(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007854
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】セメント組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/52 20060101AFI20230112BHJP
C04B 7/02 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
C04B7/52
C04B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110958
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕伸
(72)【発明者】
【氏名】井戸 利博
(57)【要約】
【課題】ポリカルボン酸系混和剤が使用される高強度配合でも経時ロスが低減され、更に混練直後の初期流動性も確保されたセメント組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】早強ポルトランドセメントクリンカー及び普通ポルトランドセメントクリンカーからなる群より選択される少なくとも1種のセメントクリンカーと、二水石膏とを含むクリンカー混合物を、仕上げミルによって粉砕して、前記仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率を50%未満にする仕上げ工程と、前記粉砕組成物を開放型容器に投入して、前記開放型容器内で前記二水石膏を脱水させて、前記粉砕組成物の半水化率を10ポイント以上上昇させる保管工程と、を有することを特徴とするセメント組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
早強ポルトランドセメントクリンカー及び普通ポルトランドセメントクリンカーからなる群より選択される少なくとも1種のセメントクリンカーと、二水石膏とを含む混合物を、仕上げミルによって粉砕して、前記仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率を50%未満にする仕上げ工程と、
前記粉砕組成物を開放型容器に投入して、前記開放型容器内で前記二水石膏を脱水させて、前記粉砕組成物の半水化率を10ポイント以上上昇させる上昇工程と、
を有することを特徴とするセメント組成物の製造方法。
ただし、前記半水化率は、下式(1)により求める。
半水化率(%)=半水SO3量/(二水SO3量+半水SO3量)×100 (1)
前記式(1)中、前記二水SO3量は、粉砕組成物中の二水石膏由来の換算SO3量を表し、粉砕組成物中の二水石膏量(質量%)×80/172により算出され、前記半水SO3量は、粉砕組成物中の半水石膏由来の換算SO3量を表し、粉砕組成物中の半水石膏量(質量%)×80/145により算出される。
【請求項2】
前記仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率を40%未満にする請求項1に記載のセメント組成物の製造方法。
【請求項3】
前記開放型容器内での前記粉砕組成物の半水化率を20ポイント以上上昇させる請求項1又は2に記載のセメント組成物の製造方法。
【請求項4】
複数の前記仕上げミルとセメントクーラーとを使用し、
前記仕上げミル出の前記粉砕組成物を、前記セメントクーラーを使用せずに前記開放型容器へ投入する投入工程1と、前記仕上げミル出の前記粉砕組成物を、前記セメントクーラーを使用して前記開放型容器へ投入する投入工程2とを並行して行うことにより、前記開放型容器内で二水石膏を脱水させて前記粉砕組成物の半水化率を上昇させる請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
【請求項5】
前記開放型容器がセメントサイロである請求項1~4のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷を低減し、また製造に係るコストを削減することを目的として、セメント原料には廃棄物由来のものが一定量利用されている。これらの廃棄物の種類は多岐に渡るが、廃棄物の選択と使用量はセメント品質に影響を及ぼさない範囲で使用され、セメントクリンカーが焼成されている。
セメント原料として積極的に利用される廃棄物の中には火力発電所由来の石炭灰(ボトムアッシュ、フライアッシュ)が含まれており、その化学組成からセメントクリンカー中に相応のAl2O3が持ち込まれる。その結果、セメントクリンカー中の間隙質(C3A+C4AF)の割合が上昇した設計となり易い。非特許文献1では基準となる普通ポルトランドセメントクリンカー中のボーグ組成でC3A, C4AF量ともに9%で間隙質が18%となるのに対して、C3A量が増加して間隙質が19~24%となるクリンカー、C3AとC4AFが等量増加して20~26%となるクリンカー、C4AF量が増加して間隙質が19~26%となるようなクリンカーが例示されている(非特許文献1の表5参照)。
【0003】
このような間隙質割合が上昇した設計となった結果、主に混練直後の初期流動性が確保できない懸念が生じる。
その対策として非特許文献2ではC3A, C4AF量が11.0, 12.7%の高間隙質型のセメントクリンカーを使用した組成ではセメントのSO3量を2.0%から3.5, 5.0%に上げること(石膏由来のSO3量としては1.34%から2.84, 4.34%に相当)、半水化率を0→50%とすること、櫛形高分子系分散剤(以降はポリカルボン酸系と表記)を使用することが有効であることが示されている。
また非特許文献3ではC3A, C4AF量が11.6, 8.8%の高間隙質型クリンカーを使用して、非特許文献2と比較して石膏由来のSO3を添加量が少ない(2.36%程度に抑えた)、半水化率50%のセメントに石灰石微粉末を10%置換添加したものが、流動性改善効果が得られることが示されている(非特許文献3のFig.2参照)。
【0004】
これらの文献では、いずれも間隙質の増加に対して石膏由来のSO3を一定量増加させる必要性がある点で共通している。また、半水石膏の形態に関しては明記されていないが、空気中の脱水で試製したものや、試薬である場合は通常β型であると考えられる。
一方、工業的にセメントを製造する際の半水石膏の形態については議論が分かれる。空気中の加熱脱水であればβ型が支配的になると考えられるが、特許文献1に記載があるようにセメントの仕上げ粉砕で最も用いられるチューブミルでの粉砕においてはミル内への通風+散水により水蒸気の存在下が前提となるため、仕上げ粉砕時に添加された二水石膏は一定以上の割合でα型に転移し得る。そして特許文献1では流動性、粘度が改良され、作業性も良好なセメント組成物の製造方法として水蒸気ガス中の水分量と粉砕直後(仕上げミル出)の温度を120~135℃となるように粉砕することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】丸屋ら,廃棄物使用量の増大とCO2排出量削減に向けたセメントの材料設計,廃棄物資源循環学会論文誌,Vol.20,No.1,pp.1-11,2009
【非特許文献2】野崎ら,アルミネート相を増大させたセメントの流動性における三酸化硫黄(SO3)量の最適化,セメント・コンクリート論文集,No.60,pp2-8,2006
【非特許文献3】丸屋ら,混合材を添加したアルミネート高含有セメントの流動性と水和特性,セメント・コンクリート論文集,No.64,pp54-59,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリカルボン酸系混和剤が使用される高強度配合でも経時ロスが低減され、更に混練直後の初期流動性も確保されたセメント組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の<1>~<4>を提供する。
<1> 早強ポルトランドセメントクリンカー及び普通ポルトランドセメントクリンカーからなる群より選択される少なくとも1種のセメントクリンカーと、二水石膏とを含むクリンカー混合物を、仕上げミルによって粉砕して、前記仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率を50%未満にする仕上げ工程と、
前記粉砕組成物を開放型容器に投入して、前記開放型容器で前記二水石膏を脱水させて、前記粉砕組成物の半水化率を10ポイント以上上昇させる上昇工程と、
を有することを特徴とするセメント組成物の製造方法。
ただし、前記半水化率は、下式(1)により求める。
半水化率(%)=半水SO3量/(二水SO3量+半水SO3量)×100 (1)
前記式(1)中、前記二水SO3量は、粉砕組成物中の二水石膏由来の換算SO3量を表し、粉砕組成物中の二水石膏量(質量%)×80/172により算出され、前記半水SO3量は、粉砕組成物中の半水石膏由来の換算SO3量を表し、粉砕組成物中の半水石膏量(質量%)×80/145により算出される。
【0009】
<2> 前記仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率を40%未満にする<1>に記載のセメント組成物の製造方法。
<3> 前記開放型容器内での前記粉砕組成物の半水化率を20ポイント以上上昇させる<1>又は<2>に記載のセメント組成物の製造方法。
<4> 複数の前記仕上げミルとセメントクーラーとを使用し、
前記仕上げミル出の前記粉砕組成物を、前記セメントクーラーを使用せずに前記開放型容器へ投入する投入工程1と、前記仕上げミル出の前記粉砕組成物を、前記セメントクーラーを使用して前記開放型容器へ投入する投入工程2とを並行して行うことにより、前記開放型容器内で二水石膏を脱水させて前記粉砕組成物の半水化率を上昇させる<1>~<3>のいずれか1つに記載のセメント組成物の製造方法。
<5> 前記開放型容器がセメントサイロである<1>~<4>のいずれか1つに記載のセメント組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリカルボン酸系混和剤が使用される高強度配合でも経時ロスが低減され、更に混練直後の初期流動性も確保されたセメント組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例における混練直後の開放系セメントペーストと、混練から60分経過後の開放系セメントペーストの半水化率に対するペーストフローのフロー値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中の「AA~BB」との数値範囲の表記は、「AA以上BB以下」であることを意味する。
【0013】
従来より、コンクリートをポンプで圧送する際に、ポンプがコンクリートで詰まってしまうことがあった。これは、コンクリート中の骨材が凝集してしまうアーチングと呼ばれる現象と、セメントペーストの粘性が増大するペースト閉塞と呼ばれる現象が主な原因であることがわかった。既述のように、セメントと混和剤との組み合わせによっては混練後に流動性の低下(フローロス)が生じる相性問題が従前から懸念されており、この相性問題もポンプ圧送不良の原因の1つとなっている。
セメントと混和剤との混練直後に、又は、混練から経時後に生じるフローロスは、混和剤及び水を追加しても流動性を改善できないことあった。
【0014】
こういった混和剤の相性問題のメカニズムは完全に解明されるまでには至っていないが、主にブレーン比表面積、粒度分布などのセメントの粉末度に関わるパラメータや、セメントクリンカー中の間隙質量(C3A、C4AF)や間隙質中のC3A/C4AF比、硫酸アルカリ含有量等初期の混和剤吸着量に関わるパラメータと混和剤銘柄毎の吸着傾向が原因とされ、これらの組合せによって一定の理解が得られている。
セメント及び混和剤の混練後の初期の流動性に関する、相性問題が存在しない場合の混練直後の必要混和剤量が増加する現象、及び初期フローが頭打ちになる現象は、未水和セメントへの吸着量及びセメント水和物への吸着量の観点から次のように考えることができる。
【0015】
(1)未水和セメントの比表面積
混和剤を使用したセメントペーストの流動性は、セメントに水及び混和剤を混合することにより、セメントが水和し始めるとともに混和剤がセメント粒子に吸着することにより分散し、粘性が下がっていくことにより生じる。セメントの初期強度確保のためセメント製造の仕上げ粉砕の時間を延ばす等して、未水和セメントの比表面積を大きくすることで、未水和セメントに対する混和剤の吸着量が増える。それに伴い混和剤の必要量も増大する。
【0016】
(2)初期セメント水和物の比表面積
セメントの比表面積が大きくなくても、セメントに水及び混和剤を混合し混練が終了した段階において水和物がかなりできてしまい、初期の吸着量が増えることがある。これは、セメントクリンカー中の間隙質と呼ばれるC3A及びC4AFが多いことに起因し、未水和のセメントが初期に多く反応してしまい、反応した分、セメント水和物が比表面積を増大し、合計として混和剤の吸着量が増えるものである。セメント水和物は、主として、高アスペクト比となり、比表面積の増大を招きがちなエトリンガイト相である。混和剤の吸着量が増えることにより、混和剤の必要量も増大する。
【0017】
(3)混練水中の液相組成SO4
2-イオン
次に、混和剤の効き方に関する現象として、硫酸イオン(SO4
2-イオン)が関わることがある。
混和剤として、ポリカルボン酸系混和剤を用いた場合において、セメントクリンカー中の硫酸アルカリが溶出し、液相中のSO4
2-イオン濃度が増加し、かつ高く維持されることがある。この場合、混和剤の吸着基であるカルボキシル基と硫酸イオンとの競争反応(吸着平衡)においてSO4
2-イオン優位となり、未水和セメント及びセメント水和物への混和剤の吸着を阻害したり、混和剤の効き(分散作用)を抑制することがある。これによって、混和剤の必要量が増大し、また、混和剤自身の効きが抑制されて、初期フローの低下を解消することができないことがある。
【0018】
フローロスが生じても、生じなくても、経時で混和剤の吸着量が増えていき、ある程度、吸着量が増えていくと、更に大きなフローロスが増えることがある。これは、一般的には、混和剤の濃度が平衡吸着濃度に達してしまう場合であり、その後は更にフローロスが顕著に起こると考えられる。より具体的には、高強度・フロー配合と呼ばれる高性能AE減水剤の添加量が多くなる低W/C比、スランプフローの目標値が55cmを超えるような配合のコンクリート組成物において、スランプフローの経時による低下及びポンプ圧送性を評価する加圧ブリーディング試験後のスランプフローの経時による低下が大きくなるとなる現象である。
【0019】
高間隙質型の普通ポルトランドセメントクリンカーを使用したセメントとポリカルボン酸系混和剤を使用した場合に特有に見られる混和剤の相性問題は、主に水和活性の高いC3A量が上昇することに起因する上記(2)で示した初期セメントの水和物が関連していると考えられる。
また早強ポルトランドセメントに関しては、普通ポルトランドセメントと同程度に間隙質の割合が高く、更にC3S含有割合も高い設計であり、一般に混和剤吸着量が多いと考えられているセメント鉱物相の割合が高い上に、短期材齢での圧縮強さを確保する目的からブレーン比表面積が他の品種と比較して高い。このため、高間隙質型の普通ポルトランドセメントよりも若干間隙質の割合が低い早強ポルトランドセメントであっても、微粉砕されることによって間隙質成分も比表面積が上昇するため、上記(1)の未水和セメントの比表面積と(2)初期セメントの水和物の両方が関係していると考えられる。
【0020】
非特許文献1が開示するように、セメントクリンカー中の間隙質成分の増加によって生じる影響は特に混練直後の流動性確保が課題となる。
非特許文献2ではセメント中のSO3を石膏によって増加させて3.5%、5.0%とし、ポリカルボン酸系の混和剤を併用することが有効であるとることを開示している。しかし、現在のJIS R5210:2019ポルトランドセメントの規定では普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントのセメント中の三酸化硫黄(SO3)の上限値が3.5%であるから、本文献の効果のあると示される範囲の下限値はJIS規格上の上限値付近となってしまう。
【0021】
同様に、非特許文献3ではセメント中のSO3を石膏によって増加させかつ石灰石微粉末を10%添加することが有効であることが開示されているが、同様に現在のJISでは少量混合成分の合量が5%であることから、JIS規格の範囲外となってしまう。
特許文献1に開示されているポルトランドセメントの製造方法においては、セメント中のα型半水石膏の割合を高めたセメントが、水+セメントのみのセメントペーストのこわばり試験と水+セメント+ナフタレンスルホン酸系混和剤を使用したセメントペーストの分離抵抗性が良好であり、混練時間を短縮可能となり得ることが示されているが近年の高強度配合の需要環境下においてポリカルボン酸系混和剤を使用した高強度配合に最適である製造方法であるかは判然としていない。
【0022】
またセメント業界において求められているCO2排出量削減、省エネルギー化は業種を問わず発電業界にも同様に求められている。このため石炭火力発電は他の再生可能エネルギーなどに置き換えられていくことが見込まれる。
火力発電所の稼働が縮小すると、副産生成物である排脱二水石膏の入手も困難になることが考えられる。このような社会情勢のもとでは、仮にセメント中のSO3量や少量混合成分の添加量の上限が緩和されたとしても、非特許文献2及び3のように石膏由来SO3を高くすることが原材料入手の観点から困難となる恐れがある。
そうすると上述したセメント組成物の設計上の石膏必要量が上がることに加えて、石膏自身のコストが増加することによりその影響は更に大きくなることが懸念される。
従って、石膏の使用量の低減が可能で、かつポリカルボン酸系混和剤の利用に最適化されたセメントの製造方法は省エネルギー化が求められる環境では重要度が増している。
【0023】
これに対し、本発明のセメント組成物の製造方法を用いれば、ポリカルボン酸系混和剤が使用される高強度配合でも経時ロスが低減され、更に混練直後の初期流動性も確保された普通ポルトランドセメントおよび早強ポルトランドセメント組成物を製造することができる。
以下、本発明のセメント組成物の製造方法について詳述する。
【0024】
<セメント組成物の製造方法>
本発明のセメント組成物の製造方法は、早強ポルトランドセメントクリンカー及び普通ポルトランドセメントクリンカーからなる群より選択される少なくとも1種のセメントクリンカーと、二水石膏とを含む混合物を、仕上げミルによって粉砕して、仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率を50%未満にする仕上げ工程と、粉砕組成物を開放型容器に投入して、開放型容器内で前記二水石膏を脱水させて、粉砕組成物の半水化率を10ポイント以上上昇させる上昇工程と、を有することを特徴とする。
ただし、半水化率は、下式(1)により求める。
半水化率(%)=半水SO3量/(二水SO3量+半水SO3量)×100 (1)
式(1)中、二水SO3量は、粉砕組成物中の二水石膏由来の換算SO3量を表し、粉砕組成物中の二水石膏量(質量%)×80/172により算出され、半水SO3量は、粉砕組成物中の半水石膏由来の換算SO3量を表し、粉砕組成物中の半水石膏量(質量%)×80/145により算出される。
【0025】
セメント組成物は、通常、石灰石、粘土等を混合し、粉砕して調合する原料工程、調合された原料をロータリーキルンにて焼成し、クリンカーとする焼成工程、得られたクリンカーに二水石膏を添加し、仕上げミルにて所望のブレーン比表面積となるまで粉砕する仕上げ工程を経て製造される。本発明では、仕上げ工程を上記の構成として、仕上げミルから排出された粉砕組成物の半水化率を50%未満にしつつ、開放型容器(例えば、セメントサイロ)内で、半水化率を10ポイント以上上昇させて得た組成物をセメント組成物という。
【0026】
〔仕上げ工程〕
仕上げ工程は、早強ポルトランドセメントクリンカー及び普通ポルトランドセメントクリンカーからなる群より選択される少なくとも1種のセメントクリンカーと、二水石膏とを含む混合物を、仕上げミルによって粉砕して、仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率を50未満にする。仕上げミル出の粉砕組成物は、セメントクーラーを用いて冷却してもよい。
なお、仕上工程において、仕上げミルは複数用いてもよく、その場合、「仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率」は、平均値を用いる。
また、「仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率」は、粉砕組成物が仕上げミルから排出され、上昇工程の開放型容器に投入される前の半水化率を指すが、粉砕組成物が仕上げミルから排出され、上昇工程の開放型容器に投入されるまでに、他の操作が施される場合は、その他の操作が施される前における粉砕組成物の半水化率を指す。例えば、仕上げミルから排出された粉砕組成物が、セメントクーラーを用いて冷却される場合は、粉砕組成物が仕上げミルからの排出後であって、セメントクーラーでの冷却前の粉砕組成物の半水化率が「仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率」となる。
【0027】
混合物は、セメントクリンカー及び二水石膏の他に、更に、石灰石、高炉スラグ、フライアッシュ(I種またはII種)及びシリカ質混合材等の少量混合成分を含んでいてもよい。
仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率が50%を超えると開放型容器内で脱水されるべき二水石膏の含有割合が少なくなるため好ましくない。また、開放型容器内での脱水が過剰となり半水化率が95%を超えるとセメントペースト、モルタル、コンクリート等の混練直後の流動性に優れなくなる。
このため、開放型容器内での脱水を受けるべき二水石膏を確保し、開放型容器内での脱水が過剰とならないマージンを確保する観点から、仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率は40%未満であることが好ましく、また、仕上げミル内での半水化率の過剰な抑制により粉砕効率が顕著に低下することを防止する観点から20%以上であることが好ましい。
【0028】
仕上げミルは、ボールミル、チューブミル等とも称される閉鎖系の粉砕機である。仕上げミル内の温度上昇を制御するために行われる散水処理は、二水石膏が閉鎖された空間で脱水されるため、散水処理と二水石膏の脱水により生じる水蒸気は仕上げミルから完全に系外排出されることはなく、ミル内温度の飽和水蒸気圧に対応する水蒸気含有量付近で維持される。
仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率は、仕上げミルでセメントクリンカーと、二水石膏とを含む混合物を粉砕する際の温度、粉砕時間等により調整することができる。また、仕上げミルを複数用いることにより、半水化率の異なる粉砕組成物を作製し、半水化率の異なる粉砕組成物の混合比を変えることで、半水化率を調整してもよい。
【0029】
通常のセメント製造では、仕上げミル内の温度は仕上げミル内への散水処理により粉砕組成物が水和(風化)することを防止するため、少なくとも100℃以上に維持される。このため仕上げミル内へセメントクリンカーと共に投入された二水石膏は温度上昇により脱水し、特に仕上げミル内が130℃以上の高温で維持された場合は投入した二水石膏のかなりの割合が短時間で脱水し半水化する。
仕上げミルから排出される粉砕組成物は、セパレータを通じて所定の粒径以上の粒子はサイクロンによって回収されて仕上げミル内に戻り、所定の粒径以下となったものは(それ以上の半水化を防止するために)セメントクーラーに送られる。セメントクーラーでの熱交換によって通常50~80℃程度にまで冷却され、直接タンカーへ船積みして出荷されるような場合を除き、通常は、開放型容器であるセメントサイロに送られる。
【0030】
〔上昇工程〕
上昇工程では、仕上げ工程を経て得られた粉砕組成物を開放型容器に投入して、開放型容器内で二水石膏を脱水させて、粉砕組成物の半水化率を10ポイント以上上昇させる。
例えば、仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率が30%であった場合に、保管工程後の粉砕組成物の半水化率が40%又はそれ以上となるように、開放型容器内で二水石膏を脱水させる。
上昇工程における粉砕組成物の半水化率の上昇は、
(i)半水化率が50%未満の粉砕組成物〔組成物(a)という〕に、開放型容器内で二水石膏を脱水させた半水化率が50%以上の粉砕組成物〔組成物(b)という〕を混合して行ってもよいし、
(ii)組成物(a)を加熱装置等により加熱して行ってもよい。
(iii)組成物(a)が室温を超える熱を帯びている場合は、組成物(a)を開放型容器内に保管するのみでも粉砕組成物の脱水が進み、粉砕組成物の半水化率を上昇することができる。また、
(iv)(i)~(iii)の組み合わせによって行ってもよい。例えば、組成物(a)に、組成物(a)よりも高温に加熱された組成物(b)を混合して、組成物(b)の潜熱で組成物(a)を加熱すると共に、半水化率を調整してもよい。
【0031】
上昇工程での半水化率の上昇が10ポイント未満であると、製造されるセメント組成物を用いたセメントペースト、モルタル、コンクリート等の流動性に優れない。
上昇工程後の粉砕組成物の半水化率の上昇は、仕上げミル出の粉砕組成物の半水化率から20ポイント以上であることが好ましく、また、半水化率が過剰とならないよう防止する観点から60ポイント以下であることが好ましい。
【0032】
開放型容器は、容器内に投入された粉砕組成物から発せられる水蒸気が容器から排出されたり、通風が可能な容器を意味し、蓋は有っても無くてもよい。例えば、ステンレスバット、セメントサイロ等が挙げられる。
セメントサイロは、仕上げミルと異なり、内部は開放系の空間であり、二水石膏の脱水により生じる水蒸気はセメントサイロから外に逃げやすい。
セメントサイロ内へ持ち込まれたセメントは投入時の温度に依存して潜熱が持ち込まれるため、セメントサイロ内の温度は外気温よりも上昇する。セメントサイロ内の温度、水蒸気が存在する雰囲気下であるか否か等の環境は、セメントサイロ内へ通風状態も関連すると考えられ、その態様は大まかには、以下の2つのように分類され、影響を受けると考えらえる。
(1)通風がなく密閉されかつセメントの潜熱によって上昇した温度が保たれる閉鎖系
(2)通風によって水蒸気が速やかにサイロ外部に運ばれ、潜熱による温度上昇も抑えられる開放系
しかし、通常のセメント仕上げ設備の運用では、セメントは十分に冷却されるため、セメントサイロ内で80℃以上の温度領域で長時間維持されることは殆どない。このため、同一温度で比較すると半水化の進行が早くなる開放系の環境下となっても半水化率が大きく上昇することはない。
【0033】
以上のように、上昇工程において、セメントサイロ内で、粉砕組成物の半水化率を10ポイント以上上昇させるには、セメントサイロ内に投入される粉砕組成物の温度を制御すればよい。
例えば、複数の仕上げミルとセメントクーラーとを使用し、仕上げミル出の粉砕組成物を、セメントクーラーを使用せずにセメントサイロへ投入する投入工程1と、仕上げミル出の粉砕組成物を、セメントクーラーを使用してセメントサイロへ投入する投入工程2とを並行して行うことにより、セメントサイロ内で二水石膏を脱水させて粉砕組成物の半水化率を上昇させることができる。
【0034】
以下に、仕上げ工程における仕上げミル及びセメントクーラーの運転形態と、上昇工程においてセメントサイロに投入される粉砕組成物の温度及び半水化率の制御例を、具体的な一実施形態に基づいて説明する。
【0035】
〔実施形態1〕(低温ミル1基)
仕上げミル1基で粉砕を行う場合、セメントサイロ内での半水化を進行させるには以下のようなステップで断続的に高温での粉砕による潜熱の持ち込むステップと、低温で粉砕して半水化率の上昇を抑えるステップを適宜繰り返すことで、仕上げミル出のセメントの平均的な半水化率を50%未満に低く抑えると共に、セメントサイロ内での二水石膏の脱水を進行させることができる。
潜熱持ち込みステップでは、仕上げミルで高温粉砕運転(仕上げミル出温度120℃以上)を行い、セメントクーラーを使用せずに粉砕組成物をセメントサイロ内に投入する。
仕上げミル出半水化率上昇抑制ステップでは、仕上げミルで低温粉砕運転を行い、セメントクーラーを使用して、粉砕組成物をセメントサイロ内に投入する。
上記形態の一実施形態を表1に示す。なお、ミル能力は、10t/hourである。
【0036】
【0037】
以上のような高温粉砕運転と低温粉砕運転の操業を定期的に変動させながら安定的に繰り返すことは、特に高温粉砕と低温粉砕の温度差を大きくとる必要があり、通常運転時よりもセメントクーラーの冷却能力を必要とすることなどの理由により製造能力の大きく、機敏に操業条件を変動させることが出来ないプラントでは実現が困難となる。
このため、仕上げ粉砕時にミルを複数基使用可能である場合は、実施形態2のような形態で運転することが望ましい。
【0038】
〔実施形態2〕(ミル複数基)
仕上げミルを複数基使用することができる場合、セメントサイロ内での半水化の進行はより容易となる。複数の仕上げミルでの粉砕を「(1)潜熱持ち込み用の高温粉砕+セメントクーラー不使用」の運用を行う仕上げミル、「(2)半水化率上昇抑制用の低温粉砕+セメントクーラー使用」の運用を行う仕上げミルとし、複数基の仕上げミル出のセメント組成物の平均的な半水化率を50%未満に低く抑えると共に、セメントサイロ内での二水石膏の脱水を進行させる。
【0039】
(1)潜熱持ち込み用仕上げミルでは、仕上げミルで高温粉砕(仕上げミル出温度140℃以上)を行い、セメントクーラーを使用せず、粉砕組成物をセメントサイロ内に投入する。
(2)仕上げミル出半水化率上昇抑制用ミルでは、仕上げミルで低温粉砕を行い、セメントクーラーを使用して、粉砕組成物をセメントサイロ内に投入する。
一例として、表2に示すように、(1)のミル出温度を140℃として2基運転し、(2)のセメントクーラー出温度を80℃として3基運転を行うことにより、これらの混合物が100℃程度でセメントサイロ内へ持ち込まれると見込まれる。
【0040】
【0041】
仕上げミル出のセメント温度とサイロ内でのセメント温度をモニタリングして以上のような運用をすることより、仕上げミル出のセメントの平均的な半水化率を低く抑えることと、セメントサイロ内での半水化を進行させることが可能となる。
保持温度と水蒸気の有無によって脱水、半水化の進行度合いは異なるが、サイロ内での脱水のように開放系での脱水の場合、110℃を超えると速やかに進行する一方、70℃以下となると極めて進行が遅くなる。
【実施例0042】
<セメント組成物の原料>
・ベースセメント:早強ポルトランドセメント(実機プラントで製造され、仕上げミルからセメントサイロに投入される前にサンプリングされ、冷却されたもの)。化学組成を表3及び4に示す。
【0043】
【0044】
【0045】
・開放系脱水セメント(半水化率99%):水蒸気が速やかに排出される環境下での脱水
580×420×110mmのステンレスバットに3cm程度の高さでベースセメントを配し140℃で1日保持することで脱水させて得た。
・閉鎖系脱水セメント(半水化率91%):水蒸気が系内に留まる環境下での脱水
500mLのポリ瓶にベースセメント500gを封入し、乾燥機内を使用して100℃で5日間保持することで脱水させて得た。
【0046】
ベースセメント、閉鎖系脱水セメント及び開放系脱水セメントの鉱物組成を表5に示す。
【0047】
【0048】
表3及び4に示すベースセメントの化学組成は、JIS R 5204:2019「セメントの蛍光X線分析方法」に準じて蛍光X線測定装置(PRIMUS IV、株式会社リガク製)を用いて、ガラスビード法にて成分分析を行った。表3及び4に示すベースセメントの鉱物組成は、得られたCaO、SiO2、Al2O3及びFe2O3の質量割合から、下記のボーグ式を用いて算出した。
C3S=(4.07×CaO)-(7.60×SiO2)-(6.72×Al2O3)-(1.43×Fe2O3)
C2S=(2.87×SiO2)-(0.754×C3S)
C3A=(2.65×Al2O3)-(1.69×Fe2O3)
C4AF=3.04×Fe2O3
【0049】
表4に示すベースセメントのブレーン比表面積の測定は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準じて行った。
【0050】
表5に示す各セメントの鉱物組成は、粉末X線回折測定を行い、リートベルト解析法により定量した。粉末X線回折装置としては、D8 Advance〔Bruker AXS(ブルカー・エイエックス)社製〕を用いた。測定条件、リートベルト解析条件を以下に記載した。
(測定条件)
X線管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:40mA
回折角2θの測定範囲: 開始角5°,終了角70°
ステップ幅:0.025°/step
計数時間:60sec./step
【0051】
リートベルト解析条件
リートベルト解析ソフト:TOPAS Ver.4.2(Bruker AXS(ブルカー・エイエックス)社製)
ゼロ点補正:無し
試料面の高さの補正:有り
【0052】
なお、半水化率の測定及び解析手段について、(セメント鉱物の定量を必要としない場合は、)セメント中の二水石膏、半水石膏の定量および半水化率の算出は公知の手段により行うことが出来る。穴あきの封入式アルミパンを使用したTG/DTAや穴あきの封入式アルミパンと水蒸気供給手段を使用したDSC測定などによっても精度よく定量を行うことが出来る。
【0053】
<各種半水化率のセメントの調製>
表6の「開放系混合」欄に示す混合比率に従い、ベースセメントと開放系脱水セメントとを秤量し、ホバートミキサーにより低速1分程度空練りすることにより混合して、半水化率が40%、59%、及び81%のセメントを調製した。
表6の「閉鎖系混合」欄に示す混合比率に従い、ベースセメントと閉鎖系脱水セメントとを秤量し、ホバートミキサーにより低速1分程度空練りすることにより混合して、半水化率が40%、58%、及び80%のセメントを調製した。
以上のようにして、仕上げミル内での脱水を模した閉鎖系脱水セメントと、セメントサイロ内での脱水を模した開放系脱水セメントを調製した。
【0054】
<セメントペーストの調製>
ベースセメント、調製した3種の開放系脱水セメント、及び調製した3種の閉鎖系脱水セメントを用いて、合計7種のセメントペーストを調製した。具体的には、セメント300gに対して、水を水/セメント比(W/C)が質量基準で30%、混和剤/セメント比(SP/C)が質量基準で2.4%となるよう添加した後、速やかに混練を開始した。低速練り60秒、掻き落とし30秒、高速練り90秒の混練後、ペーストフロー試験に供した。
なお、混和剤(SP)は、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤;BASFポゾリス社製、商品名「レオビルドSP8SV(標準型)」を用いた。
【0055】
<評価>
調製したセメントペーストについて、内径50mmφ×高さ51mm(内容積≒100mL)の円柱状のアクリルパイプフローコーンを使用してセメントペースト試験を行ない、混練直後フローと経時材齢フローを評価した。混練直後フローと経時材齢フローは、具体的には、次のように行った。結果を表6に示す。
【0056】
(混練直後フロー)
混練後直ちにフローコーン中にセメントペーストを流し込み、1分後(混練開始から経時4分)にフローコーンを上げてフロー値を測定した。
【0057】
(経時材齢フロー)
経時材齢到達の90秒前から30秒間さじを用いて練鉢内のセメントペーストをかき混ぜて均質化し、均質化後直ちにフローコーン中にセメントペーストを流し込み、1分後にフローコーンを上げてフロー値を測定した。
【0058】
【0059】
表6に示される結果から、実施例となる開放系混合系のセメントペーストのフロー値と、比較例となる閉鎖系混合系のセメントペーストのフロー値について、次のように考察される。
【0060】
(開放系混合系)
混練直後のフロー値は、半水化率が79%のセメントを用いたセメントペーストの場合、ベースセメントのセメントペーストとほぼ同等となり、半水化率が39%及び59%のセメントを用いたセメントペーストは、ベースセメントのセメントペーストよりも流動性に優れる。
【0061】
経時のフロー値は、ベースセメントのセメントペーストと比較して、半水化率が39%、59%及び79%のセメントを用いた、いずれのセメントペーストも、経時30分以降ペーストフロー値が大きく、流動性が良好で、フローのロスが認められない。
以上の結果から、ベースセメントからの半水化率の上昇が21、41、61ポイントであれば流動性が良好であることから、半水化率50%のセメントをベースとして半水化率の上昇を20、40ポイントとしたセメントについても充分に効果が見込めることがわかる。すなわち開放系脱水により半水SO3量として0.53、1.06ポイント程度の上昇が有意に効果を奏すると認められる。
【0062】
図1は、混練直後の開放系セメントペーストと、混練から60分経過後の開放系セメントペーストの半水化率に対するペーストフローのフロー値との関係を示すグラフである。
図1に示すように、開放系脱水により半水化率が20ポイント間隔で上昇することで有意に効果を奏することをプロットすると、半水化率が50%未満のものから半水化率の上昇を10ポイントとすれば十分に効果を奏することが見込め、半水化率50%未満から70%付近までの上昇でも現状維持が見込める。このためベースセメント半水化率が50%付近のやや高めのものであっても、セメント製造プラントの製造においても10~15ポイントのマージンを確保して開放系脱水を利用した流動性改善を行うことが出来る。
【0063】
(閉鎖系混合系)
混練直後のフロー値は、半水化率が39%、58%及び79%のセメントを用いた、いずれのセメントペーストも、ベースセメントのセメントペーストよりも大きく、流動性が良好であったが、経時のフロー値は、ベースセメントのセメントペーストと比較して、半水化率が39%、58%及び79%のセメントを用いた、いずれのセメントペーストも、経時30分に混練直後からフローロスが生じた。経時60分ではややフローが伸びるがベースセメントのフロー値と比較して小さくなった。
【0064】
以上の結果から、本発明のセメント組成物の製造方法によれば、経時ロスが低減されたセメント組成を仕上げミルとセメントサイロを有するセメント製造設備で製造することが可能となることがわかる。また、石膏原単位あるいは必要混和剤が低減されたセメント組成物を製造することが可能となる。