(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079391
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】放送信号変換装置及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/222 20110101AFI20230601BHJP
H04N 21/2381 20110101ALI20230601BHJP
H04H 20/28 20080101ALI20230601BHJP
H04H 20/95 20080101ALI20230601BHJP
【FI】
H04N21/222
H04N21/2381
H04H20/28
H04H20/95
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192849
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 侑輝
(72)【発明者】
【氏名】永田 裕靖
(72)【発明者】
【氏名】大西 正芳
(72)【発明者】
【氏名】大槻 一博
(72)【発明者】
【氏名】今村 浩一郎
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164FA04
5C164SA11P
5C164SB24P
5C164SB41S
5C164YA21
(57)【要約】
【課題】MTUサイズの超過を防止し、伝送効率の低下を抑制できる放送信号変換装置を提供する。
【解決手段】放送信号変換装置1は、映像信号を符号化する映像符号化部10と、音声信号を符号化する音声符号化部20と、フルヘッダ対象フラグメントサイズ以下のペイロードとなるように制御情報の先頭フラグメントをフラグメントし、基本フラグメントサイズ以下のペイロードとなるように制御情報の残りをフラグメントする制御情報生成部30と、フラグメントした制御情報と映像信号と音声信号とのペイロードを格納したIPパケットの多重信号を生成する多重化処理部40と、IPパケットの多重信号をTLVパケットに変換するTLV変換部50とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP伝送時に所定の目標サイズ以下となるように、放送信号のIPパケットをTLVパケットに変換する放送信号変換装置であって、
IP伝送時にフルヘッダを格納するTLVパケットのサイズが前記目標サイズ以下となるように設定された第1フラグメントサイズが入力され、入力された前記第1フラグメントサイズ以下のペイロードとなるように制御情報をフラグメントするフラグメント部と、
符号化及びフラグメントされた映像信号及び音声信号のペイロードが入力され、前記フラグメント部がフラグメントした制御情報と前記映像信号と前記音声信号とのペイロードを格納したIPパケットの多重信号を生成する多重化処理部と、
前記第1フラグメントサイズ以下のペイロードとなるようにフラグメントした前記制御情報のペイロードを格納するIPパケットを、前記フルヘッダを含むTLVパケットに変換するTLV変換部と、
を備えることを特徴とする放送信号変換装置。
【請求項2】
前記フラグメント部は、予め設定されたフルヘッダ送出間隔毎に前記第1フラグメントサイズ以下のペイロードとなるように前記制御情報をフラグメントし、
前記TLV変換部は、前記フルヘッダ送出間隔毎に、前記第1フラグメントサイズ以下のペイロードとなるようにフラグメントした制御情報を含むペイロードのIPパケットを、前記フルヘッダを含むTLVパケットに変換することを特徴とする請求項1に記載の放送信号変換装置。
【請求項3】
前記フラグメント部は、前記第1フラグメントサイズより大きく設定された第2フラグメントサイズがさらに入力され、入力された前記第1フラグメントサイズ以下のペイロードとなるように前記制御情報の先頭部分をフラグメントし、入力された前記第2フラグメントサイズ以下のペイロードとなるように前記第1フラグメントサイズでフラグメントされていない制御情報の残りをフラグメントし、
前記TLV変換部は、前記第2フラグメントサイズ以下のペイロードとなるようにフラグメントした制御情報を含むペイロードのIPパケットを、部分ヘッダを含むTLVパケットに変換することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放送信号変換装置。
【請求項4】
予め設定された目標パケットサイズから、前記TLVパケットに付加するUDP/IPヘッダのサイズと、前記フルヘッダを含むTLVパケットのヘッダサイズと、多重化方式のヘッダサイズとを減算することで、前記第1フラグメントサイズを算出すると共に、
前記目標パケットサイズから、前記UDP/IPヘッダのサイズと、前記部分ヘッダを含むTLVパケットのヘッダサイズと、多重化方式のヘッダサイズとを減算することで、前記第2フラグメントサイズを算出するフラグメントサイズ算出部、をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の放送信号変換装置。
【請求項5】
前記TLV変換部は、前記フルヘッダを含めても前記TLVパケットのサイズが前記目標パケットサイズを超えない場合、前記第1フラグメントサイズでフラグメントした制御情報を含む多重信号のIPパケットを、前記フルヘッダを含むTLVパケットに変換することを特徴とする請求項4に記載の放送信号変換装置。
【請求項6】
前記TLV変換部は、多重化方式としてMMTを用いる場合、packet_IDが‘0’で、fragmentation_indicatorが‘0’又は‘1’のIPパケットを、前記フルヘッダを含むTLVパケットに変換することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の放送信号変換装置。
【請求項7】
前記TLV変換部は、多重化方式としてDASH/ROUTEを用いる場合、TSIが‘0’で、TOIが‘0’であるIPパケットに限定した中で、ひとつ前のIPパケットのclose_object_flagが‘1’であるIPパケットを、前記フルヘッダを含むTLVパケットに変換することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の放送信号変換装置。
【請求項8】
前記フラグメント部は、前記第1フラグメントサイズ以下のペイロードとなるようにフラグメントした制御情報を含むパケットに対して、前記フルヘッダを挿入できることを示すラベルを付加し、
前記TLV変換部は、前記ラベルが付加されたIPパケットを、前記フルヘッダを含むTLVパケットに変換することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか一項に記載の放送信号変換装置。
【請求項9】
前記映像信号を符号化する映像符号化部と、
前記音声信号を符号化する音声符号化部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項8の何れか一項に記載の放送信号変換装置。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1から請求項9の何れか一項に記載の放送信号変換装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送信号変換装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
IP(Internet Protocol)ベースの放送では、IPパケットと物理層の変調フレームとのインタフェースとして、TLV(Type Length Value)が用いられる。例えば、MMT(MPEG Media Transport)を用いた放送サービスでは、MMTP(MMT Protocol)/UDP(User Datagram Protocol)/IPv6/TLVパケット列が変調フレームに格納されて、放送波に変調される(非特許文献1~4)。
【0003】
一つの放送サービスとしてIPパケット列が同一のIPデータフローに属する場合、このIPパケット列では、UDP/IPヘッダ部に含まれる送信元アドレス・ポート番号、送信先アドレス・ポート番号が一定で変化しない。このことから、TLV変換時に伝送効率の改善のために、IPパケット列にIPヘッダ圧縮を適用する場合がある。
【0004】
図9(a)には、IPヘッダ圧縮前のIPパケット100を図示した。このIPパケット100は、ペイロード200と、MMTPヘッダ210と、UDP/IPv6ヘッダ220とを含んでいる。また、
図9(b)には、IPヘッダ圧縮後のTLVパケット110を図示した。このTLVパケット110は、ペイロード200と、MMTPヘッダ210と、フルヘッダ230又は部分ヘッダ240の何れかと、TLVヘッダ250とを含んでいる。このように、IPヘッダ圧縮により、UDP/IPv6ヘッダ220がフルヘッダ230又は部分ヘッダ240の何れかに変換されている。
【0005】
大多数のTLVパケット110Sは、UDP/IPv6ヘッダ220が大きく圧縮された部分ヘッダ240を含むので、パケットサイズが小さくなる。その一方、一部のTLVパケット110Lは、ペイロード200の種類によらずに定期的に挿入されるフルヘッダ230を含むので、パケットサイズがIPヘッダ圧縮前と大きくは変わらない。例えば、48バイトのUDP/IPv6ヘッダ220が3バイトの部分ヘッダ240に圧縮されるのに対し、フルヘッダ230は45バイトである。なお、フルヘッダ230及び部分ヘッダ240は非特許文献5に規定されており、部分ヘッダ240が圧縮ヘッダと呼ばれることもある。また、IPヘッダ圧縮の放送サービスでの運用方法については、その一例が非特許文献3に規定されている。
【0006】
映像等の符号化された信号とその制御情報とをIPパケットを用いて多重化した多重信号を送信する多重化方式としては、MMT方式の他に、DASH/ROUTE(Dynamic adaptive streaming over HTTP/ Real-Time Object Delivery over Unidirectional Transport)方式も知られている(非特許文献4)。MMTでは、符号化した映像音声信号に対して、MMTPペイロードヘッダを付与したペイロードをMMTP/UDP/IPヘッダを付与して伝送する。これに対して、DASH/ROUTEでは、符号化した映像音声信号をセグメントファイルとして、LCT(Layer Coding Transport)/ALC(Asynchronous Layered Coding)/UDP/IPパケットで伝送する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ISO/IEC 23008-1、“High efficiency coding and media delivery in heterogeneous environments: MPEG media transport”
【非特許文献2】ARIB STD-B60、“デジタル放送におけるMMTによるメディアトランスポート方式”
【非特許文献3】ARIB TR-B39、“高度広帯域衛星デジタル放送運用規定(第三分冊)”
【非特許文献4】ATSC Standard:A/331,“Signaling, Delivery, Synchronization, and Error Protection”
【非特許文献5】ARIB STD-B32、“デジタル放送における映像符号化、音声符号化及び多重化方式”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、
図9(c)に示すように、放送局内外の送出・送信設備間やIPネットワークにおけるIP伝送形式として、TLVパケット110をUDP/IPv4パケット120に格納する場合がある。しかし、UDP/IPv4パケット120Lは、28バイトのUDP/IPv4ヘッダ260が付加されていることに加え、フルヘッダ230が格納されたTLVパケット110Lを含んでいる。このため、UDP/IPv4パケット120Lは、パケットサイズが一般的なIP回線・設備のMTU(Maximum Transmission Unit)サイズ(例えば、1500バイト)を超えてしまい、正常に伝送できないことがある。
図9で、IPパケット100を例えば1491バイトとなるように構成した場合、UDP/IPv4パケット120Lが1520バイトとなり、MTUサイズを超過するのに対し、UDP/IPv4パケット120SがMTUサイズ以下の1478バイトとなり、MTUサイズを超過しない。なお、TLVパケット110をUDP/IPv6パケットに格納して伝送する場合もあるが、UDP/IPv6ヘッダのデータサイズがUDP/IPv4ヘッダ260よりも大きいため、MTUサイズを超過する可能性が大きくなる。
【0009】
この対策として、放送局の送出・送信設備においては、1500バイトを超えるジャンボパケットに対応した高コストな設備を導入する必要がある。さらに、放送再送信においては、既存の回線・設備でのジャンボパケットの伝送を可能とするためオーバヘッドの大きい分割TLV方式を使用する必要もある。なお、分割TLV方式は、TLVパケットをMPEG-2 TS(Transport Stream)パケットに細分化して、IPパケットに格納してIP回線での伝送を行うTS Over IPで伝送する方式である。
【0010】
また、フルヘッダを含むTLV/UDP/IPパケットがMTUサイズを超過しないように、全てのTLVパケットに格納されているIPパケットのペイロードのフラグメントサイズを小さくする手法も考えられる。しかし、この手法では、IPパケットのオーバヘッド比率が高まることで、放送信号の伝送効率が低下してしまう。IPパケットのオーバヘッド比率は様々な定義が可能ではある。例えば、MMTP/UDP/IPヘッダまでのデータサイズをA、MMTPよりも上層のペイロードのデータサイズ(フラグメントサイズ)をBとしたときに、A/(A+B)をオーバヘッド比率と定義できる。このオーバヘッド比率が‘0’に近くなるほど伝送効率が高く、‘1’に近くなるほど伝送効率が低下する。
【0011】
そこで、本発明は、MTUサイズの超過を防止し、伝送効率の低下を抑制できる放送信号変換装置及びそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明に係る放送信号変換装置は、IP伝送時に所定の目標サイズ以下となるように、放送信号のIPパケットをTLVパケットに変換する放送信号変換装置であって、フラグメント部と、多重化処理部と、TLV変換部と、を備える構成とした。
【0013】
かかる構成によれば、放送信号変換装置は、フラグメント部に対して、IP伝送時にフルヘッダを格納するTLVパケットのサイズが目標サイズ以下となるように設定された第1フラグメントサイズが入力される。この目標サイズは、MTUサイズを越えないことを一つの要件として、運用に応じて決められる値である。そして、フラグメント部は、入力された第1フラグメントサイズ以下のペイロードとなるように制御情報をフラグメントする。なお、制御情報の全体を含むペイロードとしても第1フラグメントサイズに満たない場合、フラグメントせずに制御情報の全体を含むペイロードとする。
【0014】
また、放送信号変換装置は、多重化処理部によって、符号化及びフラグメントされた映像信号及び音声信号のペイロードが入力され、フラグメント部がフラグメントした制御情報と映像信号と音声信号とのペイロードを格納したIPパケットの多重信号を生成する。
さらに、放送信号変換装置は、TLV変換部によって、第1フラグメントサイズ以下のペイロードとなるようにフラグメントした制御情報のペイロードを格納するIPパケットを、フルヘッダを含むTLVパケットに変換する。
【0015】
このように、放送信号変換装置は、制御情報の先頭フラグメント又は全体をフルヘッダの挿入を考慮した第1フラグメントサイズ以下のペイロードとした上で、フルヘッダを格納するTLV/UDP/IPパケットとすることで、一般的なIP回線・設備におけるMTUサイズの超過を防止し、TLVパケットのIP伝送が可能となる。さらに、放送信号変換装置は、全てのIPパケットが格納するペイロードのフラグメントサイズを小さくする必要がないので、IPパケットのオーバヘッド比率の上昇が少なく、伝送効率の低下を抑制できる。
【0016】
なお、本発明は、コンピュータを前記した放送信号変換装置として機能させるためのプログラムで実現することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、MTUサイズの超過を防止し、伝送効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る放送信号変換装置の構成を示すブロック図ある。
【
図2】実施形態において、(a)はIPヘッダ圧縮前のIPパケットの多重信号、(b)はIPヘッダ圧縮後のTLVパケット、(c)はIP伝送時のTLVパケットの説明図である。
【
図3】実施形態において、(a)及び(b)はペイロードの説明図である。
【
図4】実施形態において、制御信号のフラグメントを説明する説明図である。
【
図5】実施形態において、制御信号生成部の動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態において、TLV変換部の動作を示すフローチャートである。
【
図7】変形例において、制御信号生成部の動作を示すフローチャートである。
【
図8】変形例において、TLV変換部の動作を示すフローチャートである。
【
図9】従来技術において、(a)はIPヘッダ圧縮前のIPパケット、(b)はIPヘッダ圧縮後のTLVパケット、(c)はIP伝送時のTLVパケットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に説明する各実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、同一の手段には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0020】
[放送信号変換装置の構成]
図1を参照し、実施形態に係る放送信号変換装置1の構成について説明する。
放送信号変換装置1は、TLVパケットのIP伝送時に所定の目標サイズ以下となるように、放送信号のIPパケットをTLV/UDP/IPパケット(TLVパケット)に変換するものである。
図1に示すように、放送信号変換装置1は、映像符号化部10と、音声符号化部20と、制御情報生成部(フラグメント部)30と、多重化処理部40と、TLV変換部50と、フラグメントサイズ算出部60とを備える。
【0021】
映像符号化部10は、映像信号が入力され、入力された映像信号を符号化するものである。例えば、映像符号化部10は、H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)などの一般的な映像符号化方式で映像信号を符号化する。このとき、映像符号化部10は、後記するフラグメントサイズ算出部60から入力された基本フラグメントサイズ(第2フラグメントサイズ)以下のペイロードとなるように映像信号をフラグメントしてもよい。そして、映像符号化部10は、符号化及びフラグメントした映像信号のペイロードを多重化処理部40に出力する。
【0022】
なお、フラグメントとは、映像信号、音声信号、制御情報などの所望のデータを、IPパケットのペイロードとして格納するために所定のサイズ以下に分割することである。
また、フルヘッダ対象フラグメントサイズ(第1フラグメントサイズ)は、TLVパケットのIP伝送時に制御情報の先頭フラグメント又は全体を格納するTLV/UDP/IPパケットのサイズが、IPヘッダ圧縮によるフルヘッダが挿入された後であっても目標サイズ以下となるように設定されている。ここで、目標サイズは、任意に設定可能であり、例えば、MTUサイズ=1500バイトである。
また、基本フラグメントサイズ(第2フラグメントサイズ)は、前記以外のTLV/UDP/IPパケットのサイズが、IPヘッダ圧縮による部分ヘッダが挿入された後であっても目標サイズ以下となるように設定されており、フルヘッダ対象フラグメントサイズよりも大きい値となる。
【0023】
音声符号化部20は、音声信号が入力され、入力された音声信号を符号化するものである。例えば、音声符号化部20は、AAC(Advanced Audio Coding)などの一般的な音声符号化方式で音声信号を符号化する。このとき、音声符号化部20は、フラグメントサイズ算出部60から入力された基本フラグメントサイズ以下のペイロードとなるように音声信号をフラグメントしてもよい。そして、音声符号化部20は、符号化及びフラグメントした音声信号のペイロードを多重化処理部40に出力する。
【0024】
なお、映像符号化部10が出力する映像信号のペイロード及び音声符号化部20が出力する音声信号のペイロードは、符号データのままでなくともよい。例えば、多重化方式がMMTの場合、MMTPペイロードヘッダを付与したMMTPペイロード形式、多重化方式がDASH/ROUTEの場合、ISOBMFF(ISO Base Media File Format)セグメントファイル形式としたうえで、基本フラグメントサイズによるフラグメントしたものであってもよい。
【0025】
制御情報生成部30は、フラグメントサイズ算出部60からフルヘッダ対象フラグメントサイズが入力され、入力されたフルヘッダ対象フラグメントサイズ以下のペイロードとなるように制御情報をフラグメントするものである。但し、制御情報生成部30は、制御情報の全体を含むペイロードとしてもフルヘッダ対象フラグメントサイズに満たない場合、フラグメントせずに制御情報の全体を含むペイロードとする。本実施形態では、制御情報生成部30は、非特許文献2に規定された制御情報であるMPT(MMT Package Table)を含むPA(Package Access)メッセージを生成することとする。
【0026】
また、制御情報生成部30は、フラグメントサイズ算出部60から基本フラグメントサイズが入力され、入力された基本フラグメントサイズ以下のペイロードとなるように、フラグメントされていない制御情報の残りをフルヘッダ対象フラグメントサイズでフラグメントする。そして、制御情報生成部30は、フラグメントした制御信号を多重化処理部40に出力する。
【0027】
ここで、エントリポイントとなる制御情報の送出周期に対して、フルヘッダの送出周期がより長い周期で構わない場合がある。この場合、エントリポイントとなる制御情報の先頭フラグメントを含むIPパケットの全てにフルヘッダを挿入する必要はない。そこで、制御情報生成部30は、予め設定されたフルヘッダ送出間隔毎に、フルヘッダ対象フラグメントサイズで制御情報の先頭フラグメント又は制御情報全体をフラグメントすることとする。このフルヘッダ送出間隔は、フルヘッダを送出する間隔、つまり、IPパケットにフルヘッダを挿入する間隔を表す。例えば、エントリポイントの制御情報の送出周期が100ミリ秒以下、フルヘッダの送出周期が500ミリ秒以下の場合、制御情報を5回送出するうち、1回だけフルヘッダを挿入すればよい(フルヘッダ送出間隔=5)。
【0028】
多重化処理部40は、符号化及びフラグメントされた映像信号及び音声信号のペイロードが入力され、制御情報生成部30がフラグメントした制御情報と映像信号と音声信号とのペイロードを格納したIPパケットの多重信号を生成するものである。つまり、多重化処理部40は、映像符号化部10から入力された映像信号のペイロードと、音声符号化部20から入力された音声信号のペイロードと、制御情報生成部30から入力された制御信号のペイロードとを同一のIPデータフローのIPパケットとして多重化する。例えば、多重化処理部40は、MMT又はDASH/ROUTEなどの一般的な多重化方式で多重化を行う。そして、多重化処理部40は、映像信号、音声信号及び制御信号のペイロードを格納したIPパケットの多重信号をTLV変換部50に出力する。
【0029】
TLV変換部50は、フルヘッダ対象フラグメントサイズ以下のペイロードとなるようにフラグメントした制御情報のペイロードを格納するIPパケットを、フルヘッダを含むTLV/UDP/IPパケットに変換するものである。また、TLV変換部50は、基本フラグメントサイズでフラグメントした制御情報を含むペイロードのIPパケットを、部分ヘッダを含むTLV/UDP/IPパケットに変換する。このとき、TLV変換部50は、多重化処理部40から入力されたIPパケットの多重信号に対して、IPヘッダ圧縮を施す。そして、TLV変換部50は、IPヘッダ圧縮が施されたTLV/UDP/IPパケットをIP伝送する。
【0030】
本実施形態では、TLV変換部50は、フルヘッダ送出間隔毎に、フルヘッダ対象フラグメントサイズでフラグメントした制御情報を含むペイロードのIPパケットを、フルヘッダを含むTLVパケットに変換することとする。また、本実施形態では、TLV変換部50は、変換したTLVパケットをUDP/IPv4パケットに格納することとする。
【0031】
フラグメントサイズ算出部60は、予め設定された目標パケットサイズから、フルヘッダ対象フラグメントサイズ及び基本フラグメントサイズを算出するものである。この目標パケットサイズは、IP伝送時のTLVパケット(TLV/UDP/IPパケット)の目標サイズを表しており、MTUサイズ以下で設定されている。そして、フラグメントサイズ算出部60は、算出したフルヘッダ対象フラグメントサイズ及び基本フラグメントサイズを制御情報生成部30に出力する。さらに、フラグメントサイズ算出部60は、算出した基本フラグメントサイズを映像符号化部10及び音声符号化部20に出力する。
【0032】
<TLVパケットの変換>
図2及び
図3を参照し、TLVパケットの変換を詳細に説明する。
図2(a)には、TLV変換部50がIPヘッダ圧縮する前のIPパケット100の多重信号を図示した。
図2(a)に示すように、IPパケット100(100A,100B)の多重信号は、ペイロード200(200A,200B)と、MMTPヘッダ210と、UDP/IPv6ヘッダ220とを含んでいる。ここで、多重化処理部40がMMTPヘッダ210及びUDP/IPv6ヘッダ220を付加している。
【0033】
図3に示すように、ペイロード200には、映像符号化部10が符号化した映像信号300、音声符号化部20が符号化した音声信号310、又は、制御情報生成部30がフラグメントした制御信号320(320A,320B)の何れかがが格納されている。ここで、制御信号320Aがフルヘッダ対象フラグメントサイズ以下のペイロードとなるようにフラグメントされているのに対し、制御信号320Bが基本フラグメントサイズ以下のペイロードとなるようにフラグメントされている。このため、制御信号320Aを格納するペイロード200Aのサイズが、制御信号320Bを格納するペイロード200Bより小さくなっている。
【0034】
図2(b)には、TLV変換部50がIPヘッダ圧縮した後のTLVパケット110を図示した。
図2(b)に示すように、TLVパケット110(110A,110B)は、ペイロード200(200A,200B)と、MMTPヘッダ210と、フルヘッダ230又は部分ヘッダ240の何れかと、TLVヘッダ250とを含んでいる。ここで、TLV変換部50が、UDP/IPv6ヘッダ220をフルヘッダ230又は部分ヘッダ240の何れかに圧縮し、TLVヘッダ250を付加している。
【0035】
図2(c)には、IP伝送時のTLVパケット(UDP/IPv4パケット120)を図示した。
図2(c)に示すように、UDP/IPv4パケット120は、TLVパケット110(110A,110B)と、UDP/IPv4ヘッダ260とを含んでいる。ここで、TLV変換部50が、UDP/IPv4ヘッダ260を付加している。
【0036】
前記したように、3バイトの部分ヘッダ240に比べて、フルヘッダ230のサイズが45バイトと大きいので、UDP/IPv4パケット120LがMTUサイズを超過してしまう(
図9参照)。これを見越して、
図4に示すように、制御信号320の先頭フラグメント(制御信号320A)については、制御情報生成部30が、フルヘッダ対象フラグメントサイズのペイロード200Aとしてフラグメントしている。一方、フルヘッダ対象フラグメントサイズでフラグメントしなかった制御信号320で残りのフラグメント(制御信号320B)については、制御情報生成部30が、基本フラグメントサイズのペイロード200Bとしてフラグメントしている。
【0037】
これにより、
図2(b)に示すように、フルヘッダ対象フラグメントサイズでフラグメントしたペイロード200Aとフルヘッダ230とを含むTLVパケット110Aが、基本フラグメントサイズのペイロード200Bと部分ヘッダ240とを含むTLVパケット110Bと同一サイズになる。従って、
図2(c)に示すように、IP伝送時には、TLVパケット110AにUDP/IPv4ヘッダ260を付加しても、UDP/IPv4パケット120AがMTUサイズ以下に収まる。
図2(c)の例では、UDP/IPv4パケット120A,120Bが共に、1500バイト以下である。
【0038】
<フルヘッダ対象フラグメントサイズ及び基本フラグメントサイズの算出>
以下、フルヘッダ対象フラグメントサイズ及び基本フラグメントサイズの算出を詳細に説明する。
フラグメントサイズ算出部60は、目標パケットサイズから、TLVパケットに付加するUDP/IPv4ヘッダのサイズと、フルヘッダを含むTLVパケットのヘッダサイズと、多重化方式のヘッダサイズとを減算することで、フルヘッダ対象フラグメントサイズを算出する。このフルヘッダ対象フラグメントサイズを用いてペイロードを構成することで、IP伝送時に制御情報の先頭フラグメント又は全体を格納するTLVパケットのサイズがMTUサイズ以下となる。
【0039】
また、フラグメントサイズ算出部60は、目標パケットサイズから、UDP/IPv4ヘッダのサイズと、部分ヘッダを含むTLVパケットのヘッダサイズと、多重化方式のヘッダサイズとを減算することで、基本フラグメントサイズを算出する。
【0040】
ここで、例えば、多重化方式としてMMTを採用し、MMTPヘッダをpacket_counter_flag=0、extension_flag=0で運用することとする。また、MMTP/UDP/IPv6パケットをTLVパケットに格納し、TLV/UDP/IPv4パケットでIP伝送することとする。つまり、MMTPペイロードヘッダを含むMMTPペイロードを基準としたデータ構造でフラグメントサイズを算出する。
【0041】
この例では、目標パケットサイズなどが以下の通りである。
目標パケットサイズ:1478バイト
UDP/IPv4ヘッダ:28バイト(UDPの8バイト+IPv4の20バイト)
フルヘッダを含むTLVパケットのヘッダサイズ:49バイト(TLV同期1バイト+タイプ1バイト+レングス2バイト+フルヘッダ45バイト)
部分ヘッダを含むTLVパケットのヘッダサイズ:7バイト(TLV同期1バイト+タイプ1バイト+レングス2バイト+部分ヘッダ3バイト)
MMTPのヘッダサイズ:12バイト
【0042】
この例では、フルヘッダ対象フラグメントサイズは、1478-28-49-12=1389バイトとなる。また、基本フラグメントサイズは、1478-28-7-12=1431バイトとなる。
【0043】
なお、MMTPヘッダ(packet_counter_flag、extension_flag)の運用が異なる場合も、その運用方法に応じてヘッダサイズの増加分が定まるため、基本フラグメントサイズを算出できる。また、映像信号、音声信号及び制御情報などペイロードの種別により運用が異なる場合、それぞれで基本フラグメントサイズを算出してもよい。つまり、映像信号及び音声信号の基本フラグメントサイズと、制御情報の基本フラグメントサイズとを異なる値にしてもよい。
【0044】
[制御情報生成部の動作]
図5を参照し、制御情報生成部30の動作を説明する。
図5に示すように、ステップS1において、制御情報生成部30は、カウンタを0にリセットする。
ステップS2において、制御情報生成部30は、制御情報の送出を指令するタイマ割込が発生したか否かを判定する。例えば、タイマ割込としては、変数をある初期値から一定のクロックでカウントダウン又はカウントアップし、その変数がある設定値に達したときに割込みを発生させる一定周期タイマがあげられる。これにより、100ミリ秒などの一定周期で割込みを発生させることで、制御情報を一定周期で生成及び送出できる。
【0045】
タイマ割込が発生した場合(ステップS2でYes)、制御情報生成部30は、ステップS3の処理に進む。
タイマ割込が発生しない場合(ステップS2でNo)、制御情報生成部30は、ステップS2の処理に戻る。つまり、制御情報生成部30は、タイマ割込が発生するまでアイドリングする。
【0046】
ステップS3において、制御情報生成部30は、制御情報を生成する。
ステップS4において、制御情報生成部30は、カウンタが0であるか否かを判定する。
カウンタが0の場合(ステップS4でYes)、制御情報生成部30は、ステップS5の処理に進む。
カウンタが0でない場合(ステップS4でNo)、制御情報生成部30は、ステップS6の処理に進む。
【0047】
ステップS5において、制御情報生成部30は、制御情報の先頭フラグメントをフルヘッダ対象フラグメントサイズでフラグメントする。
ステップS6において、制御情報生成部30は、制御情報の先頭を基本フラグメントサイズでフラグメントする。
ステップS7において、制御情報生成部30は、フラグメントされた制御情報を多重化処理部40に出力する。
【0048】
ステップS8において、制御情報生成部30は、制御情報全体の出力を完了したか否かを判定する。
制御情報全体の出力を完了した場合(ステップS8でYes)、制御情報生成部30は、ステップS9の処理に進む。
制御情報全体の出力を完了していない場合(ステップS8でNo)、制御情報生成部30は、ステップS11の処理に進む。
【0049】
ステップS9において、制御情報生成部30は、カウンタに1を加算する。
ステップS10において、制御情報生成部30は、カウンタがフルヘッダ送出間隔と等しいか否かを判定する。
カウンタがフルヘッダ送出間隔と等しい場合(ステップS10でYes)、制御情報生成部30は、ステップS1の処理に戻る。
カウンタがフルヘッダ送出間隔と等しくない場合(ステップS10でNo)、制御情報生成部30は、ステップS2の処理に戻る。
【0050】
ステップS11において、制御情報生成部30は、制御情報の残りを基本フラグメントサイズでフラグメントする。その後、制御情報生成部30は、ステップS7の処理に戻る。
【0051】
[TLV変換部の動作]
図6を参照し、TLV変換部50の動作を説明する。
図6に示すように、ステップS20において、TLV変換部50は、カウンタを0にリセットする。
ステップS21において、TLV変換部50には、多重信号のIPパケットが入力される。
【0052】
ステップS22において、TLV変換部50は、ステップS21で入力されたIPパケットが、エントリポイントの制御情報の先頭フラグメント又は全体を含むIPパケットであるか否かを判定する。
【0053】
ここで、多重化方式としてMMTを用いる場合、packet_IDが‘0’で、fragmentation_indicatorが‘0’又は‘1’のIPパケットが、エントリポイントの制御情報の先頭フラグメント又は全体を含むIPパケットに該当する。この場合、フルヘッダの挿入対象は、Packet_ID=0のMMTP/UDP/IPv4で伝送されるPAメッセージの先頭フラグメントを含むIPパケット、又は、PAメッセージ全体を含むIPパケットである。先頭フラグメントを含むIPパケットはfragmentation_indicator=1となり、PAメッセージ全体を含むIPパケットはfragmentation_indicator=0となる。
【0054】
また、多重化方式としてDASH/ROUTEを用いる場合、TSI(Transport Session Identifier)が‘0’で、TOI(Transport Object Identifier)が‘0’のLCT/ALC/UDP/IPパケットであり、次の条件を満たすものがエントリポイントの制御情報の先頭フラグメント又は全体を含むIPパケットに該当する。前記した条件とは、TSI=0、TOI=0のIPパケットに限定した中で、ひとつ前のIPパケットのclose_object_flagが‘1’のことである。この場合、フルヘッダの挿入対象は、TSI=0、TOI=0のLCT/ALC/UDP/IPパケットで伝送するファイルオブジェクトの先頭フラグメントを含むパケット、又は、ファイルオブジェクト全体を含むIPパケットである。ROUTEでは、MMTのfragmentation_indicatorと同一役割のフラグが存在しない代わりに、ファイルオブジェクトの末尾を含むパケットであることが、close_object_flag=‘1’で分かる。さらに、ファイルオブジェクトを分割せず、全体を1パケットで送り切るパケットもclose_object_flag=‘1’で分かる。従って、TSI=‘0’、TOI=‘0’のIPパケットに限定した中で、close_object_flag=‘1’のIPパケットから次のIPパケットが、ファイルオブジェクトのフラグメントの先頭パケット、又は、ファイルオブジェクト全体を含むIPパケットであり、フルヘッダの挿入対象パケットとなる。
【0055】
そのIPパケットに該当する場合(ステップS22でYes)、TLV変換部50は、ステップS23の処理に進む。
そのIPパケットに該当しない場合(ステップS22でNo)、TLV変換部50は、ステップS26の処理に進む。
【0056】
ステップS23において、TLV変換部50は、IP伝送時、フルヘッダを含めてもTLV/UDP/IPパケットのサイズが目標パケットサイズを超えないか否かを判定する。つまり、TLV変換部50は、
図2(c)のUDP/IPv4パケット120Aのサイズを逆算し、そのサイズが目標パケットサイズを超えないか否かを判定する。
なお、処理開始時に予めフルヘッダ挿入後に目標パケットサイズを超えないようにIPパケットサイズの閾値を求めてもよい。この場合、ステップS23では、その閾値と入力されたIPパケットのサイズとを比較する判定を行ってもよい。
【0057】
目標パケットサイズを超えない場合(ステップS23でYes)、TLV変換部50は、ステップS24の処理に進む。
目標パケットサイズを超える場合(ステップS23でNo)、TLV変換部50は、ステップS26の処理に進む。
【0058】
ステップS24において、TLV変換部50は、カウンタが0であるか否かを判定する。
カウンタが0の場合(ステップS24でYes)、TLV変換部50は、ステップS25の処理に進む。
カウンタが0でない場合(ステップS24でNo)、TLV変換部50は、ステップS26の処理に進む。
【0059】
ステップS25において、TLV変換部50は、ステップS21で入力されたIPパケットを、フルヘッダを含むTLVパケットに変換する。つまり、TLV変換部50は、
図2(a)のIPパケット100AにIPヘッダ圧縮を施し、UDP/IPv4ヘッダ260を付加することで、
図2(c)のUDP/IPv4パケット120Aを生成する。
【0060】
ステップS26において、TLV変換部50は、ステップS21で入力されたIPパケットを、部分ヘッダを含むTLVパケットに変換する。つまり、TLV変換部50は、
図2(a)のIPパケット100BにIPヘッダ圧縮を施し、UDP/IPv4ヘッダ260を付加することで、
図2(c)のUDP/IPv4パケット120Bを生成する。その後、TLV変換部50は、ステップS30の処理に進む。
【0061】
ステップS27において、TLV変換部50は、カウンタに1を加算する。
ステップS28において、TLV変換部50は、カウンタがフルヘッダ送出間隔と等しいか否かを判定する。
カウンタがフルヘッダ送出間隔と等しい場合(ステップS28でYes)、TLV変換部50は、ステップS29の処理に進む。
カウンタがフルヘッダ送出間隔と等しくない場合(ステップS28でNo)、TLV変換部50は、ステップS30の処理に進む。
【0062】
ステップS29において、TLV変換部50は、カウンタを0にリセットする。
ステップS30において、TLV変換部50は、ステップS25,S26で変換したTLVパケットをIP伝送路に送信する。その後、TLV変換部50は、ステップS21の処理に戻る。
【0063】
[作用・効果]
このように、放送信号変換装置1は、制御情報の先頭フラグメント又は全体のペイロードのサイズをフルヘッダの挿入を考慮して他のペイロードと比較して小さくした上で、フルヘッダを格納するTLV/UDP/IPパケットとすることで、一般的なIP回線・設備におけるMTUサイズの超過を防止してTLVパケットのIP伝送が可能となる。さらに、放送信号変換装置1は、全てのIPパケットが格納するペイロードのフラグメントサイズを小さくする必要がないので、IPパケットのオーバヘッド比率の上昇が少なく、伝送効率の低下を抑制できる。
【0064】
以上、実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0065】
(変形例1)
前記した実施形態では、制御情報の送出頻度に対して、さらにフルヘッダ送出間隔によって間引かれた頻度によりフルヘッダ対象フラグメントサイズでフラグメントを行うこととして説明したが、これに限定されない。エントリポイントの制御情報及びフルヘッダの挿入周期が同一の場合、フルヘッダ送出間隔=1とするか、又は、フルヘッダ送出間隔自体を考慮しない構成としてもよい。以下、変形例1として、フルヘッダ送出間隔を考慮しないときの制御情報生成部30及びTLV変換部50の動作を説明する。
【0066】
[制御情報生成部の動作]
図7を参照し、制御情報生成部30の動作を説明する。
図7に示すように、ステップS30において、制御情報生成部30は、制御情報の送出を指令するタイマ割込が発生したか否かを判定する。
【0067】
タイマ割込が発生した場合(ステップS30でYes)、制御情報生成部30は、ステップS31の処理に進む。
タイマ割込が発生しない場合(ステップS30でNo)、制御情報生成部30は、ステップS30の処理に戻る。つまり、制御情報生成部30は、タイマ割込が発生するまでアイドリングする。
【0068】
ステップS31において、制御情報生成部30は、制御情報を生成する。
ステップS32において、制御情報生成部30は、制御情報の先頭フラグメントをフルヘッダ対象フラグメントサイズでフラグメントする。
ステップS33において、制御情報生成部30は、フラグメントされた制御情報を多重化処理部40に出力する。
【0069】
ステップS34において、制御情報生成部30は、制御情報全体の出力を完了したか否かを判定する。
制御情報全体の出力を完了した場合(ステップS34でYes)、制御情報生成部30は、ステップS30の処理に戻る。
制御情報全体の出力を完了していない場合(ステップS34でNo)、制御情報生成部30は、ステップS35の処理に進む。
ステップS35において、制御情報生成部30は、制御情報の残りを基本フラグメントサイズでフラグメントする。その後、制御情報生成部30は、ステップS33の処理に戻る。
【0070】
[TLV変換部の動作]
図8を参照し、TLV変換部50の動作を説明する。
図8に示すように、ステップS40において、TLV変換部50には、多重信号のIPパケットが入力される。
【0071】
ステップS41において、TLV変換部50は、ステップS40で入力されたIPパケットが、エントリポイントの制御情報の先頭フラグメント又は全体を含むIPパケットであるか否かを判定する。
【0072】
そのIPパケットに該当する場合(ステップS41でYes)、TLV変換部50は、ステップS42の処理に進む。
そのIPパケットに該当しない場合(ステップS41でNo)、TLV変換部50は、ステップS44の処理に進む。
【0073】
ステップS42において、TLV変換部50は、フルヘッダを含めてもTLVパケットのサイズが目標パケットサイズを超えないか否かを判定する。
目標パケットサイズを超えない場合(ステップS42でYes)、TLV変換部50は、ステップS43の処理に進む。
目標パケットサイズを超える場合(ステップS42でNo)、TLV変換部50は、ステップS44の処理に進む。
【0074】
ステップS43において、TLV変換部50は、ステップS40で入力されたIPパケットを、フルヘッダを含むTLVパケットに変換する。
ステップS44において、TLV変換部50は、ステップS40で入力されたIPパケットを、部分ヘッダを含むTLVパケットに変換する。
ステップS45において、TLV変換部50は、ステップS43,S44で変換したTLVパケットをIP伝送する。その後、TLV変換部50は、ステップS40の処理に戻る。
【0075】
(その変形例)
前記した実施形態では、制御情報生成部が制御情報を生成することとして説明したが、外部から制御情報を制御情報生成部に入力してもよい。
【0076】
前記した実施形態では、制御情報生成部30は、非特許文献2に規定された制御情報であるMPTを含むPAメッセージを生成することとして説明したが、非特許文献2に規定された制御情報であるPLT(Package List Table)を含むPAメッセージを生成してもよい。PLTをサービスのエントリポイントとしてPacket_ID=0のPAメッセージで伝送する場合、PLTから参照されるMPTは、Packet_ID=0以外のPAメッセージによって伝送することもできる。この場合、Packet_ID=0以外のPAメッセージは、サービスのエントリポイントの制御情報ではないため、基本フラグメントサイズ以下のペイロードとなるようにフラグメントしてもよい。
【0077】
多重化処理部40には、映像信号及び音声信号以外のペイロードが図示しない符号化装置等から入力されてもよい。例えば、放送サービスの場合、多重化処理部40は、映像信号及び音声信号以外、データ放送や字幕データのペイロードを多重化してもよい。このとき、データ放送や字幕データは、基本フラグメントサイズ以下のペイロードとなるようにフラグメントしてもよい。
【0078】
多重化処理部40でUDP/IPヘッダを付与せずにTLV変換部50に対してペイロード200及びMMTPヘッダ210を入力し、TLV変換部50ではフルヘッダ230又は部分ヘッダ240の何れかを直接付与する構成としてもよい。つまり、
図2(a)の段階を省略することで、処理の簡略化が可能である。
【0079】
前記した実施形態では、ステップS22又はステップS41において、TLV変換部50が、入力されたIPパケットがエントリポイントの制御情報の先頭フラグメント又は全体を含むIPパケットであるか否かを判定する際、MMT又はDASH/ROUTEのヘッダを解析して判定することとして説明したが、この手法に限定されない。
例えば、制御情報生成部30は、フルヘッダ対象フラグメントサイズでフラグメントした制御情報の先頭フラグメント又は全体のペイロードを含むパケットに対して、フルヘッダを挿入できることを示すラベルを付加してもよい。そして、TLV変換部50は、このラベルに基づいてフルヘッダ対象であるか否かを判定し、このラベルが付加されたIPパケットを、フルヘッダを含むTLVパケットに変換してもよい。これにより、MMT又はDASH/ROUTEのヘッダを解析する処理を省略できる。この場合、ラベルが付与されたIPパケットは、フルヘッダ対象フラグメントサイズでフラグメントされていると考えられる。従って、フルヘッダを含めてもTLV/UDP/IPパケットのサイズが目標パケットサイズを超えないか否かを判定するステップS23又はステップS42の処理を省略してもよい。
【0080】
前記した実施形態では、放送信号変換装置が独立したハードウェアであることとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明は、コンピュータが備えるCPU、メモリ、ハードディスク等のハードウェア資源を、前記した放送信号変換装置として機能させるためのプログラムで実現することもできる。このプログラムは、通信回線を介して配布してもよく、CD-ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 放送信号変換装置
10 映像符号化部
20 音声符号化部
30 制御情報生成部(フラグメント部)
40 多重化処理部
50 TLV変換部
60 フラグメントサイズ算出部