(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078232
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】接触系活性化の評価のためのプロテアーゼ阻害剤を含む真空採血管
(51)【国際特許分類】
A61B 5/154 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
A61B5/154 100
A61B5/154 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035922
(22)【出願日】2023-03-08
(62)【分割の表示】P 2021109554の分割
【原出願日】2016-08-12
(31)【優先権主張番号】62/214,308
(32)【優先日】2015-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/204,644
(32)【優先日】2015-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】セクストン,ダニエル,ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】フォーセット,リヤン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者、特にこの経路の天然阻害剤(例えばC1インヒビター)が不十分である患者の接触系活性化の内因性レベルの正確な測定が可能になること。
【解決手段】採血中の接触系の生体外活性化を防止することができる液体製剤中にプロテアーゼ阻害剤混合物(カクテル)を含む非ガラス真空採血管。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ阻害剤混合物を含む液体製剤を含む真空採血管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2015年8月13日に出願された米国仮出願第62/204,644号および2015年9月4日に出願された米国仮出願第62/214,308号の出願日の利益を主張するものである。これらの参照される各出願の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
患者の血漿を用いた接触系活性化の生体内レベルの正確な測定は、採血中に接触系が生体外で活性化しやすい傾向があるために難しい。特に接触系に関連する特定の疾患、例えば遺伝性血管浮腫を有する患者からの血液は当該経路の天然阻害剤であるC1インヒビターが不十分であるために生体外で接触系が活性化されやすい傾向がある。従って、経路特異的バイオマーカー(例えば二本鎖高分子量キニノーゲン)の測定では、血液が慎重に採取および処理されないと患者の体内に存在する接触系活性化の程度が過剰評価されてしまう場合がある。
【発明の概要】
【0003】
本開示は少なくとも一つには、採血中の接触系の生体外活性化を防止することができる液体製剤中にプロテアーゼ阻害剤混合物(カクテル)を含む非ガラス真空採血管の開発に基づいている。従って、本明細書に記載されている真空採血管により患者、特にこの経路の天然阻害剤(例えばC1インヒビター)が不十分である患者の接触系活性化の内因性レベルの正確な測定が可能になる。
【0004】
従って、本開示の一態様は、水溶液中では不安定なプロテアーゼ阻害剤を実質的に含まないプロテアーゼ阻害剤混合物を含む液体製剤を含む真空採血管を特徴とする。この管は非ガラス管であってもよい。いくつかの実施形態では、この管はプラスチック製である。いくつかの実施形態では、本真空採血管は、使用時に10倍に希釈することができる本明細書に記載されている0.5mLの液体製剤のいずれかを含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている真空採血管中のプロテアーゼ阻害剤混合物は、少なくとも1種のセリンプロテアーゼ阻害剤(例えば血漿カリクレイン阻害剤)および少なくとも1種のシステインプロテアーゼ阻害剤を含む。一例では、プロテアーゼ阻害剤混合物は、EPI-KAL2(ビオチン化されていてもよい)およびロイペプチンを含む。EPI-KAL2の量はそれらを含む液体製剤中に5~15μMの範囲であってもよい。代わりまたは追加として、ロイペプチンの量は液体製剤中に200~300μMの範囲であってもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているプロテアーゼ阻害剤混合物は、少なくとも2種のセリンプロテアーゼ阻害剤を含んでいてもよく、そのうちの少なくとも1つはトリプシン阻害剤、例えば大豆トリプシン阻害剤である。いくつかの例では、プロテアーゼ阻害剤混合物は、ベンズアミジン、大豆トリプシン阻害剤、ロイペプチンおよびAEBSFを含む。いくつかの例では、本真空採血管中の液体製剤は、80~120mMのベンズアミジン、1~3mg/mlの大豆トリプシン阻害剤、200~300μMのロイペプチンおよび/または10~30mMのAEBSFを含んでいてもよい。
【0007】
本明細書に記載されている真空採血管のいずれかにおける液体製剤は、ポリブレンおよびEDTAをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている液体製剤のいずれかは4~6のpH(例えば4.5)を有していてもよい。
【0008】
別の態様では、本開示は対象における接触系活性化の内因性レベルの評価方法を提供する。上記方法は、(i)対象からの血液を本明細書に記載されている真空採血管のいずれかに採取する工程と、(ii)この血液を処理して血漿試料を生成する工程と、(iii)血漿試料における接触系活性化のレベルを測定する工程とを含む。いくつかの実施形態では、上記測定工程(工程(iii))は、接触系活性化を示す1種以上のバイオマーカーのレベルを測定することによって行うことができる。そのようなバイオマーカーは、プレカリクレイン、活性血漿カリクレイン(pKal)、α2M-pKal複合体、活性第XII因子、活性第XI因子、高分子量キニノーゲン(HMWK)および/またはブラジキニン代謝産物を含んでもよい。一例では、上記1種以上のバイオマーカーは切断されたHMWKおよび/またはそのままのHMWKを含む。
【0009】
さらに別の態様では、本開示は、対象における接触系を標的化する薬物のレベルの評価方法を提供する。上記方法は、(i)接触系の成分を標的化する薬物が投与されている対象からの血液を本明細書に記載されている真空採血管に採取する工程と、(ii)この血液を処理して血漿試料を生成する工程と、(iii)血漿試料中の薬物のレベルを測定する工程とを含む。
【0010】
さらに、本開示は、(i)接触系の成分を標的化する薬物が投与されている対象からの血液を本明細書に記載されている真空採血管に採取する工程と、(ii)この血液を処理して血漿試料を生成する工程と、(iii)血漿試料中の薬物に結合する抗体のレベルを測定する工程とを含む、接触系を標的化する薬物の免疫原性の評価方法を提供する。そのような方法は、工程(iii)の前に薬物に結合する抗体を血漿試料から単離する工程をさらに含んでもよい。いくつかの例では、抗薬物抗体(ADA)は固相抽出および酸解離(SPEAD)アッセイによって単離することができる。
【0011】
本明細書に記載されている方法のいずれかにおいて、対象は、場合によっては接触系の成分(例えば血漿カリクレイン)を標的化する薬物、例えば血漿カリクレイン(例えば血漿カリクレインの活性型)を特異的に標的化する薬物(例えば抗体)で治療することができるヒトの患者であってもよい。いくつかの例では、当該血液は、接触系に関連する疾患、例えば遺伝性血管浮腫(HAE)または特発性血管浮腫を有するヒトの患者に由来している。場合によっては、ヒトの患者は正常なC1インヒビター(C1-INH)を有するHAEを有する。
【0012】
本明細書に記載されている方法のいずれかにおいて、本真空採血管は対象からの血液で満たされる最初の管でなくてもよい。代わりまたは追加として、上記処理工程[工程(ii)]を採血工程[工程(i)]後1時間以内に行うことができる。
【0013】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は以下の「発明を実施するための形態」に記載されている。本発明の他の特徴または利点は、いくつかの実施形態の以下の図面および詳細な説明から明らかになると共に、添付の特許請求の範囲からも明らかになるであろう。
【0014】
以下の図面は本明細書の一部をなし、本開示の特定の態様をさらに示すために含まれており、これらの態様は本明細書に提供されている具体的な実施形態の詳細な説明と共にこれらの図面の1つ以上を参照することによってさらに深く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】二本鎖ウエスタンブロットアッセイで測定した場合にSCAT169管およびSCAT153管が接触活性化を防止したことを示す写真である。10%エラグ酸を血漿に添加すると接触系は活性化され、一本鎖HMWKの二本鎖HMWKへの変換が生じる(クエン酸ナトリウム血漿を参照)。対照的に、SCAT169およびSCAT153血漿はエラグ酸の添加前と添加後に同じ量の一本鎖HMWKを含んでいる。
【
図2】健康な対象からの血漿における試料の採取方法に基づくキニノーゲン切断(2-HMWK/cHMWKの割合)のばらつきを示すグラフである。採取の臨床現場ならびに採取のために使用されるK
2EDTA(EDTA)、クエン酸ナトリウム、SCAT169またはP100を含む管の種類が示されている。データ点のグループ化は、左から右に向かって、現場1:EDTA、現場2:クエン酸塩、現場3:クエン酸塩、現場4:クエン酸塩、現場1:SCAT169、現場2:SCAT169、現場4:SCAT169、現場5:SCAT169、現場4:P100に対応している。
【
図3】異なる臨床現場の健康な対象からSCAT169管に採取された血漿におけるキニノーゲン切断(2-HMWK/cHMWKの割合)を示すグラフである。データ点のグループ化は、左から右に向かって、現場1:商業的供給元、現場4、現場5、現場4および5に対応している。
【
図4】I型もしくはII型HAE、nC1-INH型HAEおよび特発性血管浮腫(AE)を有する対象と比較した場合の健康な対象におけるキニノーゲン切断(2-HMWK/cHMWKの割合)を示すグラフである。データ点のグループ化は、左から右に向かって、健康な対象、I/II型HAE基礎、I/II型HAE発作、HAE(nC1-INH)基礎、HAE(nC1-INH)発作、特発性AE基礎、特発性AE発作に対応している。
【
図5】健康な対象およびHAEを有する患者からの血漿中の二本鎖HMWKレベルを示すグラフである。A:健康な対象からの血漿中二本鎖HMWKレベルの割合を示す。グラフに示されているように、臨床現場CはSCAT169血漿の採取前に初回廃棄管を使用しなかった。B:HAEを有する患者からの血漿二本鎖HMWKレベルの割合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は少なくとも一つには、接触系活性化を防止するプロテアーゼ阻害剤カクテルを含む真空採血管の開発に基づいている。患者または健康な志願者における接触系活性化の内因性レベルを正確に評価するために血液を慎重に採取および処理することが重要である。以下の使用上の注意の1つ以上を考慮して本明細書に記載されている接触系に関連する特徴の正確な評価を保証してもよい。
(i)本明細書に記載されている真空採血管は針による血管穿刺後の局所外傷による接触系活性化の増加を示す可能性のある血液で満たされる最初の管でないことが好ましい
(ii)この血液をガラスと接触させない方がよい(プラスチック管またはカテーテルを使用した方がよい)
(iii)採取してから短期間のうち(例えば約1時間以内)に血液を処理して血漿にした方がよい
および/または
(iv)採取管中にプロテアーゼ阻害剤を使用して、内因性患者の状態の正確な決定を妨げる生体外接触活性化に対して血漿を安定化させた方がよい
【0017】
本明細書に記載されている真空採血管の利点としては、少なくとも(1)標準化および単純化された採血のための非ガラス(例えばプラスチック)真空管の使用、(2)加水分解を最小限に抑えるためのプロテアーゼ阻害剤カクテルを含む液体製剤の使用、(3)水溶液中で不安定なプロテアーゼ阻害剤(例えば、PPACK II、H-D-Phe-Phe-Arg-クロロメチルケトンとしても知られている)の任意の省略、および(4)いくつかの実施形態では、免疫測定法による活性化血漿カリクレインの検出を可能にする試薬を含む能力を本管に与えるEPI-KAL2(ビオチン化されていてもよい)などの血漿カリクレイン阻害剤の包含が挙げられる。例えば、国際公開第95/21601号を参照されたく、その関連する開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
本研究からの予期せぬ観察は、液体形態のプロテアーゼ阻害剤カクテルの使用により溶血が防止されたり減少したりすることであった。血液をプロテアーゼ阻害剤の凍結乾燥製剤を含む真空管の中に採取した場合その大部分が溶血するため、特定の検体の測定が妨げられる場合がある。しかし、血液を同じプロテアーゼ阻害剤混合物の溶液を含む真空管の中に採取した場合には溶血しなかった。
【0019】
従って、本明細書に記載されている真空管に採取された血液試料から処理した血漿試料において接触系活性化の程度を評価することを目的とした測定では、異なる疾患を有する患者からより正確な評価レベルが得られる。接触活性化の正確な推定を得ることで、潜在的にこの経路によって媒介されるため接触系の阻害剤による治療に適した異なる疾患を有する患者の疾患またはサブセットの識別を可能にすることができる。
【0020】
さらに、本明細書に記載されている真空採血管の使用により、接触系における活性化された形態のタンパク質(例えば、血漿カリクレイン、FXIIaおよび二本鎖キニノーゲン)に対する治療用分子の薬物レベルの正確な決定および/または免疫原性の評価を容易にすることができる。本管は、活性化された標的(例えば、FXIaおよびFIXa)の産生のためにカルシウムを必要としない接触系活性化の下流の活性化タンパク質に標的化される治療用分子に同様の利点を与えることができる。本管の利点は主として生物学的治療用分子に適用されるが、それは使用されるPKおよび免疫原性アッセイが典型的に結合部位(例えば、治療用抗体の場合はイディオタイプ)を認識する免疫測定法であるという理由による。治療標的が生体外で活性化されると血漿中に存在する生物学的治療用分子に結合し、それによりPKおよび免疫原性免疫測定法における検出が妨げられる可能性がある。管の中のプロテアーゼ阻害剤は標的活性化を防止することができる。液体製剤の使用は特定の実験室アッセイにおいて妨げになり得る溶血を防止する。
【0021】
液体製剤中にプロテアーゼ阻害剤カクテルを含む真空採血管
真空採血管は、様々な用途のための血液試料の採取のために医療業務でよく使用されている。本明細書に記載されている管は、プロテアーゼ阻害剤混合物(プロテアーゼ阻害剤カクテル)を含む液体製剤を含む非ガラス管であってもよい。いくつかの実施形態では、プロテアーゼ阻害剤カクテルは、少なくとも1種のセリンプロテアーゼ阻害剤と少なくとも1種のシステインプロテアーゼ阻害剤とを含んでいてもよい。少なくとも1種のセリンプロテアーゼ阻害剤は血漿カリクレイン阻害剤であってもよい。そのようなプロテアーゼ阻害剤カクテルは複数(例えば、2、3、4または5種)のセリンプロテアーゼ阻害剤を含んでいてもよく、そのうちの少なくとも1つはトリプシンまたはヒトのプラスミン阻害剤であってもよい。好ましくは、本明細書に記載されているプロテアーゼ阻害剤カクテルは水溶液中で不安定なプロテアーゼ阻害剤を実質的に含んでおらず、すなわち水溶液中で不安定なプロテアーゼ阻害剤の活性はプロテアーゼカクテルの総阻害活性に対して非常に僅かである。場合によっては、水溶液中で不安定なプロテアーゼ阻害剤の量は、カクテル中の総プロテアーゼ阻害剤の5%(w/w)未満、例えば2%未満、1%未満または0.5%未満であってもよい。場合によっては、プロテアーゼ阻害剤カクテルは水溶液(例えば、4~6のpHを有する水溶液)中で不安定なプロテアーゼ阻害剤を全く含んでいない。水溶液中で安定でないプロテアーゼ阻害剤の一例は、H-D-Phe-Phe-Arg-クロロメチルケトンとしても知られているPPACK IIである。
【0022】
以下の表1は、本明細書に記載されているプロテアーゼ阻害剤カクテルを調製するために使用することができる例示的なセリンプロテアーゼ阻害剤、システインプロテアーゼ阻害剤およびトリプシンプロテアーゼ阻害剤を列挙している。
【表1】
【0023】
いくつかの例では、真空採血管を調製するのに使用されるプロテアーゼ阻害剤カクテルは少なくとも1種(例えば1、2または3種)のセリンプロテアーゼ阻害剤を含み、これは、少なくとも1種(例えば1、2または3種)のトリプシン/プラスミン阻害剤および少なくとも1種(例えば1、2または3種)のシステインプロテアーゼ阻害剤を含んでいてもよい。そのようなプロテアーゼ阻害剤カクテルは、3種のセリンプロテアーゼ阻害剤(例えば、ベンズアミジン、AEBSFおよび大豆トリプシン阻害剤などのトリプシン/プラスミン阻害剤)および1種のシステインプロテアーゼ阻害剤(例えばロイペプチン)を含んでいてもよい。
【0024】
他の例では、プロテアーゼ阻害剤カクテルは、少なくとも1種のセリンプロテアーゼ阻害剤(例えば血漿カリクレイン阻害剤)および少なくとも1種のシステインプロテアーゼ阻害剤(例えばロイペプチン)を含んでいてもよい。血漿カリクレイン阻害剤は、EPI-KAL2(Met His Ser Phe Cys Ala Phe Lys Ala Asp Asp Gly Pro Cys Arg Ala Ala His Pro Arg Trp Phe Phe Asn Ile Phe Thr Arg Gln Cys Glu Glu Phe Ser Tyr Gly Gly Cys Gly Gly Asn Gln Asn Arg Phe Glu Ser Leu Glu Glu Cys Lys Lys Met Cys Thr Arg Asp、配列番号1)であってもよく、これは管に例えば免疫測定法による活性化血漿カリクレインの検出を可能にする試薬を含む能力を与える特異的血漿カリクレイン組換えプロテアーゼ阻害剤である。
【0025】
プロテアーゼ阻害剤カクテルのいずれかを好適な溶液に溶解して液体製剤を形成してもよい。好適な溶液は酸-クエン酸塩-デキストロース溶液であってもよく、これはクエン酸三ナトリウム、クエン酸およびデキストロースを含んでいてもよい。この溶液は約4~6、4~5、4.5~5.0または4.2~4.7、例えば4.5のpH値を有していてもよい。いくつかの実施形態では、この溶液は約4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9または6.0のpH値を有する。いくつかの実施形態では、この溶液は約4.5のpH値を有する。当該液体製剤は、陰性荷電表面との相互作用によって接触系活性化を減少させることができる臭化ヘキサジメトリン分子(ポリブレン(登録商標))などのカチオン性ポリマーと、メタロプロテアーゼを阻害することができるキレート剤(例えばEDTA)とをさらに含んでいてもよい。
【0026】
カクテル中の各プロテアーゼ阻害剤の濃度は、実施における希釈倍数に応じて、対応するプロテアーゼを阻害するのに使用されるそのような阻害剤の最終濃度よりも5倍または10倍高くてもよい。特定の市販のプロテアーゼ阻害剤の最終濃度は当該技術分野で知られており、製造業者のプロトコルから得ることができる。いくつかの例では、EPI-KAL2の濃度は、5~15μM(例えば、5~10、7~12μMまたは10~15μM)の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、EPI-KAL2の濃度は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または約15μMである。いくつかの例では、ロイペプチンの濃度は、200~300μM(例えば、200~250、240~270または250~300μM)の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、ロイペプチンの濃度は約200、210、220、230、240、250、260、270、280、290または約300μMである。いくつかの例では、大豆トリプシン阻害剤の濃度は、1~3mg/ml(例えば1~2または2~3mg/ml)の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、大豆トリプシン阻害剤の濃度は、約1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9または約3.0mg/mLである。いくつかの例では、ベンズアミジンの濃度は、80~120mM(例えば、80~100または100~120mM)の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、ベンズアミジンの濃度は約80、85、90、95、100、105、110、115または約120mMである。いくつかの例では、AEBSFの濃度は、10~30mM(例えば、10~20または20~30mM)の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、AEBSFの濃度は約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または約30mMである。
【0027】
ペプチド系プロテアーゼ阻害剤(例えばEPI-KAL2)を使用する場合、それを従来の方法論に従ってビオチン化させてもよい。例えば、ペプチド阻害剤を以下のようにビオチン化させてもよい。簡単に言うと、ペプチド阻害剤をリン酸緩衝食塩水(PBS)などの好適な溶液に溶解することができる。新たに調製したスルホ-NHS-LC-ビオチンをペプチド阻害剤溶液に添加して好適な期間にわたって氷上でインキュベートすることができる。過剰な非反応性の加水分解されたビオチンをスピン脱塩カラムを用いて除去することができる。ペプチド阻害剤の標識はELISAによって確認することができ、タンパク質濃度は例えばブラッドフォードアッセイによって測定することができる。
【0028】
本明細書に記載されている液体製剤のいずれかを通常の方法によって、例えば適切な成分を好適な溶液に溶解することによって調製し、好ましくは非ガラス真空採血管に入れることができる。この管を-20℃で貯蔵してもよく、使用前に好適な期間内で氷上または冷蔵庫などの冷蔵温度(例えば約4℃)で解凍してもよい。
【0029】
液体形態のプロテアーゼ阻害剤カクテルを含む真空採血管の有用性
本明細書に記載されている真空採血管のいずれかを使用して、限定されるものではないが、接触系活性化のレベル、接触系の成分を標的化する薬物の血清中レベル、および/またはそのような薬物の免疫原性などの接触系に関連する内因性特徴を分析するのに使用される血液試料を対象から採取することができる。接触系の生体外活性化(例えば、針による血管穿刺後の局所外傷による活性化)を減少させるために、本明細書に記載されている真空採血管は、対象から血液を採取した際に血液で満たされる最初の管でなくてもよい。例えば、対象からの初回血液を最初の管に採取してもよく、これを廃棄してもよく、次いで真空採血管を使用して、分析に使用することができるその後の血液試料を採取する。最初の管は通常の業務で使用される普通の採血管であってもよい。
【0030】
採血後に、血液試料を処理して好適な期間内(例えば1時間以内)に血漿試料を生成してもよい。血漿試料をさらなる分析に供して初回血液試料が得られる対象の接触系に関連する特徴を評価することができる。
【0031】
血液試料は本明細書に記載されている分析を必要としている対象から採取してもよい。場合によっては、当該対象はヒトの患者であり、接触系に関連する疾患を有するかそれを有する疑いがあるかそのリスクがあってもよい。例えば、ヒトの患者はHAEの病歴を有していてもよく、あるいはHAEのリスクがあってもよい。ヒトの患者は、C1-INHが欠乏しているか異常なC1-INHを産生するI型もしくはII型HAEを有していてもよい。あるいは、ヒトの患者はC1-INH欠乏と関連していないIII型HAEを有していてもよい。他の例では、ヒトの患者は特発性血管浮腫の病歴を有していてもよく、あるいは特発性血管浮腫のリスクがあってもよい。そのようなヒトの患者は接触系の成分(例えば、pKalまたはFXIIaまたは高分子量キニノーゲン)を標的化する薬物で以前に治療を受けたことがあるか、その治療中であってもよい。
【0032】
i.接触系活性化の内因性レベルの評価
一態様では、本明細書に記載されている血漿試料を分析して対象の接触系活性化の内因性レベルを評価することができ、この対象は接触系に関連する疾患(例えばHAEまたは特発性血管浮腫)を有するかそれを有する疑いがあるかそのリスクがあるヒトの患者であってもよい。そのようなヒトの患者は、疾患の治療、例えばpKal阻害剤(例えば抗pKal抗体)を使用する治療を受けているものであってもよい。他の例では、そのようなヒトの患者はそのような治療を受けていないものであってもよい。あるいは、ヒトの対象はそのような疾患を有していない健康な対象であってもよい。
【0033】
血漿試料の接触系活性化のレベルは、接触系活性化を示す1種以上のバイオマーカーを測定することによって測定することができる。
【0034】
血漿カリクレイン(pKal)は循環系における主要なブラジキニン産生酵素である。pKalの活性化は、どちらも遺伝性血管浮腫(HAE)に関連する疾患病状に結び付けられている接触系または第XIIa因子を介して生じ得る。血漿カリクレインは、主にその基質である高分子量キニノーゲン(HMWK)に結合されたプレカリクレインと呼ばれる不活性な酵素前駆体として循環している。刺激に応答して、プレカリクレインは切断されて活性血漿カリクレインを形成する。このカリクレインの活性化は、例えばFXIIのFXIIaへの活性化後に第XIIa因子によって、あるいは接触カスケードのエフェクターによって媒介され得る。循環プレカリクレインの約75~90%はHMWKのドメイン6との非活性部位相互作用によりHMWKに結合されており、それがHMWKのさらなる分子を加水分解して切断されたHMWKおよびブラジキニンを産生する。活性血漿カリクレインは2つの部位においてHMWKを切断し、疼痛、炎症、浮腫および血管新生の重要なメディエーターであるブラジキニンを放出させる。他の切断産物である切断されたキニノーゲンは、ジスルフィド結合によって一緒に保持されているアミノ酸鎖を含む。Cugnoら, Blood (1997) 89:3213-3218。
【0035】
患者血液試料中の接触系活性化のレベルを評価する(従って、患者が接触系のレベルおよび/または活性の上昇を有するか否か、例えばpKalのレベルまたは活性の上昇を有するか否かを決定する)ために使用することができる例示的なバイオマーカーを以下の表2に示す。
【表2】
【0036】
接触系活性化を示す1種以上のバイオマーカーは従来の方法を用いて分析することができる。定性的、半定量的または定量的に検出するための特に好適なアッセイの1つは免疫測定法である。免疫測定法は、標的分子に特異的に結合する本明細書に記載されている結合剤を用いて標的分子(例えば、接触系活性化に関連するバイオマーカー分子)を検出および/または定量化する任意のアッセイである。結合剤は抗体であってもよく、抗体は完全長抗体またはその抗原結合断片であってもよい。免疫測定法は競合的もしくは非競合的免疫測定法であってもよく、均一系もしくは不均一系免疫測定法であってもよい。例えば、接触系バイオマーカーを検出するための免疫測定法は、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、化学発光免疫測定法(CLIA)、計数免疫凝集測定法(CIA:counting immunoassay)、モノクローナル抗体による酵素免疫測定法(IEMA:immunoenzymometric assay)、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ラテラルフロー免疫測定法、サンドイッチ免疫測定法、免疫PCRアッセイ、近接ライゲーションアッセイ、ウエスタンブロットアッセイまたは免疫沈降アッセイであってもよい。本明細書に示されているバイオマーカーを検出するためのさらなる好適な免疫測定法は当業者には明らかであろう。但し、本開示は免疫測定法に限定されず、かつ質量分析などの抗体または抗原結合抗体断片に基づかない検出アッセイも本明細書に示されている接触系バイオマーカーの検出および/または定量化に有用であることは当業者には明らかであろう。
【0037】
本明細書に示されている接触系バイオマーカーの検出および/または定量化のために使用される検出アッセイの種類は、数個のパラメーターの例を挙げると、アッセイが使用される特定の状況(例えば、臨床または研究用途)、検出されるバイオマーカーの種類および数ならびに同時に実施される患者試料の種類および数によって決まる。例えば、切断されたキニノーゲン(二本鎖キニノーゲン)のレベルの上昇は、ウエスタンブロットアッセイを用いて急性HAE症状の発現中のHAE患者または健康な対象から採取された血漿試料中で検出することができる。ウエスタンブロットアッセイにより複数の試料中の接触系バイオマーカーの同時の分析が可能になるが、それらは同時に評価することができるバイオマーカーの数において制限される。従って、いくつかの実施形態では、本明細書に示されている複数の接触系バイオマーカーを単一の試料または複数の試料中で分析する場合、そのような多重分析に適したアッセイが好ましい。そのようなアッセイの例としては、限定されるものではないが、ハイスループットを提供するように設定されたペプチドマイクロアレイおよびラボオンチップ(lab-on-a-chip)アッセイ、ウエスタンブロットなどの拡張性の低い免疫測定法の代わりとなるマルチプレックスかつ迅速なアッセイが挙げられる。
【0038】
いくつかの例では、血漿試料をpKal阻害剤および/または接触系活性化剤の存在下または非存在下でマルチウェルマイクロプレートに入れることができる。この混合物をpKalの標識されたペプチド基質の存在下および氷上で好適な期間(例えば2分)にわたってインキュベートすることができ、コーントリプシン阻害剤(CTI)をこの混合物に添加して活性化反応を停止することができる。この混合物を必要であれば希釈することができ、蛍光ペプチド基質のレベルを測定することによってタンパク質分解活性を測定することができる。そのようなアッセイから得られた結果は、血漿試料を得た対象の接触系活性化の内因性レベルを決定するために依存することができる。そられの結果は、pKal阻害剤が使用される場合にはその阻害活性を決定するために依存することもできる。
【0039】
ii.接触系を標的化する薬物の内因性レベルの評価
本開示の別の態様は、接触系の成分を標的化する薬物のレベルを決定するための本明細書に記載されている真空採血管の使用に関する。薬物レベルは薬物動態学的パラメーターを評価するために必要とされる。例えば、血漿中の血漿カリクレイン阻害剤(例えばDX-2930)の量の決定のために採取された血漿試料において接触系が生体外で活性化されると、過剰な活性化血漿カリクレインが薬物に結合し、それによりアッセイにおけるその検出が妨げられる可能性がある。本明細書に記載されている真空採血管のいずれかを使用して、例えば対象から採取された試料中の薬物レベルをより正確に推定することができる。
【0040】
この方法を実施するために、接触系の成分(例えばpKal)を標的化する薬物で治療される対象(例えばヒトの患者)に由来する血漿試料は、本明細書に記載されている真空採血管の中に採取された血液試料から本明細書に記載されている方法に従って調製してもよい。通常の業務に従って血漿試料中の薬物レベルを測定することができる。場合によっては免疫測定法、例えば本明細書に記載されている免疫測定法によって薬物レベルを測定することができる。
【0041】
iii.接触系を標的化する薬物の免疫原性の評価
本開示の別の態様は、接触系の成分(例えばpKal)に対する生物学的阻害剤の免疫原性を決定するための真空採血管の使用に関する。例えば、循環系の血漿中の過剰な薬物の存在下で薬物に対する抗体(「ADA」)を測定することができる免疫原性アッセイを開発することがよく行われている。ADAを測定することができる免疫原性アッセイをこのように必要とするのは間違いなく、数週間の半減期および循環系中の高い薬物レベルを有し得る治療用モノクローナル抗体の場合である。試料中の過剰な薬物による妨害を克服するために、抗薬物抗体を薬物から分離するための技術が行われる。そのような抗薬物抗体は固相抽出および酸解離(SPEAD)によって単離することができ、その場合、長期間(通常は一晩)にわたってビオチン化形態の薬物を血漿試料と共にインキュベートし、その後にストレプトアビジンで被覆されたプレートを用いて抗薬物抗体に結合し得るビオチン化薬物を単離する。次いで、このプレートを酸で処理して抗薬物抗体を放出させる。放出された抗体を検出のために別のアッセイプレート上に直接被覆してもよい。採取管の中にプロテアーゼ阻害剤が存在しない場合、接触系は生体外で活性化された状態になり、活性血漿カリクレインの産生が生じ得る。上記酸放出および再被覆工程後に、活性pKalおよび抗薬物抗体の両方がプレートの表面に結合する。抗薬物抗体は典型的に標識された薬物を用いて検出されるが、この薬物はもし存在すれば活性pKalにも結合することができ、ADAアッセイにおいて偽陽性シグナルが生じる。
【0042】
本明細書に記載されているプロテアーゼ阻害剤カクテルを含む真空採血管の使用により、この偽陽性シグナルを防止することができる。
【0043】
一般的な技術
本発明の実施では、特に明記しない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技術を用い、それらは当業者の技量の範囲内である。そのような技術は、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual(分子クローニング:実験書), 第2版 (Sambrookら, 1989) Cold Spring Harbor Press」、「Oligonucleotide Synthesis(オリゴヌクレオチドの合成) (M. J. Gait編, 1984)」、「Methods in Molecular Biology(分子生物学における方法), Hum ana Press」、「Cell Biology: A Laboratory Notebook(細胞生物学:実験ノート) (J. E. Cellis編, 1998) Academic Press」、「Animal Cell Culture(動物細胞培養) (R. I. Freshney編, 1987)」、「Introduction to Cell and Tissue Culture(細胞および組織培養の入門書) (J. P. MatherおよびP. E. Roberts, 1998) Plenum Press」、「Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures(細胞および組織培養:実験室法) (A. Doyle, J. B. GriffithsおよびD. G. Newell編, 1993-8) J. Wiley and Sons」、「Methods in Enzymology(酵素学における方法) (Academic Press, Inc.)」、「Handbook of Experimental Immunology(実験免疫学のハンドブック) (D. M. WeirおよびC. C. Blackwell編)」、「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(哺乳類細胞のための遺伝子導入ベクター) (J. M. MillerおよびM. P. Calos編, 1987)」、「Current Protocols in Molecular Biology(分子生物学における現在の手順) (F. M. Ausubelら編, 1987)」、「PCR: The Polymerase Chain Reaction(PCR:ポリメラーゼ連鎖反応) (Mullisら編, 1994)」、「Current Protocols in Immunology(免疫学における現在の手順) (J. E. Coliganら編, 1991)」、「Short Protocols in Molecular Biology(分子生物学における短いプロトコル) (Wiley and Sons, 1999)」、「Immunobiology(免疫生物学) (C. A. JanewayおよびP. Travers, 1997)」、「Antibodies(抗体) (P. Finch, 1997)」、「Antibodies: a practical approach(抗体:実践的なアプローチ) (D. Catty.編, IRL Press, 1988-1989)」、「Monoclonal antibodies: a practical approach(モノクローナル抗体:実践的なアプローチ) (P. ShepherdおよびC. Dean編, Oxford University Press, 2000)」、「Using antibodies: a laboratory manual(抗体の使用、実験書) (E. HarlowおよびD. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999)」、「The Antibodies(抗体) (M. ZanettiおよびJ. D. Capra編, Harwood Academic Publishers, 1995)」などの文献に十分に説明されている。
【0044】
さらなる詳細がなくとも、当業者であれば上記説明に基づき本発明を最大限に利用することができるものと思われる。従って、以下の具体的な実施形態は単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる場合であっても決して本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用されている全ての刊行物は、本明細書で言及されている目的または主題のために参照により組み込まれる。
【実施例0045】
実施例1:接触系活性化を防止するプロテアーゼ阻害剤カクテルの調製
【0046】
接触系活性化を防止するプロテアーゼ阻害剤カクテルを開発した。標準化および単純化された採血のための真空プラスチック管を使用した。
【0047】
液体製剤中に以下の2種類のプロテアーゼ阻害剤カクテルを利用して加水分解を防止した。
1)10倍のプロテアーゼ阻害剤カクテルA:SCAT169
酸-クエン酸塩-デキストロース(100mMのクエン酸三ナトリウム、67mMのクエン酸および2%デキストロース、pH4.5)に溶解した100mMのベンズアミジン、400μg/mLのポリブレン、2mg/mlの大豆トリプシン阻害剤、20mMのEDTA、263μMのロイペプチンおよび20mMのAEBSF(フッ化4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニル塩酸塩)(0.5ml)を含む5mL総体積の真空プラスチック管
2)10倍のプロテアーゼ阻害剤カクテルB:SCAT153
酸-クエン酸塩-デキストロース(100mMのクエン酸三ナトリウム、67mMのクエン酸および2%デキストロース、pH4.5)に溶解した10μMのビオチン化EPI-KAL2、400μg/mLのポリブレン、20mMのEDTAおよび263μMのロイペプチン(0.5ml)を含む5ml総体積の真空プラスチック管
【0048】
ビオチン化EPI-KAL2をプロテアーゼ阻害剤カクテルB(SCAT153)の中に含めた。SCAT169管(特殊な凝固アッセイ管、製剤169)およびSCAT153管(特殊な凝固アッセイ管、製剤153)を2~8℃で貯蔵した。
【0049】
実施例2:SCAT169管およびSCAT153管は二本鎖ウエスタンブロットアッセイによって示されているように接触系活性化を防止する
【0050】
SCAT169管またはSCAT153管のいずれかに採取した血漿は、ウエスタンブロット分析を用いて一本鎖から二本鎖HMWKへの変換により測定した場合に、周知の接触系活性化剤であるエラグ酸の生体外での添加によって誘発される接触系活性化を阻止した(
図1)。
【0051】
観察されたエラグ酸によって誘発された接触系活性化を、3種類の異なる採血管すなわちクエン酸ナトリウム管(凝固測定のために臨床化学実験室で使用される標準的な管)、SCAT169管およびSCAT153管に採取した血漿試料の間で比較した。
【0052】
一本鎖HWMKは、クエン酸ナトリウム管中でエラグ酸によって活性化された試料中で本質的に完全に消費され、二本鎖HMWKの出現が検出された。
【0053】
対照的に、一本鎖HMWKは、SCAT169管およびSCAT153管のエラグ酸で活性化された血漿中では保存された。
【0054】
これらの結果から、SCAT169管およびSCAT153管は血漿試料採取および処理中に生じ得る生体外での接触系活性化を防止するのに有効であるという証拠が得られた。
【0055】
実施例3:SCAT169およびSCAT153プロテアーゼ阻害剤カクテルは血漿凝固時間を延長させた
【0056】
3種類の個々のドナー試料について、3種類の異なる採血管すなわちクエン酸ナトリウム管、SCAT169管およびSCAT153管の中で処理した試料において血漿凝固時間を測定した(表1)。
【0057】
プロトロンビンおよび活性化部分トロンボプラスチンによって示されるように、クエン酸ナトリウムと比較してSCAT159およびSCAT153を含む試料において凝固時間が延長した。その結果を表3に示す。
【表3】
【0058】
実施例4:ヒトの対象における接触系活性化の内因性レベルを評価するための真空採血管の使用
【0059】
接触系活性化の血漿バイオマーカーの検査は、採血および処理中の不注意による活性化が原因で難しい。本研究では、健康な対象およびI/II型遺伝性血管浮腫(HAE)、特発性血管浮腫すなわち正常なC1-INH(HAEnC1、nC1-INHともいう)を有するHAEを有する対象からの血漿中の切断された高分子量キニノーゲン(cHMWK)のレベルを評価する際の特殊な採血管(SCAT159およびSCAT153)の有用性を以下のように調べた。
【0060】
血液試料採取時の接触経路の人為付活を回避するために本研究では標準化された採血技術およびプロテアーゼ阻害剤を含む特注の管を使用した。血液試料を健康な対象および上記疾患対象(疾患の鎮静期および再発期)から採取してウエスタンブロットアッセイを用いてcHMWKの割合を評価した。この血液試料を、バタフライ針システムを備えたカテーテルを用いてSCAT159管またはSCAT153管(5mLの総体積、0.5mLの10倍のプロテアーゼ阻害剤カクテル)の中に入れた。次いで、この血液試料を処理して採血後1時間以内に血漿試料を生成した。
【0061】
SCAT管血漿試料をシンプルウエスタン(SBHD)およびウエスタンブロット(TGA)で分析して、例えば国際公開第2015/061183号に開示されている方法に従って血漿試料中の切断されたキニノーゲン(二本鎖キニノーゲン)のレベルを決定した。
【0062】
臨床現場1~5において健康な対象からの血漿を各種抗凝固剤、プロテアーゼ阻害剤またはタンパク質安定化剤を含むプラスチック採取管の中に採取した後、処理して血漿にした。具体的には管の種類は、K
2EDTA、クエン酸ナトリウム、SCAT169またはP100(BD Biosciences社)であった。
図2に示すように、生体外での接触系活性化を最小限に抑えることが分かった管にはプロテアーゼ阻害剤が含まれ、その管は、酸-クエン酸塩-デキストロース(100mMのクエン酸三ナトリウム、67mMのクエン酸および2%デキストロース、pH4.5)に溶解した100mMのベンズアミジン、400μg/mLのポリブレン、2mg/mlの大豆トリプシン阻害剤、20mMのEDTA、263μMのロイペプチンおよび20mMのAEBSFからなる0.5mLの10倍濃縮の混合物を含む5mL体積のプラスチック真空採血管であるP100管またはSCAT169管のいずれかであった。プロテアーゼ阻害剤カクテルを含む管を用いる採取方法により、健康な志願者の血漿をアッセイする際のcHMWKの増加が防止された。
【0063】
本研究から得られた結果から、健康な対象ではcHMWKのレベルは特注の管への採血後少なくとも24時間は室温(RT)で安定である(<5%)が、商業的供給元から得られた血漿試料中ではcHMWKのレベルが上昇する(12%)ことが分かり、これは接触経路活性化を調べる際に採血技術を最適化することの重要性を示している。プロテアーゼ
【0064】
2つの異なる臨床現場(現場4および5)および商業的供給元(現場1)の健康な対象からSCAT169管の中に採取した血漿におけるキニノーゲン切断の影響も評価した(
図3)。商業的供給元は初回廃棄管を使用せずに血液試料をSCAT169管の中に直接採取した。
【0065】
血管浮腫型(I/II型HAE、nC1-INH型HAEおよび特発性AE)を有する対象からSCAT169管に採取した血液試料においてキニノーゲン切断も評価した。健康な対象または鎮静状態(基礎)および再発(発作)中の両期間に各種血管浮腫を有する対象から血漿を採取して各種疾患状態におけるcHMWKの量を測定した。HAEを有する対象(n=21)では健康な対照(n=26)と比較してcHMWKの割合はベースラインにおいて明らかに上昇したが、特発性血管浮腫(n=4)またはHAEnC1(n=5)を有する対象からの血漿では上昇せず(
図4)、これは血漿カリクレイン活性の限界を示唆しているが、それらの障害における急性発作中の接触経路活性化の役割を除外するものではない。
【0066】
cHMWKの検出について評価される血漿は、採取方法および管によって刺激される接触系活性化の影響を受けやすい。つまり本研究は、生体外でのHMWKの切断を防止することができる接触系活性化の評価のための血漿試料の改良された採取方法を提供する。
【0067】
実施例5:ヒトの対象における接触系活性化の内因性レベルを評価するための真空採血管の使用
【0068】
特殊な採血管(SCAT159およびSCAT153)を、健康な対象およびI/II型遺伝性血管浮腫(HAE)を有する対象からの血漿中の切断された高分子量キニノーゲン(cHMWK)のレベルを評価する際の有用性について評価した。
【0069】
簡単に言うと、疾患の鎮静(基礎)期および再発(発作)期の間に健康な対象およびHAEを有する患者から血液試料を採取した。ウエスタンブロットアッセイを用いて血漿中の二本鎖HMWKの割合を検出した。30、100、300または400mgまたはプラセボの近接群において0日目および15日目に抗pKal抗体(DX-2930)の2回の皮下投与を受けた1b相多施設二重盲検研究の無作為化されたI/II型HAEを有する患者から血漿試料を採取した。1、8、22、64、92および120日目に抗pKal抗体(DX-2930)の前および後に血液試料を得た。
【0070】
図5Aに示すように、3つの異なる臨床現場(A、BおよびC)から採取した健康な対象からの試料における血漿中二本鎖HMWKレベルの割合は、使用した採取方法および管の種類によって異なった。クエン酸ナトリウム管を用いた試料は、SCAT169管中の試料に対してより高いレベルの二本鎖HMWKを有していた。注目すべきことに、SCAT169管の中に直接採取し、かつプロテアーゼ阻害剤カクテルを含むこの管の前に廃棄管を使用しなかった臨床現場Cで採取した試料は、廃棄管を使用した試料と比較してより高いレベルの二本鎖HMWKを有していた。
【0071】
同様に、
図5Bに示すように、HAEからの試料における血漿中二本鎖HMWKレベルの割合は、SCAT169管に採取した血漿と比較した場合にクエン酸ナトリウム管においてより高かったが、これは恐らく血漿採取および処理に関連する接触系の外因性活性化によるものである。
【0072】
本研究は、本明細書に記載されているプロテアーゼ阻害剤カクテルを含む採血管を用いる利点を実証し、生体外での接触系活性化異常(例えば、HMWKの切断によって示される)を防止することができる接触系活性化の評価のための血漿試料の改良された採取方法を提供する。
【0073】
実施例6:血漿薬物レベルを評価するための真空採血管の使用
【0074】
通常の業務によってDX-2930で治療したHAE患者および健康な対照から血液を採取し、採取管の中に入れる。初回血液試料を1つまたは複数の採取管に入れた後、5mL以下の血液試料をSCAT159管またはSCAT153管の中に入れる。次いで、血液試料を処理して採血後1時間以内に血漿試料を生成する。
【0075】
標準的な免疫測定法、例えばELISAによってSCAT血漿試料中のDX-2930の量を測定する。簡単に言うと、DX-2930に対する抗イディオタイプモノクローナル抗体のFabバージョンを96ウェルプレートの表面に一晩被覆し、そのプレートを何度も洗浄して未結合の抗イディオタイプFab分子を除去する。次いで、SCAT血漿試料をこのプレートに添加し、これを室温で2~3時間インキュベートする。このプレートを数回洗浄し、DX-2930に対する抗イディオタイプモノクローナル抗体のビオチン化されたIgGバージョンをこのプレートに添加した後、インキュベーション工程および洗浄工程を行う。次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンをこのプレートに添加する。30分間のインキュベーション後に、このプレートを再度洗浄し、色素によって放出されたシグナルについて調べた。このシグナルの強度は血漿試料中のDX-2930の量に対応している。
【0076】
実施例7:薬物の免疫原性を評価するための真空採血管の使用
【0077】
上に開示されているように、DX-2930で治療したHAE患者からの血漿試料をSCAT159またはSCAT153管に採取した血液試料から調製する。血漿試料中の抗DX-2930抗体を固相抽出および酸解離(SPEAD)によって単離する。
【0078】
簡単に言うと、血漿試料をビオチン化DX-2930と共にインキュベートし、一晩インキュベートする。次いで、この混合物をストレプトアビジンで被覆したプレートに入れて、もし存在すれば血漿試料中の抗DX-2930抗体に結合するビオチン化DX-2930を捕捉する。次いで、抗DX-2930抗体を酸処理によって放出させ、Meso Scale Discovery(MSD)プレートに直接被覆する。ルテニウム標識したDX-2930をMSDプレートに添加し、電気化学発光シグナルを測定して抗DX-2930抗体の存在を検出する。
【0079】
他の実施形態
本明細書に開示されている全ての特徴をあらゆる組み合わせで組み合わせてもよい。本明細書に開示されている各特徴を同じ、同等または同様の目的を果たす他の特徴で置き換えてもよい。従って、明示的に別段の定めをした場合を除き、開示されている各特徴は一般的な一連の同等または同様の特徴の単なる例である。
【0080】
当業者であれば、上記説明から本発明の必須の特性を容易に確認することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく本発明の各種変形および修正を行い、それを各種用法および条件に適合させることができる。従って、他の実施形態も特許請求の範囲に含まれる。
【0081】
均等物および範囲
当業者であれば、本明細書に記載されている本開示の具体的な実施形態の多くの均等物を認識しているか、通常の実験法のみを用いて確かめることができる。本開示の範囲は上記説明に限定されるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されているとおりである。
【0082】
特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「前記」という冠詞は、特に矛盾する記載がない限り、あるいは文脈からそうでないことが明らかでない限り、1つまたは2つ以上を意味することができる。グループの1つ以上の構成要素間に「または」を含む請求項または記載は、特に矛盾する記載がない限り、あるいは文脈からそうでないことが明らかでない限り、グループの構成要素の1つ、2つ以上または全てが所与の生成物またはプロセスに存在するか、それらに用いられているかそれ以外の方法でそれらに関連している場合に条件が満たされているとみなされる。本開示は、グループの厳密に1つの構成要素が所与の生成物またはプロセスに存在するか、それらに用いられているかそれ以外の方法でそれらに関連している実施形態を含む。本開示は、グループの構成要素の2つ以上または全てが所与の生成物またはプロセスに存在するか、それらに用いられているかそれ以外の方法でそれらに関連している実施形態を含む。
【0083】
さらに、本開示は、列挙されている請求項の1つ以上からの1つ以上の限定、要素、節および記述用語が別の請求項の中に導入されている全ての変形、組み合わせおよび順列を包含する。例えば、別の請求項に従属するどの請求項も同じ基本請求項に依存しているあらゆる他の請求項にある1つ以上の限定を含むように修正することができる。要素が例えばマーカッシュ群形式で列挙として示されている場合、当該要素の各サブグループも開示されており、あらゆる要素をそのグループから除去することができる。一般に、本開示または本開示の態様が特定の要素および/または特徴を含むものとして言及されている場合、本開示または本開示の態様の特定の実施形態はそのような要素および/または特徴からなるか、本質的にそれらからなるものと理解されるべきである。分かりやすくするために、それらの実施形態は本明細書にこのとおりの言葉で具体的に記載されていない。「含む(comprising)」および「含有する(containing)」という言葉は非限定的であり、さらなる要素または工程の包含を許与することにも留意されたい。範囲が与えられている場合は終点が含まれる。さらに、特に明記しない限り、あるいは文脈および当業者の理解からそうでないことが明らかでない限り、範囲として表されている値は、文脈が明らかに別の意を示していない限り、本開示の異なる実施形態に定められている範囲内のあらゆる具体的な値または部分範囲をその範囲の下限の単位の10分の1まで想定することができる。
【0084】
本出願は、各種発行済特許、公開特許出願、雑誌論文および他の文献を参照し、それらの全てが参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれる参考文献のいずれかと本明細書との間に矛盾がある場合、本明細書が優先される。さらに、先行技術の範囲に含まれる本開示のどの特定の実施形態も特許請求の範囲のいずれか1つ以上から明示的に除外することができる。そのような実施形態は当業者には公知であるとみなされるため、その除外が本明細書に明示的に記載されていないとしても除外することができる。本開示のどの特定の実施形態も、先行技術の存在に関連しているか否かに関わらずどのような理由であってもどの請求項からも除外することができる。
【0085】
当業者であれば、本明細書に記載されている具体的な実施形態の多くの均等物を認識しているか、通常の実験法のみを用いて確かめることができる。本明細書に記載されている本実施形態の範囲は上記記載に限定されるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されているとおりである。当業者であれば、以下の請求項に定義されている本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく本記載に対して各種変形および修正を行うことができることが分かるであろう。