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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079049
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】チオノアシロキシシラン類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20230531BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230531BHJP
【FI】
C07F7/18 Q
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192454
(22)【出願日】2021-11-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】深谷 訓久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
【テーマコード(参考)】
4H039
4H049
【Fターム(参考)】
4H039CA66
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ51
4H049VR23
4H049VR41
4H049VS21
4H049VT07
4H049VT08
4H049VT10
4H049VT16
4H049VT50
4H049VU36
4H049VW02
(57)【要約】
【課題】チオノアシロキシシラン類をより効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】アルコキシシラン類にジアシルスルフィド類を反応させる反応工程を含む、チオノアシロキシシラン類の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシラン類とジアシルスルフィド類とを反応させる反応工程を含む、チオノアシロキシシラン類の製造方法。
【請求項2】
前記反応工程が、触媒存在下で行われる、請求項1に記載のチオノアシロキシシラン類の製造方法。
【請求項3】
前記アルコキシシラン類が、下記一般式(I)で表され、前記ジアシルスルフィド類が、下記一般式(II)で表され、前記チオノアシロキシシラン類が、下記一般式(III)で表される、請求項1又は2に記載のチオノアシロキシシラン類の製造方法。
Si(OR4-(p+q+r) (I)
(式中、p、q、及びrは、それぞれ独立に0以上3以下の整数であり;p+q+rは、0以上3以下の整数であり;R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基又は水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;Rは、それぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基である。)
(RCO)S (II)
(式中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
Si(OR4-(p+q+r+s)[OC(=S)R
(III)
(式中、p、q、r、R、R、R、R、及びRは、それぞれ前記と同義であり;sは、1以上4-(p+q+r)以下の整数である。)
【請求項4】
前記触媒が、酸性触媒である、請求項1~3の何れか1項に記載のチオノアシロキシシラン類の製造方法。
【請求項5】
前記酸性触媒が、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド及びその金属塩から選ばれる酸性化合物である、請求項4に記載のチオノアシロキシシラン類の製造方法。
【請求項6】
前記酸性触媒が、モンモリロナイト及びゼオライトから選ばれる固体酸触媒である、請求項4に記載のチオノアシロキシシラン類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオノアシロキシシラン類の効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チオノアシロキシシラン類は、医薬、農薬、電子材料等の精密合成用試薬、その合成中間体等として利用される機能性化学品である。
チオノアシロキシシラン類の製造方法としては、たとえば、(A)ビスシリルシラザンとチオカルボン酸を反応させる方法(非特許文献1)、(B)クロロシランとチオカルボン酸を塩基存在下で反応させる方法(非特許文献1)、(C)クロロシランとチオカルボン酸カリウム塩を反応させる方法(非特許文献2)等が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J. Org. Chem. 1966, 31, 10, 3439-3440
【非特許文献2】Bull.Chem.Soc.Jpn.,46,244-248 (1973)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ビスシリルシラザンを用いる方法(方法A)では、原料のシラザン化合物が加水分解しやすく取扱いに注意を要する、入手容易な市販化合物の種類が少ない等の問題点がある。また、クロロシランを用いる方法(方法B、C)でも、加水分解により腐食性の塩化水素を発生するクロロシランを使用するため、原料の取り扱いが容易でない等の問題点がある。さらに、ビスシリルシラザン又はクロロシランを用いる方法(方法A~C)では、反応で大量の塩が生じるため、塩を濾過等の方法により除去する工程に時間とコストがかかる等の問題がある。これらのことから、工業的により有利な製造方法が求められている。
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、チオノアシロキシシラン類をより効率的に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アルコキシシラン類とジアシルスルフィド類を反応させることにより、大量の塩等の生成を伴うことなく、チオノアシロキシシラン類が効率よく生成することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明の製造方法は、次のような特徴を有する。
(1)原料が入手し易く、取り扱いが比較的容易で安全性も高い。
(2)本反応系では塩を生じることはなく、大量の塩の分離工程を必要としない。
(3)酸性の固体触媒を使用する場合は、濾過、遠心分離等により触媒の分離を容易に行うことができる。
本発明の製造方法は、製造プロセスの低コスト化、高効率化を可能にするもので、従来技術に比べて経済性、環境負荷等の面で大きな利点を有すると考える。
【0008】
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
<1>
アルコキシシラン類とジアシルスルフィド類とを反応させる反応工程を含む、チオノアシロキシシラン類の製造方法。
<2>
前記反応工程が、触媒存在下で行われる、<1>に記載のチオノアシロキシシラン類の製造方法。
<3>
前記アルコキシシラン類が、下記一般式(I)で表され、前記ジアシルスルフィド類が、下記一般式(II)で表され、前記チオノアシロキシシラン類が、下記一般式(III)で表される、<1>又は<2>に記載のチオノアシロキシシラン類の製造方法。
Si(OR4-(p+q+r) (I)
(式中、p、q、及びrは、それぞれ独立に0以上3以下の整数であり;p+q+rは、0以上3以下の整数であり;R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基又は水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;Rは、それぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基である。)
(RCO)S (II)
(式中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
Si(OR4-(p+q+r+s)[OC(=S)R
(III)
(式中、p、q、r、R、R、R、R、及びRは、それぞれ前記と同義であり;sは、1以上4-(p+q+r)以下の整数である。)
<4>
前記触媒が、酸性触媒である、<1>~<3>の何れかに記載のチオノアシロキシシラン類の製造方法。
<5>
前記酸性触媒が、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド及びその金属塩から選ばれる酸性化合物である、<4>に記載のチオノアシロキシシラン類の製造方法。
<6>
前記酸性触媒が、モンモリロナイト及びゼオライトから選ばれる固体酸触媒である、<4>に記載のチオノアシロキシシラン類の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チオノアシロキシシラン類を従来の方法に比べより効率的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、特段の記載がない限り、本明細書中のある式中の記号が他の式においても用いられる場合、同一の記号は同一の意味を示す。
本発明の一実施形態に係るチオノアシロキシシラン類の製造方法は、アルコキシランシラン類とジアシルスルフィド類とを反応させる反応工程を含む。
その反応工程は、反応を促進するための触媒存在下で行うことができる。
【0011】
本実施形態において、原料として使用するアルコキシシラン類は、たとえば、下記一般式(I)で表される(以下、一般式(I)で表されるアルコキシシラン類を「アルコキシシラン(I)」と称することがある。)。
Si(OR4-(p+q+r) (I)
一般式(I)において、p、q、及びrは、それぞれ独立に0以上3以下の整数であり;p+q+rは、0以上3以下の整数である。また、R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基又は水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基である。
なお、本明細書において「反応に関与しない」とは、目的とする反応に反応物質として直接関与せず、また、当該反応を阻害しないことを意味する。
【0012】
、R、及びRで表される炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられる。
炭化水素基がアルキル基の場合、アルキル基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~18、さらに好ましくは1~10であり、特に好ましくは1~4である。アルキル基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
【0013】
反応に関与しない基としては、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルコキシカルボニル基、炭素数1~6のジアルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子をより具体的に示せば、炭素数1~6のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、ヘキソキシ基等が挙げられ;炭素数1~6のアルコキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等が挙げられ;炭素数1~6のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられ;ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0014】
反応に関与しない基で置換されていてもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、2-メトキシエチル基、3-エトキシプロピル基、2-メトキシカルボニルエチル基、2-ジメチルアミノエチル基、2-シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3-クロロプロピル基等が挙げられる。
【0015】
また、炭化水素基がアリール基の場合、前記アリール基としては、炭化水素環系又は複素環系の1価の芳香族有機基を使用できる。アリール基が炭化水素環系の1価の芳香族有機基である場合、その炭素数は、好ましくは6~22、より好ましくは6~14、さらに好ましくは6~10である。炭化水素環系の1価の芳香族有機基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基等が挙げられる。また、アリール基が複素環系の1価の芳香族有機基である場合、複素環中のヘテロ原子は硫黄、酸素原子等である。また、複素環系の1価の芳香族有機基の炭素数は、好ましくは4~12、より好ましくは4~8である。複素環系の1価の芳香族有機基の具体例としては、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等が挙げられる。
アリール基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。反応に関与しない基としては、前記のアルキル基に置換していてもよい反応に関与しない基として示したもの等を挙げることができる。また、その他の反応に関与しない基として、環上の2つの炭素原子を結合させる2価の基であるオキシエチレン基、オキシエチレンオキシ基等が挙げられる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアリール基の具体例としては、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、オクトキシフェニル基、メチル(メトキシ)フェニル基、フルオロ(メチル)フェニル基、クロロ(メトキシ)フェニル基、ブロモ(メトキシ)フェニル基、2,3-ジヒドロベンゾフラニル基、1,4-ベンゾジオキサニル基等が挙げられる。
【0016】
さらに、炭化水素基がアラルキル基の場合には、アラルキル基の炭素数は、好ましくは7~23、より好ましくは7~16である。また、アラルキル基の炭素原子に結合した水
素原子の一部又は全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基としては、前記のアルキル基に置換していてもよい反応に関与しない基として示したもの等を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、2-ナフチルメチル基、9-アントリルメチル基、(4-クロロフェニル)メチル基、1-(4-メトキシフェニル)エチル基等が挙げられる。
【0017】
また、炭化水素基がアルケニル基の場合には、アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~23、より好ましくは2~20であるまた、アルケニル基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基としては、前記のアルキル基に置換していてもよい反応に関与しない基として示したものの他、前記アリール基等を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアルケニル基の具体例としては、ビニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、5-ヘキセニル基、9-デセニル基、2-フェニルエテニル基、2-(メトキシフェニル)エテニル基、2-ナフチルエテニル基、2-アントリルエテニル基等が挙げられる。
【0018】
で表される炭素数1~6のアルキル基の炭素数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~3である。
炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0019】
アルコキシシラン(I)の具体例としては、(メトキシ)トリメチルシラン(MeSiOMe)、(エトキシ)トリメチルシラン(MeSiOEt)、(エトキシ)トリエチルシラン(EtSiOEt)、(エトキシ)ジメチル(フェニル)シラン(MePhSiOEt)、(エトキシ)メチルジ(フェニル)シラン(MePhSiOEt)、(エトキ
シ)ジメチル(ビニル)シラン(MeViSiOEt)、メチルフェニルジ(メトキシ)シラン(MePhSi(OMe))、ジメチルジ(メトキシ)シラン(MeSi(OMe))、ジ(エトキシ)ジメチルシラン(MeSi(OEt))、ジ(エトキシ)(フェニル)ビニルシラン(PhViSi(OEt))、メチルトリ(メトキシ)シラン(MeSi(OMe))、トリ(エトキシ)メチルシラン(MeSi(OEt))、フェニルトリ(メトキシ)シラン(PhSi(OMe))、フェニルトリ(エトキシ)シラン(PhSi(OEt))、ビニルトリ(メトキシ)シラン(ViSi(OMe))、ビニルトリ(エトキシ)シラン(ViSi(OEt))、トリ(メトキシ)シラン(HSi(OMe))、トリ(エトキシ)シラン(HSi(OEt))、テトラ(メトキシ)シラン(Si(OMe))、テトラ(エトキシ)シラン(Si(OEt))、テトラ(プロポキシ)シラン(Si(OPr))、テトラ(ブトキシ)シラン(Si(OBu))等を挙げることができる。
【0020】
一方、前記アルコキシシラン類と反応させるジアシルスルフィド類は、たとえば、下記一般式(II)で表される(以下、一般式(II)で表されるジアシルスルフィド類を「ジアシルスルフィド(II)」と称することがある。)。
(RCO)S (II)
【0021】
一般式(II)において、Rは、炭素数1~24の炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
で表される炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられ、これらは、R、R、及びRの説明において示したアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等と同様に定義される。また、反応に関与し
ない基としては、前記一般式(I)のR、R、及びRの説明において示した反応に関与しない基等を挙げることができる。
炭化水素基中の炭素数に関しては、炭化水素基がアルキル基の場合には、好ましくは1~20、より好ましくは1~18、さらに好ましくは1~12、特に好ましくは1~6であり;炭化水素基がアリール基の場合には、好ましくは4~20、より好ましくは4~18であり;炭化水素基がアラルキル基の場合には、好ましくは5~21、より好ましくは5~19であり;炭化水素基がアルケニル基の場合には、好ましくは2~20、より好ましくは2~18である。
これらの炭化水素基の具体例としては、前記一般式(I)のR、R、及びRの説明において示した炭化水素基等を挙げることができる。
【0022】
ジアシルスルフィド(II)の具体例としては、ジアセチルスルフィド((MeCO)S)、ジプロピオニルスルフィド((EtCO)S)、ジブチリルスルフィド((PrCO)S)、ジイソブチリルスルフィド((PrCO)S)、ジヘキサノイルスルフィド((PentCO)S)、ジベンゾイルスルフィド((PhCO)S)、ビス(ベンジルカルボニル)スルフィド((PhCHCO)S)、ジクロトノイルスルフィド((MeCH=CHCO)S)等が挙げられる。
【0023】
アルコキシシラン類に対するジアシルスルフィド類のモル比は任意に選ぶことができるが、アルコキシシラン類を基準としたチオノアシロキシシラン類の収率を考慮すれば、通常0.4以上300以下であり、より好ましくは0.5以上200以下であり、さらに好ましくは0.5以上150以下であり、また、0.5以上100以下、0.5以上50以下、0.5以上10以下、又は0.5以上5以下であってもよい。
【0024】
本実施形態においては、アルコキシシラン類(I)と、ジアシルスルフィド類(II)との反応により、下記一般式(III)で表されるチオノアシロキシシラン類を製造できる(以下、一般式(III)で表されるチオノアシロキシシラン類を「チオノアシロキシシラン(III)」と称することがある。)。
Si(OR4-(p+q+r+s)[OC(=S)R (III)
【0025】
一般式(III)中のp、q、r、s、R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ前記と同義であり、それらの具体例としては、前記一般式(I)及び(II)で示したもの等を挙げることができる。また、sは、1以上4-(p+q+r)以下の整数であり、好ましくは1以上2以下の整数であり、より好ましくは1である。
【0026】
チオノアシロキシシラン(III)の具体例を示すと、トリメチル(チオノアセトキシ)シラン(MeSiOC(=S)Me)、トリエチル(チオノアセトキシ)シラン(EtSiOC(=S)Me)、ジメチル(フェニル)(チオノアセトキシ)シラン(MePhSiOC(=S)Me)、メチルジ(フェニル)(チオノアセトキシ)シラン(MePhSiOC(=S)Me)、ジメチル(ビニル)(チオノアセトキシ)シラン(MeViSiOC(=S)Me)、(エトキシ)ジメチル(チオノアセトキシ)シラン(MeSi(OEt)[OC(=S)Me])、ジメチルビス(チオノアセトキシ)シラン(MeSi[OC(=S)Me])、ジ(エトキシ)メチル(チオノアセトキシ)シラン(MeSi(OEt)[OC(=S)Me])、トリ(エトキシ)(チオノアセトキシ)シラン(Si(OEt)[OC(=S)Me])、ジ(エトキシ)ビス(チオノアセトキシ)シラン(Si(OEt)[OC(=S)Me])、トリ(メトキシ)(チオノアセトキシ)シラン(Si(OMe)[OC(=S)Me])、ジ(メトキシ)ビス(チオノアセトキシ)シラン(Si(OMe)[OC(=S)Me])、トリメチル(チオベンゾイルオキシ)シラン(MeSiOC(=S)Ph)、トリ(エトキ
シ)(チオベンゾイルオキシ)シラン(Si(OEt)[OC(=S)Ph])、トリ(メトキシ)(チオベンゾイルオキシ)シラン(Si(OMe)[OC(=S)Ph])等が挙げられる。
【0027】
本実施形態における反応工程では、アルコキシ基を有する原料であるアルコキシシラン類に対するジアシルスルフィド類による求核的置換反応を伴う。
たとえば、モノアルコキシシランとジアシルスルフィド類とを反応させる場合、反応工程は、カルボン酸エステルの脱離を伴う。本実施形態における反応工程は、第3族~第15族の元素の陽イオン(Mm+)を含むルイス酸触媒の存在下では、下記反応式(スキーム1)のように反応が進行すると考えられる。
【0028】
【化1】

スキーム1に示されるように、ルイス酸触媒の陽イオンは、ジアシルスルフィド類の酸素原子に配位することによって、カルボニル基の炭素原子の求核性を高め、反応を促進していると考えられる。
【0029】
また、アルコキシシラン類としては、モノアルコキシシランだけでなく、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランも使用できる。
すなわち、本実施形態に係る製造方法により得られるチオノアシロキシシラン類は、モノアルコキシシランを原料とする場合は1種類であるが、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランを原料とする場合は、1種類のチオノアシロキシシラン類に限られるものではない。たとえばジアルコキシシラン類を原料とする場合、製造されるチオノアシロキシシラン類は、アルコキシ基が1つ置換されたチオノアシロキシシラン類、アルコキシ基が2つ置換されたチオノアシロキシシラン類、又はこれらの混合物であってもよいことを意味する。さらに、トリアルコキシシランを原料とする場合、製造されるチオノアシロキシシラン類は、アルコキシ基が1つ置換されたチオノアシロキシシラン類、アルコキシ基が2つ置換されたチオノアシロキシシラン類、アルコキシ基が3つ置換されたチオノアシロキシシラン類、又はこれらの混合物であってもよい。加えて、テトラアルコキシシランを原料とする場合、製造されるチオノアシロキシシラン類は、アルコキシ基が1つ置換されたチオノアシロキシシラン類、アルコキシ基が2つ置換されたチオノアシロキシシラン類、アルコキシ基が3つ置換されたチオノアシロキシシラン類、アルコキシ基が4つ置換されたチオノアシロキシシラン類、又はこれらの混合物であってもよいことを意味する。
【0030】
チオノアシロキシシラン類を製造する本実施形態における反応工程では、反応を促進するために触媒を使用することもできる。
好適な触媒としては、酸性触媒が挙げられる。酸性触媒としては、従来公知の各種の酸性化合物を使用できる。
従来公知の酸性化合物としては、スルホン酸化合物、そのイミド化合物、及び第3族~第15族の元素を含むルイス酸化合物から選ばれる化合物が好ましい。
【0031】
スルホン酸化合物又はそのイミド化合物としては、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸等のパーフルオロアルカンスルホン酸;ビス(トリフルオ
ロメタンスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド等のビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド
;等が好ましく使用される。これらのうち、スルホン酸化合物又はそのイミド化合物は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド等であることがより好ましい。
【0032】
また、第3族~第15族の元素を含むルイス酸化合物としては、それらの元素のハロゲン化物、過塩素酸塩、スルホン酸塩、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、チオシアン酸塩等を使用できる。
【0033】
第3族~第15族の元素に関しては、好ましくは第3族、第8族、第13族~第15族から選ばれ、より好ましくは第3族、第8族、第13族、又は第15族から選ばれ、さらに好ましくは第8族又は第13族から選ばれる元素である。
それらの元素をより具体的に示すと、好ましくはスカンジウム、イットリウム、サマリウム、イットリビウム、鉄、ルテニウム、銅、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、及びビスマスから選ばれ、より好ましくはスカンジウム、鉄、ルテニウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、及びビスマスから選ばれ、さらに好ましくは鉄、ルテニウム、アルミニウム、ガリウム、及びインジウムから選ばれる元素である。
【0034】
したがって、それらの元素を含むルイス酸化合物をより具体的に示すと、塩化スカンジウム(III)、塩化チタン(III)、塩化チタン(IV)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、塩化ルテニウム(III)、塩化アルミニウム(III)、塩化ガリウム(III)、塩化インジウム(III)、塩化スズ(IV)、過塩素酸鉄(III)、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸イットリビウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸アルミニウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸ガリウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸インジウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸スズ(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸ビスマス(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン(III)、トリフルオロメタンスルホン酸プラセオジム(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸ネオジム(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸イットリビウム(IV)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドスカンジウム(III)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド亜鉛(II)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドインジウム(III)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドスズ(IV)、トリス[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド]インジウム(III)、ヘキサフルオロアンチモン酸鉄(III)、ヘキサフルオロアンチモン酸インジウム(III)、チオシアン酸鉄(III)、チオシアン酸インジウム(III)等が挙げられる。これらの化合物においては、結晶水を含むもの(水和物)も使用できる。
これらのルイス酸化合物の中でも、触媒は、鉄、インジウム等を含むルイス酸化合物であることが好ましく、より具体的には、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイ
ンジウム(III)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドスカンジウム(III)、過塩素酸鉄(III)等であることが好ましい。
【0035】
また、酸性触媒としては、触媒の分離及び回収等が容易な、従来公知の各種の固体酸触媒を使用することもできる。固体酸触媒としては、無機系及び有機系のものを使用できる。
無機系の固体酸触媒としては、金属塩、金属酸化物等の固体無機物等が挙げられ、より具体的に示せば、前記ルイス酸化合物の説明において示したような第3族~第15族の元素の陽イオン又はプロトン性水素原子を有する、ゼオライト、メソポーラスシリカ、モンモリロナイト;シリカゲル、ヘテロポリ酸、カーボン系素材等を担体とする無機系固体酸;等が挙げられる。
ゼオライトの種類としては、たとえば、USY系、Y系、ベータ系、モルデナイト系、ZSM-5系等が挙げられ、シリカ/アルミナ比については、一般的には、3~2000等の範囲である。
【0036】
これらの無機系固体酸の中では、モンモリロナイト及びゼオライトから選ばれる1種以上が好ましく使用される。また、第3族~第15族の元素の陽イオンとしては、スズ(IV)、インジウム(III)、アルミニウム(III)、鉄(III)、及びスカンジウム(III)から選ばれる陽イオンが好ましく使用される。
好ましい無機系固体酸をより具体的に示すと、モンモリロナイトに関しては、スズ(IV)、インジウム(III)、スカンジウム(III)から選ばれる陽イオンを有するモンモリロナイト;プロトン性水素原子を有するモンモリロナイトK10(メルク社より入手可能);等が挙げられる。また、ゼオライトに関しては、プロトン性水素原子を有する、CBV780、CBV760、CBV720、CBV600(いずれもゼオリスト社より入手可能)から選ばれるUSY系ゼオライト等が挙げられる。
【0037】
さらに、固体酸触媒としては、前記の無機系固体酸のほかに、酸性官能基を有する有機系固体酸も使用できる。有機系固体酸は、酸性官能基を有するポリマー等である。酸性官能基の種類としては、スルホ基、カルボキシ基、ホスホリル基等が挙げられ、ポリマーの種類としては、パーフルオロ側鎖を有するテフロン(登録商標)骨格ポリマー、スチレン-ジビニルベンゼン共重合ポリマー等が挙げられる。有機系固体酸の具体例としては、スルホ基を有する、ナフィオン(NAFION(登録商標)、デュポン社、メルク社より入手可能)、ダウエックス(DOWEX(登録商標)、ダウ・ケミカル社、メルク社より入手可能)、アンバーライト(AMBERLITE(登録商標)、ローム&ハス社、メルク社より入手可能)、アンバーリスト(AMBERLYST(登録商標)、ダウ・ケミカル社、メルク社より入手可能)等が挙げられる。それらをより具体的に示せば、ナフィオンNR50、ダウエックス50WX2、ダウエックス50WX4、ダウエックス50WX8、アンバーライトIR120、アンバーライトIRP-64、アンバーリスト15、アンバーリスト36等を挙げることができる。
本実施形態に係る製造方法で使用する触媒は、単独で使用するだけでなく、複数の触媒を任意の組み合わせ及び比率で使用することもできる。
【0038】
原料に対する触媒量は、任意に決めることができるが、モル比又は重量比では、通常0.0001~10程度で、好ましくは0.001~8程度、より好ましくは0.001~6程度である。
【0039】
反応工程における反応は、反応温度、反応圧力等に応じて、液相又は気相状態で行うことができる。また、反応装置の形態としては、バッチ型、フロー型等、従来知られている各種形態で行うことができる。
反応温度は、通常-20℃以上、好ましくは-10~300℃、より好ましくは-10
~200℃、さらに好ましくは0~150℃である。また、室温で反応を行う場合には、室温の温度範囲としては、通常0~40℃、好ましくは5~40℃、より好ましくは10~35℃である。
さらに、反応圧力は、通常0.1~100気圧で、好ましくは0.1~50気圧、より好ましくは0.1~10気圧、さらに好ましくは0.5~5気圧である。
反応時間は、原料の量、触媒の量、反応温度、反応装置の形態等に依存するが、生産性及び効率を考慮すると、通常0.1~1200分、好ましくは0.1~600分、より好ましくは0.1~300分、さらに好ましくは30~240分程度である。
【0040】
また、反応を液相系で行う場合、溶媒の有無にかかわらず実施できる。溶媒を用いる場合、溶媒としては、デカリン(デカヒドロナフタレン)、デカン等の炭化水素;クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;tert-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル;等のように、原料及び生成物と反応しない各種の溶媒が使用可能である。溶媒は、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いることもできる。また、反応を気相で行う場合には、窒素等の不活性ガスを混合して反応を行うこともできる。
【0041】
反応工程は、マイクロ波照射下で行うこともできる。本反応系では、ジアシルスルフィド類、酸触媒等の誘電損失係数が比較的大きく、マイクロ波を効率よく吸収するため、マイクロ波照射下ではジアシルスルフィド類、触媒等が活性化され、反応をより効率的に行うことができる。
【0042】
マイクロ波照射反応では、接触式又は非接触式の温度センサーを備えた各種の市販装置等を使用できる。また、マイクロ波照射の出力、キャビティの種類(マルチモード、シングルモード)、照射の形態(連続的、断続的)等は、反応のスケール、原料の種類、触媒の種類等に応じて任意に決めることができる。マイクロ波の周波数としては、通常、0.3~30GHzである。その中で好ましいのは、産業分野、科学分野、医療分野等で使用するために割り当てられたIMS周波数帯で、さらにその中でも、2.45GHz帯、5.8GHz帯等がより好ましい。
【0043】
また、マイクロ波照射反応では、反応系をより効率よく加熱するために、マイクロ波を吸収して発熱する加熱材(サセプター)を反応系に添加することができる。加熱材の種類としては、活性炭、黒鉛、炭化ケイ素、炭化チタン等、従来公知の各種のものを使用できる。また、先に記載した触媒と加熱材の粉末を混合して、セピオライト、ホルマイト等の適当なバインダーを利用して焼成加工した成形触媒を用いることもできる。
【0044】
本実施形態における反応工程は、密閉系の反応装置でも進行するが、反応装置を開放系にして、反応生成物を反応系外に連続的に除去することにより、反応をより効率的に進行させることもできる。
【0045】
本実施形態に係る製造方法で、固体酸触媒を用いる場合、反応工程後の触媒の分離及び回収は、濾過、遠心分離等の方法により容易に行うことができる。
また、生成したチオノアシロキシシラン類の精製も、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の有機化学上通常用いられる手段により容易に達せられる。
【実施例0046】
次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例で使用した主な分析装置等は、以下の通りである。
・核磁気共鳴スペクトル分析(以下、NMRと称する場合がある。):ブルカー製 AVANCE III HD 600MHz(クライオプローブ装着)
・ガスクロマトグラフ分析(以下、GCと称する場合がある。):島津製作所製 GC-2014
・ガスクロマトグラフ質量分析(以下、GC-MSと称する場合がある。):島津製作所製 GCMS-QP2010Plus
【0047】
(実施例1)
(エトキシ)トリメチルシラン(MeSiOEt)1.0mmol、ジアセチルスルフィド((MeCO)S)1.1mmol、及び、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TfNH)0.01mmolを反応管に入れ、約25℃(室温)で0.5時間攪拌した。生成物をGC、GC-MS、及びNMRで分析し、収率をNMRにより算出した結果、トリメチル(チオノアセトキシ)シラン(MeSi[OC(=S)Me])が83%の収率で生成したことがわかった(表1、2参照)。
【0048】
(実施例2~22)
反応条件(触媒、原料等)を表1に示す通りに変えて、実施例1と同様に反応及び分析を行い、生成物の収率を算出した。結果を表1に示す。
また、得られたチオノアシロキシシラン類のスペクトルデータを表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1中の注釈を以下に示す。
1) Me3SiOEt:(エトキシ)トリメチルシラン
Et3SiOEt:(エトキシ)トリエチルシラン
Me2PhSiOEt:(エトキシ)ジメチル(フェニル)シラン
MePh2SiOEt:(エトキシ)メチルジ(フェニル)シラン
Me2ViSiOEt:(エトキシ)ジメチル(ビニル)シラン
Me2Si(OEt)2:ジ(エトキシ)ジメチルシラン
MeSi(OEt)3:トリ(エトキシ)メチルシラン
Me3SiOMe:(メトキシ)トリメチルシラン
2) (MeCO)2S:ジアセチルスルフィド
3) Tf2NH:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
(C4F9SO2)2NH:ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド
In(NTf2)3:トリス[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド]インジウム(
III)
Sc(NTf2)3:トリス[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド]スカンジウム
(III)
Fe(ClO4)3・6H2O:過塩素酸鉄(III)六水和物
Sc(OTf)3:トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)
Mont-Sn4+:Sn4+含有モンモリロナイト(Na+型モンモリロナイト(クニミネ工業社製クニピアF)を、Sn4+を含む水溶液(SnCl4・5H2Oを水に溶解した溶液)で処理して、Na+
をSn4+に交換するカチオン交換反応により調製)。
Mont-K10:モンモリロナイトK10(メルク社製)
CBV780:H-SDUSY型ゼオライトCBV780(ゼオリスト社製、500℃で焼成して使用)
Amberlyst15:H+型陽イオン交換樹脂アンバーリスト15(メルク社製)
4) Me3SiOC(=S)Me:トリメチル(チオノアセトキシ)シラン
Et3SiOC(=S)Me:トリエチル(チオノアセトキシ)シラン
Me2PhSiOC(=S)Me:ジメチル(フェニル)(チオノアセトキシ)シラン
MePh2SiOC(=S)Me:メチルジ(フェニル)(チオノアセトキシ)シラン
Me2ViSiOC(=S)Me:ジメチル(ビニル)(チオノアセトキシ)シラン
Me2Si(OEt)[OC(=S)Me]:(エトキシ)ジメチル(チオノアセトキシ)シラン
Me2Si[OC(=S)Me]2:ジメチルビス(チオノアセトキシ)シラン
MeSi(OEt)2[OC(=S)Me]:ジ(エトキシ)メチル(チオノアセトキシ)シラン
5) 収率はNMRにより算出した。
6) 1置換体と2置換体が生成した。括弧内は生成比を示し、収率は合計収率を示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2中の注釈を以下に示す。
1) チオノアシロキシシラン(III)の名称は、表1の注4参照
2) 重クロロホルム中の測定値
3) GC-MS (EI, 70eV)
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の製造方法により、機能性化学品として有用なチオノアシロキシシラン類をより効率的かつ安全に製造できるため、本発明の利用価値は高く、その工業的意義は多大である。
また、本発明の製造方法により提供されるチオノアシロキシシラン類は、アルコキシ基よりも反応性が高いチオノアシロキシ基を有するもので、原料であるアルコキシシラン類に比べて高い反応性を有するとともに、硫黄原子を有するという特徴がある。そのため、チオノアシロキシ基の他の官能基等への変換、シロキサン系の化合物を用いる機能性材料の物性制御等をより効率的に行うことができると考えられ、機能性化学品として高い利用価値を有する。