(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079032
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】成膜装置、膜厚測定方法及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192427
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】緒方 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】安川 英宏
(72)【発明者】
【氏名】千葉 伶太
(72)【発明者】
【氏名】滝田 裕一
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA03
5F131AA12
5F131AA33
5F131BA04
5F131BB04
5F131BB23
5F131CA07
5F131DA02
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB76
5F131DB82
5F131EA03
5F131EA22
5F131EB11
5F131FA33
5F131KA12
5F131KB05
5F131KB42
5F131KB53
(57)【要約】
【課題】膜厚の測定対象となる基板の形状を一定に維持すること
【解決手段】成膜装置は、基板に対して成膜する。測定手段は、基板に形成された膜の厚さを測定する。静電チャックは、測定手段による測定対象の基板を静電気力により吸着する。移動手段は、測定手段の測定対象の基板の搬送中における基板と静電チャックとの接触を回避するように、静電チャックを移動させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して成膜する成膜装置であって、
基板に形成された膜の厚さを測定する測定手段と、
前記測定手段による測定対象の基板を静電気力により吸着する静電チャックと、
前記測定手段の測定対象の基板の搬送中における基板と前記静電チャックとの接触を回避するように、前記静電チャックを移動させる移動手段と、を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記静電チャックが配置されるチャンバと、
前記チャンバへ基板を搬入する搬送手段と、をさらに備え、
前記移動手段は、前記測定が行われる際の第1の位置と、前記搬送手段により基板の搬入が行われる際に基板及び前記搬送手段との接触を回避する際の第2の位置との間で、前記静電チャックを移動させる、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置であって、
基板を支持する基板支持手段をさらに備え、
前記移動手段が前記静電チャックを前記第2の位置から前記第1の位置に移動させることにより、基板支持手段に支持された基板に対して前記静電チャックが押し付けられる、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
請求項3に記載の成膜装置であって、
前記成膜装置は、前記基板支持手段に支持された基板が部分的に前記静電チャックから離間するように、基板を押圧する押圧手段をさらに備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
請求項4に記載の成膜装置であって、
前記押圧手段は、基板の四隅を上方から押圧して基板を変形させる、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記静電チャックを前記測定が行われる際の第1の位置に位置決めする位置決め手段をさらに備え、
前記位置決め手段は、
前記移動手段により前記静電チャックとともに移動する突き当て部と、
前記突き当て部を受ける受け部と、を含む、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記移動手段と前記静電チャックとの間に介在し、前記静電チャックの傾きを調整する調整手段をさらに備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記移動手段は、
前記静電チャックを支持し、前記静電チャックとともに移動可能な可動部と、
前記可動部を移動可能に支持する固定部と、を含み、
前記可動部は、
前記固定部に支持される第1の部材と、
前記静電チャックを支持する第2の部材と、
前記第1の部材及び前記第2の部材を揺動可能に接続する接続手段と、を含む、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記移動手段は、
前記静電チャックを支持し、前記静電チャックとともに移動可能な可動部と、
前記可動部を移動可能に支持する固定部と、を含み、
前記静電チャックは、弾性部材を介して前記可動部に支持される、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
請求項3に記載の成膜装置であって、
前記基板支持手段は、複数の板バネを含む、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の成膜装置であって、
前記静電チャックは、基板の一部の領域を吸着する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の成膜装置であって、
前記測定手段の少なくとも一部が移動可能に設けられる、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の成膜装置であって、
前記測定手段は、基板に形成された膜に光を照射することで膜厚を測定する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項14】
請求項1に記載の成膜装置であって、
基板に対して成膜する成膜室と、
基板に形成された膜を検査する検査室と、をさらに備え、
前記移動手段は、前記検査室に設けられた前記静電チャックを移動させる、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項15】
基板に形成された膜の厚さを測定する測定工程と、
前記測定工程での測定対象の基板の搬送中における、基板と前記測定対象の基板を静電気力により吸着する静電チャックとの接触を回避するように、前記静電チャックを移動させる移動工程と、を含む、
ことを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項16】
基板に成膜を行う成膜工程と、
請求項15に記載の膜厚測定方法により、前記成膜工程において成膜された基板の膜厚を測定する膜厚測定工程と、を含む、
ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、膜厚測定方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)等の製造においては、基板に対して蒸着材料を蒸着させることがある。特許文献1には、検査室において基板に蒸着された膜の膜厚を測定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板に形成された膜の膜厚測定においては、測定対象の基板に生じる撓み等による形状の変化が測定精度に影響を及ぼすことがある。
【0005】
本発明は、膜厚の測定対象となる基板の形状を一定に維持する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
基板に対して成膜する成膜装置であって、
基板に形成された膜の厚さを測定する測定手段と、
前記測定手段による測定対象の基板を静電気力により吸着する静電チャックと、
前記測定手段の測定対象の基板の搬送中における基板と前記静電チャックとの接触を回避するように、前記静電チャックを移動させる移動手段と、を備える、
ことを特徴とする成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、膜厚の測定対象となる基板の形状を一定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る成膜装置の構成の一部を示す模式図。
【
図3】静電チャック及びその周辺の構成を説明するための斜視図。
【
図4】チャック移動部による静電チャックの支持構成の例を示す図。
【
図10】成膜した膜厚ごとの反射率の測定結果の一例を示す図。
【
図11】基板に形成される測定領域と測定ヘッドの位置関係を例示する図。
【
図12】受渡室における基板の搬送及び膜厚測定の動作説明図。
【
図13】受渡室における基板の搬送及び膜厚測定の動作説明図。
【
図16】一実施形態に係る受渡室の構成例を示す模式図。
【
図18】(a)は有機EL表示装置の全体図、(b)は1画素の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
また、各図において、XY方向は水平方向、Z方向は鉛直方向を示す。また、図面の見易さのため、同一の要素が複数示されている場合には参照符号を一部省略することがある。
【0011】
<成膜装置>
図1は、一実施形態に係る成膜装置1の構成を示す模式図である。成膜装置1は、基板100に対して成膜する装置である。成膜装置1は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられるもので、基板100が成膜ブロック301に順次搬送され、基板100に有機ELの成膜が行われる。
【0012】
成膜ブロック301には、平面視で八角形の形状を有する搬送室302の周囲に、基板100に対する成膜処理が行われる複数の成膜室303a~303dと、使用前後のマスクが収納されるマスク格納室305とが配置されている。搬送室302には、基板100を搬送する搬送ロボット302aが配置されている。搬送ロボット302aは、基板100を保持するハンドと、ハンドを水平方向に移動する多関節アームとを含む。換言すれば、成膜ブロック301は、搬送ロボット302aの周囲を取り囲むように複数の成膜室303a~303dが配置されたクラスタ型の成膜ユニットである。なお、以下の説明において、成膜室303a~303dを特に区別しない場合、成膜室303と称することがある。
【0013】
基板100の搬送方向(矢印方向)で、成膜ブロック301の上流側、下流側には、それぞれ、バッファ室306、旋回室307、受渡室308が配置されている。製造過程において、各室は真空状態に維持される。なお、
図1においては成膜ブロック301を1つしか図示していないが、本実施形態に係る成膜装置1は複数の成膜ブロック301を有しており、複数の成膜ブロック301が、バッファ室306、旋回室307及び受渡室308で構成される連結装置で連結された構成を有する。なお、連結装置の構成はこれに限定はされず、例えばバッファ室306又は受渡室308のみで構成されていてもよい。
【0014】
搬送ロボット302aは、上流側の受渡室308から搬送室302への基板100の搬入、成膜室303間での基板100の搬送、マスク格納室305と成膜室303との間でのマスクの搬送、及び、搬送室302から下流側のバッファ室306への基板100の搬出を行う。
【0015】
バッファ室306は、成膜装置1の稼働状況に応じて基板100を一時的に格納するための室である。バッファ室306には、複数枚の基板100を基板100の被処理面(被成膜面)が重力方向下方を向く水平状態を保ったまま収納可能な多段構造の基板収納棚(カセットとも呼ばれる)と、基板100を搬入又は搬出する段を搬送位置に合わせるために基板収納棚を昇降させる昇降機構とが設けられる。これにより、バッファ室306には複数の基板100を一時的に収容し、滞留させることができる。
【0016】
旋回室307は、基板100の向きを変更する装置を備えている。本実施形態では、旋回室307は、旋回室307に設けられた搬送ロボット307aによって基板100の向きを180度回転させる。旋回室307に設けられた搬送ロボット307aは、バッファ室306で受け取った基板100を支持した状態で180度旋回し受渡室308に引き渡すことで、バッファ室306内と受渡室308とで基板100の搬送方向(矢印方向)における前端と後端が入れ替わる。これにより、成膜室303に基板100を搬入する際の向きが、各成膜ブロック301で同じ向きになるため、基板100に対する成膜のスキャン方向やマスクの向きを各成膜ブロック301において一致させることができる。このような構成とすることで、各成膜ブロック301においてマスク格納室305にマスクを設置する向きを揃えることができ、マスクの管理が簡易化されユーザビリティを高めることができる。
【0017】
受渡室308は、旋回室307の搬送ロボット307aにより搬入された基板100を下流の成膜ブロック301の搬送ロボット302aに受け渡すための室である。本実施形態では、後述するように、受渡室308において基板100に成膜された膜の膜厚測定を行う。すなわち、受渡室308は、基板100に形成された膜を検査する検査室であるといえる。
【0018】
成膜装置1の制御系は、ホストコンピュータとしてライン全体を制御する上位装置300と、各構成要素を制御する制御装置309、310、311、313a~313dとを含み、これらは有線又は無線の通信回線300aを介して通信可能である。制御装置313a~313dは、成膜室303a~303dに対応して設けられ、後述する成膜装置1を制御する。制御装置309は、搬送ロボット302aを制御する。制御装置310は旋回室307に設けられた搬送ロボットを制御する。制御装置311は、受渡室308においてアライメントや膜厚測定を行う機器を制御する。上位装置300は、基板100に関する情報や搬送タイミング等の指示を各制御装置309、310、311、313a~313dに送信し、各制御装置309、310、311、313a~313dは受信した指示に基づき各構成要素を制御する。
【0019】
<受渡室>
図2は、受渡室308の構成要素を説明するための模式図であり、基板100の膜厚測定に関係する要素を中心に示している。なお、
図2では、後の説明に必要な構成要素が強調して示されているため、構成要素の配置や大きさ等が他の図面と一致しない場合がある。受渡室308は、チャンバ10と、静電チャック11と、チャック移動部12と、吸着補助部13と、位置決め部14と、基板支持部15と、測定部29と、ガイド部16と、規制部17と、を含む。
【0020】
チャンバ10は、箱型の形状を有し、内部空間101を形成する。チャンバ10の内部空間101は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。本実施形態では、チャンバ10は不図示の真空ポンプに接続されている。なお、本明細書において「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた状態、換言すれば減圧状態をいう。
【0021】
本実施形態では、旋回室307の搬送ロボット307aにより、不図示の搬入口を介して基板100がチャンバ10に搬入される。また、下流側の搬送室302の搬送ロボット302aにより、不図示の搬出口を介して基板100がチャンバ10から搬出される。
【0022】
図2及び
図3を参照する。
図3は、静電チャック11及びその周辺の構成を説明するための斜視図である。
静電チャック11は、測定部29による測定対象の基板100を静電気力により吸着する。静電チャック11は、枠体111と、電極配置部112とを含む。枠体111は、静電チャック11の外形を形成する枠状の部材である。例えば、枠体111は、静電チャック11による吸着対象の基板100と同等以上のサイズの枠を形成する。枠体111の側面には、後述する移動部13及び位置決め部14の構成部品が設けられている。電極配置部112には、静電気力を発生させる電極が配置される。すなわち、電極配置部112は、基板100に対する吸着力が生じる吸着領域を形成している。本実施形態では、電極配置部112は、静電チャック11が基板100の一部を吸着するように設けられている。ただし、静電チャック11が基板100の前面を吸着するように電極配置部112が設けられてもよい。
【0023】
また、本実施形態では、電極配置部112には、基板100を吸着した際に基板100の膜厚の測定位置(成膜エリア1001、
図11参照)と重なる位置に開口1121が形成されている。後述するように基板100の膜厚を光学的に測定する場合、電極と基板100の測定位置が重なっていると測定精度に影響を及ぼすことがある。そのため、本実施形態では、電極配置部112に開口1121を形成することで、膜厚の測定精度への電極配置部112の影響を抑制している。このように、本実施形態では、基板100の膜厚の測定位置を囲む領域が、静電チャック11により吸着される。
【0024】
チャック移動部12は、静電チャック11を移動させる。本実施形態では、チャック移動部12は、静電チャック11を鉛直方向に昇降させる。チャック移動部12は、可動部121と、固定部122と、駆動部123と、を含む。
【0025】
可動部121は、静電チャック11を支持し、静電チャック11とともに移動可能に設けられる。可動部121は、固定部側部材1211と、チャック側部材1212と、接続部1213と、弾性部材1214と、を含む。
【0026】
図2~
図4を参照する。
図4は、チャック移動部12による静電チャック11の支持構成の例を示す断面図である。固定部側部材1211は、固定部122に対して移動可能に支持される。チャック側部材1212は、静電チャック11の枠体111の側面に接続し、静電チャック11を支持する。接続部1213は、固定部側部材1211及びチャック側部材1212を揺動可能に接続する。本実施形態では、接続部1213は、球面ベアリングにより固定部側部材1211及びチャック側部材1212を揺動可能に接続する。弾性部材1214は、静電チャック11とチャック側部材1212の間に介在する。本実施形態では、弾性部材1214はばねである。弾性部材1214の下端はチャック側部材1212に接続し、弾性部材1214の上端は静電チャック11の側面に設けられる被支持部材113に接続する。
【0027】
固定部122は、チャンバ10の上壁102に固定される。駆動部123は、可動部121を移動させるための駆動力を発生させる駆動源と、駆動源の駆動力を並進運動に変換する機構を含む。例えば、電動モータの回転駆動力がボールねじ機構により並進運動に変換されて可動部121に伝達されることで、可動部121が移動する。
【0028】
図2、
図3、及び
図5を参照する。
図5は、吸着補助部13の構成例を示す図であり、静電チャック11の付近の構成を示している。
【0029】
吸着補助部13は、静電チャック11による基板100の吸着を補助する。例えば、吸着補助部13は、基板100を押圧する軸状の押圧部131と、押圧部131を昇降させる昇降部132とを含む。押圧部131は、上下方向に延び、昇降部132により昇降する軸部材1311と、軸部材1311の下側の端部に接続する先端部1312とを含む。先端部1312は、基板100に当接する当接部1313と、当接部1313に接続する軸部材1314と、押圧部131による押し付け圧力を調整する調整ばね1315と、跳ね上げばね1316とを含む。また、昇降部132には、電動モータ及びボールねじ機構等の公知の技術を適宜採用可能である。
【0030】
本実施形態では、吸着補助部13は、基板支持部14に支持された基板100が部分的に静電チャック11から離間するように、基板100を押圧する。具体的には、押圧部131は、静電チャック11の枠体111に形成された貫通孔1112を介して、基板100を上方から押圧する。また、本実施形態では、吸着補助部13は、四つの押圧部131により基板100の四隅を上方から押圧して基板100を変形させる。ただし、押圧部131の数は変更可能である。例えば、二つの押圧部131が、基板100の測定位置に近接する短辺の両側の隅部をそれぞれ押圧するように構成されてもよい。
【0031】
図6は、位置決め部14の構成を説明するための斜視図である。
位置決め部14は、静電チャック11の位置決めを行うためのものである。詳細には、位置決め部14は、静電チャック11を、測定部29による測定が行われる際の位置に位置決めする。位置決め部14は、突き当て部141と受け部142とを含む。
【0032】
突き当て部141は、静電チャック11の枠体111の側面に設けられる。すなわち、突き当て部141は、チャック移動部12により静電チャック11とともに移動する。本実施形態では、突き当て部141は、受け部142に突き当たる部分が球形状となるように形成されている。
【0033】
受け部142は、突き当て部141に対応した位置に設けられ、突き当て部141を受けるものである。ここでは、受け部142として、上方に開口した円錐形状の凹部が示されている。受け部142の凹部に受け部142の球形状の部分がはまることで、静電チャック11の位置が規定される。本実施形態では、静電チャック11の枠体111の側面に六つの突き当て部141が設けられ、六つの受け部142がこれらに対応した位置に設けられる。ただし、突き当て部141及び受け部142の数は変更可能である。また、すべての受け部142が図示されているような円錐形状の凹部でなくてもよい。例えば、複数の受け部142には、V字状の溝部及び平面部が含まれていてもよい。また、突き当て部141及び受け部142により、いわゆるキネマティックマウントが形成されてもよい。
【0034】
図7は、基板支持部15及び測定部29の構成例を示す斜視図である。
基板支持部15は、基板100を支持する。詳細には、基板支持部15は、測定部29による膜厚測定が行われる基板100を下方から支持する。基板支持部15は、チャンバ10内において、上下方向で静電チャック11と測定部29との間に位置している。本実施形態では、基板支持部15は、枠体151と、板バネ152とを含む。
【0035】
枠体151は、基板支持部15の外形を形成する。枠体151は、矩形の枠状の形状を有しており、枠体151が形成する枠の内側において基板100が支持される。本実施形態では、枠体151は、複数の部材1511~1514で構成される。枠体151の短辺に部材間の隙間が設けられることで、基板100が搬送ロボット302a、307aにより搬送される際に、枠体151と搬送ロボット302a、307aとの接触を回避することができる。
【0036】
板バネ152は、基板支持部15において基板100を直接的に支持する部分である。本実施形態では、複数の板バネ152が、枠体151が形成する枠の内側に延びるように枠体151に支持されている。詳しくは後述するが、基板支持部15が板バネ152により基板100を支持することで、静電チャック11と基板100とが接触する際の荷重を逃がすことができる。
【0037】
図2、
図7~
図9を参照する。
図8は、測定部29の構成例を示す図である。また、
図9は、測定ヘッド2903の構成例を示す図である。
測定部29は、基板100に形成された膜の厚さを測定する。測定部29は、基板支持部15の下方に設けられる。測定部29は、光源2901、真空フランジ2902、測定ヘッド2903測定ヘッド2903、分光器2904、及びPC2905を含む。光源2901、真空フランジ2902、測定ヘッド2903、及び分光器2904間は、光ファイバ2911で接続される。
【0038】
光源2901は、シャッター29011を動作させて光の出力と非出力とを切り替えることができる発光装置である。一例では、光源2901は、1つの出射口からハロゲンと重水素の連続光を出射する重水素(D2)ハロゲン光源29012を備える。別の例では、光源2901はレーザ励起プラズマ(Laser-Driven Light Source)光源を備える。
【0039】
真空フランジ2902は、真空環境と大気環境との接続部に配置される。例えば、光源2901、分光器2904及びPC2905は大気環境に保たれるチャンバ10外に配置され、真空状態におかれうるチャンバ10内には測定ヘッド2903が配置され、測定ヘッド2903と光源2901及び分光器2904とを接続する光ファイバ2911は、真空フランジ2902を介してチャンバ10内外を接続する。別の例では、大気環境に保たれる筐体がチャンバ10内に設けられ、この筐体内に光源2901、分光器2904及びPC2905が配置されてもよい。
【0040】
測定ヘッド2903は、光源2901から出射された光を垂直上方に出射するための投光部と、反射光を受光して分光器2904に送出するための受光部とを有する投受光部29031を含む。また、測定ヘッド2903は、開口29032及び絞り29033を含む。開口29032及び絞り29033により測定ヘッド2903において入射又は出射される光の光量や角度が制限されている。これにより、例えば基板100上の測定領域と異なる部分で反射した光がノイズとして分光器2904に入ってしまうことを抑制することができる。
【0041】
分光器2904は、光の入力口を備え、入力された光を分光して波長帯ごとに光強度を測定する。そして、測定した光の強度に関する情報をPC2905に送信する。
【0042】
PC2905は、分光器2904が測定した光の強度に基づいて、膜厚の測定値を計算する。膜厚の測定値の計算には、公知の技術を用いることができる。例えば、ある波長(nm)における、基板100に形成された膜の厚さと基板100の反射率との関係を予め測定して求めておき、この関係と測定された反射率とから膜厚が計算されてもよい。
【0043】
図10に、成膜した膜厚ごとの反射率の測定結果の一例を示す。
図10に示すように、膜厚40オングストローム(Å)の場合の基板の反射率と比較して、膜厚1600Åの場合には、波長280、330~420nm周辺の反射率が大きくなっている。このため、この波長帯の反射率を測定することで、膜厚を推定することができる。また、反射率の測定結果に基づく膜厚の推定には、複数の周波数帯において測定した反射率に基づいて膜厚を推定してもよい。例えば、波長が280nmと330nmとにおける反射率の測定結果に基づく膜厚の推定結果がそれぞれ400Åと600Åである場合、膜厚の推定結果の平均を取り、膜厚は500Åであるものとしてもよい。一実施形態において、測定部29は、100~1000Å程度の薄膜が測定可能であってもよい。
【0044】
再び
図7を参照する。測定部29は、測定ヘッド2903を移動させるための要素として、ベース部2907、ガイドレール2908及び駆動部2909(
図14参照)を有するヘッド移動部2910を含む。ベース部2907は、測定ヘッド2903を支持する部材である。ガイドレール2908は、ベース部2907を案内する部材である。駆動部2909はベース部2907を移動させるための駆動力を発生させる。駆動部2909には、電動モータ及びボールねじ機構等の公知の技術を用いることができる。ベース部2907がガイドレール2908に沿って移動することで、これに支持された測定ヘッド2903が移動する。本実施形態では、測定ヘッド2903が基板支持部15に支持された基板100の短辺方向に移動可能に構成されている。これにより、測定部29は、基板100の短辺方向に離間して設けられた複数の測定位置において膜厚測定を行うことができる。
【0045】
ガイド部16は、光ファイバ2911をガイドする。ガイド部16は、ヘッド移動部2910による測定ヘッド2903の移動に追従する複数のアーム161、162(アーム部)と、複数の回動軸部材163~165を含む。アーム161は、一端が回動軸部材163によってチャンバ10の床面等に回動可能に支持され、他端が回動軸部材164によってアーム162に接続する。すなわち、アーム161は、一端が固定端、他端が自由端のリンクを形成する。また、アーム162は、一端が回動軸部材164によってアーム161に接続し、他端が回動軸部材165によってベース部2907に回動可能に支持される。すなわち、アーム161は、両端が自由端のリンクを形成する。
【0046】
規制部17は、アーム161、162に設けられ、アーム161、162に対する光ファイバ2911の相対的な移動を規制する。本実施形態では、規制部17は、アーム161、162にそれぞれ設けられるクリップ等の固定具171、172を含む。
【0047】
ガイド部16及び規制部17により、光ファイバ2911は測定ヘッド2903からアーム162、アーム161に沿って延び、アーム161の固定端側から真空フランジ2902へと延びる。ここで、測定ヘッド2903が移動可能に構成される場合、移動に伴い光ファイバ2911の曲げの姿勢が変わってしまうことが考えられる。そのような場合、光ファイバ2911の素線折れ、透過率の低下、又は真空リーク等が発生する恐れがある。また、測定の度に光ファイバ2911から染み出す光量が異なってしまい、測定精度の低下の恐れもある。本実施形態では、ガイド部16及び規制部17により、光ファイバ2911がアーム161、162に沿って配線されるので、光ファイバ2911の折れの発生を抑制することができる。また、測定ヘッド2903の各位置において、光ファイバ2911の姿勢を再現することができ、測定精度の低下も抑制することができる。
【0048】
図11は、基板100に形成される測定領域と測定ヘッド2903の位置関係を例示する図である。基板上には、測定部29によって測定が行われる箇所ごとに測定用の成膜エリア1001a~1001c(以下、区別せず成膜エリア1001と呼ぶ場合がある)が配置される。
図11では、基板100の三箇所で測定を行うために三つの成膜エリア1001a~1001cが配置されるものとして図示されているが、膜厚の測定を行うための成膜エリアは、測定箇所の数に対応して決められてよいし、複数の箇所の膜厚の測定のために1つの成膜エリアが配置されてもよい。例えば、成膜エリア1001a~1001cを含む一つの細長い成膜エリアが配置されてもよい。
【0049】
一例では、成膜エリア1001は、実際に基板100上に電子デバイスが製造される領域とは異なる領域に配置される。例えば、異なる電子デバイスが製造される複数種類の基板で共通の位置を測定することができるよう、成膜エリアは基板100の端部付近に配置される。
【0050】
<動作説明>
図12~
図13は、受渡室308における基板100の搬送及び膜厚測定の動作説明図である。
【0051】
状態ST101は、受渡室308に基板100が搬入される前の状態である。状態ST101では、静電チャック11は膜厚測定時の位置POS12(状態ST104参照)から上方に退避した退避位置である位置POS11に位置している。すなわち、状態ST内部空間101は、チャック移動部12が、搬送中の、測定部29による測定対象の基板100との接触を回避するように、静電チャック11を移動させた状態である。また、測定ヘッド2903は膜厚測定時の位置POS22(状態ST105参照)からY方向外側に退避した退避位置である位置POS21に位置している。静電チャック11の位置POS11及び測定ヘッド2903の位置POS22は、例えば、基板搬送時の搬送ロボット307a及び基板100の通過領域と重ならない位置であってもよい。
【0052】
状態ST102は、旋回室307の搬送ロボット307aが基板100をチャンバ10内に搬入している状態である。また、状態ST103は、搬送ロボット307aが基板100を基板支持部15に載置し、退避した後の状態である。この状態では、基板100は自重により撓みが生じている。
【0053】
状態ST104は、静電チャック11により基板支持部15に支持されている基板100を吸着した状態である。静電チャック11は、チャック移動部12により膜厚測定時の位置POS12へと下降する。このチャック移動部12による移動により、基板支持部15に支持された基板100に対して静電チャック11が押し付けられる。そして、静電チャック11は、基板100が静電チャック11に押し付けられた状態で、静電気力により基板100を吸着する。これにより、静電チャック11の電極配置部112が設けられる吸着領域と基板100とが隙間なく接触し、基板100の自重による撓みが解消される。なお、詳しくは
図15において説明するが、静電チャック11による基板100の吸着は、吸着補助部13が基板100の隅部を押圧した状態で行われる。
【0054】
状態ST105は、測定部29が膜厚測定を行っている状態である。測定ヘッド2903が位置POS21から膜厚測定時の位置POS22へと移動している。なお、基板100に複数の測定用の成膜エリア1000が設けられている場合には、測定ヘッド2903は各成膜エリア1000の下方に順次移動して測定を行う。
【0055】
膜厚測定の終了後は、状態ST101~状態ST103の流れと逆の流れにより、チャンバ10から基板100が搬出される。すなわち、静電チャック11は基板100の吸着を終了して位置POS11へと退避し、測定ヘッド2903は位置POS21へと退避する(状態ST103)。その後、受渡室308の下流側にある搬送室302に設けられた搬送ロボット302aにより基板100がチャンバ10から搬出される(状態ST102→状態ST101)。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、静電チャック11は、基板100の膜厚測定時には位置POS12において基板100を吸着する。これにより、膜厚測定において基板100の撓み等の変形を解消できる。すなわち、測定対象の基板100の形状を、静電チャック11の基板吸着面に沿った形状で一定に維持することができる。したがって、膜厚測定において基板100の変形等の影響を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、静電チャック11は、基板100の搬送時には、膜厚測定時の位置POS12から退避位置である位置POS11に退避する。これにより、基板100の搬送時に基板100及び搬送ロボット307aとの接触を回避することができる。また、静電チャック11の移動により静電チャック11と基板100及び搬送ロボット307aとの接触を回避するので、装置が大型化してしまうことを抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、測定ヘッド2903は、搬送ロボット307aにより基板100が膜厚測定時の基板位置へ搬送される場合に、基板100及び搬送ロボット307aとの接触を回避する際の位置POS21に位置するように移動する。これにより、測定ヘッド2903と基板100及び搬送ロボット307aとの接触を回避する。また、測定ヘッド2903が測定時の位置POS22から退避可能に構成されることで、測定ヘッド2903と膜厚測定時の基板100との距離に関して搬送ロボット307aの通過領域を考慮しなくてもよくなる。よって、装置が大型化してしまうことを抑制することができる。
【0059】
図14は、ガイド部16の動作説明図である。状態ST201は測定ヘッド2903が位置POS21にある状態であり、状態ST202は測定ヘッド2903が位置POS22にある状態である。測定ヘッド2903が移動するとアーム161、162がこれに追従する。アーム161、162には規制部17の固定具171、172がそれぞれ設けられているため、測定ヘッド2903が往復移動を繰り替えいした場合でも各位置において光ファイバ2911の姿勢が再現される。したがって、測定の度に光ファイバ2911の姿勢が異なることにより測定の度に光ファイバ2911から染み出す光量が異なり、測定精度が低下してしまうことを抑制することができる。また、光ファイバ2911がガイド部16によりガイドされるので、測定ヘッド2903が移動しても光ファイバ2911が過度に曲げられてしまうことを抑制することができる。
【0060】
図15は、吸着補助部13の動作説明図である。状態ST301は吸着補助部13により基板100を押圧していない状態であり、状態ST搬送室302は吸着補助部13により基板100を押圧している状態である。なお、本図では説明のために基板100の変形を強調して示している。
【0061】
状態ST301では、基板支持部15と基板100との位置関係に起因して、基板100の外側が上方に向かうように基板100が変形している。したがって、静電チャック11をそのまま基板100に接近させると、静電チャック11は基板100の外側から基板100と静電チャック11とが接触していく。
【0062】
一方で、状態ST302では、吸着補助部13により基板100の隅部が押圧されるので、基板100の外側が上方に向かうような基板100の変形が抑えられている。したがって、静電チャック11を基板100に接近させると、基板支持部15の複数の板バネ152の上方辺りから基板100と静電チャック11とが接触していく。これにより、状態ST301と比較して、木静電チャック11による基板吸着時に基板100と静電チャック11との接触面積が増加するので、静電チャック11の基板吸着動作をスムーズに行うことができる。
【0063】
<変形例>
上記実施形態では、測定ヘッド2903の移動に追従して光ファイバ2911も移動していたが、光ファイバが移動しない構成も採用可能である。
図16は、一実施形態に係る受渡室9308の構成例を示す模式図である。以下、上記実施形態と同様の要素については同様の符号を付して説明を省略する。
【0064】
測定部29は、測定ヘッド2923に選択的に接続する複数の光ファイバ2929a、2929bを含む。測定ヘッド2923は、退避位置である位置POS21と、複数の測定位置である位置POS221、POS222との間を移動可能に構成されている。光ファイバ2929aは測定ヘッド2923が位置POS221に位置しているときに測定ヘッド2923と接続可能であり、光ファイバ2929bは測定ヘッド2923が位置POS222に位置しているときに測定ヘッド2923と接続可能である。このように、各測定位置に対応して複数の光ファイバ2929a、2906bを設けることにより、測定ヘッド2923に移動により測定の度に光ファイバの姿勢が異なってしまい、測定精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0065】
図17は、測定部29の構成例を示す図である。
図17で示す測定部29は、光源2921、真空フランジ2922a、2922b(以下、区別せず真空フランジ2922と呼ぶ場合がある)、測定ヘッド2923、分光器2924、PC2925、ファイバ切替器2926、ジョイント2927、及びファイバ接続部2928a、2928b(以下、区別せずファイバ接続部2928と呼ぶ場合がある)を備える。光源2921、真空フランジ2922、測定ヘッド2923、分光器2924、ファイバ切替器2926、ジョイント2927、及びファイバ接続部2928間は、光ファイバ2929a、2929b(以下、区別せず光ファイバ2929と呼ぶ場合がある)で接続される。
【0066】
光源2921、真空フランジ2922、測定ヘッド2923、分光器2924、PC2925は実施例1で説明した光源2901、真空フランジ2902、測定ヘッド2903、分光器2904、PC2905と同様のため説明を省略する。
【0067】
ジョイント2927は、光源2921から出力された光をファイバ切替器2926の複数の入力ポートに分岐するための分岐ファイバと、光源2921とを接続する。
【0068】
ファイバ接続部2928は、測定ヘッド2923と光ファイバ2929とを接続又は分離する。具体的には、測定ヘッド2923が位置POS221に移動してきた場合、ファイバ接続部2928aが測定ヘッド2923と光ファイバ2929aを接続する。また、測定ヘッド2923が位置POS222に移動してきた場合、ファイバ接続部2928bが測定ヘッド2923と光ファイバ2929bを接続する。
【0069】
ファイバ切替器2926は、分岐ファイバから入力された光の出力/非出力を切り替える切替器であり、いずれかの出力口から光を送出する。本実施例では、ファイバ切替器2926は3入力3出力であるものとして説明をするが、複数の入力口と出力口との対が設けられればよく、個数は限定されない。本実施例では、一つめの出力口(ポート1とする)から出力された光は測定ヘッド2923aに、二つめの出力口(ポート2とする)から出力された光は測定ヘッド2923bに、3つ目の出力口(ポート3とする)から出力された光は分光器に直接入力される。これによって、測定ヘッド2923を移動させつつ複数の測定位置で基板100の膜厚測定を行うことができる。また、ポート3によって光源2921から出力される光の強度変化を検出することができる。
【0070】
なお、
図17で示す測定部29では、ファイバ切替器2926により、一つの光源2921を用いて2系統の光ファイバ2929a、2929bに光を出力しているが、2系統の光ファイバ2929a、2929bに対してそれぞれ光を出力する二つの光源が設けられてもよい。
次に、電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。この例の場合、
図1に例示した成膜ブロック301が、製造ライン上に、例えば、3か所、設けられる。
【0071】
<電子デバイスの製造方法>
次に、電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。この例の場合、
図1に例示した成膜ブロック301が、製造ライン上に、例えば、3か所、設けられる。
【0072】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図18(a)は有機EL表示装置50の全体図、
図18(b)は1画素の断面構造を示す図である。
【0073】
図18(a)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0074】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の副画素の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0075】
図18(b)は、
図18(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板100上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0076】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、
図18(b)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0077】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0078】
図18(b)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0079】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0080】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0081】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。ここでは、赤色層56Rが下側層56R1と上側層56R2の2層からなり、緑色層56Gと青色層56Bは単一の発光層からなる場合を想定する。
【0082】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1の電極54が形成された基板100を準備する。なお、基板100の材質は特に限定はされず、ガラス、プラスチック、金属などで構成することができる。本実施形態においては、基板100として、ガラス基板上にポリイミドのフィルムが積層された基板を用いる。
【0083】
第1の電極54が形成された基板100の上にアクリル又はポリイミド等の樹脂層をバーコートやスピンコートでコートし、樹脂層をリソグラフィ法により、第1の電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。なお、本実施形態では、絶縁層59の形成までは大型基板に対して処理が行われ、絶縁層59の形成後に、基板100を分割する分割工程が実行される。
【0084】
絶縁層59がパターニングされた基板100を第1の成膜室303に搬入し、正孔輸送層55を、表示領域の第1の電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は、最終的に1つ1つの有機EL表示装置のパネル部分となる表示領域51ごとに開口が形成されたマスクを用いて成膜される。
【0085】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板100を第2の成膜室303に搬入する。基板100とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、正孔輸送層55の上の、基板100の赤色を発する素子を配置する部分(赤色の副画素を形成する領域)に、赤色層56Rを成膜する。ここで、第2の成膜室で用いるマスクは、有機EL表示装置の副画素となる基板100上における複数の領域のうち、赤色の副画素となる複数の領域にのみ開口が形成された高精細マスクである。これにより、赤色発光層を含む赤色層56Rは、基板100上の複数の副画素となる領域のうちの赤色の副画素となる領域のみに成膜される。換言すれば、赤色層56Rは、基板100上の複数の副画素となる領域のうちの青色の副画素となる領域や緑色の副画素となる領域には成膜されずに、赤色の副画素となる領域に選択的に成膜される。
【0086】
赤色層56Rの成膜と同様に、第3の成膜室303において緑色層56Gを成膜し、さらに第4の成膜室303において青色層56Bを成膜する。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bの成膜が完了した後、第5の成膜室303において表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0087】
電子輸送層57までが形成された基板を第6の成膜室303に移動し、第2の電極58を成膜する。本実施形態では、第1の成膜室303~第6の成膜室303では真空蒸着によって各層の成膜を行う。しかし、本発明はこれに限定はされず、例えば第6の成膜室303における第2の電極58の成膜はスパッタによって成膜するようにしてもよい。その後、第2の電極58までが形成された基板を封止装置に移動してプラズマCVDによって保護層60を成膜して(封止工程)、有機EL表示装置50が完成する。なお、ここでは保護層60をCVD法によって形成するものとしたが、これに限定はされず、ALD法やインクジェット法によって形成してもよい。
【0088】
ここで、第1の成膜室303~第6の成膜室303での成膜は、形成されるそれぞれの層のパターンに対応した開口が形成されたマスクを用いて成膜される。成膜の際には、基板100とマスクとの相対的な位置調整(アライメント)を行った後に、マスクの上に基板100を載置して成膜が行われる。ここで、各成膜室において行われるアライメント工程は、上述のアライメント工程の通り行われる。
【0089】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1:成膜装置、11:静電チャック、12:チャック移動部、29:測定部、2903:測定ヘッド、2910:ヘッド移動部