(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078894
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20230531BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
H05K1/02 P
H01L23/12 F
H01L23/12 Q
H05K1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192209
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千野 由香里
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀樹
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB63
5E338CC01
5E338CC06
5E338CD14
5E338EE11
(57)【要約】
【課題】インピーダンスのミスマッチングを低減すること。
【解決手段】配線基板は、絶縁性樹脂を用いて形成される絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成される配線層とを有し、前記配線層は、配線が形成される第1の領域と、前記第1の領域に形成された配線が接続するパッドを備え前記第1の領域よりも配線幅が小さい第2の領域とを有し、前記絶縁層は、平面視で前記第2の領域と重なる範囲のみに導体を用いて形成され、前記絶縁性樹脂によって挟まれる導体部を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性樹脂を用いて形成される絶縁層と、
前記絶縁層の表面に形成される配線層とを有し、
前記配線層は、
配線が形成される第1の領域と、前記第1の領域に形成された配線が接続するパッドを備え前記第1の領域よりも配線幅が小さい第2の領域とを有し、
前記絶縁層は、
平面視で前記第2の領域と重なる範囲のみに導体を用いて形成され、前記絶縁性樹脂によって挟まれる導体部を有する
ことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記絶縁層の前記配線層が形成される面とは反対側の面を被覆し、平面視で前記第1の領域及び前記第2の領域と重なる範囲に形成される導体層
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
前記導体部は、
前記第2の領域のうち前記パッドを含む領域を除く領域と重なる範囲のみに形成される
ことを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項4】
前記導体部は、
前記パッドに対応する位置に貫通孔を有する
ことを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項5】
前記導体部は、
接地電源に接続される
ことを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項6】
前記配線層を被覆する他の絶縁層と、
前記他の絶縁層に積層される他の導体層と
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば半導体チップ等を搭載する配線基板には、半導体チップ等を接合するためのパッドが形成される。すなわち、例えばフリップチップ接続によって半導体チップを実装する場合、配線基板に形成された複数のパッド上にそれぞれバンプが形成され、バンプに半導体チップの複数の端子が接合される。
【0003】
配線基板のパッドは、半導体チップの端子の位置に合わせて密に形成されるため、パッド付近のファンアウト(Fan Out)エリアにおいては、パッドから引き出される配線を形成可能な領域が限られている。そこで、ファンアウトエリアにおいては、インピーダンスが最適化された配線幅を採用するグローバルエリアに比べて、配線幅を小さくすることがある。配線幅を小さくすることにより、ファンアウトエリアにおいても配線間及び配線とパッド間の距離を確保し、クロストークを低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した配線基板においては、インピーダンスのミスマッチングが発生することがあるという問題がある。具体的には、ファンアウトエリアにおいて配線幅を小さくすると、ファンアウトエリアにおける配線のインピーダンスが上昇する。一方、パッドから離れたグローバルエリアにおいては、配線幅を比較的自由に設定することが可能であるため、インピーダンスを最適化する配線幅で配線が形成される。
【0006】
この結果、ファンアウトエリアとグローバルエリアの境界では、配線幅が変化することとなり、インピーダンスのミスマッチングが発生する。このミスマッチングにおけるインピーダンスの差が大きいほど信号の反射が大きくなり、信号の通過特性が悪化する。ここで、通過特性の悪化とは、入力された信号の電圧が出力側で得られず、減衰する状態のことを指す。また、インピーダンスのミスマッチングは、反射ノイズの原因にもなる。
【0007】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、インピーダンスのミスマッチングを低減することができる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願が開示する配線基板は、1つの態様において、絶縁性樹脂を用いて形成される絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成される配線層とを有し、前記配線層は、配線が形成される第1の領域と、前記第1の領域に形成された配線が接続するパッドを備え前記第1の領域よりも配線幅が小さい第2の領域とを有し、前記絶縁層は、平面視で前記第2の領域と重なる範囲のみに導体を用いて形成され、前記絶縁性樹脂によって挟まれる導体部を有する。
【発明の効果】
【0009】
本願が開示する配線基板の1つの態様によれば、インピーダンスのミスマッチングを低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る配線基板の構成を示す部分平面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係るプレーン層の位置を説明する図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る配線基板の構成を示す断面図である。
【
図4】
図4は、プレーン層形成工程の具体例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2絶縁層形成工程の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、配線層形成工程の具体例を示す図である。
【
図8】
図8は、シミュレーション結果を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2に係るプレーン層の位置を説明する図である。
【
図10】
図10は、実施の形態2に係る配線基板の構成を示す断面図である。
【
図13】
図13は、配線基板の他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願が開示する配線基板の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る配線基板100の構成を示す部分平面図である。配線基板100は、例えば半導体チップなどの電子部品を搭載可能な配線基板であり、
図1は、半導体チップを搭載する領域付近の部分平面図である。
図1に示す配線基板100は、ファンアウトエリア110及びグローバルエリア120を有する。
【0013】
ファンアウトエリア110は、半導体チップを実装するためのパッド101を有する領域である。ファンアウトエリア110においては、半導体チップの端子の位置に合わせて複数のパッド101が形成されており、それぞれのパッド101から配線102が引き出されている。配線102がパッド101間にも形成されるため、ファンアウトエリア110においては、配線102の配線幅が小さくなっている。具体的には、ファンアウトエリア110においては、例えばL/S=9/12μm程度とすることができる。ファンアウトエリア110の配線102の配線幅は、例えば5~20μmの範囲で変更されても良く、ファンアウトエリア110の配線102の配線間隔は、例えば5~20μmの範囲で変更されても良い。
【0014】
グローバルエリア120は、パッド101から離れており、比較的自由に配線102を引き回すことが可能な領域である。このため、グローバルエリア120においては、配線102の配線幅が調整されてインピーダンスが最適化されており、例えばファンアウトエリア110よりも配線102の配線幅が大きくなっている。具体的には、グローバルエリア120においては、例えばL/S=25/25μm程度とすることができる。グローバルエリア120の配線102の配線幅は、例えば20~40μmの範囲で変更されても良く、グローバルエリア120の配線102の配線間隔は、例えば20~40μmの範囲で変更されても良い。したがって、ファンアウトエリア110及びグローバルエリア120の境界において、配線102の配線幅が変化している。
【0015】
また、ファンアウトエリア110及びグローバルエリア120には、図示しない接地電源に接続されたグランドパターン103が形成されている。パッド101、配線102及びグランドパターン103は、いずれも例えば銅又は銅合金などの導体を用いて形成されており、厚さを例えば10~20μm程度とすることができる。
【0016】
本実施の形態に係る配線基板100では、ファンアウトエリア110の配線102の領域の内層に導体からなるプレーン層が形成されており、ファンアウトエリア110の配線102のインピーダンスが低下している。このため、ファンアウトエリア110及びグローバルエリア120の境界において配線102の配線幅が変化していても、この境界におけるインピーダンスのミスマッチングが低減される。
【0017】
図2は、配線基板100のファンアウトエリア110付近を拡大して示す平面図である。
図2に示すように、ファンアウトエリア110は、パッド101が形成されるパッド領域111と、パッド101から引き出された配線102の配線幅が小さい細線領域112とを有する。そして、
図2中破線で囲まれた細線領域112の内層には、導体からなるプレーン層が形成されている。細線領域112の配線102とプレーン層とが対向することにより容量成分が発生し、配線102のインピーダンスが低下する。結果として、ファンアウトエリア110及びグローバルエリア120の境界におけるインピーダンスのミスマッチングを低減することができる。
【0018】
図3は、実施の形態1に係る配線基板100の構成を示す断面図である。すなわち、
図3(a)は、
図2のI-I線断面を示し、
図3(b)は、
図2のII-II線断面を示す。
図3に示すように、本実施の形態に係る配線基板100は、マイクロストリップラインを有する。
【0019】
図3(a)に示すように、ファンアウトエリア110の細線領域112においては、導体層205を被覆する第1絶縁層210が形成され、第1絶縁層210の上面にプレーン層215が形成されている。そして、プレーン層215を被覆する第2絶縁層220が形成され、第2絶縁層220の上面に配線幅が小さい配線102aが形成されている。
【0020】
導体層205は、例えば銅又は銅合金などの導体を用いて形成され、図示しない接地電源に接続されたグランドパターンである。導体層205の厚さは、例えば10~20μm程度とすることができる。
【0021】
第1絶縁層210は、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成され、導体層205に積層される。第1絶縁層210の厚さは、例えば5~15μm程度とすることができる。
【0022】
プレーン層215は、第1絶縁層210の上面を被覆するように例えば銅又は銅合金などの導体を用いて形成され、図示しない接地電源に接続されたグランドパターンである。プレーン層215は、平面視でファンアウトエリア110の細線領域112と重なる範囲のみに形成され、細線領域112の配線102aとの間で容量成分を発生させる。これにより、配線102aのインピーダンスが低下する。プレーン層215の厚さは、例えば5~20μm程度とすることができる。
【0023】
プレーン層215と配線102aの間で発生する容量成分の大きさは、プレーン層215と配線102aの間の距離、配線102aの表面積及び第2絶縁層220の誘電率に応じて決まる。このため、第2絶縁層220の厚さを調整することにより、プレーン層215と配線102aの間に所望の容量成分を発生させ、配線102aのインピーダンスを低下させることができる。具体的には、第2絶縁層220の厚さを薄くしてプレーン層215と配線102aの間の距離を小さくするほど、発生する容量成分が大きくなり、配線102aのインピーダンスが低下する。
【0024】
第2絶縁層220は、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成され、プレーン層215に積層される。第2絶縁層220の厚さは、例えば5~10μm程度とすることができ、プレーン層215と配線102aの間の所望の容量成分に応じて調整される。
【0025】
第2絶縁層220の上面には、配線幅が小さい配線102aを含む配線層が形成される。細線領域112の配線層には、配線102aの他にグランドパターン103が形成されても良い。
【0026】
一方、
図3(b)に示すように、グローバルエリア120においては、導体層205を第1絶縁層210及び第2絶縁層220が一体になって被覆し、第2絶縁層220の上面に配線幅が大きい配線102bが形成されている。すなわち、グローバルエリア120においては、プレーン層215が形成されておらず、配線102bと導体層205の間に第1絶縁層210及び第2絶縁層220からなる絶縁層が配置されたマイクロストリップラインが形成される。
【0027】
このように、ファンアウトエリア110の細線領域112にはプレーン層215が形成される一方、グローバルエリア120にはプレーン層215が形成されない。つまり、プレーン層215は、平面視で細線領域112と重なる範囲のみに形成され、第1絶縁層210及び第2絶縁層220の絶縁性樹脂によって挟まれている。このため、プレーン層215と細線領域112の配線幅が小さい配線102aとの間で容量成分が発生し、配線102aのみのインピーダンスが低下する。結果として、配線幅が小さい配線102aと配線幅が大きい配線102bとのインピーダンスのミスマッチングを低減することができる。
【0028】
次に、上記のように構成される配線基板100の製造方法について説明する。
【0029】
まず、導体層205に積層された第1絶縁層210の上面に例えば銅箔が形成される。銅箔の厚さは、例えば5~20μm程度とすることができる。そして、不要な領域の銅箔が例えばエッチングにより除去されることにより、
図4に示すように、プレーン層215が形成される。すなわち、ファンアウトエリア110のパッド領域111及びグローバルエリア120に対応する領域の銅箔が除去されることにより、ファンアウトエリア110の細線領域112のみの銅箔が残存し、プレーン層215が形成される。
【0030】
プレーン層215が形成されると、第1絶縁層210及びプレーン層215に第2絶縁層220が積層される。すなわち、例えば
図5に示すように、ファンアウトエリア110の細線領域112においては、プレーン層215に第2絶縁層220が積層され、ファンアウトエリア110のパッド領域111及びグローバルエリア120においては、第1絶縁層210に第2絶縁層220が積層される。
【0031】
第2絶縁層220は、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学機械研磨)又はブラストによって研磨され、配線幅が小さい配線102aのインピーダンスを所望の値に低下させるための厚さに加工される。すなわち、例えば
図6に示すように、第2絶縁層220の上面が研磨されることにより、プレーン層215と第2絶縁層220の上面との距離が調整される。この研磨により、第2絶縁層220の厚さは、例えば5~10μm程度となる。
【0032】
そして、第2絶縁層220の上面に配線層が形成される。具体的には、パッド101、配線102及びグランドパターン103を有する配線層が第2絶縁層220の上面に形成される。配線層は、めっきを用いるセミアディティブ法で形成されても良いし、エッチングを用いるサブトラクティブ法で形成されても良い。このとき、例えば
図7に示すように、ファンアウトエリア110においては、配線幅が小さい配線102aが形成される。一方、グローバルエリア120においては、配線幅が大きい配線102bが形成される。ファンアウトエリア110の配線102aの配線幅は、例えば10~20μm程度とすることができ、グローバルエリア120の配線102bの配線幅は、例えば20~40μm程度とすることができる。
【0033】
以上の工程により、ファンアウトエリア110の細線領域112のみにプレーン層215を有する配線基板100を製造することができる。
【0034】
上記のように構成された配線基板100の配線102におけるインピーダンスのシミュレーション結果を
図8に示す。配線102は、
図8(a)に示すマイクロストリップラインを形成する。
図8(a)、(b)に示すように、ファンアウトエリア110の配線102aの配線幅wを13μmとし、グローバルエリア120の配線102bの配線幅wを40μmとする。また、グローバルエリア120においては、配線102bから導体層205までの距離(すなわち、第1絶縁層210及び第2絶縁層220の厚さの合計)hが20μmであり、ファンアウトエリア110においては、配線102aからプレーン層215までの距離(すなわち、第2絶縁層220の厚さ)hが7μmであるものとする。配線102a、102bの厚さtは、いずれも15μmである。
【0035】
このような場合、グローバルエリア120における配線102bのインピーダンスは、50Ω付近に最適化されている。そして、ファンアウトエリア110においては、プレーン層215が無い場合には配線102aのインピーダンスが約81Ωになるところ、プレーン層215が形成されることにより、配線102aのインピーダンスが約52Ωに低下する。つまり、プレーン層215が形成されることにより、グローバルエリア120とファンアウトエリア110の境界におけるインピーダンスのミスマッチングを低減することができる。
【0036】
以上のように、本実施の形態によれば、ファンアウトエリアの細線領域の内層にプレーン層を形成するため、細線領域の配線とプレーン層の間に容量成分が発生し、配線のインピーダンスが低下する。結果として、配線幅が大きいグローバルエリアの配線と配線幅が小さいファンアウトエリアの配線とのインピーダンスのミスマッチングを低減することができる。
【0037】
(実施の形態2)
実施の形態2の特徴は、ファンアウトエリア全体に広がるプレーン層であって、パッドには重ならないプレーン層を設ける点である。
【0038】
実施の形態2に係る配線基板100の平面図は、実施の形態1(
図1)と同様であるため、その説明を省略する。
【0039】
図9は、実施の形態2に係る配線基板100のファンアウトエリア110付近を拡大して示す平面図である。
図9に示すように、ファンアウトエリア110は、パッド101が形成されるパッド領域111と、パッド101から引き出された配線102の配線幅が小さい細線領域112とを有する。そして、
図9中破線で囲まれたファンアウトエリア110の内層には、導体からなるプレーン層215が形成されている。このプレーン層215は、平面視でパッド101と重なる位置に貫通孔を有し、パッド領域111及び細線領域112の配線102のみと対向する。ファンアウトエリア110の配線102とプレーン層215とが対向することにより容量成分が発生し、配線102のインピーダンスが低下する。結果として、ファンアウトエリア110及びグローバルエリア120の境界におけるインピーダンスのミスマッチングを低減することができる。
【0040】
図10は、実施の形態2に係る配線基板100の構成を示す断面図である。すなわち、
図10は、
図9のIII-III線断面を示す断面図である。
【0041】
図10に示すように、ファンアウトエリア110のパッド領域111においては、導体層205を被覆する第1絶縁層210が形成され、第1絶縁層210の上面にプレーン層215が形成されている。そして、プレーン層215を被覆する第2絶縁層220が形成され、第2絶縁層220の上面に配線幅が小さい配線102aが形成されている。
【0042】
本実施の形態に係るプレーン層215は、配線幅が小さい配線102aに対向する領域のみにおいて第1絶縁層210の上面を被覆し、パッド101と重なる領域には貫通孔215aが形成された形状を有する。このため、パッド101には容量成分が発生せずに、パッド領域111においても配線102aのみのインピーダンスを低下させることができる。結果として、ファンアウトエリア110全体の配線102aのインピーダンスを低下させることができ、配線幅が大きいグローバルエリア120の配線102bとのインピーダンスのミスマッチングを低減することができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態によれば、ファンアウトエリアの内層に配線と対向するプレーン層を形成するため、ファンアウトエリアの配線とプレーン層の間に容量成分が発生し、配線のインピーダンスが低下する。結果として、配線幅が大きいグローバルエリアの配線と配線幅が小さいファンアウトエリアの配線とのインピーダンスのミスマッチングを低減することができる。
【0044】
なお、上記実施の形態1、2においては、配線基板100がマイクロストリップラインを有するものとしたが、配線基板100がストリップラインを有する場合にも、プレーン層215を設けることでインピーダンスのミスマッチングを低減することができる。
【0045】
図11は、配線基板100の変形例を示す断面図である。すなわち、
図11(a)は、ファンアウトエリア110の細線領域112の断面を示し、
図11(b)は、グローバルエリア120の断面を示す。
図11に示すように、この配線基板100は、ストリップラインを有する。
【0046】
図11(a)に示すように、ファンアウトエリア110の細線領域112においては、
図3(a)に示した導体層205、第1絶縁層210、プレーン層215、第2絶縁層220及び配線102aの上層に、第3絶縁層310及び導体層315が形成されている。
【0047】
第3絶縁層310は、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成され、配線102aを有する配線層に積層される。第3絶縁層310の厚さは、例えば20~40μm程度とすることができる。
【0048】
導体層315は、第3絶縁層310の上面を被覆するように例えば銅又は銅合金などの導体を用いて形成され、図示しない接地電源に接続されたグランドパターンである。導体層315の厚さは、例えば10~20μm程度とすることができる。
【0049】
一方、
図11(b)に示すように、グローバルエリア120においては、導体層205を第1絶縁層210及び第2絶縁層220が一体になって被覆し、第2絶縁層220の上面に配線幅が大きい配線102bが形成されている。そして、配線102bの上層に、第3絶縁層310及び導体層315が形成されている。すなわち、グローバルエリア120においては、プレーン層215が形成されておらず、配線102bが第1絶縁層210及び第2絶縁層220からなる絶縁層と第3絶縁層310とに挟まれ、これらの絶縁層に導体層205及び導体層315が積層されたストリップラインが形成される。
【0050】
このように配線基板100がストリップラインを有する場合でも、ファンアウトエリア110の細線領域112のみにプレーン層215が形成されることにより、配線102aのみのインピーダンスが低下し、配線102bとのインピーダンスのミスマッチングを低減することができる。
【0051】
上記のように構成された配線基板100の配線102におけるインピーダンスのシミュレーション結果を
図12に示す。配線102は、
図12(a)に示すストリップラインを形成する。
図12(a)、(b)に示すように、ファンアウトエリア110の配線102aの配線幅wを14μmとし、グローバルエリア120の配線102bの配線幅wを28μmとする。また、グローバルエリア120においては、配線102bから導体層205までの距離(すなわち、第1絶縁層210及び第2絶縁層220の厚さの合計)h1が33μmであり、ファンアウトエリア110においては、配線102aからプレーン層215までの距離(すなわち、第2絶縁層220の厚さ)h1が14μmであるものとする。配線102a、102bの厚さtは、いずれも15μmであり、第3絶縁層310の厚さh2は33μmである。
【0052】
このような場合、グローバルエリア120における配線102bのインピーダンスは、50Ω付近に最適化されている。そして、ファンアウトエリア110においては、プレーン層215が無い場合には配線102aのインピーダンスが約64Ωになるところ、プレーン層215が形成されることにより、配線102aのインピーダンスが約51Ωに低下する。つまり、プレーン層215が形成されることにより、グローバルエリア120とファンアウトエリア110の境界におけるインピーダンスのミスマッチングを低減することができる。
【0053】
また、配線基板100がストリップラインを有する場合にも、上記実施の形態2と同様に、ファンアウトエリア全体に広がるとともにパッド101には重ならないプレーン層215を設けることが可能である。
【0054】
具体的に、
図13は、
図9のIII-III線断面の変形例を示す断面図である。
図13において、
図10、11と同じ部分には、同じ符号を付す。
図13に示すように、この配線基板100は、ストリップラインを有する。すなわち、
図13に示すように、ファンアウトエリア110のパッド領域111においては、導体層205、第1絶縁層210、プレーン層215、第2絶縁層220及び配線102aの上層に、第3絶縁層310及び導体層315が形成されている。
【0055】
このプレーン層215は、配線幅が小さい配線102aに対向する領域のみにおいて第1絶縁層210の上面を被覆し、パッド101と重なる領域には貫通孔215aが形成された形状を有する。このため、パッド101には容量成分が発生せずに、パッド領域111においても配線102aのみのインピーダンスを低下させることができる。結果として、ファンアウトエリア110全体の配線102aのインピーダンスを低下させることができ、配線幅が大きいグローバルエリア120の配線102bとのインピーダンスのミスマッチングを低減することができる。
【0056】
なお、上記各実施の形態においては、配線基板100が1層の配線層に配線102を有するものとしたが、配線基板100を多層基板とすることも可能である。すなわち、上記実施の形態1、2に係る配線基板100の導体層205の下層に、1以上の絶縁層及び導体層が積層されるようにしても良い。
【符号の説明】
【0057】
101 パッド
102、102a、102b 配線
103 グランドパターン
110 ファンアウトエリア
111 パッド領域
112 細線領域
120 グローバルエリア
205、315 導体層
210 第1絶縁層
215 プレーン層
215a 貫通孔
220 第2絶縁層
310 第3絶縁層