(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078789
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】光学デバイス及び可変光学装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/06 20060101AFI20230531BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20230531BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
G02B26/06
G02B5/30
G02B5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192064
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】信川 輝吉
(72)【発明者】
【氏名】東田 諒
(72)【発明者】
【氏名】萩原 啓
【テーマコード(参考)】
2H141
2H149
2H249
【Fターム(参考)】
2H141MA01
2H141MA27
2H141MB17
2H141MC01
2H141MD12
2H141MD20
2H141MD22
2H141MD25
2H149BA02
2H149DA01
2H149DA03
2H149DA13
2H149EA02
2H149EA05
2H249CA01
2H249CA08
2H249CA15
(57)【要約】
【課題】配置距離に制約が少なく、高い自由度で光学特性を可変な光学素子、及び、可変光学デバイスを提供する。
【解決手段】光学デバイス1は、第1光学素子10と、第1光学素子から距離zを離して第1光学素子と光学素子中心を合わせて並行に配置する第2光学素子20と、を備える光学デバイスであって、第1光学素子及び第2光学素子は、予め設定された複素振幅分布で複素振幅変調させた変調領域を互いに対向する位置に備え、第1光学素子又は第2光学素子の一方の光学素子中心を回転軸中心として、第1光学素子及び第2光学素子の相対的な角度を変化させることで、、回転対称性を有する光波の位相の光学特性を動的に変化させる構成を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光学素子と、前記第1光学素子から距離zを離して前記第1光学素子と光学素子中心を合わせて並行に配置する第2光学素子と、を備える光学デバイスであって、
前記第1光学素子及び前記第2光学素子は、予め設定された複素振幅分布で複素振幅変調させた変調領域を互いに対向する位置に備え、
前記第1光学素子は、振幅分布が第2光学素子の変調領域と同じ形状で、半径方向に変化する位相分布と円周方向に変化する位相分布を足し合わせた位相分布が生成できるように、前記第1光学素子の変調領域の複素振幅分布に対して、回折積分の計算を適用し、前記距離zに対して-zの距離を逆伝搬する演算を適用することにより得られる複素振幅分布を、前記第1光学素子の変調領域に付与する構成を有し、
前記第1光学素子又は前記第2光学素子の一方の光学素子中心を回転軸中心として、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の相対的な角度を変化させる光学デバイス。
【請求項2】
前記第1光学素子の複素振幅分布の複素振幅値は、入射光の波長をλとしたときに、下記の式(1)を用いると共に、前記第2光学素子の複素振幅分布の複素振幅値は、下記の式(2)を用い、
【数1】
【数2】
前記式(1)及び前記式(2)により設定し、
前記式(1)及び式(2)中において、
前記(x,y)、(u,v)は、それぞれ、空間座標とそれに対応した空間周波数座標であり、
前記式(1)中(r、θ)は、空間座標の座標形式であり、
前記FT[…]は、フーリエ変換演算子であり、
FT
-1[…]は、逆フーリエ変換演算子であり、
前記A
1(x,y)、A
2(x,y)は、それぞれ、光の透過領域を決定する開口関数であり、
前記α(r)は、半径方向に応じて変化する位相であり、
前記β(θ)は、円周方向に応じて変化する位相である、請求項1に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記式(1)の代わりに、下記の式(3)を用いて、さらに、前記式(2)の代わりに、下記の式(4)を用い、
【数3】
【数4】
前記式(3)及び前記式(4)により前記第1光学素子及び前記第2光学素子の複素振幅分布のそれぞれの複素振幅値を設定し、
前記rounud[…]は、小数点以下の値を四捨五入して整数とする関数である請求項2に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記(1)式の代わりに、下記の(5)式を用い、さらに、前記(2)式の代わりに、下記の(6)式を用い、
【数5】
【数6】
前記第1光学素子及び前記第2光学素子の複素振幅分布のそれぞれの複素振幅値を設定する請求項2に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記第1光学素子及び前記第2光学素子の領域をU1(x、y)及びU2(x、y)の複素振幅値を下記の式に基づき、
【数7】
【数8】
2種類の位相値φ
A、φ
Bで構成される2×2のサブ変調領域として符号化し、
2×2のサブ変調領域のうち、一方の斜めに対向する領域を、生成したい位相値と、生成したい振幅値の逆余弦関数の値との和とし、他方の斜めに対向する領域を、生成したい位相値と、生成したい振幅値の逆余弦関数の値との差とすることで、生成したい複素振幅値を設定し、前記式中において、angle[…]は、複素振幅値の偏角を取り出す演算である請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記第1光学素子又は前記第2光学素子は、その一方が、前記複素振幅変調における振幅変調について、振幅分布に対して変調領域の周囲から中心に向かって透過率を連絡的に変化させるアポタイゼーションの振幅分布とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記変調領域の1つの複素振幅値を少なくとも2×2のサブ変調領域として符号化し、2×2のサブ変調領域のうち、一方の斜めに対向する領域を、生成したい位相値と、生成したい振幅値の逆余弦関数の値との和とし、他方の斜めに対向する領域を、生成したい位相値と、生成したい振幅値の逆余弦関数の値との差とすることで、生成したい複素振幅値を設定する請求項6に記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記第1光学素子及び前記第2光学素子は、感光材料に、前記複素振幅分布の光波と参照光との干渉縞を記録するホログラフィック光学素子である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項9】
前記第1光学素子及び前記第2光学素子は、波長よりも微細な突起構造のメタ原子により生じる共振、あるいは導波路効果により前記複素振幅分布の変調を行うメタサーフェスである請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項10】
前記メタ原子が、入射偏光の依存性を有する場合、あるいは、出射偏光に不要な偏光成分が含まれている場合に、前記第1光学素子の前方あるいは前記第2光学素子の後方に偏光子あるいは波長板又は偏光素子及び波長板を配置する請求項9に記載の光学デバイス。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の光学デバイスを用いる可変光学装置であって、
前記第1光学素子及び前記第2光学素子のそれぞれを支持する枠体と、前記枠体の少なくとも一方に当接して配置される回転駆動機構とを備え、
前記枠体に当接する前記回転駆動機構の伝達駆動部を介して、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の光学素子中心を回転軸中心として、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の少なくとも一方の相対体的な角度を変化させる可変光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、特に、計算機合成ホログラム、メタサーフェス、レンズ、可変焦点レンズ、アキシコンレンズ、ヘリカル位相板、位相シフト素子等の光学デバイス、及び、光学デバイスを用いて構成される可変光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズは、カメラ、顕微鏡、望遠鏡、計測装置、プロジェクター、レーザー加工装置をはじめ、あらゆる光学機器に搭載され、光を制御するために必要不可欠な光学素子の一つである。通常、レンズは硝材や高分子材料で作製され、その光学特性、すなわち焦点距離は固定の値である。しかしながら、このレンズの焦点距離を可変することができれば、上述の光学素子あるいは光学デバイスで多様に機能を拡張できるため、焦点距離を任意に変えることができる可変焦点レンズの実現が求められている。
レンズ以外にも、アキシコン位相を光波に付与するアキシコンレンズ、ヘリカル位相を光波に付与するヘリカル位相板をはじめとする特殊なビーム形状を生成できる光学素子は、顕微鏡や光通信、レーザー加工の分野で応用価値が高まっており、それぞれの光学特性を可変にすることが求められている。
また、干渉計測、ディジタルホログラフィ、インコヒーレントディジタルホログラフィの分野では、位相情報の正確な計測のために、光波の位相分布を一様に変化させる位相シフト素子が必要であり、逐次、任意の位相を光波に付与できる可変の光学デバイスが要求される。
【0003】
上述するレンズ、アキシコンレンズ、ヘリカル位相板、あるいは位相シフト素子の光学特性を可変にできる光学デバイスとして、液晶デバイスが挙げられる。例えば、環状の多重の電極で液晶分子に適切に電圧を印加することで、液晶の可変焦点レンズを実現できる(特許文献1参照)。同様の発想に基づき、電極パターンと印加電圧の適切な設計で、光学特性が可変のアキシコンレンズ、ヘリカル位相板、あるいは位相シフト素子を実現できる。しかし、液晶素子の場合、通常、複屈折を有する楕円の棒状の液晶分子の傾きの違いによって生じる位相を光波に付与しており、液晶分子の長軸方向と、入射偏光は常に合致している必要がある。
【0004】
これに対して、従来、屈折率が等方的でその大きさが1より大きい材料で作製された2枚の回折光学素子を1対の光学デバイスとして用い、これら2枚の回折光学素子の相対的な角度変化により、光学特性を変更するモアレレンズが提案されている(特許文献2、非特許文献1)。この従来の技術では、回折光学素子を構成する材料が複屈折の性質を有していないため、原理上、入射光の偏光状態に制限がない。また、光学特性を変更するために、2枚の回折光学素子の内、少なくとも一方を回転させるだけでよく、ズームレンズ系と比較すると光学系の構成が小型・簡易である。さらに、ズームレンズ系のように、焦点距離が変化しても主平面が変化することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5328315号公報
【特許文献2】特許第5622571号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】S. Bernet, W. Harm, and M. Ritsch-Marte, “Demonstration of focus-tunable diffractive Moire-lenses,” Optics Express Vol. 21, No. 6 6955-6966 (2013).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術の原理では、2枚の回折光学素子の配置距離が0、あるいは10μm以下で十分に近接していることが求められる。そのため、仮に、配置距離が大きくなると、2枚目の回折光学素子を出射した直後の光波の波面の乱れが大きくなり、所望の光学特性が得られなくなる。また、2枚の回折光学素子を接触させて配置してしまうと互いに干渉し、一方の素子を回転する際に破損する可能性があるため、実用上接触して2枚の回折光学素子を配置することは極めて困難である。また、2枚の素子を近接させた状態で回転機構を導入することは、機構設計の自由度が制限され、加工・製作が困難になる。また、この従来の技術では、2枚の回折光学素子で変調する光の物理量が位相に限定されており、光学デバイスとして発現できる機能が制限されている。
本発明は、前記した状況に鑑みて創案されたものであり、配置距離に制約が少なく、高い自由度で光学特性を可変な光学素子、及び、可変光学デバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る光学デバイスは、第1光学素子と、前記第1光学素子から距離zを離して前記第1光学素子と光学素子中心を合わせて並行に配置する第2光学素子と、を備える光学デバイスであって、前記第1光学素子及び前記第2光学素子は、予め設定された複素振幅分布で複素振幅変調させた変調領域を互いに対向する位置に備え、前記第1光学素子は、振幅分布が第2光学素子の変調領域と同じ形状で、半径方向に変化する位相分布と円周方向に変化する位相分布を足し合わせた位相分布が生成できるように、前記第1光学素子の変調領域の複素振幅分布に対して、回折積分の計算を適用し、前記距離zに対して-zの距離を逆伝搬する演算を適用することにより得られる複素振幅分布を、前記第1光学素子の変調領域に付与する構成を有し、前記第1光学素子又は前記第2光学素子の一方の光学素子中心を回転軸中心として、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の相対的な角度を変化させる構成を備えている。
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る可変光学装置は、前記した光学デバイスを用いる可変光学装置であって、前記第1光学素子及び前記第2光学素子のそれぞれを支持する枠体と、前記枠体の少なくとも一方に当接して配置される回転駆動機構とを備え、前記枠体に当接する前記回転駆動機構の伝達駆動を介して、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の光学素子中心を回転軸中心として、前記第1光学素子及び前記第2光学素子の少なくとも一方の相対体的な角度を変化させる構成を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る光学デバイス及び可変光学装置によれば、2枚の光学素子間の配置距離に制約がなく、高い自由度で光学特性を可変な光学デバイスを設計・作製できる。さらに、2枚の光学素子間の距離が大きくなっても、回転対称性を有する光波であるレンズ位相、アキシコン位相、ヘリカル位相、一様位相、あるいはこれらを足し合わせた位相を高精度に生成できる。つまり、本発明に係る光学デバイス及び可変光学装置では、入射光の振幅・位相を、固定の単一の値ではなく、ある範囲の値の中で変化量を任意に変化させるように光学特性を動的に変化させることができる。また、本発明では光波の複素振幅分布を変調していることから、追加で光学部品を導入することや、特殊なコーティングのプロセスに頼ることなく、アポダイゼーションの機能を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る光学デバイスを模式的に示す斜視図である。
【
図2】(a)、(b)、(c)、(d)は、第1実施形態に係る光学デバイスの第1光学素子及び第2光学素子それぞれの複素振幅変調パターンを振幅パターンと位相パターンに分けて模式的に示す模式図である。
【
図3】第1実施形態に係る光学デバイスの第1光学素子の複素振幅変調パターンを模式的に示す模式図である。
【
図4】(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ第1実施形態に係る光学デバイスで動的に制御可能とするレンズ位相、アキシコン位相、ヘリカル位相及び一様位相を模式的に示す模式図である。
【
図5】第1実施形態に係る第1光学素子及び第2光学素子のそれぞれの複素振幅分布における複素振幅値を変調領域ごとに設定する一例を模式的に示す模式図である。
【
図6】(a)、(b)は、第1実施形態の光学デバイスを一例として可変光学装置に用いた構成を模式的に示す斜視図である。
【
図7】(a)、(b)は、第1実施形態に係る第1光学素子あるいは第2光学素子に適用される円形瞳と、アポタイゼーションマスクとをそれぞれ模式的に示す模式図である。
【
図8】第2実施形態に係る第1光学素子及び第2光学素子のそれぞれの複素振幅分布における複素振幅値を変調領域ごとに設定する一例を模式的に示す模式図である。
【
図9】(a)、(b)、(c)は、第3実施形態に係る光学デバイスの構成をメタサーフェスとして模式的に示す模式図である。
【
図10】(a)、(b)は、光学素子としてメタサーフェスを用いるときの光学デバイスの構成を模式的に示す模式図である。
【
図11】第1実施例で用いた光学デバイスの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図12】第1実施例で用いる本実施例における1枚目の光学素子の複素振幅変調パターンを模式的に示す模式図である。
【
図13】第1実施例で用いる本実施例における2枚目の光学素子の複素振幅変調パターンを模式的に示す模式図である。
【
図14】(a)、(b)は、第1実施例で用いる比較例における1枚目及び2枚目の回折光学素子の変調パターンを示す模式図である。
【
図15】第1実施例において、本実施例及び比較例の集光スポットの画像をシミュレーションした結果を示すデータである。
【
図16】第2実施例において、本実施例及び比較例の集光スポットの画像をシミュレーションした結果を示すデータである。
【
図17】第3実施例において、本実施例及び比較例の集光スポットの画像をシミュレーションした結果を示すデータである。
【
図18】(a)は、第1実施例から第3実施例で示す検証において実現していた円形瞳の振幅パターンと位相パターンとを模式的に示す模式図、(b)は、(a)の複素振幅変調パターンを示すと共に、一部の拡大した状態を模式的に示す模式図、(c)は、アポタイゼーションの振幅パターンと位相パターとを別々に模式的に示す模式図、(d)は、(c)のアポタイゼーションの複素振幅変調パターンを示すと共に、一部の拡大した状態を模式的に示す模式図である。
【
図19】(a)は、アポタイゼーションの状態を示すグラフ、(b)はアポタイゼーションを適用しない状態をシミュレーションした結果を示すデータ、(c)はアポタイゼーションを適用した状態をシミュレーションした結果を示すデータである。
【
図20】第4実施例で用いた光学デバイスの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図21】(a)は、第4実施例で使用する本実施例の1枚目の光学素子の複素振幅変調パターンを示す模式図、(b)は、第4実施例で使用する本実施例の2枚目の光学素子の複素振幅変調パターンを示す模式図、(c)は、第4実施例の従来例の1枚目の回折光学素子を形成する変調パターンを示す模式図、(d)は、第4実施例の従来例の2枚目の回折光学素子を形成する変調パターンを示す模式図である。
【
図22】第4実施例のシュミレーションした結果を示すデータである。
【
図23】(a)は、第5実施例で使用する本実施例の1枚目の光学素子の複素振幅変調パターンを示す模式図、(b)は、第5実施例で使用する本実施例の2枚目の光学素子の複素振幅変調パターンを示す模式図、(c)は、第5実施例の従来例の1枚目の回折光学素子を形成する変調パターンを示す模式図、(d)は、第5実施例の従来例の2枚目の回折光学素子を形成する変調パターンを示す模式図である。
【
図24】第5実施例のシュミレーションした結果を示すデータである。
【
図25】第6実施例で用いた光学デバイスの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図26】(a)、(b)は、第6実施例の1枚目の光学素子及び2枚目の光学素子の生成用パターンを模式的に示す模式図、(c)、(d)は、第6実施例の比較例の1枚目の回折光学素子及び2枚面の回折光学素子の生成用パターンを模式的に示す模式図である。
【
図27】第6実施例のシュミレーションした結果を示すデータである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に説明する各実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、同一の手段には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、各図において、上下左右前後は、相対的な方向であって絶対的な方向を示すものではない。さらに、
図1、
図10(a)、(b)、
図11、
図20、
図25には、前後に配置した光学素子が素子中心を回転中心として回転できることを示す矢印を記しているが、この矢印は、いずれか一方あるいは両方のどちらであっても、2つの光学素子が相対的に所定角度になることができれば構わないことを示している。また、符号は同じ符号でも異なる構成を示す場合や、異なる符号でも同じ構成を示す場合がある。
【0013】
<第1実施形態>
図1に示すように、光学デバイス1は、第1光学素子10と、第2光学素子20とが距離zを離して配置される。また、第1光学素子10及び第2光学素子20は、第1光学素子10の光学素子中心と第2光学素子20の光学素子中心が一致するように揃えて平行に配置される。そして、第1光学素子10及び第2光学素子20は、それぞれ予め設定される複素振幅変調分布となるように複素振幅変調して形成されている。そして、光学デバイス1は、第1光学素子10及び第2光学素子20の一方を、光学素子中心を回転中心として相対的な角度を変化させることで、回転対称性を有する光波の位相の光学特性を動的に変化させることができるものである。なお、光学特性を動的に変化させるとは、入射光の振幅・位相を、固定の単一の値ではなく、ある範囲の値の中で変化量を任意に変化させることである。
【0014】
第1光学素子10と第2光学素子20との距離zは、一例として、0.01mm~30mmの範囲のいずれかで設定することができる。この距離zは、第1光学素子10及び第2光学素子20の使用目的によって予め設定される。
第1光学素子10は、例えば、
図3で示すように、中心から同心円状の複素振幅変調パターン10Aがガラス等の透光性部材に形成されている。この複素振幅変調パターン10Aは、
図2(a)で示す振幅変調パターン10A1と、
図2(b)で示す位相変調パターン10A2を合わせた状態を示している。振幅変調パターン10A1として、
図2(a)に示すように、第1光学素子10の変調領域を「0」から「1」の範囲の振幅となるように設定している。それと伴に、
図2(b)で示すように、位相変調パターン10A2として、
図2(b)に示すように、第1光学素子10の変調領域を、「0」から「2π」の範囲で変化するような位相変調パターンとなるように設定している。なお、振幅パターン10A1及び位相変調パターン10A2は、ここでは、それぞれが中心から外縁に向かって同心円の帯状の領域を振幅あるいは位相の値を設定すると共に、円周方向においても振幅あるいは位相の値を設定している。
【0015】
図2(a)、(b)及び
図3では、視覚的に分かるように振幅変調パターン、位相変調パターン、あるいは、複素振幅変調パターンをグレースケールで模式的にあえて色彩を付して記載しているが実際には特に色彩があるわけではない。
また、第1光学素子10では、振幅変調パターン10A1と、位相変調パターン10A2とを理解しやすいように別々に表示しているが、光学素子にパターンを形成する場合には、振幅変調パターン10A1と位相変調パターン10A2とを併せた複素振幅変調パターン10Aとして全体を設定して形成している。
【0016】
第1光学素子10は、振幅分布が第2光学素子20の変調領域と同じ形状で、半径方向に変化する位相分布と円周方向に変化する位相分布を足し合わせた位相分布が生成できるように、第1光学素子10の変調領域の複素振幅分布に対して、回折積分の計算を適用し、距離zに対して-zの距離を逆伝搬する演算を適用することにより得られる複素振幅分布を、第1光学素子の変調領域に付与する構成としている。
さらに、第1光学素子10では、複素振幅変調パターン10Aを光学素子の全体に形成する場合、2次元の空間座標を光学素子の全面に設定し、空間座標で区画される変調領域ごとに複素振幅値を設定することで所定の複素振幅分布としてもよい。
複素振幅変調を行う変調領域として、例えば、
図5に示すように、2次元の空間座標全面とする光学素子の全域にU
1(x、y)の領域を設定する。そして、設定した全ての変調領域にわたって、次の式(1)により演算して一括で
図3に示すような複素振幅変調パターン10Aとなる複素振幅変調分布を算出している。
【0017】
【0018】
なお、式(1)において、(x,y)、(u,v)は、それぞれ、空間座標とそれに対応した空間周波数座標である。また、式(1)中において、(r、θ)は、空間座標の座標形式であり、FT[…]は、フーリエ変換演算子であり、FT-1[…]は、逆フーリエ変換演算子である。また、式(1)、中において、A1(x、y)は、光の透過領域・透過分布を決定する開口関数である。さらに、式(1)中において、α(r)は、半径方向に応じて変化する位相であり、β(θ)は、円周方向に応じて変化する位相である。また、zは、第1光学素子及び第2光学素子の間の距離である。
【0019】
式(1)で示すように、U
1(x、y)について、U
1(0,0),U
1(0,1),…,U
1(0,n)、U
1(1,0),U
1(1,1),…,U
1(1,n)、…、U
1(n,0),U
1(n,1),…,U
1(n,n)までと、2次元の空間座標全面にわたって複素振幅値を一括に計算して設定する。なお、
図3では、正方形として設定された変調領域は、視覚で認識きるように複素振幅変調パターン10Aに対してサイズを大きく模式的に示している。
第1光学素子10は、例えば、矩形でシート状あるいは板状に形成したガラス基板等の透光性の部材を光学素子として使用している。光学素子としてガラス基板にレーザー照射することで、式(1)で算出した複素振幅値に基づいて変調領域ごとに削り深さを変えて特定の複素振幅変調分布となる複素振幅変調パターン10Aを形成することができる。
【0020】
また、第1光学素子10と同様に第2光学素子20は、
図2(c)に示すように、一例として、変調領域の中心の振幅が「1」に近く、周縁に向かうにしたがって「0」に近づくような半径方向に同様に変化する振幅変調パターン20A1となるように設定される。それと共に、第2光学素子20は、
図2(d)に示すように、中心から外縁に向かって同心円の帯状の領域が円周方向に位相の値を「0」から「2π」の範囲で変化するような位相変調パターン20A2となるように設定される。つまり、第2光学素子20は、
図2(c)、(d)に示す振幅変調パターン20A1及び位相変調パターン20A2となる複素振幅変調パターン20Aを有するように形成される。第2光学素子20についても振幅変調パターン20A1と位相変調パターン20A2とを視覚で認識できるようにグレースケールで分けて模式的にあえて色彩を付して記載している。
【0021】
第2光学素子20は、一例として、矩形でシート状あるいは板状に形成した透光性のガラス基板である光学素子を所定の複素振幅変調分布となるように変調領域ごとにレーザー加工することで複素振幅変調パターン20Aを形成することができる。
第2光学素子20は、第1光学素子10と同様に、複素振幅変調パターン20Aを光学素子の全体に形成する場合、2次元の空間座標を光学素子の全面に設定し、空間座標で区画される変調領域ごとに複素振幅値を設定することで所定の複素振幅分布とすることができる。
複素振幅領域の最小領域として、例えば、
図5に示すように、光学素子にU
X(x、y)を設定して、光学素子の全面が2次元の空間座標全面にわたって、次の式(2)により一括に設定して複素振幅変調パターン20Aとしている。
【0022】
【0023】
なお、式(2)において、A2(x、y)は、光の透過領域・透過分布を決定する開口関数であり、α(r)は、半径方向に応じて変化する位相であり、記β(θ)は、円周方向に応じて変化する位相である。
式(2)で示すように、U2(x、y)について、U2(0,0),U2(0,1),…,U2(0,n)、U2(1,0),U2(1,1),…,U2(1,n)、…、U2(n,0),U2(n,1),…,U2(n,n)までと、2次元の空間座標全面にわたって複素振幅値を一括に計算して設定する。
【0024】
第2光学素子20は、例えば、矩形でシート状あるいは板状に形成したガラス基板等の透光性の部材を光学素子として使用している。光学素子としてガラス基板にレーザー照射することで、式(2)で算出した複素振幅値に基づいて変調領域ごとに削り深さを変えて特定の複素振幅変調分布となる複素振幅変調パターン20Aを形成することができる。
第1光学素子10及び第2光学素子20を、式(1)、(2)を用いて、複素振幅領域の各複素振幅値を設定することで、光学デバイス1を形成することができる。光学デバイス1では、第1光学素子10及び第2光学素子20の少なくとも一方を、素子中心を回転中心として相対的な角度を変化させることで、回転対称性を有する光波の位相の光学特性を動的に変化させることができる。例えば、
図4(a)~(d)に示すように、レンズ位相、アキシコン位相、螺旋位相、一様位相、あるいは、これらを2つ以上組み合わせた位相の光学特性を動的に制御可能とすることができる。
【0025】
なお、第1光学素子10及び第2光学素子20は、複素振幅変調パターン10A、20Aが形成されるものとして、それぞれ、ガラス基板として説明したが、例えば、以下に示すような材料であってもかまわない。
第1光学素子10及び第2光学素子20は、光学素子として銀塩感光材料を使用してもよい。銀塩観光材料の分解能は、2000本/mm以上である。現像したものを振幅ホログラムとして用いてもよく、また、漂白して位相ホログラムとしても使用できる。
【0026】
また、LiNbO3を石英ガラスに設けたシート材を光学素子として使用してもよい。LiNbO3を使用することで、強いレーザー光をあてると照射された部分の屈折率が変化し、厚い位相 ホログラムが記録できる。なお、LiNbO3をそのままでは感度が低く(数100J/cm2)であるが、Fe、Rh、Uなどの不純物を添加すると、高感度化(1~5J/cm2)ができる。加工するレーザーとしては、Arレーザーの514.5nm、488nmがよく用いられるが、HeNeレーザー(632.8nm)でも使うことができる。屈折率の変化は異常光線屈折率でおこり10-3~10-4程度であるが、回折効率60%以上に達する。特に現像処理は必要ではなく、使用後は強い水銀灯又は短波長レーザーの一様な光によって形成したパターンを消去することができ、記録、消去の繰返しによっても劣化しない。また、記録後は室温で1年位は安定に保存できる。LiNbO3を使用する場合、分解能は2500本/mm以上である。
【0027】
また、第1光学素子10及び第2光学素子20は、光学素子として、サーモプラスチックスを使用することもできる。このサーモプラスチックは、一種の電子写真的な記録方法であって、ガラス基板の上に透明電極を設け、その上に1~3μm程度の光導電体(PVK)膜、さらにその上に0.3~1μmのサーモプラスチック(Staybelite:商品名)を塗布して光学素子を作成することができる。サーモプラスチックの近傍に電極Nをおき、5~10kVでコロナ帯電を行うと感光性が生じ、ほぼパンクロマチック(紫外部から赤色部に至るまでの、ほぼ可視光線のすべてに感光する性質)でかなり高感度(10-3mJ/cm2)である。光をうけるとPVK内で電荷が動き、その結果サーモプラスチックの内部に電場の強弱が出来るので、透明電極に適当な電流を流してジュール熱を発生させ、サーモプラスチックを軟化させれば静電引力で凹凸が生じ、薄い位相ホログラムが出来る。
【0028】
このとき、静電引力を増加するための追加帯電が必要であるが、露光後再帯電を行う逐次法と、露光中も帯電を継続する同時法のいずれかを用いることができる。分解能は、サーモプラスチック層の厚さによって変るが、その典型的な値として、空間周波数(μ:lines/mm)を横軸にして縦軸に回折効率(η:%)としたきに、200(本/mm)の時に4~5%の回折効率で、ほぼ700~800(本/mm)のときに回折効率が20%を超えるピークの値となり、1400(本/mm)の時に、200(本/mm)と同程度の解析効率となるような値で示される。このサーモプラスチックは、使用後のホログラムを現像時よりやや高い温度にすれば、電荷は中和し凹凸は平滑化してホログラムは消失するので、再度使用できる。
【0029】
さらに、第1光学素子10及び第2光学素子20は、光学素子として、重クロム酸ゼラチンを使用することもできる。ゼラチンをガラス板に塗布し、これを重クロム酸アンモニウム溶液に浸して作成することができる。光に当ったゼラチンが硬化するので、他の部分を溶かして凹凸形のホログラムを作る非硬化形と、硬膜処理を施してから急速脱水を行い、屈折率変化を記録する硬化形の二つの方法で作成することができる。普通、重クロム酸ゼラチンは、緑色より短い光にのみ感光するが、感度は低い(5~30mJ/cm2,488nm)。ゼラチンの厚さは最大50μm程度で、散乱が少なく、位相形のリップマンホログラム用の材料としてすぐれている。記録したホログラムは湿気に出合うと消失するので、2枚のガラス板ではさみ、樹脂等で封をして湿度の影響をなくする方法がとられる。回折効率は90%に達するとの報告がある。
【0030】
光学デバイス1は、
図6(a)、(b)で示すように、可変光学装置100として、光学系の光路中に距離zを離して第1光学素子10及び第2光学素子20が配置される構成として使用される。
例えば、第1光学素子10及び第2光学素子20は、枠体11,21に支持されて光路中に光学素子中心を一致させた状態として配置されている。そして、第1光学素子10の枠体11には、回転駆動機構30の伝達駆動部31を当接させている。回転駆動機構30は、サーボモータ、ステッピングモータ等の駆動部32と、駆動部32の駆動軸に係合する減速部を介して設置される伝達駆動部31とを備えている。そして、回転駆動機構30は、外部からの電気的な信号により駆動部32を駆動させ駆動軸を回転させて減速部を介して伝達駆動部31を所定角度あるいは所定回数回転させることで、第1光学素子10及び第2光学素子20の相対的な角度を変化させ、回転対称性を有する光波の位相の光学特性を動的に変化させている。
【0031】
ここでは、可変光学装置100は、
図6(a)に示す状態から、
図6(b)に示す状態になるように、第1光学素子10を矢印で示す方向に、45度回転させる状態を一例として示している。可変光学装置100では、撮像する被写体として、長方形の板を前にして、その後ろに星形の板を配置し、第1光学素子10及び第2光学素子20を介して撮像素子40等に撮影する場合を一例として設定している。なお、ここで示す可変光学装置100では、その他の撮影に必要となるレンズ等の光学系や機械系の構成を省略している。
図6(a)に示すように、第1光学素子10の角度を変化させる前の状態では、撮影した映像の対象とする星形の板に焦点が合い、長方形の板はピンボケで焦点が合っていない状態で撮影されている。これに対して、
図6(b)に示すように、可変光学装置100は、第1光学素子10を、回転駆動機構30を介して第2光学素子20に対して相対的に45度回転させると、長方形の板に焦点が合い、星形の板には焦点が合わないようにすることができる。つまり、可変光学装置100では、第1光学素子10と第2光学素子20との距離zを変えることなく合焦位置シフト(焦点距離のシフト)を実現することが可能なる。したがって、可変光学装置100は、カメラ、望遠鏡、顕微鏡、動画撮影用カメラ等に用いてることが有効となる。
【0032】
なお、第1光学素子10及び第2光学素子20は、その一方を円形瞳の関数やアポダイゼーションを適用してもよい。すなわち、
図7(a)に示すように、一例として第2光学素子20を単純な円形瞳を適用することで、レンズの被写界深度を調整することや、不要な光波を遮断することができる。また、
図7(b)に示すように、第2光学素子20を中心から外側にかけて振幅が減少する関数を示す複素振幅変調パターン20Aを使用することで、アポダイゼーションを適用することができる。アポタイゼーションでは、イメージングの際に滑らかなボケを表現できる。なお、
図7(b)では、アポダイゼーションの一例を示しているが、アポタイゼーションを実現できるのであれば、どのような分布を適用してもよく、任意に設計してよい。
【0033】
アポタイゼーションを実現するには、式(1)、(2)において、半径方向に応じて変化する位相となるα(r)の値を調整することで実現できる。例えば、レンズ位相、アキシコン位相、ヘリカル位相、一様位相それぞれの分布の光波を生成したい場合は、α(r)について、α(cr2)、α(cr)、α(c)、α(c)とそれぞれ位相の種類に合わせて設定すればよい。なお、α(c)におけるcは、各位相の光学特性を決定する定数である。そして、cについては、式中、α(r)の定数関数の位置づけとなる。つまり、α(r)=c+d×r+e×r2+f×r3+…m×rnにおいて、rの係数が0の場合である。
【0034】
また、α(r)を調整することで、レンズ位相の場合は焦点距離、アキシコン位相の場合は頂角、ヘリカル位相の場合はトポロジカルチャージ(あるいは軌道角運動量)、一様位相の場合には初期位相にそれぞれ対応している。
さらに、式(1)、(2)において、円周方向に応じて変化する位相となるβ(θ)を調整することで、位相を調整することができる。例えば、レンズ位相、アキシコン位相、一様位相の場合には、θ^nであり(|n|>0、任意定数)、n=1のときに、品質の高い位相を生成できる。ヘリカル位相の場合はθ^2であり、このときに品質の高い位相を生成できる。
【0035】
<変形例1>
また、レンズ位相、アキシコン位相、あるいは、一様位相を生成する際に、不要な散乱波成分を低減したい場合には、式(1)、(2)に代えて、下記の式(3)、(4)を使用することが好ましい。
【0036】
【0037】
【0038】
式(3)、(4)において、round[…]は小数点以下の値を四捨五入して整数とする操作である。
【0039】
<変形例2>
さらに、ヘリカル位相が生成対称光波に含まれ、不要な散乱波成分を低減したい場合には、式(1)、(2)に代えて、以下の式(5)、(6)を使用することが好ましい。
【0040】
【0041】
【0042】
<第2実施形態>
なお、すでに説明した式(1)~(6)で示した複素振幅変調型の光学素子を二重位相ホログラムとして参考文献(参考文献 V. Arrizon, “Improved double-phase computer-generated holograms implemented with phase-modulation devices,” Optics Letters Vol. 27, Issue 8 595-597 [2002].)によりで実現する場合、
図8で示すように、U
X(x、y):(X=1,2)の複素振幅値を以下の式(7)、(8)に基づき2種類の位相値φ
A、φ
Bで構成される2×2のサブ変調領域として符号化することとしても構わない。
【0043】
【0044】
【0045】
式(7)、(8)において、angle[…]は、複素振幅値の偏角を取り出す演算である。
図8に示すように、太線で囲む2×2のサブ領域の内、左上と右下をφ
Aとし、左下と右上をφ
Bとする。ここでは、一方の斜めに対向する領域を、生成したい位相値と、生成したい振幅値の逆余弦関数の値との和とし、他方の斜めに対向する領域を、生成したい位相値と、生成したい振幅値の逆余弦関数の値との差とすることで、生成したい複素振幅値を設定している。なお、これらの値はφ
Aを左上と右下にし、φ
Bを左上と右下とするように反対でも問題ない。このようなサブ領域を光学素子の全面となる2次元の空間座標全面にわたって設定することで複素振幅変調分布を形成しても構わない。また、サブ領域のサイズは、例えば、
図5で示すような、任意のサイズ、n×nでもよく、その場合にも、市松格子状にφ
Aとφ
Bの値を割り当てればよい。
【0046】
<第3実施形態>
第1光学素子10及び第2光学素子20を備える光学デバイス1は、二重位相ホログラムで実現する代わりに、メタサーフェスで複素振幅変調型の光学素子を実現してもよい。メタサーフェスは
図9(a)、(b)、(c)に示すように、SiO
2をはじめとする光学的に透明な基板材料の上に、光の波長λよりも小さな面内領域で材料の屈折率の実部nとλの積よりも小さな突起構造であるメタ原子を形成させ、それを波長λと同程度、あるいは小さい間隔で複数配列した素子M1~M3である。
【0047】
この微小な素子M1~M3では、微細な突起構造によって生じる、共鳴現象あるいは導波路効果を利用することで、複素振幅変調が可能である。
図9(a)~(c)では、光学素子10M1~10M3のそれぞれの全面において正方形の形状で面内領域を複数設定した場合の例を示しているが、正方形の代わりにハニカム状に面内領域を設定してもよい。突起構造の材料としては、Au、Ag、Alをはじめとするプラズモニック金属、SiO
2、Si、SiN、GaN、TiO
2をはじめとする誘電体が用いられる。例えば、
図9(a)は、直方体のメタ原子を用いた素子M1の例であり、直方体の面内におけるアスペクト比を変えることで振幅を制御でき、直方体の回転角度を変えることで位相を制御できる。また、
図9(b)では、十字のメタ原子を用いた素子M2の例であり、メタ原子の回転角度および十字の縦ラインと横ラインの間の角度を変更することで、振幅・位相を制御できる。また、
図9(c)では、2個のメタ原子を一対として用いた素子M3の例であり、それぞれの面内のアスペクト比および回転角度を変えることにより、振幅・位相を制御できる。メタ原子の形状は、
図9(a)で示すような突起構造が直方体形状に縛られず、特記構造の平面視の形状が円形、楕円形、六角形、八角形、円環形状でも実現できる。また、これらを組み合わせてもよい。
【0048】
メタサーフェスは、二重位相ホログラムの場合と異なり、解析的な理論に基づいた決定論的な設計は現状のところ不可能であり、有限要素法あるいは時間領域差分法を利用して、マクスウェルの方程式あるいは波動方程式を数値的に解くことで、目的の複素振幅変調機能が得られる形状を見出し・設計する必要がある。したがって、目的の振幅・位相変調機能を実現するために、突起構造の寸法・形状は、材料に応じて変化し、無数の選択肢がある。重要な点は、メタ原子および、メタサーフェスの概念で、式(1)~式(6)に示す複素振幅分布を生成することにある。
【0049】
なお、メタサーフェス・およびメタ原子の設計に応じては、変調可能な入射光の偏光状態が制限される場合がある。例えば、
図9(a)で示すメタサーフェスでは、入射光の偏光状態が円偏光である必要がある。したがって、
図10(a)に示すように、メタサーフェスを複素振幅変調の光学素子の1枚目として用いる場合には、入射光の偏光状態を円偏光とするために、光学デバイスの前側に偏光子5と1/4波長板6を配置する必要がある。また、
図9(a)のメタサーフェスでは、出射光に、不要な偏光成分が含まれる場合がある。そのような場合、
図10(b)に示すように、光学デバイス1の前後に波長板7a、8aと偏光子7b、8bを組み合わせて配置することで、不要な偏光成分を除去できる。あるいは、図示は省略しているが、光学デバイス1の前後に、単純に単一の偏光子を配置して、不要な偏光成分を低減してもよい。
【0050】
さらに、メタサーフェスが直線偏光の入射光に対してしか動作しない場合で、かつ、入射光の偏光状態が直線偏光でない場合には、1枚目の光学素子の前に偏光子を配置する必要がある。また、この状態で、1枚目の光学素子を回転させると、相対的に入射光の直線偏光の角度が変化してしまい、所望の変調機能が得られなくなる。その場合には、偏光子と1枚目の光学素子の間に、1/2波長板を入れて、1枚目の光学素子の回転角度に応じて、1/2波長板を回転させる。なお、2枚目の光学素子を回転させる場合には、1枚目の光学素子の前に配置された偏光子あるいは波長板を回転させる必要はない。
【0051】
<第4実施形態>
光学デバイス1で使用する第1光学素子10及び第2光学素子20を、ホログラフィック光学素子により、複素振幅変調型の光学素子として実現してもよい。ホログラフィック光学素子は、生成すべき複素振幅分布となるU1(x、y)の光あるいはU2(x,y)の光と、平面波である参照光をフォトポリマー、フォトリフラクティブ結晶の感光材料中で干渉させて、第1光学素子10及び第2光学素子20に相当する光学素子を作成すればよい。このとき感光性材料を厚くするほど、入射角度の選択性あるいは波長の選択性が発現し、光のフィルタリング機能を付加できる。また、参照光を球面波にして干渉させることで、入射光の曲率あるいは発光点・反射点の奥行位置に応じた奥行選択性を付加することができる。
【0052】
[実施例]
つぎに、光学デバイス1について実際に第1実施例~第6実施例においてシミュレーションした検証結果を以下に示す。なお、第1実施例~第6実施例において光学デバイスの構成を示す
図11、
図20、
図25では、提案手法となる本実施例の構成と、従来手法となる比較例の構成と、1枚目の光学素子及び2枚目の光学素子の配置条件は同じであるため、同じ図面上でその構成を示している。
ここでは、シミュレーションの条件を以下に記載する。ソフトウェアとしては、フーリエ変換や四則演算等の計算ができればなんでもよく、一例として、「python」(登録商標)、「Matlab」等を用いることができ、ここでは、「Matlab」を使用した。計算の内容としては、光の伝搬計算の代表的な手法である、角スペクトル法を用いた。この角スペクトル法は、光の分野では、一般的な手法で、実際の物理現象を正確に取り扱いことができるということが知られている。
【0053】
ソフトウェア :Matlab
サンプリング間隔 :2.5μm
画素数 :1024×1024pixels
光源の波長(λ) :633nm
α=11・r2
β=θ
z=0、5、10、15、20,25、30mm
【0054】
<第1実施例>
図11に示すように、2枚の複素振幅変調用の光学素子を第1光学素子10及び第2光学素子20として、お互いの間を距離zとし、シミュレーションの設定条件として配置し、可変レンズ位相の光を生成する光学デバイス1Aを構成した。
第1実施例では、光源の波長λを633nmとし、複素振幅分布の変調する方法としてすでに説明した
図8及び式(7)、(8)で示す二重位相ホログラムを用いて第1光学素子10を一枚目の光学素子A10及び第2光学素子20を二枚目の光学素子A20とした。さらに、第2光学素子20の振幅分布を直径2mmの円形瞳とした。第1実施例において、本実施例における1枚目の光学素子A10と2枚目の光学素子A20の複素振幅変調パターン10A、20Aを
図12及び
図13に示す。
【0055】
また、比較のための従来手法である比較例における2枚の回折光学素子となる光学素子B10,B20の変調パターンを
図14(a)、(b)に示す。比較例の1枚目の光学素子B10では、round[α(r)θ]θの式に基づいて位相変調だけを行うように設定している。また、比較例の2枚目の光学素子B20では、-round[α(r)θ]θの式に基づいて位相変調だけを行うように設定されている。なお、比較例における前記の式中、αは、11・r
2として設定している。
【0056】
そして、第1実施例では、本実施例と比較例とが2枚目の光学素子A20、B20から理論的には、431mm離れた面で集光スポットが得られることに鑑み、2枚目の光学素子から431mmの集光スポット位置SCによる画像の状態を評価した。なお、比較例の一枚目の光学素子B10及び二枚目の光学素子B20いずれも直径2mmの円形瞳の振幅分布領域としている。
また、第1実施例では、並行に配置された2枚の光学素子のうち、2枚目の光学素子が、1枚目の光学素子に対して、素子中心を回転中心として相対的に60度ずれるように回転させたときの集光スポットを、距離zを0~30mmまで5mm間隔で変化させて、2枚目の光学素子から出射されて集光スポット位置SCでの集光スポットの画像をシミュレーションした結果を
図15に示す。
【0057】
図15に示すように、従来手法である比較例では、距離zが大きくなるにつれて、モアレレンズの理論から乖離してしまい、中央に白く表示されている集光スポットの品質が低下していることが分かる。この原因は、従来手法では、1枚目の光学素子B10を光が透過した後、距離zの距離を光が伝搬することで、光波が回折してしまい、2枚目の光学素子B20に入射する際には、振幅・位相が乱れているためである。この乱れがあるために、従来手法では、二枚目の光学素子B20を一枚目の光学素子B10に対して10μm以下の距離で配置する必要があった。
一方、提案手法となる本実施例では、1枚目の光学素子A10で回折の影響をあらかじめ逆算して複素振幅変調分布を変調しているため、回折による振幅・位相の乱れが発生することなく、距離zの大きさにかかわらず、高品質な集光スポットを得ることができていることが分かる。
【0058】
<第2実施例>
次に、第2実施例として、2枚目の光学素子A20,B20のそれぞれの直径を5mmにした場合の提案手法と従来手法の集光スポットをシミュレーションして比較した。なお、その他条件は、第1実施例と同じ条件である。第2実施例のシュミレーションした評価結果を
図16に示す。従来手法となる比較例では、直径2mmの場合と同様に、距離zが大きくなるにつれ、集光スポットが大きく変形してしまう。また、複素振幅変調分布を形成する領域の直径が大きくなることにより、つまり、レンズ位相のNAが大きくなることにより、回折の影響が顕著となり、直径が2mmの場合と比較すると、集光スポットの歪みの影響が大きくなっていることが分かる。一方、提案手法の本実施例では、複素振幅変調分布を形成する領域の直径が大きくなった場合でも、集光スポットが中央にはっきり白く認識でき、距離zが変化しても常に高品質な集光スポットが得られていることが分かる。
【0059】
<第3実施例>
次に、第3実施例として、
図11の光学系を用いて構成し、本実施例の2枚目の光学素子A20の直径及び比較例の2枚目の光学素子B20の直径を2mmとし、2枚の光学素子間の距離zを20mmで固定して設置した。そして、2枚の光学素子間の相対的な回転角度を60度から2度刻みで大きくし70度まで変化させ、レンズ位相の焦点距離を変化させた場合の集光スポットの状態をシミュレーションした結果を
図17に示す。従来手法となる比較例では、2枚の光学素子間で距離zのギャップがあることから、焦点距離が変化すると、白色で表示されている集光スポットが不均一で表示され集光スポットの品質が低いことが分かる。
一方で、提案手法である本実施例では、レンズ位相の焦点距離の可変機能を有することに加え、2枚の光学素子間が離れていても、集光スポットの状態は、中心の白色がはっきり表示され問題なく高品質な集光スポットが得られることが分かる。
【0060】
以上の第1乃至第3実施例における検証では、
図18(a)、(b)に示すように、提案手法2枚目の光学素子A20で単純な円形瞳の振幅分布を実現していた。提案手法となる第1乃至第3実施例では、振幅・位相を含む複素振幅を自在に制御できるため、
図18(c)で示すように、アポダイゼーションを適用した構成、つまり、振幅分布が一様でない光を生成することができることが検証されたことになる。また、
図18(c)の複素振幅分布の光を生成するための二重位相ホログラムの複素振幅変調パターンを
図18(d)に示す。提案手法の実施例において、アポダイゼーションを適用した場合の効果を検証した結果を
図19(a)に示す。アポダイゼーションを適用することで、メインローブの幅が大きくなるが、サイドローブの発生を抑制できていることがわかる。
図19(b)はアポタイゼーションを適用しない場合の集光スポットの状態を示し、
図19(c)はアポタイゼーションを適用した場合の集光スポットの状態を示している。なお、従来手法となる比較例の構成では、回折光学素子を用いるため、光の振幅・位相を変調することができず、アポダイゼーションを適用することはできない。なお、
図18(b)、(d)で示すように、一部を拡大した模式図において、市松模様で示される小さな1つの四角形が、
図8で示した変調領域の1つに相当する。
【0061】
<第4実施例>
次に、第4実施例として、
図20の光学系を用いて、アキシコン位相の光を生成した。第4実施例の光学系では、アキシコン位相としての機能を評価するために、出射光を焦点距離200mmのレンズLNでフーリエ変換し、フーリエ面での光強度分布を取得した。また、1枚目の光学素子A110、B110及び2枚目の光学素子A120、B120を距離z=20mmで固定した。提案手法となる本実施例の光学素子A110、A120の複素振幅分布を示す複素振幅パターンを
図21(a)、(b)に、また、従来手法となる比較例の回折光学素子のパターンを
図21(c)、(d)に示す。第4実施例の光学系で、1枚目の光学素子A110を0度~50度まで10度ごとに2枚目の光学素子A120、B120に対して相対的に角度が変化するように回転させてシュミレーションした結果を
図22に示す。
【0062】
なお、本実施例及び比較例それぞれの光学系において、理想的には、アキシコン位相の光をフーリエ変換することで、集光パターンとして環状の光パターンが得られ、ここではレンズLNでフーリエ変換する構成としている。また、本実施例の光学系において一枚目の光学素子A110及び2枚目の光学素子A120の相対的な角度が0度のときには、集光スポットが得られる。
図22に示すように、従来手法の比較例では、環状の光パターンが周方向において断続的になっていることがわかる。一方で、提案手法の本実施例では、相対的な角度を変えたときに高品質な環状の光パターンが得られていることが分かる。本実施例の構成を使用することで、リング状の光パターンを高精度に生成し、直径を変化させることができる。そのため、本実施例の技術では、例えば、レーザー加工でリング状に加工する際に有用であることが分かる。
【0063】
<第5実施例>
続いて、第5実施例として、
図20に示す光学系を用いて、ヘリカル位相の光を生成するシミュレーションを行った。本光学系では、1枚目の光学素子A210、B210及び2枚目の光学素子A220、B220の距離z=10mmで固定して1枚目の光学素子A210、B210と2枚目の光学素子A220、B220との相対的な角度を0度、1.1度、2.2度、3.3度と変化させた状態でシミュレーションを行った。提案手法となる本実施例の1枚目の光学素子A210及び2枚目の光学素子A220を
図23(a)、(b)に、また、従来手法となる比較例の1枚目の回折光学素子B210及び2枚目の回折光学素子B220を
図23(c)、(d)に示す。また、生成したシミュレーションの結果を
図24に示す。
図24に示すように、ヘリカル位相の場合、理想的には、ドーナツ状で中心点の強度が0の特異点を有する光パターンが形成されるはずである。従来手法となる比較例では、光パターンが完全に変形してしまっている。
【0064】
一方で提案手法となる本実施例では、ドーナツ状の光パターンが形成できており、高品質にヘリカル位相を生成できていることがわかる。また、相対的な回転角度を大きくすることにより、ドーナツ状の光パターンの直径が大きくなっている。これは、ヘリカル位相の渦の巻き数、すなわちトポロジカルチャージが大きくなっていることを示しており、ヘリカル位相のパラメータを変化させることができていることがわかる。相対角度が1.1度、2.2度、3.3度のときそれぞれが、トポロジカルチャージが1、2、3に対応している。本実施例では、ヘリカル位相を高精度に生成し、トポロジカルチャージを変更できることにより、トポロジカルチャージを信号のキャリアとして用いる光通信の分野で、トポロジカルチャージの変換技術として用いることができる。また、イメージングの分野では、誘導放出抑制顕微鏡や、インコヒーレントディジタルホログラフィーへの応用が可能である。
【0065】
<第6実施例>
最後に、第6実施例として、
図25に示すように、1枚目の光学素子A310、B310及び2枚目の光学素子A320、B320かなる光学系により、一様位相の光を生成したシミュレーションした結果を示す。一様位相は、干渉計やディジタルホログラフィで、位相シフト法を適用する際に用いることができる。したがって、第6実施例の光学系では、2枚目の光学素子を透過した直後の光の位相分布を評価した。第6実施例では、1枚目の光学素子A310、B310と2枚目の光学素子A320、B320とを相対的に0度、90度、180度、270度と角度を変えるように回転させて、2枚目の光学素子A320,B320を透過した直後の光の位相分布をシミュレーションにより評価した。
図26(a)、(b)に提案手法となる本実施例の1枚目の光学素子A310及び2枚目の光学素子A320の生成用パターンを示す。
【0066】
また、
図26(c)、(d)に従来手法となる比較例の1枚目の回折光学素子B310及び2枚面の回折光学素子B320の生成用パターンを示す。
図27に、第6実施例において提案手法である本実施例及び従来手法である比較例でのシミュレーションで位相を評価した結果を示す。提案手法、従来手法ともに、90度ずつ回転することで、所望の0、π/2、π、3π/2の位相シフト量が得られている。しかし、
図27に示すように、従来手法となる比較例では、中心部分に不要な位相の変化が生じていることが分かる。提案手法の本実施例でもごく中心付近に、わずかな位相の変化が生じている。しかし、従来手法の比較例よりも提案手法の本実施例の一様性の高い位相を生成できていることがわかる。第6実施例により、光学素子の回転操作のみで、位相シフト法を実現できることが分かる。なお、従来の干渉計測技術・位相シフト法では、主に、ピエゾ素子や液晶素子を用いて、光の位相をシフトされていたが、ピエゾ素子ではヒステリシスの課題があり、また、液晶素子では、液晶分子の揺らぎで位相がずれるという課題がある。そのため、第6実施例で示す技術では、ヒステリシスの影響は存在せず、また、有機分子を用いないため高精度で、安定した位相シフトが可能である。
【0067】
以上説明したように、提案手法となる実施例で示すように、第1光学素子と、前記第1光学素子から距離zを離して前記第1光学素子と光学素子中心を合わせて並行に配置する第2光学素子と、を備える光学デバイスを使用することで、従来手法の課題であった2枚の光学素子間の制約を取り除くことができ、任意の分離距離であっても、所望の光を生成することができ、様々な光学系に用いることが可能となる。
なお、本発明において、複素振幅変調とは、振幅及び位相を変調することをいう。複素振幅変調パターンとは、振幅及び位相を変調するための光学素子に形成されるパターンをいう。複素振幅分布とは、振幅及び位相を併せた値により形成されている分布をいう。変調領域とは、光学素子の振幅、位相の一方又は両方を変調する領域をいう。複素振幅値とは、変調領域における振幅及び位相の値を合わせた値をいう。振幅ホログラムとは、再生のときの回折が光の振幅の変化のために起るホログラムをいう。位相ホログラムとは、厚さや屈折率の変化として干渉縞が記録され、光の位相の変化で回折がおこるホログラムをいう。
【符号の説明】
【0068】
1 光学デバイス
10 第1光学素子
10A 複素振幅変調パターン
10A1 振幅変調パターン
10A2 位相変調パターン
20 第2光学素子
20A 複素振幅変調パターン
20A1 振幅変調パターン
20A2 位相変調パターン
30 回転駆動機構
31 伝達駆動部
32 駆動部
A10、A110、A210、A310 1枚目の光学素子(第1光学素子)
A20、A120、A220、A320 2枚目の光学素子(第2光学素子)
B10、B110、B210、B310 1枚目の光学素子(回折光学素子)
B20、B120、B220、B320 2枚目の光学素子(回折光学素子)