IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナミックス株式会社の特許一覧

特開2023-78194樹脂組成物およびその硬化物、電子部品用接着剤、半導体装置、ならびに電子部品
<>
  • 特開-樹脂組成物およびその硬化物、電子部品用接着剤、半導体装置、ならびに電子部品 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078194
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびその硬化物、電子部品用接着剤、半導体装置、ならびに電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/66 20060101AFI20230530BHJP
   C09J 163/02 20060101ALI20230530BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
C08G59/66
C09J163/02
C09J11/06
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031764
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2019567131の分割
【原出願日】2019-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2018011454
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 信幸
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 一希
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硬化後に、落下時の衝撃に対する耐性に優れ、耐溶剤性にも優れる樹脂組成物およびその硬化物、この樹脂組成物を含む電子部品用接着剤、この樹脂組成物の硬化物を含む半導体装置、ならびに電子部品を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、(B)多官能チオール樹脂、および(C)硬化触媒を含む樹脂組成物であって、硬化物の50℃における弾性率が、0.5GPa以上であり、樹脂組成物中のエポキシ樹脂100質量部に対して、(A)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂が、65質量部以上含まれる樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、
(B)多官能チオール樹脂、および
(C)硬化触媒
を含む樹脂組成物であって、
硬化物の50℃における弾性率が、0.5GPa以上であり、
樹脂組成物中のエポキシ樹脂100質量部に対して、(A)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂が、65質量部以上含まれること、
を特徴とする、樹脂組成物。
【請求項2】
(A)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
(B)多官能チオール樹脂、および
(C)硬化触媒
を含む樹脂組成物であって、
硬化物の50℃における弾性率が、0.5GPa以上であり、
樹脂組成物100質量部に対する(A)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含有量が10~70質量部であること、を特徴とする、樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、20℃以上50℃未満における弾性率が、0.5GPa以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
硬化物のガラス転移温度が50℃を超える、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、電子部品用接着剤。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化物を含む、半導体装置。
【請求項8】
請求項6記載の硬化物、または上記請求項7に記載の半導体装置を含む、電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物およびその硬化物、電子部品用接着剤、半導体装置、ならびに電子部品に関する。特に、電子部品用接着剤に適した樹脂組成物、この樹脂組成物の硬化物を含む半導体装置、および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、使用されている携帯端末等には、電子部品が内蔵されている。この携帯端末等には、耐落下衝撃性(以下、落下時の衝撃に対する耐性)が要求される用途が、多くある。このため、電子部品の接着等で使用される樹脂組成物には、このような耐性が求められている。
【0003】
一方、電子部品の接着等で使用される樹脂組成物には、製造工程中において、はんだフラックス及びほこり等を除去するための洗浄工程に耐え得ること、すなわち、耐溶剤性も求められている。
【0004】
従来から、樹脂組成物の、落下時の衝撃に対する耐性を改善するために、硬化物の低ガラス転移温度化(低Tg化)による、低弾性率化の手法が知られている(例えば、特許文献1の第0009、0077、0079~0081段落)。この手法では、樹脂の硬化物の架橋密度が低くなり、膨潤しやすい。そのため、耐溶剤性が劣ってしまう、という問題がある。しかし、硬化物を高ガラス転移温度化(高Tg化)すると、落下時の衝撃に対する耐性が劣化してしまう、という問題がある。このため、電子部品(例えば、ボイスコイルモーター(VCM、カメラのピント合わせ等に使用される)や、イメージセンサーモジュール等)用の接着剤としての使用には、適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-188628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものである。硬化後に、落下時の衝撃に対する耐性に優れ、耐溶剤性にも優れる樹脂組成物およびその硬化物、この樹脂組成物を含む電子部品用接着剤、この樹脂組成物の硬化物を含む半導体装置、ならびに電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、検討を行い、(A)特定構造のエポキシ樹脂、(B)チオール系硬化剤、および(C)硬化触媒を含む樹脂組成物、が落下時の衝撃に対する耐性と、耐溶剤性と、の両方を兼ね備えることができる、ことを見出した。
【0008】
本発明は、以下の構成を有することによって上記問題を解決した、樹脂組成物、電子部品用接着剤、半導体装置、および電子部品に関する。
〔1〕(A)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
(B)多官能チオール樹脂、および
(C)硬化触媒
を含み、
硬化物の50℃における弾性率が、0.5GPa以上であることを特徴とする、樹脂組成物。
〔2〕さらに、20℃以上50℃未満における弾性率が、0.5GPa以上である、上記〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕硬化物のガラス転移温度が50℃を超える、上記〔1〕または〔2〕記載の樹脂組成物。
〔4〕(B)成分が、分子中にエステル結合を有しない多官能チオール樹脂を含む、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔5〕(B)成分が、グリコールウリル化合物を含む、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔6〕(B)成分のグリコールウリル化合物が、(B)成分100質量部に対して、40~100質量部である、上記〔5〕に記載の樹脂組成物。
〔7〕さらにシリカフィラーを含む、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の樹脂組成物。〔8〕上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の樹脂組成物、を含む電子部品用接着剤。
〔9〕上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の樹脂組成物、の硬化物。
〔10〕上記〔9〕に記載の硬化物を含む、半導体装置。
〔11〕上記〔9〕に記載の硬化物、または上記〔10〕に記載の半導体装置、を含む電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明〔1〕によれば、硬化後に落下時の衝撃に対する耐性に優れ、かつ耐溶剤性にも優れる、樹脂組成物を提供することができる。本発明〔8〕によれば、硬化後に落下時の衝撃に対する耐性に優れ、かつ耐溶剤性にも優れる、電子部品用接着剤を提供することができる。
【0010】
本発明〔9〕によれば、耐落下衝撃性に優れ、耐溶剤性にも優れる樹脂組成物の硬化物を提供することができる。
【0011】
本発明〔10〕によれば、落下時の衝撃に対する耐性に優れ、かつ耐溶剤性にも優れる、樹脂組成物の硬化物を含む、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。本発明〔11〕によれば、落下時の衝撃に対する耐性に優れ、かつ耐溶剤性にも優れる樹脂組成物の硬化物を含む、信頼性の高い電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例6,7および比較例3のDMAチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物という)は、
(A)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、
(B)多官能チオール樹脂、および
(C)硬化触媒
を含み、
硬化物の50℃における弾性率が、0.5GPa以上であることを特徴とする。
【0014】
(A)成分の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、樹脂組成物に、硬化性、耐熱性、接着性、耐落下衝撃性、耐溶剤性等を付与する。なお、水添ビスフェノールAは、水素化ビスフェノールA(HBPA)、または2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンとも呼ばれる。(A)成分には、不純物として、単官能体や、2量体が含まれることがある。樹脂組成物中のエポキシ樹脂100質量部に対して、(A)成分は、65質量部以上含まれることが好ましい。また、70質量部以上含まれることがより好ましい。75質量部以上含まれることが、さらに好ましい。(A)の含有量が少ないと、落下時の衝撃に対する耐性が劣化し易くなる。(A)成分の市販品としては、三菱化学製水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名:YX8000、YX8034、YX8040)、共栄社化学製水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名:エポライト4000)、新日本理化製水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名:リカレジン)等が、挙げられる。(A)成分は、これらの市販品を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
(B)成分である多官能チオール樹脂は、樹脂組成物に、弾性、耐湿性を付与する。(B)成分は、2官能以上であれば、特に限定されないが、耐湿性の観点から、分子内にエステル結合を有しない構造が好ましい。(B)成分は、グリコールウリル化合物を含むと、分子骨格が剛直で、弾性率を高くできるため、より好ましい。グリコールウリル化合物としては、一般式(1):
【0016】
【化1】
【0017】
(式中、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、またはフェニル基であり、nは、0~10の整数である)で表されるものが挙げられる。また、化学式(2)または化学式(3):
【0018】
【化2】
【0019】
【化3】
【0020】
で表されるものが、さらに好ましい。
【0021】
なお、分子中にエステル結合を有しない多官能チオール樹脂としては、一般式(4):
【0022】
【化4】
【0023】
(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはC2nSH(nは2~6)であり、かつR、R、RおよびRの少なくとも1つは、C2nSH(nは2~6)である)で表される多官能チオール樹脂が、挙げられる。一般式(4)のチオール化合物は、硬化性の観点から、nが2~4であることが好ましい。また、硬化物物性と硬化速度のバランスの観点から、nが3であるメルカプトプロピル基であることが、より好ましい。
【0024】
(B)成分の市販品としては、四国化成工業製チオールグリコールウリル誘導体(品名:TS-G(化学式(2)に相当、チオール当量:100g/eq)、C3 TS-G(化学式(3)に相当、チオール当量:114g/eq))や、SC有機化学製チオール化合物(品名:PEPT(一般式(4)に相当、チオール当量:124g/eq))が挙げられる。(B)成分は、これらの市販品を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
また、(B)成分としては、グリコールウリル化合物が、(B)成分100質量部に対して、40~100質量部であることが、樹脂組成物の硬化後の弾性率の観点から、好ましい。また、50~100質量部であることがより好ましい。60~100質量部であることがさらに好ましい。
【0026】
(C)である硬化触媒は、樹脂組成物に、硬化性を付与する。(C)成分は、一般的な硬化触媒であれば、特に限定されず、例えば、ホスフィン系、アミン系等が挙げられる。
【0027】
ホスフィン系硬化触媒としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン等が挙げられる。アミン系硬化触媒は、イミダゾール系硬化触媒を含む。アミン系硬化触媒としては、2,4-ジアミノ-6-〔2’―メチルイミダゾリル-(1’)〕エチル-s-トリアジン等のトリアジン化合物、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の第三級アミン化合物が挙げられる。また、イミダゾール硬化触媒としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられる。低温で、早く硬化すること、の観点からは、2-メチルイミダゾールや1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)が好ましい。(C)成分の市販品としては、「アミキュアPN-23」(味の素ファインテクノ(株)商品名)、「アミキュアPN-40」(味の素ファインテクノ(株)、商品名)、「アミキュアPN-50」(味の素ファインテクノ(株)、商品名)、「ハードナーX-3661S」(エー・シー・アール(株)、商品名)、「ハードナーX-3670S」(エー・シー・アール(株)、商品名)、「ノバキュアHX-3742」(旭化成(株)、商品名)、「ノバキュアHX-3721」(旭化成(株)、商品名)、「ノバキュアHXA9322HP」(旭化成(株)、商品名)、「ノバキュアHXA3922HP」(旭化成(株)、商品名)、「ノバキュアHXA3932HP」(旭化成(株)、商品名)、「ノバキュアHXA5945HP」(旭化成(株)、商品名)、「ノバキュアHXA9382HP」(旭化成(株)、商品名)、「フジキュアーFXR1121」(T&K TOKA(株)、商品名)、「フジキュアーFXE-1000」(T&K TOKA(株)、商品名)、「フジキュアーFXR-1030」(T&K TOKA(株)、商品名)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。(C)成分は、これらの市販品を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。(C)成分としては、ポットライフ、硬化性の観点から、潜在性硬化触媒が好ましい。
【0028】
(A)成分は、樹脂組成物100質量部に対して、10~70質量部であることが、樹脂組成物の落下時の衝撃に対する耐性と、粘度と、を両立させる観点から好ましい。また、20~60質量部であると、より好ましい。30~60質量部であると、さらに好ましい。
【0029】
(B)成分のチオール当量は、全エポキシ1当量に対して、0.5~2.5当量であることが好ましい。また、0.5~2.0であるとより好ましい。0.5~1.5であるとさらに好ましい。0.8~1.2であることが特に好ましい。(B)成分のチオール当量と、全エポキシ当量と、を上述の範囲内(すなわち、樹脂組成物中のチオール基の総数と、全エポキシ基と、の総数が上述の範囲内であること)にすることにより、硬化後の樹脂組成物の硬度不足、および靭性不足、を防ぐことが可能となる。
【0030】
(C)成分は、(A)成分を含む全エポキシ樹脂および(B)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部が含有される。0.1質量部以上であると、反応性が良好である。5質量部以下であると、耐熱性が良好であり、更に増粘倍率が安定である。なお、(C)成分には、エポキシ樹脂に分散された分散液の形態、で提供されるものがある。そのような形態の(C)成分を使用する場合、それが分散しているエポキシ樹脂の量は、(C)成分からは除かれることに注意すべきである。
【0031】
樹脂組成物は、さらに、(D)無機フィラーを含むと、垂れ防止のため、好ましく、ディスペンス用として好適になる。(D)成分としては、作業性の観点から、球状であることが、好ましい。(D)成分は、シリカやアルミナが好ましい。
【0032】
シリカ粉末としては、溶融シリカ、普通珪石、球状シリカ、破砕シリカ、結晶性シリカ、非晶質シリカ等が、挙げられる。
【0033】
(D)成分の平均粒径は、特に限定されないが、0.1~15μmであることが好ましい。これは、樹脂組成物中への(D)成分の分散性、および樹脂組成物の低粘度化、の観点からである。0.1μm未満だと、樹脂組成物の粘度が上昇して、樹脂組成物の作業性が劣化するおそれがある。15μm超だと、樹脂組成物中に(D)成分を、均一に分散させることが困難になるおそれがある。市販のシリカ粉末(シリカフィラー)としては、アドマテックス製シリカ(製品名:SO-E2、平均粒径:0.5μm)、龍森製シリカ(製品名:MP-8FS、平均粒径:0.7μm)、DENKA製シリカ(品名:FB-5D、平均粒径:5μm)等が挙げられる。(D)成分は、これらの市販品は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(D)成分は、さらに高弾性率化して耐溶剤性を向上させる観点から、樹脂組成物100質量部に対して、0~40質量部であることが好ましい。40質量部より多いと、相対的に樹脂成分が減るため、耐落下衝撃性が劣化するおそれがある。
【0035】
樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に必要に応じ、安定化剤(例えば、有機酸、ホウ酸エステル、金属キレート)、カーボンブラック、チタンブラック、シランカップリング剤、イオントラップ剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、揺変剤、その他の添加剤等を配合させることができる。また、樹脂組成物に、粘度調整剤、難燃剤、または溶剤等を、配合させてもよい。
【0036】
樹脂組成物は、例えば、(A)成分~(C)成分およびその他添加剤等を、同時にまたは別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより得ることができる。これらの混合、撹拌、分散等の装置としては、特に限定されるものではないが、撹拌、加熱装置を備えたライカイ機、ヘンシェルミキサー、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等を使用することができる。また、これら装置を、適宜組み合わせて使用してもよい。
【0037】
このようにして得られた樹脂組成物は、熱硬化性である。樹脂組成物の熱硬化は、60~90℃で、30~120分が好ましい。
【0038】
本発明に係る樹脂組成物の硬化物の、50℃における弾性率は、0.5GPa以上である。従来のように、硬化物のガラス転移温度を室温以下として、室温での弾性率を低くして耐落下衝撃性の向上を図った場合であっても、ガラス転移温度よりさらに温度を下げると、弾性率が著しく上昇し、落下時の衝撃に対する耐性が劣化してしまう。本発明に係る樹脂組成物の硬化物は、ガラス転移温度が50℃を超えるものである。従って、室温においても、さらに温度を下げても、弾性率の変化が小さく、さらに、(A)成分を使用しているため、落下時の衝撃に対する耐性に優れる。また、電子部品の洗浄工程では、超音波洗浄が用いられることが多い。そして、超音波洗浄では熱が発生し、使用される溶剤の温度が上昇し50℃近くにまでなることがある。このため、樹脂組成物の硬化物の50℃における弾性率が、0.5GPa未満では、耐溶剤性が劣化してしまう。このように、20℃以上50℃未満における弾性率が、0.5GPa以上でないと、耐溶剤性が劣化し易くなるが、本発明に係る樹脂組成物の硬化物は、ガラス転移温度が50℃を超えるものである。即ち、20℃以上50℃未満における弾性率が0.5GPa以上である。そのため、耐溶剤性が劣化することがない。本発明に係る樹脂組成物の硬化物の50℃における弾性率は、より好ましくは0.8GPa以上である。さらに好ましくは1GPa以上である。特に好ましくは1.5GPa以上である。また、樹脂組成物の硬化物の50℃における弾性率の上限は、6GPa以下であることが好ましい。また、5GPa以下であることがより好ましい。4GPa以下であることがさらに好ましい。
【0039】
〔電子部品用接着剤〕
本発明の電子部品用接着剤は、上述の樹脂組成物を含む。
【0040】
〔樹脂組成物の硬化物〕
本発明の樹脂組成物の硬化物は、上述の樹脂組成物の硬化物である。
【0041】
〔半導体装置、電子部品〕
本発明の半導体装置は、上述の樹脂組成物の硬化物を含むため、落下時の衝撃に対する耐性に優れる。また、信頼性の高いものである。
【0042】
本発明の電子部品は、上述の硬化物、または上述の半導体装置を含むため、耐落下衝撃性に優れ、信頼性の高いものである。
【実施例0043】
以下、本発明について、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、質量部、質量%を示す。
【0044】
(A)成分の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂には、三菱化学製水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名:YX8000、エポキシ当量:205g/eq)を、
(A’)成分のビスフェノールA型エポキシ樹脂には三菱化学製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名828EL:、エポキシ当量:173g/eq)を、
(A’)成分のシロキサン骨格エポキシ樹脂には、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製シロキサン骨格エポキシ樹脂(品名:TSL9906、エポキシ当量:181g/eq)を、
(B)成分の(B-1)C3 TS-Gには、四国化成工業製グリコールウリル誘導体(品名:C3 TS-G、チオール当量:114g/eq)を、
(B-2)PEPTには、SC有機化学製チオール化合物(品名:PEPT、チオール当量:124g/eq)を、
(B-3)PEMPには、SC有機化学製ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(商品名:PEMP、チオール当量:128g/eq)を、
(C)成分の(C-1)硬化触媒には、T&K TOKA製硬化触媒(品名:FXR1211)を、(C-2)硬化触媒には、旭化成製硬化触媒(品名:HXA3922)を、
(D)成分のシリカには、アドマテックス製シリカ(品名:SO-E2、平均粒径:0.5μm)を、シランカップリング剤には、信越化学工業製3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(品名:KBM-403)を、
使用した。
【0045】
〔実施例1~8、比較例1~3〕
表1、2に示す配合で、原料を混合した後、室温で3本ロールミルを用いて分散した。それにより、実施例1~8、比較例1~3の樹脂組成物を作製した。
【0046】
〈落下時の衝撃に対する耐性の測定〉
《耐落下衝撃試験の測定に用いた部材》
・部材1:SUS基板
・部品2:Niコートブロック、サイズ:幅:9mm×長さ:9mm×厚さ:4mm
【0047】
《耐落下衝撃試験の測定方法》
(i)SUS基板の上に、調製した樹脂組成物(試料)を接着剤として塗布した。塗布サイズは、幅:9mm×長さ:9mm×厚さ:0.3mmとした。
(ii)塗布した試料の上に、Niコートブロックを載置して、試験片とした。
(iii)試験片を、80℃に加熱したオーブンに投入し、試料を30分間加熱硬化させた。
(iv)試料を加熱硬化させた後、オーブンから試験片を取り出し、室温で落下衝撃試験機(日立テクノロジー&サービス社製)を用いて、NiコートブロックがSUS板から剥離する高さを、落下高さとした。落下高さは、200mmから始め、500mmまでは100mm毎に高さを上げた。500mm以上は50mmずつ高さを上げて、試験を行った。なお、落下回数は、各高さで5回行い、剥離しなければ次の高さで試験を行った。表1、2に、結果を示す。耐落下衝撃性の高さは、450mm以上であることが好ましく、600mm以上であることがより好ましい。
【0048】
〈弾性率の測定〉
ステンレス板(SUS-304製、平滑板:40mm×60mm×0.3mm)に、硬化した時の膜厚が500±100μmとなるように樹脂組成物を塗布して塗膜を形成した。その後、80℃で1時間放置して硬化させた。この塗膜をステンレス板から剥がした後、カッターで所定寸法(5mm×40mm)に切り取った。なお、切り口はサンドペーパーで滑らかに仕上げた。この塗膜を、JIS C6481に従い、セイコーインスツル社製、動的熱機械測定(DMA)を用いて、引張り法により、周波数10Hzで測定した。表1、2に、50℃の貯蔵弾性率を示す。表1、2には、記載していないが、実施例1~6の弾性率は、0℃でも、大きく変わらなかった。また、DMA測定により得られた損失弾性率/貯蔵弾性率の最大値の温度を、ガラス転移温度としたところ、すべての実施例でガラス転移温度が50℃を超えていた。一方、比較例3の弾性率は、0℃にしたときには、弾性率が高くなった。図1に、実施例6,7および比較例3のDMAチャートを示す。
【0049】
〈耐溶剤性の評価〉
(i)LCP基板の上に、調製した樹脂組成物(試料)を接着剤として塗布した。塗布サイズは、2mmφとした。
(ii)塗布した試料の上に、3.2mm×1.6mm×0.45mm厚のアルミナチップを載置して、試験片とした。
(iii)試験片を、80℃に加熱したオーブンに投入し、試料を30分間加熱硬化させた。
(iv)試験片をグリコールエーテル系の溶剤に50℃30分間含浸した後、試験片を溶剤から取り出し純水でリンスを行った。その後、リンスした試験片を80℃で1時間乾燥した。
(v)乾燥した試験片を室温でシェア強度を測定した。60N以上で合格とした。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
表1、2からわかるように、(A)~(C)成分を含む樹脂組成物を用いた実施例1~8のすべてで、弾性率が0.5GPa以上であり、かつ、耐落下衝撃性の値も良好であった。弾性率が0.5GPa以上である実施例のうち、耐溶剤性試験を行った実施例2,6および7は、耐溶剤性の評価においてシェア強度がいずれも100N以上であり、表3に示すように、耐溶剤性の評価結果が良好であることが確認できた。これに対して、(A)成分を含まない比較例1は、耐落下衝撃性が悪かった。50℃の弾性率が低すぎる比較例2は、(A)成分を含むものの、弾性率が低いため、耐溶剤性が悪かった。(A)成分を含まない比較例3は、弾性率が低いため、耐溶剤性が悪かった。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、硬化後の耐落下衝撃性に優れ、耐溶剤性にも優れるため、非常に有用である。また、この樹脂組成物の硬化物を含む半導体装置、電子部品は、落下時の衝撃に対する耐性に優れ、高信頼性である。

図1