平行綴じ及び斜め綴じの両方の綴じ位置を適切に加水するために、加水する範囲を大きくすると、用紙に皺が生じたり、用紙に形成した画像が滲むなどの課題を生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、綴じ姿勢を切り替えて圧着綴じが可能な綴じ処理部を備える媒体処理装置において、必要な範囲に限定して液体を付与する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、媒体処理装置に関し、媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送された少なくとも1枚の前記媒体に液体を付与する液体付与手段と、前記液体付与手段で液体が付与された複数の前記媒体を加圧変形させて綴じる圧着手段と、前記液体付与手段を回動させる液体付与手段回動機構と、前記圧着手段を回動させる圧着手段回動機構と、を備え、前記液体付与手段回動機構及び前記圧着手段回動機構は、それぞれ前記媒体の厚み方向に延びる回動軸周りに前記液体付与手段及び前記圧着手段を回動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、綴じ姿勢を切り替えて圧着綴じが可能な綴じ処理部を備える媒体処理装置において、必要な範囲に限定して液体を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】画像形成システムの全体構成を示す図。
図2】第一実施形態に係る後処理装置の内部構造を示す図。
図3】端綴じ処理部を搬送方向の上流側から見た模式図。
図4】端綴じ処理部を主走査方向の液体付与手段側から見た模式図。
図5】圧着手段の構成を示す模式図。
図6】端綴じ処理部の平面図。
図7】第一実施形態に係る後処理装置の動作を制御する制御ブロックのハードウェア構成図。
図8】綴じ処理のフローチャート。
図9】綴じ処理中における液体付与手段及び圧着手段の位置を示す図。
図10】圧着手段及び液体付与手段にそれぞれ駆動源を設ける場合の説明図。
図11】液体付与手段及び圧着手段の他の姿勢を示す図。
図12】変形例1に係る連結機構を示す図。
図13】変形例2に係る連結機構を示す図。
図14】端綴じ処理部の他の実施形態を示す図。
図15】液体付与手段回動機構の構成を示す図。
図16】液体付与手段回動機構の構成を示す図。
図17】姿勢切替爪の構成を示す図。
図18】姿勢切替爪による姿勢切替レバーの切替動作説明図。
図19】圧着手段及び液体付与手段を「斜め綴じ姿勢」に変更する際の動作説明図。
図20】圧着手段及び液体付与手段を「平行綴じ姿勢」に変更する際の動作説明図。
図21】圧着手段及び液体付与手段による平行綴じの動作説明図。
図22】変形例3に係る後処理装置を示す図。
図23】第二実施形態に係る後処理装置の内部構造を示す図。
図24】第二実施形態に係る液体付与手段を用紙の厚み方向から見た図。
図25図24のXXV-XXVにおける断面図。
図26図24のXXVI-XXVIにおける断面図。
図27】第二実施形態に係る後処理装置の動作を制御する制御ブロックのハードウェア構成図。
図28】第二実施形態に係る後処理装置の後処理フローチャート。
図29】画像形成システムの変形例の全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る画像形成システム1について、図面を参照しながら説明する。図1は、画像形成システム1の全体構成を示す図である。画像形成システム1は、用紙P(媒体)に画像を形成し、画像が形成された用紙Pに対して後処理を施す機能を有する。図1に示すように、画像形成システム1は、画像形成装置2と、後処理装置3(媒体処理装置)とで構成される。
【0010】
画像形成装置2は、用紙Pに画像を形成し、画像を形成した用紙Pを後処理装置3に排出する。画像形成装置2は、用紙Pが収容されたトレイと、トレイに収容された用紙Pを搬送する搬送部と、搬送部によって搬送された用紙Pに画像を形成する画像形成部とを備える。画像形成部は、インクを用いて画像を形成するインクジェット方式でもよいし、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式でもよい。画像形成装置2の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0011】
図2は、第一実施形態に係る後処理装置3の内部構造を示す図である。後処理装置3は、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pに後処理を施す。本実施形態に係る後処理は、画像が形成された複数の用紙Pの束(以下、「用紙束Pb」と表記する。)を、綴じ針を用いずに綴じる綴じ処理である。より詳細には、本実施形態に係る綴じ処理は、綴じ位置で用紙束Pbを加圧変形させる所謂「圧着綴じ」である。また、綴じ処理は、用紙束Pbの端を綴じる端綴じ処理と、用紙束Pbの中央を綴じる中綴じ処理と含む。
【0012】
後処理装置3は、搬送ローラ対10~19(搬送部)と、切替爪20とを備える。搬送ローラ対10~19は、後処理装置3の内部において、画像形成装置2から供給された用紙Pを搬送する。より詳細には、搬送ローラ対10~13は、第1搬送路Ph1に沿って用紙Pを搬送する。また、搬送ローラ対14~15は、第2搬送路Ph2に沿って用紙Pを搬送する。さらに、搬送ローラ対16~19は、第3搬送路Ph3に沿って用紙Pを搬送する。
【0013】
第1搬送路Ph1は、画像形成装置2からの用紙Pの供給口から排出トレイ21に至る経路である。第2搬送路Ph2は、搬送方向における搬送ローラ対11、14の間において第1搬送路Ph1から分岐し、内部トレイ22を通じて排出トレイ26に至る経路である。第3搬送路Ph3は、搬送方向における搬送ローラ対11、14の間において第1搬送路Ph1から分岐し、排出トレイ30に至る経路である。
【0014】
切替爪20は、第1搬送路Ph1及び第2搬送路Ph2の分岐位置に配置されている。切替爪20は、第1搬送路Ph1を通じて用紙Pを排出トレイ21に排出する第1位置と、第1搬送路Ph1を搬送される用紙Pを第2搬送路Ph2に導く第2位置とに切り替え可能に構成されている。また、第2搬送路Ph2に進入した用紙Pの後端が搬送ローラ対11を通過したタイミングで、搬送ローラ対14を逆回転させることによって、当該用紙Pが第3搬送路Ph3に導かれる。また、後処理装置3は、各搬送路Ph1、Ph2、Ph3上の用紙Pの位置を検知する複数のセンサ(図2に▲で示す)を備える。
【0015】
後処理装置3は、排出トレイ21を備える。排出トレイ21は、第1搬送路Ph1を通じて排出された用紙Pを積載する。排出トレイ21には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、綴じ処理が施されない用紙Pが排出される。
【0016】
また、後処理装置3は、内部トレイ22(トレイ)と、エンドフェンス23と、サイドフェンス24L、24Rと、端綴じ処理部25と、排出トレイ26とを備える。内部トレイ22、エンドフェンス23、サイドフェンス24L、24R、及び端綴じ処理部25は、第2搬送路Ph2から内部トレイ22に搬送される複数の用紙Pからなる用紙束Pbに端綴じ処理を施す。ここでいう「端綴じ処理」とは、図6(A)に示すように用紙束Pbの主走査方向に平行な一辺に沿って綴じ処理を行う「平行綴じ処理」、図6(B)に示すように用紙束Pbの角部に綴じ処理を行う「斜め綴じ処理」、及び図11(B)に示すように用紙束Pbの搬送方向に平行な一辺に沿って綴じ処理を行う「垂直綴じ処理」が含まれる。排出トレイ26には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、端綴じ処理が施された用紙束Pbが排出される。以下、搬送ローラ対15からエンドフェンス23に向かって用紙Pが搬送される方向を、「搬送方向」と定義する。また、用紙Pの厚み方向及び用紙Pの搬送方向に直交する方向を、「主走査方向(用紙Pの幅方向)」と定義する。
【0017】
内部トレイ22は、第2搬送路Ph2を順番に搬送される複数の用紙Pを一時的に載置する。エンドフェンス23は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbの搬送方向の位置を揃える。サイドフェンス24L、24Rは、内部トレイ22に支持された用紙P又は用紙束Pbの主走査方向の位置を揃える。端綴じ処理部25は、エンドフェンス23及びサイドフェンス24L、24Rによって揃えられた用紙束Pbの端部を綴じる。そして、搬送ローラ対15は、端綴じ処理が施された用紙束Pbを排出トレイ26に排出する。
【0018】
図3は、端綴じ処理部25を搬送方向の上流側から見た模式図である。図4は、端綴じ処理部25を主走査方向の液体付与手段31側から見た模式図である。図3に示すように、端綴じ処理部25は、液体付与手段31と、圧着手段32とを備える。液体付与手段31及び圧着手段32は、内部トレイ22より搬送方向の下流側において、主走査方向に隣接して配置されている。
【0019】
液体付与手段31は、貯液タンク43に貯留された液体(例えば、水)を、内部トレイ22に載置された用紙Pに付与(以下、「液体付与」と表記する。)する。液体付与手段31は、スライドモータ50の駆動力が伝達されることによって、圧着手段32と共に主走査方向に移動可能に構成されている。図3及び図4に示すように、液体付与手段31は、下押圧板33と、上押圧板34と、移動機構35と、液体付与機構36とを備える。液体付与手段31の構成部品(下押圧板33、上押圧板34、移動機構35、液体付与機構36)は、液体付与フレーム31aにより保持されている。
【0020】
ここで、「液体付与」するための貯液タンク43に貯留された液体とは、さらに詳しくは、化学式HOで表される水素と酸素の化合物の液体状態を主成分とするものである。液体状態であれば、その温度状態は問わず、いわゆる温水や熱水であってもよい。また、純水に限らず、精製水はもちろんのこと、イオン化した塩類が含まれていても良い。金属イオン含有量もいわゆる軟水から超硬水まで硬度は問わない。
【0021】
また主成分に加えて添加物が加えられていてもよい。水道水として用いられる残留塩素を含んでいてもよいし、着色剤・浸透剤・pH調整剤・フェノキシエタノールなどの防腐剤・グリセリンなどの乾燥防止剤等が添加されていることも望ましい。さらには、インクジェット方式の印刷装置で用いられるインクや、水性ペンに用いられるインクも成分として水を用いているので、これを「液体付与」として用いても良い。
【0022】
ここで具体的に挙げたものに限らず、次亜塩素酸水や消毒用に希釈したエタノール水溶液など広義の「水」であっても機能するが、圧着綴じとして機能させるためだけの用途であれば入手・管理が容易な水道水を用いればよい。又、液体としては、上記に例示したような水を主成分とする液体を用いる方が、水を主成分としていない液体を用いるよりも用紙束Pbの綴じ強度を向上させることができる。
【0023】
下押圧板33及び上押圧板34は、内部トレイ22より搬送方向の下流側に配置されている。下押圧板33は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbを下側から支持する。下押圧板33は、下押圧板保持体331上に設けられている。上押圧板34は、内部トレイ22に支持された用紙P又は用紙束Pbの上方において、用紙Pの厚み方向に移動(昇降)可能に構成されている。すなわち、下押圧板33及び上押圧板34は、内部トレイ22に載置された用紙P又は用紙束Pbを挟んで、用紙P又は用紙束Pbの厚み方向(以下、単に「厚み方向」と表記する。)に対向して配置されている。さらに、上押圧板34には、ベースプレート40に取り付けられた液体付与部材44の先端に対面する位置に、厚み方向に貫通する貫通口34aが形成されている。
【0024】
移動機構35は、上押圧板34、ベースプレート40、及び液体付与部材44を用紙P又は用紙束Pbの厚み方向に移動させる。本実施形態に係る移動機構35は、単一の移動モータ37によって、上押圧板34、ベースプレート40、及び液体付与部材44を連動して移動させる。移動機構35は、例えば、移動モータ37と、台形ネジ38と、ナット39と、ベースプレート40と、柱状部材41a、41bと、コイルバネ42a、42bとを備える。
【0025】
移動モータ37は、上押圧板34、ベースプレート40、及び液体付与部材44を移動させる駆動力を発生させる。台形ネジ38は、上下方向に延設されると共に、液体付与フレーム31aに回転可能に取り付けられている。また、台形ネジ38は、プーリやベルト等を介して移動モータ37の出力軸に接続されている。ナット39は、台形ネジ38に螺合されている。そして、移動モータ37の駆動力が伝達されて台形ネジ38が回転することによってナット39が移動する。
【0026】
ベースプレート40は、上押圧板34より上方に配置されている。また、ベースプレート40は、液体付与部材44の先端を下方に突出させた状態で、液体付与部材44を保持している。さらに、ベースプレート40は、台形ネジ38に接続されて、台形ネジ38と共に移動可能に構成されている。そして、ベースプレート40の上下方向の位置は、移動センサ40a(図7参照)によって検知される。
【0027】
柱状部材41a、41bは、液体付与部材44の先端の周囲において、ベースプレート40から下方に突出している。また、柱状部材41a、41bは、ベースプレート40に対して厚み方向に相対的に移動可能に構成されている。さらに、柱状部材41a、41bは、下端で上押圧板34を保持している。又、柱状部材41a、41bの上端には、柱状部材41a、41bがベースプレート40から外れるのを防止する抜け止めが設けられている。コイルバネ42a、42bは、ベースプレート40と上押圧板34との間において、柱状部材41a、41bに外挿されている。そして、コイルバネ42a、42bは、上押圧板34及び柱状部材41a、41bを、ベースプレート40に対して下方に付勢する。
【0028】
液体付与機構36は、内部トレイ22に支持された用紙P又は用紙束Pbに液体を付与する。より詳細には、液体付与機構36は、液体付与部材44の先端を用紙P又は用紙束Pbに接触させることによって、用紙束Pbを構成する少なくとも1枚の用紙Pに液体を付与する。液体付与機構36は、貯液タンク43と、液体付与部材44と、供給部材45と、ジョイント46とを備える。
【0029】
貯液タンク43は、用紙P又は用紙束Pbに供給するための液体を貯留する。貯液タンク43に貯留された液体の量は、液量センサ43aによって検知される。液体付与部材44は、貯液タンク43に貯留された液体を用紙P又は用紙束Pbに供給する。液体付与部材44は、先端が下方を向けてベースプレート40に支持されている。また、液体付与部材44は、吸水率の高い材料(例えば、スポンジ、繊維)で構成されている。
【0030】
供給部材45は、基端が貯液タンク43に貯留された液体に浸漬され、先端が液体付与部材44に接続された長尺の部材である。また、供給部材45は、例えば、液体付与部材44と同様に、吸水率の高い材料で構成されている。これにより、供給部材45の基端から吸収された液体が、毛細管現象によって液体付与部材44に供給される。
【0031】
保護部材45aは、供給部材45に外挿される長尺の筒体(例えば、チューブ)である。これにより、供給部材45が吸収した液体が漏れ出したり、蒸発するのを防止できる。また、供給部材45及び保護部材45aは、可撓性を有する材料で形成されている。ジョイント46は、液体付与部材44をベースプレート40に固定するものである。これにより、液体付与部材44は、移動機構35によって移動されても、ベースプレート40から下方に突出すると共に、先端が下方を向いた状態が維持される。
【0032】
圧着手段32は、凹凸状の綴じ歯32b、32cで用紙束Pbを加圧変形させることによって、用紙束Pbを綴じる(以下、「圧着綴じ」と表記する。)。すなわち、圧着手段32は、綴じ針を用いずに、用紙束Pbを綴じることができる。圧着手段32の構成部品(綴じ歯32b(上圧着歯)、綴じ歯32c(下圧着歯))は、圧着フレーム32aに設けられている。
【0033】
図5は、圧着手段32の構成を示す模式図である。図5に示すように、圧着手段32は、一対の綴じ歯32b、32cを備える。一対の綴じ歯32b、32cは、内部トレイ22に支持された用紙束Pbを挟んで、用紙束Pbの厚み方向に対向して配置されている。一対の綴じ歯32b、32cの互いに対向する面は、凹部及び凸部が交互に形成された凹凸状に形成されている。また、一対の綴じ歯32b、32cは、互いに噛合うように、凹部及び凸部がずれて形成されている。そして、一対の綴じ歯32b、32cは、接離モータ32d(図7参照)の駆動力によって接離する。
【0034】
用紙束Pbを構成する複数の用紙Pが内部トレイ22に供給される過程では、図5(A)に示すように、一対の綴じ歯32b、32cは互いに離間している。そして、用紙束Pbを構成する全ての用紙Pが内部トレイ22に載置されると、図5(B)に示すように、一対の綴じ歯32b、32cが噛み合って、用紙束Pbを厚み方向から加圧変形させる。これにより、内部トレイ22に支持された用紙束Pbが圧着綴じされる。また、圧着綴じされた用紙束Pbは、搬送ローラ対15によって、排出トレイ26に排出される。
【0035】
尚、圧着手段32の構成としては、圧着機構を構成する綴じ歯32b及び綴じ歯32cが噛み合えばよいので、本実施例に限定されない。例えば、正転のみ、又は正逆転する駆動源とリンク機構を使って綴じ歯32b及び綴じ歯32cの圧着及び離間動作を行うリンク機構方式の圧着機構(例えば、特許6057167号に開示されているもの)であっても良いし、駆動源の回転運動を直線運動に変換するねじ機構により、綴じ歯32b及び綴じ歯32cの圧着及び離間動作を直線的に行う直動方式の圧着機構であってもよい。
【0036】
また、図3に示すように、端綴じ処理部25は、スライド機構47を備える。スライド機構47は、内部トレイ22に支持された用紙Pの搬送方向の下流側の端部に沿って、端綴じ処理部25(すなわち、液体付与手段31及び圧着手段32)を主走査方向に移動させる。スライド機構47は、液体付与手段31及び圧着手段32を同時に主走査方向に移動させる主走査移動手段の一例である。スライド機構47は、例えば、ベース部材48と、案内軸49と、スライドモータ50と、位置センサ51とを備える。
【0037】
液体付与手段31及び圧着手段32は、主走査方向に隣接させた状態でベース部材48に取り付けられている。案内軸49は、内部トレイ22より搬送方向の下流側において、主走査方向に延設されている。また、案内軸49は、ベース部材48を主走査方向にスライド可能に支持している。スライドモータ50は、端綴じ処理部25を移動させるための駆動力を発生させる。スライドモータ50の駆動力は、プーリやタイミングベルトを介してベース部材48に伝達される。
【0038】
これにより、ベース部材48によって一体化された液体付与手段31及び圧着手段32は、案内軸49に沿って主走査方向にスライドする。液体付与手段31及び圧着手段32の位置は、例えば、スライドモータ50の出力軸に取り付けられたエンコーダセンサによって把握することができる。また、位置センサ51は、端綴じ処理部25が待機位置P1(図9参照)に到達したことを検知する。
【0039】
図9(A)に示すように、待機位置P1は、内部トレイ22に支持された用紙Pから幅方向に外れた位置である。また、図9(B)及び図9(C)に示すように、液体付与手段31及び圧着手段32は、スライド機構47によって綴じ位置P2に移動することができる。綴じ位置P2は、内部トレイ22に支持された用紙P又は用紙束Pbに対面する位置であって、液体付与及び圧着綴じを実行する位置である。すなわち、待機位置P1及び綴じ位置P2は、主走査方向に離間した位置である。さらに、本実施形態に係る液体付与手段31は、圧着手段32に隣接して配置され、待機位置P1において圧着手段32よりも綴じ位置P2に近い。
【0040】
さらに、図3に示すように、端綴じ処理部25は、回動機構52を備える。回動機構52は、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44を、内部トレイ22に支持された用紙Pの厚み方向(すなわち、搬送方向及び主走査方向に直交する方向)に延びる回動軸周りに回動させる。回動機構52は、液体付与手段回動軸53と、圧着手段回動軸54と、連結機構55と、回動モータ56(駆動源)とを備える。
【0041】
液体付与手段回動軸53及び圧着手段回動軸54は、内部トレイ22に支持された用紙Pの厚み方向に延設されている。すなわち、液体付与手段回動軸53及び圧着手段回動軸54は、主走査方向に離間した位置において、互いに平行に延設されている。液体付与手段回動軸53は、液体付与フレーム31aに対して液体付与部材44を回動可能に支持する。圧着手段回動軸54は、ベース部材48に対して圧着フレーム32aを回動可能に支持する。連結機構55は、圧着フレーム32aと液体付与手段回動軸53とを相互に連結する。
【0042】
回動モータ56は、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44を回動させるための駆動力を発生させる。回動モータ56の駆動力は、プーリやタイミングベルトを介して圧着手段回動軸54に伝達される。これにより、圧着フレーム32aは、一対の綴じ歯32b、32cと共に、圧着手段回動軸54周りに回動する。また、圧着フレーム32aの回動は、連結機構55を介して液体付与手段回動軸53に伝達される。これにより、液体付与部材44は、液体付与フレーム31aに対して、液体付与手段回動軸53周りに回動する。
【0043】
図6は、端綴じ処理部25の平面図である。図6に示すように、本実施形態に係る連結機構55は、第1プーリ55aと、第2プーリ55bと、無端環状のタイミングベルト55cとで構成される。第1プーリ55aは、液体付与手段回動軸53に固定されて、液体付与手段回動軸53と一体回転する。第2プーリ55bは、圧着手段回動軸54の延長線上において圧着フレーム32aに固定されて、圧着フレーム32aと一体回転する。さらに、タイミングベルト55cは、第1プーリ55a及び第2プーリ55bに掛け渡されている。
【0044】
また、図6に示すように、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44は、用紙P及び用紙束Pbに当接する先端部の形状が長方形となっている。長方形は、扁平形状の一例である。但し、扁平形状の具体例は長方形に限定されず、台形、平行四辺形、楕円形、角部を丸めた長方形など、長手方向と短手方向とを有するあらゆる形状が該当する。なお、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44の前記先端部の形状は、同一であるのが望ましい。また、液体付与部材44の前記先端部の面積は、一対の綴じ歯32b、32cの前記先端部の面積と同一か、僅かに小さいのが望ましい。
【0045】
図6(A)は、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44それぞれの前記先端部の長手方向(すなわち、長辺)を、主走査方向に一致させた第1綴じ姿勢としての「平行綴じ姿勢」を示す。平行綴じ姿勢は、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44それぞれが回動機構52によって回動していない姿勢に相当する。言い変えると、形成される綴じ痕の長手方向が用紙Pの幅方向に沿うように綴じ処理を行うときの、用紙P又は用紙束Pbに対する一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44それぞれの姿勢をいう。すなわち、図6(A)の姿勢で後述する綴じ処理を実行すると、用紙束Pbの端部に主走査方向に長い圧着綴じの痕が残ることになる。
【0046】
一方、図6(B)は、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44それぞれの前記先端部の長手方向(すなわち、長辺)を、主走査方向に対して傾斜させた第2綴じ姿勢としての「斜め綴じ姿勢」を示す。斜め綴じ姿勢は、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44それぞれが回動機構52によって回動した姿勢に相当する。言い変えると、形成される綴じ痕の長手方向が用紙Pの幅方向と、用紙Pの搬送方向の双方に沿わない状態で、用紙束Pbの角部分に対して綴じ処理を行うときの、用紙P又は用紙束Pbに対する一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44それぞれの姿勢をいう。すなわち、図6(B)の姿勢で後述する綴じ処理を実行すると、用紙束Pbの端部に主走査方向に対して傾斜した圧着綴じの痕が残ることになる。なお、図6(B)では、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44それぞれの傾斜角度を45°にした例を図示しているが、斜め綴じ姿勢における傾斜角度は前述の例に限定されない。
【0047】
そして、回動機構52は、図6(A)に示す平行綴じ姿勢と、図6(B)に示す斜め綴じ姿勢との間で、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44を回動させる。一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44の傾斜角度は、例えば、回動モータ56の出力軸に取り付けられたエンコーダセンサによって把握することができる。
【0048】
すなわち、本実施形態に係る回動機構52は、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44を、同一の回動モータ56によって連動して回動させる。また、斜め綴じ姿勢における一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44は、主走査方向に対して同じ角度傾斜している。さらに、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44は、平行綴じ姿勢(図6(A))及び斜め綴じ姿勢(図6(B))それぞれにおいて、搬送方向の同じ位置に配置される。
【0049】
図2に戻って、後処理装置3は、エンドフェンス27と、中綴じ処理部28と、用紙折りブレード29と、排出トレイ30とをさらに備える。エンドフェンス27、中綴じ処理部28、及び用紙折りブレード29は、第3搬送路Ph3を搬送される用紙Pに中綴じ処理を施す。排出トレイ30には、画像形成装置2から供給される用紙Pのうち、中綴じ処理が施された用紙束Pbが排出される。
【0050】
エンドフェンス27は、第3搬送路Ph3を順番に搬送される複数の用紙Pの搬送方向の位置を揃える。また、エンドフェンス27は、用紙束Pbの中央を、中綴じ処理部28に対面させる綴じ位置と、用紙折りブレード29に対面させる折り位置とに移動可能に構成されている。中綴じ処理部28は、綴じ位置のエンドフェンス27によって揃えられた用紙束Pbの中央を綴じる。用紙折りブレード29は、折り位置のエンドフェンス27に支持された用紙束Pbを半分に折って、搬送ローラ対18に挟持させる。搬送ローラ対18、19は、中綴じ処理が施された用紙束Pbを排出トレイ30に排出する。
【0051】
図7は、第一実施形態に係る後処理装置3の動作を制御する制御ブロックのハードウェア構成図である。図7に示すように、後処理装置3は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、及びI/F105が共通バス109を介して接続されている構成を備える。
【0052】
CPU101は演算手段であり、後処理装置3全体の動作を制御する。RAM102は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU101が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM103は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD104は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラムなどが格納される。
【0053】
後処理装置3は、ROM103に格納された制御プログラム、HDD104などの記憶媒体からRAM102にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU101が備える演算機能によって処理する。その処理によって、後処理装置3の種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、後処理装置3に搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、後処理装置3の機能を実現する機能ブロックが構成される。すなわち、CPU101、RAM102、ROM103、及びHDD104は、後処理装置3の動作を制御するコントローラ100を構成する。
【0054】
I/F105は、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、接離モータ32d、スライドモータ50、回動モータ56、移動センサ40a、液量センサ43a、位置センサ51、及び操作パネル110を、共通バス109に接続するインタフェースである。コントローラ100は、I/F105を通じて、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、接離モータ32d、スライドモータ50、及び回動モータ56を動作させ、移動センサ40a、液量センサ43a、及び位置センサ51などのセンサ類からの検知結果を取得する。なお、図7には端綴じ処理を実行する構成部品のみを図示しているが、中綴じ処理を実行する構成部品も同様にコントローラ100によって制御される。
【0055】
図1に示すように、画像形成装置2は、操作パネル110を備えている。操作パネル110は、ユーザからの操作を受け付ける操作部と、ユーザに情報を報知するディスプレイ(報知部)とを備える。操作部は、例えば、ハードキー、ディスプレイに重畳されたタッチパネル等を含む。そして、操作パネル110は、操作部を通じてユーザから情報を取得し、ディスプレイを通じてユーザに情報を提供する。なお、報知部の具体例はディスプレイに限定されず、LEDランプやスピーカ等でもよい。又、後処理装置3に上記と同様の操作パネル110を備えるようにしてもよい。
【0056】
図8は、綴じ処理のフローチャートである。図9は、綴じ処理中における液体付与手段31及び圧着手段32の位置を示す図である。なお、図9では、液体付与手段31及び圧着手段32の姿勢の図示は省略している。コントローラ100は、例えば、画像形成装置2から綴じ処理の実行指示(以下、「綴じ処理指示」と表記する。)を取得したタイミングで、図8に示す綴じ処理を開始する。
【0057】
綴じ処理指示は、例えば、用紙束Pbを構成する用紙Pの数(以下、「所定枚数」と表記する。)と、綴じ処理を施すべき用紙束Pbの数(以下、「必要部数」と表記する。)と、用紙束Pbの綴じ位置と、端綴じ処理部25の綴じ姿勢とを含む。また、液体付与手段31及び圧着手段32は、綴じ処理の開始時点において、平行綴じ姿勢(図6(A))で、且つ待機位置P1(図9(A))に位置しているものとする。
【0058】
まず、綴じ処理指示で指示された姿勢が「斜め綴じ姿勢」である場合に、コントローラ100は、回動モータ56を駆動して、液体付与手段31及び圧着手段32を斜め綴じ姿勢に回動させる。一方、綴じ処理指示で指示された姿勢が「平行綴じ姿勢」である場合は、この処理が省略される。また、コントローラ100は、スライドモータ50を駆動して、綴じ処理指示で指示された綴じ位置P2に液体付与手段31が対面するように、端綴じ処理部25を主走査方向にスライドさせる(S801)。なお、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15によって最初の用紙Pが内部トレイ22に搬送される前に、ステップS801の処理を実行する。
【0059】
次に、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15を回転させることによって、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pを内部トレイ22に載置する(S802)。また、コントローラ100は、サイドフェンス24L、24Rを移動させることによって、内部トレイ22に支持された用紙Pの主走査方向の位置を揃える(所謂、ジョギング)。
【0060】
次に、コントローラ100は、直前のステップS802で内部トレイ22に支持された用紙Pに対して、綴じ位置P2に位置する液体付与手段31に液体付与処理を実行させる(S803)。すなわち、コントローラ100は、移動モータ37を駆動して、内部トレイ22に支持された用紙Pの綴じ位置P2に液体付与部材44を接触させる。
【0061】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙の数が、綴じ処理指示で指示された所定枚数に達したか否かを判定する(S804)。そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数に達していないと判定した場合に(S804:No)、ステップS802~S803の処理を再び実行する。すなわち、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15によって内部トレイ22に用紙Pが搬送される度に、ステップS802~S803の処理を実行する。尚、液体付与手段31による液体付与処理は、用紙束Pbを構成する複数の用紙Pの全てに行われる場合だけではなく、一部の用紙Pにのみ行ってもよい。
【0062】
そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数に達したと判定した場合に(S804:Yes)、図9(C)に示すように、スライドモータ50を駆動して、圧着手段32が綴じ位置P2に対面するように、端綴じ処理部25を主走査方向にスライドさせる(S805)。
【0063】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙束Pbに圧着綴じを施して、排出トレイ26に排出する(S806)。すなわち、コントローラ100は、接離モータ32dを駆動して、内部トレイ22に支持された用紙束Pbの綴じ位置P2を、一対の綴じ歯32b、32cに挟持させる。また、コントローラ100は、搬送ローラ対15を回転させることによって、圧着綴じされた用紙束Pbを排出トレイ26に排出する。
【0064】
なお、内部トレイ22に支持された用紙束Pb上において、ステップS806で一対の綴じ歯32b、32cが挟持する圧着領域は、ステップS803で液体付与部材44の先端部が接触した液体付与領域に重なる。換言すれば、圧着手段32は、内部トレイ22に支持された用紙束Pbにおいて、液体付与手段31によって液体が付与された領域を圧着綴じする。尚、一対の綴じ歯32b、32cが挟持する圧着領域は、液体付与部材44の先端部が接触した液体付与領域に完全に重なっている必要はなく、部分的に重なっている場合でも充分な綴じ強度を得ることができる。
【0065】
次に、コントローラ100は、排出された用紙束Pbの数が、綴じ処理指示で示された必要部数に達したか否かを判定する(S807)。コントローラ100は、必要部数に達していないと判定した場合に(S807:No)、ステップS802以降の処理を再び実行する。すなわち、コントローラ100は、排出トレイ26に排出した用紙束Pbの数が必要部数に達するまで(S807:Yes)、ステップS802~S806の処理を繰り返し実行する。
【0066】
そして、コントローラ100は、必要部数に達したと判定した場合に(S807:Yes)、スライドモータ50を駆動して、端綴じ処理部25を待機位置P1にスライドさせる。また、綴じ処理指示で指示された姿勢が「斜め綴じ姿勢」である場合に、コントローラ100は、回動モータ56を駆動して、液体付与手段31及び圧着手段32を平行綴じ姿勢に回動させる(S808)。一方、綴じ処理指示で指示された姿勢が「平行綴じ姿勢」である場合は、この処理が省略される。これにより、液体付与手段31及び圧着手段32が図9(A)の位置に戻る。なお、ステップS801、S808において、液体付与手段31及び圧着手段32のスライドと回動との実行順序は、前述の順序に限定されず、逆順であってもよい。
【0067】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0068】
上記の実施形態によれば、一対の綴じ歯32b、32cの姿勢に合わせて、液体付与部材44の姿勢を変化させるので、用紙P上の液体を付与する範囲を限定することができる。その結果、用紙Pに皺が生じたり、用紙Pに形成した画像が滲むのを防止できる。
【0069】
また、上記の実施形態によれば、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44を、斜め綴じ姿勢において同一の角度だけ傾斜させると共に、平行綴じ姿勢及び斜め綴じ姿勢それぞれで搬送方向の同じ位置に配置することによって、特別な位置合わせをせずに、液体を付与した領域内を圧着綴じすることができる。
【0070】
また、上記の実施形態によれば、同一の回動モータ56の駆動力によって、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44を連動して回動させるので、シンプルな構成で圧着領域を液体付与領域に重ねることができる。すなわち、上記の実施形態に係る回動機構52は、液体付与手段31を回動させる液体付与手段回動機構と、圧着手段32を回動させる圧着手段回動機構とを兼ねている。
【0071】
但し、一対の綴じ歯32b、32cを回動させる駆動源と、液体付与部材44を回動させる駆動源とを別々に設けてもよい。具体的には、図10に示すように、圧着手段32を回転駆動するための圧着手段回動駆動モータ120と、液体付与手段31を回転駆動するための液体付与手段回動駆動モータ121とを別々に設けても良い。
【0072】
圧着手段回動駆動モータ120は、圧着手段32を回動させるための駆動力を発生させる。その駆動力は、図示しないプーリやタイミングベルトを介して圧着手段回動軸54に伝達される。これにより、圧着手段32は、一対の綴じ歯32b、32cと共に、圧着手段回動軸54周りに回動する。圧着手段回動駆動モータ120、及び図示しないプーリやタイミングベルトは、圧着手段32を回動させる圧着手段回動機構の一例である。
【0073】
また、液体付与手段回動駆動モータ121は、液体付与手段31を回動させるための駆動力を発生させる。液体付与手段31の構成部品は、液体付与フレーム31aと液体付与ベース部材122により支持されユニット化された状態で、ベース部材48上に配置される。液体付与ベース部材122の下端にはプーリ123を備えた液体付与手段回動軸53が一体的に設けられている。又、液体付与手段回動駆動モータ121の出力軸は、プーリ124を備えている。そして、プーリ123とプーリ124は、タイミングベルト125により連結されており、液体付与手段回動駆動モータ121の駆動力が液体付与手段回動軸53に伝達される。これにより、液体付与手段31は、液体付与部材44と共に、ベース部材48上で液体付与手段回動軸53周りに回動する。液体付与手段回動駆動モータ121、プーリ123、124、及びタイミングベルト125は、液体付与手段31を回動させる液体付与手段回動機構の一例である。
【0074】
また、上記の実施形態によれば、液体付与フレーム31aに対して液体付与部材44のみを回動させるので、液体付与フレーム31a全体を回動させるのと比較して、回動モータ56を小型化することができる。但し、図11(A)に示すように、液体付与部材44と共に液体付与フレーム31a全体を一体で回動させてもよい。また図示は省略するが、圧着フレーム32aに対して一対の綴じ歯32b、32cを回動させてもよい。
【0075】
また、上記の実施形態のように、液体付与フレーム31aに対して液体付与部材44を回動させ、一対の綴じ歯32b、32cと共に圧着フレーム32a全体を回動させる場合において、圧着手段32より待機位置P1側に液体付与手段31を配置しようとすると、後処理装置3内で主走査方向に大きなスペースが必要となる。そこで、液体付与手段31を圧着手段32より綴じ位置側に配置することによって、省スペース化を実現できる。
【0076】
なお、上記の実施形態では、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44が平行綴じ姿勢及び斜め綴じ姿勢の2姿勢に姿勢変化する例を説明したが、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44の姿勢はこれに限定されない。他の例として、図11(B)に示すように、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44は、各々の先端部の長手方向を主走査方向に直交させる第3綴じ姿勢としての「垂直綴じ姿勢」に姿勢変化可能であってもよい。垂直綴じ姿勢は、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44それぞれが回動機構52によって、用紙Pの幅方向の端部に沿う位置まで回動した姿勢に相当する。言い変えると、形成される綴じ痕の長手方向が用紙Pの幅方向の端部に沿うように綴じ処理を行うときの、用紙P又は用紙束Pbに対する一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44それぞれの姿勢をいう。そして、回動機構52は、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44を、平行綴じ姿勢及び垂直綴じ姿勢の間で、任意の角度に回動させてもよい。
【0077】
また、上記の実施形態では、第1プーリ55aと、第2プーリ55bと、無端環状のタイミングベルト55cとで構成される連結機構55の例を説明したが、連結機構55の具体例は、図6の例に限定されない。
【0078】
他の例として、図12に示すように、変形例1に係る連結機構57は、液体付与部材44を平行綴じ姿勢に付勢する捩じりコイルバネ57aと、圧着フレーム32a及び液体付与部材44を連結するコイルバネ57bとで構成される。
【0079】
図12(A)に示すように、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44が平行綴じ姿勢のときに、コイルバネ57bは自然長となる。また、図12(B)に示すように、圧着フレーム32aが斜め綴じ姿勢に向かって回動すると、コイルバネ57bが伸長して、捩じりコイルバネ57aの付勢力に抗して液体付与部材44が斜め綴じ姿勢に向かって回動する。さらに、圧着フレーム32aが平行綴じ姿勢に向かって回動すると、コイルバネ57bが収縮して、捩じりコイルバネ57aの付勢力によって液体付与部材44が平行綴じ姿勢に向かって回動する。
【0080】
さらに他の例として、図13に示すように、変形例2に係る連結機構58は、液体付与部材44を斜め綴じ姿勢に付勢する捩じりコイルバネ58aと、圧着フレーム32a及び液体付与部材44の間に配置されるリンク部材58bと、リンク部材58bの主走査方向への移動をガイドするガイド部材58cとで構成される。
【0081】
図13(A)に示すように、一対の綴じ歯32b、32cが斜め綴じ姿勢のとき、圧着フレーム32aはリンク部材58bから離間している。このとき、液体付与部材44は、捩じりコイルバネ58aの付勢力によって、斜め綴じ姿勢に回動すると共に、リンク部材58bを圧着フレーム32aに向けて押す。また、図13(B)に示すように、圧着フレーム32aが平行綴じ姿勢に向けて回動すると、圧着フレーム32aに押されたリンク部材58bが捩じりコイルバネ58aの付勢力に抗して液体付与部材44を平行綴じ姿勢に回動させる。
【0082】
図14は、図3に示した端綴じ処理部25の他の実施形態の全体図である。図14に示すように、圧着手段32は、回動機構52を備える。回動機構52は、一対の綴じ歯32b、32cを備えた圧着手段32を、内部トレイ22に支持された用紙Pの厚み方向に延びる圧着手段回動軸54周りに回動させる。回動機構52は、圧着手段回動軸54と、回動モータ56とを備える。又、液体付与手段31は、内部トレイ22に支持された用紙Pの厚み方向に延設されている液体付与手段回動軸53を中心に回動可能に構成される。液体付与手段回動軸53には、後述する液体付与手段回動機構126の構成部品である姿勢切替レバー111が一体的に取り付けられている。
【0083】
液体付与手段回動軸53及び圧着手段回動軸54は、主走査方向に離間した位置において、互いに平行に延設されている。液体付与手段回動軸53は、ベース部材48に対して、液体付与フレーム31a及び液体付与ベース部材122を回動可能に支持する。圧着手段回動軸54は、ベース部材48に対して圧着フレーム32aを回動可能に支持する。
【0084】
回動モータ56は、圧着手段32を回動させるための駆動力を発生させる。回動モータ56の駆動力は、図示しないプーリやタイミングベルトを介して圧着手段回動軸54に伝達される。これにより、圧着フレーム32aは、一対の綴じ歯32b、32cと共に、圧着手段回動軸54周りに回動する。
【0085】
図15及び図16は、上述した液体付与手段31を回動させる液体付与手段回動機構126を説明する図である。液体付与手段回動機構126は、液体付与手段回動軸53と、液体付与手段回動軸53と一体的に回動可能に構成された姿勢切替レバー111とを備える。圧着手段32及び液体付与手段31は、ベース部材48に支持されている。このベース部材48がスライドモータ50によって、案内軸49に沿って綴じ機構ベース116上を主走査方向に移動する。綴じ機構ベース116には姿勢切替爪114と、案内レール115とが設置されている。姿勢切替爪114は、綴じ機構ベース116に回動可能に取り付けられており、スライドモータ50によるベース部材48を介した液体付与手段31の主走査方向への移動により姿勢切替レバー111が回転動作されるように構成されている。
【0086】
姿勢切替レバー111、姿勢切替爪114、及び案内レール115は、液体付与手段31の主走査方向の移動に伴い、液体付与手段31の姿勢を切り替える姿勢切替機構160に含まれる。姿勢切替レバー111は、液体付与手段31と一体的に回転する姿勢切替部材の一例である。姿勢切替爪114及び案内レール115は、液体付与手段31の主走査方向の移動の際に、姿勢切替レバー111に当接し、姿勢切替レバー111の姿勢を切り替える姿勢切替手段の一例である。
【0087】
図17は、綴じ機構ベース116に設置されている姿勢切替爪114の構成を示す図である。又、図18は、姿勢切替爪114による姿勢切替レバー111の動作を説明する図である。
【0088】
姿勢切替爪114は、綴じ機構ベース116に設けられた姿勢切替爪回転軸119により回動可能に保持されている。姿勢切替爪114は、一方、綴じ機構ベース116に取り付けられるとともに、他方端が姿勢切替爪114に取り付けられた付勢スプリング117により一方向(図17における姿勢切替爪回転軸119の時計回り方向)に付勢されている。綴じ機構ベース116には、爪ストッパ118が設けられている。図17(A)に示すように、姿勢切替爪114は、時計回り方向の回転が規制される一方、反時計回り方向の回転が許容されるように構成されている。
【0089】
図19は、圧着手段32及び液体付与手段31を「斜め綴じ姿勢」に変更する際の動作手順を説明する図である。
【0090】
図19(A)に示すように、圧着手段32及び液体付与手段31は、用紙幅領域外のホームポジションに位置している。また、姿勢切替レバー111は、案内レール115の上側に位置している。次に、図19(B)に示すように、圧着手段32及び液体付与手段31は、姿勢切替爪114を押し開きながら左方向に移動する。
【0091】
斜め姿勢に変更する際は、スライドモータ50を駆動して、圧着手段32と液体付与手段31を保持するベース部材48ごと左方向に移動させる。姿勢切替爪114は反時計周り方向の回動は規制されていない為、姿勢切替レバー111で姿勢切替爪114を押しながら乗り越える(図18(A)、(B)参照)。
【0092】
次に、図19(C)に示すように、姿勢切替レバー111が姿勢切替爪114を通過完了したら、スライドモータ50の駆動を停止し、ベース部材48の主走査方向の左方向への移動を一時停止する。この際に姿勢切替爪114は付勢スプリングにより付勢されて回動規制姿勢に戻っている(図18(C)参照)。
【0093】
次に、図19(D)に示すように、回動モータ56は、圧着手段32を回動させるための駆動力を発生させる。回動モータ56の駆動力は、図示しないプーリやタイミングベルトを介して圧着手段回動軸54に伝達される。これにより、圧着フレーム32aは、一対の綴じ歯32b、32cと共に、圧着手段回動軸54周りに回動する。その結果、圧着手段32が斜め姿勢に姿勢変化する。
【0094】
次に、図19(E)に示すように、圧着手段32及び液体付与手段31を保持するベース部材48が主走査方向の右方向に移動する。姿勢切替レバー111が姿勢切替爪114に接触すると、姿勢切替爪114は時計周り方向の回動は規制されている為、ベース部材48が右方向へ移動しても、姿勢切替レバー111は右方向への移動できず、斜め姿勢に向けて回動を始める(図18(D)、(E)参照)。
【0095】
次に、図19(F)に示すように、圧着手段32及び液体付与手段31を保持するベース部材48が主走査方向の右方向に移動する。姿勢切替レバー111が回動しながら案内レール115の下側に向かって移動する。姿勢切替レバー111が、案内レール115の下側(姿勢切替爪114の姿勢切替爪回転軸119よりも下側)に移動するとともに、主走査方向に移動する。これにより、姿勢切替爪114は、付勢スプリング117の付勢力に抗して反時計回りに回動させられる。さらに、ベース部材48が右方向に移動することにより、姿勢切替レバー111が姿勢切替爪114を乗り越えながら右側に移動する(図18(E)、(F)参照)。これにより、液体付与手段31の斜め姿勢への回動が完了する。
【0096】
すなわち、姿勢切替レバー111が姿勢切替爪114を主走査方向の一方端側(左端側)から他方側(右側)に通過するときには、液体付与手段31が平行綴じ姿勢から斜め綴じ姿勢へと回動する。また、平行綴じ姿勢から斜め綴じ姿勢に回動する際には、圧着手段32が先に斜め綴じ姿勢に回動し、その後に液体付与手段31が斜め綴じ姿勢に回動する。
【0097】
次に、図19(G)に示すように、圧着手段32及び液体付与手段31を保持するベース部材48を右方向に移動させる。斜め綴じ姿勢の液体付与手段31が液体付与位置に移動したら、液体付与部材44を用紙Pに対して接離させることで液体付与動作を実行する。
【0098】
次に、図19(H)に示すように、用紙束Pbの載置が完了すると圧着手段32及び液体付与手段31を保持するベース部材48を左方向に移動させる。斜め綴じ姿勢の圧着手段32が圧着位置に移動したら、一対の綴じ歯32b、32cを用紙束Pbに対して接離させることで圧着綴じ動作を実行する。
【0099】
図20は、圧着手段32及び液体付与手段31を「平行綴じ姿勢」(ホームポジションでの姿勢でもある)に変更する際の動作手順を説明する図である。まず、図20(A)に示すように、圧着手段32及び液体付与手段31は、斜め綴じ姿勢であるものとする。
【0100】
次に、図20(B)に示すように、圧着手段32及び液体付与手段31を保持するベース部材48を左方向に移動させる。姿勢切替レバー111が姿勢切替爪114に接触すると、姿勢切替爪114は時計周り方向の回動は規制されている為、ベース部材48が左向へ移動しても、姿勢切替レバー111は左方向への移動できず、図20(B)の時計回りに回動を始める。
【0101】
次に、図20(C)に示すように、ベース部材48を左方向に移動させる。姿勢切替レバー111が回動しながら案内レール115の上側に向かって移動する。姿勢切替レバー111が上側に移動したら、姿勢切替レバー111が姿勢切替爪114を乗り越えないタイミングで、ベース部材48を右方向に移動させ、液体付与手段31の平行綴じ姿勢への回動を完了する。
【0102】
すなわち、姿勢切替レバー111が姿勢切替爪114を主走査方向の他方端側(右端側)から一方側(左側)通過するときには、液体付与手段31が斜め綴じ姿勢から平行綴じ姿勢へと回動する。また、斜め綴じ姿勢から平行綴じ姿勢に回動する際には、液体付与手段31が先に平行綴じ姿勢に回動し、その後に圧着手段32が平行綴じ姿勢に回動する。
【0103】
上記の構成によれば、平行綴じ姿勢及び斜め綴じ姿勢への回動を、姿勢切替レバー111及び姿勢切替爪114で実現することができる。また、液体付与手段31及び圧着手段32の回動タイミングをずらすことによって、一緒に回動させるよりも制御がシンプルになる。さらに、斜め綴じ姿勢への回動の際に圧着手段32の後に液体付与手段31を回動させ、平行綴じ姿勢への回動の際に液体付与手段31の後に圧着手段32を回動させることによって、液体付与手段31及び圧着手段32の干渉を避けることができる。
【0104】
次に、図20(D)に示すように、回動モータ56を駆動することにより、圧着手段32を図20(D)の時計回りに回動させ、圧着手段32の平行綴じ姿勢に移動を完了する。
【0105】
尚、上述した他の実施形態では、液体付与手段回動軸53は、姿勢切替レバー111と一体になって回動するように構成しているが、液体付与手段回動軸53は、姿勢切替レバー111からギヤ列やタイミングベルトを介して離れた場所で連動して回動するように構成してもよい。
【0106】
図21は、一対の綴じ歯32b、32c及び液体付与部材44それぞれの先端部の長手方向(すなわち、長辺)を、主走査方向に一致させた「平行綴じ姿勢」(第1綴じ姿勢)で用紙束Pbの幅方向の複数個所に平行綴じを行う場合を示したものである。
【0107】
まず、用紙Pが内部トレイ22に搬送される前に、液体付与手段31が第1綴じ位置P1に位置するように、端綴じ処理部25を図21(A)の待機位置HPから図21(B)の第1綴じ位置P1に移動させる。
【0108】
そして、内部トレイ22に支持された用紙Pの主走査方向及び搬送方向の位置揃えが完了すると、第1綴じ位置P1に位置する液体付与手段31が用紙Pに対して液体付与処理を実行する。第1綴じ位置P1における液体付与処理が完了すると、液体付与手段31は、図21(C)に示すように、第2綴じ位置P2まで移動する。そして、移動が完了したら第2綴じ位置P2において用紙Pに対して液体付与処理を実行する。
【0109】
そして、上述した図21(B)及び図21(C)に示した液体付与処理を、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数(用紙束Pbを構成する枚数)に達するまで繰り返し実行する。
【0110】
その後、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数に達したら、図21(D)に示すように、圧着手段32が第2綴じ位置P2に位置するように、端綴じ処理部25を主走査方向に移動させる。そして、移動が完了したら圧着手段32は、第2綴じ位置P2において用紙束Pbに対して圧着綴じ処理を実行する。第2綴じ位置P2における圧着綴じ処理が完了すると、図21(E)に示すように、圧着手段32が第1綴じ位置P1に位置するように、端綴じ処理部25を主走査方向に移動させる。そして、移動が完了したら、圧着手段32は、第1綴じ位置P1において用紙束Pbに対して圧着綴じ処理を実行する。
【0111】
そして、第1綴じ位置P1における圧着綴じ処理が完了すると、端綴じ処理部25を図21(A)の待機位置HPに移動させて綴じ処理を終了する。
【0112】
また、上記の実施形態では、液体付与手段31及び圧着手段32を1つずつ設けた例を示したが、液体付与手段31及び圧着手段32の数はこれに限定されない。他の例として、図22に示すように、変形例3に係る後処理装置は、2つの液体付与手段31L、31Rと、2つの圧着手段32L、32Rとを備える。
【0113】
液体付与手段31L及び圧着手段32Lは、内部トレイ22に支持された用紙Pの中央Cに対して、主走査方向の一方側(左側)に配置されている。また、液体付与手段31Lは用紙Pの中央Cより左側の左側綴じ位置Lに液体付与し(図22(A))、圧着手段32Lは左側綴じ位置Lを圧着綴じする(図22(B))。さらに、液体付与手段31L及び圧着手段32Lは、平行綴じ姿勢及び斜め綴じ姿勢(または、垂直綴じ姿勢)の間を、図22の時計回りに回動可能に構成されている。
【0114】
液体付与手段31R及び圧着手段32Rは、内部トレイ22に支持された用紙Pの中央Cに対して、主走査方向の他方側(右側)に配置されている。また、液体付与手段31Rは用紙Pの中央Cより右側の右側綴じ位置Rに液体を付与し(図22(A))、圧着手段32Rは右側綴じ位置Rを圧着綴じする(図22(B))。さらに、液体付与手段31R及び圧着手段32Rは、平行綴じ姿勢及び斜め綴じ姿勢(または、垂直綴じ姿勢)の間を、図22の反時計回りに回動可能に構成されている。上述のように、液体付与手段31L、31R及び圧着手段32L、32Rは、用紙Pの中央Cに対して、用紙Pの幅方向の一方側及び他方側それぞれに配置されている。
【0115】
変形例3によれば、用紙束Pbの2箇所に対して、同時に液体付与及び圧着綴じを実行することができるので、綴じ処理のスピードを向上させることができる。
【0116】
[第二実施形態]
次に、図23図29を参照して、第二実施形態に係る後処理装置3Aを説明する。なお、第一実施形態と共通の構成要素には同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略することがある。
【0117】
第二実施形態に係る後処理装置3Aは、液体付与手段31と圧着手段32が併設された第一実施形態に係る後処理装置3とは異なり、液体付与手段131のみを搬送路の上流側に設けている。これにより、液体付与処理後に用紙Pを所定枚数プレスタックして、下流側に設けられた圧着手段32へ搬送することができるので、圧着手段32での綴じ処理の生産性を向上させることが可能となる。以下、搬送ローラ対10、11、14が用紙Pを搬送する方向は、上述で定義した「搬送方向」とは、逆方向であるため、「逆搬送方向」と定義する。また、逆搬送方向及び用紙Pの厚み方向に直交する方向を、「主走査方向(用紙Pの幅方向)」と定義する。
【0118】
図23は、第二実施形態に係る後処理装置の内部構造を示す図である。図23に示すように、後処理装置3Aは、液体付与手段131と、パンチ孔穿設手段132(処理部)とをさらに備える。液体付与手段131及びパンチ孔穿設手段132は、内部トレイ22より逆搬送方向の上流側に配置されている。また、液体付与手段131及びパンチ孔穿設手段132は、搬送ローラ対10~19によって搬送される1枚の用紙Pに同時に対面し得る位置において、逆搬送方向にずれて配置されている。本実施形態に係る液体付与手段131及びパンチ孔穿設手段132は、搬送ローラ対10、11の間に配置されている。但し、液体付与手段131及びパンチ孔穿設手段132の配置は、図23の例に限定されない。
【0119】
例えば、図29に示すように画像形成装置2と後処理装置3の間にインサーター6が配置されている場合は、液体付与手段131を後処理装置3の上流側に位置するインサーター6内に設けることもできる。インサーター6としては、画像形成装置2から搬送された用紙Pとともに後処理装置3に搬送するプレプリント媒体を、表紙、挿入紙または仕切紙として、画像形成装置2を通さずに給紙することができる装置が挙げられる。
【0120】
又、搬送ローラ対11は、図24(A)に示すように、液体付与手段131の液体付与ヘッド146により液体が付与された用紙Pの液体付与位置461と主走査方向において重ならない位置に配置されている。これは、搬送ローラ対11が用紙Pを搬送する際に、複数のローラ対が、液体付与位置461を押圧することにより液体付与位置461の液量が減少することを防止するためである。その結果、用紙Pが、液体付与手段31よりも逆逆搬送方向の下流側に設けられた端綴じ処理部25に到達した時点で、液体付与位置461の液量は、綴じ強度を維持するのに必要な液量を確保できているので、搬送過程で液体付与位置461の液量が減少することによる用紙束Pbの綴じ強度の低下を防止することができる。
【0121】
更に、搬送ローラ対11を構成する複数のローラ対を、用紙Pの液体付与位置461と主走査方向において重ならない位置に配置することにより、複数のローラ対に液体が付着して用紙Pの搬送性が悪化したり、そのことが原因で生じる搬送ジャムを防止することができる。
【0122】
尚、以上では搬送ローラ対11についてのみ説明したが、搬送ローラ対14~15を構成する複数のローラ対も同様に、用紙Pの液体付与位置461と主走査方向において重ならない位置に配置することが好ましい。
【0123】
液体付与手段131は、搬送ローラ対10、11によって搬送される用紙Pに液体(例えば、水)を付与(以下、「液体付与」と表記する。)する。パンチ孔穿設手段132は、搬送ローラ対10、11によって搬送される用紙Pに、厚み方向に貫通するパンチ孔を穿つ。なお、液体付与手段131に近接して設けられる処理部は、パンチ孔穿設手段132に限定されず、搬送ローラ対10、11によって搬送される用紙Pの傾き(スキュー)を補正する傾き補正部でもよい。
【0124】
図24は、第二実施形態に係る液体付与手段131を用紙Pの厚み方向から見た図である。図25は、図24のXXV-XXVにおける断面図である。図26は、図24のXXVI-XXVIにおける断面図である。図24図26に示すように、液体付与手段131は、一対のガイド軸133a、133bと、一対のプーリ134a、134bと、無端環状ベルト135、136と、スライドモータ137と、ホーム位置センサ138と、液体付与ユニット140とを備える。
【0125】
一対のガイド軸133a、133bは、逆搬送方向に離間した位置において、各々が主走査方向に延設されている。また、一対のガイド軸133a、133bは、後処理装置3Aの一対の側板4a、4bに支持されている。そして、一対のガイド軸133a、133bは、液体付与ユニット140を主走査方向に移動可能に支持する。
【0126】
一対のプーリ134a、134bは、逆搬送方向における一対のガイド軸133a、133bの間に配置されている。また、一対のプーリ134a、134bは、主走査方向に離間して配置されている。さらに、一対のプーリ134a、134bは、用紙Pの厚み方向に延びる回転軸線回りに回転可能に、後処理装置3Aのフレームに支持されている。
【0127】
無端環状ベルト135は、一対のプーリ134a、134bに掛け渡されている。また、無端環状ベルト135には、接続部35aによって液体付与ユニット140に接続されている。無端環状ベルト136は、プーリ134aとスライドモータ137の出力軸137aとに掛け渡されている。スライドモータ137は、液体付与ユニット140を主走査方向に移動させるための駆動力を発生させる。
【0128】
スライドモータ137が回転することによって、プーリ134a及び出力軸137aの間を無端環状ベルト136が周回し、プーリ134aを回転させる。また、プーリ134aが回転することによって、一対のプーリ134a、134bの間を無端環状ベルト135が周回する。これにより、液体付与ユニット140は、一対のガイド軸133a、133bに沿って主走査方向に移動する。また、スライドモータ137の回転方向を切り替えることによって、液体付与ユニット140は、主走査方向に往復移動する。
【0129】
ホーム位置センサ138は、液体付与ユニット140が主走査方向のホーム位置に到達したことを検知し、検知結果を示すホーム位置信号を後述するコントローラ100(図27参照)に出力する。ホーム位置センサ138は、例えば、発光部及び受光部を備える光学センサである。そして、ホーム位置の液体付与ユニット140は、発光部及び受光部の間の光路を遮断する。そして、ホーム位置センサ138は、発光部から出力された光が受光部で受光されないことに応じて、ホーム位置信号を出力する。但し、ホーム位置センサ138の具体的な構成は、前述の例に限定されない。
【0130】
図25に示すように、後処理装置3A内の搬送路は、用紙Pの厚み方向に離間して配置された上ガイド板5a及び下ガイド板5bによって画定される。そして、液体付与ユニット140は、上ガイド板5aに設けられた開口に対面する位置に配置されている。すなわち、液体付与ユニット140は、上ガイド板5aの開口を通じて搬送路(すなわち、用紙Pに対面し得る位置)に対面して配置されている。
【0131】
図24図26に示すように、液体付与ユニット140は、ベース部材141と、回転ブラケット142と、貯液タンク143と、移動手段144と、保持部材145と、液体付与ヘッド146と、柱状部材147a、147bと、押圧板148と、コイルバネ149a、149bと、回転モータ150と、移動モータ151(図27参照)と、ホーム角度センサ152とを備える。
【0132】
ベース部材141は、主走査方向にスライド可能に一対のガイド軸133a、133bに支持されている。また、ベース部材141は、接続部35aによって無端環状ベルト135に接続されている。さらに、ベース部材141は、液体付与ユニット140の構成部品142~152を支持している。
【0133】
回転ブラケット142は、用紙Pの厚み方向に延びる回転軸線回りに回動可能にベース部材141の下面に支持されている。また、回転ブラケット142は、回転モータ150の駆動力が伝達されることによって、ベース部材141に対して回転する。さらに、回転ブラケット142は、貯液タンク143、移動手段144、保持部材145、液体付与ヘッド146、柱状部材147a、147b、押圧板148、及びコイルバネ149a、149bを支持している。
【0134】
ホーム角度センサ152は、回転ブラケット142がホーム角度に到達したことを検知し、検知結果を示すホーム角度信号をコントローラ100に出力する。ホーム角度とは、例えば、平行綴じするときの角度である。ホーム角度センサ152は、例えば、発光部及び受光部を備える光学センサである。そして、ホーム角度の回転ブラケット142は、発光部及び受光部の間の光路を遮断する。そして、ホーム角度センサ152は、発光部から出力された光が受光部で受光されないことに応じて、ホーム角度信号を出力する。但し、ホーム角度センサ152の具体的な構成は、前述の例に限定されない。
【0135】
尚、図24(A)に示した回転ブラケット142は、液体付与手段131より下流側の圧着手段32が平行綴じする際の状態を示している。又、図24(B)に示した回転ブラケット142は、液体付与手段131より下流側の圧着手段32が斜め綴じ(角綴じ)する際の状態を示している。
【0136】
貯液タンク143は、用紙Pに付与するための液体を貯留する。移動手段144は、用紙Pの厚み方向に移動(例えば昇降)可能に貯液タンク143に支持されている。また、移動手段144は、移動モータ151の駆動力が伝達されることによって、貯液タンク143に対して移動する。保持部材145は、移動手段144の下端に取り付けられている。液体付与ヘッド146は、保持部材145から搬送路に向けて(本実施形態では、下方)に突出している。また、液体付与ヘッド146には、貯液タンク143に貯留された液体が供給される。さらに、液体付与ヘッド146は、吸水率の高い材料(例えば、スポンジ、繊維)で構成されている。
【0137】
柱状部材147a、147bは、液体付与ヘッド146の周囲において、保持部材145から下方に突出している。また、柱状部材147a、147bは、保持部材145に対して厚み方向に相対移動可能に構成されている。さらに、柱状部材147a、147bは、下端で押圧板148を保持している。押圧板148には、液体付与ヘッド146に対面する位置に貫通孔148aが形成されている。コイルバネ149a、149bは、保持部材145と押圧板148との間において、柱状部材147a、147bに外挿されている。そして、コイルバネ149a、149bは、柱状部材147a、147b及び押圧板148を、保持部材145に対して下方に付勢する。
【0138】
図25(A)及び図26(A)に示すように、上ガイド板5aの開口に対面する位置に用紙Pが搬送される前の段階では、押圧板148は開口の位置または開口より上方に位置している。次に、搬送ローラ対10、11によって搬送された用紙Pの液体付与位置が開口に対面する位置で停止すると、移動モータ151を第1方向に回転させる。これにより、移動手段144、保持部材145、液体付与ヘッド146、柱状部材147a、147b、押圧板148、及びコイルバネ149a、149bが一体となって下降して、押圧板148が用紙Pに当接する。なお、液体付与位置とは、端綴じ処理部25によって圧着綴じされる予定の位置(すなわち、綴じ位置)である。尚、第二実施形態における端綴じ処理部25は、第一実施形態と異なり圧着手段32のみを備えている。
【0139】
そして、押圧板148が用紙Pに当接した後も移動モータ151を第1方向に回転させることによって、コイルバネ149a、149bが圧縮されて、移動手段144、保持部材145、液体付与ヘッド146、及び柱状部材147a、147bがさらに下降する。そして、図25(B)及び図26(B)に示すように、液体付与ヘッド146の下面が貫通孔148aを通じて用紙Pに当接する。その結果、液体付与ヘッド146に含まれる液体が用紙Pに付与される。
【0140】
さらに、図25(C)及び図26(C)に示すように、移動モータ151をさらに第1方向に回転させることによって、液体付与ヘッド146を用紙Pにさらに強く押し付けることができる。これにより、用紙Pに対する液体付与量が増加する。すなわち、液体付与手段131は、用紙Pに対する液体付与ヘッド146の押し付け力を変更することによって、液体付与量を調整することができる。
【0141】
一方、移動モータ151を第1方向と逆向きの第2方向に回転させることによって、移動手段144、保持部材145、液体付与ヘッド146、柱状部材147a、147b、押圧板148、及びコイルバネ149a、149bが一体となって上昇する。これにより、図25(A)及び図26(A)に示すように、液体付与ヘッド146及び押圧板148が用紙Pから離間する。すなわち、液体付与手段131は、用紙Pに切離可能な液体付与ヘッド146を備える。
【0142】
図27は、第二実施形態に係る後処理装置3Aの動作を制御する制御ブロックのハードウェア構成図である。図27に示すように、後処理装置3Aは、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、及びI/F105が共通バス109を介して接続されている構成を備える。
【0143】
CPU101は演算手段であり、後処理装置3A全体の動作を制御する。RAM102は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU101が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM103は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD104は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラムなどが格納される。
【0144】
後処理装置3Aは、ROM103に格納された制御プログラム、HDD104などの記憶媒体からRAM102にロードされた情報処理プログラム(アプリケーションプログラム)などをCPU101が備える演算機能によって処理する。その処理によって、後処理装置3Aの種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、後処理装置3Aに搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、後処理装置3Aの機能を実現する機能ブロックが構成される。すなわち、CPU101、RAM102、ROM103、及びHDD104は、後処理装置3Aの動作を制御するコントローラ100を構成する。
【0145】
I/F105は、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、端綴じ処理部25、液体付与手段131、パンチ孔穿設手段132、及び操作パネル110を、共通バス109に接続するインタフェースである。コントローラ100は、I/F105を通じて、搬送ローラ対10、11、14、15、切替爪20、サイドフェンス24L、24R、端綴じ処理部25、液体付与手段131、及びパンチ孔穿設手段132の動作を制御する。なお、図27には端綴じ処理を実行する構成部品のみを図示しているが、中綴じ処理を実行する構成部品も同様にコントローラ100によって制御される。
【0146】
操作パネル110は、ユーザからの入力操作を受け付ける操作部と、ユーザに情報を報知するディスプレイ(報知部)とを備える。操作部は、例えば、ハードキー、ディスプレイに重畳されたタッチパネル等を含む。そして、操作パネル110は、操作部を通じてユーザから情報を取得し、ディスプレイを通じてユーザに情報を提供する。
【0147】
図28は、後処理のフローチャートである。コントローラ100は、例えば、画像形成装置2から後処理の実行指示(以下、「後処理指示」と表記する。)を取得したことに応じて、図28に示す後処理を実行する。後処理指示は、例えば、用紙束Pbを構成する用紙Pの数(以下、「所定枚数N」と表記する。)と、綴じ位置(=液体付与位置)及び綴じ角度(=液体付与角度)と、液体付与処理と並行して実行される処理(本実施形態では、パンチ孔の穿設)とを含む。なお、後処理の開始時点において、液体付与ユニット140はホーム位置に位置し、回転ブラケット142はホーム角度に保持されているものとする。
【0148】
まず、コントローラ100は、スライドモータ137を駆動することによって、液体付与ユニット140をホーム位置から液体付与位置に対面し得る位置に移動させる。また、コントローラ100は、回転モータ150を駆動することによって、回転ブラケット142をホーム角度から液体付与角度に回転させる(S901)。液体付与位置に対面し得る位置及び液体付与角度に達したことは、スライドモータ137及び回転モータ150のロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。
【0149】
次に、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11を駆動することによって、画像形成装置2によって画像が形成された用紙Pの搬送を開始する(S902)。コントローラ100は、用紙Pの液体付与位置が液体付与ユニット140(より詳細には、液体付与ヘッド146)に対面するまで(S903:No)、搬送ローラ対10、11の駆動を継続する。そして、コントローラ100は、用紙Pの液体付与位置が液体付与ヘッド146に対面したことに応じて(S903:Yes)、搬送ローラ対10、11を停止する(S904)。用紙Pの液体付与位置が液体付与ヘッド146に対面したことは、搬送ローラ対10、11を駆動するモータのロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。
【0150】
コントローラ100は、液体付与手段131によって用紙Pの液体付与位置に液体付与する処理と、パンチ孔穿設手段132によって用紙Pにパンチ孔を穿設させる処理とを並行して実行する(S905)。より詳細には、コントローラ100は、移動モータ151を第1方向に回転させることによって、液体付与ヘッド146を用紙Pの液体付与位置に当接させる。また、コントローラ100は、用紙Pに対する液体付与量に応じて、液体付与ヘッド146の押し付け力(すなわち、移動モータ151の回転量)を変更する。
【0151】
用紙Pに対する液体付与量は、用紙束Pbを構成する全ての用紙Pに対して同一でもよいし、用紙P毎に異なっていてもよい。例えば、コントローラ100は、後に搬送される用紙Pほど液体付与量を減少させてもよい。また、移動モータ151の回転量は、移動モータ151のロータリエンコーダから出力されるパルス信号によって把握できる。
【0152】
次に、コントローラ100は、搬送ローラ対10、11、14、15を駆動することによって、用紙Pを内部トレイ22に載置する(S906)。また、コントローラ100は、サイドフェンス24L、24Rを移動させることによって、内部トレイ22に支持された用紙束Pbの主走査方向の位置を揃える(所謂、ジョギング)。
【0153】
次に、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が、後処理指示で指示された所定枚数Nに達したか否かを判定する(S907)。そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数Nに達していないと判定したことに応じて(S907:No)、ステップS902~S906の処理を再び実行する。
【0154】
そして、コントローラ100は、内部トレイ22に載置された用紙Pの数が所定枚数Nに達したと判定したことに応じて(S907:Yes)、液体付与手段131によって液体付与された用紙束Pbの綴じ位置(=液体付与位置)を、端綴じ処理部25に圧着綴じさせる。さらに、コントローラ100は、搬送ローラ対15を回転させることによって、圧着綴じされた用紙束Pbを排出トレイ26に排出する(S908)。また、上記端綴じ処理部25による圧着綴じ動作には、第一実施形態の綴じ処理フローチャートである図8のステップS805~S808の処理工程が同じように適用されるため、詳細な説明は省略する。
【0155】
また、本発明は、端綴じ処理を実行する端綴じ処理部25のみならず、中綴じ処理を実行する中綴じ処理部28にも適用することができる。
【0156】
また、上記に説明した制御方法は、例えば、プログラム等で実現してもよい。すなわち、制御方法は、プログラムに基づいて、演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置、及び、制御装置を協働して動作させて、コンピュータが実行する方法である。また、プログラムは、記憶装置、又は、記憶媒体等に書き込まれて配布、又は、電気通信回線等を通じて配布されてもよい。
【0157】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0158】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 媒体を搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された少なくとも1枚の前記媒体に液体を付与する液体付与手段と、
前記液体付与手段で液体が付与された複数の前記媒体を加圧変形させて綴じる圧着手段と、
前記液体付与手段を回動させる液体付与手段回動機構と、
前記圧着手段を回動させる圧着手段回動機構と、を備え、
前記液体付与手段回動機構及び前記圧着手段回動機構は、それぞれ前記媒体の厚み方向に延びる回動軸周りに前記液体付与手段及び前記圧着手段を回動させることを特徴とする媒体処理装置である。
<2> 前記液体付与手段回動機構及び前記圧着手段回動機構は、前記液体付与手段及び前記圧着手段それぞれの先端部の長手方向を、前記媒体の幅方向に沿う第1綴じ姿勢と、前記媒体の幅方向に対して傾斜させた第2綴じ姿勢とに、回動させることを特徴とする前記<1>に記載の媒体処理装置である。
<3> 前記液体付与手段及び前記圧着手段は、前記第1綴じ姿勢及び前記第2綴じ姿勢それぞれにおいて、前記搬送方向の同じ位置に配置されることを特徴とする前記<2>に記載の媒体処理装置である。
<4> 前記第2綴じ姿勢の前記圧着手段及び前記液体付与手段は、前記媒体の幅方向に対して同じ角度傾斜していることを特徴とする前記<2>又は前記<3>に記載の媒体処理装置である。
<5> 前記液体付与手段回動機構及び前記圧着手段回動機構は、前記液体付与手段及び前記圧着手段それぞれの先端部の長手方向を、前記媒体の幅方向に一致させる第1綴じ姿勢と、前記媒体の幅方向に直交させる第3綴じ姿勢との間で、任意の角度に回動させることを特徴とする前記<1>乃至前記<4>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<6> 前記液体付与手段及び前記圧着手段は、前記媒体に対して前記媒体の幅方向に外れた待機位置と、前記媒体に対面する綴じ位置との間を、前記媒体の幅方向に延びる案内軸に沿ってスライド可能に構成され、
前記液体付与手段は、前記綴じ位置側において、前記圧着手段に隣接して配置されていることを特徴とする前記<1>乃至前記<5>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<7> 前記液体付与手段回動機構及び前記圧着手段回動機構は、前記液体付与手段及び前記圧着手段を、同一の駆動源によって連動して回動させることを特徴とする前記<1>乃至前記<6>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<8> 前記液体付与手段回動機構及び前記圧着手段回動機構は、それぞれ回動駆動するための駆動源を備えることを特徴とする前記<1>乃至前記<6>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<9> 前記液体付与手段は、前記媒体に液体を付与する液体付与部材を備え、
前記液体付与手段回動機構は、前記液体付与部材と前記液体付与手段を一体で回動することを特徴とする前記<1>乃至前記<8>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<10> 前記液体付与手段は、前記媒体に液体を付与する液体付与部材を備え、
前記液体付与手段回動機構は、前記液体付与部材のみを回動することを特徴とする前記<1>乃至前記<8>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<11> 前記圧着手段および前記液体付与手段を前記搬送方向に直交する主走査方向に同時に移動させる主走査移動手段をさらに備え、
前記液体付与手段回動機構は、前記液体付与手段の前記主走査方向の移動に伴い、前記液体付与手段の姿勢を切り替える姿勢切替機構を備える前記<2>乃至前記<4>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<12> 前記姿勢切替機構は、前記液体付与手段と一体的に回転する姿勢切替部材と、
前記液体付与手段の前記主走査方向の移動の際に、前記姿勢切替部材に当接し、前記姿勢切替部材の姿勢を切り替える姿勢切替手段を備えた前記<11>に記載の媒体処理装置である。
<13> 前記姿勢切替手段は、
前記姿勢切替部材が前記姿勢切替手段を前記主走査方向の一方端側から通過するときには前記液体付与手段を前記第1綴じ姿勢から前記第2綴じ姿勢へと回動させ、
前記主走査方向の他方端側から通過するときに前記液体付与手段を前記第2綴じ姿勢から前記第1綴じ姿勢へと回動させることを特徴とする前記<12>に記載の媒体処理装置である。
<14> 前記第1綴じ姿勢から前記第2綴じ姿勢に回動する際には、前記圧着手段が先に前記第2綴じ姿勢に回動し、その後前記液体付与手段が前記第2綴じ姿勢に回動に移動することを特徴とする前記<2>乃至前記<4>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<15> 前記第2綴じ姿勢から前記第1綴じ姿勢に回動する際には、前記液体付与手段が先に前記第1綴じ姿勢に回動し、その後前記圧着手段が前記第1綴じ姿勢に回動することを特徴とする前記<2>乃至前記<4>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<16> 前記液体付与手段及び前記圧着手段は、前記媒体の中央に対して、前記媒体の幅方向の一方側及び他方側それぞれに配置されていることを特徴とする前記<1>乃至前記<15>のいずれか1つに記載の媒体処理装置である。
<17> 前記媒体に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置によって画像が形成された複数の前記媒体を圧着綴じする前記<1>乃至前記<16>のいずれか1つに記載の媒体処理装置と、を備えることを特徴とする画像形成システムである。
【符号の説明】
【0159】
1 :画像形成システム
2 :画像形成装置
3 :後処理装置
10-19 :搬送ローラ対
20 :切替爪
21,26,30 :排出トレイ
22 :内部トレイ
23 :エンドフェンス
24L,24R :サイドフェンス
25 :端綴じ処理部
28 :中綴じ処理部
27 :エンドフェンス
29 :用紙折りブレード
31,31L,31R,131 :液体付与手段
31a :液体付与フレーム
32,32L,32R :圧着手段
32a :圧着フレーム
32b,32c :綴じ歯
32d :接離モータ
33 :下押圧板
34 :上押圧板
34a,148a :貫通口
35 :移動機構
36 :液体付与機構
37 :移動モータ
38 :台形ネジ
39 :ナット
40 :ベースプレート
40a :移動センサ
41a,41b,147a,147b :柱状部材
42a,42b,57b,149a,149b :コイルバネ
43,143 :貯液タンク
43a :液量センサ
44 :液体付与部材
45 :供給部材
45a :保護部材
46 :ジョイント
47 :スライド機構
48 :ベース部材
49 :案内軸
50,137 :スライドモータ
51 :位置センサ
52 :回動機構
53 :液体付与手段回動軸
54 :圧着手段回動軸
55,57,58 :連結機構
55a :第1プーリ
55b :第2プーリ
55c :タイミングベルト
56 :回動モータ
57a,58a :捩じりコイルバネ
58b :リンク部材
58c :ガイド部材
100 :コントローラ
101 :CPU
102 :RAM
103 :ROM
104 :HDD
105 :I/F
109 :共通バス
110 :操作パネル
132 :パンチ孔穿設手段
133a,133b :ガイド軸
134a,134b :プーリ
135,136 :無端環状ベルト
137a :出力軸
138 :ホーム位置センサ
140 :液体付与ユニット
141 :ベース部材
142 :回転ブラケット
144 :移動手段
145 :保持部材
146 :液体付与ヘッド
148 :押圧板
150 :回転モータ
152 :ホーム角度センサ
331 :下押圧板保持体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0160】
【特許文献1】特開2015-166281号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29