(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079078
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】デバイス搭載機器
(51)【国際特許分類】
G02B 7/00 20210101AFI20230531BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20230531BHJP
G01J 3/18 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
G02B7/00 F
G02B26/10 104
G01J3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192506
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】東口 昌浩
【テーマコード(参考)】
2G020
2H043
2H045
【Fターム(参考)】
2G020CB02
2G020CC05
2G020CC55
2G020CC56
2G020CC62
2H043AE02
2H043AE17
2H045AB06
2H045AB08
2H045AB81
2H045AE02
2H045DA02
(57)【要約】
【課題】デバイスに含まれる回路パターン部の破損を防止すること。
【解決手段】本発明の一態様に係るデバイス搭載機器は、被保持面と、前記被保持面の少なくとも一部に設けられた回路パターン部と、を含むデバイスと、前記被保持面に向き合う保持面により前記デバイスを保持する保持部材と、前記保持面と、前記被保持面との間に設けられたスペーサ部材と、を有し、前記スペーサ部材の厚みは、前記被保持面に設けられた前記回路パターン部の厚みよりも厚い。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保持面と、前記被保持面の少なくとも一部に設けられた回路パターン部と、を含むデバイスと、
前記被保持面に向き合う保持面により前記デバイスを保持する保持部材と、
前記保持面と、前記被保持面との間に設けられたスペーサ部材と、を有し、
前記スペーサ部材の厚みは、前記被保持面に設けられた前記回路パターン部の厚みよりも厚い、デバイス搭載機器。
【請求項2】
前記回路パターン部は、配線を含む請求項1に記載のデバイス搭載機器。
【請求項3】
前記スペーサ部材は、前記デバイスにおける所定の機能領域以外の領域に設けられている、請求項1記載のデバイス搭載機器。
【請求項4】
前記デバイスは可動部材を有し、
前記機能領域は、前記可動部材の可動領域、および前記デバイスへ入射する光が通過する経路の少なくとも一方を含む、請求項3に記載のデバイス搭載機器。
【請求項5】
前記スペーサ部材は、複数のスペーサ部材を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のデバイス搭載機器。
【請求項6】
前記スペーサ部材は弾性を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のデバイス搭載機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス搭載機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子等のデバイスを有するデバイス搭載機器が知られている。このようなデバイス搭載機器には、対象物からの光を分光分析する分光器等が挙げられる。例えば分光器は、分光分析により対象物の樹脂種等を同定し、対象物をリサイクル材料として樹脂種ごとに選別回収するために用いられる。
【0003】
デバイス搭載機器として、接合時の残留応力の発生を抑制し、長期に亘って高出力を維持できる光源デバイスを提供する目的で、光学部材の中心部以外の周辺部と発光部材との間に、光学部材と発光部材とが離間し、あるいは接近する方向への移動を規制する変形可能な保持部が設けられた構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、デバイスに含まれる回路パターン部が破損する場合がある。
【0005】
本発明は、デバイスに含まれる回路パターン部の破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るデバイス搭載機器は、被保持面と、前記被保持面の少なくとも一部に設けられた回路パターン部と、を含むデバイスと、前記被保持面に向き合う保持面により前記デバイスを保持する保持部材と、前記保持面と、前記被保持面との間に設けられたスペーサ部材と、を有し、前記スペーサ部材の厚みは、前記被保持面に設けられた前記回路パターン部の厚みよりも厚い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、デバイスに含まれる回路パターン部の破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る分光器の全体構成を例示する斜視図である。
【
図2】
図1の分光器における筐体を例示する斜視図である。
【
図4】
図1の分光器におけるフレームの構成を例示する斜視図である。
【
図5】
図1の分光器における可動部材の構成を例示する平面図である。
【
図6】実施形態に係るスペーサ部材の構成を例示する斜視図である。
【
図7】実施形態に係るスペーサ部材の構成を例示する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面において、同一の構成部または同質の構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
以下に示す図でX軸、Y軸およびZ軸により方向を示す場合があるが、X軸に沿うX方向は、実施形態に係るデバイス搭載機器が有する可動部材の揺動軸に略直交する方向を示し、Y軸に沿うY方向は揺動軸に沿う方向を示すものとする。Z軸に沿うZ方向は、X方向およびY方向の両方に略直交する方向であって、可動部材の可動方向に沿う方向を示すものとする。
【0011】
X方向で矢印が向いている方向を+X方向または+X側、+X方向の反対方向を-X方向または-X側と表記し、Y方向で矢印が向いている方向を+Y方向または+Y側、+Y方向の反対方向を-Y方向または-Y側と表記する。またZ方向で矢印が向いている方向を+Z方向または+Z側、+Z方向の反対方向を-Z方向または-Z側と表記する。実施形態に係るデバイス搭載機器は、一例として+X方向に光を照射するものとする。但し、これらのことは、デバイス搭載機器の使用時における向きを制限するものではなく、デバイス搭載機器の向きは任意である。
【0012】
以下、可動部材を搭載し、対象物からの光を分光分析する分光器をデバイス搭載機器の一例として実施形態を説明する。
【0013】
<分光器100の全体構成例>
図1は、実施形態に係る分光器100の全体構成を例示する斜視図である。分光器100は、分光器100のユーザが手で把持したり、衣服のポケットやカバン等に収納したりして、持ち運び可能に小型に構成されたハンディタイプのデバイス搭載機器である。
図1に示すように、分光器100は、筐体1と、緩衝部材2と、を有する。
【0014】
分光器100は、対象物に対して筐体1内の光源から光を照射し、照射した光の対象物による反射光を分光分析する。分光分析とは、物質が放射または吸収する光のスペクトルを調べ、物質の成分を特定または同定することをいう。
【0015】
対象物は、例えば樹脂を材料に含む部材、青果物、穀類、肉類、魚類、薬の錠剤、コンクリート等である。分光器100は、分光分析により対象物の樹脂種等を同定し、対象物をリサイクル材料として樹脂種ごとに選別回収するため等に用いられる。
【0016】
筐体1は、内部に光源および可動部材等を収容する箱状部材である。可動部材は、筐体1の内部においてY軸に沿う揺動軸周りに揺動する。Z軸に沿う可動方向10は、揺動により可動部材が可動する方向を指す。なお、本実施形態では、四角柱状の箱状部材である筐体1を例示するが、これに限定されるものではない。筐体1は、内部に可動部材を収容できれば、円柱状、楕円柱状または多角柱状等の任意の形状であってもよい。
【0017】
緩衝部材2は、可動部材13への衝撃を緩和する部材である。緩衝部材2は、ゴム等の弾性を有する材質を含んで構成され、筐体1を覆うように着脱可能に設けられる。但し、緩衝部材2は必ずしも着脱可能でなくてもよく、筐体1に備え付けであってもよい。
【0018】
分光器100の持ち運び中や使用中に、分光器100が地面に落下したり、壁等にぶつかったりすると、分光器100に衝撃が加わり、分光器100が破損する場合がある。特に筐体1に内蔵される可動部材は、衝撃により破損しやすい。緩衝部材2は、分光器100に加わる衝撃を弾性により吸収することによって緩和し、分光器100、特に分光器100が有する可動部材が破損することを抑制する。
【0019】
分光器100が地面等にぶつかる際には、分光器100の端部または角部がいち早くぶつかりやすい。そのため、緩衝部材2は、筐体1におけるX方向およびZ方向それぞれの端部や角部を主に覆うように、筐体1に設けられることが好ましい。
【0020】
図2は、筐体1を例示する斜視図である。
図2は、分光器100において緩衝部材2が取り外された状態を示している。筐体1は、筐体1の+X側に設けられた窓11と、筐体1の+Z側に設けられたスイッチ12と、を有する。
【0021】
窓11は、筐体1内の光源からの光を筐体1の外部に出射させ、また分光器100から照射された光の対象物による反射光を筐体1の内部に入射させる窓である。窓11は、光源が発する光に対して透光性を有するガラスまたは樹脂等を含む。ここでの透光性は、光源が発する光に対して60%以上の透過率を有することを意味する。
【0022】
スイッチ12は、分光器100の電源のオンまたはオフを切り替えるスイッチである。スイッチ12は、スイッチ12をX方向にスライドさせるユーザ操作に応じて、電源のオンまたはオフを切り替える。但し、スイッチ12は、スライド式のものに限定されず、押しボタン式等の各種方式のものを適用できる。
【0023】
緩衝部材2は、筐体1に緩衝部材2が取り付けられている状態において、少なくとも窓11およびスイッチ12が配置される位置に開口を有する。この開口を通じて、窓11は光を入射または出射させることができ、スイッチ12はユーザによる操作を受け付けることができる。
【0024】
<筐体1の内部構成例>
図3は、
図2のII-II断面図である。
図4は、分光器100におけるフレーム209の構成を例示する斜視図である。
【0025】
図3に示すように、分光器100は、光源216と、凹面回折格子202と、可動部材13と、受光部217と、を有する。また分光器100は、フレーム209と、処理部215aと、バッテリ218と、を有する。分光器100は、これらの構成部を筐体1の内部に収容する。
【0026】
光源216は、分光分析の対象となる対象物に光を照射する。光源216は、例えばLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)またはハロゲンランプ等である。光源216は、分光分析の対象物に対して適正な波長帯域の光を照射するものが選択され、外側フレーム210の外側に配置される。
【0027】
凹面回折格子202は、光源216から照射され、対象物により反射された光を回折させる回折部である。凹面回折格子202は、金属の凹面ミラーの表面に等間隔の細線が形成された光学素子である。但し、凹面回折格子202の基材の材質は金属に限定されず、半導体、ガラス、樹脂等であってもよい。但し、材質を半導体、ガラス、樹脂等を利用する場合は細線表面へ反射ミラー膜を形成することが好ましい。
【0028】
凹面回折格子202における細線は基材上に直接形成されてもよいし、基材上に形成した薄い樹脂等の層に形成されてもよい。凹面回折格子202は、回折格子による光の分散機能と、凹面ミラーによる集光機能と、を兼備する。凹面回折格子202に入射した光は、凹面回折格子202により回折して分散し、可動部材13に向けて集光する。なお、光の分散とは、入射光が波長ごとに別々に分離する現象をいう。
【0029】
可動部材13は、例えば、ミラー部が接続部としての弾性梁部と基板上に一体に形成されたMEMSミラーである。ミラー部は、入射してきた光を反射する。また、ミラー部は弾性梁部の弾性運動によって揺動軸E軸周りの矢印方向に沿って揺動する。揺動軸E周りの揺動によって、可動部材13におけるミラー部のX軸方向における両端部は、Z方向に沿う可動方向10に往復移動する。
【0030】
可動部材13では、ミラー部は揺動により厳密には曲率を含む動作を行うが、例えばX軸方向におけるミラー部の両端部は、可動方向10に略直動するように往復移動する。可動方向10は、このようなミラー部が略直動する移動方向を含む。
【0031】
図3では、可動部材13はX軸に対してわずかに傾いているが、可動部材13はX軸に対して略平行に設けられてもよい。本実施形態では、可動方向10は、
図3のように可動部材13がX軸に対して傾いて設けられた状態においてミラー部の両端部が略直動する移動方向である。
【0032】
本実施形態では、揺動する可動部材13を例示するが、これに限定されるものではない。例えば可動部材の動作には、揺動、振動、回動、直動、歳差または並進等の動作が含まれる。可動方向10は、これらの動作に伴って可動部材13が可動する方向を含む。
【0033】
可動部材13は、ミラー部を揺動させることにより、入射してきた光の反射角度を変化させる。可動部材13は、凹面回折格子202により回折された光を、例えばミラー部により受光部217に向けて反射することにより受光部217に導光する。
【0034】
受光部217は、フォトダイオード等の光電変換素子である。受光部217は、凹面回折格子202により回折された光の光強度に応じた電気信号を出力する。
【0035】
処理部215aは、受光部217から入力される電気信号に基づき、分光スペクトルを取得する演算を行う。分光スペクトルとは、対象物の反射光における波長ごとの強度分布をいう。分光器100は、分光スペクトルに基づき、分光分析を行うことができる。
【0036】
処理部215aは、所定の波長の光を受光部に向けて出射させるために可動部材13を制御し、さらに光源216による光の照射、例えば光の強度を制御する。
【0037】
バッテリ218は、光源216、可動部材13および処理部215a等の分光器100に含まれる構成部を駆動させる電力を供給する。バッテリ218には、電池や二次電池(蓄電池)等を適用できる。但し、分光器100は、バッテリ218に代えて、あるいはバッテリ218と共に、商用電源から電力供給されるようにしてもよい。
【0038】
図4に示すように、フレーム209は、断面が多角形形状で、内部が中空の中空構造を有する角柱部材である。フレーム209の材質は、樹脂や金属、セラミック等であり、特に制限されるものではない。フレーム209は、入射スリット201と、出射スリット204と、を有する。またフレーム209は、フレーム209を構成する面の所定の位置に、フレーム209の外部とフレーム209の内部の中空部を連通させる矩形の開口209aから209dを有する。
【0039】
図3および
図4に示すように、凹面回折格子202は、フレーム209における開口209bの位置に配置され、フレーム209の外側の面に固定される。開口209aから入射した光は、開口209bを通過し、フレーム209の外側に配置された凹面回折格子202に入射する。凹面回折格子202に入射した光は、凹面回折格子202により回折して分散し、開口209cに向かって集光しながら伝搬する。
【0040】
可動部材13は、開口209cの位置に配置され、フレーム209の外側の面に固定される。凹面回折格子202による分散光は、開口209cを通過し、フレーム209の外側に配置された可動部材13に入射する。可動部材13のミラー部に入射した光は、ミラー部で反射されて開口209dに向かって伝搬する。
【0041】
可動部材13におけるミラー部は、揺動軸E周りに揺動するが、ミラー部はフレーム209の開口209cに含まれる領域内において揺動するため、揺動中にミラー部がフレーム209に接触することはない。
【0042】
図3に破線で示す光線Lは、フレーム209内に入射し、凹面回折格子202により回折され、可動部材13のミラー部により反射された後、受光部217に到達する光線の一部を示している。
【0043】
入射スリット201は、細長い略矩形状の開口であり、外側フレーム210のテーパ孔203から入射した光をフレーム209内に入射させる。入射スリット201における開口の長手方向はX方向に対応し、短手方向はX方向と略直交する方向に対応する。
【0044】
入射スリット201の短手方向の開口の幅は、例えば数10μmから数100μmである。入射スリット201は、ニッケル等の金属基板に矩形の貫通孔を設けて形成される。但し、入射スリット201が形成される基板の材質は、金属に限定されず半導体や樹脂等であってもよい。また、入射スリット201は、矩形開口に限定されず、円形開口のピンホール等であってもよい。入射スリット201からフレーム209内に入射した光は、凹面回折格子202に入射する。
【0045】
出射スリット204は、細長い略矩形状の開口であり、分散した光をフレーム209から出射させるための開口である。出射スリット204の材質および形状には、入射スリット201と同じ材質および形状のものを適用できる。
【0046】
出射スリット204は、凹面回折格子202により分散した光が略集光する位置に配置される。凹面回折格子202により分散した光は、集光位置が波長に応じて横ずれ(シフト)する。分光器100は、凹面回折格子202により分散した光の可動部材13のミラー部による反射角度を変化させ、出射スリット204を通過する光の波長を変えることにより、分散した光のうち所定の波長の光を受光部217に選択的に導光できる。
【0047】
<可動部材13の構成例>
図5は、可動部材13の構成を例示する平面図である。可動部材13は、両端支持梁タイプのMEMSミラーである。可動部材13は、Y軸に平行な揺動軸E周りにミラー部120を揺動させることにより、ミラー部120に設けられたミラー面14に入射してきた光を揺動軸E周りに偏向する。なお、偏向とは光の向きを変化させることをいう。
【0048】
可動部材13は、回路パターン部123と、被保持面13aと、を含むデバイスの一例である。回路パターン部123は、被保持面13aの少なくとも一部に設けられている。
【0049】
図5に示すように本実施形態では、可動部材13は、回路パターン部123および被保持面13aの他に、ミラー部120と、駆動梁130aおよび130bと、支持部140aおよび140bとを、有する。
【0050】
ミラー部120は、平面視が略矩形状に形成され、揺動軸E周りに揺動可能な板状の部位である。ミラー部120は、-X側の端部が駆動梁130aに接続し、+X方向側の端部が駆動梁130bに接続している。ミラー部120の-Y側の面上にはミラー面14が形成されている。なお、
図5では、平面視が矩形状のミラー面14を例示するが、ミラー面14の形状はこれに限定されるものではなく、円形、楕円形等の他の形状であってもよい。
【0051】
駆動梁130aおよび130bは、Y方向における両側からミラー部120を挟むように設けられ、ミラー部120を揺動軸E周りに揺動可能に支持する。駆動梁130aおよび130bは、ミラー部120を揺動させることにより、ミラー面14の揺動軸E周りの傾きを変化させることができる。
【0052】
駆動梁130aは、複数の梁部材133を含むミアンダ構造(折り返し構造)で構成された蛇行梁である。駆動梁130aの一端はミラー部120の外周部に接続し、他端は支持部140aの内周部に接続している。駆動梁130aに含まれる複数の梁部材133のそれぞれには、圧電駆動部131aから131dが設けられている。圧電駆動部131aから131dのそれぞれは圧電素子を含んでおり、印加される駆動電圧に応じて駆動梁130aを変形させる。
【0053】
駆動梁130bは、複数の梁部材133を含むミアンダ構造で構成された蛇行梁である。駆動梁130bの一端は、ミラー部120の外周部に接続し、他端は支持部140bの内周部に接続している。駆動梁130bに含まれる複数の梁部材133のそれぞれには、圧電駆動部132aから132dが設けられている。圧電駆動部132aから132dのそれぞれは圧電素子を含んでおり、印加される駆動電圧に応じて駆動梁130bを変形させる。
【0054】
駆動梁130aがミラー部120に接続する箇所と、駆動梁130bがミラー部120に接続する箇所は、ミラー面14の中心に対して点対称の位置関係になっている。駆動梁130aが支持部140aに接続する箇所と、駆動梁130bが支持部140bに接続する箇所は、ミラー面14の中心に対して点対称の位置関係になっている。但し、ミラー面14と平行な平面上にあって揺動軸Eと垂直な線(すなわちX軸と平行な線)に対して線対称な位置関係であってもよい。
【0055】
支持部140aは、駆動梁130aを支持する。支持部140bは、駆動梁130bを支持する。
【0056】
支持部140bは、駆動電圧を入力するための電極接続部150を-Z側の面上に有する。電極接続部150は、正の電圧が入力される正電極接続部150aと、GNDに接続されるGND接続部150bと、負の電圧が入力される負電極接続部150cとを含んでいる。
【0057】
正電極接続部150aと、GND接続部150bと、負電極接続部150cは、X方向に沿って配列する複数の電圧入力部である。また正電極接続部150a、GND接続部150bおよび負電極接続部150cが配列する方向は、駆動梁130aまたは駆動梁130bを構成する複数の梁部材133のそれぞれの長手方向であるX方向に沿っている。
【0058】
ミラー部120の-Z側の面上におけるミラー面14以外の領域と、駆動梁130aおよび130bのそれぞれの-Z側の面上には、少なくとも1つ以上の回路パターン部123が設けられている。
【0059】
回路パターン部123は、電極接続部150から入力される駆動電圧を、圧電駆動部131aから131d、および圧電駆動部132aから132dのそれぞれに供給する配線がパターニングされた部位である。回路パターン部123が複数である場合に、ミラー面14を囲むように設けられると、重量の偏りを抑制できるため好適である。
【0060】
駆動梁130aに設けられた圧電駆動部131aから131dは、回路パターン部123によって支持部140bに設けられた電極接続部150に電気的に接続している。回路パターン部123は、電極接続部150を介して入力される駆動電圧を圧電駆動部132aから132dのそれぞれに伝導し、またミラー部120の面上を通って圧電駆動部131aから131dのそれぞれに伝導する。電極接続部150から入力される駆動電圧は、回路パターン部123により駆動梁130aおよび130bの両方に印加される。
【0061】
回路パターン部123は、正の電圧を伝導する正電圧導線123aと、GNDに接続されるGND導線123bと、負の電圧を伝導する負電圧導線123cと、を含む。正電圧導線123aは正電極接続部150aに接続し、GND導線123bはGND接続部150bに接続し、負電圧導線123cは負電極接続部150cに接続している。
【0062】
可動部材13は、支持部140aと支持部140bとの間において、X方向に沿うミラー部120の両側に、支持部等の障害物が存在しない開放領域である光通過領域16および17を有する。光通過領域16および17は、ミラー部120が揺動した場合に、ミラー面14による反射光を通過させる部位である。なお、光通過領域16および17は、部材が存在しない空隙であってもよいし、空隙の少なくとも一部に光を透過するガラス等の部材を含む構成であってもよい。光通過領域16および17は、揺動軸Eから離れるにつれて揺動軸Eに沿った方向の幅が広くなるテーパ状に形成されていてもよい。
【0063】
可動部材13は、1枚のSOI(Silicon On Insulator)基板をエッチング処理により成形し、成形した基板上にミラー面14や駆動梁130aおよび130b、電極接続部150等を形成することにより、各構成部が一体的に形成される。なお、各構成部の形成は、SOI基板の成形後に行ってもよいし、SOI基板の成形中に行ってもよい。
【0064】
可動部材13は、ミラー部120、並びに駆動梁130aおよび130b等の複数の可動部を含み、これらが半導体プロセスにより一体に形成された部材である。但し、可動部材13は、必ずしも一体に形成されなくてもよく、複数の部材を組み合わせて可動部材13が形成されてもよい。
【0065】
可動部材13は、必ずしも半導体プロセスにより形成されなくてもよいが、半導体プロセスにより可動部材13を製作すると、小型の可動部材13の製作が可能になり、製作効率が高くなり、形成精度が高くなるため、より好ましい。
【0066】
複数の可動部を含む観点では、可動部材13は可動装置と称することもできる。本実施形態では特に、可動部材13の可動方向10は、揺動軸E軸周りに揺動するミラー部120が可動する方向を意味する。
【0067】
<スペーサ部材300の構成例>
図6および
図7を参照して、分光器100が有するスペーサ部材300の構成について説明する。
図6および
図7は、スペーサ部材300の構成を例示する図である。
図6は、スペーサ部材300が設けられたフレーム209を例示する斜視図、
図7は、スペーサ部材300を介してフレーム209に保持された可動部材13と、フレーム209の一部と、を例示する側面図である。
【0068】
図6に示すように、スペーサ部材300は、フレーム209の-Z方向側の面である保持面301に、接着部材等による接着によって固定される。フレーム209は、被保持面13aに向き合う保持面301により可動部材13を保持する保持部材の一例である。
【0069】
図7に示すように、可動部材13がフレーム209に保持された場合には、スペーサ部材300は、保持面301と、被保持面13aとの間に設けられる。スペーサ部材300の厚みt1は、被保持面13aに設けられた回路パターン部123の厚みt2よりも厚い。なお、スペーサ部材300は、保持面301ではなく、被保持面13aに接着部材等により接着されることによって固定されてもよい。
【0070】
スペーサ部材300は、第1スペーサ部材300a、第2スペーサ部材300b、第3スペーサ部材300cおよび第4スペーサ部材300dを含む。第1スペーサ部材300a、第2スペーサ部材300b、第3スペーサ部材300cおよび第4スペーサ部材300dは、矩形状の開口である開口209bの四隅の近傍に固定される。
【0071】
第1スペーサ部材300a、第2スペーサ部材300b、第3スペーサ部材300cおよび第4スペーサ部材300dは、複数のスペーサ部材の一例である。本実施形態では、複数のスペーサ部材の個数は4個であるが、これに限定されるものではなく任意の個数であってもよい。複数のスペーサ部材の配置位置も、保持面301と、被保持面13aとの間であれば任意の位置でよい。但し、可動部材13を安定して保持する観点では、複数のスペーサ部材は、開口209bの中心に対して点対称となる位置に設けられることが好ましい。
【0072】
なお、第1スペーサ部材300a、第2スペーサ部材300b、第3スペーサ部材300cおよび第4スペーサ部材300dを特に区別しない場合には、スペーサ部材300と総称する。
【0073】
本実施形態では特に、スペーサ部材300は、可動部材13における所定の機能領域以外の領域に設けられている。ここで、機能領域とは、可動部材13において可動部材13が所定の機能を発揮するための領域をいう。
【0074】
本実施形態では、機能領域は、回路パターン部123、可動部材13の可動領域、および可動部材13のミラー面14へ入射する光が通過する経路を含む。可動部材13の可動領域は、ミラー面14または駆動梁130aおよび130b等が可動により通過する領域を意味する。ミラー面14へ入射する光が通過する経路は、例えば開口209bである。
【0075】
スペーサ部材300の材質は、特段の制限はなく、樹脂材料または金属材料を含んでスペーサ部材300を構成可能である。本実施形態では特に、スペーサ部材300は、ゴム等の弾性を有する材料を含んで構成されており、弾性を有する。
【0076】
<分光器100の作用効果>
以上説明したように、本実施形態に係る分光器100は、被保持面13aと、被保持面13aの少なくとも一部に設けられた回路パターン部123と、を含む可動部材13(デバイス)を有する。また分光器100は、被保持面13aに向き合う保持面301により可動部材13を保持するフレーム209(保持部材)と、保持面301と被保持面13aとの間に設けられたスペーサ部材300と、を有する。スペーサ部材300の厚みt1は、被保持面13aに設けられた回路パターン部123の厚みt2よりも厚い。例えば回路パターン部123は、配線を含む。
【0077】
ここで、フレーム209は、製作コストや製作効率の観点から、その表面を滑らかにするための研磨等の工程を含まずに製作されるため、フレーム209の表面にはある程度の凹凸が含まれる。このため、可動部材13に含まれる回路パターン部123が保持面301に接触するように、フレーム209が可動部材13を保持すると、保持面301に含まれる突起が回路パターン部123に接触する場合がある。この結果、回路パターン部123にキズが付いたり、回路パターン部123に含まれる配線が断線したり、該配線が短絡したりする場合がある。また保持面301に異物が付着した場合等にも同様にキズ、断線または短絡等が発生する場合がある。回路パターン部123のキズや、配線の断線または短絡等により、可動部材13が正常に動作しなくなる。
【0078】
本実施形態では、分光器100は、保持面301と被保持面13aとの間に、被保持面13aに設けられた回路パターン部123の厚みt2よりも厚い厚みt1を有するスペーサ部材300を有する。これにより、フレーム209が保持面301により可動部材13を保持した際に、回路パターン部123と保持面301とが接触することを防止できる。この結果、本実施形態では、回路パターン部123にキズが付いたり、回路パターン部123に含まれる配線が断線または短絡したりすることを防ぐことができ、可動部材13に含まれる回路パターン部123の破損を防止できる。
【0079】
なお、本実施形態では、回路パターン部123が配線を含む構成を例示したが、回路パターン部123は、配線とともに、あるいは配線に代えて、電極接続部150や電気回路、電子回路等を含んでもよい。回路パターン部123の厚みt2は、回路パターン部123に含まれる構成部のうち、最も厚い厚みに対応する。
【0080】
また本実施形態では、スペーサ部材300は、可動部材13における所定の機能領域以外の領域に設けられている。この機能領域は、可動部材13の可動領域、および可動部材13へ入射する光が通過する経路の少なくとも一方を含む。この構成により、分光器100は、可動部材13の機能を阻害することなく、可動部材13に含まれる回路パターン部123の破損を防止することができる。
【0081】
また本実施形態では、スペーサ部材300は、第1スペーサ部材300a、第2スペーサ部材300b、第3スペーサ部材300cおよび第4スペーサ部材300dを含む。これによりフレーム209は、スペーサ部材300と保持面301及び被保持面13aそれぞれとの接触面積を小さくしつつ、可動部材13を安定して保持できる。また保持面301と被保持面13aとの間に突起や異物が挟まれる確率を抑制できるため、回路パターン部123の破損をより好適に防止できる。
【0082】
また本実施形態では、スペーサ部材300は、弾性を有する。これにより、保持面301に突起または異物等があった場合にも、スペーサ部材300が変形することによって突起または異物等による凹凸を吸収できる。この結果、可動部材13を安定して保持するとともに回路パターン部123の破損を好適に防止できる。
【0083】
[その他の好適な実施形態]
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0084】
なお、本実施形態では、デバイスの一例として可動部材13を例示したが、これに限定されるものではなく、回路パターン部と、被保持面と、を含むものであれば如何なるデバイスであってもよい。
【0085】
実施形態では、分光器100を例示したが、実施形態に係るデバイス搭載機器は分光器100に限定されるものではない。例えばデバイス搭載機器は、DMD(Digital Mirror Device)等のデバイスを含む、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイまたはヘッドアップディスプレイ等であってもよい。また可動部材13は、MEMSミラーに限らず、可動のものであれば如何なる部材であってよい。
【0086】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【符号の説明】
【0087】
1 筐体
2 緩衝部材
10 可動方向
11 窓
12 スイッチ
13 可動部材
13a 被保持面
14 ミラー面
16、17 光通過領域
100 分光器(デバイス搭載機器の一例)
120 ミラー部
123 回路パターン部
130a、130b 駆動梁
131aから131d 圧電駆動部
132aから132d 圧電駆動部
133 梁部材
140a、140b 支持部
150 電極接続部
201 入射スリット
202 凹面回折格子
203 テーパ孔
204 出射スリット
209 フレーム(保持部材の一例)
209a、209b、209c、209d 開口
210 外側フレーム
215a 処理部
216 光源
217 受光部
218 バッテリ
300 スペーサ部材
300a 第1スペーサ部材
300b 第2スペーサ部材
300c 第3スペーサ部材
300d 第4スペーサ部材
301 保持面
E 揺動軸
t1、t2 厚み
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】